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第46号お奨め国内盤新譜



ALPHA

Alpha909
(国内盤)
\2940
《2009 年度カタログ付仕様》
ジョン・プレイフォード(1623〜86):
 『英国式舞踏指南』(1651)より
 ①誰のものでないジグ/レイン氏の気紛れ
 ②スティンゴ ③処女王エリザベス
 ④会釈するジョー ⑤ダフネ ⑥ポールの出まかせ
 ⑦ルパート侯のマーチ/マスコ ⑧羊飼いの休日
 ⑨あの人の歌はどんなふう ⑩イタリア式・羽目の外し方
 ⑪すすけたモリス⑫ベティに健康を ⑬マスク第6番
 ⑭冬の寒さを追っ払おう/物乞いの少年
 ⑮グラウンドによるディヴィジョン ⑯やましぎ
 ⑰ワローンの野 ⑱からいばり/アルジェ⑲無題
 ⑳野営地のヘイ (21)スコットランド舞曲
 (22)人の権利もろもろ
アンサンブル・レ・ウィッチズ(古楽器使用)
(ディスク内容はAlpha502 と同一です)
Alpha の豪華カラーカタログつき、もちろん日本語も添付してます——これほど購買意欲をそそるシリーズもないけれど、2009 年度は内容もベストセラー!毎年Alpha がリリースするカタログ付アイテムには、これまで販売実績のあるCD が選ばれて、ただでさえ購買意欲をそそるきれいなジャケットなのに、それを全部カラー印刷した「思わず欲しくなる」カタログまでついているというお買い得品!!2009 年度のカタログ付きアイテムに選ばれたのは、中世から近代まで、ガチガチ厳格な宗教曲から民謡めいた伝統音楽まで、実に広く深いフランス古楽界でもまれてきた精鋭奏者たちによるユニット「レ・ウィッチズ」の傑作舞曲集! ご存知、英国がピューリタン革命のさなかにあった頃、舞踏会は社会悪を助長するとかで禁止されたりもするのですが、それでも人々は踊りたくてたまらず、1651 年に舞踏教師=音楽家プレイフォードがさまざまなカントリーダンスのステップを演奏用楽譜とともに刊行するや、たちまちのうちに大流行、えんえん18 世紀まで版を重ねる人気書籍となったのでした。英国古楽界の気鋭たちが折々にクールなプレイフォード作品集を作ってくれますが、レ・ウィッチズはフランス勢、ほんのり色気ただよう「ラテン的プレイフォード」は英国的玄妙さにも事欠かず、アイリッシュ・ミュージックめいたテンポの良さ、いかにも古楽器!といった素朴な音色のうつくしさによって、日本でも大いに実績をあげたアイテムです(Alpha502)。

ALPHA

Alpha141
(国内盤)
\2940
マッテイス:ヴァイオリンと通奏低音のための小品集
ニコラ・マッテイス(1660〜1715 頃):
 1. 組曲 イ短調 2. 組曲 ハ短調
 3. 組曲 ホ短調 4. 組曲 イ短調
 5. 組曲 ニ短調 6. 組曲 ト長調
ジョン・バニスター(1625〜79):
 7. チェンバロ独奏曲2編(ガヴォット/ジグ)
エレーヌ・シュミット(バロック・ヴァイオリン)
イェルク・アンドレアス・ベッティヒャー(cmb, org)
ガエータノ・ナシッロ(バロック・チェロ)
エリック・ベロック(バロックギター、テオルボ)
南国ナポリの歌心と、誰にもまねできない超絶技巧——英国人たちに「イタリア人スゲエ!」という意識を植えつけた、17世紀の鬼才ヴァイオリニストの音楽世界。軽やかにして精妙しっとり、「地中海の子」エレーヌ・シュミットが放つ待望の新譜をどうぞ!

南仏出身のバロック・ヴァイオリン奏者エレーヌ・シュミット…といえば、Alphaで録音した記念碑的な『バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』(Alpha082、090)のユニークな解釈もさることながら(このプログラムによる昨年の来日公演は日本の古楽ファンのあいだで大きな話題となり、おかげさまで2枚のCDセールスも好評続行中です)、アルベルティーニやシュメルツァー、カルボネッリ…と知られざる注目作曲家の紹介にも意欲を注ぎ、彼らの曲によってきわめて高水準の録音をリリース、セールス的にも好成績をあげてきました。
——無名作曲家の曲でも、彼女の艶やかなボウイング&噛んで含めるような説得力確かな解釈にかかると、誰しも俄然、惹き込まれてしまうから不思議なものです。
さて——昨年の来日公演では日本の湿気にもずいぶん悩まされていたらしきシュミット、このときアンコールで弾いた曲が居合わせた方々の絶賛をあび、「CDはないのですか?」という問い合わせもあったのですが…その録音がいま、ようやく到着いたしました!
ニコラ・マッテイス——ナポリ出身でロンドンに渡った、17 世紀末のヴァイオリニスト=作曲家の小品集!! ヨーロッパ音楽界が「イタリア=本場」という図式を確立しつつあった時代に、清教徒革命のせいで音楽文化がかなり弱体化していたイギリスに渡ってきて、とほうもなく優れた腕前を披露し「イタリア人って、すごいんだ!」という印象をこの国の人々に植え付けたのは、ほかならぬマッテイスが最初だったのでした。
名声さめやらぬ18 世紀初頭に出版された「エアー集」には、バロック・ヴァイオリン特有の短めなフレーズ感が絶妙に生きる舞曲群をはじめ、古楽ファンを虜にせずにはおかない小品がたっぷり!マッテイス自身も弾いた楽器、バロックギターで弾かれるトラックも交えつつ(D.ヴィスの伴奏者ベロックの名演が冴えます!)
シュミットはそれらを適宜、組曲のかたちにまとめ、あるときは軽妙に、あるときは熱烈に、あるいはしっとりと、「南欧人マッテイス」の魅力を印象づけてゆきます。年期の入ったバロック好きなら幾つか思い当たる先行録音もあるはずですが、マッテイスが単独アルバムでとりあげられる機会はかなり稀なうえ、英国での活躍で知られるせいか、南欧人の演奏ではまずめったに聴けません。シュミットのようなラテン系古楽奏者が、このヴァイオリン芸術家の出自に寄り添ったパッションを随所でほとばしらせ、染み入るような歌心でその旋律美を際立たせてくれるのは、なんと嬉しいことでしょう! 例によって通奏低音陣はソリスト級の名手勢、鍵盤ソロのトラックも…これが英国ではじめて「予約コンサート」を開催したことで名ばかり知られる、ジョン・バニスターの曲だったりするのが何とも貴重です。歴史的関連もなおざりにしない、筋の通った1枚!
Alpha139
(国内盤)
\2940
バッハ:チェロと鍵盤のための3つのソナタ 他
 1. コラール「来たれ、異教徒の救い主」BWV659
 2. チェロと鍵盤のためのソナタ ト長調 BWV1027
 3. オルガンのためのトリオ BWV528a
 4. コラール「いと高き天にはただ神のみぞ」BWV711
 5. チェロと鍵盤のためのソナタ ニ長調 BWV1028
 6. オルガンのためのトリオ BWV583
 7. コラール「ああ、我らと留まり給え」BWV649
 8. チェロと鍵盤のためのソナタ ト短調 BWV1029
 9. コラール「目ざめよ、と呼ぶ声聞こえ」BWV645
ブリュノ・コクセ(ヴィオラ・バッテラ&各種vc)
ベルトラン・キュイエ(cmb/org)
リチャード・マイロン(cb)
カフェ・ツィマーマンの興奮絶頂!のさなか、またもやAlpha から「鉄板バッハ」がもう1枚!
「チェロにこだわりあり」のブリュノ・コクセが、あのガンバ・ソナタに物申す異色の名盤スパッラではなく「バスタルダ式チェロ」。小さな楽器から、千変万化の響きが流れ出す!

ル・サージュのシューマン作品集シリーズや、ひさびさの「カフェ・ツィマーマンのバッハ」(Alpha137)の登場など、向春の折、今年のAlpha はいきなりトバしていますが——そんな絶好調ムードにさらなる拍車をかける絶品バッハ新譜が、またもや登場!日本の古楽界は昨今、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラなる復元楽器が大きな注目を集め、この楽器を使っての演奏会もいろいろ話題となりましたが、その発展史にまだまだ闇の部分が多い「初期のチェロ」に興味のある音楽家といえば、楽器製作者シャルル・リシェとのタッグでさまざまな研究と実践をくりかえしてきた、フランスの天才コクセも忘れられないところ。
ラルペッジャータの即興合戦アルバム(Alpha512)やフレスコバルディのカンツォーナ集(Alpha053)では、ルネサンスの音楽実践にも通じたところを印象づけてくれました。そんな彼がこのたびクローズアップするのは、バロック初期、17 世紀のイタリアでひろく使われたという伝説上の楽器「バスタルダ」——これはヴィオラ・ダ・ガンバとチェロの特徴をともに兼ね備えた6弦のハイブリッド楽器で、おもに多声楽曲をソロで即興的に弾くスタイルから生まれたとされる楽器。じっさいガンバ風の伸びのよい美音を誇りながら、チェロならではの敏速な動きにも対応できるスグレモノ——もともとヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタとされながらも、音楽内容はあまりガンバ風でなく、現代楽器のチェロ奏者たちも好んでとりあげてきたBWV1027〜1029 の3曲のソナタを弾くなら、こんなに適切な楽器もなかろう、というわけです。ふわっと軽やかに舞い、スピーディな局面では驚くべきアクロバティックなサウンドを作る、コクセ随一の腕前がこの楽器の魅力をあざやかに引き出してゆく——バス版とテナー版、2種類の弾き分けも絶妙!チェンバロのみならず曲に応じてオルガンでも丁々発止コクセと渡り合うのは、こちらもフランスの若きスーパープレイヤー、ベルトラン・キュイエ!! 超実力派古楽バス奏者マイロンもしっかり参加しています。
そしてもうひとつ注目なのが、イタリア17 世紀の画家バッテラの絵(ジャケット)をもとに復元されたヴィオラ・バッテラなる楽器も盛り込まれていること——オルガン・コラールの室内楽編曲で使われるこの異形の楽器も、ヴィオール風の美音がたまらない!コクセ自身の解説(日本語訳付)も必読の充実度です。
Alpha138
(国内盤)
\2940
フランス王太子のためのプティ・モテさまざま
マルク=アントワーヌ・シャルパンティエ(1643〜1704):
 1. 王の子なる方のための進言 H.166
 2. マグダラのマリア、ひとり洞穴で涙にくれ H.373
 3. 逝ける者のための懇願 H.328
 4. 鹿が、谷間で水を求めるように H.174
 5. おお、清らかにして神々しき犠牲 H.248
 6. 王太子の病より癒えたるを感謝する H.326
ルイ・マルシャン(1669〜1732):四つのオルガン曲
 7. リード管によるフーガ 8. フォン・ドルグ
 9. 中音域にティエルス管 10. フーガ
フレデリク・デザンクロ(オルガン・指揮)
アンサンブル・ピエール・ロベール(古楽器使用)
Alpha の本分?フランス古楽ものも絶好調——名盤あまたのデザンクロ、今回もソロ満載!フランス・バロック最高の宗教曲の大家シャルパンティエ、成り上がりをかけた傑作群を引き締まった編成で、フランス古楽界最高の解釈者たちが切々とうたいあげる、清らかさ!

