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第52号お奨め国内盤新譜(1)


AEON

MAECD0983
(国内盤・2CD)
\4515
デュサパン:弦楽四重奏曲(全5曲)
 &弦楽三重奏曲
パスカル・デュサパン(1955〜)
 1. 弦楽四重奏曲 第1番(1982/96)
 2. 弦楽四重奏曲 第2番「タイム・ゾーン」(1989)
 3. 弦楽四重奏曲 第3番(1993)
 4. 弦楽四重奏曲 第4番(1997)
 5. 弦楽四重奏曲 第5番(2004/05)
 6. 弦楽三重奏曲〜逃げてゆく音楽(1980)
アルディッティ四重奏団
待望の来日間近!名門アルディッティSQがaeonで問い直す「いま、聴くべき現代作曲家」はフランス楽壇きっての人気ある大御所、パスカル・デュサパン——「音楽と、時間」を見つめながら、さまざまな様相をみせてきた、かつてのクセナキスの愛弟子の足跡ここに!現代音楽シーンで唯一、飛びぬけてポピュラーなグループといえば…おそらく英国随一の世界的問題児集団、アルディッティ四重奏団にほかならないでしょう!1974 年の結成以降、カーター、デニーゾフ、ケーゲル、シャルリーノ、マデルナ、リーム、バートウィッスル、シェルシ、アペルギス…と、およそ国を問わず世界各地で活躍する異能の大作曲家たちの新作初演を手がけ、きわめて広範な影響力を誇るこのグループは、今年6月に待望の来日公演も控え、あらためて注目の集まるグループとなっています。たいへん嬉しいことに、昨年からは弊社扱のaeon レーベルと密接な関係を強め、紹介すべき現代作曲家たちの、ほんとうに注目すべき作品ばかりを一流演奏陣の秀逸解釈で残してきたこのレーベルで、「いま、最も聴いておきたい」新世代の巨匠たちの体系的録音に着手してくれています。昨年リリースされた盟友ジョナサン・ハーヴィの作品集に続き、今年あらためて世に問うたのは...フランス随一の人気を誇る多芸な作曲家、パスカル・デュサパン! 小編成楽曲からオペラまで、いまどき珍しいくらい広範なジャンルを手がけられるこの才人、1970 年代にかの巨匠ヤニス・クセナキスから絶賛されて一躍有名になって以降というもの、独自の作風を模索しながらさまざまなジャンル、さまざまな世界にインスピレーション源を見出し、フランス国内はもちろんアムステルダムのコンセルトヘボウ、ベルリンのフィルハーモニーザール、ミラノのスカラ座、ブリュッセルのモネ劇場...とさまざまな世界的ホールで新作初演が行われてきた大物です。とはいえ、個々の作品が大掛かりであればあるほど、あるいは小さな作品を数多く書いていればいるほど、現代作曲家の真相というものは見えにくくなってくるもの...近年も第5四重奏曲(2005)をアムステルダム・コンセルトヘボウで初演したばかりのアルディッティ四重奏団による一貫性あるアプローチが、このきわめて重要な作曲家の作風変遷をわかりやすく解きほぐし、そこに潜むアイデンティティを静かに浮き彫りにしてくれるのです!(現代舞台作家サミュエル・ベケットを引き合いに出しながらデュサパンの作風を論じてゆく充実の解説文も、もちろん全訳添付!)繊細なピアニシモから雄弁な歌いまわしまで、4人の完璧な技量と比類ないアンサンブルで機能性あざやかに再現されてゆく5曲の弦楽四重奏曲——ほとんどロックのような鮮烈さ(クロノスSQ風、といえば伝わるでしょうか?)もバッハ的な同時進行性も、あるいは緻密な微分音的変化も、説得力豊かにわかりやすく心に響いてくるのは、やはり曲内容を徹底して理解したうえで演奏に臨んでいるアルディッティSQの技量あればこそ!現代音楽棚に格を添えてくれる、演奏内容まで全く間違いない充実盤です!
MAECD1098
(国内盤)
\2940
グリーグ:劇付随音楽『ペール・ギュント』(1875・全曲)
 〜独唱、合唱と管弦楽のための
〜aeonレーベル 2010年度カラーカタログ付〜
ギヨーム・トゥルニエール指揮
スイス・ロマンド管弦楽団
ヴェガール・ヴァルダル(ハリングフェレ(ハーディンガーフィドル)独奏)
ディートリヒ・ヘンシェル(バリトン)
インガー・ダム=イェンセン(ソプラノ)
ソフィー・コック(メゾソプラノ)他
モテ・ド・ジュネーヴ声楽アンサンブル
「組曲」ではなくて「全曲版」を、1枚のCDに完全収録——グリーグの作曲した音楽の全てをひたすら精妙かつダイナミックな鮮烈演奏で聴かせるのは...“あの”名門老舗楽団を雄弁・緊密に引き締める新世代指揮者...ノンストップで聴いてしまうこと間違いなし!
なにしろヨーロッパというところには、無数にオーケストラがあるだけでなく、歌劇場も各国にたくさんあるわけですし、それらが日々興行を続けているとなると、なにぶん経費のかかるオペラや管弦楽団のこと、うっかりした人材はどんどん淘汰され、本当に実力ある人だけが残ってゆくのでしょう——そんなレヴェルの高い競争社会の存在をありありと想像させる、油断ならない1枚のアルバムが届きました。グリーグの『ペール・ギュント』、二つの組曲抜粋などではなく、堂々の全曲録音でございます!ノルウェーを代表する作家イプセンの代表作ともいえる、北欧民話に基づいた壮大な戯曲のためにグリーグが準備した音楽は全部で26 曲。かつてDGGにネーメ・ヤルヴィが録音した「全曲版」のように、演技のせりふ部分もきっちり収録するとCD1枚では収まらないのですが(ヤルヴィ版には『十字軍士シグール』が併録されてましたね)、せりふをカットしても微妙な長さ——それがCD1枚にすべて収録されていることからもわかるとおり、本盤の演奏ではダイナミックなテンポ変化もみせながら、急速部分は驚くほど速く、一糸乱れぬアンサンブルの精悍さとあいまって、曲を実にエキサイティングかつ先鋭的な響きで聴かせてくれるのです!対照的に、魔王の山の場面のおどろおどろしさ、有名な朝の音楽のえもいわれぬ清らかさなど、ゆったりしたフレーズのしなやかな歌わせ方も比類なく、北欧的な透明感にみちたえもいわれぬ美にうっとりさせられてしまう...なにしろ楽団はアンセルメとの蜜月で知られる名門スイス・ロマンド管、精妙なのは当然かもしれませんが、かくも痛快な解釈でこの名門楽団をまとめてみせる若きフランスの俊英トゥルニエールの才覚には、驚くほあかりません!若い頃からジュネーヴ大劇場の合唱団モテ・ド・ジュネーヴの指揮者として「現場」を肌で感じながらキャリアを積み、フェニーチェ座、ドイツ・カンマーフィル、ローザンヌ室内管、リヨン国立管...とシーン最先端の大舞台で管弦楽・歌劇指揮者両面の腕を磨き、先日まではプラハ国立歌劇場の音楽監督の座にあった——“叩き上げ”の腕利きとしての才覚が、完全無比のかたちで示された傑作録音!!

ALPHA

Alpha162
(国内盤)
\2940
フォーレ:ピアノ独奏のための舟歌(全13曲)
ガブリエル・フォーレ(1845〜1924)
 13の舟歌 作品26〜作品116(1881〜1921)
デルフィーヌ・バルダン(ピアノ)
音楽史上、最も詩情あふれる繊細な作風を誇った作曲家のひとり、フォーレ——そのピアノ芸術の最も大きな部分を「夜想曲」群と二分する、13曲もの玄妙な作例。
フランス作品に定評のあるAlphaから出てくるだけあって、忘れられない絶美の名演!下記のチェロ作品集でも書いているように、およそヨーロッパ芸術音楽の歴史のうえでも、フォーレほど繊細かつ歌心ある音楽を書いた人はいないのではないでしょうか? まるで中世音楽のような独特の和声センスで、刻一刻と色調を変えてゆく響き——そのうえでしなやかなカーヴを描きあげる旋律線の美しさは、まったく筆舌に尽くしがたい魅力に満ちています。
しかし『シシリエンヌ』や『エレジー』などの小品、そして畢生の大作ともいえる絶美の名曲『レクィエム』、一連の歌曲、ヴァイオリンのためのソナタやピアノ四重奏曲あたりを除くと、そのほかの音楽は意外に知られていないような。とりわけ、最も人気があってもよさそうなピアノ音楽の領域では、13もの夜想曲やそれと同数の舟歌、6曲の即興曲など体系的に録音されるべき名品群があるのに、どういうわけか意外と新録音が出ないのです。おそらく、いまだに一昔前のジャン=フィリップ・コラールの名盤が決定的でありつづけているのでは。同時代のフランスの天才、ドビュッシーやラヴェルの作品群があれほど新鮮な名盤に恵まれ続けていることを思うと、なんだか不思議な気もするのです。
さて——ここでもそんな渇を癒してくれるすばらしい名録音が、自国の音楽には一家言あり・のフランスの秀逸小規模レーベルAlphaから登場することとなりました。一連の夜想曲と並び、1881年からフォーレ晩年の1921年まで、大小さまざまな13曲もの作例が残された「舟歌」を、すべて収録した体系的録音。ショパンの作例以来、たまさかにサロン作曲家たちによって作曲されてきたこのジャンル、もとは南国旅行のさいヴェネツィアで船乗りがうたう歌を聞きつけ、その印象をピアノで表現したもの...というようなかたちで生まれたようですが、ここに聴くフォーレの一連の作例は、当盤に寄せられた解説(前文訳添付)にもあるとおり、夜想曲と対をなす「光あふれるフォーレ」の側面を垣間見せてくれるジャンル。一定のリズムを崩さず静かに続いてゆくその調べは、ドビュッシーよりもずっと印象派絵画に近い、スーラやルノワールあたりの柔らかなぬくもりを意識させてやまない音楽といえましょう。
競合盤に乏しいながらもまだ多少なりと恵まれている夜想曲をよそに、舟歌の全曲録音はもっと見当たりませんから、その意味でも貴重なリリースといえますし、何より演奏がすばらしい!中仏トゥール生まれのパリ音楽院出身、1997年クララ・ハスキル・コンクールに入賞して以来着実に実力をつけてきたフランスの気鋭奏者、デルフィーヌ・バルダンというピアニストが、その主人公。日本では全く無名といってもいいくらいの人ですが、その演奏を少し聴いただけで、的確な作品理解のうえで繰り出される過不足ない音楽づくり、そこから静々と香り高く感じられるフォーレ特有の高雅さときたら...!甘ったるくしようとすればいくらでもできてしまうフォーレの音楽を、ごく格調高く、適切なことばはこびの上で説得力豊かに奏でられるのは、この国の新世代奏者たちがいかに熾烈な競争にさらされているのかを偲ばせる、ともいえるくらい、とにかく堅牢にして繊細なピアニズムを誇る名手なのです!
Alpha ならではの自然派録音のためもあるのでしょうが、基本的にはどれを手にとってもハズレなし、特にフランスものについては妥協を許さない制作姿勢が、こういった的確な名手を見出せるセンスを発揮させるのに違いありません。
Alpha158
(2CD)
(国内盤)
\4515
シューマン:ピアノ三重奏曲(全4曲)他
ロベルト・シューマン(1810〜1856)
 1. ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 op.63
 2. ピアノ三重奏曲 第2番 ヘ長調 op.80
 3. ピアノ三重奏曲 第3番 ト短調 op.110
 4. ピアノ三重奏のための幻想小曲集op.88
 5. カノン形式の六つの小品 op.56
  〜クラリネット、チェロ、ピアノによる三重奏版
  (編曲:テオドール・キルヒナー 1823〜90)
エリック・ル・サージュ(p/
ゴルダン・ニコリッチ(vn) スタインウェイ32500・ 1875頃)
クリストフ・コワン(vc) ポール・メイエ(cl)
Alpha レーベルきっての人気シリーズは、「シューマン生誕200周年」で大詰めへ——
明敏なる俊英ル・サージュ、シリーズ2枚目の室内楽作品集はなんと「19世紀の楽器」で!しかも共演者はまたしてもスーパースターたち!
ガット弦と古雅なピアノの、絶妙な交錯…フランス随一の秀逸小規模レーベルAlpha が、フランス最前線をひた走る世界的ピアニスト、エリック・ル・サージュを迎えて継続してきたこのシリーズも、開始からはや5年。シューマン生誕200周年にあたる本年、先日リリースされた第8弾の記憶もまだ新しいまま、その記憶を吹き飛ばしかねない鮮烈な「第9弾」が到着いたします!
「ピアノ曲・室内楽作品集」と銘打たれたこのシリーズ、当然ル・サージュのソロだけでなく室内楽作品も出てくるわけですが、完全に室内楽だけで占められたアルバムは第3弾(Alpha121)以来。度重なる来日公演で好評を博している「レ・ヴァン・フランセ」(ル・サージュと管楽器仲間のアンサンブル)の面子が遠慮なく出揃った前作では、ヴィオラがアントワーヌ・タメスティ(!)、チェロがジャン=ギアン・ケラス(!!)と弦楽器奏者たちもスーパースターでした。しかし今回のピアノ三重奏曲全集は、そのさらに上をゆく注目企画——なんと、使用されているスタインウェイ・ピアノが19世紀のオリジナルなのです!これまで一貫して現代ピアノで録音されてきたこのシリーズですが、なにしろ(数年前にフランク・ブラレイとの共演で制作した連弾アルバムに示されているとおり)ル・サージュといえば19〜20世紀のアンティーク的ピアノでも、味のある演奏を聴かせる天才。さらに今回の共演陣に、ガンバやバロック・チェロから現代チェロまで何でもこなす、古楽畑出身の押しも押されぬ巨匠、クリストフ・コワンが参加していることが、このル・サージュの采配を絶妙に盛り上げてくれているのです!Alpha の制作現場監督の話では、時代考証ガチガチの古楽的アプローチではないものの(チェロはピン付、まあ19世紀半ばには、ぼちぼちピンを使うチェリストも登場していたのですが)、弦には(これも詳細は追伸待ちながら)ガット弦を張り、19世紀の人々が耳にしていた音響感覚を作品解釈にうまく反映させての録音に仕上がった、とのこと。英国の超・実力派ニコリッチもヴァイオリン・ソナタのとき同様に精悍かつ妖艶なサウンドを響かせ、チェロもじわりと心に沁みる美音で、シューマンの詩情と情感をうつくしく引き立ててやみません。そこへからむ、まろやかさと煌びやかさが相半ばするアンティーク・ピアノの心うつ音色…!最後に配されたペダル・ピアノ作品の室内楽編曲は才能あらたかなロマン派の名匠、シューマンの若き友人キルヒナー(近日、すてきな新譜をご案内予定。)によるもの。ごらんのとおり、ここでもさりげなく、豪華なゲスト(ポール・メイエ!)が絶妙のからみを聴かせます。
Alpha159
(国内盤)
\2940
ショスタコーヴィチ:交響曲 第14 番 ト短調 作品135(1969) テオドール・クルレンツィス指揮
Ens.ムジカエテルナ(一部古楽器使用)
独唱: ユリア・コルパチェヴァ(ソプラノ)
ペトル・ミグノフ(バリトン)
驚くなかれ——ショスタコーヴィチ後期作品に「古楽器使用」!? 21世紀ならではの 周到さで柔軟かつ的確にショスタコーヴィチ芸術の本質へと迫る解釈結果は、生き血の通ったダイナミックさ...!知と情のバランスを超えて、作曲家の思惑をえぐりだす問題録音!
フランス随一のユニークな小規模レーベルとして、秀逸にしてユニークな古楽盤を次々と生み出し、ル・サージュのシューマン体系録音シリーズに代表されるような現代楽器での注目企画、知られざるフランス近代の名匠デュロゾワールの再発見など、新しい時代の音楽でも他の追従を許さない充実企画を続々世に問うてきたAlpha——が、なんとショスタコーヴィチの交響曲をリリースするとなれば、明敏なファンならずとも誰しも注目せずにはおれないはず! そしてさすがはAlpha、ありきたりの内容で攻めてくるわけがないのです。
曲目はショスタコーヴィチ晩期の異色作のひとつ、弦楽合奏と打楽器、という異例のオーケストラ編成に独唱が続く、全12 楽章という型破りの楽章構成をとる交響曲第14 番。この選択からして「お!」と思わせるところ、さらに驚かされずにおれないのが、作曲年代が1969 年というこの作品を、なんと一部古楽器.....(!!)で演奏してしまったという点——原文解説書には、録音現場でチェロのピンを使わず、両脚で挟んで演奏するプレイヤーの写真が! 大阪万博直前、ビートルズ解散間近、巨匠ロストロポーヴィチが(もちろんピン付チェロによる演奏で)西側でも代絶賛を博し、クイケン兄弟やブリュッヘンらの古楽器演奏に「学識ぶりすぎ」との過剰反応があった、つまり19 世紀以前の演奏伝統が廃れた後の時代に作曲された音楽に、なぜ古楽器を使う必要があるのでしょう…?と首をひねってしまうのは、どうやら私たちこそ過剰に学識的になりすぎているのかもしれません。というのもAlpha の企画担当いわく、本盤の指揮者テオドール・クルレンツィスはショスタコーヴィチがこの曲に込めたメッセージをじっくり読み解いた末、作曲家の意図どおりの弦楽編成で、適宜ガット弦を使用し、ひたすらヴィブラートを排した弦楽サウンドで弾くことこそが、憂鬱と無力感にさいなまれた作曲家が「死」を見すえて作曲した交響曲第14 番の本質を最もよく表現できる手段である、という結論に達したのだそうです(録音会場であるノヴォシビルスク歌劇場の音響空間も、この解釈に大きく関わっているとのこと)。祖国ギリシャとロシアの世界的歌劇場や一流オーケストラで経歴を積んだのち、古楽バンド「ムジカエテルナ」を結成、自ら古楽器演奏にも通じてきた人だけに、体験型の現場主義的意識から、このような柔軟な考え方が導き出されたのかもしれません。しかしこういった独特の意見も、演奏のクオリティあればこそ通用するもの——
異色の“試演編成”で臨んだベートーヴェンのピアノ協奏曲録音に熱烈な支持が集まるフォルテピアノ奏者スホーンデルヴルトのように、本盤は(曲をよく知る人にも、知らない人にも)痛烈なインパクトを感じさせずにおかない、たたみかけるような力強さから底知れぬ静謐さまで自由自在、一体の生き物のような血肉通った解釈を聴かせてくれるのです! ジャケットのイコン画にも通じる静かな迫力を漂わせたロシア語歌唱、ガット弦ならではのオーガニックな美音、秀逸録音が光る打楽器の響き、圧巻の説得力、話題性満点です!

