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第50号お奨め国内盤新譜(1)



AEON

MAECD0982
(国内盤)
\2940
ギヨーム・ド・マショー(1300 頃〜1377):
 ①運気のことで、わたしは嘆き、かつ喜ぶ
 ②貴き婦人、あなたがわたしから遠ざかるなら
 ③希望こそ、わたしを安心させるもの
 ④ピュトン、この恐ろしき大蛇
 ⑤もしも、恋神のあらゆる贈りものが
 ⑥3声:
  悲しき心で楽しき歌をつくるとき/
  誠実な恋人が、恋心から愛すると/
  わたしはこう提案したい
 ⑦思うに、大自然の恵みの価値を知る人などいないのだ
 ⑧3声:
  わたしの心はここにない、だから悲しみにくれ、涙しよう/
  友よ、わたしを悲しみ取り乱すままにして/
  貴き婦人、あなたゆえにわたしは慰められ
 ⑨ダヴィデのホケトゥス(器楽合奏)
 ⑩恋神が、わたしの欲望をかきたてる
 ⑪2声のモテトゥス:
  テーセウスが、ヘルクレスが、イアソーンが/
  アプサロムの美など見たくない
 ⑫わたしにはとても思えない、恋神がこの現世で
 ⑬あなたに再びまみえるため/それはいつでも、朝も、夜も(作者不詳)
リュシアン・カンデル指揮
アンサンブル・ムジカノーヴァ(中世音楽集団)
オケゲム『いかなる旋法にもなるミサ曲』でその技量をあざやかに印象づけた中世〜ルネサンス多声芸術のプロフェッショナル、L.カンデル&ムジカノーヴァ再び!マショーと同郷人、本場フランスの腕利きたちが織りなす、しっとり高次元のポリフォニー。2009 年に弊社取扱となったaeon は、音楽的にすばらしいものであれば現代音楽から古楽まで何でもとりあげてくれる、センス抜群のレーベル——現代方面でのエッジの効いたリリースもさることながら、古楽アイテムは「出れば名盤」といった感じで、よりすぐりの企画が周到な解説つきで登場してくることは、明敏なバイヤーさまならもうご存知かもしれません。最も顕著な例としては、中世末期の自在な記譜法を精緻に読み解き、15世紀という時代でなくては生まれえなかったオケゲムの問題作『いかなる旋法にもなるミサ曲』を4通りの演奏解釈で録音、そのからくりを鮮やかに示してみせた傑作盤(MAECD0753)があげられるでしょう。リヨン国立高等音楽院の中世音楽研究チームの活動足跡をあざやかに示すものでもあるこの録音を通じて、その鮮烈な音楽性、複雑な中世音楽の記譜法にたいする通暁ぶりを印象づけてくれたのが、才人リュシアン・カンデル率いる精鋭集団アンサンブル・ムジカノーヴァ! そのあまりに精妙な解釈に、後続盤を期待されていた方々には大きな朗報です。今度はリコーダー、フィドル、中世ハープなどの楽器を幾つか交えて、フランス14世紀最大の詩人作曲家、ギヨーム・ド・マショーの世俗作品を集めたアルバムを制作してくれたのです! フランスにおける中世音楽研究の牙城、ロヨモン研究所でも活躍しているこの専門家たち、かつてはZig-Zag レーベルで同じマショーのモテトゥス全曲録音という偉業も達成しているのですが、今回はバラッド(定型詩)を集めたアルバム作り——前述のオケゲム盤がア・カペラとしての彼らの精緻な技量をいかんなく示すものだったとすれば、今回は簡素ながら楽器が混じっていることで、中世的な玄妙さ・不思議な浮遊感そのまま、より風采豊かな音楽作りを実現させてくれました(中世楽器の音色って、どうしてこう清らかで異世界的なんでしょうね——なのにオーガニックでもあるし)。多声それぞれに歌詞が違ったり、特徴的なホケトゥス(他のパートが休符のところに音符を置いて、音がパートを超えてしゃっくりをしているような効果を生む技法)があったり、楽譜をきちんと読み解かなくては姿をあらわさないマショー特有の魅力がたっぷり。単純になんとなく癒しサウンドが欲しい方にも、本格的な中世音楽アルバムをお求めの方にも、ぴったりの絶妙リリースです。
MAECD0746
(国内盤)
\2940
トリスタン・ミュライユと自然〜器楽・室内楽作品集〜
トリスタン・ミュライユ(1947〜):
 1. 冬のかけら〜器楽合奏、
  シンセサイザーおよび電子楽器のための
 2. 答えられていない問いの数々
  〜無伴奏フルートのための
 3. エーテル〜フルートと器楽合奏のための
 4. 鐘の音をわたる葉ずえ 〜フルート、
   ヴァイオリン、チェロとピアノのための
 5. みずうみ 器楽合奏のための
ミシェル・ギャランティ指揮
アルジェント室内Ens.
イーリン・レサー(fl)
冬から、春へ。つめたい世界を静かに揺らす生命の鼓動、そして温もりある季節へ...。「音楽」は振動と周波数からできている、そんなスペクトル楽派の作曲語法を
誰よりも詩情ゆたかに使いこなした音響詩人、ミュライユの描くサウンドスケープの美しさ。私たち日本人は、虫の鳴き声に秋や夏を感じたり、ししおどし(日本庭園にある、水の流れのからくりで竹が石をカコーンと打つ、あれ)の音にしみじみ感じ入ったり、そういうのが生活のなかに組み込まれている——だとすれば、現代フランスを代表する作曲家のひとり、トリスタン・ミュライユの自然観も、すんなり受け入れられやすいのだと思います。「音楽」として律動を愉しむというより、音の響きの美しさを愛でながら、そこに表現されている風景に思いを馳せ、そこに息づく詩情に癒され、あるいは想像力を快く刺激される——そんな体験が、このアルバムには詰まっているのです。作曲年代を問わず、耳を傾けるに値する「よい響き」に敏感なフランスのaeon レーベルが解き明かす、きわめて耳に心地良く、かつわかりやすい「いまの音楽」入門!「セリー理論」「偶然性」「ミニマリズム」などと並んで重要な最先端音楽のキィワード「スペクトル楽派」。フランスで1970 年代末期から起こったこの流派は、音符を使うのではなく「音の波形(スペクトル)」を解析しながら、美しさや自己表現につながる響きを組み立ててゆく作曲法で、ユニークな「美しい音響」を提案しつづけてきました(20 世紀パリに生まれた新芸術名所、ポンピドゥー・センターに本拠を置く音響音楽研究所Ircam(イルカム)は、スペクトル楽派の重要な拠点でもあります)。ジェラール・グリゼーやミカエル・レヴィナスらとともに、その旗手的存在として活躍してきたトリスタン・ミュライユは、スペクトル的なアプローチを通じて「大自然の美」へ目を向けてきた人。ジャケットに掲げられた美しい写真をイメージさせる音が、さまざまなオーケストラ楽器で奏でられる「みずうみ」(湖のまわりに静かに響く、鳥の声、水音、玄妙な和音...)から、たった1本のフルートが奏でうる美しい響きの可能性を、メロディアスに、あるいはダイナミックに、あざやかに引き出してゆく無伴奏作品まで(気持ちいいヴィブラート音も、ノンヴィブラートのしなやかさも、なんてオーガニック…)、アメリカ東海岸のアンサンブル・モデルンかイクトゥスか?といった超実力派集団、アルジェント室内アンサンブルの精鋭たちが、ひたすら美しく、詩情ゆたかに音を紡いでゆくのです!解説充実、その伝えたいところを判りやすく解き明かす日本語訳つき。現代音楽なるものに「うっすら」程度の興味をなんとなく持ち続けている方々にも、圧倒的ともいえる音の快さと自然描写的な安らぎ感があるあたり、安心して手を伸ばせる、ちょうどよい導入になるのでは。春を待つ季節の静けさのなか、静かに流して愉しみたい音が、ここにあります。
MAECD0868
(国内盤)
\2940
チェロで弾く、シューベルトの歌曲
 シューベルト:
  ①母なる大地 D788 ②解脱 D807 ③春の想い D686
  ④しずかな国へ D403a ⑤春に D882
  ⑥楽に寄すD547 ⑦死と乙女 D531 ⑧憧れ D879
  ⑨ロザムンデのロマンツェ D797
  ⑩小川のほとりの若者 D638 ⑪月に寄す D193
  ⑫タルタロスの群れII D583 ⑬ますD550 ⑭夜曲 D672
  ⑮泉のほとりの若者 D300 ⑯夜と夢 D827
  ⑰水の上で歌う D774 ⑱わが挨拶をD741
  ⑲万霊祭の祈り D343 ⑳きみこそ憩い D776
セバスティアン・ヴィシャール(ピアノ)
アレクシス・デシャルム(チェロ)
誰もが愛するシューベルトの叙情と歌心を、うつくしいチェロの響きで、じっくりと...
まるで、彼が最初から「チェロのための小品」を書いたかのよう!この美は何とも捨てがたい。
油断ならないフランスの異才が、リスト作品集に続いて放つ、わすれがたい艶やか名盤!誰もがよく知る夭逝の大作曲家、シューベルト——しかし日本のクラシック・ファンには「声楽が苦手」という方も少なくないので、彼の真骨頂が歌曲にありと言われていても、その何百曲もある珠玉の小宇宙のうまみを知らぬまま...というもったいないケースも多いのでは。
それではあまりに残念!というわけではないのでしょうが、そういった器楽偏重の方々にも、シューベルトがどんな美を歌曲に込めていたのか、じっくりと聴き愉しめる素敵なアルバムがフランスから届きました。
その仕掛け人は——先だっては室内楽など殆ど残さなかったリストに着目し、数少ないオリジナル作品と編曲からなる『リストと、チェロ』(MAECD0745)という異色の名盤で静かなブームを築いたフランス新世代の名手、アレクシス・デシャルム!
本人書き下ろしの解説に曰く、どうやら彼は「昔からどういうわけか、チェロのために書かれたレパートリーに心から夢中になれたためしがない」とのことで、チェロ以外のために書かれた音楽を弾くことに言い知れぬ情熱を感じているのだとか…そして実際、その編曲手腕もさることながら、本盤におけるプログラム構成のあざやかさ、飛びぬけて高次元な演奏は、まさにそうした彼の適性をありありと示してやみません。
編曲には全く過不足なし——肝心なことは全て、彼の演奏の機微にあらわれるのです。「人間の声こそ最高の楽器、これは超越できない。歌詞を知ることはきわめて重要——だがいったん歌詞を呑み込んだら、決してリート歌手の真似をしようとせず、まるでそれが最初から器楽作品だったように接して、“ことば”を離れた、純粋に音楽としての美を突き詰めてゆく」…これがデシャルムの解釈姿勢。そう、私たちはそんな解釈のおかげで、まるでシューベルトが最初からチェロのための小品を20 曲も書いていたかのような、なんとも幸福な錯覚に陥ることになるのです!
「水の上で歌う」「タルタロスの群れII」「きみこそ憩い」...声楽ぬきで音楽鑑賞されてきた方々に、これら数々の「極上のチェロ小品」はどのような感動をもたらすでしょうか?あの、器楽曲でも十全に発揮されている、シューベルトならではの鑑賞と詩情の詰まった傑作群が...。もちろん、それらを歌曲として愉しんで来られた方にも「発見の連続」となるでしょうし、チェロの美音を愉しむ極上のBGM としても、本盤は最高の仕事をしてくれます。
MAECD0985
(国内盤 +ボーナスCD)
\3360
パガニーニ(1782〜1840):
 無伴奏ヴァイオリンのための24の奇想曲
  〜2001年4月19日 日経ホールでのライヴ
《ボーナスCD》
 無伴奏ヴァイオリンのための24の奇想曲
  〜1997 年、グラディニャン(スイス)・
   キャトルセゾン劇場における録音
    (音源:Pan Classics PC510513)
テディ・パパヴラミ(ヴァイオリン)
あの超・難曲「24の奇想曲」をライヴで、完璧に弾きこなす——それをやってのける、鬼才。編集いっさいなし。刃の先にいるような緊張感で、ヴァイオリンの響きは、未踏の領域へ…!超絶技巧というものの底知れない魔力、そのひとつの到達点をしめす、けた外れの名演。テディ・パパヴラミ——アルバニア出身の桁外れなヴァイオリニスト、室内楽にも意欲的ならソリストとしても超一級、完璧なテクニックの奥にストレートな情熱をたぎらせて、じっくり作品美を堪能させてくれる俊英!超絶技巧の演奏が最ももてはやされた19 世紀初頭、「悪魔」と呼ばれたパガニーニが、無伴奏ヴァイオリンのために千変万化の技巧的書法を盛り込んで綴った「24 の奇想曲(カプリース)」も、この桁外れの名手にとってはむしろ自家薬籠中の得意曲目。2001 年に待望の来日を果たしたさいには、このヴァイオリン演奏技巧の極致にある超・難曲を全曲ライヴで演奏するという、とほうもない企画を完遂してしまいました。この稀有なる一夜、ヴァイオリン演奏史に加えられた1ページが、鮮明な録音として記録されていたのです!いつも自らライナーノートに言葉を寄せるだけでなく、祖国アルバニアの世界的作家イシマイル・カダレの小説の専属翻訳者もつとめるほど頭脳明敏なこの天才、近年は現代音楽にも強いフランスの知性派レーベルaeon で多くの名盤も残していますが、そんな知性派名手だけに、自分の超絶技巧と日々向きあいながら演奏活動をつづけるうち「ライヴ」と「セッション録音」の違いについて、ちょっと思うところあったのでしょう。実は彼、かつてスイスのPan Classics で「24 の奇想曲」をきちんとセッション録音もしているのですが、東京での稀有のライヴ録音をaeon でアルバム化するにあたって、その音源も引き取り、新たにaeon で若干の再編集も行い、付録盤として添付することにしました。そのかわり、ライヴ収録した方の音源は「いっさい編集加工なし」——つまり“一発録りのパガニーニ”というきわめてスリリングな「音の場」が、天才奏者の求心力そのまま、かすかに空気を揺らす聴衆の静かな興奮まで、あざやかに蘇るのです。たいていの場合、「ライヴ録音」と言いながら、鑑賞に堪えうるよう、別録りしたテイクで問題箇所を修正するものですが、いわば、その「別テイク」をまるまる1枚、別にして同封したというわけです。そうして体現された「ほんとうのライヴ録音」の、まるで刃の上を渡るような緊張感...しかし余裕綽々、指も弓もあざやかに精確無比、細かな音符までみごとパガニーニの“挑戦”を乗り越えてゆく…そこまで完璧なライヴだったからこそ、音盤化にも踏み切ったのでしょうが。超絶技巧というものの「リアリティ」「生々しさ」「迫力」…そうしたことについて深く考え直させる、驚愕の1枚です。
MAECD0980
(国内盤)
\2940
長い道のり 〜無伴奏ヴァイオリン自作自演集〜
 バンジャマン・ド・ラ・フエンテ(1968〜):
  1. 長い道のり
  2. 灯台と波
  3. ギヴ・サムシング(何か、出せ)
  4. 地下6フィート
  5. クレム
  6. 白いもの
  7. ノウン・バイ・ア・ナンバー
   (ある数字で覚えられている)
  8. スロウ・トレイン(ゆるやかに行く電車)
  9. ゴット・リド・オヴ・ザ・シャックルズ
   (枷を外した)
バンジャマン・ド・ラ・フエンテ(ヴァイオリン)
超絶技巧と、妙なる歌心−−無伴奏ヴァイオリンの美が、音波レヴェルまで分析されて、おどろくほど細やかなセンスで電子操作される...かぎりなく繊細で美しい、「オーガニックな電子音楽」という思わぬ美質が、鑑賞体験に新たな境地を切りひらく!現代音楽といっても、十二音技法 → セリー主義 → 偶然性の音楽、スペクトル楽派、ミニマリズム、マルチメディアの導入…といった感じで、世の中には断片的に伝わって「結局、わけのわからないものを聴かせられる」という恐怖感・抵抗感だけが残ってしまっているような。でも実のところ、そこには聴き手を遠ざける要素も確かにあるけれど、逆に、クラシックの聴き方に慣れた聴き手をひきつけてやまない、独特の旨味と面白さを秘めた現代音楽もまた、無数にあるわけです。あらゆる音楽と分け隔てなく接し、正統派クラシックから痛烈なまでに本格的な中世ルネサンスもの、現代音楽、フォルクローレ…とさまざまな音楽へ個性的な探求を続けてきたフランスのaeon レーベルがここに問うた新譜は、フランスで活躍する新世代のスペイン系ヴァイオリニスト、バンジャマン・ド・ラ・フエンテの自作自演集...この鬼才奏者、とにかく指周りも弓遣いも天下一品で、あざやかな超絶技巧もたおやかなカンタービレも、独特の緊張感の醸し方も実に魅力的なスーパープレイヤーなのですが、その技量を存分に生かし、即興演奏家としても広範な活躍をみせています。即興=一期一会——そこから舞台芸術にも興味をしめし、「音楽、舞台、観衆」の3者の関係をさぐるユニット「スフォータ」の結成メンバーにもなっています。で、この「即興演奏」というのが、ここ十数年のあいだフランスの現代音楽シーンでも重要な意味合いを帯びていて、彼は独特の存在感で、現代音楽の領域にも立ち位置を築いてきたのでした。音楽を振動周波レヴェルにまで解析し、そこから美しい響きを導き出そうとする「スペクトル楽派」の最重要作曲家、ジェラール・グリゼーの門下でもみっちり勉強しているフエンテはかくて、このソロ・アルバムで、自分の演奏を素材として、それを電子加工することで、さらなる響きの可能性を追求してゆきます——「電子加工」といっても、ノイズ系とはまったく違う!まるで古楽系の録音エンジニアが、録音ソフトを繊細なセンスでいじって「空間の響き」まで再現してしまうのと同じように、フエンテの電子操作はまったく繊細そのもの——エレキギターがOK な方であれば、彼がいかに叙情的であり玄妙であるか、伝わってくるはず。電子音というより、生楽器1 本の演奏による「生々しさ」を、逆にありありと実感せずにはおれません。「ちょっと変わったやり方で、ふだん自分が親しんでいる楽器との関係を捉えなおしてみるのも悪くないものだ」とは演奏者フエンテ自身の言。ヴァイオリンの魅力の可能性をあらためて問い直す、かけがえのない異色体験!
MAECD0312
(国内盤)
\2940
ヒンデミット(1895〜1963):
 1. 無伴奏ヴィオラ・ソナタ
 2. ヴィオラとピアノのためのソナタ
ミカエル・レヴィナス(1949〜):
 3. からみあう文字II〜無伴奏ヴィオラのための
 4. からみあう文字IV〜弦楽五重奏のための *
ジェラール・コセ(va)
ミカエル・レヴィナス(p)
*ルートヴィヒ四重奏団
仏Classica 誌 10 点満点レビュー受賞!!フランス最高峰!バシュメットやW.クリストと並ぶヴィオラの巨匠、満を持してのヒンデミット!
しかし驚かされるのは、ひたすらみずみずしい、透明なピアノ—ー息をのむ高次元さ現代作曲家=稀代の解釈者。