2009 年のAlpha のスタートダッシュを盛り上げるのは、バッハものばかりではありません!ごらんのとおり、「フランスの古楽レーベル」Alpha の本懐ともいえるフランス・バロックものでも、クールに高次元、他の追従を許さない傑作アルバムをくり出してきました。シャルパンティエ——そう、フランス・バロック最大の宗教音楽の大家、まごうことなき巨匠の腕前がいちばん端的にあらわれた、充実至極のモテ(モテット=若干の器楽伴奏をともなう教会合唱作品)の数々でございます!ここに集められているのは、ルイ14 世の息子のなかで唯一成人した王太子ルイのために書かれた音楽の数々。シャルパンティエはこの王太子の小宮廷で重んじられたため、これを期に王室の中核へと迫れると思い仕事に励み、本盤に収められたような途方もなく濃密・繊細な声楽作品がいくつも生みだされたのはまさにそのおかげ——なのですが、残念ながら王室音楽監督リュリの激しい妨害にあい、彼は結局、太陽王ルイ14 世の宮廷にはくい込めなかったのでした。しかし彼の音楽の「ひたぶるにせつない感じ」を聴くにつけ、リュリが念入りにシャルパンティエを王室から遠ざけたのもよくわかる気がいたします。しかも、現在のフランス古楽界を代表する、ヴェルサイユ・バロック音楽センターでも信望あつきオルガニスト=合唱指揮者デザンクロの絶品解釈で聴けるとなれば...!ご存知のとおり、このグループはAlpha に幾つもの録音を残し、シャルパンティエはこれが3枚目ですが、録音を追うごと、歌い手たちのセンスが深まり、器楽奏者たちも練られ、ただでさえ味わい深かった感性がますます冴え渡っているような...歌い手は女声ふたり+男声ひとり、器楽陣はトラヴェルソ2+バス・フルート(!)、ヴァイオリン2にガンバ、テオルボ、初期ファゴットからなる通奏低音…そこにデザンクロ自身の弾く大オルガンが加わります。例によってオルガン・ソロも4曲収録、今回は(聖ルイ学校のオルガニストとしてシャルパンティエと交流があったらしき)マルシャンの掌編でエスプリを効かせてくれます。全トラック、自然美の洪水!
Alpha127
(国内盤)
\2940
フランス17 世紀、牧歌趣味と音楽
 〜牧歌物語『アストレ』とエール・ド・クール
 ①ロベール・バラール(1570 頃〜1650):村のブランル
 ②作者不詳:愛の神は弓を収めて立ち去り
 ③バラール:リュートのアントレ1
 ④アントワーヌ・ボエセー(1587〜1643):私は惨めではないか
 ⑤朗読「もしあなたがお聞きになれば」
 ⑥エチエンヌ・ムリニエ(1587〜1643):
  ついにイラスはとらえられ
 ⑦エヌモン「老」ゴーチエ(1575〜1651):シャコンヌ
 ⑧朗読「しかしながら食卓はかたづけられ」
 ⑨ジャン・ボワイエ(1600以前〜1648):彼女の比類なき美しさは
 ⑩ルネ・ムザンジョー(?〜1638):プレリュード
 ⑪ボエセー:私の苦しみを甘く煽るもの
 ⑫バラール:リュートのアントレ3
 ⑬ジョアシャン・チボー・ド・クールヴィル(17世紀):
  思い悩むからといって
 ⑭朗読「殿方よ、どうかお聞きください」
 ⑮ルイ・ド・リゴー(17世紀前半):苦しみ疲れて
 ⑯朗読「それではコリラスよ」
 ⑰ド・リゴー:私の羊飼いになりたいというのですか
 ⑱ジャン=アンリ・ダングルベール(1635〜91):プレリュード
 ⑲ニコラ・ル・ヴァヴァスール(1580 頃〜1658 頃):
  彼女は私の心を変えた
 ⑳バラール:クーラント
 (21)ボエセー:それが本当なら
 (22)朗読「私をお守りくださるからには」
 (23)ボワイエ:あなた以外の誰かを愛するくらいなら
 (24)ギヨーム・ミシェル(?):デュルフェはリニョン川を自慢する
 (25)朗読「なぜなら以前は」
 (26) フランソワ・デュフォー(?〜1682以前):サラバンド/
  ムリニエ:持ち上げる波よ
 (27)ボエセー:どれほどの恋人たちが
 (28)ボワイエ:私はクピドー、幼な神
 (29)朗読「カリドンよ、夕食のあとに」
 (30)ジュアン・シャルダヴォワーヌ(1538〜1580頃):
  私はいつまでも生きるのか/愛の神よ百度
 (31)ル・ヴァヴァスール:時は来た、断ち切ろう
 (32) ニコラ・シュヴァリエ(?):サラバンド
 (33)ムリニエ:もし言い伝え通りに
 (34)ピエール・ゲドロン(1565頃〜1620):
  我らの五感に与えよう
マルコ・オルヴァ(リュート弾き語り)
Ens.ファエンツァ(古楽器使用)
「元ル・ポエム・アルモニーク」の鬼才歌手、フランス語の地声で「語りながら歌う」マルコ・オルヴァの最新作、登場! 17 世紀のベストセラー牧歌物語の筋書きを宮廷音楽(エール・ド・クール)でたどる、本格的なのに生々しい響きはまさに、魔術のよう!

イタリア人マルコ・ビズリーが、イタリア初期バロックの「歌いながら語る」スタイルの理想的な体現者であるとすれば、ル・ポエム・アルモニーク出身のフランス人歌手マルコ・オルヴァは、フランス宮廷音楽が民俗音楽からだんだん芸術音楽になってゆく過程の「語りなのか、歌なのか」といったスタイルをごく自然にこなせてしまう、稀代のユニーク古楽歌手——
その歌声は“歌のために作られ”てはおらず、“はなしことば、そのまま”の地声なのです!
自分でリュートやガンバも弾いてしまう(これがまた、ウマい…)達人ぶりで、まさに17 世紀の音楽家を地でゆく天才ですが、今度の最新盤は「当時のベストセラー小説を音楽で再現する」というもの。17 世紀の宮廷人たちは、古典古代の羊飼いたちのような牧歌的な生活に憧れ、恋物語や絵画の舞台にはことごとく若い羊飼いの男女が登場したものですが、フランスで特に人気だったのが、オノレ・デュルフェという作家の田園恋物語『アストレ』。デュルフェ自身、バイフの「詩と音楽のアカデミー」や宮廷作曲家ゲドロンと近しくつきあい、当該の小説にも歌や舞踏の場面が数々登場するのですが、ここではデュルフェが想起したであろう曲を丹念に拾いながら、同時代の音楽とあわせて絶妙のプログラムが組まれ、ごく一部に小説本体の朗読を盛り込みつつ、抑揚ゆたかに、ドラマティックに、エール・ド・クール(宮廷歌曲)の旨味を堪能させてくれます。
リュート、テオルボ、バロックギター等の妙音が、ほんのり色気を漂わせた、魔術のような低い歌声とからみあう、美しさ——折々ソプラノ歌手も健康的な艶やかで興を沿え、流し聴きにしていても飽きるどころか、ついつい最後まで止まらない!さすがはAlpha、手抜きなしの古楽盤。クセになります!

ARCO DIVA

UP0109
(国内盤)
\2940
ベートーヴェン:
 1. ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
 2. ソナタ 第24番 嬰ヘ長調 作品78「テレーゼ」
ミハル・マシェク(ピアノ)
レオシュ・スワロフスキー指揮
パルドゥヴィツェ・チェコ室内フィルハーモニー管弦楽団
引き締まった少数精鋭の室内オーケストラが、滋味豊かな確たるピアニズムが「新しい中欧のベートーヴェン」像をつむぎ出すとき——曲のスケールの豊かさそのまま、初期ロマン派のオーケストラのあり方に立ちもどった、聴き応え満点の「皇帝」!!

おなじベートーヴェンのピアノ協奏曲つながりですが、録音年代はうって変わって21世紀——アーティスト達の出身と録音場所は同じく中欧のチェコでありながら、その演奏内容は随所でぐっと現代的!ソリストであるミハル・マシェクは(ジャケットでは風格たっぷりといった雰囲気ですが)なんと1980年生まれ。しかしそのピアニズムは早くも(ジャケット同様?)確たる精緻さに貫かれ、「皇帝」の豪快さに寄りかかる気はまったくないようす——細かなフレーズまで念入りに、この「傑作の森」でもとびきりの巨木の構築感をじっくり楽しませてくれるのです。これがじわじわ聴いてきて、第1楽章が終わる頃にはすっかり彼の世界に引きずり込まれている...その腕利きっぷりを、併録されているテレーゼ・ソナタでは完璧な一人舞台として楽しめるとは、なかなかいいプログラム構成!
ちょっと調べてみたら、まだ30前というのに、祖国チェコでは早くも「バッハ弾き」として名声を確立しつつあるようで、なるほどそうか、知性派か、と納得至極(『ゴールトベルク変奏曲』の名盤があるそうで、ぜひとも聴いてみたいものです!)。しかし「中欧の“いま”」らしさをとりわけ強く実感するのが、そのオーケストラでしょう——ガツンと勇壮さを出そうとすればいくらでもできる「皇帝」を解釈するにあたって、ノイマン&コシュラー門下の「現代チェコきっての気鋭」、度重なる来日公演でも名を売ってきたスワロフスキーは、なんとコントラバス1本の少数精鋭、室内管弦楽団で臨んでいるのです!ヴァイオリンは当然のように両翼対抗、ティンパニや金管こそ伝統的なスタイルを採用していますが、繰り出されるサウンドはきりりと引き締まり、曲のメリハリを絶妙の緩急で描き出してゆく——これがなんとも快い!いってみれば、プラハ室内管のスタイルに近い、といった感じです。
「ベートーヴェン音楽への時代考察はわかるけど、古楽器演奏やピリオド風解釈って苦手で...」といったリスナー様にぜひおすすめ、そうでなくとも、こういったかたちでの「皇帝」の聴き応えというのは、曲や演奏解釈を見直す絶妙の機会にもつながります。チェコ楽壇、侮れません!

CARO MITIS

CM005-2007
(国内盤)
(SACD-Hybrid)
\3360
ヤーコプ・クレイン2世(1688〜1748):
 1. チェロと通奏低音のためのソナタ ハ長調 op.1-13
 2. チェロと通奏低音のためのソナタ ニ長調 op.1-14
 3. チェロと通奏低音のためのソナタ イ短調 op.1-17
 4. チェロと通奏低音のためのソナタ ロ短調 op.1-18
 5. 二つのチェロのためのソナタ ト長調 op.2-6
 6. アダージョ(ソナタ op.1-15より)
 7. アレグロ(ソナタ op.1-16より)
パヴェル・セルビン、
アレクサンドル・グーリン (バロックvc)
ハンス・クヌート・シュヴェーン(チェンバロ)
プラトゥム・インテグルムの総監督&首席チェロ奏者が、あざやかな腕前で披露するのはヴィヴァルディのそれより前に出版されていた幻のチェロ・ソナタ集、もちろん世界初録音!

変則調弦で繰り出される妙音が、おどろくべきバロック・チェロの旨味をじわり醸し出す...いやあ、バロック・チェロって良いですよねえ・・・と、しみじみ感じさせる良盤がCaroMitis から到着いたしました! ヤーコプ・クレイン2世は同名のバレエ振付師の息子で、ヴィヴァルディの『調和の霊感』がアムステルダムで出版された頃、オランダで活躍していた音楽家。そのチェロ・ソナタ集(「作品1」、1716 年出版)ってことは…そう!この年代にはまだチェロを独奏楽器に立てた音楽そのものが珍しく(レーオの協奏曲群もヴィヴァルディの協奏曲・ソナタなども、当時はまだ存在すらしていなかったはず)、世界初のチェロ・ソナタではないにせよ、コレッリの影響を感じさせつつ、ヴィヴァルディ的ヴェネツィア風味があざやかに決まる響きが低音域で続くのが、なかなかに斬新でございまして。
クレインは(ドイツ人と勘違いされてか、よく「クライン」と呼ばれているのを目にしますが)現存作品がチェロ作品ばかりで、他のレーベルからも幾つかリリースがありましたが、それらはことごとく1740 年代以降のロココ期のものばかりで、この最初期の傑作ソナタ集が録音されたのは、まさに画期的なことなのです。もうひとつ面白いのは、これらのソナタの全てが、通常の調弦より全弦1音高いスコルダトゥーラ(変則調弦)で弾くことになっている点——弦の張力が強めになるぶん、独特の緊張感と音色の妙がチェロにもたらされ、それが「えもいわれぬ響き」につながっているのでしょう(DSD録音でたっぷり味わえます)!完璧なイタリアン・スタイルの作曲技巧も流布していながら、こうしたドイツ的特殊技法も知られている——さすがは楽譜出版の中心地だっただけあって、当時オランダは意外と音楽先進国だったんですね。独奏は、ロシアで逸早く古楽グループとして活躍をはじめたプラトゥム・インテグルム・オーケストラを率いる精鋭チェリスト、パヴェル・セルビン——これまでもプラッティの協奏曲集やロシア古典派の室内楽で気の利いたソロを聴かせてきた彼の妙技は、ここへきて全開、曲の美をみごとに引き出してやみません。唯一既存録音のある二重奏ソナタでは、同楽団のもうひとりの俊英グーリンが、これまた絶妙の合いの手で応えます。バロック・チェロの面白さ、渋みと歌心と超絶技巧の競演がここに詰まっています!