ARCANA

Mer-A423
(国内盤・2枚組)
\4515
アルカンジェロ・コレッリ(1761〜1800):
 ヴァイオリンと通奏低音のための12 のソナタ 作品5(1700/全曲)
エンリーコ・ガッティ(バロック・ヴァイオリン)
グイード・モリーニ(cmb)
ガエターノ・ナジッロ(バロックvc)
ついに復活! イタリア随一の大御所バロック・ヴァイオリン奏者エンリーコ・ガッティがバロック史上最重要の金字塔的ヴァイオリン作品を、全曲録音したバイブル的名盤——長かった入手不可期間をへて、あの艶やかな名演がいま新装パッケージ&日本語訳付で。フランスのArcana レーベルは、フランス語圏の古楽復興を音盤シーンから支えてきた俊才プロデューサー、ミシェル・ベルンステン氏が生涯最後に立ち上げたレーベル。経験豊かな古楽界の巨匠たちのみならず、次世代のスーパープレイヤーを続々発掘、今やもう大御所となっている天才たちの躍進期に数々の傑作アルバムを制作しています。しかしCD プレス供給状況が不安定で、加えて2007 年にベルンステン氏が急逝したことにより、当レーベルの名盤群は流通しにくい状態がさらに悪化していました。しかし2009 年、イタリアきっての明敏な古楽CD 販社(イタリアにおけるAlpha の代理店)がArcana を買い取ったことで状況は一転。ベルンステン氏の衣鉢を継ぐ音楽愛あふれる丁寧な制作姿勢によって、過去のプレス切れアルバムが少しずつリパッケージ&カタログ復活を遂げています(どどっと再発売しないところに、各アルバムへの愛を感じます)。そしてこのたび待望のリリースとなるのが、バロック・ヴァイオリン奏者として今や世界的名声を誇るイタリアの異才、エンリーコ・ガッティの最重要アルバムのひとつ! イタリアにガッティあり・とその名を世界に知らしめた、バロック期最大のヴァイオリン芸術家コレッリ唯一のソロ・ソナタ集の全曲録音です。この「作品5」という曲集は、バロック芸術の本場イタリアのど真ん中、永遠の都ローマで1700 年に楽譜出版されるや、ただちにベストセラーとなって海賊出版や別ヴァージョンがヨーロッパ中に出回ったという傑作曲集。後代への影響力は計り知れず、ヘンデル、タルティーニ、ジェミニアーニ、ルベル...と、イタリア内外で活躍した18 世紀中盤にかけてのヴァイオリン芸術家はことごとく、といっていいほど何らかの形でその影響を受けたほどでした。17 世紀後半に形を整えつつあったトリオ・ソナタ形式を完成へと導いた先行4集の曲集に続き、コレッリは通奏低音ひとつだけを伴奏に添えたバロック式独奏ソナタのスタイルを極限までフル活用し、無駄なことをいっさいそぎ落としたうえで当時知られていたヴァイオリンの演奏技巧を極限まで使いこなして、きわめて濃密かつ堅固な形式感覚を誇る、叙情あふれる12のソナタを作り上げました(12 番目のソナタは、さまざまな演奏技巧をふんだんに盛り込んでの長大な変奏曲「ラ・フォリア」)。選び抜かれた作品しか出版を許さなかったというコレッリの完璧主義が理想的なかたちで結晶をみせたこの傑作曲集、全曲録音が意外なまでに少ないところ、経験豊かな名手ガッティによる名演の復活はまさに待望というほかありません。イタリア人ならではの歌心が際立つ艶やかな歌いまわしは、この名手ならではの絶妙の抑制でみごとに統率され、きわめて情感ゆたかにこれら均整のとれた名曲を弾きこなしたというコレッリその人さえ髣髴させずにはおきません。Ens.アッコルドーネの知性派鍵盤奏者モリーニや、長年の朋友ナジッロらの適切・精妙な共演で、無数の受賞歴もうなづける名演ぶりに。演奏者自身の長大な解説も完訳付、バロック・ファン待望の1作です!
Mer-A302
(国内盤)
\2940
ヴィヴィアーニ『音楽の奇想さまざま』作品4
ジョヴァンニ・ボナヴェントゥラ・ヴィヴィアーニ(1638〜1704):
 『音楽の奇想さまざま 〜教会様式・宮廷様式
 双方による、ヴァイオリン独奏[と通奏低音]のための。
 [2曲の]トランペット独奏[と通奏低音]の
 ためのソナタを含む』作品番号4(1678年刊行)
グナール・レツボール(バロック・ヴァイオリン)
アンドレアス・レックナー(ナチュラルtp)
ロベルト・センシ(vg)
ルチアーノ・コンティニ(アーチリュート)
カタリン・セベッラ(バロックfg)
ヴォルフガング・ツェラー(チェンバロ&オルガン)
Arcanaが掘り起こしたもうひとりのバロック・ヴァイオリンの天才は、音楽大国オーストリアのさまざまな音楽遺産を掘り起こす天才、グナール・レツボール!Arcana というレーベルのおかげで大躍進をとげ、日本でも広く知られるようになった古楽器奏者といえば、いま前ページでご紹介した、かつてキアラ・バンキーニの“名脇役”をしていたエンリーコ・ガッティと並んで、このオーストリア古楽界きっての鬼才グナール・レツボールを忘れるわけにはいきません! 昨今、バッハの『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』の直接的なルーツと目すべき超難曲、ヴァイマール宮廷のコンサートマスターをしていたヴェストホフの『無伴奏パルティータ』を全曲録音してみせ、ドイツ語圏の古楽界にレツボールあり!とあらためて印象づけてくれたこの異才は、モーツァルト以前にも膨大な音楽遺産の眠っている祖国オーストリアの「知られざる巨匠たち」の発掘に熱心で、おそらく技巧面でも唖然とするくらい飛びぬけている彼でなくては演奏さえできなかったであろう難曲群も含め、思わぬバロック秀作を掘り出してきては、気心の知れた気鋭古楽プレイヤーたちと磨き抜かれた録音で残してくれています。このたび待望のカタログ復活を遂げ、弊社から日本語解説付で登場するレツボールの傑作盤は、Arcanaレーベルの流通状態の悪かった時期には日本でもほとんど出回らなかった注目盤——バロック初期とコレッリのあいだをつなぐ非常に重要な巨匠、ヴィヴィアーニの代表的ヴァイオリン曲集『音楽の奇想さまざま』でございます。ヴィヴィアーニという人はフィレンツェ生まれのイタリア人ですが、はじめインスブルックの宮廷で、後年はウィーンの皇室で、とハプスブルク家の強力な為政者たちに相次いで仕え、名匠シュメルツァーが登場する直前までオーストリア皇室の音楽レヴェル向上に大いに貢献。しかしそれだけでなく、後年はヴェネツィア、ローマ、ナポリ...とイタリア半島の最重要音楽都市をひとつずつ制覇してゆき、オペラ作曲家・宗教音楽作曲家としても甚大な名声を誇ったのでした(ローマの至聖磔刑同信会は、大な巨匠コレッリの10 倍もの報酬をヴィヴィアーニに支払っていたそうです)。『音楽の奇想さまざま』は、稀代のヴァイオリニストでもあった彼の多元的な作風を端的にしめす充実曲集。オペラ作曲に秀でた人ならではの歌心あふれる名品あり、技巧的な楽曲あり、とさまざまな性質の小品群には、ルネサンス以来の舞曲もあればコレッリ風の本格ソナタを予感させるものもあり、過渡期ならではの定まりきらぬ魅力がたっぷり!羊腸弦その他の自然派な響きも美しく、オーストリアの技巧的ヴァイオリン芸術と、イタリア的な直感的センスとがないまぜになった作品群は、感性に一本筋の通った古楽奏者レツボールでなくては、これほど抗いがたい魅力ある音楽とは聴こえなかったに違いありません。当該曲集にはナチュラル・トランペット作品もなぜか2曲収録(トランペットは王侯の楽器、「皇帝直属」感を出したのでしょう)、これも圧巻の古楽器演奏で。発見に満ちた1枚です!
Mer-A313
(国内盤)
\2940
B.A.アウフシュナイター:合奏曲集『甘美なる
和声の調べ』作品4(1703)
ベネディクト・アントン・アウフシュナイター(1665〜1741):
 『甘美なる和声の調べ』
 (Dulcis Fidium Harmoniae・1703)
  〜12 のシンフォニア(教会ソナタ)
グナール・レツボール(バロック・ヴァイオリン)
アルス・アンティクヮ・アウストリア(古楽器使用)
オーストリアは、モーツァルトやブルックナーが現れる前から、ずっと音楽大国だった。
テレマンの器用さとコレッリの叙情をあわせもつ、多芸な作曲家アウフシュナイターこそその具現者のひとり。美しくも技巧的な弦楽ソナタの数々を、異才レツボールの快演で!
「音楽の都」とあだ名されるほどの大都市ウィーン、モーツァルトの生地ザルツブルク、ブルックナーとゆかりの深い街リンツ…偉大な作曲家や演奏家を次々と輩出してきた音楽拠点の多い国、オーストリア。この国がすぐれた音楽に恵まれてきたのは、センス抜群の音楽家たちが暮らすイタリアやチェコなどからもすぐ近く、全ドイツ語圏を束ねる神聖ローマ皇帝の拠点がウィーンにあり、ニュルンベルクやチロル地方など、腕前確かな楽器職人たちの拠点も内外近隣にあった…と、諸々の好条件が重なってのことだったのでしょう。事実、16世紀のイザークをはじめ、すでにルネサンス=バロック期にはヨーロッパ随一の名匠が数多く活躍していました——そんな豊穣な音楽文化に熱いまなざしを注ぎつづける、オーストリア出身のたぐいまれな古楽奏者が精力的な活躍を続けていることに、私たちは大いに感謝したいものです。
そう、その名はグナール・レツボール!