ヒンデミットは、こんなにきれいな音を書いていたのか…!マーラーやドビュッシーらの生きていた頃、いわゆる「近代」になって急激に充実しはじめたヴィオラのための音楽のなかでも、自らヴィオラ奏者でもあったドイツ随一の作曲家、ヒンデミットの二つのソナタといえば、言わずと知れた傑作中の傑作!
そしてもうひとつ「言わずと知れた」といえば、このアルバムで活躍するジェラール・コセという演奏家が、ユーリ・バシュメット、ヴォルフラム・クリスト、今井信子、ブルーノ・パスキエらと並ぶ、現代最高のヴィオラ奏者のひとりであるという事実。EMI でもDGG でもERATO でも、あるいはOrfeo のシトコヴェツキー版「ゴールトベルク変奏曲」でのミシャ・マイスキーらとの共演でも、ディスクシーンでクラシックに親しんできた方々はみな、各人それぞれさまざまな箇所で、この名手が奏でる心震わす中低音の歌を覚えておられるのではないでしょうか?昨今もVirgin でアンゲリッシュやカピュソン兄弟と共演を果たし、世代を問わぬ室内楽の達人ぶりをアピールしたコセが、満を持してヒンデミットの無伴奏および二重奏ソナタ、二つの傑作を録音してくれました!
しかし何が贅沢って、その共演者がよりによって、いまフランスで最も重要な現代作曲家のひとりであるミカエル・レヴィナスだという点ではないでしょうか?! 20 世紀の「知」を代表する哲学者のひとりエマニュエル・レヴィナスの息子として生まれ、現代音楽の聖地ダルムシュタットでクセナキス、シュトックハウゼン、リゲティらの薫陶を受けたレヴィナスは、セリー理論から脱却後スペクトル楽派の重要な担い手として活躍、「とまどい」と「ドラマ性」をキィワードに多角的な創作活動を展開し、今年アカデミー・フランセーズ会員に選出された偉人なのです。ここでも2曲の自作品(CD 曲順ではヒンデミットの2曲にはさまれる形)を披露、まさにドラマティックな弦楽演奏が聴かれる合奏曲と、たゆたうヴィオラの美音がひたすら印象的な無伴奏曲でその「接しやすい現代音楽」を書ける天分をあらわにしていますが、クラシック・ファンにはむしろ、彼のもうひとつの顔であるピアニストとしての活躍ぶりに耳を奪われるはず!
伝説的名手ペルルミュテールやイヴォンヌ・ルフェビュール(!)らの薫陶をへたピアニズムが発揮されるのが、ヒンデミットの二重奏ソナタ。これがもう息をのむような透明感、信じがたいまでの美しさなのです!この曲の知られざる魅力を掘り起こす解釈は、彼が自ら作曲家であることも関連しているのでしょう。解説も充実、深く長く味わえる名演です!