CARO MITIS

CM006-2007
(SACD Hybrid)
(国内盤)
\3360
ベートーヴェン:ソナタ全集Vol.3
 1. ピアノ・ソナタ 第1番 ヘ短調 op.2-1
 2. ピアノ・ソナタ 第2番 イ長調 op.2-2
 3. ピアノ・ソナタ 第3番 ハ長調 op.2-3
イーゴリ・チェトゥーエフ (ピアノ/ファツィオーリ2280912)
いつの間にか、ものすごーく好調なシリーズになってしまいました!ファツィオーリ・ピアノの良さを最大限に活かしたすばらしき全集、ようやく待望の第3 弾! 初期のソナタで、その腕前をばっちり堪能!ロシア唯一のHybrid-SACD 専門レーベルCARO MITIS で2006 年からスタートした、ウクライナの俊英イーゴリ・チェトゥーエフによるファツィオーリ・ピアノでのベートーヴェン・ソナタ全集——軽い気持ちで始めた録音でないことは、作品構造をよく踏まえた充実の解釈の連続に示されているところ。じっさい「熱情」「告別」「第7番」の組み合わせによる第1弾(CM004-2005)は『レコード芸術』で準特選、「悲愴」・「テレーゼ」「田園」と入った第2弾(CM006-2006)は堂々特選!!この曲集の刊行当時、ベートーヴェンは26 歳。彼自身の意志で最初に出版する本格的なピアノ・ソナタ3曲は、ピアノ先進都市ウィーンの聴衆をすぐに熱狂へと誘いました。いずれも師匠ハイドンの影響がありありと息づいている(当時まだ、ハイドンも現役の作曲家でした)短調1曲に長調2曲のこれらのソナタ、実は現代ピアノで弾くのはなかなか厄介、曲構造がわかっていないと、すぐにつまらない演奏結果に...その点、チェトゥーエフはこれまでの実績から、こうした初期ソナタへの適性がいかにあるかは実証済み!!
CM008-2007
(国内盤)
( SACD-Hybrid)
\3360
テレマン:管弦楽組曲全曲録音 vol. 1
 1. 管弦楽組曲 ニ短調 TWV55: d2
  〜OB2、FG、弦楽、通奏低音
 2. 管弦楽組曲 ホ短調 TWV55: e3
  〜FL2、OB2、FG、弦楽、通奏低音
 3. 管弦楽組曲ロ短調TWV55: h1 〜
   VN2、OB2、FG2、弦楽、通奏低音
プラトゥム・インテグルム・オーケストラ (古楽器使用)
 プラトゥム・インテグルムo.、メンバーの腕前と機能性をいかんなく発揮しての注目企画!
 何百曲あるかも実体不明といわれるテレマンの、多彩きわまる管弦楽組曲をすべて網羅しようという大胆さ——これだけウマいと、ぜひ達成されてほしい、この偉業!
 生前は同時代人バッハをしのぐほど国際的な名声を博したドイツ後期バロックの大作曲家、テレマン——ご存知のとおり、この人は ①当時の音楽の2大潮流、「イタリア様式」と「フランス様式」を双方あざやかに使いこなし、②どちらかといえばフランス趣味に傾きつつ、③両様式をきわめて自然に融合させてみせ、④自分でもさまざまな楽器をみごとに奏した、その知識を活かして、⑤室内楽や合奏曲を中心に、8,000 曲を越える作品を残した人。
 作品群の総体があまりに膨大なため、音楽研究が飛躍的に進んだ20 世紀後半を費やしてもなお、その全体像が把握しきれていないとか。しかるに彼の作品の中核を占めるのが、上記②③のポイントを踏まえて作曲された、さまざまな編成のための「管弦楽組曲」。もともとドイツで、フランス様式の舞踏組曲の模倣として始まったこの作曲スタイルにおいて、テレマンは多彩をきわめる楽器編成のため、最先端のイタリア様式さえ盛り込みながら、今なお全バロック・ファンを魅了してやまないエキサイティングな音楽世界を展開したのでした。
 ロシア随一のスーパー古楽器集団、緻密なアンサンブルと各員の味わい深い演奏が魅力のプラトゥム・インテグルムは、これまでも2枚のテレマン・アルバムをCaroMitis で発表していますが、ここへいたって「テレマン組曲の、全曲録音」とはずいぶん大きく出たものです(現段階で、総体さえつかめてないはずなのに…)が!その演奏のクールさ・絶妙さは群を抜いてすばらしい!
 第一弾ではオーボエ2本にファゴット(時に2本起用する曲も!)を弦楽合奏に加えた標準編成の3編、すべて短調、すべて長大、そしてすべてがカッコイイ! たおやかさとクリスピーな機動性のバランスは絶品、バロック楽器のオーガニックなソロの響きもたまらない…Brilliant で進行中の同種の全集が現代楽器なら、こちらはばっちり古楽器、ファンの心に寄り添う企画となっています。
 バロック愛好家必聴、初心者にもおすすめ、解説も充実(もちろん完全日本語訳つき)——こうなったら、何年かかってでも完成させてほしい!と思わせる好企画です!

CONCERTO

CNT2034
(2CD)
(国内盤)
\4515
ジュリアーニ:ギターのための作品集
マウロ・ジュリアーニ(1781〜1829):
 1. ロッシニアーナ 第1番op.119
  (オテロ、アルジェのイタリア女、アルミーダ)
 2. ロッシニアーナ 第2番op.120
  (オテロ、ローマの山賊たち、チェネレントラ、泥棒かささぎ)
 3.ロッシニアーナ 第3番op.121
 (湖上の美人、イタリアのトルコ人、
  ゼルミーラ、リッカルドとゾライデ)
 4. ロッシニアーナ 第4番op.122
 (泥棒かささぎ、エジプトのモーゼ、シャブラムのマティルデ)
 5. ロッシニアーナ 第5番op.123
  (セビリアの理髪師、タンクレーディ、チェネレントラ、泥棒かささぎ)
 6. ロッシニアーナ 第6番op.124
  (セミラーミデ、湖上の美人、コリントの包囲)
 7. 大序曲 op.61 8.「スペインのフォリア」による変奏曲
 9. ヘンデルの主題による変奏曲 op.107
ジューリオ・タンパリーニ(ギター)
「望遠鏡を逆さにしてギターを見ると、そこにオーケストラが見える」(ベルリオーズ談)いや、まさにそのとおり! というほかはない多彩な表現は、この稀代の名手ならでは!ギター1挺でオペラの名場面を甦らせる、鮮烈技量。ファン待望の「全曲収録」で登場!

ベートーヴェンやロッシーニが活躍した19世紀初頭、ギターという楽器がヨーロッパ中で大流行したのはご存知のとおり。かのパガニーニも一時期ギターにのめりこんで練習しまくったそうですし、シューベルトの歌曲にもいたるところでギターめいた響きが聴かれたりしますが、そんな時代にあって、“オペラの本場”ローマを制したのち、“古典派の都”ウィーンを席巻した天才ギタリストがいました——それがマウロ・ジュリアーニ。
ギター・ファンにはもはや紹介の必要もないでしょうが、「ギターのベートーヴェン」と賞されたF.ソルと並んで、晩期古典派のギター音楽を代表する巨匠でございます。この作曲家、フルートとギターのデュオやギター協奏曲の数々などでも知られていますが、その本領が何より凝縮された形で示されているのが、「ロッシニアーナ」と呼ばれる、ロッシーニの人気オペラからのメロディをあざやかな幻想曲仕立てにまとめた充実独奏曲の数々! なにしろ元ネタはロッシーニ、メロディセンスは絶妙そのもの——そしてこれを料理するのが、ギターという楽器を知り尽くしたジュリアーニ! 華麗さと緻密さのあいまった濃密なギターの響きが次から次へとコントラスト鮮やかに、各15 分も続く充実ぶりで、全6 曲どれをとってもギター・リサイタルの大トリにもってきて映える内容(「元ネタを知っているか」なんて、この傑作の鑑賞にはあまり関係ありません)。かなりの人気曲だけに競合盤も多い…?と思いきや、これが意外に「全曲録音」は2,3あるかないか(あっても廃盤?)で、ひとつは19 世紀ギター。19 世紀ギターのマンドリンにも似たオリジナルな響きもよいのですが、これほどまでにギターの可能性が追求された傑作だからこそ、「とんでもない名手による現代ギターの圧巻名演」で堪能したい…と思うのは、ギター好きならずとも必然の流れでは。
本盤のタンパリーニは、ご存知Concerto レーベルでタレガの傑作全集(CNT2001・レコ芸特選)を残したイタリアの天才(つまり、ジュリアーニの同郷人)。かっちり精緻&完璧な技巧もあらたかに、スペイン人とは違う「オペラ向き」の歌心がきれいに決まり、ギターから引き出しうる響きの可能性をすべからく堪能させてくれます。ギター1本で「序曲」を弾ききった大作含め、併録の3曲も豪華そのもの。ファンならずとも損はさせない、高評価必至のアルバム!
CNT2038
(2CD)
(国内盤)
\4515
ステッファーニ:六つの室内ソナタ
アゴスティーノ・ステッファーニ(1650〜1728):
 『ヴァイオリン2部、ヴィオラとバスのためのソナタ・ダ・カメラ集』
 (1700 年頃アムステルダム刊)
 1. ソナタ第1番(歌劇『オルランド』序曲 他)
 2. ソナタ第2番(歌劇『エンリコ獅子公』序曲 他)
 3. ソナタ第3番(歌劇『アレッサンドロ』序曲 他)
 4. ソナタ第4番(歌劇『息の合った仇敵』序曲 他)
 5. ソナタ第5番(歌劇『アルチビアーデ』序曲 他)
 6. ソナタ第6番(歌劇『運命の勝利』序曲 他)
エラスムス四重奏団&
イジドロ・タッカーニ(cmb)
北はハノーファーから南はヴェネツィアまで、アルプス南北をまたにかけた「歌劇王」の器楽曲が出版されていたとは——! 人気のほどを裏付ける、混合様式のオペラ抜粋が組曲仕立の室内ソナタに。本場の古楽解釈は濃淡あざやか、エッジが利いて興奮必至!