アルノンクールやゲーベル...と、日本にも過激派古楽アーティストとして知られる鬼才たちの刺激を受けながら育ち、1995 年に自ら結成したアルス・アンティクヮ・アウストリアとともに彼が発掘してきたオーストリアの音楽遺産は数知れず。Erato、Astree などのレーベルで古楽復興を音盤面から支えてきた録音技師=プロデューサーM.ベルンステン氏もレツボールの才能に惚れ込んで、この稀代のバロック・ヴァイオリン奏者が掘り起こしてきた、知られざるオーストリア・バロックの作曲家たちのアルバムを、Arcanaレーベルで数多く音盤化してきたのでした。
ベルンステン氏亡き後、流通が途絶えていたそれらの貴重な名盤群が、いま静かにカタログ復活を遂げつつあります。このたび日本語解説付きで弊社から復活リリースとなる本盤の主役は、B.A.アウフシュナイター。チロル生まれのウィーン育ち、この時代のヨーロッパ楽壇を二分していた「フランス様式」と「イタリア様式」の2潮流をどちらも完璧に使いこなす器用さをみせたばかりか、後年の自伝では「わたしの心の師匠はカリッシミにラッススに...」などと、数世代前の名匠たちやルネサンス期の大家たちの名をあげたほど、当時すでに時代遅れになっていたような厳格教会様式にさえ通暁していた博学の人でした。
レツボールの盟友、ガンバ奏者のL.ドゥフトシュミットも、アウフシュナイターのフランス様式による組曲集をCPOレーベルに録音していますが、本盤の「作品4」はその逆に、この作曲家のイタリア様式への通暁ぶりを如実に傑作例!
キリスト教の歴史に名を残した12 人の聖人を各1曲ずつのソナタで表現したというセッティングの音楽なのですが、そんな前置きはともかく、最上級のコレッリ作品にも匹敵しうるほどの歌心を、きわめてナチュラルな響きのなかで易々と体現してしまう腕前は、誰でも一度聴いたら忘れられなくなるはず!
それというのも、超絶技巧からカンタービレな歌いまわしまで、曲の困難さをものともしないレツボールの桁外れな腕前あってこそ——羊腸弦の玄妙な振動が18 世紀オリジナルの銘器でニュアンス豊かに増幅され、決然と輝かしい腕前で縦横無尽にメロディを響かせる…まさに絶品というほかない名演なのです。
Mer-A356
(国内盤)
\2940
カルダーラ:チェロと通奏低音のためのソナタ集(1735)
アントニオ・カルダーラ(1670〜1736):
 『独奏チェロに通奏低音を添えたソナタ集』(1735)
  第4番 ニ短調 第8番 変ホ長調 より
  第9番 ト長調 第11 番 ト短調
  第12 番 ニ短調 第14 番 イ短調
  第15 番 イ短調 第16 番 ト長調
ガエターノ・ナジッロ(バロック・チェロ)
ルーカ・グリエルミ(チェンバロ/クリストフォリ型フォルテピアノ)
サラ・ベンニーチ(通奏低音チェロ)
「低音伴奏だけじゃない!」チェロを愛奏した偉大な作曲家がいたからこそ、この楽器がソロ楽器として歩み始めた。
並ぶものなき「皇室つきイタリア人作曲家」として活躍した巨匠カルダーラが、晩年に自らの楽器へ向けたまなざし。演奏陣はイタリア古楽界の精鋭!
今でこそ独奏楽器として世界で演奏され、多士済々に腕が競われている弦楽器、チェロ。しかしこの楽器、実は16世紀くらいから存在していながら、ちゃんとソロで奏でうる楽器として認められ始めたのは、ようやく18世紀も半ばくらいになってから。ユベール・ル・ブランなる人物が1740年に残した『バス・ド・ヴィオールの防衛』という小論にも、「チェロは(…)いわば襤褸布をまとった哀れな小悪魔のごとき様子で、ご馳走にもありつけず、いつ飢え死にするか、といったありさまだったのに…」などという一節が出てきます(もっともこの頃には、チェロはフランスでもすっかり人気が出てきていて、これはそのことをやっかんでの小論なのですが)。しかし、そうやって18世紀半ばにチェロが人気を獲得しはじめたのも、ひとえに、この楽器に通暁した名演奏家と稀代の作曲家たちの活躍あればこそのこと。
18 世紀のチェロ芸術家といえば、ナポリ楽派の名手ランツェッティなども有名ですが、実はもっと北にも、チェロを愛した大作曲家はちゃんといたのです。たとえば、ウィーンの神聖ローマ皇帝の宮廷で並ぶものなき地位にあり、すばらしいオペラや宗教曲を数多く作曲して甚大な敬意を一身に集めた巨匠アントニオ・カルダーラもまた、若い頃からチェロを弾いていた大作曲家だったのです!
昨今の音盤シーンではバロック・オペラの復興もめざましく、カルダーラの声楽作品も(大規模作品はまだまだ未踏の分野とはいえ)ジェラール・レーヌの有名なカンタータ録音をはじめ、すっかり数多くなりはしましたが、器楽作品の録音はその生前の名声に比してまだ少なく、とりわけ、彼自身の楽器だったはずのチェロのための作品というのが、意外に音源がない!という不思議な状況にありました。
そこへ登場したのが、この名手ナジッロによる決定的名演!ガエターノ・ナジッロといえば、比類ない腕前を誇るイタリアの名手エンリーコ・ガッティ(近々新譜をご案内予定)やフランスのエレーヌ・シュミットなど、日本でも人気の高いバロック・ヴァイオリン奏者たちの録音にしばしば参加してきたうえ、近年はZigZagTerritoiresレーベルにランツェッティのソナタ集を録音するなど、ソロ奏者としての立ち回りも目立ってきたイタリアの俊英——なにしろ天才的な音楽センスに恵まれた国の演奏家だけに、歌心あふれる作品美をいやおうなしに引き立てる演奏のクオリティは群を抜くすばらしさ!
収録作品は、さまざまな声楽作品での成功の末、カルダーラが最晩年の手前であらためて刊行した「総決算」ともいうべき重要曲集なのですが、その初めてともいえる体系的な紹介盤が、これほどの名手の手で残されたことはまったく僥倖というほかありません。
さらに興味深いのは、鍵盤で伴奏をつとめるヴェテラン奏者グリエルミが、当時発明されたばかりのプロトタイプ・ピアノ(!)を折々に用いていること…ピアノというよりむしろリュートかハープに聴こえるその妙音も、想像力を快く刺激してやみません。
Mer-A354
(国内盤)
\2940
パウル・フォン・ヴェストホフ(1656〜1705):
 『無伴奏ヴァイオリンのための六つのパルティータ』(1696)
  第1番 イ短調 第2番 イ長調
  第3番 変ロ長調 第4番 ハ長調
  第5番 ニ短調 第6番 ニ長調
グナール・レツボール
バロック・ヴァイオリン... ゼバスティアン・クロッツ製作(18世紀)
大バッハの『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』には、こんなにすばらしい先駆的作品があったのです! 最初から最後まで、全く伴奏なしのヴァイオリンのための曲からなる世界初の曲集。魅力たっぷり、理想的な演奏ができるのは、この人だけです!バロック・ヴァイオリン。今の楽器よりも薄く指板は短く、顎充ても使わず、弓も演奏法も今のそれとはかなり違う...いわゆる古楽器演奏がさかんになった今や、バロック作品は当時の演奏法で解釈してこそ、その本来の魅力がありありと伝わってくるもの、という発想もすっかり一般化してはいるのでしょうが、そのなかでも特に「当時の楽器と演奏法」が作品そのものと分かちがたく関わっているうえ、卓越した音楽性なしには面白みも半減してしまうような「難曲」というものもしばしばあって。存在こそ知られてはいるものの、なかなか名演に出会えない「知られざる傑作」というのは、録音を見つけたら「聴けるだけでもありがたい」とレヴェルの低いところで満足してしまったりもするものです。しかし、そうした作品がもし、現代最高の古楽奏者によって、当時の楽器と演奏法を周到に再現していながら、かつ信じられないくらい豊かな音楽性あふれる解釈で聴けるとしたら...?それが、この鬼才グナール・レツボールによる、ヴェストホフの無伴奏作品集なのです!バッハの伝記をひもといた方なら、鍵盤だけでなくヴァイオリン演奏の腕前もひとかどのものだった彼の先駆者として、パウル・フォン・ヴェストホフという音楽家の名前をきっと目にしておられることでしょう。バッハ初の就職先だったヴァイマール宮廷楽団でコンサートマスターをしていたヴェストホフは、オーストリアのビーバー(1644〜1704)と並んで当時のドイツ語圏を代表するヴァイオリニストとして甚大な名声をものにしていたことが知られているうえ、1696 年頃、『無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ集』という、あのバッハの金字塔的作品の先駆であることがありありと窺える曲集も残している重要人物。しかしなにぶん彼自身が名演奏家だったため、この作品の演奏は極度に難しく、そうそう録音も出てこないのが実情なのでした。アルマンド、クラント、サラバンド、ジグ...とフランス舞踏組曲の常道をふまえた4楽章構成のパルティータ6曲は、ヴァイオリンの4本の弦を最大限に活用し、たった1挺の楽器から二重奏のような効果を引き出しつづけたり、おもいがけぬ和音進行で聴き手の心を蕩かせたり、鮮烈な超絶技巧で演奏者に容赦ない挑戦を突きつけたりする、聴き所満載の名品ばかり——その本来の魅力を失わず、ヴェストホフ本人の演奏さえ髣髴させるほどの解釈で弾けるのは、音楽の国オーストリアの古楽界を牽引するバロック・ヴァイオリンの鬼才、グナール・レツボールくらいのものでしょう!事実、現代ヴァイオリンでの録音が若干ある以外、バロック・ヴァイオリンでの「全曲録音」は他に例がありません。多声奏法もあざやかに再現、若きバッハを強烈に感化したであろう「ルーツ」をありありと偲ばせる、おそらく当面、これをしのぐ録音は出ないであろう名演——バッハ・ファンを「おお!」と引きつけること間違いなしの注目盤!