ALPHA

Alpha143
(2CD)
(国内盤)
*CD-2はDVD付
(NTSC仕様)
\4515
マルティヌー(1890〜1959):
 1. 弦楽三重奏曲 H.136(世界初録音)
 2.室内の音楽第1番「夜ごとの祝祭」H.376
 3. ピアノ四重奏曲 H.287
 4. 弦楽五重奏曲 H.164
モード・ロヴェット、
サスキア・ルティエク(vn)
カリーヌ・ルティエク、
オディール・オーボワン(va)
ロマン・ガリウー、
フローラン・オディベール(vc)
ジュリアン・エルヴェ(cl)
サンドリーヌ・シャトロン(hrp)
フレデリク・ラガルド(p)
楽譜・録音監修:アリー・アルブレック
さすがはAlpha、新境地開拓はかならず周到企画で——現代フランスの最前線で活躍する室内楽奏者たちが結集、世界的なマルティヌー研究家(“H”番号の生みの親)の監修でじっくり作り上げられた「知られざるマルティヌー」、世界初録音をDVD ドキュメント付で!フランスの気鋭小資本レーベルAlpha といえば、当初は古楽系の意外なヒットを連発して快進撃をみせてきたものですが、創設10年を過ぎた今では近代ものでもすぐれたアルバムが続出、とりわけ室内楽など小編成の音楽では、知られざるフランス近代作曲家デュロゾワールの発掘、ヤナーチェクのヴィオラ・ダモーレつき四重奏曲の新校訂版世界初録音、ドビュッシーのフォルテピアノ&木管フルート録音...と数々の注目アルバムをリリース、『レコード芸術』誌の特選など日本でも高く評価されたアルバムが少なくありません。今回登場するのは、歿後50周年の昨2009 年以来、本年12 月末まで2年がかりで続くチェコ・マルティヌー協会主催の「マルティヌー・リヴィジテッド」連続企画の一環として制作された、最新発見の弦楽三重奏曲の商業初録音を含む室内楽作品集!(字幕は英独チェコ仏のみながら、NTSC 仕様でのドキュメントDVD 付です)ご存知のとおり、チェコの作曲家マルティヌーは若い頃、ルーセルの音楽にあこがれて半ば無理矢理パリに留学、中世音楽やポスト印象主義世代の作品などが飛び交う刺激的なパリ楽壇から感化を受け、それが彼ならではの作風形成に大きく寄与した…という活動歴をもつ人。そんな彼がパリ時代に書いた「弦楽三重奏曲」は、長いあいだ記録しか残されておらず、楽譜は消失したものと思われていました。しかし2005 年、偶然にもコペンハーゲンのデンマーク王立図書館に、1978 年に競売の末収蔵された楽譜のなかにこの曲が含まれていたことが判明、チェコのマルティヌー協会所属の研究家エヴァ・ヴェリチカがこれを発見したのです。商業録音としてはこれが初録音となる本盤、演奏を任されたのは、母方にチェコ系の血をひくパリきっての室内楽奏者、カリーヌ・レティエク率いるアンサンブル・カリオペー...パリのチェコ文化センターの常駐楽団になっているこの実力派集団、 ヴェテランたちの磨きぬかれたアンサンブルで作品の精妙さをみごと浮き彫りにしつつ、フランス勢ならではの「色香」がほんのり、ともすればザッハリッヒ(無味乾燥)に陥りがちなマルティヌーの音楽を、実に精彩豊かに聴かせてくれるのです!他に収録されている作品も、マルティヌーならではの作風がしだいに出来上がってゆく、最もエキサイティングな時期の充実作ばかり——最晩年の「夜ごとの祝祭」も録音少ない秘曲で、ハープやクラリネットにピアノ...と一見折り合いの悪そうな組み合わせが艶やかに絡み合うさまは、まさに室内楽ヴェテラン勢ならではの演奏クオリティと、名技師ユーグ・デショーの周到なエンジニアリングの賜物。企画先行の録音ではまず聴き得ない機微まで、じっくり味わえる秀逸盤です!
Alpha154
(2CD)
(国内盤)
\4515
シューマン:ピアノ曲・室内楽作品集8
 1. 演奏会用アレグロ op.8
 2. ウィーンの謝肉祭の道化op.25
 3. 四つのピアノ小品 op.32
 4. 子供のためのソナタ3編 op.118a-c
 5. パガニーニの奇想曲による練習曲op.32
 6. パガニーニの奇想曲による演奏会用練習曲 op.10
エリック・ル・サージュ(ピアノ)
ついに、シューマン・イヤーに突入——大本命シリーズにも、待望の最新作がさっそく登場!
なにかと見落とされがちな重要作を集めた、全集録音ならではの嬉しい選曲——技巧に頼らず、曲の深みをそっと垣間見せる。ル・サージュの絶妙解釈、冴えわたる!
1810 年生まれ——シューマン、今年生誕200 周年!
フランス気鋭の個性派レーベルAlpha で、現代フランスを代表する俊英ル・サージュが2006 年から続けてきた「ピアノ曲・室内楽作品集」シリーズは、まさに本年に向けて続けられてきたプロジェクトでした(しかし、年内に終わるのでしょうか…協奏曲まで録音すると聞いていましたが)。日本でも批評家勢・一般のお客様の双方から大絶賛を博しているこのシリーズ、さっそく待望の最新作が登場いたします。今度の目玉は、二つある「パガニーニ練習曲集」——超絶技巧のピアニストを目指していた若きシューマンが手の故障で夢やぶれ、その後になってあえて超絶技巧の天才パガニーニに取材した練習曲を2集書いているわけですが、完璧な腕前をいつも決してひけらかさない、冷静に興奮と叙情とを描き出してゆくル・サージュのアプローチを聴いていると、シューマンが外面的な技巧などを超越した音楽的境地を見据えていたのだな、としみじみ思われてなりません。
どういうわけだか立派な演奏家たちがめったに録音しないこれら2集を、ここまで極度の高次元の演奏で聴けるなんて、実にシューマン記念年らしい嬉しい出来事ではありませんか!そのほかの曲もみな、全曲録音でもなければ見過ごされてしまう「隠れ重要作」ばかりなのが、この第8集の嬉しいところ。後年のシューマンが自分の娘たちのために作曲したソナチネ集「子供のための三つのソナタ」なんて、まさかこんな名手が入念に解釈した演奏でじっくり聴けるなんて、思ってもみなかったファンが多いのでは? 多くのシューマン弾きにとっても「後回し」にされがちな本作を、ル・サージュは三連作的な構想もかんがみつつ、実に丁寧に解きほぐしてゆくのです!
アラウやミケランジェリの名盤をはじめ、当アルバムで唯一競合盤が少なくない『ウィーンの謝肉祭の道化』も、そうした全体としての統一感が細部の美とみごとな饗宴をみせる名解釈!そして、ピアノ・リサイタルに必ず歌手や弦楽器奏者がゲスト出演していた19世紀当時、リサイタルの序曲としてふさわしいような立派な音楽を...と考えていたシューマンが残した隠れ充実作「アレグロ」や、ソナタとは違った組み合わせの「四つの小品」...こうした秘曲にも限りない美が潜んでいることを、確かな解釈でありありと示してくれる…名手ル・サージュのシューマン記念年、面白くなりそうです!
Alpha149
(国内盤)
\2940
少年バッハの音楽と、心の師匠たち
 〜ラインケン、ブクステフーデ、フローベルガー、ケルル〜
 ヨハン・アダム・ラインケン(1645〜1722)
  1. トッカータト長調
 ディートリヒ・ブクステフーデ(1637〜1707)
  2. 組曲ハ長調 BuxWV226
 ヨハン・カスパー・ケルル(1623〜93)
  3. 組曲ヘ長調
 ヨハン・ヤーコプ・フローベルガー(1616〜67)
  4. 第2トッカータニ短調(1649年の曲集より)
  5. 第2組曲ニ短調(1649 年の曲集より)
 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)
  6. トッカータホ短調 BWV914
  7. トッカータト短調 BWV915
  8. カプリッチョ「最愛の兄の別れに寄す」BWV992
セリーヌ・フリッシュ(チェンバロ)
「17世紀人としてのバッハ」の姿を、ありありと示す——さすがは秀逸古楽レーベルAlpha!
『ゴールトベルク変奏曲』の決定的名演が今なお注目されつづける天才フリッシュがあらためて世に問うた、あまりにもうつくしく充実したチェンバロ・アルバム、ここに登場...!
世間には、何かとバロック音楽=18世紀、というイメージがあるのかもしれません——かつてフランス・ブリュッヘンも、自分のオーケストラを結成したとき「18世紀オーケストラ」と名づけたように。ヘンデルもヴィヴァルディもスカルラッティもクープランも、そしてわれらが大バッハも、みんな活動期の大半が18世紀だから、結局「バロック」と呼べる時期はせいぜい最初の10〜20年くらいでも、彼らは「18世紀の作曲家」になるわけで。
しかしどうでしょう——ことバッハに限って言うなら、それも鍵盤作品などについては、いったい、その響きは同時代の誰に似ているというのでしょうか?あの精緻な対位法、1小節ごと、1音ごとに含蓄あふれる音作りは、どこをとってもむしろ、17世紀以来の伝統と結びついているのではないでしょうか…?しかもバッハ自身は1685年生まれ、人生の最初の15年間は、まさしく「17世紀の人間」だったではありませんか!
そんなバッハとドイツ17世紀の伝統との結びつきを非常にわかりやすく、比類ない名演奏・名録音で示してくれる忘れがたい1枚が、フランスきっての秀逸古楽レーベルAlphaから登場いたします。
演奏は、このレーベル最初期の大ヒット作にしてロングセラーを記録し続ける『ゴールトベルク変奏曲』の演奏家、セリーヌ・フリッシュ!現代最高の名工のひとりアンスニー・サイディが手がけたドイツ式の銘器で奏でられるのは、パッヘルベルの弟子でオールドルフという小村にいた兄、ヨハン・クリストフ・バッハのもとで暮らしていた少年バッハが、月明かりを頼りに筆写したという、17世紀の巨匠の名作の数々...オルガンの巨匠ブクステフーデによるチェンバロ組曲、組曲形式の立役者たるフローベルガーといった面々のイタリア・フランス両様式入り混じる名品群も絶妙なら、フレスコバルディの弟子ケルルによる長大なパッサカーリャの深みも忘れがたく。
フリッシュの精緻・玄妙なタッチで、珍しいラインケンのトッカータまで息をのむ興奮度なのです!そんな17世紀人たちの作品群のあいだに配された三つのバッハ初期作品は、まさに「17世紀芸術の洗練の極致」として響く…意外にチェンバロ新録音の出にくい重要作BWV992を、こんな至高の演奏で聴けるのも、何たる僥倖でしょう!
Alpha155
(国内盤)
\2940
ベートーヴェン:
 1. ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 op.15
 2. ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op.19
アルテュール・スホーンデルヴルト
Ens.クリストフォリ(古楽器使用) (fp/ヴァルター・モデル)
いきなり、出ます!大本命シリーズ、これで堂々「全集」が完成!
第1・第2ヴァイオリンを各1人に絞った問題のシリーズは、協奏曲芸術の誕生の秘密へ...
ベートーヴェン最初期、ヴァルター・タイプのフォルテピアノと「オーケストラ」の均衡とは?・・・とんでもなく重要な新譜リリースの情報がAlpha から舞い込んでまいりましたので、まだ音源が未到着ながら、とにかく大急ぎでお知らせさせていただく次第でございます!
…とバロック時代の出版楽譜の序文のような書き出しになりましたが、ごらんのとおり、多くの方々が待ち望んでいるに違いない、既存巻2タイトルがいまだ売れ続ける超・問題作、「スホーンデルヴルト&Ens.クリストフォリのベートーヴェン協奏曲シリーズ」の、完結巻!
ベートーヴェン時代のピアノ(フォルテピアノ)は音量が小さく、そのことは当初から作曲家たちも気づいていた——ベートーヴェンの弟子チェルニーも、ピアノ協奏曲は大きなホールで弾くべきではない、と考えていたくらいで、実際『皇帝』をはじめとするベートーヴェンのピアノ協奏曲でさえ、パトロンであるロプコヴィツ侯爵の私邸でプライヴェートな初演が行われたさいには、弦楽編成をぐっと絞り込んだオーケストラで聴かれていた…という前提のもと、当のロプコヴィツ侯邸の大広間を徹底検証、客席とのバランスや残響なども考慮したうえで「フル2管編成に対して、弦楽器は1・1・2・2・1程度」という驚愕の演奏編成を割り出したのが、2002 年に刊行されたS.ヴァインツィールの研究書『ベートーヴェンの協奏曲空間』。しかし学説というものは、それを納得させる具体例(この場合は「立派な演奏」)なくしては、ただの酒席の話題程度にしかならないもの——ヴァインツィールにとって何より幸いだったのは、オランダ出身の現代最高のフォルテピアノ奏者が、気の置けない演奏仲間である精鋭古楽奏者を集めてのEns.クリストフォリとともに、これをあざやかに例証する名演奏を打ち出してくれたことでした。
番号の大きい協奏曲(つまり「皇帝&第4番」)から始め、「皇帝」の第一主題の勇壮さを第1ヴァイオリンたった1挺で描き出すという痛烈な演奏効果、作品そのものの室内楽的な美質をこれ以上ないくらいありありと示してみせた「第4番」で圧倒的な話題をさらったのが第1 集(Alpha079)。劇的な悲愴さを濃やかに表現しおおせた「第3番」や、現代ピアノでは物足りなさしか感じられなかった「第6番」(ヴァイオリン協奏曲のピアノ編曲)の本質的な美をはじめて教えてくれた名演が第2集(Alpha122)。そして今度は、喇叭とティンパニのない「第2番」や、壮大なスケール感で迫る「第1番」を、同じ「弦7人編成」でやるのです!
ピアノはウィーン古典派の魂、モーツァルトも愛したヴァルター・モデル。ソリスト書き下ろし詳細解説つき、もちろん完全和訳!期待しない方が難しい、大注目盤です!
Alpha510
(国内盤)
\2940
イスタンピッタ 〜14 世紀フィレンツェ、地中海の舞曲〜
 1) イスタンピッタ「トリスターノ&マンフレディーナ」
 2) イスタンピッタ「ガエタ」
 3) イスタンピッタ「イン・プロ」
 4) イスタンピッタ「ドイツのチャコネッタ」
 5) イスタンピッタ=サルタレッロ1
 6) イスタンピッタ「サルタレッロ&トロット」
 7) イスタンピッタ「イザベッラ」
 8) イスタンピッタ「三つの泉」
 9) イスタンピッタ=サルタレッロ2
アンリ・アニェル(シトール、ウード、チェテリーナ)
マイクル・ニック(カントン=5弦ヴァイオリン)
アンリ・トゥルニエ(バンスリ=横笛)
ジャムシド・シェミラニ(ザルブ=ペルシャの太鼓)イドリス・アニェル(ガタム=壷型打楽器)
これぞ、Alpha レーベル「白いシリーズ」の真骨頂——それは中世の地中海、ヨーロッパよりも中近東の方が、音楽文化も先進的だったころ...中近東楽器で鮮やかに織り上げられる響きは、ヨーロッパの「中世サウンド」そのもの!
フランスきっての文化的古楽レーベルAlpha には、通常の黒地ジャケットシリーズのほか、民俗音楽と古楽のクロスオーヴァーなどを中心とした「レ・シャン・ド・ラ・テル(大地の歌)」と呼ばれる白ジャケットシリーズ我あるのはご存知のとおり。楽譜に残らない(あるいはまだ楽譜になっていない)伝統音楽や現代音楽などを、独特の自由なセンスで古楽器演奏などとかけあわせてみせるセンスは、古楽ファンやオーディオ・ファンを中心に?なのか、驚くほど日本のマーケットとも相性がよいようで…連綿と売れ続けるシリーズもあれば、試聴機展開でクールな売り上げを記録したものも少なくありません。
実はシリーズ開始から間もない頃、解説付発売を見合わせたタイトルも幾つかあるのですが、それらもタイミングを見計らって日本語解説付でリリースすれば、たいてい予想を大きく上回る反応と堅調な売れ行きをみせてくれるもの。そこで昨年から折々、日本盤で未紹介だった同シリーズの注目盤も、日本語解説付きで(これが好評?)発売するようにしております。
今回お届けするのは、ずっとリリースの機会を窺っていたもの…これはクールなサウンドですよ!
「イスタンピッタ(エスタンピ)」とは、良く知られた歌などの旋律を特定の舞曲のリズムにのせて弾く、中世の器楽音楽。つまり、曲目的には古楽ファンの興味ど真ん中——声楽作品が売れにくい日本でも、Ricercar の『中世ヨーロッパ、超絶技巧の楽師たち』(MRIC274)の売れ行きが示すとおり、中世音楽でも器楽ものはヒットのチャンスを秘めているようです。しかも、そのヒネり方が絶妙。ヨーロッパ中世は「暗黒時代」と呼ばれるくらい文化水準の落ち込んだ時期で、そこから高度な文化が続々生まれるのが14 世紀頃からの「ルネサンス」——その前は、地中海世界ではむしろイスラム圏のほうが高度な文化を誇っていたのです(古代ギリシャの貴重な文献の数々も、ヨーロッパでは忘れられていたのに、数多くのアラブ語訳で読まれていました)。そんな時代を彷彿させるかのごとく、なんと本盤では、吟遊詩人やスペイン王の写本などにも見つかる曲を、中近東その他の民俗楽器で演奏してしまったのです! これが驚くほどしっくりハマる...自然派録音で知られるAlpha だけに、微妙な空気のふるえまで収めきった打楽器や撥弦の音色はすばらしくオーガニック!で、「マンフレディーナのロッタ」など中世ものアルバムでの定番のようなメロディが、そうした中近東楽器の玄妙なサウンドにみごとマッチ、いったい西欧なのか、それとも東洋なのか、どちらともつかぬ響きは古楽ファンのみならず、誰しもクセになってしまうに違いありません!
スペインがイスラム圏だった時代の「異国情緒」を描き出し、好セールスを記録しつづけるアンサンブル・アロマートの名盤2 枚(Alpha515/Alpha521)とは逆に、異国楽器でヨーロッパ中世を描き出す、これもまた忘れがたい1枚です!

ARCANA

Mer-A315
(国内盤)
\2940
シェーンベルク:ピアノ独奏作品集
 1. 三つのピアノ作品op.11(1909)
 2. 六つの小さなピアノ作品op.19(1911)
 3. 五つのピアノ作品op.23(1920〜23)
 4. ピアノ作品op.33 a&b(1931)
 5. 組曲op.25(1921〜23)
ピーター・ゼルキン(ピアノ)
巨匠ルドルフの子ピーター・ゼルキン、いまだ健在…どころか、ますます深まるその演奏!20 世紀最大の作曲家のひとりシェーンベルクの活動歴における「隠れた糸」ともいうべきピアノ作品の数々を、研ぎ澄まされたピアニズム、周到そのものの解釈で。金字塔的録音!
Mer-A422
(2CD)
(国内盤)
\4515
ヴィヴァルディ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ
 「マンチェスター・ソナタ集」(全12 曲)
 ①ソナタ第1番ハ長調 RV3 ②ソナタ第2番ニ短調RV12
 ③ソナタ第3番ト短調RV757 ④ソナタ第4番ニ長調V755
 ⑤ソナタ第5番変ロ長調RV759 ⑥ソナタ第6番イ長調 RV758
 ⑦ソナタ第7番ハ短調 RV6⑧ソナタ第8番ト長調 RV22
 ⑨ソナタ第9番ホ短調RV17a ⑩ソナタ第10番ト短調RV760
 ⑪ソナタ第11番変ホ長調RV756 ⑫ソナタ第12番ハ長調RV754
ファビオ・ビオンディ(バロック・ヴァイオリン)
リナルド・アレッサンドリーニ(cmb・org)
パオロ・パンドルフォ(cb)
マウリツィオ・ナッデオ(vc)
ロルフ・リスレヴァン(テオルボ、ギター)
まさかの音源、復活——古楽史上最大の問題児ビオンディ、完全無欠の初期音源!ごらんのとおり、共演陣の豪華さもポイントながら、なにしろ曲目はヴィヴァルディ...!突き抜けたカリスマ性と研究姿勢のバランス絶妙。協奏曲とは違った親密さを、じっくりと!
この頃ビオンディはジョルディ・サヴァールの楽団でも活躍しており、アレッサンドリーニ(!)、パンドルフォ(!!)、リスレヴァン(!!!)といった、今ではもう共演することもないような本格化の巨匠たちがテンション抜群、低音を固めているのも大注目!
Mer-A403
(国内盤)
\4515
モーツァルト:最後の四つの四重奏曲
 1. 弦楽四重奏曲第20 番ニ長調 K499
  「ホフマイスター」
 2. 弦楽四重奏曲第21 番ニ長調 K575
 3. 弦楽四重奏曲第22 番変ロ長調 K589
 4. 弦楽四重奏曲第23 番ヘ長調 K590
フェシュテティーチ四重奏団(古楽器使用)
ピリオド楽器カルテットのパイオニアにして世界的頂点——「ハイドン全集」で名をあげた2009 年に続き、ついにこの究極の名盤が日本語解説付きで日本再上陸!
壮絶な、あまりにも深い響きの美——当時の演奏様式を踏まえ、作品の本質に迫る!
モザイクSQ、ザロモンSQ、アド・フォンテスSQ、シュパンツィヒSQ...ピリオド楽器による弦楽四重奏団もかなり増えてきた昨今ですが、2009 年は「ハイドン・イヤー」を飾る弦楽四重奏曲全集の国内盤初リリースによって、活動歴四半世紀にわたるピリオド楽器カルテットの草分け的存在、フェシュテティーチ四重奏団の「底力」があらためて印象づけられた年でした。
本年ついに創設25周年を迎えるこの超・実力派集団、ハイドン全集の評判と売れ行きは日本でもまさに好調をきわめ、最後にリリースされた3集も、現在発売中の「レコード芸術」でめでたく特選に輝いたところですが、そんな彼らが実は、かのハイドン・シリーズを手がけはじめたかどうか、という頃に、こんなに重要な録音を残していたのです!
モーツァルト、それも14番から19番の「ハイドン・セット」ではなく(彼らの録音は将来のお楽しみですね)、晩年に書かれた一連の「プロイセン・セット」をはじめとする、最後の4曲!
フェシュテティーチ四重奏団のとほうもない音楽的感性の深さを考えたら、確かにこちらのほうが似合っているようにも思います(この調子で「ベートーヴェン全曲録音とか出してくれないものか…)。このたび2枚組に再編成され、日本語解説付きでカタログ復活してくれる本盤の演奏は、いまハイドン全集を続々と買い求めておられるファンに文句無くおすすめできる、いや何も言わず買ってもまず損はしようのない痛烈な名演奏...全然急ぎすぎないのに本当にしっくり心に沁み入るアレグロのテンポ感、ゾクゾクっとさせる美音の重なり、18世紀の演奏様態への研究のみならず「弦の国」ハンガリーの伝統なくしては到達しえなかったであろう、多彩な演奏表現の妙、そして誰しも感服せずにはおれない音楽表現のたとえようもない深さ...ハイドン全集で示された境地は、およそ全てこの2枚のCDにも体現されているのです!
解説執筆もハイドン・シリーズと同じく、ハンガリーきっての音楽学者ラースロー・ショムファイが担当(全訳つき)。フランス革命後、モーツァルトは新時代に向け、どんな響きを志したのか...ふだん現代楽器専門で鑑賞されている方にも自信をもってお勧めできる、ほんとうに比類ない「本物の弦楽四重奏解釈」が、ここにあります!
Mer-A353
(国内盤)
\2940
ブラヌス写本——中世ドイツの「聖なる風刺歌」〜
「ブラヌス写本(=カルミナ・ブラーナ)」より
 ①信心は善なり ②この写本を読む者、心せよ
 ③教えてください、救世主の真実
  (ブラヌス写本の単旋律版/多声版)
 ④ああ、我らの時代には
 ⑤嘆くがいい、それが嘆かわしいなら
 ⑥自分の心を、よく覗いてみろ
 ⑦誰もが走り寄る先には
 ⑧夏の日々は流れ去るもの
 ⑨ナイトハルト・フォン・ノイエンタールの歌によるコルネット独奏
 ⑩公平と不平は、紙一重
 ⑪憎しみの道は、いつもひねくれている
 ⑫ごきげんよう、高貴にして清らかなマリア様
 ⑬お固いことは忘れちまおう
 ⑭凍てつく季節は過ぎ去った
 ⑮そのむかし、ヘラクレスは誉れ高く
 ⑯おとめ二人、どちらも気高き美しさ
 ⑰替え歌「タイムとバジリコが口喧嘩を始めた」
アンサンブル・ラ・レヴェルディ(古楽器使用)
クラウディア・カッファーニ(vo・リュート・プサルテリウム)
リヴィア・カッファーニ(vo・フィドル・リコーダー)
エリザベッタ・デ・ミルコヴィチ(vo・フィドル・シフォニ・鐘)
エレーナ・デ・ミルコヴィチ(vo・ハープ・ドイツギター)
ドロン・D・シャーウィン(vo・コルネット・オルガネット)
アンドレーア・ファヴァーリ(vo・語り)他
『カルミナ・ブラーナ』のルーツ——その「ほんとうの姿」を、中世音楽のプロがあざやかに!素朴で神秘的、なんともいえない叙情と癒し、その裏にかくれた詩のユーモア...イタリアの天才集団が、ドイツもイタリアもひとつづきだった「中世の空気」を鮮烈に再現!つとに知られた近代合唱曲の傑作、オルフの『カルミナ・ブラーナ』——遠からず来日するリッカルド・ムーティも公演曲目に選んでいて、にわかに注目も高まる昨今、意外なところから新たな注目名盤が登場いたします!ご存知のとおり、オルフはドイツ南部のベネディクトボイレン修道院に伝わる中世の貴重な歌集から、歌詞だけを使い、独特の古風なスタイルによって『カルミナ・ブラーナ』という管弦楽付合唱曲を作ったわけですが、 「原作」というより「元ネタ」であるこの中世写本、ちゃんと音楽もついているわけで。写本の成立時期は13 世紀頃、写本の曲の作者は、当時ヨーロッパでラテン語を読み書きできた数少ない知識人、つまり聖職者たちと学生たちでした(「カルミナ」は「歌集」の意、「ブラーナ」は写本の出元である「(ベネディクト)ボイレン」のラテン語読み)。ドイツ語圏に伝わる中世の世俗歌集としてはきわめて貴重かつ物量的にも豊かなため、中世音楽の専門家たちは折にふれてレパートリーに組み込むものですが、ここで何より注目すべきは、間違いなくヨーロッパ最高の古楽レーベルであるArcana での、いま最も注目すべき中世音楽集団のひとつであるラ・レヴェルディによる演奏だということ...!秀逸なエンジニアリングで生々しくオーガニックな古楽器の響きそのままに再現される「中世」の叙情が、徹底した作品研究にもとづく多彩なアプローチで活き活きと蘇ります。替え歌、複数の解釈、器楽ヴァージョン…そのからくりを伝える、詳細な解説も全編翻訳付。ヨーロッパ批評勢も大絶賛する名盤あまたのラ・レヴェルディ、その快進撃はとどまるところを知りません!!
Mer-A342
(国内盤)
\2940
ギヨーム・デュファイ(1400 頃〜1474):
 『聖ヤコブのミサ』(ボローニャQ15写本』より)
アンサンブル・ラ・レヴェルディ(古楽器使用)
クラウディア・カッファーニ(vo・リュート)
リヴィア・カッファーニ(vo・フィドル・リコーダー)
エリザベッタ・デ・ミルコヴィチ(vo・フィドル)
ドロン・D・シャーウィン(vo・コルネット・オルガネット)
ヴィム・ベキュ(サックバット=トロンボーン)
マッテオ・ザネッティ(ハープ)他
イタリアからやってきたスーパー中世音楽集団、ラ・レヴェルディの傑作アルバムが続々と復活します!
まずは何より、その魅力を端的に示す「器楽合奏つきデュファイ」のユニーク解釈から。