アゴスティーノ・ステッファーニといえば、ヴェネツィア出身ながらハノーファーの宮廷で「本場イタリアから来た作曲家」として大事にされ、この北方の地にオペラの快楽を教えた巨匠——英国に渡る直前のヘンデルは、このステッファーニの後任ということでハノーファーの宮廷に迎えられたのでした。若い頃にはミュンヘンにいて、フレスコバルディ直系の弟子ケルルから教えを受け、そのことが縁で「声楽曲のメッカ」ローマでたっぷり修業を積み、練り上げられた対位法のうまさと手際よい旋律センス、音楽展開を面白くする抜群のリズム...と、素人にも玄人にも受けのよい作曲技巧を完璧にそなえたステッファーニは、1680 年代から90 年代にかけ、ハノーファーを西欧随一の音楽都市に育て上げています。しかし悲しいかな、声楽曲メインのキャリア形成ゆえ、日本ではその魅力がどうも未開拓な気が——
そこへ、声楽が苦手の方々にもストレートにステッファーニ芸術の核が伝わる、全編すべて器楽ばかり&ばっちり古楽器演奏のすばらしい録音が登場してくれました! 驚いたことに、1700 年頃にはステッファーニの国際的な名声から売れ行きを確信した楽譜出版社ロジェが、「バロック期の楽譜出版のメッカ」アムステルダムで、ステッファーニのオペラから器楽合奏部分を集め、6編のソナタ・ダ・カメラ(序曲+舞曲の連続というスタイルの合奏形式、つまり組曲ですね)として出版していたのです(ちなみに、ロジェはヴィヴァルディの「調和の霊感」やコレッリの「作品5」を世に送り出した出版社)——コレッリの端正なソナタとは違って、これらの組曲的ソナタは劇場的でドラマティック、細かな舞曲が次々と連なる変化に富んだ構成が実にエキサイティング!
現代楽器による近代作品演奏でも高い評価を得ているイタリアのエラスムス四重奏団が、あのイタリア特有の古楽奏法のうまみを活かし、ラテン的エモーションを随所でグイグイ利かせて、その面白さをぞんぶんに味あわせてくれます。1曲ごと各15 楽章以上(!)、テレマンやファッシュ、ルベルら仏独18 世紀の舞踏組曲が好きな方なら、その原型をここに見ることができるでしょう——合奏による舞踏組曲は「フランス→ドイツ」という流れで成立したのかと思いきや、その過程で「ドイツ在住イタリア人」が意外な貢献をなしていたとは…バロック・ファン必聴の、充実アイテム

CYPRES

MCYP1656
(国内盤)
\2940
G.モリーニ 『セルヴァボ』 三部作 第一部
 「いのちをもたらす聖霊、いのちの力」
グイード・モリーニ(1959〜)
 オラトリオ「いのちをもたらす聖霊、いのちの力」
Ens.アッコルドーネ マルコ・ビズリー(T)
エリザベッタ・デ・ミルコヴィチ(S)
クラウディア・カファイン(A)
カレン・ペーテルス(hrp) ヤープ・クライトフ(vc)
エトヴィン・デルド (fg) グイド・モリーニ (org)
ヘールト・ヘンドリクス 指揮
ヘリコン合唱団、ユーテルプ合唱団
大好評!!の鬼才古楽歌手マルコ・ビズリー&アッコルドーネ、待望の新作は異能の古楽鍵盤奏者モリーニによる、「ルネサンス=バロックの作曲法による新作楽曲」!あきらかに古楽な響きなのに、確かに「いま」らしいー—ファン必聴の、注目サウンド!ナポリ生まれのマルコ・ビズリーとアンサンブル・アッコルドーネ…といえば、昨年5月の来日公演も大好評、古楽界きってのスーパー鬼才集団。Alpha での一連の録音もさることながら、Cypres 移籍後も好調なリリースを続け、テノールからカウンター直前の高音まできれいに繋がる独特の地声で、あざやかにファンを魅了しつづけてきたビズリー…もさることながら、このアンサンブルのもうひとりの仕掛け人が、古楽演奏には欠かせないリアリゼーション(楽譜補筆)も担当する多彩な鍵盤奏者、グイード・モリーニ。しばしばアッコルドーネのために書き下ろし作品も作曲している彼が、今回Cypres のアルバム録音まで視野に入れ、連作オラトリオ『セルヴァボ(わたしは見守っているだろう)』のプロジェクトをスタートさせました。3連作は「父なる神」「その子イエス・キリスト」「聖なる霊」からなる聖三位一体を扱ったもの。この第一部では、イエス・キリストの受難と昇天を通じて、「聖なる霊」について想いを馳せる、という内容になっています。ともあれ!ライヴ中心で活動を続けてきたアッコルドーネが、この種のモリーニ書き下ろし作品を(ライヴ収録ではなく)正規録音するのは初めて——その音楽内容は、知らずに聴いたら「??古い音楽?…だけどルネサンスのようでもあり、バロックのようでもある?」と思うに違いありません! 古い時代の演奏法のみならず、当時の作曲法まで知らなければできないリアリゼーションを日常茶飯事的にやっていることもあり、モリーニが書いた音楽は完全に「当時の書法」をそのまま応用したもので、そういった感想に辿り着いても何らおかしくはない仕上がり。そのうえ彼は「いま」の人としてのバランス感覚もありますから、畢竟、私たちの心のツボをつく書法がいたるところに潜んでいるという仕掛け…! アッコルドーネの器楽隊もさることながら、少数精鋭の合唱隊も一糸乱れぬ求心力(Melophoneレーベルで、デュリュフレ「レクィエム」を聴かせてくれた、あの忘れがたい名団体です)。ソプラノ2声が無伴奏でうたいはじめる清らかな冒頭部から、ビズリーの美しいグレゴリオ聖歌歌唱、静かに興を添える簡素な伴奏楽器群…と、最後まで聴きどころは尽きません。ファン待望の新リリース、ぜひご注目を!

FUGA LIBERA

MFUG549
(国内盤)
\2940
ニコラ・フィオレンツァ(1700 頃〜64):
 1. リコーダー協奏曲 へ短調(1728)
 2. チェロ協奏曲 ニ長調(1728)
 3. 三つのヴァイオリンと通奏低音のための協奏曲 イ短調
 4. ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調
 5. チェロ協奏曲 ニ長調
 6. シンフォニア イ短調(1726)〜
   リコーダー、2挺のヴァイオリンと通奏低音のための
ステーファノ・デミケーリ指揮
Ens.ドルチェ・エ・テンペスタ(古楽器使用)
《ソロ》ニコラス・ロビンスン、
マウロ・ロペス=フェレイラ(Vn)
マルコ・テストーリ(Vc)
トマーゾ・ロッシ(リコーダー)
《通奏低音》エドゥアルド・エグエス(リュート)
ステーファノ・デミケーリ(チェンバロ)
ついに出ました! ペルゴレージの同時代人、古典派前夜のナポリで暴れまくった南国のルクレールかフォルクレか、「過激派タルティーニ風」のサウンドは痛快そのもの!ソロはイタリア諸団体で腕を磨いたスーパー奏者揃い、通奏低音には「あの名手」も...!

Alpha がマッテイスを紹介するなら、同じグループ下のFugaLiberaも、ナポリつながり?で「知られざる、とほうもない巨匠」のアルバムをリリースします!マッテイスが多少なりと知られた存在だったとすれば、こちらはほぼ全曲世界初録音——ペルゴレージ、ヨンメッリ、ポルポラといったナポリ楽派のオペラ作曲家たちがヨーロッパ中で名声を馳せていた18 世紀前半、なんとこの南イタリアの音楽都市では、器楽奏者にもとんでもない鬼才たちが腕を競わせていたのでした。そうしたレヴェルの高い街の有名な王立ロレート聖母音楽院で弦楽器科の教諭をつとめ、さらに王室楽団でも大活躍したヴァイオリン奏者=作曲家が、本盤の主人公、ニコラ・フィオレンツァ。
近年まで音楽史研究の現場ですらまったく無名だったこの作曲家、激しやすい天才肌で、ひどい暴力教師だったらしく、それが理由で音楽院から追放されてしまったあとは急速に忘れ去られたそうですが、その気質も反映されているような数少ない作品群たるや、ドラマティックな展開、あざやかなコントラスト、えもいわれぬ旋律美…と、晩期バロック〜ロココ期ならではの「ひたすらカッコイイ、耳に快適、深みたっぷり!」な魅力がぎっしり詰まった傑作ぞろい!ナポリ楽派研究者たちが興奮気味に再発見に意欲を燃やしているのも、まったく頷けます——
ヴィヴァルディの短調協奏曲が好きな方、「悪魔に魂を売った」タルティーニの曲がみなあまりに清らかでお困りの方、このエッジの聴いたサウンドはクセになります!なにしろ演奏陣はごらんのとおり、イル・ジャルディーノ・アルモニコやらカペッラ・デイ・トゥルキーニやらイタリア古楽界最前線で活躍する腕利きぞろい(来日間近のエグエス氏まで参加してます)!
MFUG547
(国内盤)
\2940
ラヴェル(1875〜1943):
 1. ピアノ三重奏曲
 2. ヴァイオリンとチェロのためのソナタ
 3. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
トリオ・ダリ クリスティアン=ピエール・ラ・マルカ(vc)
ヴィネタ・サレイカ(vn)
アマンディーヌ・サヴァリ(p)
「これぞ完璧なトリオ」(メナヘム・プレスラー(ボザール・トリオ)談)...いやまさにその通り!まるでブーレーズの指揮のよう? 曲構造をしっかと踏まえ、響きわたる絶妙・精妙な音楽美!!2008 年の大阪国際室内楽コン優勝はダテじゃない、飛びぬけた才人たちの傑作録音!

ベルギーのFuga Liberaは毎年のように新進気鋭のアーティストを掘り起こし、デビュー・アルバムを世に問うていますが、嬉しいことに日本では、2006 年のプラメナ・マンゴヴァ(MFUG217・日本では2007 年リリース)、2007 年のミロシュ・ポポヴィチ(MFUG528・日本では2008 年リリース)…と、この種の新人発掘アイテムが必ず「レコ芸特選」に輝いており、抜群のマーケット適性を示してくれています。
そして——2008 年末にリリースが予定されていたものの、若干ズレ込んで只今登場の——同種シリーズの最新盤も、まさに新時代の名演登場!
ドビュッシーのそれに比して、ラヴェルの室内楽のアルバムは「あるようで意外とない」のではないでしょうか(近年ではカピュソン&ブラレイの熱い1枚くらい?)。Saphir レーベルの大御所たちによる室内楽作品集(LVC1044・ペヌティエ=パスキエ=ピドゥーの3人が参加)が「レコード芸術」「朝日新聞試聴室」といったメディアで大好評を賜った直後、好調な売れ行きをみせているのも、「新録音が意外とない!」という事情が1枚かんでいる気がします。しかしペヌティエらの録音にせよ、他の現行盤にせよ、基本的には「巨匠たちによる本格的な演奏」が現行のラヴェル室内楽盤の大半な気が…
そこへゆくとこのアルバムでのトリオ・ダリの演奏は、ノンヴィブラート精妙系、冒頭いきなり違いを感じさせる、今までになかった「21 世紀のラヴェル像」を打ち出しにかかる飛びぬけぶり!若手的な気負いはまるでなし、肩の力の抜けた、只者ではない落ち着きっぷり——「風格」と呼んでも差し支えないでしょう——で、曲構造を完璧に見据えながら、各パートの自発性たっぷりに弾き進めてゆくスタイルは、ピエール・ブーレーズの指揮にも通じるような透明感が。
そのじつ、全員すごくインテンスな熱情を奥に秘めているようで、それが室内楽全体の響きとなってクライマックスを盛り上げるのです! ピアノなしの、批評家アンドレ・マルローが「ラヴェル屈指の傑作」と褒めたたえたヴァイオリンとチェロのためのソナタでも、きわめて洗練された唐草模様のように「戦わずして精緻に絡み合う」といった感じの絶妙アンサンブルがたまりません!霊妙なヴァイオリン・ソナタ含め、精妙路線で作品像をさらりと一新してくれる、不思議な名演…!