ARS MUSICI

AMCD232-828
(国内盤)
\2940
ヨーゼフ・ラインベルガー(1839〜1901):
 1.ミサ曲 変ホ長調 作品109「カントゥス・ミサ」
ブルックナー(1824〜1896):
 2.ミサ曲 ホ短調
ヴィンフリート・トル指揮
ラルパ・フェスタンテ(古楽器使用)
フライブルク・カメラータ・ヴォカーレ合唱団
ブルックナーの多面性と伝統感覚をあざやかに示すホ短調ミサ曲と、ロマン派の大家ラインベルガー随一の 合唱芸術の美…古楽解釈と美質の、たぐいまれな共存! 新生ARS MUSICIならではの多面的な魅力が、最も端的にあらわれているのが、おそらくこの最新新譜でしょう——レーベル紹介でも指摘した三つの特質である「秀逸な古楽器演奏」、「実効性のある合唱アイテム」、そして「ドイツ最新の音楽シーンを代表する精鋭が続々」...すべてが、この1枚に凝縮されています。 日本のクラシック・ファン(特に、音盤ファン)にはブルックナー愛好家の方がたいへん多いのは、昔から——そして、圧倒的な人気を誇る交響曲のかたわらで、教会音楽からスタートしたこの異色の巨星が、合唱曲にも数多くの傑作を残していることは、明敏なブルックナー・ファンの方ならみなご存知でしょう。3曲ある大規模ミサ曲のなかでも、交響曲を書くようになった後年、たいへん古風な管楽伴奏をつけて整えられたホ短調ミサ曲は、ロマン派的美質と擬古的な魅力が相半ばする、傑作中の傑作として有名な一編。それが、なんとここではドイツ最先鋭の古楽バンドの参加による、絶妙の古楽器演奏で聴けるのです!考えてみれば、ブルックナーの教会音楽はきわめてルネサンス=バロック寄りなのですから、古楽管楽器の素朴なうまみ、ヴィブラート的語法に頼らない晴朗な響きなどとは、実に相性がいいわけで。ミュンヘンを拠点に活躍するラルパ・フェスタンテは、ドイツのCarusやCPOなどに名盤あまたの気鋭集団——対するフライブルクのカメラータ・ヴォカーレは、ARS MUSICIがBMG傘下だった時代から活躍を続け、ドイツ・ロマン派やフランス近代にすぐれた実績を残してきた実力派団体。リヒテンシュタイン出身のロマン派の大家で、ブルックナーと同じくバロック音楽から多くを学び、それを最良のロマン派語法とかけあわせたラインベルガー(ロマン派好き音盤ファンにはおなじみの名前ですね)の清らかなア・カペラ・ミサでも、えもいわれぬ透明感が深々とロマン情緒を感じさせてくれ、作品の美質と作曲家の技量をあざやかに引き立ててくれます。「こんな世界があったのか」とさまざまな点で感じさせてくれる、何重にも技ありな1枚です。
AMCD232-182
(国内盤)
\2940
ボッケリーニ——
 弦楽四重奏曲の、もうひとりのパイオニア
ルイージ・ボッケリーニ(1743〜1805):
 1. 弦楽四重奏曲 ト短調 作品32-5(全4楽章)
 2. 弦楽四重奏曲 ト長調 作品44-4
          「スペインの暴君」(全2楽章)
 3. 弦楽四重奏曲 イ長調 作品26-4(全2楽章)
 4. 弦楽四重奏曲 イ長調 作品8-6(全3楽章)
 5. 弦楽四重奏曲 ホ短調 作品33-5(全2楽章)
フライブルク・アポ−ニー四重奏団(古楽器使用)
ゴットフリート・ファン・デア・ゴルツ、
ペトラ・ミュレヤンス(ヴァイオリン)
クリスティアン・ゴーセス(ヴィオラ)
グイード・ラリッシュ(チェロ)
名盤あまたの名団体・フライブルク・バロック管の名奏者が結集——ドイツ古楽界の柔軟さと堅固さをありありと示す極上のボッケリーニ解釈、その芸術性を端的に愉しませます ARS MUSICI発祥の地フライブルクは、ドイツ南西部の地方都市でありながら、スイスやイタリアにも近い多感な街。シルヴァン・カンブルランやミヒャエル・ギーレンの指揮で活躍した南西ドイツ放送響の拠点のひとつ、といえば、オーケストラ好きのクラシック・ファンにもその柔軟さがおわかりいただけましょう。さて、この街で20年来活躍を続ける、つまりアムステルダムのトン・コープマンの楽団(こちらは1979年創設)の向こうを張る老舗優秀古楽バンドとして知られるのが、Deutsche Harmonia Mundiに名盤あまたのフライブルク・バロック・オーケストラ(FBO)!ここに登場するフライブルク・アポーニー四重奏団は、コンサートマスターのファン・デア・ゴルツ以下、この古楽バンドの中心的メンバーで構成された気鋭集団なのです。小編成バロック作品から古典派の大規模作品まで、およそ何でも絶妙の解釈で仕上げてくるのがFBOだとすれば、本盤の演奏はまさにそんな彼らの芸風をそのまま凝縮したような内容——演目であるボッケリーニは、ご存知「メヌエット」の作者でもあり、18世紀最大のチェロの名手として活躍した大家。かたやスペイン王室に仕えつつ、「ハイドンの妻」と渾名されるほど室内楽作品に人気のあった作曲家でもあり、実はハイドンよりも先に弦楽四重奏曲というジャンルを練り上げていた早咲きの天才でもありました。その後ハイドンにも触発されつつ、主題労作的な形式充実とはまた違った独特の魅力あふれる弦楽四重奏曲を無数に残し、独自の境地を確立しています——その面白みを、たった1枚のCDに集められた5曲もの多彩な曲目で端的に愉しめる・という企画もまた絶妙(Digipackジャケも美麗です)。全2楽章の小四重奏曲にきく寸劇的なドラマ性、短調作品でのシャープな哀しさ、ソナタ的美質、ピリオド弦楽器だからこそ描き出しうるボッケリーニ特有の和音感覚...ハイドン&ウィーン系だけが古典派室内楽の魅力ではない・と痛感させてくれる、至高の1枚なのです。
AMCD232-394
(国内盤)
¥2940
テオドール・キルヒナー(1823〜1903):
 1. ピアノ四重奏曲 ハ短調 作品84
ローベルト・シューマン(1810〜1856):
 2. ピアノ四重奏曲 変ホ長調 作品47
フォーレ四重奏団
エリカ・ゲルトゼッツァー(vn)
ザーシャ・フレムブリング(va)
コンスタンティン・ハイドリヒ(vc)
ディルク・モンメルツ(p)
今や、メジャーレーベルのアーティスト——しかし本物の充実企画は、こうした小規模レーベルにこそ潜んでいるもの。 絶妙な選曲で輝きはじめる、精鋭団体フォーレQの本懐!  今年4月に来日公演を行ったばかり、ドイツ・グラモフォンにはブラームス、メンデルスゾーン、モーツァルト…といった巨星たちの傑作とならんで“POPSONGS”なるクロスオーヴァーの良盤もあり——本格派ぶりと多芸ぶりをいかんなく見せ付けてくれているドイツ最前線の室内楽アンサンブル、フォーレ四重奏団ですが、彼らはDGGと契約する前、ARS MUSICIに充実した録音を残していたのでした。まっさきに日本語解説付でお届けしたいのが、このキルヒナーとシューマンの傑作からなる1枚! アルバム前半の作曲家テオドール・キルヒナーというのは、ブラームスとシューマンのちょうど間くらいの世代に属し、ドイツ各地で充実した活動を長く続けた「隠れ巨匠」。メンデルスゾーンの推薦でスイスに職を得たり、クララ・シューマンがきわめて高く評価していたりする人ですが、実際にブラームスもかくや、という絶妙なピアノ曲を無数に残しており、ドイツ・ロマン派好きの音盤ファンにはあながち無縁な名ではないのでは。といっても、意外に録音は少ないのが残念なところ——実は室内楽の名品などめったに聴けないのですが、比較的晩年の作(1888頃)となるこのピアノ四重奏曲、作曲年代のわりに学究的にはならず、盛期ドイツ・ロマン派的なみずみずしさを馥郁とたたえた若々しい名品に仕上がっているのが嬉しいところ。こうした美質が浮き彫りになるのも、フォーレQのイキのいい解釈あればこそ、といったところでしょう(作曲家については、詳細な解説の日本語訳が役立ちます)! そして、その後にあらわれるシューマンの傑作、「室内楽の年」1842年をピアノ五重奏曲と飾った四重奏曲での、きわめてハイテンションにして決して荒ぶらない至高の名演ときたら...意外な作品の美に気づける喜びまで含め、室内楽を愉しむ、ということを徹底して教えてくれる、本当に忘れがたい逸品といえるでしょう。手にとって損はない良盤です。
AMCD232-231
(国内盤)
\2940
ハンマーシュミット:ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏と
 管楽器のための5声の組曲集(1636)
 1. 5声の組曲 ニ短調(ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏)
 2. 5声の組曲 ト長/短調(ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏)
 3. 5声の組曲 ト長/短調(管楽合奏)
 4. 5声の組曲 ハ長調(管弦楽合奏)
ジョルディ・サヴァール(各種ヴィオラ・ダ・ガンバ)
エスペリオンXX(古楽器使用)
さすがは元・DHM——びっくりするほど豪華なメンバー、サヴァール&エスペリオンXX、名手ぞろいの86年録音。 いや、うますぎます。日本の古楽ファンのツボを突く逸品 ! ARS MUSICIの母体は、クイケン兄弟やレオンハルト・コンソートなどの名盤を多数生み出してきたDeutsche Harmonia Mundiと同じ組織——そうした歴史をありありと感じさせる、驚くほど豪奢な演奏陣による録音が、このハンマーシュミットの合奏作品集なのです! 現代の国境で言えば、ちょうどチェコとポーランドとの境というドイツ中東部の国境地帯にあるザクセン地方の街ツィッタウが、本盤の主人公ハンマーシュミットの活躍地。つまりこの作曲家、ボヘミア(現チェコ)の豊穣な音楽環境と、音楽拠点ドレスデンにおける最新の芸術音楽とのあいだで、ユニークな才能を開花させたバロック初期ドイツの大家というわけです。本盤に収録されているのは、まさしく17世紀中盤のドイツならでは、といえる「ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏による舞踏組曲集」——1636年に出版された『最初の労作集 Erster-Fleiss』と呼ばれる合奏曲集からの曲を組曲仕立てにしていて、パヴァーヌ、ガリヤルドといったルネサンス風の舞曲とならんでサラバンド、クラント...といったバロック期の流行舞曲も続々あるのですが、17世紀のヨーロッパの主流では、舞踏組曲はヴァイオリン属で演奏されることが多かったはず。それをガンバで合奏するのは、この室内楽形態がドイツ語圏でとりわけ愛されていたためでしょう。それにしても、その古雅な滋味と、フレッシュなバロック風味とが入り混じる作風をあざやかに再現してくれるのが、今では考えられないくらい豪奢な1980年代のエスペリオンXXのメンバー、というのがまた嬉しいところ(こういった魅力は、Ricercarの復活音源シリーズなどにも相通じるところがあるようで)!メンバー表のガンバ奏者にはカザドムン、ベルンフェルドらと並んでしれっとパオロ・パンドルフォやドゥフトシュミット(!)が名を連ねていたり、トロンボーン合奏はレ・サックブーティエの名手カニヤックに巨匠ヴィム・ベキュ、そしてツィンク奏者はもちろん世界最高の天才、ブルース・ディッキー…古楽ファンの方々、そそられるでしょう?その期待をさらに上回る世界が、ここにたっぷり詰まっているのです!
AMCD232-192
(国内盤)
\2940
ラフマニノフ(1873〜1943):
 1.交響詩「岩」作品7(1893)
 2.交響曲 第1番 ニ短調 作品13(1895)
ヴァルター・ヴェラー指揮
バーゼル交響楽団
「新時代の巨匠指揮者」となりつつある、ウィーン・フィルの伝説的コンサートマスター!英国での活躍とベルギー国立管での快進撃のあいだ、先進的な実力派集団バーゼル交響楽団と残していた、ラフマニノフ初期傑作2編の思わぬ充実名演奏...!齢17 にしてウィーン・フィルに入団、僅か数年後の1961 年には早くもコンサートマスターに就任し、その後1964 年から1970 年までヴェラー四重奏団のリーダーとして数々の名盤をDecca に録音しながら、1966 年からは指揮者としてデビューし、3年後にはウィーン国立歌劇場の指揮台にあらわれた——「音楽の都」ウィーンの20世紀を支えてきた歴史的名匠ともいうべきヴァルター・ヴェラーが、その後ヨーロッパ中の歌劇場や管弦楽団を率い、ウィーンの伝統と新時代のフレッシュな感覚をあわせもつ充実の名演をくりひろげる実力派指揮者として活躍を続けてきたことは、意外に知られていないのかもしれません。それもそのはず、何しろ彼はこの間レコーディングもかなりしているとはいえ、日本ではその大半が輸入盤扱いでしか流通していなかったのですから。ともあれ、1970年代後半からはしばらく英国で活躍しつづけたのち、近年では2007年末のシーズン以降ベルギー国立管弦楽団と密接な関係を続け、その録音がFuga Libera レーベルから発売されたため、ようやく国内盤流通アイテムが少しずつ出てきた状態——これからじっくり、日本にもその真価が知れわたってゆくに違いありません。そんなヴァルター・ヴェラーが、英国で最も充実した活動を続けていた後ベルギーに来るまでのあいだ、1994年から97年まで首席指揮者の座にあったのが、このバーゼル交響楽団。バーゼルといえば、20 世紀前半にバルトーク、オネゲル、ストラヴィンスキーらに多くの傑作を生ましめたバーゼル室内管弦楽団や、いちはやく古楽の牙城となったバーゼル・スコラ・カントルムの存在など、器楽方面にすぐれた実績のある先取の機運にみちた音楽都市ではありますが、このオーケストラも音盤ファンにはCPOやWarner などの名盤群でおなじみ、ヴェラー退任後もバーゼル放送響を吸収合併してますます意欲的な活動を続けている見過ごしがたい気鋭集団——演目はラフマニノフがかなりの大編成で臨んだ第1交響曲がメインですが、豪奢な音響に寄りかかることなく各パートが実に精妙な仕事をこなし、それを壮大なスケールでまとめあげながらも「大声で圧倒」といった安易さに堕さない、そんなヴェラーの高貴な指揮ぶりでがぜん精彩を増す彼らの卓越した解釈は、この交響曲が初演時に(演奏のまずさゆえに)大失敗した、というジンクスなどつゆほども思い出さなくする求心力に満ちているのです!同じくラフマニノフの初期を代表する充実作「岩」での静々と高まるドラマ性も、じっくり聴き極めるに足る名演——こういう充実盤がさりげなく潜んでいるから、ARS MUSICI はまったく侮れないレーベルなのです!

CARO MITIS

CM001-2008
(国内盤 SACD-Hybrid)
\3360
《古典派時代のロシア音楽5》
イェフゲニー・フォーミン(1761〜1800):
 メロドラマ『オルフェイとエウリーディカ』(1795・全曲)
パヴェル・セルビン指揮
プラトゥム・インテグルム・オーケストラ、
ロシア・ホルン・オーケストラ(いずれも古楽器使用)
ロシア18世紀——国民楽派が出てくるずっと前、西欧よりも早く「ロマン派音楽」があった!俳優たちの迫真の演技を彩った、古典派編成でくりひろげられる長大な管弦楽作品ドラマティック&エキサイティングな書法の美、ロシア随一のピリオド集団による痛快解釈!時代はうって変わって18 世紀——ムソルグスキーやボロディンたちはおろか、彼らの心の師匠である名匠グリンカもまだ生まれていない頃。しかしながら、世界史を紐解けば必ず出てくるとおり、すでにロシアはイヴァン雷帝の時代以降すっかり強国にのしあがり、18 世紀後半にはドイツから来た女帝エカチェリーナ2世のもと、西欧のファッショナブルな文化が急速に栄え、「宮廷人たちはフランス語で話しながら、イタリア風の音楽を鑑賞する」という、いかにもヨーロッパらしい宮廷生活が開花。なにしろヨーロッパとアジアにまたがる大国ですから、宮廷はガルッピやパイジェッロなど、本場イタリアで大活躍したオペラ作曲家たちを続々と招聘し、ドイツやフランスの地方都市など比べ物にならないくらいの、非常に高度な音楽文化が栄えていたのでした! しかしクラシック音楽の世界では「ロシア=民俗的サウンド」というイメージがあまりに強烈なせいか、この古典派時代におけるロシアの傑作群はほんとうに長らく見過ごされてきたままでした(そもそも祖国でも20世紀のソ連時代、帝政ロシアの文化が否定的なイメージでとらえられていたせいもあるのでしょうが)。ロシア発のハイブリッドSACD 盤専門レーベルCaro Mitis は、2003 年のレーベル発足当初、ロシア初の古楽器オーケストラである精鋭集団プラトゥム・インテグルムとともに、この時期のロシア音楽のすばらしさを伝える重要なアルバムを集中的にリリースしていました——久方ぶりとなるこの路線の新譜は、なんと古典派というよりもむしろロマン派の先駆といった感のある音楽! オルフェウス物語に取材したロシア語台本の戯曲を、たったふたりの俳優が迫真の演技で朗読するあいだ(対訳添付します)、謎の作曲者フォーミンがつけた管弦楽作品がその物語を盛り上げる——筋書きが有名なためもありますが、モーツァルトやグルックのバレエないしディヴェルティメントを、短調ベースでおもいっきりロマンティックにしたような抑揚あざやかな音楽(ボッケリーニの「悪魔の家」に近い感覚)の情感表現はきわめて巧みで、ロシア語がわからなくても、展開につよく引きずり込まれずにはおれません(なにしろ演奏陣はロシア最高の古楽集団——統率力も自発性もばっちり、創設7年ですっかり秀逸なアンサンブルに練りあがりました)!ハイドン最後の交響曲が初演され、ベートーヴェンの最初のピアノ協奏曲群が産声をあげた頃に、なんとロシアではすでに、古典派音楽をベースにしながら、ロマン派的な激情吐露をまったく躊躇せず披露してやまない音楽が発表されていたのです!メロドラマという「管弦楽曲ジャンル」の真価をきわめる傑作——古典派ファン・ピリオド楽器ファン必聴の注目盤です!Multichannel SACD-Hybrid