 先日、昨年好評裡のうちに日本ツアーを終えた鬼才古楽集団マルコ・ビズリー&アッコルドーネ。あの二重唱カンタータ『タンクレーディとクロリンダの戦い』さえ独唱1声だけで録音してしまうような強烈なマルコ・ビズリーの独唱。しかしグイード・モリーニの「新作古楽」アルバム(Cypres)でそんな強烈なビズリーと共演して一歩も引かぬ女声歌手たちがいた・・・。
 それがカッファーニ姉妹とデ・ミルコヴィチ。そう、彼女たちこそ、自ら中世楽器もあざやかに弾きこなす天才古楽集団、ラ・レヴェルディの中心メンバーにほかならなかったのです!

 彼女たちはArcanaレーベルで、数々の傑作アルバムをリリースしていましたが、レーベル休止期間中しばらく供給が途絶えていましたが、ようやくその傑作アルバムの数々が、このたび続々と再プレスされてまいります。しかもそれらに付された興味深い解説を完全日本語訳、国内盤として初リリースしてゆくかたちになります!

 その記念すべき第一弾リリースが、これ——日本の古楽ファン垂涎の的、王道クラシック・シーンでいう「交響曲」にあたる注目ジャンルである「ルネサンスの多声ミサ」、それも特に研究ポイントの尽きないデュファイの作品。
 本盤の「聖ヤコブのミサ」は、デュファイの9曲あるミサ曲のうち第2作にあたる初期作品。当時まだ「音楽大国」だった英国からのユニークな影響、錯綜する委嘱・献呈についての謎、全体がひとつのミサとして構想されていたのか、などさまざまな疑問が浮かぶ。それらの疑問に対して宰者ミルコヴィチは詳細に検証、専門家マーガレット・ベントの呈示した決定的研究(1995)をふまえながらさらに演奏家=研究家としての自説も披露、この曲にまつわる謎をあざやかに解きほぐしてゆきます。
 ともあれ、肝心なのは演奏!ア・カペラが基本と思われたルネサンス初期のミサ曲に、彼女たちは綿密な研究の末、リコーダーやフィドルなど「合奏」も盛り込んでいるのです!この時代のミサ曲であれば、声楽オンリーでさらりと流されて終わりというところだが、研究成果として正当に楽器伴奏が付くとなれば興味も湧くし、当然聴いて心地よい。しかも名手たちの演奏は、実に精妙——まっすぐな古楽歌唱の重なり、ラテン系ならではの温もり、典雅で素朴な古楽器の音色...
 古楽ファンならずとも、ヨーロッパの教会にある祭壇画の天使奏楽を彷彿させずにはおかない清らかなサウンドには、つい心奪われてしまうに違いありません。

CONCERTO

CNT2010
(国内盤)
\2940
A.S.フィオレの音楽世界
 〜18世紀初頭、イタリア北部の宮廷音楽…トリオ・ソナタとアリアさまざま〜
アンドレア・ステーファノ・フィオレ(1686〜1732)
 1.トリオ・ソナタ集
  『12 のシンフォニア・ダ・キエーザ』作品1(1699モデナ刊)より
   〜ソナタ第2・3・5・6・8・11 番
 2. 歌劇『エンジェルベルタ』より 七つのアリア
アンサンブル・イザベラ・レオナルダ(古楽器使用)
アンジェロ・マンゾッティ(男声ソプラノ)
ヴィヴァルディ前夜。器楽はローマのコレッリ、声楽はナポリのスカルラッティが英雄だった頃イタリア最北部、ピエモンテ地方にも新芸術が芽吹いていた...均整のとれたソナタ、ヘンデル並の表現力を誇るアリア...弦も管も美麗なら、男声ソプラノ(!)も必聴!なにしろ3世紀以上も昔のことなので、バロック時代の作曲家には、どんなにすばらしい音楽を書いていようと、歴史に埋没してしまう天才がいたとしても不思議はありません——だからこそ、古楽を知っている方ほど「知らない名前の作曲家」というだけで躊躇したりしないもの。その先にどんな素晴しい世界が眠っているかもしれないのですから!
本盤の主人公であるA.S.フィオレという作曲家は、その意味で多くの方々に大きな発見となるに違いありません。一部の「ピエモンテ/サヴォワ(サヴォイア)の音楽芸術再発掘」といったテーマで編纂されたオムニバス盤などで、ルクレールやヴィヴァルディよりも早くこの地で活躍した作曲家として、ちょこっと登場する程度だったフィオレ。単体でアルバムにとりあげられる機会は、これが初めてではないでしょうか?
しかし一聴すれば、その名を記憶するに値する人物だということがよくわかることでしょう!作曲家フィオレが生まれたのは1686 年、大バッハの1年後。生地ミラノで幼少のころから才能をあらわにし、トリノの宮廷に雇われて「12のシンフォニア・ダ・キエーザ」(=トリオ・ソナタ集)を君主であるサヴォイア公に捧げたのが1699 年——何と13 歳の頃というから、驚きではありませんか。ちなみにこの君主は、トリノ(自動車メーカーFIATの御膝元ですね)に宮廷をおく北イタリアの大国、サヴォイア公国の長でした——サヴォイアの領土は現在のイタリア領ピエモンテ地方からフランス領サヴォワ地方までまたがり、地中海一帯まで勢力をもち、北イタリアが戦乱にあった18 世紀初頭にはミラノやシチリアまで領土にしていた強国。19 世紀にはイタリア独立の中心となるところですが、古くから文化大国として知られ、かつてはデュファイも長く逗留していました(そしてこのフィオレのつけた先鞭のあと、ヴィヴァルディが訪れたり、ルクレールが活躍したり…と多くの大家がトリノの宮廷にからんでいます)。1700 年頃といえばヴィヴァルディもまだ活躍せず、コレッリが器楽の巨匠として君臨し、A.スカルラッティがオペラの大家だった頃。コレッリに師事したフィオレは、師匠のトリオ・ソナタ様式を完璧に咀嚼した上、彼特有のたおやかな歌心をみずみずしく発露させ、聴き手を魅了してやみません(本盤でも、本場イタリアの古楽奏者たちのみごとな適性が光ります——歌心あふれるガットの美音!)。
一方、本盤で7曲収録されている小編成アリアからは、すでにギャラント様式さえ予感させる上品なメロディセンスに、ヘンデルの先駆?と思うほどの表現力が「ああ、美しい!」とため息をつかせます——トラヴェルソの参入も絶妙なら、男声なのにソプラノ音域まで出てしまう知る人ぞ知るイタリアの異才、アンジェロ・マンゾティの歌のまろやかな声もまた忘れがたく...古楽復興の面白みを感じさせてやまない、技ありの1枚!

COO−RECORDS

COO 030
(国内盤)
\2940
『究極の音楽』
 〜グレゴリオ聖歌による二つのミサ曲〜
 1.グレゴリオ聖歌待降節第一主日のミサ
 2.グレゴリオ聖歌年間第9主日のミサ
ゴデハルト・ヨッピヒ指揮
カペラ・グレゴリアーナ
まるで、ブルックナーの交響曲のように——凛とした調べのなかに、限りない温もりが息づく。ドイツ語圏におけるグレゴリオ聖歌解釈の重鎮、名匠ヨッピヒの、たおやかな音楽作り。「ことば」に息吹きが与えられ、詠唱が音楽になるとき...この古楽全盛の21 世紀だからこそ、ぜひ聴かれてほしい古楽合唱があります。ブルックナーやラヴェルの演奏でさえ「ピリオド楽器」で往年の響きを探ることが珍しくなくなった今だからこそ、あらためて耳を傾けたい歌のあり方があります。1〜4人くらいの限られた歌い手が伸縮自在、話しかけるように紡いでゆく古楽的なグレゴリオ聖歌はもちろん素晴しいのですが、ここでは10 人規模の合唱で歌われ、そうでなくては描き出せない、しみじみ心に沁みわたる聖歌をたっぷり味わえるのです。南独バイエルンのザンクト=オッティリエン修道院に集まった11人の精鋭歌手(実はすべて日本人)の美声をあざやかにまとめあげ、ひとつの「響きの巻物」のように、たおやかな合唱美を描き上げてみせたのは、ドイツを代表するグレゴリオ聖歌研究の権威、ゴデハルト・ヨッピヒ(1932 年生まれ)。生地ブレスラウ(現ヴロツワフ)は今でこそポーランドながら、彼が生まれた当時はドイツのシュレジエン地方(かのオットー・クレンペラー御大もこの街の出身)でした。1970年から89年までミュンスター=シュヴァルツァハのベネディクト修道院で首席カントルをつとめたのち、ルールとエッセンを中心にさまざまな組織でグレゴリオ聖歌や古文書学を教えてきたヨッピヒの指揮は、典礼文・祈祷文の「ことば」そのものの響きの音楽性を意識しながら、その意味をあざやかに「音」(=音楽)と化してゆきます。ピリオド派のグレゴリオ聖歌歌唱とは一線を画した、何十年もドイツ語圏で続いてきた、ある意味古風なグレゴリオ聖歌の響きではありますが、礼拝の現場における精神をしっかと実体験してきた人だからでしょうか、おだやかに、静かに、しかしたたみかけてくるような、その言い知れぬ説得力のうまみには、なんだかブルックナーの大ミサや交響曲を聴いているような充実度が息づいているのです! これもまた、20世紀に伝えられた「生」のグレゴリオ聖歌のあり方、それも純然たる「本物」の——そうであるならば、古楽好きの方々にとっても耳を傾ける意義はあろうというもので。合唱関係者ほどサンプル音源に好反応を示していただけている、という現況からも、その音楽性に筋の通ったもののあることが窺い知れましょう。歌われているのはローマ・カトリックが定めたグレゴリオ聖歌のうち、片方は降誕節第1主日(11 月、クリスマス準備期間の始まり)、片方は年間第9主日(聖三位一体の祝日から数えて9番目の日曜日)に歌うべし、とされている曲。とはいえ音楽内容は季節を問わず、いつ聴き深めるにも適した味わいを秘めています。

CYPRES

MCYP4630
(国内盤)
\2940
アルベール・ユイブレシュツ(1899〜1938)
 〜ベルギー近代、知られざる早世の天才〜
アルベール・ユイブレシュツ(1899〜1938)
 1. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
 2. 葬送の歌〜チェロとピアノのための
 3. 弦楽三重奏曲
ピエール・アモイヤル(ヴァイオリン)
清水祐子(va)
マリー・アランク(vc)
デイヴィッド・ライヴリー(p)
それはラヴェルや「フランス六人組」の同時代——知っている人は知っている、イザイやルクー、ジョンゲン…「ベルギー近代音楽」に、とびきりの名曲が潜んでいることを。天才ユイブレシュトの絶品さを教えてくれるのは、なんと名手アモワイヤル...!
メンデルスゾーンと同じく齢38 で亡くなり、数少ない作品をほとんど発表もしなかった天才、アルベール・ユイブレシュツ。彼はとかく渡世が下手で、ブリュッセルの片隅でピアノ弾きをして暮らし、プーランクやヒンデミットらに幾多の傑作を書かしめたアメリカの富豪スプレイグ=クーリッジ夫人に作品を見出されたにもかかわらず、彼女とうまく話せず、そのまま忘れられてしまったのでした。しかし!師匠ジョンゲンや心の師フランクらと同じく、ドイツの伝統とフランス近代の手法をあざやかにかけ合わせ、えもいわれぬ繊細な世界を描き出す才能は、まさしく忘却の淵から救われなくてはならない魅力に満ちている——本盤を聴けば誰もがそう思うに違いありません!