GRAMOLA

GRML 98847
(国内盤)
\2940
ハイドン生家のフォルテピアノで聴く
ハイドン:四つのピアノ・ソナタ
 1.ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI-38(1780 頃)
 2. ソナタ ト短調 Hob.XVI-44(1770 頃)
 3. ソナタ 変イ長調 Hob.XVI-46(1770以前)
 4. ソナタ ハ短調 Hob.XVI-20(1771 頃)  
リチャード・フラー(フォルテピアノ)
使用楽器:1782 年、A.ヴァルター・タイプ
  (ローラウ、ハイドン生家の博物館所蔵)
さっそく盛り上がりをみせるハイドン・イヤーの音盤シーンに、いきなり波紋を投げかけるすばらしく充実したクールなアイテムが登場! 磨き抜かれたタッチの「主」は、フォルテピアノ界の隠れ大御所——作曲者がイメージした響きそのまま、なんて正統的!コンサート・シーンでは、ブリュッヘン&新日フィルによる「天地創造」&ロンドン交響曲群がすばらしい実績をあげた傍ら、弊社のハイドン・アイテムもじわじわ意外な「伸び」を見せており(とくにRicercar のバリトン八重奏曲…)ハイドン歿後200 周年は玄人筋を中心に、いきなり効果をあげはじめているようで。そんな折も折、この盛り上がりを支えるコアユーザー層の心をがしっとワシ掴みにする充実度満点のアルバムが、ハイドンの故郷オーストリアから届きました! って、これがホントに「故郷直送」なんです——なにしろ録音場所は、ハイドンが生まれた家なんですから!低地オーストリア地方(ニーダーエストライヒ)のローラウにある、ハイドン生家を改装した博物館には、ハイドン自身も数々の交響曲や弦楽四重奏曲を書きまくっていた、人気絶頂の1780 年代に作られたというウィーン式のフォルテピアノが置かれています。これを、アメリカ生まれのウィーンのフォルテピアノ奏者、百戦錬磨の実力派たるリチャード・フラー御大が弾いてしまうという贅沢な企画が、このたび実現してしまったのです! フラーはモーツァルトのソナタ全曲録音をさまざまなレーベルをまたにかけて敢行していますが(小規模レーベルの栄枯盛衰ゆえ、残念ながら入手困難…)、ヨーロッパでは各地の超重要ホール(ウィグモア・ホール、コンセルトヘボウ、ウィーン楽友協会ホール…)でリサイタルを催しつづけている現場の最重要フォルテピアノ奏者だったり。ヴァンハルのような「ウィーン地場の古典派作曲家」にも通じる一方、ハイドンが尊敬してやまなかったC.P.E.バッハにもきわめて造詣の深い、まさにハイドンを弾くなら彼!というほどの人だったりするのですが、いやーもうこのアルバムを聴いて、そうした期待値が120 パーセント実証された感じです——音源も出しますけれど、これ、ホントいいですよ!楽器はモーツァルトとハイドンの両方から絶賛されたA.ヴァルター製作と推察されている逸品ですが、フラーはたおやかで「過不足なし」に古典派にぴったりくるヴァルター特有の響きを、高音から低音までみごとに使いこなし(これが、難しいんです…)、音域ごとの音の違いをみごと弾き分けながら、それがハイドン作品の語り口におよぼしている効果をみごと、さらりと印象づけてくれる・・・モーツァルトやベートーヴェンが決して辿りつけなかった「ハイドンの面白さ」の粋が、最高の形で凝縮した1枚です!
GRML98834
(国内盤)
\2940
シューマン:二つのヴァイオリン協奏曲
 1. ヴァイオリン協奏曲 イ短調作品129
  (チェロ協奏曲からの編曲)
 2. ヴァイオリン協奏曲 ニ短調(1851)
トーマス・アルベルトゥス・イルンベルガー(vn)
マルティン・ジークハルト指揮
スピリット・オヴ・ヨーロッパ
 シューマンのヴァイオリン協奏曲は、2曲あった?! あのチェロ協奏曲を、作曲家自身がヴァイオリン用としても刊行しようとしていたとは——!
 気鋭奏者イルンベルガーが腕利き集団スピリット・オヴ・ヨーロッパと、端正&明快に弾きほぐしてゆく絶妙解釈!!

 「シューマンのヴァイオリン協奏曲」——と聞いて、ああと納得される方は当然、多いことでしょう。シューマン最晩年の管弦楽作品として、昔から数多くのヴィルトゥオーゾたちが折々に録音している傍ら、献呈されたヨーゼフ・ヨアヒムがシューマンの対面をヘンに考慮するあまり楽譜を公表しなかったせいで「シューマン晩期の、精神不安定の産物」なんて烙印さえ押されかかって過小評価もされている、あのニ短調の1編ですね。いかにも、本盤にもこのニ短調協奏曲は収録されています——
 ですが! ここに収録されているヴァイオリン協奏曲は2曲。もう1曲も、れっきとしたシューマン作品という...。
 話は1987 年に遡ります。
 ドイツの音楽学者J.ドラハイムが、ハンブルク州立大学に収蔵されていた(上述の、ニ短調協奏曲をシューマンから献呈された)ヴァイオリニスト=作曲家ヨーゼフ・ヨアヒムの蔵書から、ある協奏曲のソロ・パートの楽譜を発見しました。シューマンお気に入りの写譜師ペーター・フックスの手で写されたこの楽譜、なんとあの「三大チェロ協奏曲」のひとつと目される、シューマンのチェロ協奏曲のソロをヴァイオリン用に直したものでした。しかもシューマン自身の筆跡で書かれた封筒も見つかり、この協奏曲をヴァイオリン協奏曲としても出版しようとしていた彼自身の意向が確認できたのでした(なんでも、彼が音楽監督をしていたデュッセルドルフに満足なチェロ奏者がいなかったせいだったとか…)。
 聴いてみれば、それは確かにあのチェロ協奏曲にほかなりません——しかし、ソロ・パートは軽やかに舞うヴァイオリン。それをただのゲテモノのように終わらせず、シューマン自身の意図をくんで、見事に明晰かつエキサイティングな響きとして息づかせてくれたのは、バドゥラ=スコダ、デームス、イヴリー・ギトリス…と往年の名手たちがこぞって褒めたたえるオーストリア新世代の鬼才、イルンベルガー! オーケストラは、オーストリア有数の名門楽団の奏者をはじめ東西ヨーロッパの精鋭が集う室内管弦楽団、スピリット・オヴ・ヨーロッパ——先頃Extonから出たハンス・ガンシュのトランペット協奏曲集でも、見事な演奏を聴かせてくれた腕利き楽団。
 古楽奏法にもこだわりあり・のイルンベルガーとともに、うよく知られたニ短調の協奏曲も決して難渋にはせず、深みと明晰さを兼ね備えた解釈であざやかに織り上げてゆきます。これを聴かずに、シューマンの管弦楽作品は語れない——大注目の1枚です!
GRML98827
(国内盤)
\2940
クララとローベルト シューマン夫妻のロマンス
 クララ・シューマン(1819〜96):
  1. 三つのロマンツェ 作品11
  2. 三つのロマンツェ 作品21
  3. ロマンツェ イ短調(1853)
 ローベルト・シューマン(1810〜56):
  4. 謝肉祭 作品9
  5. 子供の情景 作品14
 リスト(1811〜86):6. 献呈
  (R.シューマンの歌曲のピアノ独奏編曲)
ナターシャ・ヴェリコヴィチ(p/ベーゼンドルファー)
新世代の名手たちのるつぼセルビア出身、ウィーンで揉まれた知られざる実力派——まろやかな音作りに思わぬ素朴な表情がひそみ、ロマン派の中核へとさりげなく近づくクララ・シューマンの曲は隠れ傑作ばかり、ベーゼンドルファーの響きも絶妙!正直、才能ゆたかなピアニストというのは昨今いくらでもいるわけで、強烈なオーラで聴き手を圧倒するタイプの人は掃いて捨てるほどいますし、個性派といっても千変万化、今更よっぽどのことでもないかぎり、市場をねじ伏せるほどにはならないのでしょうが。それでもやはり、真の実力派が世界中から集まってしのぎを削る「音楽都市」ウィーンからは天才たちが続出しますし、この街でじっくり活動を続けているピアニストの基本レヴェルが、やはり相当な水準にあることだけは間違いありません。ウィーンに本拠をかまえるGramola レーベルが世に問うてくるピアニストたちには、そうした「さりげなく聴き手をニヤリとさせる実力派」が、なんと多いことでしょう——活動歴もすでに短くないのに、国際舞台でCD リリースをしてこなかった本盤の隠れ名手ヴェリコヴィチも、まさにそうした一人なのです。さて、本盤のコンセプトは「ローベルトとクララ」。つまりシューマン夫妻のピアノ作品を、彼らの活動と愛の歴史を横目に見つつ堪能させてくれるプログラムなのですが、まず選曲が絶妙。つとに有名な「子供の情景」と華麗なピアニズムの生きる「謝肉祭」という2大作を核に、クララ・シューマンの「ロマンツェ(ロマンス)」を2集プラスワンの計7曲——ローベルトの作品に引用されたクララの曲、というような組み合わせにはせず(そうすると、どうしてもクララ作品が「従」の立場になってしまうものです)、磨き抜かれたクララ作品ばかりを集め、ローベルト作品と交互に聴かせることで(CD 上の曲順は上記1〜5〜3〜2〜6〜4)、両者を互いに刺激しあう対等な作曲家として扱っているのです。甘美さと情熱の奔流がひとつに詰まった小絵画のごとき「ロマンツェ」7作は、ベーゼンドルファーのまろやかな味をたくみに引き出すヴェリコヴィチのピアニズムで何とも親密に、説得力豊かに、夜の打ち明け話のように聴き手の心に響いてくる——対するシューマン作品も、リスト編曲版でも、この「親密さ」ががぜん生きてくるのです。超絶技巧をものともしない腕達者なのに、そこは強調せず…というのも好感度大!祖国セルビア・ローカルで数枚CD 出したきり、といいますが、なかなかどうして、世界的に通用する逸材ではありませんか…と嬉しくなってしまいます。貴重なクララ作品の音源・という枠を超えた、極上ロマン派ピアノアルバムです!

RAMEE

RAM0805
(国内盤)
\2940
ヴェネツィアに、バロックの芽生えるころ
 〜モンテヴェルディの先駆者たち、追従者たち〜
ジョヴァンニ・バティスタ・リッチオ(1570 頃〜1630 頃):
 1.4声のソナタ
 2. カンツォーナ4編:
  「ラ・フィネッタ」・「ラ・サヴォルディ」
  「ラ・ピッキ」「ラ・グリレッタ」
カルロ・フィラーゴ(1589〜1644):
 3. 神よ、わが声をお聞きください(4声)
 4. 天よ、讃えられよ(2声と通奏低音)
 5. あなたの慈悲の庇護のもとへ(協奏様式)
 6. 我は我なり(協奏様式)
 7. 神よ、あなたを愛します(協奏様式)
 8. 神に感謝し、その名を思え(協奏様式)
 9. おお、汝ら、わが最愛の友(3声)
 10. あなたはなんと麗しく(高音2声)
クラウディオ・メールロ(1533〜1604):
 11. トッカータ(スピネッタ(小チェンバロ)独奏)
ジョヴァンニ・バッサーノ(1558 頃〜1617):
 12. 別れにさいして、なお
ビアージョ・マリーニ(1597〜1665):
 13. 3声のソナタ「フォスカリの娘」
ジョヴァンニ・ピッキ(1571 頃〜1643):
 14. カンツォーネ 第15 番
Ens.インスルメンタ・ムジカ(古楽器使用)
さすがは秀逸古楽レーベルRAMEE、ヴェネツィア・バロックでも一枚上手のサウンド——!モンテヴェルディと同時代、丁々発止とからみあう各声部がたまらない「協奏様式」のいちばんおいしいところを、ヨーロッパ最前線のウマすぎる名手たちが華麗に料理!

ベルギー古楽界のさまざまな名門団体で腕を磨いたバロック・ヴァイオリン奏者ライナー・アルントが主宰するRAMEE レーベルは、現場で細やかな音に耳をすませてきた古楽奏者ならではのセンスで、誰も聴いたことのない美しい響きを美麗パッケージにまとめあげる、ヨーロッパ随一の極上古楽レーベル!
今回の新譜は「モンテヴェルディと同時代のヴェネツィア」、つまりこの音楽都市にバロック様式が芽生え、いかにして「対比」を旨とする「コンチェルタンテ(協奏)様式」が広まったかを追うプログラム…と聞けば「そんな盤けっこうあるでしょ」と思った方も多いでしょうが、いえいえいえ!ドイツやイタリアの古楽界最前線で揉まれまくっている新世代の気鋭奏者たちが奏で&歌い上げるサウンドは、マクリーシュやパロットら英国勢のアプローチとはどうしたものか一味違う、深みと清らかさが奇妙に同居する、ユニークな魅力あふれる響きになっているのです!
なんとも説明しにくいのですが、ソプラノの美はル・ポエム・アルモニークの花形C.ルフィリアトルに似た清らかさ、楽器群はヴァイオリン2にバロック・トロンボーンの猛者数人(!)、秀逸な自然派録音によって「こだま」の効果も絶妙…といったあたりがキモでしょうか。何しろ録音技師は主宰者アルント本人、古楽奏者ゆえの耳の良さが、各楽器の「空気のふるわせ方」をみごと捉えた成果なのですね。
登場する作曲家では、鬼才ルッツァスキの弟子フィラーゴなる天才が大々的にフィーチャーされていますが、その多彩な作風に驚くためだけでも(晩期ルネサンス風から、縦横無尽の協奏様式まで自由自在——なんでこんな人が無名だったのか?)このアルバムを手にする価値は充分すぎるほど、あります。例によってDigiPack も美麗そのもの!!