CONCERTO

CNT2055
(国内盤)
\2940
とめどない思い 〜クラシック・ギター、芸術音楽を越えて
 ①ラルフ・タウナー(1940〜):出発は楽し
 ②ジョルジョ・シニョリーレ(1962〜):大地と天空
 ③カルロ・ドメニコーニ(1947〜):コユンババ(羊男)
 ④シニョリーレ:そして、追憶はのしかからなくなった
 ⑤マウリツィオ・コロンナ(1959〜):前奏曲 ニ短調
 ⑥アストル・ピアソラ(1921〜1992):リベルタンゴ
 ⑦スタンリー・マイヤーズ(1930〜1993):カヴァティーナ
 ⑧ニコラ・スタルツェヴィチ(1980〜):アジアーナIII
 ⑨シニョリーレ:ダナゴールの子守唄
 ⑩ホルヘ・モレル(1931〜):ブラジル舞曲
 ⑪ロベルト・ファッブリ(1964〜):バラード
 ⑫コロンナ:地中海の調べ 第1番
 ⑬タウナー:緑色と金色と
 ⑭パオロ・ベッリナーティ(1950〜):ジョンゴの踊り
 ⑮コロンナ:シンプル 第1番
 ⑯アンドルー・ヨーク(1958〜):サンダスト
 ⑰ファッブリ:デイルに捧ぐ舞曲
 ⑱パオロ・ウゴレッティ(1956〜):チオル(音楽)
 ⑲ラファエレ・カッチオーラ(1965〜)ドリームズ(夢)
ジューリオ・タンパリーニ(ギター)
小難しいこと一切なし、ひたすらオトナな変幻自在のギター世界。フラメンコにもポップスにもタンゴにも使える楽器ではありますが、その演奏者が熟達したクラシックのプレイヤーである限り、いちばん大切な「うつくしい音」という要素は、他のジャンルのプレイヤーたちの追従を許さぬほど磨き抜かれているもの。そのうえで、その演奏者が無闇なクラシック信奉に必要以上に縛られていなかったら、ほんとうに桁外れに多彩な音楽を描き出しうる楽器になりうる...と、そんなことを痛感せずにはおれない絶妙ギター・アルバムがイタリアから届きました。
Concerto レーベルでタレガ、ロドリーゴ、ジュリアーニ(近日発売)...とクラシック・ギターの古典的巨匠たちの作品集をリリース、とくにタレガ作品集は日本でもきわめて高い評価を受けているイタリアきってのスーパープレイヤー、ジューリオ・タンパリーニが放つ、世界各地のギタリスト=作曲家たちによる新曲作品集!
ええと、少なくとも「ゲンダイオンガク」というのとは明らかに違うラインです——
途中さりげなく挿入されているピアソラの「リベルタンゴ」に象徴されるとおり(これがまた絶妙にさりげない瞬間に静々とあらわれるんですが、そのあざといカッコよさときたら...!)、いってみれば「イタリア風ウィンダム・ヒル的サウンド」とでも形容すべきスムージーなトラックが連続する、絶妙のギターソロ・アルバムに仕上がっているのです。なにしろタンパリーニという人のテクニックはべらぼうに完成度が高いので、急速なパッセージはもう真珠の粒を転がすように一つも外れた音がなし、ゆったりとした流れで和音をきれいに揃えてくる技量も実にたおやか、イタリア人ならではの歌心は軽めに仕上げた魚料理のようにキレがよくて後を引かず。総じて言えるのは、夏の夜を大人らしい気分でシックに涼しくやり過ごすなら、このアルバムをかけるのが一番!ってことです。
作曲家はイタリア人4・アメリカ人2・その他1、といった感じ、多彩なんですがイタリアものが多い、という選曲姿勢もなかなか高感度大(短館上演系の新作イタリア映画みたいな、ルーツのあるコジャレ感が憎いですね)。
CNT2067
(国内盤)
\2940
アルベルティ:チェンバロのためのソナタ集 作品1
ドメニコ・アルベルティ(1717頃〜1740頃):
 チェンバロのための八つのソナタ 作品1
  1. ソナタ 第1番 ト長調
  2. ソナタ 第2番 ヘ長調
  3. ソナタ 第3番 ハ長調
  4. ソナタ 第4番 ト短調
  5. ソナタ 第5番 イ長調
  6. ソナタ 第6番 ト長調
  7. ソナタ 第7番 ヘ長調
  8. ソナタ 第8番 ト長調
フィリッポ・エマヌエーレ・ラヴィッツァ(チェンバロ)
「アルベルティ・バス」とよく言うけれど...そのルーツは、こんなに艶やかなソナタだった!バロックの終わり頃、古典派への下準備は着々と進んでいたようなもの——ロココ鍵盤音楽に通じた名匠ラヴィッツァが、その魅力の真相を細やかに伝えてくれます全音楽譜のソナチネ・アルバムにも出てくる、モーツァルトの「やさしいソナタ」ことKV545 のソナタの冒頭部——ちょっと思い起こしてみてください、簡素で伸びやかなメロディラインの下、ドソミソ、ドソミソ…とくりかえされる低音。この、古典派以降の作品で非常にしばしば登場するバス・ラインが「アルベルティ・バス」と呼ばれるのは、クラシック楽曲の解説書をちょこちょこ読まれる方ならご存知のとおりでしょう。でもこのアルベルティ・バス、実は古典派の時代よりもずっと前に確立されていたのです! 発案者、というのは色々な意味で語弊があるでしょうが、これを最初に意識的に使ったのが、ロココ時代のフランスや英国でアマチュア演奏家たちに人気をはせたヴェネツィア生まれの鍵盤作曲家、ドメニコ・アルベルティだったのでした(ゆえに、この音型の象徴として彼の名前がついたというわけです)。教会音楽のさかんなヴェネツィアで、ルネサンス風様式をかたくなに守った擬古的作風の巨匠アントニオ・ロッティに師事したアルベルティが、後世人たちから「先進的な古典派様式の先駆者」と認識されているとは、何だか不思議な感じもします。ともあれアルベルティの名は、バロックからロココへ移る過程で、フランスではさまざまな反発の種にもなった「イタリア様式の器楽曲」の代名詞としてやっかみ半分に言及されるほど(岩波文庫に入っているディドローの『ラモーの甥』にも、そんな一節が出てきます)、たいへんな人気を博したのでした。にもかかわらず、そして実際にその作品はバロック後期らしい煽情性あふれる名曲揃いであるというのに、現在アルベルティのソナタはめったに演奏されません(録音も壊滅的に希少——スイス往年の名匠スグリッツィが数曲録音したくらい?)。イタリアのConcerto レーベルで18 世紀半ばの貴重な「晩期チェンバロ芸術」を録音しつづけている知性派俊英ラヴィッツァが、1748 年にロンドンで歿後出版されたソナタ集を全曲録音してくれたのは、まったく快挙というほかありません。聴き始めてすぐに姿をあらわすアルベルティ・バスは、全曲いたるところに使われているけれど、このシンプルさは決して飽きがこない「永遠の定番的作法」なのだな、としみじみ思うはず。スカルラッティのソナタほど複雑さはなく、確かにむしろ古典派を先取りしたようなシンプルな美質に、ヴィヴァルディやアルビノーニにも通じる憂愁・郷愁がにじむ…チェンバロっていいなあ、と感じさせる逸品です!
CNT2054
(国内盤)
\2940
セルバンテス:キューバ舞曲集
 〜中南米のロマン派時代 キューバ音楽の誕生!〜
イグナシオ・セルバンテス(1847〜1905):
 (1)孤独 (2)私に触れるなかれ (3)或る思い出 (4)嫉妬
 (5)アルメンダレス川 (6)通夜 (7)窪地(サーカス)
 (8)女妖術師 (9)ことづて (10)冷たい雨 (11)紆余曲折
 (12)友情 (13)もう踊るな! (14)クリ=クリ
 (15)いま思いつきで (16)くちばし (17)決断 (18)シー!
 (19)きっとそうなる (20)キューバとの決別 (21)帰郷
 (22)失われた幻想の数々 (23)刺客三人
 (24)いつでも大丈夫 (25)去ってしまった、もう戻らない
 (26)オマージュ (27)大奥様 (28)アーメン (29)もう泣くな
 (30)なんのためなのさ? (31)阻まれて (32)お誘い
 (33)きみは遠く(34)きみがほしい、すごく (35)大爆笑
 (36)高級娼婦(37)心許せる女 (38)カマグエイの調べ*
 (39)ロジータの洪水* (40)お人形たち
 (41)魂は融けあう*4手ピアノ(タチアナ・ラリオノヴァ参加)
ダヴィデ・カバッシ(ピアノ)
19世紀の新大陸——アメリカにフォスターやゴットシャルクがいたとすれば、のちの音楽大国キューバには、このセルバンテスがいたのでした!ロマン派ピアノ芸術のセンスと独特のリズム感がたまらない掌編の数々。変幻自在の41曲が、夏を涼しくしてくれます。19 世紀にはヨーロッパのクラシックが大きな躍進をとげただけでなく、同じように文化が伸張していった新大陸側でも、着実に芸術音楽の芽が伸び始めていたのでした。21 世紀初頭にちょっとしたブームを巻き起こした映画『ブエナビスタ・ソシアル・クラブ』で一躍有名になった南国キューバの音楽シーンも、実は19 世紀のうちにかなり充実度を増していたようです。それも、ヨーロッパと同様の芸術音楽方面で…!折しもロシアやチェコで国民楽派が話題となり、スペインのバルセロナでタレガやアルカスらが活躍、ギターが芸術音楽の楽器として再発見されていた頃——カリブ海に浮かぶ南の楽園キューバでも、すでにヨーロッパ移民たちが数代目に突入、現地生まれの白人住民(クレオール)たちは「キューバこそ祖国!」と自我意識をはぐくみ、この島国特有の音楽芸術とは何かを探り始めます。そんな時代に活躍したのが、アメリカで名ピアニスト=作曲家のゴットシャルクに、またパリ音楽院で名教師マルモンテルと異才C.V.アルカン(!)に師事したという凄腕ピアニスト、イグナシオ・セルバンテス。ポーランド随一の天才ピアニストたるパデレフスキや、ほかでもない巨匠フランツ・リストなどとも知遇のあった、いわばヨーロッパの芸術界との接点が不可欠だった頃の新大陸芸術家ではあるのですが、 作曲家としてのセルバンテスは室内楽・管弦楽作品のかたわら自らの楽器であるピアノのために無数の「キューバらしい」楽曲を残しているのです。ショパンが数々のマズルカでポーランド精神をピアノに翻案し、アルベニスがギター的なスペインの調べをピアノへと移し変えたとすれば、セルバンテスもまたキューバならではの開放的なサウンドを、あざやかなセンスで上流階級のサロン的優美さのなかに織り込んでみせたのでした(後年、アメリカの大作曲家コープランドがセルバンテスのことを「キューバのショパン」と呼び絶賛したほどです)。そんな彼のエッセンスが詰まった「キューバ舞曲集」は、どこまでも聴き飽きずについ全曲聴いてしまう、暑い日を優雅に過ごすにはうってつけのピアノ芸術!ヴァン・クライバーン国際コンクール覇者たるカバッシの絶妙なタッチが浮き彫りにする独特の憂愁のありようも美しく、中南米文化に親しみがなくても、ピアノが好きなら愛さずにはいられない、好感度あふれる絶妙のピアノ盤なのです!
CNT2053
(国内盤)
\2940
モーツァルト(1756〜1791):
 1. ヴァイオリンと
  ヴィオラのための二重奏曲 ト長調 KV423
 2. ヴァイオリンと
  ヴィオラのための二重奏曲 変ロ長調 KV424
 3. 弦楽三重奏のためのディヴェルティメント 変ホ長調 KV563
ミラノ・スカラ座四重奏団のメンバー
フランチェスコ・マナラ(vn)
シモニーデ・ブラコーニ(va)
マッシモ・ポリドーリ(vc)
やはり音楽の本場、歌の本場——世界に冠たるオペラの殿堂、スカラ座の名手たちは明らかに「うたごころ」が違います。少し聞いただけで、あっという間に芳醇な響きの世界に引き込まれること必至——イタリア流モーツァルト、極上の最前線ここに!なんといっても、楽器は人の声を模倣するもの...この発想がヨーロッパのクラシック音楽の根底にあるのだとすれば、そして演奏=パフォーマンスの「舞台」という考え方が成り立つとすれば、やはりクラシック音楽のエッセンスは歌劇場にあり、と言って差し支えないのでしょう。ましてや、19世紀いらい全世界の歌劇界にこの劇場あり、と強烈な存在感を放ってきた老舗劇場、ミラノ・スカラ座といえば、そんな「うたの芸術」の最もハイレヴェルな舞台が日夜繰り広げられている場所。昨年秋の来日公演でも存在感を新たに印象づけたとおり、そのオーケストラ・ピットにいるスカラ座管弦楽団の面々は、ただでさえ「歌の国イタリア」でハイレヴェルな音楽生活を送っているうえ、そのイタリアでも最上級のソリストが集う舞台に日々参加しているわけですから、「うたごころ」の精神が心身の隅々まで染み渡っていたとして、何の不思議がありましょう——素材重視で理屈ぬきにウマい、そんな極上のイタリア料理のように、彼らスカラ座団員が奏でるモーツァルトには、他の追従を許さない、誰もが思わず引き込まれずにおれない魅力が溢れています。ここにご紹介する新録音は、同じミラノを拠点とする技ありレーベルConcerto で制作された、作曲家最盛期の弦楽二重奏曲&三重奏曲! ザルツブルクの大先輩ミヒャエル・ハイドン(あの「交響曲の父」の弟で、宗教音楽と宮廷音楽の作曲家として活躍した大家)がトラブルで書きあげられなかった曲集を補うべく作曲された二つの二重奏曲は、低音がないぶん、モーツァルトならではの天上的な異世界的美質がひときわ際立つうえ、スカラ座の名手でもある両奏者の感性とあうんの呼吸が最大限に愉しめる極上トラック! そして作曲者晩年の玄妙な傑作・三重奏ディヴェルティメントを、これほど歌心あふれる解釈でじっくり聴ける喜びといったら...!イタリア人だけに3人とも自発性十分、さらに劇場経験がそうさせるのか、アンサンブル的に揃うべきところで絶妙の協和をみせる響きの妙はまさに理屈抜きの美しさ…滋味・深みたっぷり、正真正銘本物のカンタービレを堪能できる名演です!

COO RECORDS

COO-025
(国内盤)
\2940
Organ x 2 オルガン・デュオ
 〜2台のオルガンのための作品と連弾作品〜
 ①ロドヴィーコ・グロッシ・ダ・ヴィアダーナ(1560頃〜1627):
  マントヴァーナ
 ②ジョヴァンニ・ガブリエーリ(1555〜1612):
  ソソラソファミによるカンツォン
 ③チェザーリオ・グッサゴ(1550頃〜1620):レオーナのソナタ
 ④アントニオ・ソレール神父(1729〜1783):コンチェルト ト長調
 ⑤モーツァルト(1756〜1791):
  自動オルガンのためのアダージョとアレグロ*
 ⑥ベートーヴェン(1770〜1827):
  音楽時計のためのアダージョ ヘ長調 WoO.33-1
 ⑦ヨハン・クリスティアン・バッハ(1735〜1782):
  クインテット ニ長調
 ⑧ヘンデル(1685〜1759):オルガン協奏曲 変ロ長調 作品4-6
 ⑨アドルフ・フリードリヒ・ヘッセ(1809〜1863):ファンタジー *
   (*は連弾曲、他は2台オルガン作品)
岩崎真実子、菅 哲也(オルガン/ユルゲン・アーレント建造の大オルガン&ポジティヴ・オルガン)
カザルスホールの銘器と同じ建造家が、日本に残した決定的銘器が、2台も!1台だけでもきわめて多彩な表現が可能な「楽器の王」を、弾く人が2人いたら...?
バロックから古典派、ドイツ・ロマン派まで、表現の幅と、対話の可能性が広がります。
この春先に惜しまれながら使用停止となった、御茶ノ水のカザルスホール——ご存知のとおり、そこには20 世紀末のヨーロッパ・オルガン界を双肩に背負ってきた、と言っても過言ではない偉大なビルダーの手がけたオルガンがあり、多くの人々を魅了してきたのでした。Fine nf やmolto fine といったレーベルで録音もなされているそのオルガンのビルダーの名は、ユールゲン・アーレント——ヨーロッパ各地、なかんずくドイツやオランダなどに残されていた歴史的なオルガンの銘器を、20 世紀後半に次々と修復・補完し、たんなる目の保養どまりの観光名所だった楽器から、ブクステフーデやバッハたちが奏でた往年の響きを偲ばせる「演奏可能な銘器」を復元したことでも知られています。それらドイツ北方バロックの偉大な銘器に滔々と流れている理念をしかと受け継いだアーレントは、自らの工房で新作楽器も手がけてきたのですが、その数は決して多くはありません。カザルスホールの楽器はその貴重な一例となるわけですが、実はこのビルダーが日本で最初に建造したオルガンは、東久留米の『聖グレゴリオの家』というところで立派に現役楽器として使われ続けているのです——弊社の独自レーベルCoo-Records の新譜は、このオルガンを使った新録音なのです。とはいえ、このアルバムは単なるオルガン独奏曲集ではありません——実はこの『聖グレゴリオの家』、同じ巨匠アーレントが製作したポジティヴ・オルガン(通奏低音伴奏などでも使われる移動可能な小型オルガン)も置かれているという贅沢な環境にあるため、これを生かして、音楽史上に残された「オルガン2台の二重奏」という意外なレパートリーの面白さを追求してみよう...という企画になっているのです。
仕掛け人は、古楽と教会音楽の教育機関たるこの東久留米の研究所で教鞭をとる、ふたりの実力派オルガニスト。もともとヨーロッパには2台のオルガンをそなえた場所も少なからずあり、古くはルネサンス末期の複合唱様式に対応したイタリアの教会から、合唱用の小オルガンを併設したイギリスやフランスの教会など、それらの機能を生かしたオルガン二重奏作品というのも実は結構あったりするのですが、なにぶん演奏環境が必ずしも整わないため、実際に耳にする機会は稀かもしれません。そうした貴重な作例をルネサンスからロマン派まで、途中にはベートーヴェンやモーツァルトら名の通った巨匠たちの自動オルガン用作品まで弾きながら、バランスよいプログラムで、じっくりと——1台だけでも「楽器の王」と称されるくらい可能性の広いオルガンが2台、しかもきわめつけのアーレントの銘器、という贅沢さ。音楽史上の思わぬジャンルに、心そそられずにはおれません!