GRAMOLA

GRML98808
(国内盤)
\2940
シューベルト:二つのソナタD845・D664
 1. ピアノ・ソナタイ長調 D664
 2. ピアノ・ソナタイ短調 D845
イングリット・マルゾーナー(ファツィオーリ・ピアノ)
さすがは音楽大国オーストリア——続々と登場する注目の演奏家は、紹介に値する味わいあふれる実力派ばかり! ウィーンの伝統をふまえたマルゾーナーのシューベルト解釈は、堅固さのなかにフォルテピアノ的やわらかさがにじむ、絶妙感触!古典派時代以前からつづく伝統をもつ音楽大国オーストリアの「いま」を世界に発信する、ウィーンのレーベルGramola——この国で活躍する若き演奏家たちを続々と紹介してくれる当レーベルは、日本ではまだ知られていない腕利きピアニストたちの音楽世界にふれる絶好の機会の連続なのですが、このイングリット・マルゾーナーというグラーツ出身の気鋭奏者がまた、実にオーストリアらしい、好感触のピアノを聴かせてくれるのです! デビュー盤にシューベルトのソナタ、というのもなかなか珍しいところでしょうが(やはりウィーンの作曲家だからでしょうか)、一聴すれば適性は明白、なるほどシューベルトだよな、と納得至極。それも、即興曲や「さすらい人変奏曲」あたりではなく、壮大をきわめるイ短調ソナタD845 と、かわいらしく切なく・の小さなD664、という組み合わせがピタリとハマっているんです!11 歳でグラーツ音楽院に入学、往年の名匠エトヴィン・フィッシャー直系の弟子ゼバスティアン・ベンダに師事したのち、ウィーンに出てルドルフ・ケーラー門下に研鑚を重ねながら、バドゥラ=スコダやメイラ・ファルカーシュといったオーストリアの名手たち、さらにタチャーナ・ニコライエワなどにも師事してきたマルゾーナー。彼女のピアノの魅力は、なんといっても「千変万化のスタッカート」!ハイドンのソナタを何とも楽しげに、軽やかに弾く映像がYoutube にもありましたが、本盤のシューベルトでも、古典派ソナタの響きの根幹ともいえるフォルテピアノ的な減衰の早い音を、完璧な精妙さで、実にニュアンス豊かに弾き分けてみせるのです。使っているのがファツィオーリなのも、そうした彼女の個性をよく踏まえてのことでしょう——弾く人が弾けばウィーン古典派の魅力をフルに引き出せる、ある種の軽さと確かさを兼ね備えたファツィオーリならではの味わいが、バドゥラ=スコダ譲り?と思えるような磊落な表現(しかしそれでいて、技巧はまったく犠牲になっていません!)とあいまって、堅固かつしなやかな音作りを体現させるのです!何かと詩情や歌心ばかりが強調されがちなシューベルトのソナタを、あくまで「ウィーン古典派の血をひくソナタ」であったことを思い起こさせながら、過不足なく(これ、むずかしいですよね)、アクを出さずに個性は出しながら——壮大なD845 のソナタなんて、細部の入念さと全体の構造のとらえ方の確かさがみごと相まって、並居る名盤群とさえ肩を並べるほどではないでしょうか。小さなD664 でも、彼女の軽やかさと「なにげない影のつくり方」がきれいに浮き彫りに...まったくもって好感度大、実にオーストリアらしい感性が迸るシューベルト解釈。損はさせない「本場の最先端録音」です!
GRML98808
(国内盤)
\2940
シューベルト:二つのソナタD845・D664
 1. ピアノ・ソナタイ長調 D664
 2. ピアノ・ソナタイ短調 D845
イングリット・マルゾーナー(ファツィオーリ・ピアノ)
さすがは音楽大国オーストリア——続々と登場する注目の演奏家は、紹介に値する味わいあふれる実力派ばかり! ウィーンの伝統をふまえたマルゾーナーのシューベルト解釈は、堅固さのなかにフォルテピアノ的やわらかさがにじむ、絶妙感触!古典派時代以前からつづく伝統をもつ音楽大国オーストリアの「いま」を世界に発信する、ウィーンのレーベルGramola——この国で活躍する若き演奏家たちを続々と紹介してくれる当レーベルは、日本ではまだ知られていない腕利きピアニストたちの音楽世界にふれる絶好の機会の連続なのですが、このイングリット・マルゾーナーというグラーツ出身の気鋭奏者がまた、実にオーストリアらしい、好感触のピアノを聴かせてくれるのです! デビュー盤にシューベルトのソナタ、というのもなかなか珍しいところでしょうが(やはりウィーンの作曲家だからでしょうか)、一聴すれば適性は明白、なるほどシューベルトだよな、と納得至極。それも、即興曲や「さすらい人変奏曲」あたりではなく、壮大をきわめるイ短調ソナタD845 と、かわいらしく切なく・の小さなD664、という組み合わせがピタリとハマっているんです!11 歳でグラーツ音楽院に入学、往年の名匠エトヴィン・フィッシャー直系の弟子ゼバスティアン・ベンダに師事したのち、ウィーンに出てルドルフ・ケーラー門下に研鑚を重ねながら、バドゥラ=スコダやメイラ・ファルカーシュといったオーストリアの名手たち、さらにタチャーナ・ニコライエワなどにも師事してきたマルゾーナー。彼女のピアノの魅力は、なんといっても「千変万化のスタッカート」!ハイドンのソナタを何とも楽しげに、軽やかに弾く映像がYoutube にもありましたが、本盤のシューベルトでも、古典派ソナタの響きの根幹ともいえるフォルテピアノ的な減衰の早い音を、完璧な精妙さで、実にニュアンス豊かに弾き分けてみせるのです。使っているのがファツィオーリなのも、そうした彼女の個性をよく踏まえてのことでしょう——弾く人が弾けばウィーン古典派の魅力をフルに引き出せる、ある種の軽さと確かさを兼ね備えたファツィオーリならではの味わいが、バドゥラ=スコダ譲り?と思えるような磊落な表現(しかしそれでいて、技巧はまったく犠牲になっていません!)とあいまって、堅固かつしなやかな音作りを体現させるのです!何かと詩情や歌心ばかりが強調されがちなシューベルトのソナタを、あくまで「ウィーン古典派の血をひくソナタ」であったことを思い起こさせながら、過不足なく(これ、むずかしいですよね)、アクを出さずに個性は出しながら——壮大なD845 のソナタなんて、細部の入念さと全体の構造のとらえ方の確かさがみごと相まって、並居る名盤群とさえ肩を並べるほどではないでしょうか。小さなD664 でも、彼女の軽やかさと「なにげない影のつくり方」がきれいに浮き彫りに...まったくもって好感度大、実にオーストリアらしい感性が迸るシューベルト解釈。損はさせない「本場の最先端録音」です!
GRML98843
(国内盤)
\2940
ドビュッシー/グルダ/プッチーニ
 〜ウィーンの「いま」から見た、弦楽四重奏のための3傑作〜
 クロード・ドビュッシー(1862〜1918):
  1. 弦楽四重奏曲ト短調(1897)
 フリードリヒ・グルダ(1930〜2000):
  2. 弦楽四重奏曲嬰へ短調(1951/52)
 ジャコモ・プッチーニ(1858〜1924):
  3. 「クリザンテーミ(菊)」
    〜弦楽四重奏のための
アーツィエス四重奏団
フリードリヒ・グルダ、歿後10 年。彼こそは、芸術首都ウィーンそのものだった...!精妙&痛快なドビュッシー解釈に始まり、クールさと深遠さに彩られたグルダの快(怪)作、そして知る人ぞ知る傑作「菊」へ。絶妙の曲構成を鮮やかに、ウィーン最先端の異才たち!バドゥラ=スコダ、デームスらとならび、20 世紀半ばに「ウィーンの三羽烏」と喧伝されながら世に羽ばたき、他の二人のピアニストとは一味違ったヴァーサタイルな活躍を通じて何かと物議を醸してきた天才、フリードリヒ・グルダ——ウィーンっ子らしくヨハン・シュトラウスを誰よりも鮮やかに弾けたのに、その録音テープを自ら湖に沈めて葬り去り、ジャズ・ピアニストとして世界的な活躍をみせたり、クラヴィコードで異色の録音をしてみたり、まだ古楽アプローチなど全然市民権を得ていなかった時代にニコラウス・アルノンクールとモーツァルトの二重協奏曲を録音(もうひとりのピアニストはチック・コリア!)かと思えばブラームスをあからさまに毛嫌いし、そのかたわらベートーヴェンのソナタは2度にわたって体系的にレコーディングしてみたり...この異才が2000年に世を去ってから早10年、Deutsche Grammophon からも近日、その偉業をしのぶBox セットがリリースされるとのこと。しかしグルダ当人の故郷でもある“音楽の都”ウィーンからは、この街に暮らしてきた芸術愛好家でなくては企画できなかったような、独特のオマージュともいえるアルバムが届いたのでした——ツェムリンスキーやコルンゴルトと並んでウィーン近代を代表する作曲家、ヨゼフ・マルクス(1882〜1943)に作曲を学んだ「作曲家グルダ」が、1953年(ショスタコーヴィチなら交響曲10番、翌年には伊福部昭「ゴジラ」、そんな頃ですね)に発表した「弦楽四重奏曲」を中核に据えた新録音! 通常の楽章構成をきれいに逆転させたような「緩〜急〜緩」の3楽章仕立て、しかし曲内容は実にクラシカル——ハイドンの「告別」と同じく?嬰へ短調で書かれたその音楽は、これより20年近く前のヤナーチェクやバルトークなどの作品なんかより、ずっと耳になじみやすく普遍的。最後の緩徐楽章(ここがいちばん長い...ヘソ曲がりですねえ)のしなやかな変奏的展開を聴いていると、古典的ソナタ形式よりもむしろバッハの「前奏曲とフーガ」を連想してしまう手堅さ、だが曲調にはどこかジャズっぽいオシャレな感覚もあって。アルバム冒頭を飾るのは、ピアニストとしてのグルダが得意としていたことでも知られる作曲家、ドビュッシーの名品。それからグルダの作品、最後には(弦楽四重奏好きなら、いつか必ず魅了されることになる)プッチーニの秘曲「菊」で締めくくられる——このプログラム進行自体に周到なドラマ展開が垣間見えるのですが、その全体にきれいな一貫性を与えつつ、滋味深く、かつ精妙なシャープさを忘れず鮮やかに仕上げてゆくのは、音楽都市ウィーンの「いま」を支える気鋭集団、アーツィエスSQ!伝統とみずみずしさの共存は、この街で“旬”な快進撃を続ける者たちならではの境地です。決して喧伝されない、音楽の本場のほんとうの最先端、音楽都市の良心が、ここにあります。
GRML98849
(国内盤)
\2940
オルフ:
 世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」(1937)
  〜オルフ承認による、
   ヴィルヘルム・キルマイヤーの室内楽伴奏版(1956)〜
ヨハンネス・シュテーヒャー指揮
ヴィルテン少年合唱団、
ネクスト・ステップ打楽器Ens.
デュオ・ダコール(2台ピアノ)
これは思わぬ拾いもの——あの「カルミナ・ブラーナ」に、こんなエキサイティングな異版が!ピアノ2台に打楽器が加わっただけで、オーケストラを数段上回る?迫力と表現力...通念をくつがえす合唱の表現力も、圧巻そのもの。さすがは合唱の本場オーストリア!「本場オーストリア」、とあえて言わせていただきましょう。ご存知、名作カンタータ『カルミナ・ブラーナ』はもともと、バイエルン地方南部のベネディクトボイレン修道院で発見された中世の歌集をもとに、そこに使われていた詩(歌詞)にインスパイアされ、同じバイエルン出身の作曲家であるオルフが自由な音楽をつけた作品。つまり、この曲の“故郷”はドイツ南部のバイエルン地方なのですが、Gramola レーベルと本盤の演奏家たちの暮らすオーストリアは、バイエルン南端と国境を接し、民族的にもバイエルン人とほぼ同じ。方言も互いに非常に似ており、どちらもカトリック主流。つまりオーストリアとバイエルンは、文化的な親類同士なのです。・・・といった前置きはともかく、ウィーン少年合唱団やシェーンベルク合唱団などに代表されるとおり、ヨーロッパ随一の「合唱大国」でもあるオーストリアから届いたこの『カルミナ・ブラーナ』新録音、なんといっても注目すべきは使用楽譜。オルフ自身の壮大なオーケストラ版をもとに、彼の弟子でもあるキルマイヤーという作曲家が、ピアノ2台と打楽器群を合唱に添えた縮小編成版を作成しているのです。このヴァージョンはオルフ自身もOK を出している正統派のヴァージョンなのですが、いったん聴いてみれば、作曲者自身が承認するのも当然!ということがすぐにわかるでしょう——なにしろ編成が「縮小」されているにもかかわらず、ピアノという表現力豊かな楽器が2台もあるせいか、多彩な打楽器の迫力がなせるわざか、はたまた合唱が大編成だから当然なのか、いっさい「不足感」がないどころか、アンサンブルが緊密になったぶん、ぐっと求心力が増し、とほうもなく聴き栄えのする演奏になってしまうのです!「痛快」という言葉がこんなにぴったりくる『カルミナ・ブラーナ』解釈は、めったにないのでは?ピアノはOehmsClassics にも録音のある名手デュオ・ダコール、その演奏がまた鮮烈に緩急自在...!そしてもうひとつ、本盤の合唱は約50 人の児童歌手プラス30人の成人歌手、総勢80 名(オーケストラ並…)のうち4割近くが少年合唱団員。よその少年合唱団なら「頼りなさ=初々しさ」といった魅力もあるのでしょうが、ヴィルテン少年合唱団の卓越した解釈力は、そんな次元など超越した音色的パレットを誇るもの。彼らがもたらす深い感動は、ちょっと聴き逃せません。オーケストラ愛好家にも「声のオーケストラ」たる合唱の魅力、打楽器の表現力を教えてくれる、痛快な名演でございます!
GRML98857
(国内盤)
\2940
レーガー:三つの無伴奏チェロ組曲
 無伴奏チェロ組曲第1 番ト長調op.131c-1
 無伴奏チェロ組曲第2 番イ短調op.131c-2
 無伴奏チェロ組曲第3 番ニ短調op.131c-3
アダルベルト・スコチッチ(チェロ)
ウィーン・フィルとウィーン室内合奏団の低弦を支えてきた、名匠スコチッチが練り上げられた感性でじっくり、その魅力を解き明かしてゆく「世紀末芸術」レーガー作品。バッハへの限りない愛、晩期ロマン派特有の深み…ガリアーノの銘器の美音も魅力!