RICERCAR

MRIC280
(2CD)
(国内盤)
\3885
シュッツと、ヨハン・セバスティアーニ
 〜17 世紀ドイツ、受難と復活のオラトリオ〜
 ハインリヒ・シュッツ(1585〜1672):
  1. イエス・キリスト十字架上の七つの言葉
  2. イエス・キリスト復活の物語
 ヨハン・ゼバスティアーニ(1622〜83):
  3. マタイ受難曲(1672)
リチェルカール・コンソート(古楽器使用)
アニェス・メロン、グレタ・ド・レゲル(S)
マーク・パドモア(T)
ヴァンサン・デュメストル(テオルボ)
シーブ・ヘンストラ(cmb) 他
リチェルカール・コンソート黄金期の、あまりに豪華な面子ならではの絶妙サウンド!復活祭シーズンにおくる注目のリリースは、「17 世紀のヨハン・ゼバスティアン」??バッハへとつづく道を、古楽ファン垂涎のハイクオリティ解釈でじっくり堪能——!!ベルギー随一の老舗古楽レーベルRicercar は、2000 年頃にいちどレーベルを休止したさい、それまでのアイテムをすべて廃盤にしてしまいましたが、21 世紀に入り経営体制が再び軌道に乗ってからは、掘り出し物が山のように詰まっている過去の録音を、新たなテーマ性のもとに再パッケージし順次リリースしてくれています。なにしろ「過去」といっても一番古いところで1970 年代、大半は1980〜90 年代の、古楽大国ベルギーがヨーロッパじゅうの古楽界をリードしていた「黄金時代」の録音ばかり、新鮮さの点ではまったく欠けたるところがないばかりか、今では考えられないような豪華メンバーが一堂に会した傑作録音だらけ! とりわけ、21 世紀のヨーロッパ各国で古楽界をリードしている天才たちが登竜門的に活躍していたリチェルカール・コンソートは、演奏陣の豪華さで他の追従を許しません! ここにリリースされた復活祭シーズン向けのダブルアルバムでも、アニェス・メロンや寺神戸亮といった大御所、昨年来日で話題となった名歌手マーク・パドモア、もうすぐ来日!のル・ポエム・アルモニークを率いる俊才ヴァンサン・デュメストル(!!)らがずらずら名を連ね、メンバー一覧からソリストでない人物を探すほうが困難なほど…! アルバムのテーマは「受難節から復活祭へ」——復活祭の前、キリストの十字架上での死をいたみ節制と瞑想にふける「受難節」に演奏された2作品と、復活祭の喜びを精緻な筆致と神秘的なサウンドで祝うシュッツの『復活の物語』という3大作がじっくり、信じられないほど表現力豊かな演奏でよみがえります(歌詞を見なくても、聖書物語さえ知っていれば、音だけで何を表現しているか伝わってくるほど…)。シュッツに師事したとされるヨハン・ゼバスティアーニなる作曲家は、半世紀後に大バッハも楽長となるヴァイマール宮廷に仕えた人——奇しくも、バッハとシュッツ、両巨頭の作例の架け橋となるような内容になっている『マタイ受難曲』の音楽は、ヴィオラ・ダ・ガンバ四重奏もヴァイオリン&通奏低音も登場する折衷的な作法が極めて面白く。こんな快作があると、古楽発掘はやめられませんね!
MRIC 276
(国内盤)
\2940
バッハ:オルガン精選傑作集
 〜2008年の新発見曲
 「神が、われらのそばにおられぬ時」BWV1128 を含む〜
 1. ファンタジアとフーガ ト短調 BWV542
 2. コラール「神が、われらの傍におられぬ時」BWV1128
 3. トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
 4. コラール「神はわれらが固き砦」 BWV720
 5. ドリア旋法によるトッカータとフーガ ニ短調 BWV538
 6. コラール「キリストは死の縄につき給えり」BWV718
 7. 三つのフランス風オルガン小品 ト長調BWV572
 8. コラール幻想曲「さらば、汝に決別せん」BWV735
 9. パッサカーリャ ハ短調 BWV582
ベルナール・フォクルール(org)
使用楽器:フローニンゲン(オランダ東北部)、
聖マルティン教会のシュニットガー・オルガン
ヨーロッパ北部現役最大のオルガニストのひとり、まごうことなき巨匠フォクルールがようやく!ようやく! 再びバッハに立ち向かってくれました——! 1枚でこんなに豪華、「鼻からナントカ」をはじめ超・有名曲から最新発見作品まで、あまりにも巧すぎる...!ベルナール・フォクルール——まだ50 そこそこの年齢でありながら、どう考えても在命中のオルガニストのなかで指折りの存在というほかはない、世界的巨匠。祖国ベルギー内外での旺盛な演奏活動・教育活動を続け、あっという間に世界随一の存在となったこの天才奏者が、21 世紀のいま、あらためてバッハの録音に乗り出しました。もっともフォクルールはこれまでにもバッハ作品の録音を行っている...どころか、1982 年から15 年がかりでRicercar にバッハのオルガン作品全集録音を敢行、今では廃盤になっているとはいえ、この録音こそがフォクルールを世界的に有名にしたといっても過言ではないほど。しかしその後、彼は意識的にかバッハ作品を離れ、むしろ「バッハ以前」の作曲家たちをことさらに録音しつづけてきました(弊社扱の国内盤仕様でも、先頃完成されたブクステフーデの全集(MRIC250)と、その先達トゥンダーの作品集(MRIC239)が手に入ります)。そうした「バッハ以前」でのきわめて豊富な経験をへて、まさに音楽史の流れを自ら時系列で検証した末に、今回のアルバムは2008 年に録音されたのです——あらゆる細部へのこだわりが、まったく自然にこなされる、この、至高の名演の連続!バッハ作品を聴き慣れていようといまいと、オルガン音楽に親しんでいようといまいと、この「さりげなく高貴」な音作りに魅了されずにいろというほうが難しいと思います! 使用楽器はオランダ東北端、北ドイツともゆかりの深い地域にある、17 世紀ドイツ=オランダ北方きっての名工シュニットガーが手がけた銘器。高音域から足鍵盤の重低音まで明晰な響きがうつくしいこの楽器で、あの有名な「トッカータとフーガ」BWV565 も、パッサカーリャも、壮麗な「ドリア式」も、強烈にみずみずしい存在感で迫ります。そしてこの録音の嬉しいポイントは、去年3月に新発見されたばかりのコラールBWV1128 まで収録されていること!さすが高度情報化社会だけに「こういうものは速度が命!」という段階は昨年前半でとうに終わり、これで4つめくらいの録音ですが(ただ、国内盤ではこれが「初」のはず)演奏を選べる中なら、断然この名手の解釈で聴きたいもの。たった1 枚にバッハ世界を凝縮した、満足度120%の傑作盤です!

SAPHIR

LVC1047
(国内盤)
\2940
イェルク・デームス(ピアノ)
 ヨーゼフ・クリップス指揮
 オイゲン・ヨッフム指揮
ベートーヴェン:
 1. ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37
  (録音:1970 年7 月28 日、ブレーゲンツ音楽祭
 2. 三重協奏曲 ハ長調 作品56
  (録音:1971 年1月、ブレーゲンツ音楽祭
イェルク・デームス(ピアノ)
(1)ヨーゼフ・クリップス指揮
ウィーン交響楽団
(2)オイゲン・ヨッフム指揮
ウィーン交響楽団
ミヒャエル・シュニッツラー(ヴァイオリン)
ヴォルフガング・ヘルツァー(チェロ)
巨匠デームス、躍進のころ——1970 年、古くも新しくもある「よき時代」のオーストリア楽壇で2巨頭のタクトと共演した、みずみずしくも風格ある至高の名演(「ヨッフムの三重」は唯一)!三重協奏曲での「知る人ぞ知る」ソリストふたりも絶好調。オールド・ファン感涙の響きです!

バドゥラ=スコダやグルダとともに「ウィーンの三羽烏」と並び称され…なんてお決まりの紹介が半世紀くらい使われてきたイェルク・デームス御大、もう四半世紀も前からそんな「お約束のマクラ」とは関係なしに、フォルテピアノ奏法の開拓をはじめ独自の境地を築いてきました。が、リヒテンシュタイン公国のイェルク・デームス財団が有する音源を使いリリースされたこのアルバムは、そんなウィーンきってのピアニストが「三羽烏」から「現代ウィーンを代表する巨匠」として深みを増しつつあった、いわば最もアツい時期である1970〜71 年頃に収録された、きわめて貴重な名演の記録です。
1928 年生まれのデームスは40 代になったばかり、古き良きウィーンの薫りをまだまだ残したウィーン交響楽団を振る指揮者は、独墺系ヒストリカル・ファン垂涎の2大家、ヨーゼフ・クリップスと、オイゲン・ヨッフム!! むしろこちらが目当て、という御客様も多いことでしょう——なにしろワインガルトナー直系のウィーンの伝統をひくクリップスは、この録音の年から当のウィーン響で音楽監督に就任してから僅か4年後に亡くなるわけで、交響曲録音から10 年後、晩年のベートーヴェン録音として貴重な音源(Philipsでのモーツァルト交響曲群の少し前ですね)!
そして同じ1902 年生まれの巨匠ヨッフムも、「三重協奏曲」を録音しているのはなんと、この音源が唯一なのだそう! ウィーン響から悠々と風格あふれる響きを引き出し、まさに「脂の乗った」という表現がぴったりなデームスのベーゼンドルファーと、知る人ぞ知る「ウィーンの弦」シュニッツラー&ヘルツァー2名手のワクワクするような歌心と、充実そのものの音楽を織り上げてゆく——あらがいがたく「あの頃の巨匠はすごかった」と感服するしかない快演です。一方「第3番」でのデームスは、スタインウェイから確たる技巧で、完膚なきまでに磨き上げられた解釈を打ち出し、ガツーンと心打つクリップスのタクトと至高の名演をつむいでゆきます。どちらの音源も、現在安定供給されているのはSAPHIRの本盤だけ!
LVC1100
(国内盤)
\2940
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ(全3曲)
 1. 第1 番 ト長調 作品78「雨の歌」
 2. 第2番 イ長調 作品100
 3. 第3番 ニ短調 作品108
パトリス・フォンタナローザ(ヴァイオリン)
エミール・ナウモフ(ピアノ)
純然たるフランス派にしてイタリア気質——名匠フォンタナローザ、やっと室内楽も本気で録音するようになってくれました! あでやかで繊細、こんなにうつくしいブラームスがあったでしょうか——しかも伴奏はナウモフ御大、稀有のデュオです!

パトリス・フォンタナローザ——この名をどこかで目にしたことのある人は、意外と多いはず(って、ご存知の方からすれば、なんて口はばったいご紹介でしょう)。ローマ合奏団のソリストだったり、マゼール指揮のCBS 盤ヴィヴァルディ「四季」でソリストの一人になっていたり、そうかと思えば風格あふれるポートレートをジャケットにEMI でアンコールピース集を作ってみたり、ひょっこりブーレーズの自作自演ものにソリストとして登場していたり…一見つかみどころのない「多芸なる才人」、実はパスキエ兄弟の父ピエール・パスキエや、かのカルヴェSQ の巨匠ジョゼフ・カルヴェらに師事してきた(つまり古くはヴィオッティやバイヨまで遡る)まごうことなきフランス派の継承者にほかなりません。そしてその名にたがわず、イタリア系らしい歌心や当意即妙のぬけめない南国人気質が、その芸術性にえもいわれぬエスプリと情感をただよわせている——いってみれば、ジーノ・フランチェスカッティとイヴリー・ギトリスの良いところが一人の人格に溶け込んだような、そんなヴァイオリン芸術家なのです。そのかたわらパリ音楽院の名教師としても知られ、近年では「あの」ネマーニャ・ラドゥロヴィチを門下から輩出していたり…この侮りがたき才人、もうかなりのヴェテランなのに(1942 年生まれ)なぜか録音シーンにはあまり本格参入してくれていなかったのですが、ここでようやく「フランスの名人は逃さないSaphir」ががっちり捕まえ、ブラームスの傑作3曲というとんでもない王道ど真ん中の名盤をつくりあげてくれました! パートナーもパリ音楽院系、今や「フォーレ『レクィエム』のピアノ独奏版」(LVC1007)が好評を賜っているエミール・ナウモフ! 詩的情緒と知性を兼ね備えたこのピアニストの確かなピアニズムが、フォンタナローザの酩酊に絶妙の節度をあたえているのか、どの曲も熟れきっているのに全く崩れない、ひたすら甘美だが形式感にも事欠かない、まったくもって絶妙のブラームス像に仕上げているのです! フランス的高雅さが、ドイツ的夢想をこれほどまでに受け止め、歌わせるとは...! 弦楽器ファン、室内楽ファンはもちろん、こくのあるブラームス体験が欲しければ文句なしにお薦め、いや「聴かねば語れない」充実の1作です!
LVC1082
(国内盤)
\2940
ラフマニノフ(1873〜1916):
 1. チェロとピアノのためのソナタ 作品19
 2. ヴォカリーズ 作品34
ショスタコーヴィチ(1906〜75):
 3. チェロとピアノのためのソナタ 作品40
クセニヤ・ヤンコヴィチ(チェロ)
ジャクリーヌ・ブルジェス=モヌリ(ピアノ)
知る人ぞ知るセルビア系ロシア人の実力派が、ロシアの傑作ふたつでSaphir に登場!絶妙のラインぎりぎりで保たれる抑制ゆえに、なんと端正な響きが聴こえることか——うつくしく滋味あふれるチェロ、これぞ絶美の晩期ロマン派。けだかく、あたたかく...!