FUGA LIBERA

MFUG556
(国内盤)
\2940
ゴベール:チェロおよびフルートを伴う室内楽作品集
フィリップ・ゴベール(1879〜1941)
 1.三つの水彩画〜フルート、チェロとピアノのための
 2. フルートとピアノのためのソナタ 第2番
 3. 哀歌 〜チェロとピアノのための
 4. フルートとピアノのためのソナタ 第3番
 5. チェロとピアノのための三つの小品
 6. 浪漫的小品〜フルート、チェロとピアノのための
トリオ・ヴィーク クリスティーナ・ファスベンダー(fl)
ユストゥス・グリム(vc)
フローリアン・ヴィーク(p)
フランス近代、ドビュッシーやラヴェルの偉大なる同時代人だったフルート芸術家ゴベール。自分の楽器だけに縛られない「フランス近代の巨匠」としてのゴベール像を、えもいわれぬ繊細な解釈で浮き彫りに。
モネ劇場響のソロ奏者、コーミシェオーパー首席奏者の快挙!
フランス近代音楽、それも室内楽を意識されている音楽ファンは、概して「ちょっとだけ知名度の低い大家」が、末永く聴き続けたくなる名品をいくつも残していることをよくご存知。そんなわけで、ドビュッシー・サティ・ラヴェルの3巨頭だけでなく、ルーセル、カプレ、マニャール…といった1860〜70 年代生まれのフランスの名匠たちの新譜が出てくると、思わずチェックせずにはおれない方も少なくないはず。
フィリップ・ゴベール(1879〜1941)という作曲家に注目が集まってきたのは、CD 時代におけるそんな風潮がベースにあってのこと。さらにこの作曲家、自らフランス随一のフルート芸術家として活躍、この国が管楽器のための音楽を大切にしはじめた時代にあって、師匠タファネルとともに「管楽器のためのフランス室内楽協会」を運営し、今なお使われているフルート練習曲集の作者でもあることから、管楽器ファンにとって(いわばピアノ学習者にとってのツェルニーのように)とても身近な名前でもある。
この事実が追い風となって、ゴベールの室内楽新譜はかなりチェックされる率が高くなるわけです。実際、その音楽はフォーレやルーセルなどの音楽に似て、表現の幅がきわめて広くなったフランス近代ならではの繊細な和声と、確たる形式感覚とがあざやかに融合。さらにフルート曲では、この楽器の機能と可能性を知り尽くした書法によって、えもいわれぬ優美さからコントラスト豊かなドラマ性まで、変幻自在の魅力をたたえた作品ばかり! ラフマニノフのピアノ作品、イザイやフォーレの弦楽器作品と並ぶ「管楽器のための近代音楽」きっての名品に出会える確立が高いのです。
さて、かつてベルギーのCypres レーベルで、1873 年生まれのベルギーの巨匠ジョゼフ・ジョンゲンの音楽をひろく世界に紹介した実績をもつ敏腕プロデューサーが主宰するFuga Libera レーベルが、今あらためて、このゴベールの室内楽作品集をリリースしてくれました。ゴベールと同じフランス語話者でありながら、広く開かれた視野を持つプロデューサーの慧眼で、ここにはフルートが重要な立ち回りをみせる作品ばかりではなく、中低音弦の味わいを生かした絶妙なチェロ作品も含まれています。これがまた、絶妙に細やかな逸品ぞろい!アンコールピース的な親しみやすさと、近代音楽ならではの精緻な奥深さとが並存する作品群は、こうして一同に会してみると、じっくり聴き込むに足る充実した名品なのだということがよくわかります。その旨味が引き立つのも、演奏陣が世界的なオーケストラで重要なポストにいる名手たちならばこそ。
チェロはベルギー王立モネ劇場の首席奏者グリム、フルートはニコレ、マイゼンの門下に学んだベルリン・コーミシェオーパーの俊英ファスベンダー。ArsMusici でロマン派巨匠らの意外な名品を掘り起こしてきたF.ヴィークが奏でる、艶やかなタッチのピアノも魅力です!
MFUG566
(2CD)
(国内盤)
\4515
ムソルグスキー:『展覧会の絵』、およびその他のピアノ作品集
ムソルグスキー:
 ①涙ひとすじ ②情熱的な即興曲(ベルトフとリューバの追憶)
 ③夢想
 ④『ソロチンスクの定期市』より
  定期市の情景/ホパーク
 ⑤村にて
 ⑥クリミアにて(奇想曲(バイダリ)/グズフ)
 ⑦幼年時代の追憶
 ⑧幼年時代の二つの追憶(乳母とわたし/最初の罰)
 ⑨酔狂な女 ⑩お針子の女(小さなスケルツォ)
 ⑪スケルツォ 嬰ハ短調 ⑫古典様式による間奏曲
 ⑬子供の遊び——陣取り
 ⑭禿山の一夜
 (リムスキー=コルサコフ版にもとづく
  コンスタンティン・チェルノフによるピアノ独奏版)
 ⑮瞑想(アルバムの一葉)
 ⑯組曲『展覧会の絵』
アリス・アデール(ピアノ)
近現代ものに通暁した知性派アデール。大御所になってきたところで、意外な全曲集!すぐれてロシア的な情緒を薫り高く感じさせながら、いたるところで思わぬ魅力——『展覧会の絵』だけで終わらない、音楽史上屈指の異才の正体をときあかす重要盤!ピアノ音楽を聴き込んできた方々にとっては「知る人ぞ知る」フランス随一の知性派、アリス・アデール——フランス20 世紀を代表する大家メシアン(そういえば、イヴォンヌ・ロリオ夫人が19 日に急逝されました。ご冥福をお祈りいたします)に絶賛を受け、ドビュッシーやフランクをはじめとするフランス近現代作品の解釈で注目されつづけてきただけでなく、現代作曲家フィリップ・エルサンからも絶大な信頼を受け、数多くの作品を初演してきた重要人物です。近年はベルギーFuga Libera レーベルから意外にもバッハ『フーガの技法』のピアノ録音(MFUG544)をリリース。得体の知れない遅いテンポでこの難解作の謎を解きほぐし、抗いがたい求心力で日本でも「レコード芸術」特選を獲得、同曲目を語るうえでも見過ごせないピアニストとなってきました。そうやって意義ある活動を着実に積み重ねているうち、すっかり大御所的な存在感の出てきたアデールがいま世に問うのは...驚いたことに、ムソルグスキー!それも、かの『展覧会の絵』だけではなく、まずめったに演奏されない無数の注目作を含む体系的録音、およそ他に類例のない2枚組です。ラヴェル編曲などの管弦楽版で知られるかの名曲『展覧会の絵』がピアノ曲として作曲されたのは今更断るまでもない有名な話ですが、19 世紀の国民楽派、ロシア五人組のなかで最も常軌を逸した芸術家であるムソルグスキーの作品に「ほかのピアノ曲」がこんなにあったこと自体、およそ多くの音楽愛好家が注目せずにはおれない事実ではないでしょうか?そしてここで重要なのは、それらを演奏解釈するのがロシア系のピアニストではなく、「移民と知性の国」フランスの、近現代ものを得意とするピアニストであるという点——「知の言語」を感覚的に操るセンスを持ち、それを人間的情感の濃やかな機微のなかで操ることに長じたフランス人がムソルグスキーに向き合ったとき、ロシア人がロシア語的ピアニズムの主観性で解釈しているあいだは見えてこないような「ひとりの芸術家」としてのムソルグスキー像が浮かび上がるわけです。(これこそ、「全集」のような体系的録音企画に求められているポイントなのでは?)アデールは本盤を、健康を害して早世した作曲家が晩年の失意と絶望のうちに残した「涙ひとすじ」で始め、そこから回想をたどるように初期作品へと戻り、「禿山の一夜」のおどろおどろしくも意外をきわめるピアノ版(!)で驚かせたあと、最後に圧巻の「展覧会の絵」で締めくくる——最後まで徹頭徹尾、一音一音確かめるように弾き連ねてゆくユニークなピアニズムが、酒浸りの断片的な意識のなか、強烈なインスピレーションの閃きをみせたムソルグスキーの感性をありありと描き出すかのよう、どんどん引きずり込まれます!解説も充実の内容(日本語訳付)、この大家を知るうえで外せない注目盤です!
MFUG565
(国内盤)
\2940
近代ヴァイオリン芸術、中欧からバルカンへ
 〜マルティヌー、エネスク、モクラニャチ〜
エネスク(1881〜1955)
 1. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
  第3番「ルーマニア民俗風に」op.25
マルティヌー(1890〜1959):
 2. 五つのマドリガル詩節
  〜ヴァイオリンとピアノのための
ヴァシリエ・モクラニャツ(1923〜84):
 3. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ト短調
ロレンツォ・ガット(ヴァイオリン)
ミロシュ・ポポヴィチ(ピアノ)
ピアニストは、デビュー盤で「レコ芸特選」実績あり。弦は「まだ無名」——否、怪物です!あやしく艶やかな曲線を描く、ヴァイオリンのメロディライン。
「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれたバルカン半島のほうへ、三つの意外な傑作にひそむ“民俗情緒”をえぐり出す!
シェーンベルクの十二音技法やらストラヴィンスキーのバーバリズムやら、突出して理解しがたい芸術表現が早くから登場してしまうせいで、「20世紀の音楽=現代音楽=わけのわからないものを聴かされる恐怖」みたいな図式ってあるかもしれません。でも実際には、それらはあまりに強烈だから目立っているだけで、当時としてはごく少数の例外——たとえばクライスラーのヴァイオリン音楽や、ラフマニノフのピアノ音楽やハリウッド映画の音楽などのように、ヨーロッパ芸術音楽は20 世紀も半ば過ぎまで、最新の音楽さえ、まったくもって晩期ロマン派的な「誰にもわかる美しさ」の魅力・魔力から逃れはしませんでした。むずかしいことなんて、何もないんです。音楽=音の快楽...この根本事実を、20 世紀前半のゾクゾクするような美しさをたたえた三つのヴァイオリン室内楽を通じて教えてくれるのは、ベルギーを拠点に21 世紀の楽壇を騒然とさせはじめている、ふたりの気鋭奏者!ピアノのミロシュ・ポポヴィチはセルビア出身、シューマン作品を集めたデビュー盤(MFUG528)が『レコード芸術』特選に輝いたのもまだ記憶に新しい俊英——本盤でも自発性たっぷり、ヴァイオリンに押されぬ迫真の立ち回りで、鮮烈な急速楽節から神がかり的にうつくしい静謐の瞬間まで、室内楽のうまみをあざやかに盛り上げてやみません。
しかし圧巻は、ロレンツォ・ガットなるイタリア系ベルギー人ヴァイオリニスト!エリザベート国際コンクール2位&聴衆賞に輝いたのがつい去年のことだそうですが、「技巧超完璧」はもはや新世代奏者の常識として、その魔術的ともいえるカンタービレの「くゆらせ方」(まさに煙のような、あるいは強い蒸留酒の陶酔のような...)にちょっと桁外れな、あらがいようのない魅力が...何者かは知りませんが、この感性こそが本盤収録作品3曲に、ほんとうにぴたりと合致しているんです!というのも、本盤に収録されている3曲はそれぞれルーマニア、チェコ、セルビア...という「中東欧」の出身者で、20世紀前半の、近代でありかつ「後期国民楽派」とでも呼びたくなる風潮のなかで活躍した作曲家たちの曲。どこか東洋的でもある、玄妙で蠢惑的、民俗音楽的な曲調の味わいを、このロレンツォ・ガットのヴァイオリンは幾倍にもふくらませ、ストレートな快楽として私たちの心に突き刺さる響きを描き出し続けるのですから!
エネスクの第3ソナタは数多の名盤を軽やかに凌駕しかねない求心力、マルティヌーではピアニスト共々、瀟洒な立ち回りやフランス風のオトナな響きがたまらなく綺麗、そしてセルビア20世紀の巨星モクラニャチの掘出物的傑作ソナタでは、同郷人ポポヴィチの民族楽器的なピアノの鳴らし方にも興奮させられる...いやまさしく、こういうものこそ視聴機で強く押せる「音ありき」のアイテムでしょう!