音楽都市ウィーンの良き伝統は、この街の中央部、グラーベン広場に店を構える老舗レコード店が起こしたGramola レーベルに、脈々と受け継がれています。主宰陣の確かな人脈あればこそ、こんな超一流の演奏家が、さりげなく登場したりするわけで。本盤の主人公アダルベルト・スコチッチは、その名をご存知の方はなかなかの通とお見受けいたします。ウィーン・フィルの精鋭たちが集まり、コンサートマスターのゲアハルト・ヘッツェル(vn)以下、腕利きの弦楽・管楽奏者たちが集まり、モーツァルトをはじめとする「ウィーンの傑作」を本場の香りそのまま堪能させてくれた、あのウィーン室内合奏団の名チェリストこそが、このスコチッチにほかなりません!若い頃にはウィーンの偉人たちのほか、フランスのナヴァラやイタリアのマイナルディらラテン系の名匠たちにも薫陶を受け、ウィーン・フィルに入団後は頼もしき名手として、たゆたうようなウィーン風のバス・ラインを担ってきました。その絶妙の感性が、アンサンブルのみならずソロ、それも無伴奏であろうと十全に発揮されることを十二分に証明してくれるのが、このレーガー・アルバムなのです!
バッハの信奉者にしてブラームスやベートーヴェンの後継者、という立脚点で19 世紀末〜20 世紀初頭のドイツに独特の存在感を放った「新古典主義者」レーガーの作品は、うっかり手をつけると実に難渋な仕上がりになりかねない複雑な構成の曲が多く、とくにこうした無伴奏作品は演奏家の技量が本当に問われる難曲ばかりと思いますが、その点スコチッチはまったくもって紹介者として最適そのもの。ナポリ18 世紀の名工ガリアーノの銘器からゾクゾクするような美音を引き出しつつ、レーガーの綴ったドラマをきわめてわかりやすく解きほぐすフレーズの区切り方、強弱のつけ方で、これら3編の無伴奏作品の魅力をあざやかに示してくれます。これらはレーガーの“早過ぎた晩年”の少し手前、1914 年に編まれた膨大な無伴奏作品集(この3編の組曲のほか、無伴奏ヴィオラ組曲3編、無伴奏ヴァイオリンのためのプレリュードとフーガ6曲、2挺のヴァイオリンのための二重奏曲3曲を収めた「作品131」)に含まれている作品で、バッハへの限りない敬愛を示しながらレーガー独特の濃厚な歌い口にも事欠かず、スコチッチの縦横無尽・変幻自在の解釈で聴いていると、ああ本当に素敵な曲を見つけたものだ…と嬉しさがじわじわこみ上げて来ること請け合い!
シンプルにして効果的なジャケットも例によってハイセンス、「本場ならでは」の、手にして嬉しい充実アイテムでございます。
GRML98840
(国内盤)
\2940
シューベルト(1797〜1828):
 1. 弦楽五重奏曲ハ長調 D946
 2. 序曲ハ短調 D8(校訂:D.ゲリンガス)
ダヴィド・ゲリンガス(チェロ)
アーツィエス四重奏団
あの名手ゲリンガスが、いきなり Gramola に登場! ウィーン気鋭の四重奏団のゲストで!ひたすら静かに、しかしどこまでも豊かに——
長大な曲が進んでゆくにつれ、じっくり掘り起こされてゆく、シューベルト最晩年の深みと叙情。冷たくて熱い充実解釈!
Gramola レーベルは基本的に「本場ウィーン」のレーベルですが、そこへやってくる世界的名手もこうして録音してくれるとなれば、なんとも目の離せないレーベルではありませんか!
今回お目見えするのは、バルト三国はリトアニア出身、かのロストロポーヴィチ御大のもとで腕を磨き、日本ではつとに有名な来日あまたの名チェリスト、ダヴィド・ゲリンガス!! (1973 年チャイコフスキー国際コンクール優勝…なんてところから説明しはじめるのは、バドゥラ=スコダについて「ウィーンの三羽烏」云々…と説明するようなもの)。珍しいレパートリーの紹介にも熱意を注ぎ、グバイドゥーリナ、シュニトケ、デニソフ…といった旧ソ連を代表する大作曲家たちを西側に積極的に紹介してきたこの大家、昨今では指揮活動にもいそしんでおり、九州交響楽団の首席客演指揮者にもなったそう。
しかしながら、ここで本懐のチェロ片手に奏でるのは、王道ど真ん中の傑作、シューベルトの弦楽五重奏曲。名盤あまたの名曲ですが、本盤でゲリンガスとともにその長大かつ深遠な音楽世界に挑むのは、音楽都市ウィーンでいま最も注目されている若手グループのひとつ、アーツィエス四重奏団!
2008 年にはオーストリア銀行が後援する年間最重要若手アーティストに指名されたこの団体、着々と実力をつけ、いつしかこんな大家と共演するところに来ていたようです。それにしても——共演者の力なのか、はたまた彼らの感性の充実度なのか、ここでの解釈は実に周到、いや狡猾といってもいいのかもしれません。はじめのうちは淡々・着々と弾き進めているようにも思えたその演奏は(それにしても、まったく滋味ゆたかな音色です。ゴリゴリと気持ちよく響く低弦、しなやかな中高音…)、長大なソナタ楽章や緩徐楽章が進むにつれ、客観的な印象のむこうから壮大な曲のスケールを自ずと浮かび上がらせる、そんな解釈だったことに気づかされるのです。そして悪魔の舞踏のようなあの終楽章が終わりに差しかかる頃の、鳥肌の立つような期待感...!
併録されている「序曲」はシューベルトが14 歳の頃、弦楽四重奏ないし五重奏のために書いた小品で、もともと五重奏ヴァージョンはヴィオラ2挺の編成ですが、チェロでも弾けてしまう音域のため、ヴィオラ用の楽譜をチェロ用に直して演奏しています。 「ケルビーニ風の劇的雰囲気」とは原文解説の謂…チェロが増えたことでドラマティックさも増し、聴き応えある秘曲らしさをじっくり味あわせてくれます!

INDESENS!

INDE018
(国内盤)
\2940
バロックと古典派の傑作トランペット協奏曲
 ヨハン・ネポムク・フンメル(1772〜1837):
  1. トランペット協奏曲変ホ長調
 ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681〜1767):
  2. トランペット協奏曲ニ長調(全4 楽章)
 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
  3.ブランデンブルク協奏曲第2番ニ長調 BWV1047*
 レーオポルト・モーツァルト(1715〜87):
  4. トランペット協奏曲ニ長調
 ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809):
  5. トランペット協奏曲 変ホ長調 Hob.VIIe-1
エリック・オービエ(トランペット)
* フランソワ・ルルー(オーボエ)
ブノワ・フロマンジェ(フルート)
アラン・モリア(ヴァイオリン)

ヴァンサン・バルト指揮
ブルターニュ管弦楽団、
トゥルーズ室内管弦楽団(*バッハのみ)
「管の国」フランスのみならず、世界中のトランペット奏者の頂点が、ここに——
モーリス・アンドレの正統な後継者たる名匠エリック・オービエ、その技量を端的に知るならやはり、誰の耳にも違いが明らかな定番傑作群で!
バッハでのゲスト独奏陣もゴージャス!「管楽器の王国」フランスのスーパープレイヤーたちが、ブラス吹奏楽系のレパートリーを含め痛快な名演をくりひろげ、早くも第一弾リリース分が好評を賜りつつある新規取扱Indesens!(アンデサンス)レーベル。このたび到着した新譜はご覧のとおり、吹奏楽系ユーザーのみならず、一般的なクラシック・ファンにも広くアピールする、トランペットのための古典的レパートリーを集めての「誰の耳にも明らかな名演」!
ブラス系のCD には、吹奏楽関係者以外には魅力が伝わりにくい珍しいレパートリー(現代作品含む)も多いわけですが(録音されるくらいだと、概して名曲なんですけど…)、本盤のように「トランペット協奏曲の名曲」といったときに必ず名のあがるハイドンとフンメルの2大傑作や、トランペットが超高音域で華麗なパフォーマンスを聴かせるバッハのブランデンブルク2番など、わかりやすい曲目で攻めてくれると、演奏者が「現代トランペット界の頂点をきわめる!」というのがどういう意味でそうなのか、誰もがちゃんと耳で確かめられようというもの。近日ご案内予定の、オービエが残した他の絶品ラインナップにも食指が動くに違いありません。
「フランスのトランペット」の代名詞的巨匠モーリス・アンドレの教えを受け、弱冠19 歳でパリ・オペラ座の首席奏者として輝かしいスタートを切り、1995 年以降は専らソリストとして活躍しているエリック・オービエの吹き口は、まさに饒舌にして雄弁、絶対ハズレのない最上級のステーキのように、旨味たっぷり&肉感的なサウンドで聴き手を魅了してやみません。その華やかなこと、薫り高いこと、そして1 音1音がなんと含蓄に富んでいること…「あらがいがたい」の一言です。
ハイドンとフンメルでは、ティンパニ付で意気揚々なオーケストラも絶妙!惜しみなく盛り込まれた贅沢曲目「ブランデンブルク」では、レ・ヴァン・フランセの天才オーボエ奏者ルルーや破格の名手フロマンジェら、スーパープレイヤーたちとの超・高次元なカラミに酔いしれること必至!です。
INDE016
(国内盤)
\2940
ラヴェルの庭で フランス近代、ピアノ・デュオの風景
 〜サティ、ドビュッシー、ラヴェル、リスト〜
サティ(1866〜1925):
 1. エキセントリックな美女
  〜ピアノ連弾のための、大真面目な幻想曲
ドビュッシー(1862〜1918):
 2. 『牧神の午後』への前奏曲
  〜作曲者自身による2台ピアノ版
ラヴェル(1875〜1937):
 3. バレエ音楽「マ・メール・ロワ」〜ピアノ連弾版
  (追加曲編:リュシアン・ガルバン、ジャック・シャイエ)
リスト(1811〜1886):
 4. ドン・フアンの追憶
  〜モーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』による、
   2台のピアノのためのトランスクリプション
デュオ・カリエール(ピアノ連弾/2 台ピアノ)
「管の国」フランス発、管楽器サウンドの真髄を紹介してきたIndesens!が、その抜群のセンスを発揮して放ったフランス近代ピアノ作品集は、聴きどころ満載!薫り高くも明晰なタッチが描き出す「牧神」のピアノ版、いつもと違う「マ・メール・ロワ」...ドビュッシーの「シランクス」、グノーの「小交響曲」、ラヴェルの「ボレロ」…フランスは19 世紀以来、連綿と管楽器の王国であり続けてきました。そんな「管の国フランス」の素晴しい伝統を今に伝える名管楽器奏者たちの名演を次々とリリースしてきたIndesens!レーベルが、突如、まったく管楽器の出て来ないアルバムをリリースしてきたのですから、頭をかしげるほかありません。・・・とでも書くべきなのかこれは、と思いながらサンプルを聴き、企画を検分してゆくうち、これはやはり、自国の文化に誇りあり・のフランス文化人でなくてはできない洗練された1枚にほかならない!ということに気づかされました。ごらんください、自らピアニストとしても卓越した才能を示し、この楽器の機構と音色について明敏な感覚をそなえていたフランス近代の大家、モーリス・ラヴェルを軸に据え、彼の音楽性にかかわる3人の作曲家たち——先輩にしてライヴァルでもあったドビュッシー、伝統にとらわれない音作りでラヴェルの向こうを張ったサティ、そして「自らピアノの名手であり、かつ新しい音響芸術を切開いた」という点でラヴェルの先駆者であったリスト——の作品群とともに、センスあふれる知的なプログラムに編み込んでみせたのは、フランス気鋭の専属連弾ユニット、デュオ・カリエール。彼らの師匠は往年の名匠アルフレッド・コルトーの弟子バスクレ=ゲラルディ、ラヴェル自身の友人でもあったヴラド・ぺルルミュテール、ウィーンの良き伝統と独自の方法論をもつ巨匠イェルク・デームス...といった面々だそうですが、作品の繊細な美質をていねいに解きほぐしながらも、噛んで含めるような明晰さが単調さとは無縁でひたすら薫り高くなる、おのずと心そそられずにはおかない演奏解釈にはまさに、そうした師匠たちの影響をありありと感じ取れるようです。繊細一辺倒でなく迫力にも事欠かないリスト作品もさることながら、注目は管弦楽の色彩感を色抜きして、曲そのものの美しい骨子を浮かび上がらせた「牧神〜」のピアノ版(管弦楽版と同時に作成された版)。そして、当初から連弾曲として構想されはしたものの、バレエ音楽として管弦楽化したさい幾多の追加部分のついた「マ・メール・ロワ」を、その追加部分までピアノに再編曲、物語性あふれる流れで聴かせてくれる心憎さ…!変幻自在のサティ解釈も含め、どこをとっても魅力満点な1枚なのです。
INDE005
(国内盤)
\2940
ミーチャの太陽 およびその他の傑作金管五重奏作品
ジャン=マルク・ブーデ(1957〜):
 1. ミーチャの太陽(世界初録音)
ジャン・バック(1937〜):
 2. ラウダ(讃歌)〜四つの小品
マルセル・ランドフスキ(1915〜99):
 3. 白と炎
エドワード・グレッグスン(1945〜):
 4. 金管五重奏曲
ドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906〜75):
 5. ジャズ組曲 (ピエール・
レモンディエール編曲による金管五重奏版)
オア・ノーツ・ブラス(フランスの金管五重奏団)
「管の国」フランスは、もちろん金管も強い——パリ音楽院の伝統を「いま」に息づかせるのはひたすら精気煥発 & 完全無欠のテクニックで迫る、肺活量満点のラテン人5人!隠されたテーマは、意外にも「ショスタコーヴィチ」?! ヨーロッパならではの上質金管盤!言わずと知れた「管楽器の王国」フランス——その最高の伝統は、もちろん金管楽器奏者たちにも受け継がれております。クラシック市場の通念をくつがえす「現代音楽アリでもどんどん売れる!」という特性にあふれたブラス系アイテムを連発、さすがは「管の国」フランスの面目躍如!ということが日本市場にも伝わりつつあるIndesens!レーベルからの本作は、この国に金管の伝統あり!ということを鮮やかに印象づけてやまない金管五重奏の傑作盤! 2003 年、当時まだパリ音楽院の学生だった5人の曲者たちが結成したこのグループは、翌年から3年続けて出場したコンクールでいきなり3連続優勝、その後もなお鮮烈な活躍を続けている「フランスの“いま”を代表する金管五重奏団」のひとつ。金管五重奏はクラシック・ユーザーからすると周縁かもしれませんが、いやいやどうしてどうして、ブルックナーにチャイコフスキーにベルリオーズに...とオーケストラの壮麗なブラス・セクションを愉しまれているユーザー様なら、この録音の緩急わきまえた絶妙プレイには夢中にならざるを得ないはず、新たな注目ジャンルとして愉しんでいただけるに違いありません。ショスタコーヴィチへのオマージュを込めた冒頭作(“ミーチャ”とはご存知、ド「ミト」リー・ショスタコーヴィチの愛称)は、このロシアの巨匠のポピュラリティを前面に押し出したオシャレでクールな一編...!そこからしばらく、カナディアン・ブラスのために作曲されたジャン・バックの「ラウダ」、メシアンやデュティユーと並ぶフランス20 世紀きっての大家ランドフスキによる、繊細な音色の重なりが魅力的な「白と炎」、(ブラス関係者には言わずと知れた)英国ブラス界の重鎮グレッグスンの充実した五重奏曲...と、ブラス系というより本格クラシックと言ったほうがいいような玄妙・精緻な作品がつづき、金管五重奏というものの通念をあざやかにくつがえし続けます(えもいわれぬ弱音の魅力、細やかなアンサンブルのやりとり、決して下品にならない高雅なフォルティシモの精力...!)。しかるのちのシメが、ショスタコーヴィチの「ジャズ組曲」——あの往年の名画みたいな、時代錯誤の洗練さが、クラシカルなるものとブラス的なるものを絶妙に融け合わせ、誰しもを魅了してやまないフランス金管の味わいを否応なく印象づけてアルバムは終わる...この流れ、クセになります!