クセニヤ・ヤンコヴィチ、ご存知でしょうか? セルビア人とロシア人の血をひくこの名手、セルビア(当時はユーゴスラヴィア)の首都ベオグラードでデビューしたのが1970 年、いかに若かったとはいえ、その後あの難関カサド国際コンクールで優勝し東西世界に名を轟かせたのも1981 年ですから、もうヴェテランどころか「大御所」といってよいくらい。しかし悲しいかな、積極的に録音シーンで野心を見せるわけでも、来日経験を重ねたわけでもなく、知名度はやはり低いのかもしれません。実は録音はちょこちょこ続けているのですが、それがメジャー性に乏しいだけ——知名度の低い作曲家の室内楽やロッケンハウス音楽祭アルバムへの参与くらいでは、名を売りにくいのは必定かと。そのヤンコヴィチが、なんとSaphir で(「お国もの」の)ラフマニノフとショスタコーヴィチの大作ソナタを録音、名を知らしめるチャンス到来——サンプルを聴いて、あらためてその感性と両曲の親和性に深く感慨をおぼえました。ヤンコヴィチは東西冷戦時代のベオグラードで生まれ、モスクワ音楽院で名教師カリアノフとロストロポーヴィチ(亡命前、ショスタコーヴィチ在命中!)に師事したのち、西側に出てピエール・フルニエ門下にさらなる研鑚を積んだ名手。近年はヴュルツブルク音楽院の教授に就任、ドイツを中心に活躍しているようです。室内楽でもソロでも、ヤンコヴィチのチェロは沸々とたぎる情熱をきれいなラインで抑制し、細すぎない、けれども優しく滋味ある音色で、じつに端正な、形式感覚あふれる音楽をつむぎだしてゆきます。ラフマニノフの長大なチェロ・ソナタ(1901 年、ピアノ協奏曲第2番より少し前の作)は、激情にまかせて弾きまくると胸焼けするような重厚さに堕しかねない難曲だと思うのですが、この人の手にかかるともう、絶妙の押さえ具合できれいな、しかしその奥にスラヴ情緒をじわり感じさせてやまない、味わい深くも爽快な響きで仕上げられ、じつに後味のよい鑑賞体験に!当局の批判にさらされかかっていた1934 年のショスタコーヴィチの書いたソナタの方も、いたずらな誇張を避け、あらゆる室内楽ファンを魅了してやまない充実の解釈を打ち出しています。対するピアニストは天才リパッティの孫弟子、ヤンコヴィチと同世代のフランスの名室内楽奏者——チェリストとの呼吸はぴたりと合って、高度な音楽の喜びをもたらしてくれます。大作2 曲での立ち回りも、絶美の「ヴォカリーズ」での伴奏も、まさに絶品!
LVC1086
(国内盤)
\2940
ギヨーム・ルクー(1870〜94):
 チェロとピアノのためのソナタ(1888)
アラン・ムニエ(チェロ)
フィリップ・ギヨン=エルベール(ピアノ)
フランスきっての重鎮ムニエが、ワーグナー主義全盛の“世紀末ソナタ”に満を持して望む——ひたすら高雅な運弓で描かれる優美な旋律線、艶やかな響き、交響曲のごとき長大さは、まさに天国のよう——ルクー・ファン必聴、チェロ好きにも是非!

19 世紀末のフランス語圏では、どの芸術領域でもことごとくベルギー人の活躍がめだちます。詩人マーテルランク、小説家ロダンバック、画家クノップフ、建築家オルタ…そして音楽ではヴァイオリニストのウジェーヌ・イザイと並び、夭逝の天才作曲家ギヨーム・ルクーの名を忘れるわけにいきませんね。日本の音盤シーンでも古くはボベスコやグリュミオーの弾くヴァイオリン・ソナタが愛されてきたほか、歿後100 周年にはRicercar から壮大なBOX が発売され、大いに話題となりました(これが再発されてくれるよう、弊社からもつとに願ってはおるのですが…)。フランス音楽的な繊細さにも事欠かぬかたわら、さまざまな和音を半音階的にさまよいつつ壮大な楽曲構造を織り上げるワーグナー的作風は、管弦楽作品のみならず室内楽でも鮮やかに発揮されます——その典型ともいうべき大作が、このチェロとピアノのための野心的大ソナタ! 楽曲構造も読み込まずに弾くと(ブルックナーの交響曲などと同じく)あまりの長さに聴き手をうんざりさせかねない難曲なのですが、ばしっと決まった演奏だと「いつまでも続いてほしい...!」と願わずにはおれない、まさに天上的な美が現出するこの傑作、フランスの偉大な演奏家たちが次々と録音を続けるSaphir からなんと、フランス・チェロ界の重鎮中の重鎮、アラン・ムニエ御大による堂々の名演で登場してくれたのです! 78 回転盤(SP)時代の高雅な名演で知られる往年の巨匠モーリス・マレシャルの門下に学び、フルニエやジャンドロンらの「高貴なるフランス式チェロ」の伝統に連なるたおやかなチェロ奏法の担い手ムニエは、バッハ無伴奏から同時代作曲家の新作まで幅広くこなしますが、その芸風が最も生きるのは、やはりこうした後期ロマン派〜フランス近代、それもフランス語圏の音楽こそぴたりと来るのだな、と、本盤のサウンドからはそうした感じがひしひしと伝わります。ムニエはいうまでもなく稀代の室内楽奏者ですが、対するピアニストも「フランス生粋の室内楽ピアニスト」!フィリップ・ギヨン=エルベール、パリ音楽院でベロフやエセールら名手たちに学んだ、室内楽や現代音楽にも臆せず取り組む演奏家で、ただでさえ精妙なそのピアニズムが、ムニエの薫り高い運弓につられてどんどん味わいを増してゆくのも、このルクーのソナタの長大さあればこそ、でしょう。豪奢な年代物ボルドー特級ワインを1本こころゆくまで飲み続けるような、濃密・至高の室内楽名演です!
LVC1087
(国内盤)
\2940
ヴァイオリン・ソナタと三つの世代
 〜メンデルスゾーン、R.シュトラウス、ヤナーチェク〜
 メンデルスゾーン(1809〜47):
  1. ヴァイオリンとピアノのためのソナタヘ長調(1836)
 ヤナーチェク(1854〜1928):
  2. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ(1921)
 リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949):
  3. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ作品18(1888)
ジェラール・プーレ(ヴァイオリン)
ルドミラ・ベルリンスカヤ(ピアノ)
名匠ジェラール・プーレ、最新録音登場! なんとも甘美な熱をはらんで突き進むアレグロ、ここぞ!というところでポルタメントが心とろかす「フランスのヴィオロン」——ピアニストはボロディンSQ 結成時チェリストの娘。まさに室内楽の申し子どうし、極上デュオを展開!度重なる来日公演の成功が示しているとおり、そして並居る名盤の評価にも示されているとおり、日本でも圧倒的な人気が根強く続く「パリ音楽院のヴァイオリニスト」ジェラール・プーレ——この名手が近年好んで録音を続けているSaphir から、待望の最新録音がリリースされました! 今回のプログラムは、室内楽ファン垂涎の、演奏者の解釈姿勢がじっくり味わえる「巨匠たちの傑作ソナタ」3編——メンデルスゾーンが(「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調」と同じく)ゲヴァントハウス管の首席フェルディナント・ダーフィトに捧げた、あの匂い立つようなヘ長調ソナタから、ヤナーチェクが晩年に残した難曲、そして若きリヒャルト・シュトラウスが、室内楽作曲の総決算のようにして世に問うた充実作…と、初期ロマン派・晩期ロマン派・近代それぞれから1作ずつのバランスよいプログラムも嬉しいところ。プーレの弦のたくみさと甘美さは3作それぞれに全く異なる表情をみせ、ヤナーチェクでは深い情感の襞やリズムの交錯が、シュトラウスでは堅固な構築感が、メンデルスゾーンでは颯爽たるスピード感が、実に印象的に聴き手の心を捉えるのです——ただ香気あふれるフランス趣味だけでは完結しない、巨匠の面目躍如!そういえばプーレはフランス派の巨匠フランチェスカッティだけでなく、メニューイン、シェリング、ミルシテインといった世界的な名手たちの薫陶も受けているわけで、そうした伝統もひしひしと感じさせてくれるのです。プーレが室内楽の名手だけに、ピアニストもいかんなき新世代名手が選ばれています。モスクワ音楽院出身の気鋭ベルリンスカヤは、なんと、あの伝説的団体ボロディン四重奏団の結成メンバー、(先月惜しくも逝去した)チェロのヴァレンティン・ベルリンスキーの娘だったり…なるほど、どうりで室内楽の「息遣い」が分かっているわけですね。プーレとの対話の呼吸感は絶妙、互いに助け合い、競い合いながら織りなされるデュオの空気はけだし絶妙。極上の、本物の室内楽の瞬間が、ここに詰まってます!
LVC1057
(国内盤)
\2940
ベートーヴェン(1770〜1827):
 1.六つのバガテル 作品126
 2.ピアノ・ソナタ第29 番 変ロ長調
  「ハンマークラヴィーア」
ピエール・レアク(ピアノ)
 パリ音楽院の知性派教授、作品の偉大さをエキサイティングに確かめるような充実度満点、きわめて明晰な「ハンマークラヴィーア・ソナタ」像を示してみせる——
 カップリングは、楽聖最晩年の「小さきものへのこだわり」が凝縮された「バガテル」...!
 ミシェル・ベロフ、ジャン=フランソワ・エセール、ジャン=クロード・ペヌティエ...パリ音楽院というところでは、自らソリストとして強い個性を発揮してきたピアニストたちが数多く教鞭をとっているわけですが、そうしたなかの一人であるピエール・レアクを「コンサート・ピアニスト」としてみた場合、派手に聴き手を圧倒するわけでもないのに、いつのまにか誰もが傾聴せずにはおれなくなるような、さりげなく明晰なピアニズムを示してくれる——そんな「静かなる知性派」として、いわば穏やかに存在感を放っている人といえるのでは。
 「ゴールトベルク変奏曲」のリサイタルを定期的に催し、それがヨーロッパで定評を勝ち得ているというのも、まったく頷けます。
 日本人の弟子も数多く育てているこの名手がSaphirに、ベートーヴェン晩期の対照的な2作品——「つまらないもの」という意味の題がついていながら、小品6編で凝縮された小宇宙をかいまみせる「六つのバガテル」と、ご存知のとおり演奏時間が40 分以上にもおよぶベートーヴェン最大のピアノ・ソナタ「ハンマークラヴィーア」——を録音、これが実に明晰そのもの、ベートーヴェン晩期の深遠・精緻な世界を実にわかりやすく解きほぐす、めざましい充実解釈になっているのです!
 特に「ハンマークラヴィーア」は脂っこい熱演だと聴くほうもぐったり、曲の面白さに気づく余裕もなくなってしまったりでしょうが、レアクの解釈はこの曲が要求するパッションをしっかり打ち出しつつも、折々絶妙のアゴーギグを効かせ、各声部の動きも追わせながら、咬んで含めるように曲構造を明らかにしてみせる、実に印象的なわかりやすさ!
 「いつのまにか引き込まれてしまう」レアク随一のセンスは「バガテル」でもいかんなく発揮されていて、1曲だけ聴こう、と思っていても、つい次へ、また次へ...と聴き進めてしまう魔力に満ちていたり(しつこくないから、なんでしょうね)。こういう演奏を最初に聴いていれば、「ハンマークラヴィーア」を敬遠したりなんてことはまず、ないのでは...などと考えてしまいました。
LVC1071
(国内盤)
\2940
ゴベール:フルートとピアノのための3つのソナタ
 1. フルートとピアノのためのソナタ 第1 番(1917)
 2. フルートとピアノのためのソナタ 第2番(1924)
 3. フルートとピアノのためのソナタ 第3番(1933)
 4. 幻想曲 〜フルートとピアノのための(1912)
パトリック・ガロワ(フルート)
セシリア・ロフストラン(ピアノ)
 なんと、世界的名手パトリック・ガロワではありませんか...!
 フランス・フルート楽派を代表する名奏者だったゴベール、後期印象派全盛期のフランスで活躍した作曲家ゴベールの傑作は、やはりこうした究極の名演で聴きたい—事実、飛びぬけて絶品です!
 フランス近代・とひとくちに言っても、古くはフランクやフォーレから、ダンディ、ドビュッシー、ルーセル、あるいはサティや六人組...と多士済々なわけですが、そうした時代を生きた作曲家たちのなかでもなぜか「その名を見れば食指が動く」という人が少なくないのが、このフィリップ・ゴベールという存在。
 巨匠マルセル・モイーズの兄弟子として自らフランス楽派を代表するフルート奏者だった彼は、のちに管弦楽指揮者としても世界に名を轟かせることになるのですが(パリ・コンセルヴァトワール協会の音楽監督として、シャルル・ミュンシュの先任もつとめていました)、作曲家としてもすばらしい腕を誇り、後期印象派風の書法で管弦楽曲や室内楽を残しています。
 そしてその真髄はやはり、フォーレやルーセルらをしのぐほどの繊細な表現が聴かれる、フルートのための作品群にこそ発揮されたのでした。事実、ゴベールのフルート作品を収録したCDで動きのよいアイテムがかなりあるはず——
 しかし!秘曲の常として演奏者はなかなか選り好みできないところ、そのフルート作品のなかでもとりわけ重要な三つのソナタを、なんと現代最高の(しかも作曲家と同じくフランス人の)フルート奏者、パトリック・ガロワが、もうこれ以上ないほど充実した解釈で録音してくれているのです!
 近代ピアノ作品の解釈に秀でた俊英レフストランの伴奏もあざやかに、第1 番は第一次大戦終結前の1910 年代、第2 番はモダニズムとベル=エポックの最盛期たる1920 年代、そして第3 番はナチス台頭の1930 年代…と、それぞれ異なる時期に書かれたソナタの味わいを繊細に描き分けながら、しっかり筋の通った楽曲構造も、刻一刻と変化する空気のうつろいを音に翻案したような細やかさも、他の追従を許さぬ、きわめて豊穣な表現力で綴ってゆくガロワ...かつての「フルートの貴公子」も今では百戦錬磨のヴェテランの貫禄充分、その風格はキャリアへの甘えとはまったく無縁、ますます深みを増した…といったところでしょうか。
 フルート・ファンはもちろん、フランス近代ファンにも堂々とおすすめできる傑作盤です。
LVC1055
(国内盤)
\2940
フローラン・シュミット ピアノ作品集
 1. 四つの薄明 op.56
 2. 三つの影 op.64
 3. 「ドビュッシーの墓」への小品 op.70-1
 4. 子供たち op.94
ローラン・ヴァグシャル(ピアノ)
 ひたすら美しい音楽ばかりが次々と生み出された、20 世紀初頭のフランス——なぜ、シュミットだけが忘れられたのか?首をひねること間違いなし、とほうもなく美しい響きの数々は、ラヴェル、デュカス、セヴラックらを凌ぐ?俊英ヴァグシャルの名演でどうぞ!
 名前だけは知られているほうだと思うのですが、印象派全盛のころのフランスで、最もうつくしい音楽を綴った巨匠のひとりフローラン・シュミットの作品は、なぜか非常に録音が少ないのが残念なところ——確かに「送り手」側の都合から考えれば、演奏家は周囲の知らない曲をレパートリーに組み込んでもコンサート集客は望めないし、売り手側もあえてリスクを犯してシュミット作品を紹介するよりも…と、結局ドビュッシーやラヴェルに流れてしまうのでしょう。
 それは、どのくらいもったいない話だったのか——ベロフ、イヴァルディ、メシアン夫人イヴォンヌ・ロリオ…とパリ音楽院の名教師たちに薫陶を受けてきた、意気揚々たるフランスの若手ローラン・ヴァグシャルの端々しい録音を聴けば、そのことに気づかされずにはおれません!
 ドビュッシーとラヴェルが何かと話題をふりまきつづけた時期のフランスで、フォーレやデュボワ、マスネーなど一世代前の巨匠たちに師事し、世紀が変わるや否や「詩篇97 番」やバレエ「サロメの悲劇」などの傑作によってフランス楽壇の注目をあつめたシュミットは、そうした大作のみならずあらゆるジャンルの作曲を手がけ、同時代のフランス人たちの例にもれず、ドビュッシーやラヴェルにも比しうるような、ひたすら美しいピアノ曲を幾つも残しているのでした。
 ここに集められたのはシュミットきっての傑作ばかりで、フォーレやデュカス、ルーセル、トゥルヌミル…といった巨匠たちのピアノ曲の作風が好きな方にはうってつけ、遠くから響いてくる夢想の音のような、あるいは水や光が戯れているような、まさにフランス風という言葉がぴったりの音楽。