GRAMOLA

GRML98841
(国内盤)
\2940
シューベルト:ミサ曲 変ホ長調
 〜シューベルト生涯最後の管弦楽付大作〜
フランツ・シューベルト(1797〜1828):
 ミサ曲 変ホ長調(1828)
  〜独唱、合唱と管弦楽のための
マルティン・ジークハルト指揮
スピリット・オヴ・ヨーロッパ
コルネリア・ホラーク(ソプラノ)
ヘルミーネ・ハーゼルベック(コントラルト)
ミハエル・ノヴァク(テノール)
アレクサンダー・カインバッハー(テノール)
ヨゼフ・ヴァークナー(バス)
ベートーヴェン『ミサ・ソレムニス』と比べうる、シューベルト最晩年の超・大作。
あざやかな管弦楽書法、精緻な対位法、この作曲家の新境地をしめす重要な名作なのに知らないのは勿体ない!
大作曲家が手がけた、音楽史上かなり重要な作品でありながら、国内盤ではめったに新録が出てこない傑作というものは、意外とあるもの。ブルックナーの『テ・デウム』、マーラーのピアノ四重奏曲、チャイコフスキーの『偉大な芸術家の思い出』、ベートーヴェンのハ長調ミサ曲...合唱つきの大作や室内楽の大物あたりがその範疇に入ってくると思うのですが、シューベルトの変ホ長調ミサ曲も、この作曲家が最後に手がけた管弦楽つきの大作というわりには、どうしたものか国内盤で新たな録音がめったに出てこないように思います(輸入盤では、かなり多士済々ですけれども)。
ともあれ、ベートーヴェンが1827 年に亡くなった後、「彼の後をゆく者に、乾杯!」と叫んで、シューベルトがその衣鉢を継ぐような作風を深めていったのは有名な話。もちろん、彼もその後すぐ翌年に亡くなってしまうのですが、最晩年には三つの長大なピアノ・ソナタや、室内楽における傑作中の傑作である弦楽五重奏曲など、それまでのシューベルトの路線とはかなり趣を異にする充実作が生み出されています。ここへきて改めて作曲理論をきちんと学ぶべく、古くからの教会音楽作法に通じたジモン・ゼヒターという名匠のもとへレッスンに向かった、という逸話も残されています。
『ミサ曲 変ホ長調』D950 は、まさにそんな折に生み出された最晩年の意欲作——その壮麗かつ清らかな響きは、ハイドン晩年の壮大なミサ曲やベートーヴェンのミサ・ソレムニスにも比肩する充実度を誇りながら(このあたりは、ゼヒターの教会音楽のレッスンが生きていたのかもしれません)、さすがはシューベルト、と思わせる親しみやすい響きに徹頭徹尾貫かれており、ハ長調の交響曲『ザ・グレート』にも通じるオーケストレーションの豊かさが、オーストリアの素朴な自然をイメージさせもする...つまり端的に言うなら、ベートーヴェンやブルックナーなど、ドイツ=オーストリアもののオーケストラ作品が最も熱烈に支持される日本でウケないはずのない大作なのです!
ここで嬉しいのは、オーストリアの中心、ウィーン市街中心部に拠点をおく「生粋のウィーンのレーベル」Gramolaが、ふくよかさを保ちながらも絶妙にキレのいい、まさに「オーストリアの、いま」を鮮烈に感じさせてやまない録音を届けてくれたこと——Extonなどにも名盤のあるピリオド・アプローチ系現代楽器バンド、スピリット・オヴ・ヨーロッパの痛快解釈に、精鋭の集まるチェコの名門合唱団がインテンスな声を添え、オーストリア楽壇の最前線を担う実力派歌手たちが味わい深く、清らかなソロを聴かせる…好きにならずにはおれない「本場感」にあふれる、イキのいい充実解釈なのです。
GRML98859
(国内盤・2枚組)
\4515
トゥリーナ:ヴァイオリンとピアノのための作品全集
 1. サンルカールから来た女の詩op.28
 2. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第1番op.51
 3. エウテルペはひたすら晴れやかに op.93-2
 4. 古典的変奏曲 op.72
 5. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第2番op.82
 6. ナバラの地に捧ぐ
 7. スペイン風ソナタ(1908)
DSデュオ
ダビド・デルガード(ヴァイオリン)
シュテーファン・シュミット(ピアノ)
夏は、スペインへ!
ファリャと並ぶスペイン近代最大の名匠のひとり、トゥリーナの作風はクラシカルな感覚と根っからのアンダルシア気質とが、あざやかに入り混じる傑作ぞろい。作曲家と同郷のヴァイオリニストが艶やかに描きあげる、端的・絶妙な本格派全曲録音!
「暖かさ」のなかに「暑さ」が入り混じりはじめたこの季節、来るべき夏真っ盛りのシーズンへ向け、南国スペイン最高の芸術音楽をここにお届けいたします!
スペインもさらに南部の、太陽海岸のリゾートやアルハンブラ宮殿やセビーリャの火祭りで知られるアンダルシア地方出身、つまり同世代の巨匠ファリャと同じ地方に生まれた偉大な作曲家、トゥリーナのヴァイオリン作品全集——それも、同じアンダルシア生まれのヴァイオリニストによる磨き抜かれた名演とあれば、暑い季節でも食指は動くというものです。
このトゥリーナ、かなり長いあいだイスラム教圏だったアンダルシアの中心都市セビーリャで生まれ育ち、マドリード音楽院で同世代のファリャと学友になり、さらにパリに出てドビュッシーその他の最新芸術に強く感化されて育ちます。ダンディの主宰するスコラ・カントルム音楽院で、フランクの循環様式を強く意識したピアノ五重奏曲を書いたところ、偉大なスペイン人作曲家アルベニスの激励を受けることとなりますが、アルベニスは周到にも、「フランク様式を追及するのは終わりにしなさい、あなたはセビリャーノ(セビーリャの男)なのだから、スペイン魂・アンダルシア魂に貫かれた音楽を書いたらいい」との薫陶を彼に授け、これがトゥリーナの作風を決定付けることとなったのでした。卓越したセンスで古典的な形式感覚を使いこなせるようになっていたトゥリーナは、それをアンダルシア風の民衆音楽の要素とあざやかに融合させ、そこに印象主義的な繊細な和声感覚をうつくしくブレンド、古典主義的でありながら気高くも情熱的なスペインの血を感じさせてやまない、絶妙に高雅な音楽に仕上げていったのでした。
トゥリーナは地元スペインではたいへん高く評価されているにもかかわらず(事実、並居る名盤はEnsayo やEdicionA.Moraledaなど、スペイン・ローカルの小規模レーベルに多数)、意外と諸外国では不当に扱われているようで——しかし幸い、昨年ガルシア・ロルカの歌曲集をスペイン勢で録音、日本でも成功作となったアルバム(GRML98844・レコ芸特選)をリリースしてくれたウィーンのGramola から、またしても同郷のすばらしい腕前を誇るヴァイオリニストを起用しての全曲録音で、そのヴァイオリン音楽の全貌がじっくり味わえることに!
アメリカでさんざん腕を磨き、名門ベルリン・シュターツカペレでコンサートマスターも務める国際派デルガードはアンダルシア地方出身者、作曲家と同じ魂で艶やかに、情熱的に、しかし絶妙のスタイリッシュさで奏でられてゆくトゥリーナの音楽世界...きわめて美しい音色で確かな自己主張を続けるピアノも聴きどころ、アンダルシア情緒・形式感覚・印象主義の絶妙なバランスを、心ゆくまで堪能できます。暑い夏をゆるりと過ごすのに絶好、高雅さと発見に満ちた名演!
GRML98875
(国内盤)
\2940
バッハ:六つのモテット BWV225〜230
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ (1685〜1750)
 1. モテット「なべての民よ、主を賛美せよ」BWV230
 2. モテット「イエス、わが友」BWV227
 3. モテット「恐れるな、われ汝の傍にあり」BWV228
 4. モテット「聖霊は我らの弱きを助け給う」BWV226
 5. モテット「来たれイエス、来たれ」BWV229
 6. モテット「主に向かって新しき歌を歌え」BWV225
ヨハンネス・ヒーメツベルガー指揮
シネ・ノミネ合唱団
コンパクトな一体感、合唱らしいふくらみ——バッハ作品のなかでも独特な位置を占める六つのモテットは、隠れた名作のひとつ!アクセント豊かな解釈でこれら6曲の「ことばはこび」を確かに伝える、オーストリア古楽界の多芸な合唱団!「この曲目の新録音が出たら、買う」という固定ファンのついている曲目は、バッハの作品にはけっこう数多くあるものだと常々感じております。無伴奏チェロ組曲、マタイ受難曲、ゴールトベルク変奏曲、ブランデンブルク協奏曲の全曲録音…ほかにも人によって、鍵盤作品から大規模カンタータまで「この1曲」というものも少なからず、あるのでしょう。そして意外なところでファンが多いのが、6曲ある合唱用モテット——たまーにオルガンなど通奏低音がつくくらいで楽器の参加もめったにない合唱作品ではありますが、日本全国におられる合唱系ユーザーさまをはじめ、ちょうどよいペース程度で新譜の出てくるこの6曲に情熱を注がれる方が多い、と伺うこともしばしば。事実、この6曲は「フーガの技法」や「平均律クラヴィーア曲集」などにも通じるというか、すべて人の声・という比較的均質な音響環境のなか、バッハらしい多声のからみをじっくり味わえるうえ、「歌詞」というひとつの筋道を追って展開してゆく、ある種シンフォニックな一体感のすばらしい名曲ばかり——バッハ・ファンの方なら、必ずいつかその魅力に気づくことになる作品群、といえるのではないでしょうか。そんなわけで「ゴールトベルク変奏曲」と同じくらい名盤あまたのこのレパートリーに、オールド・ファンから最先端の古楽ファンまでひろく訴求する可能性を秘めた新録音が登場します! ウィーンの老舗レコード店が主宰するGramola レーベルから、ウィーン放送響やトーンキュンストラーo.などの現代楽団の共演者でもあり、ウィーン・アカデミーやオルフェオ・バロックなど古楽バンドの大規模企画にも参加する多芸な合唱団「シネ・ノミネ」——メンバー表によればS-A-T-B でそれぞれ14-16-11-12(他にオルガンとチェロ・コントラバス各1程度の通奏低音伴奏あり)。二重合唱曲もあるとはいえ、管弦楽作品と同じく小規模合唱でのバッハ解釈が増えてきた昨今としては、かなり大きな編成かもしれません。しかし、その厚みを「ぬくもり」として奏功させながらも、タテのラインの揃い方は実にきびきびと心地よく、小規模合唱にも全くひけをとらない緊密なアンサンブルに仕上がっているのが頼もしいところ! それも軍隊のように峻厳な統率感ではなく、歌い手たちの自発性をよく生かしながら、豊かな響きに仕上げられているのが実に心地よいのです。こういう、大人数で一度にひとつの音楽を織り上げる感覚こそが「合唱の快感」かもしれませんが、それを「聴く側」の人間にも体感させてくれるのが、本盤の何よりの旨味といえるでしょう——古楽シーンと現代楽器シーンの双方で活躍する21世紀型の本格派集団から、末永く愉しめる贈り物です!

INDESENS!

INDE008
(国内盤)
\2940
トランペットとピアノ 親密な二重奏
 〜エネスコ、ゲディッケ、アーバン、サン=サーンス…〜
 ①ヴァシーリ・ブラント(1869〜1923):演奏会用小品 第2番
 ②アンリ・トマジ(1901〜1971):三部作〜
  トランペットとピアノのための
 ③ジョルジュ・エネスコ(1881〜1955):伝説
 ④アルテュール・オネゲル(1892〜1955):イントラーダ
 ⑤カロル・ベッファ(1973〜)サブウェイ
 ⑥レーモン・ガロワ=モンブラン(1918〜1994):
   サラバンドとフィナーレ
 ⑦ティアリー・エスケシュ(1965〜):舞踏幻想曲(タンツ・ファンタジー)
 ⑧アレクサンドル・ゲディッケ(1877〜1957):演奏会用練習曲
 ⑨ジャン=バティスト・アーバン(またはアルバン 1825〜1889):
  「ヴェニスの謝肉祭」による変奏曲 〜
   コルネットとピアノのための
 ⑩カミーユ・サン=サーンス(1835〜1921):白鳥
  (『動物の謝肉祭より』)〜フリューゲルホルンとピアノによる
ロマン・ルルー(tp)
ジュリアン・ル・パープ(p)
「フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」での来日間近!
「管の国フランス」では、もう次の世代のトランペットのスーパースターが活躍をはじめています。
まるでフルートのようなしなやかな優しさ、超絶技巧、ジャズっぽい霊妙——名作から秘曲まで、たっぷりと。パリ音楽院でトランペットを学んだ元・音楽家が主宰しているIndesens!レーベルを取り扱いはじめてから、金管楽器のための室内楽アルバムが弊社扱にずいぶん増えてまいりました。それにしても…フンメルやテレマンなどの壮麗な協奏曲であるとか、さまざまな管弦楽作品で元気のよいサウンドを聞かせてくれるトランペットという楽器が、ピアノ伴奏だけの室内楽でも、それらとは趣きの違う独特の境地を描き出せることは、(吹奏楽経験のない)クラシック・ファンに意外と知られていない事実ではないでしょうか?
考えてみれば、ジャズ・シーンでは普通にからむこれら二つの楽器。静謐から雄弁まで、表現語法の多彩さではジャズにも劣らぬクラシックにおいても、作曲家たちがこの組み合わせにぴったりの名曲を書けないはずがないわけで。
トランペットという楽器の機構がどんどん改良されはじめ、今のような形へと発展していった19世紀から、あるときは音楽院で教鞭をとっていたトランペットの巨匠たちが、またあるときは時代を代表する(オネゲルや、エネスコや...といった)大作曲家たちが、折々に忘れがたい二重奏作品を残しているのです。超絶技巧好みのロマン派作品から、楽器の改良をへてトランペットが新たに獲得した「親密な表現」の可能性を追いもとめた近代作品、あるいはジャズ・フュージョン系の超カッコイイ語法まで盛り込んでの最近作にいたるまで、この二重奏で描き出しうる響きの多彩な魅力をあますところなく教えてくれるのは、「管の国」フランスの伝統をひくパリ音楽院で名手エリック・オービエ門下に腕を磨いてきた新世代のスーパースター、ロマン・ルルー——および歌曲伴奏や室内楽ではがぜん才能を発揮するタイプの新世代奏者、ジュリアン・ル・パープ!
ここでくりひろげられる音響世界は、ラテン系的な華やかさというよりも、むしろエディト・ピアフの歌やゴロワーズ煙草、ルイ・マルの映画が似合う「渋いパリ」、くすんだ色調の微妙さで人を魅了するフランスの感覚、といったところでしょうか。ロマンティックで奔放なブラントの超絶技巧をキメてみせ、トマジやエネスコの高雅さと精力をあでやかに描き出し、現代作品での渋ーいミュート使いで心をそそったあと、あの痛快な「ヴェニスの謝肉祭」さえ(超絶技巧のキマることキマること!)これ見よがしでないノーブルさで仕上げてしまう。そしてその後にくる、誰もが知る「白鳥」の名旋律をしみじみ歌うフリューゲルホルンの滋味…ピアニストのからみ方が自発性満々なのは、さすが自己主張の国らしい頼もしさ。流し聴きにも「お手本盤」にも静聴にも向く、上質の1枚です!
INDE010
(2CD)
(国内盤)
\4515
ローラン・ヴァグシャル(ピアノ)とパリ管弦楽団のソリストたち
サン=サーンス:管楽器のための室内楽作品全集
 ①七重奏曲op.65
  (トランペット、ピアノ、2挺のヴァイオリン、
   ヴィオラ、チェロとコントラバスのための)
 ②ロマンスop.36(ホルンとピアノのための)
 ③タランテッラ op.6(フルート、クラリネットとピアノのための)
 ④『動物の謝肉祭』より「象」と「白鳥」
  (コントラファゴットとピアノによる演奏)
 ⑤ロマンスop.37(フルートとピアノのための)
 ⑥カヴァティーヌop.144(トロンボーンとピアノのための)
 ⑦ロマンスop.67(ホルンとピアノのための)
 ⑧デンマークとロシアの俗謡による奇想曲op.79
  (フルート、オーボエ、クラリネットとピアノのための)
 ⑨歌劇『サムソンとダリラ』より
  「あなたの声にわたしの心は開く」
   (バソンとピアノによる演奏)
 ⑩クラリネットとピアノのためのソナタ op.167
 ⑪祈りop.158(バソンとピアノのための)
 ⑫オーボエとピアノのためのソナタop.168
 ⑬小さな抒情詩(オドレット)(フルートとピアノ*のための)
 ⑭バソンとピアノのためのソナタop.169 *
パスカル・ゴダール(p)
ヴァンサン・リュカ(fl)
アレクサンドル・ガッテ(ob)
オリヴィエ・デルベス(cl)
マルク・トレーネル(bn)
フレデリク・メヤルディ(tp)
アンドレ・カザレ(hr)
ギヨーム・コテ=デュムラン(tb)
千々岩英一、
アンジェリク・ロワイエ(vn)
アンナ・ベラ・シャーベ(va)
エマニュエル・ゴグ(vc)
ベルナール・カゾラン(cb)
「管の国フランス」で、意外に見落とされてきた企画——まとめてみると、名曲続々!
活動期の長さでも音楽史上屈指、名匠サン=サーンスは、管楽器のための名品をこんなに書いています…それらを全て、同国最高のソリストたちで愉しめる超・贅沢企画!
19世紀以来すぐれた管楽器奏者たちを連綿と輩出、他の国々に先駆けて管楽器のためのレパートリーを充実させてきた「管楽器の王国」フランス。その躍進の時代が、長命にして多作な大作曲家、サン=サーンスの活躍期(1850 年代頃〜1920 年代初頭)とちょうど重なるのは、意外に見過ごされている事実かもしれません。
もちろん、単体では管楽器奏者たちそれぞれに愛奏されている有名な傑作もたくさんあるのですが、それらを全て集め、管楽器関係者だけでない広く開かれた聴き手に総合的に聴かせてくれる録音企画は、滅多になかったのではないでしょうか?しかも、弾き手がことごとくフランスの第一線で活躍する名手たち、「管の国」の歴史を担う名門パリ管弦楽団のソリストたち、という贅沢きわまるセッティングで…!
フランス中がオペラ一辺倒だった19 世紀半ばのみずみずしい小品群から、「動物の謝肉祭」や七重奏曲などの中期傑作をへて、なんとドビュッシー歿後に生み出された三つのソナタにいたるまで、この2枚組でじっくり、見過ごされてきた「サン=サーンスと管楽器」の親密かつ充実した関係を味わいつくしたいものです。
「象」や「白鳥」をコントラファゴットで吹いたトラックの意外な美しさ等、意外な発見もたっぷり!パリに世界に室内楽奏者として大活躍中、ヴァグシャル(p)の妙技も必聴です!