INTRADA

INTRA043
(国内盤)
\2940
古きよき時代、アメリカのピアノ芸術
 〜ラフマニノフ、プロコフィエフ、ガーシュウィン〜
 ラフマニノフ:
  1.『絵画的練習曲集(音の絵)』op.39 より
   練習曲第1・3・4・8番
 プロコフィエフ:
  2. 歌劇『ロミオとジュリエット』による10 の小品 op.75
 ガーシュウィン:
  3. ラプソディ・イン・ブルー
    〜作曲者自身によるピアノ独奏版
ヴェラ・ツィバコフ(ピアノ)
フランス新世代のロシア系ピアニストが奏でる、「アメリカのロシア音楽/アメリカの新芸術」!
ヨーロッパのセンスあればこそ、の飛び切りな上品さが、ガーシュウィンさえ高雅にクラシカルに、その魅力を描き出す。艶やかなタッチのヴィルトゥオーゾ作品も、また格別!
フランスは、アメリカと同じく移民大国——ポーランド革命の失敗にさいし、ショパンをはじめとするポーランド人がパリに集ったり、ロシア革命で立場の危うくなった貴族たちが逃れてきたり...と、スラヴ系の人々が古くから移り住み、フランス人として暮らしているケースは少なくありません。ヴェラ・ツィバコフもまた、幼年時代をモスクワで過ごしたあと、幼い頃に家族とフランスに移り住んできた「ロシア系フランス人」。
そんな彼女だからでしょうか、ロシア人たちが複雑な思いを胸に、さまざまな事情で祖国を後にして向かう先だった「20 世紀初頭のアメリカ」には、個人的な思い入れも持っているようです。
2年前にはIntrada レーベルでのデビュー盤で、いきなりショパンのバラード全曲という意外なレパートリーを痛快解釈で聴かせてくれたこの俊英、今度は一転、そんな古きよき時代のアメリカに目を向けたのでした。ラフマニノフ、プロコフィエフ、そしてガーシュウィン——三者三様にアメリカ社会とコミットしてきた天才たちの、傑作中の傑作を集めた1枚でございます。ともあれ、その音楽内容・録音クオリティはずばぬけて秀逸!
磨きぬかれたテクニックに一点の曇りもなし、という彼女だけに、過剰に残響を拾わずピアノの直接音を過不足なく収めきる秀逸録音がしっくり合うのです。そうしてくまなく再現される音楽性には、ロジェ・ムラーロ(!)とブリジット・エンゲレールという二人の師匠の感性があざやかに反映されているよう。ムラーロ譲りの不思議な「味」と、エンゲレール譲りの堅固な構築感覚が、冒頭の「絵画的練習曲集」でいっさい妥協のない明晰さを打ち出し、「ロミオとジュリエット」に独特のドラマ的流れをつくりだす——ジャズ的コンテクストではなく「亡命者たちのアメリカ」という響きのイメージを聴き手にあたえたまま、最後に響きわたる「ラプソディ・イン・ブルー」(作曲者自身の手になるソロ・ヴァージョン!)のノーブルかつヴィヴィッドな解釈は、この曲にまつわる通俗的なイメージを上品かつエキサイティングに一新してくれます。そのタッチはあくまで最先端のあざやかさに貫かれているのに、描き出される世界はいかにも「古きよきアメリカ」...ちょっとシックに食卓を演出したいときなどにもぴったりですし、何か極上なピアノ新録音を、という耳の肥えた玄人リスナーにも、自信をもっておすすめできる「本物のピアノ盤」です!

PAN CLASSICS

PC10212
(国内盤)
\2940
モッシ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集 作品1
 (1716 アムステルダム刊)より
 ジョヴァンニ・モッシ(1680〜1742)
  1. ソナタ第1番ニ短調
  2. ソナタ第9番変ロ長調
  3. ソナタ第2番イ長調
  4. ソナタ第 10 番ハ短調
  5. ソナタ第5番ロ短調
  6. ソナタ第 12 番ニ長調
ライラ・シャイェーグ(バロックvn・グアルネリ1675 年オリジナル)
イルゼ・グラドゥレ(バロックvc)
イェルク・ハルベック(cmb)
ヴィヴァルディやタルティーニだけじゃない!
イタリア・バロックのヴァイオリン・ソナタであえて録音されるに至る音楽に、ハズレなし。
スリリングな技巧、艶やかな歌...聴き慣れない曲だから「耳をそばだてさせる」、その喜びを伝えるPanClassics の快心作!
ホント、私たちはバロック音楽の一部しか知らないんですよね…あらためて思います。名前ばかりが残っていても、曲そのものを聴く機会が少ない作曲家だってたくさんいますし(たとえば「カノン」以外のパッヘルベルとか、ラインケンとか、レオナルド・ヴィンチ(ナポリ楽派の)とか、ルクレールの師匠ソーミスとか…いや、探せば必ず録音は幾つかあるんですが、探せば)、それどころか全く聞いたことのない名前の作曲家も続々。そうしたところに秘められた名曲が潜んでいるのですから、古楽探訪はやめられません。
本盤のジョヴァンニ・モッシだって、ご存知の方がおられるとすれば、たまたまムジカ・アンティクヮ・ケルンのイタリア秘曲集に1726年の協奏曲がひとつだけ入っていたからでは。MAKのエッジの効いた演奏だと、だいぶ響きの趣きも変わっていたのだな…というのが、本盤に出会って担当が感じたこと。音楽都市ローマで活躍し、かの巨匠コレッリが指揮するルスポーリ公のオーケストラで長年演奏を続けてきた稀代のヴァイオリニスト——モッシはそういう経歴の持ち主で、大バッハと親交のあった有名な著述家マッテゾンも「コレッリ派の名匠」と一目置いた、諸外国にも存在感ある人物だったようです。それもそのはず、ここに収録されている「作品1」のソナタ集は、「コレッリの活躍地」として知られた本場ローマで活躍する作曲家モッシが、楽譜印刷のメッカである国際都市アムステルダムで出版した曲集なのですから!(ヴィヴァルディの協奏曲群やコレッリの合奏協奏曲も、このアムステルダムで出版されたのはご存知のとおり)。
事実、モッシの音楽作りは「緩〜急〜緩〜急」の教会ソナタ様式ないし室内ソナタ風組曲形式を骨子に据え、第2楽章にフーガを、終楽章にジグを…と楽章構成の点でもコレッリ作品との共通点が認められるほか、タルティーニさえ予感させる歌心、ヴィヴァルディより均整のとれた形式感覚…と随所に注目点が続々!
バンキーニのアンサンブル415で腕を磨いてきた名手シャイェーグのたおやかな運弓、絶妙のタイミングで迸り出る技巧性も、曲の美をありありと伝えてやみません。解説も充実。
PC10201
(国内盤)
\2940
ソレール神父:チェンバロのための作品集
アントニオ・ソレール神父(1678〜1741):
 ①プレリュード第1番ニ短調 ②ファンダンゴ
 ③ソナタニ長調 SR74 ④ソナタト短調 JN11
 ⑤ソナタハ短調 SR18 ⑥ソナタト短調 SR81
 ⑦ソナタニ長調 SR37 ⑧ソナタロ短調 SR10
 ⑨パストラル変ホ長調(ソナタSR96より)
 ⑩ソナタ嬰ヘ長調 SR90:アレグロ(快速に)
 ⑪プレリュード第7番ハ短調⑫ソナタハ短調 SR100
 ⑬プレリュード第5番ニ長調
 ⑭ソナタニ長調 SR84:アレグロ(快速に)
 ⑮ミヌエット(メヌエット)ニ長調(ソナタSR92より)
ディエゴ・アレス(チェンバロ)
使用楽器:セビーリャのF.P.ミラバル1734 年製作モデル
チェンバロ音楽、新世代——D.スカルラッティの後をひくスペイン・ロココの大家ソレール、「ファンダンゴ」をはじめとするエキサイティング&エキゾチックな響きだけではなく前古典派随一の「うたごころ」をたおやかに描き出してみせた、同郷の新世代古楽奏者!
気がつけば、21 世紀も10 年め——早いものです。クラシック音楽の世界でも、1980 年代生まれの演奏家が続々と世界を揺るがしはじめています。音楽的才能はもちろん研究精神も要求されるかわり、実力さえあれば若手にもどんどん活躍のチャンスがあるヨーロッパ古楽の世界では、いわずもがな...ここ10 年ほどの間にイタリアより上?と思われるほど活況を呈し、フランスにさえ追い迫らん勢いで古楽シーンが急成長しているスペインも、そんな新世代登場の坩堝として注目すべき地域です。
そこから彗星のごとく頭角をあらわしてきたのが、このディエゴ・アレスという若者——古楽先進国オランダでの師匠はジャック・オッホとリチャード・エガー、まさに新世代!といった経歴ですが、その後もバーゼル・スコラ・カントルムで名手ベティヒャーや名教師クリステンセンのもと研鑚を積んで、今まさに故郷スペインに錦を飾ろうとしている天才。その腕のたつことといったら...!
近年、注目をあつめている若手チェンバロ奏者といえば、たいてい驚愕の速弾きや痛烈なコントラストで聴き手をあっといわせるヴィルトゥオーゾ派が少なくないわけですが、このディエゴ・アレスは(曲目が曲目で、いくらでもそういうことができそうなのに)決して超絶技巧にモノをいわせるでなく、明らかにやればできる速弾きを決してひけらかさず、音楽にひそむ「うたごころ」を——使っている楽器が、音量の大小さえ弾き分けられない1段鍵盤チェンバロなのに!——まさに変幻自在のタッチで、きれーいに浮き上がらせてみせるのです! 熟練のチェンバリストでも、こういったカンタービレな弾き方は必ずしも成功するものでもないのに、本盤ではどこをとっても心とろかす流麗さ、まろやかさ...。
作曲家の紹介が遅れました。アントニオ・ソレール神父…「修道士の衣を着た悪魔」と呼ばれたほど、人を魅了してやまない音楽ばかりを書き続けた、前古典派時代のスペインの聖職者=作曲家。555曲のチェンバロ・ソナタで知られるスカルラッティの後輩で、同じようにスペイン情緒のほんのり香るイキのいい鍵盤曲を書いた男。
レオンハルトの愛弟子、オランダのボブ・ファン・アスペレンが惚れ込んで全曲録音したのも今は昔、本場スペイン&同時代の楽器をモデルにした銘器での名演が、新鮮・玄妙にその魅力を再発見させてくれます。時代は21 世紀——本場スペインでの古楽復興も、ここまできたものか!と感服すること必至!