TRANSART

TRM146
(国内盤)
\2940
モーツァルト:
 1. 協奏交響曲 変ホ長調 KV.297b 〜
 オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンと管弦楽のための
 2. クラリネット協奏曲 イ長調 KV.622
フローラン・エオー(クラリネット)
ジルベール・オーダン(バソン)
ノラ・シスモンディ(オーボエ)
ミシャ・クリケノワ(ホルン)
プラハ室内管弦楽団
さすがは「管の国」フランス——ZigZagレーベルでクセモノ名盤を連発していたエオーが、いともフランス的な側面を鮮烈に打ち出し、ひたすら薫り高いモーツァルトを聴かせます!ジルベール・オーダン (!!) のバソン他、共演陣もフランスきっての首席奏者ばかり!

Alphaの主宰者J−P.コンベ氏が以前「最も気になる競合レーベル」のひとつに数え上げていたフランスのZigZagTerritoires(インマゼールの名盤群で知られる、あの極上レーベルです)から、珍しく現代楽器で霊妙な録音を続けていた異才クラリネット奏者がおりまして——さながら往年のharmoniamundi france におけるミシェル・ポルタルのような存在感を放っていたわけですが。自由自在、余裕綽々のブレスコントロールであざやかに室内楽美を織り上げるこの異才こそ、本盤のフローラン・エオーにほかなりません! 古典派ロマン派からストラヴィンスキーまで、何でもさりげなくワクワクする響きにしてしまう彼、ここ10 年来ソリストとしてフランス内外で幅広く活躍しヨーロッパでは第一線にいる気鋭のひとりで、Transartが今更モーツァルト盤など出して来たのはむしろ「遅すぎる!」というくらい。いや、「満を持して」って言い方もあるかもしれませんが…本盤を少し聴いていただければ、このもどかしい説明が何を言わんとしていたのか、ただちにご理解いただけるはず!音源出しますので是非お試しを!パリ音楽院を卒業、まごうことなきフランス派の伝統を受け継ぐ香ばしいサウンドで織りなされるモーツァルトは、往年のジャック・ランスロやユリス・ドレクリューズその他がEMI やERATO に残した、あのフランス随一の名盤たちの香気を彷彿とさせる——歌い口は全然ちがうのですが、なんとも薫り高く繊細な息遣いには「ああ、“おフランス”だ」と思わせずにはおかない快さが・・・とくに中間楽章冒頭のソロは、ただただ絶美、繊細そのものです。「いつになっても精力抜群」プラハ室内管も、はやる気持ちを抑えて?歯切れよくも急ぎすぎないテンポで品格を感じさせてくれます。そして注目すべきは協奏交響曲!共演陣が豪華そのもの、なにしろ他の3人とも、オペラ座やフランス国立フィル、パリ管といったフランスの伝統を担う名門の錚々たるソロ奏者ばかり——つとに知られたオーダンのフランス型バソンが奏でる雅びな高音域、驚異的になめらかなメロディを連ねるホルン、オーボエのやわらかさ、アンサンブルの精妙さ…「管の国」の最前線のうまみと香りが、ここに凝縮されています。極上、まさに極上です!
TRM161
(国内盤)
\2940
グバイドゥーリナ ピアノのための作品集
 1. シャコンヌ
 2. 音楽のおもちゃ(14 の小品)
 3. ピアノ・ソナタ
 4. トッカータ=トロンカータ(断ち切られたトッカータ)
 5. インヴェンション
マルセラ・ロジェリ(ピアノ)
シュニトケと双璧をなす「西側でも愛される“ソ連”の作曲家」——それがグバイドゥーリナ。自らピアニストとして活躍した彼女の、具象的でわかりやすい音楽のエッセンスはやはりピアノ曲でこそ生きる!

ゲルバーの愛弟子たる異才ロジェリによる、絶妙の解釈で!ソ連時代には当局との関係の悪さゆえ、その存在が全然“西側”には認知されていなかった天才というのは数多いのでしょうが、タタール自治国出身の女性作曲家グバイドゥーリナはまさにそうしたタイプの人。東西冷戦終結後のヨーロッパにおける彼女の作品への熱狂ぶりは、まさにシュニトケと人気を二分するほどといっても過言ではないでしょう! BIS など北欧系レーベルでの名盤群、バシュメットやアンネ=ゾフィー・ムターらのDGG 盤、そしてECM での記念碑的録音…と、その高い評価は音盤シーンでの(現代作曲家とは思えぬほどの)アイテムの多さからも推して知るべし、といったところ。商業的なプロスペクトがなくては録音に乗り出しえないメジャー各社があえてグバイドゥーリナのCDを出すのも、そこに勝算があるからこそ——なぜか?それは彼女の作品に、排他的なひとりよがりなしに「心地よい響き」を忘れず、誰しもを魅了してやまない「わかりやすさ」があるからでしょう。どんな時も、楽器の響きを、歌声の重なりを、彼女は実に美しく聴かせつつ、その美しい語り口のなかで、何かを語ろうとするのです。そんな彼女の芸術性をある意味きわめて端的に打ち出しているのが、ピアノのための作品群——なにしろ彼女自身ピアニストとしても活躍していただけあって、この楽器の響きに対する鋭敏さは比類なくいたるところで「おお!」と思わせる細やかな音の重ね方・連ね方が聴かれ、ついつい引き込まれてしまうのです! 子供のための小品群の素朴なかわいらしさ(いろんな意味で、パウル・クレーの絵画にも相通じるセンスがあるような…)から、圧巻の超絶技巧が聴かれる「シャコンヌ」や壮大なソナタまで、ときに(美麗なハチャトゥリヤンのように)うっすら中央アジア的な土臭さを感じさせながら広がる、その芳醇な音響世界の魅力をあざやかに引き出してゆくピアニストは、サティ、コープランド、ヴィラ=ロボス…と近代ものに秀でながら(『レコ芸』準特選をとるほど)スカルラッティなんかもウマいアルゼンチンの異才、マルセラ・ロジェリ! 彼女のピアニズムには独特の「後をひく味わい」があって、いろいろな瞬間に、すごく微妙に、ほんの少しだけテンポを緩めたり、やわらかく、ぬるっとした感触のトリルを響かせたり...ガツガツ弾くと「コワいゲンダイ音楽」になってしまいそうな瞬間も、このロジェリ随一のピアニズムゆえ、実に快く仕上がるのです! ラテン系らしい「濃さ」が、中央アジアの「濃さ」ときれいに重なりあう不思議さ…ちなみに彼女は同国の巨匠、ゲルバーの愛弟子。どうりでタダモノではないわけですよね…!




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