RAMEE

RAM0903
(2CD)
(国内盤)
\4515
バッハ:さまざまなトッカータ
 〜チェンバロとオルガンのための作品より〜
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 ◆チェンバロのための作品
  ①トッカータト短調BWV915
  ②トッカータハ短調 BWV911
  ③トッカータニ短調 BWV913
  ④トッカータニ長調BWV912
  ⑤トッカータ嬰へ短調 BWV910
  ⑥トッカータト長調 BWV916
  ⑦トッカータホ短調BWV914
  ⑧トッカータイ長調 BWV Anh.III-178
 ●オルガンのための作品
  ①トッカータとフーガニ短調 BWV565
  ②前奏曲とフーガニ長調BWV532
  ③前奏曲とフーガニ短調 BWV538
  ④トッカータとフーガヘ長調 BWV540
  ⑤トッカータ、アダージョとフーガハ長調 BWV564
  ⑥前奏曲とフーガホ長調 BWV566
レオン・ベルベン (チェンバロ&オルガン)
チェンバロ:ハンブルクのクリスティアン・ツェル
1728年モデルによる(キース・ヒル製作)
オルガン:ハルテュス・ファン・ハーヘルベール
建造(1646)/フランス・カスパー・
シュニットガー改築(1725)
ムジカ・アンティクヮ・ケルンの通奏低音を支えた異才は、本当に良いアルバムしか作らない。あの素朴な美しさにあふれたバード作品集(RAM0704)の次は、満を持してのバッハ録音。「トッカータ」という鍵盤芸術のエッセンスを、チェンバロとオルガン双方で、じっくり堪能!レオン・ベルベン——オランダにほど近いドイツきっての古楽都市ケルンで研鑚を積み、その熾烈なシーンを生き抜いてきたうえ、パンキッシュな猛者ぞろいの古楽集団ムジカ・アンティクヮ・ケルンが解散する前まで通奏低音奏者として参加しつづけた、もちろんソリストとしての腕前は超一流。Ramee レーベルでは本作が4枚目、ご存知の方はご存知の新世代名手のひとりですが、チェンバロを弾いてもオルガンを弾いても、確たる自分自身の個性がおのずと浮かび上がり、それが作品を幾倍にも面白く感じさせてしまう、そういった独特のセンスには年を追うごとに、どんどん磨きがかかっているようで。ドイツ北方オルガン芸術のうまみを味あわせてくれたプレトリウス=シュルツ盤(RAM0402)、ルネサンスのチェンバロ芸術という稀有なジャンルを愉しませるハスラー盤(RAM0501)、16 世紀の一段鍵盤オルガンがひたすら鮮やかなバード盤(RAM0704)…と、盤を重ねるごと、演奏に深みと迫力が出てきたような。そんなベルベンが満を持して臨んだのが、この充実のバッハ2枚組! 「(鍵盤に)ふれる」という語から派生した「トッカータ」という呼称の即興的な楽曲形式に着目、ドイツ北方の伝統からイタリア芸術の影響、フランス装飾芸術への興味など、バッハ初期から後期にかけての作風形成の真髄に迫る入魂企画です。チェンバロはバッハ時代のユニークな残存例として知られるツェル1728 年モデルによる再現楽器、オルガンはバッハ時代の北ドイツ最高の名工シュニットガーの手になる銘器——チェンバロCD では、冒頭いきなり完璧な速弾きを聴かせて度肝を抜いたかと思うと、縦横無尽、たおやかなカンタービレも繊細な装飾音も緩急自在に繰り出し続け、耳が離せません!またオルガンCD では、有名なニ短調のトッカータとフーガBWV565 からしてユニーク&周到に考証的な解釈で心そそり(冒頭の下方前打音をトリル的に弾くやり方も、まあなんとスマートなこと…)、ゴツゴツした風格とともに聴き応えある響きを打ち出し続けます。チェンバロと、オルガン——相反する鍵盤の2相から、バッハの「粋」が見えてきます!
RAM0904
(国内盤)
\2940
“雄弁なるアポロン”
 〜ドニ・ゴーティエのリュート芸術〜
 エヌモン・ゴーティエ(1680〜1742)
  1. 組曲ト長調
  2. 組曲イ短調
  3. 組曲ヘ長調
  4. 組曲ロ短調
 ドニ・ゴーティエ(1603〜72)
  5. ハ長調のシャコンヌ
  6. ヘ長調のシャコンヌ
アンスニー・ベイルズ(リュート)
フランス・リュート楽派最大の作曲家ゴーティエ、その味わい深い芸術世界の真骨頂をこの種の音楽のパイオニア、巨匠ベイルズのいかんなき演奏で聴ける喜び!しかも、使用楽器は18世紀のオリジナル!使用弦にもこだわり抜いた、至高のリュート盤!アンスニー・ベイルズ——まだプロフェッショナルのリュート奏者が世界にほとんどいなかった1970 年代から活躍を続ける、英国きっての巨匠!Deutsche Harmonia Mundi がEMI 傘下でReflex という古楽シリーズを世に問うていた頃(レオンハルトもクイケンもサヴァールも、みんなここから巣立ちましたね)、ドイツやフランスやイタリアなど、あまり注目さえされていなかった地域のリュート音楽を孤軍奮闘、積極的に紹介していたのが、このベイルズだったのでした。Alpha のル・ポエム・アルモニークに10 年以上先駆けて、「リュリ以前」のフランス音楽に注目してきた偉大な古楽奏者だったのです!そして——かのグスタフ・レオンハルトが国際的メジャー・レーベルを離れ、フランスの小規模レーベルAlpha を選んだように——21 世紀のいま、この並ぶ者なきリュートの巨匠は、ほんとうに良いものだけを産するドイツの古楽専門レーベル、Ramee を選んだのでした。すでに一昨年『17 世紀、フランスと英国のリュート芸術家たちと“新しい調弦”』(RAM0707)というアルバムを同社からリリース、今なお静かなセールスを記録しつづけていますが、今度はさらに「王道の核心」へと迫るかのように、フランス・リュート音楽史上の大クープランかベートーヴェンか、というくらいの重要作曲家、ドニ・ゴーティエ(およびその伯父である“老ゴーティエ”ことエヌモン・ゴーティエ)を大々的にとりあげたアルバムを世に問うてくれたのです!たおやかな指さばき、静かな呼吸、決然とした表現力に馥郁たる高雅な響き…どこをとっても桁外れ、いっさい衰えぬ技術に他の追従を許さぬ年の功が宿り、しみじみ感じ入らずにはおれない、およそ「フランス・リュート音楽でまず1枚」と言われれば一も二もなく本盤を選ぶしかない、というほどの決定的な充実度...。長大な解説文も本人が書き下ろし(全訳添付)、二人のゴーティエにまつわる諸問題を明晰に解き明かしてくれていますが、積年のこだわりが結晶しているのは何より、使用楽器——なんとそのボディは、1722 年製作のオリジナルなのです!ゴーティエの時代とは若干年代に差があるものの、基本的なフランスのリュート製作史をふまえるかぎり問題はないようで、ネック部分の欠損も「無視できる不備」とはベイルズ御大自身の言。リュート音楽について論じたフランス17 世紀の書物はいちように古い楽器の使用を奨励し「音が割れるくらいでも“味”と思え」と伝えているそうですが、本盤の演奏はまるで不明瞭とは無縁。ベイルズ本人が語るように「高音域はますます明瞭」で、えもいわれぬ精確な美音を響かせます。羊腸弦も3人の製作家に別注するこだわりぶり…「フランス・リュート音楽の決定盤」の座は当面、本盤であり続けるのでしょう。

RICERCAR

MRIC204
(国内盤)
\2940
ラインケン と ブルーンス、ドイツ北方の2巨頭
 〜バッハ以前の、ドイツ北方オルガン芸術の真相〜
 ヨハン・アダム・ラインケン(1643〜1722)
  1. コラール幻想曲「バビロンの流れのほとりで」
  2. フーガト短調
  3. コラール幻想曲「窮地にありて我らに来たるは」
 ニコラウス・ブルーンス(1665〜97)
  4. 前奏曲ホ短調1
  5. 前奏曲ト短調
  6. 前奏曲ホ短調2
  7. コラール幻想曲「今ぞ来たれ、異教徒の救い主」
  8. 前奏曲ト長調
ベルナール・フォクルール(オルガン)
もう、その名はご存知ですね——「バッハ全集&選集」やオルガン音楽アンソロジーなど「出れば必ず話題盤」、現代最高のオルガニスト・フォクルールがおくる「バッハへの道」。ドイツ北方に残るシュニットガーの歴史的銘器で、知られざる伝統の真髄を、鮮やかに!2009 年に弊社から国内盤リリースされた2作のベルナール・フォクルールのアルバム——バッハ精選オルガン作品集(MRIC276)、ブリュッセル大聖堂ライヴ(MRIC209)——は、有難いことにどちらも『レコード芸術』誌上で「特選」に輝きました。リチェルカール・コンソートの創設メンバーでもあり、一時は王立モネ劇場で音楽監督もつとめたこの名匠、ようやく日本でも一部のオルガン愛好家のみならず、ひろくその存在感を(本業のオルガン奏者として!)認知されるようになってきたのは、実に素晴しいことではありませんか。流麗なタッチでさりげなく、作品美がおのずと浮かび上がるような演奏をしながら、その実かならず、使用楽器(録音に使うのは、往々にして由緒ある歴史的銘器)の美質を逐一ふまえ、それを最大限に引き出す解釈を示してみせる、そして演奏曲目が求めていれば、どっしり堂々とした荘重な響きも描出できてしまう——曲目を問わず発揮される鮮烈な感性は、Ricercar レーベルでの四半世紀にわたる録音歴を通じ、まったくブレていません。そんなフォクルール、巨匠バッハのオルガン作品ばかりでなく、この「音楽の父」が手本としてきた、17 世紀ドイツの偉大なオルガン芸術にもきわめて造詣が深いのです。かくて、いぶし銀の美音を誇る北ドイツの銘器を使ってここに録音されているのは、かたやバッハのみならず多くの音楽家たちの手本となった長命なるオルガン芸術家、ラインケン——かたや、その向こうを張る大家ブクステフーデの弟子にして、早世ながら無数の注目すべき足跡を残した天才、ブルーンス!ラインケンは即興演奏の達人だったがために、生前おおいに尊敬されていながら楽譜として残した曲は少なく、ブルーンスは早くに亡くなったため現存作品が希少、二人あわせて僅か8曲で「両者の全曲」ではありますが、長大な3曲のコラール幻想曲をはじめ、どの曲もきわめて充実した内容…!素朴で無骨なメロディを変幻自在の表現で展開してゆくオルガン芸術の面白みは、古雅なる銘器の美音、心ひきつけてやまない解釈の旨味とあいまって、この分野になじみのない方をも魅了する味わい!これが「バッハを育てた」古き芸術の原風景、オルガン初心者にもおすすめの1枚です。
MRIC 282
(2CD)
(国内盤)
\3885
ハンブルクの名匠、ヴェックマン
〜鍵盤楽曲・室内楽曲・世俗歌曲さまざま〜
マティアス・ヴェックマン(1619〜74):
 《室内楽作品》
  3声または4声と通奏低音のためのソナタ(10曲)
 《さまざまな世俗歌曲》
  ①純白なる公爵夫人の御心は、まばゆいばかり
  ②A・H・マルテニッツ氏の誉れに捧ぐ歌
  ③純白なる公爵夫人に捧ぐ歌
  ④美しきハンブルク娘の愛らしさ
  ⑤D.B.シュッペン氏の美徳を讃える歌
  ⑥美しきハンブルク娘⑦粉挽きの歌
  ⑧愛らしきアナベルのための戯れ歌
  ⑨三選帝侯の秘書L・ブラスパイルの金婚式に捧ぐ歓喜の歌
 《鍵盤のための作品》
   ①組曲ハ短調 ②トッカータニ短調
   ③カンツォーナ ニ短調 ④トッカータ ホ短調1
   ⑤トッカータまたは前奏曲⑥組曲ニ短調
   ⑦パルティータ「ルツィドールはある日、羊小屋で」
   ⑧トッカータホ短調2 ⑨組曲ホ短調⑩カンツォーナト長調
   ⑪組曲ハ長調⑫カンツォーナハ長調1 ⑬組曲イ短調
   ⑭パルティータ「その愛くるしいまなざし」
   ⑮トッカータハ長調 ⑯カンツォーナ ハ長調 2
   ⑰カンツォーナハ短調⑱トッカータイ短調
シーブ・ヘンストラ(チェンバロ、クラヴィコード)
グレタ・ド・レゲル(S)
Ens.ラ・フェニーチェ、
リチェルカール・コンソート(古楽器使用)
バッハも憧れた「ドイツ北方様式」...その大立者たるオルガン芸術家は、同時に大都市ハンブルクの都市生活にしっかり溶け込んだ文化人でもあった——!ファッショナブルな様式、陽気な歌とイタリア趣味...超一流の演奏陣で迫る充実2枚組!!古楽大国ベルギーきっての古楽レーベルRicercar が、膨大な廃盤カタログから名演をよりすぐり復活させる充実シリーズ——今回は、いつもながらの演奏陣のとんでもない豪華さもさることながら、選曲でも古楽ファン垂涎の「意外性」を打ち出してきています。マティアス・ヴェックマン…といえば、若きバッハも憧れたオルガンの大家ブクステフーデやラインケンら、いわゆる「ドイツ北方様式」を17世紀中盤で支えたハンブルクのオルガン芸術家。しかし意外なことに、この作曲家はオルガン作品や教会音楽ばかりでなく、時代に先駆けたファッショナブルな世俗音楽も沢山残していたのです!世代的にかなり古く、親友がフローベルガーというだけあって、チェンバロ音楽にも、まだ揺籃期にあったフランス・クラヴサン芸術やフレスコバルディ流儀のトッカータに影響されたような「古風な先進性」がみられますし、陽気な世俗歌曲にはルネサンス的な要素さえ窺える…そしてドイツ語圏でもかなり早い作例といえる一連の「ソナタ」も、コルネット(ルネサンスの木管楽器)やヴァイオリンやトロンボーン(!)が技巧あざやかに入り乱れるバロック最初期風の味わいが、むしろモンテヴェルディなどとの繋がりを感じさせたり。まったく聴き飽きようのない面白さ!です。しかも演奏陣にはル・ポエム・アルモニークのV.デュメストルやラルペッジャータのプルハル女史、バロック・ヴァイオリンの名手フェルナンデスにエンリーコ・ガッティ、DENON での録音でも有名なチェンバロ奏者ヘンストラなど、フランス語圏&オランダ語圏の精鋭が続々!「バッハ以前」をより深く味わうなら、必ず知っておきたい極上の2枚組です!
MRIC288
(国内盤)
\2940
ヴィヴァルディ:室内編成による協奏曲
 〜『ラ・ストラヴァガンツァ』op.4より〜
 協奏曲集『ラ・ストラヴァガンツァ』op.4より
  ①第1番 変ロ長調op.4-1 ②第3番ト長調op.4-3
  ③第4番イ短調op.4-4 ④第5番イ長調 op.4-5
  ⑤第6番ト短調op.4-6 ⑥第9番ヘ長調 op.4-9
  ⑦第11番ニ長調 op.4-11 (編曲:F.ド・ロース)
フレデリク・ド・ロース (リコーダー)
アンサンブル・ラ・パストレッラ(古楽器使用)
どうしたものか、この編成——エッジの効きまくったヴィヴァルディもいいけれど、「深み」と「味わい」を掘り起こしてくれる演奏は、古楽大国ベルギーの俊英陣ならでは!さりげなく全アルバムが大人気、気鋭奏者ド・ロース、室内楽編成での第2弾・登場!!
フレデリク・ド・ロース——ここ数年の古楽棚を見守ってこられたファンには、Ricercar レーベルの国内盤でも彼の名を冠した盤が、なぜか全て良好なペースで回転しているのをご存知の方も、少なくないはず。
古楽大国ベルギーでここ20 年来、彼ほど多忙な活躍を続けているリコーダー奏者もいないかもしれません(あとは同じRicercar のアーティストであるパトリック・ドゥネッケルか…)。コレッリの合奏協奏曲(!)やソナタを、唖然とするほどの指周りと癒しのサウンドできれいに仕上げてみせた傑作盤(MRIC235)も、残念ながら制作元でプレスが切れっぱなしの「知られざる古楽器シリーズ」第2弾たる英国バロック作品集(MRIC220)も、実に多くの方に愛されているようです。
近年では7枚組テレマン・アルバムで、この職人的芸術家の多彩な魅力を印象づけてくれたのが記憶に新しいところ(MRIC270…価格のわりに今なお堅調な出足!)。そんな彼らが今年2月に収録したヴィヴァルディ・アルバムは、10 年ほど前にリリースされた、ヴィヴァルディ自身が室内楽編成のために作曲していた協奏曲を集めたアルバム(MRIC248 として再発)の続編ともいうべき内容——
しかし本盤、実にユニークなことに、曲目そのものはヴィヴァルディの12編の出版作品集でもとりわけ異色の内容を誇る『ラ・ストラヴァガンツァ』からとられているのです。しかし、これは本来ヴァイオリン協奏曲集だったはず?なぜこの曲集を選んだのか?その理由を、主宰者ド・ロースは「ヴィヴァルディは数多くの協奏曲を室内協奏曲として再編曲しているから、このスタイルが気に入っていたはず」「フルート協奏曲にも原曲がヴァイオリン向けだったケースがあるし、同時代人テレマンも『めいめい好みの楽器を手に合奏したらいい』などと推奨している」「『ラ・ストラヴァガンツァ』は『調和の霊感』op.3 や『和声と創意の競演』op.8(『四季』を含む曲集)ほど有名ではないが、ヴァイオリン独奏主体とは限らない合奏曲としての古風な協奏曲も多く、室内楽的協和のなか、きわめてユニークな音楽が展開する注目の曲集」...といった言葉で説明しています。
かくて作品群はリコーダー、オーボエ、ヴァイオリン、ファゴットと通奏低音という編成に変容し、経験豊かなヴェテラン古楽奏者たちが饒舌な吹き口でさまざまな美音をからませあう——単にエキサイティングなだけでなく、音楽的深みたっぷりな解釈の旨味は、さすがクイケン兄弟の国!誰もが納得の名演です!



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