JB RECORDS

JBR002
(国内盤)
\2940
クラリネット、ヴィオラとピアノのための傑作集
 〜モーツァルト、シューマン、そして...〜
 ギヨーム・コヌソン(1970〜):
  1. ディスコ=トッカータ
 ロベルト・シューマン(1810〜1856):
  2. おとぎの絵本 op.132
 ポール・ジャンジャン(1874〜1928):
  3. 澄みわたった朝
 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜91):
  4.クラリネット、ヴィオラとピアノのための三重奏曲変ホ長調 KV498
  「ケーゲルシュタット・トリオ」
 ペドロ・イトゥルラルデ(1929〜):
  5. 四つの記憶( リシュボア/カサブランカ/アルジェ/帰郷 )
 パキート・デ・リヴェラ(1948〜):
  6. ダンソン(踊りましょう)
ヤン・ヤクプ・ボクン(クラリネット)
バルトシュ・ボクン(ヴィオラ)
マグダレナ・ブルム(ピアノ)
「ショパンの祖国」ポーランドは、今でもやっぱり熾烈な音楽大国だった——!指揮者としても活躍する俊英クラリネット奏者ヤン・ヤクプ・ボクンは、企画性あふれる多芸な才人——室内楽でもソロでも、クラリネットの美質をありありと再認識させてくれます。今回紹介するのは、2007 年頃からスタートして以来まだタイトル数は5点程度、しかしそれぞれに多彩な、個々に広がりを感じさせてくれる丁寧なアルバム作りをしているJB Records というポーランドのレーベルです。シロンスク地方ヴロツワフ(いわゆる「シレジェン地方」、第二次大戦前までドイツ領だったところで、かつてのドイツ語名はブレスラウ。そう、かのオットー・クレンペラー御大の出身地です!)で生まれ育った俊英ヤン・ヤクプ・ボクンが、このレーベルの主宰者。クリスチャン・ツィメルマン率いる精鋭集団ポーランド祝祭管にも参加し、国際クラリネット協議にポーランド代表として派遣されたことも何度かある、同国内での評価がきわめて高い名手です。彼がすべてのアルバムに主役格で参加している、つまり彼の自主制作に近いレーベルなのですが、音楽的クオリティはまったくもって第一級! ショパン、ルービンスタイン、シェリング...と歴史的な大音楽家を続々輩出してきた音楽大国のクラリネット界を背負って立つだけのことはある演奏ぶり、広く聴き楽しまれて然るべきものなのです!最初に紹介するこのアルバムは、ソリストとしての腕前もさることながら、個性を発揮しつつも他の楽器と協調してゆくセンスも問われる「室内楽」での卓越した仕事ぶりを印象づけてくれる内容。兄弟のヴィオラ奏者を含む三重奏編成で、シックに大人っぽい中音域のうつくしさをたっぷり味あわせてくれます。ご存知、モーツァルトのケーゲルシュタット・トリオといい、シューマンの「おとぎの絵本」といい、身の詰まったニュアンス豊かな音色が、これら定番名曲をじっくり聴き愉しむにはうってつけ。 3人の演奏者はみな一切妥協なし、信じがたいほどのテクニックに裏打ちされた「自分らしさ」をばんばん出しているのに、全体の協調性・一体感には驚かされずにおれません。またボクンは一時パリ音楽院にもいたというだけあって、フランスもの(ジャンジャン、コヌソン)での洒脱さも絶妙。飽きのこない流れをつくるプログラム・センスも実に巧みで、くつろいで聴き流すもよし、じっくり鑑賞するもよし、の内容となっています。
JBR004
(国内盤)
\2940
アルゼンチンの印象 〜南の情熱、東の魂〜
 《クラリネット、ギターと弦楽によるアルゼンチン近代音楽》
 アストル・ピアソラ(1921〜1992):
  1. 二重協奏曲「リエージュに捧ぐ」
   〜クラリネット、ギターと弦楽のための
  2. もうずっと昔(タンティ・アンニ・プリマ)
  3. タンゴ・バレエ(J.ボルガトによる弦楽版)
 カルロス・グヮスタビーノ(1912〜2000):
  4. 現実さまざま(ラス・プレゼンシアス)
  5. セベラ・ビヤファニェ(歌曲による
   クラリネットとギターのための編曲版)
 ローラン・ディアンス(1955〜):
  6. スカイでタンゴを
 ホルヘ・モレル(1931〜):
  7. プレリュード(「南の組曲」より)
ヤン・ヤクプ・ボクン(クラリネット・指揮)
カメラータ・クシシュトフ・ペウェフ(ギター)
モラヴィア(弦楽合奏)
クラシックとタンゴのあいだ、南米と東欧のあいだ——越境の精神、異なるルーツの精髄。東欧人の魂と郷愁が、アルゼンチン特有のラテン的憂愁のあり方とひとつになるとき。まるで単館系ロードムービーのようなセッティング。音楽大国の俊英陣、演奏は超一流!「本場奏者による演奏」には格別の魅力があって当然ですが、たとえばフランス料理のスタイルを取り入れた懐石料理や、東南アジアの食材を使った新イタリア料理など、二つの異なる文化をかけあわせるクロスカルチャー的なスタイルというのは、しばしば非常に魅力的な結果をもたらすもの。そこに介在してくる異文化それぞれのルーツをしっかり認識したうえであれば、面白さ・奥深さが累乗的に増す可能性がそこに秘められているわけです。考えてみれば、音楽史のうえでもそうしたクロスカルチャーはいたるところで、さまざまな名曲誕生の契機となってきました(スペインを舞台にウィーンの作曲家が作曲した「ドン・ジョヴァンニ」にきくマンドリン独奏の味わい、ロシア人舞踏家たちがパリで世界的成功をおさめた「春の祭典」、台本にただよう英国ロマン派のゴシックホラー的テイストなくしては成立しえなかったイタリアのベル・カント・オペラ「ランメルモールのルチア」...)。さて——ポーランド随一のクラリネット奏者で、指揮者としてもハイドン、ベルリオーズ、プッチーニ、ストラヴィンスキー…と広範なレパートリーを誇る才人ヤン・ヤクプ・ボクンが自ら運営するレーベルJB Records から登場したのは、夏にぴったりなラテン的情念のうねりをひしひしと感じさせてやまない、アルゼンチンの巨匠たちの音楽——つまり、ここで展開されるのは「東欧と南米のクロスカルチャー」なのです!ボクンが10 年以上にわたって「デュオ・ギタリネット」としてユニットを組んできたギタリストで、同じくポーランド出身のクシシュトフ・ペウェフをゲストに迎え、さらにクラリネット奏者としてのみならず、指揮者として「弦の国」チェコの実力派集団カメラータ・モラヴィアを率い、あざやかに綴られてゆくピアソラやグヮスタビーノらの傑作群——ショパンやスメタナの音楽にあふれている、あの東欧のスラヴ人たち特有の激しい情感のあり方は、なんとあざやかに、アルゼンチン・タンゴの本場感あふれる響きを演出してゆくのでしょう!弦楽合奏の痛烈なアクセントは、まさに本場のタンゴ・オーケストラそのもの——絶妙のハマり具合です!もうひとつ驚かされるのは、ピアソラのバンドネオンとギターのための二重協奏曲でバンドネオン・パートを奏でるボクンのクラリネット——原曲からクラリネットか?と思うハマりようが、曲の魅力を一新してくれるに違いありません。「東」と「南」の思わぬ相性の良さに、クロスカルチャーの奥深さを痛感せずにはおれない「夏アイテム」!

PAN CLASSICS

PC10225
(国内盤)
\2940
フランス近代、巨匠たちのクラリネット作品
 〜ドビュッシー、ピエルネ、ゴベール、タイユフェール、ボザ〜
ガブリエル・ピエルネ(1863〜1937):
 ①セレナーデ 作品7
 ②アンダンテ・コン・エレガンツァ(バレエ音楽『シダリーズと牧羊神』より)
 ③ト短調の小品
 ④カンツォネッタ 作品19
ウジェーヌ・ボザ(1905〜1991):
 ⑤イタリア幻想曲 ⑥牧歌 ⑦アリア ⑧クラリベル
フィリップ・ゴベール(1879〜1941): ⑨幻想曲 ⑩二つの小品
ジェルメーヌ・タイユフェール(1892〜1983):
 ⑪三つの舞曲(バレエ『新しきシテール島』より)
 ⑫アラベスク
クロード・ドビュッシー(1862〜1918):
 ⑬ささやかな小品 ⑭第1狂詩曲
デュオ・ブリラーナー シャーリー・ブリル(cl)
ヨナタン・アーナー(p)
フランスの管楽器作品集は、非常な高確率でヒットになる——今なら、はっきりそう言えます。
既出盤でもまずまずの好成績をあげてくれたシャーリー・ブリルの本格録音、クラリネットの艶やかさ、堅固な室内楽的美質、選曲の妙、すべて文句なしの1枚!
このところ素敵な管楽器アイテムが続々登場していますが、Indesens!レーベルの成功にみるとおり、王道クラシックユーザーとはまた違った層への訴求力がある商材も潜んでいるのが、このジャンル。吹奏楽団が学校の数だけあるとすれば、これにオーケストラ関係の方々や本職の管楽器奏者・教員の方々も含め、クラシックCD のコア・マーケットの周辺まで想定顧客層に入ってくるわけで。クラシック的には一見マイナーじみたCD でも「管の世界の有名曲あり」なアルバムは少なくありませんから、こうした管楽器もののタイトルこそ、貴店のユーザー層を広げてくれる可能性をはらんでいるのでは(実際、弊社でも意外なものが好調です)。
さて——「管の国フランス」の“作曲家”に注目した前頁の企画に対して、こちらは“楽器”ひとつに注目、その多彩な様相をきれいに示してみせたアルバム——ドビュッシーやピエルネら19 世紀末から活躍しているフランス随一の巨匠たちから、パリ音楽院のヒーローたるゴベール、「フランス六人組」の紅一点タイユフェール(!)、知る人ぞ知る音響職人、管楽器に通じた「名匠ボザ…と、気になる作曲家の名前が続々、クラリネット奏者たちに愛されてきた傑作名品群のみならず、意外に知られてこなかった「隠れ名曲」まで、クラリネットという楽器のうまみを十全に生かした作品が続々。フランス近代音楽史の多面的な魅力もあざやかに示す、非常にバランスのとれたプログラムが嬉しいかぎりです。近年ますます充実したラインナップでメジャー感さえ漂わせ始めているスイスの秀逸レーベルPan Classics の企画だけに、演奏陣の適性もみごとなもの。
2007年にジュネーヴ国際コンクールで首位となって以来、めざましい活躍を続けているイスラエルの俊英シャーリー・ブリルと、彼女が絶大な信頼をおく腕利きピアニスト、ヨナタン・アーナーを、非・フランス人だからとナメてはいけません。その艶やかな吹き口と自発性抜群のピアノのからみあいが、各作品のうまみを絶妙にきわだたせてくれます。聴き込むによし、くつろぎの時間の静かなBGM によし、もちろんアマチュア奏者のお手本盤としても好適——ドビュッシーやプーランクなどフランス近代ものがお好きな方々にもお奨めの逸品です。

PASSAVANT MUSIC

PAS2252
(国内盤)
\2940
モーツァルト:さまざまなアリア、管弦楽の力
 ①『後宮からの逃走』KV384 より
  「あらゆる責め苦が待ち受けていようと」
 ②『偽の女庭師』KV196 より「雉鳩は嘆く」
 ③『劇場支配人』KV486より序曲
 ④同「別離の時の鐘が鳴り」
 ⑤『ツァイーデ』KV344より「甘き安らぎ」
 ⑥『偽の女庭師』KV196より 序曲
 ⑦『ルーチョ・シッラ』KV135 より 「わたしは立ち去る、急いで行くのだ」
 ⑧演奏会用アリアKV383「わたしの感謝をお受けください」
 ⑨『後宮からの逃走』より「悲しみがわたしの運命となる」
 ⑩『魔笛』より 僧たちの行進曲
 ⑪『魔笛』より「若者よ、恐れるな(夜の女王のアリア)」
ジェラルディーヌ・カゼー(ソプラノ)
ヴァシリス・クリストプーロス指揮
南西ドイツ交響楽団(コンスタンツ)
なめらかな歌をしっかり支える、オーケストラの精妙さと滋味にゾクゾクさせられる。ピリオド的解釈をあざやかに取り入れながら、深みあふれる響きは老舗ならでは。
明敏なる俊英クリストプロス、歌劇場での経験とオーセンティシティの交錯する名録音!
意外な地方都市に、ピリオド奏法に精通したアンサンブルが旺盛な活躍をみせていたりするから「オーケストラ大国」ドイツは侮れません。また、歌劇場でしっかり下積みをしてきた昔ながらのカペルマイスター風の指揮者というのも、世代を問わず、この国では少なからず活躍を見せています。そんなドイツならではの、オーケストラ演奏活動の長い歴史の最先端が絶妙のかたちで結実をみせているのが、このPassavant レーベルの1枚(Passavant はフランスを拠点に、魂の通った音作りをしているエンジニアが手がける優良小規模レーベル)。
歌い手はチョン・ミュンフン指揮するシャンゼリゼ劇場での『魔弾の射手』でデビュー後、現代音楽もこなせばヴェルサイユ・バロック音楽センターでも第一線で活躍をみせるフランス期待のソプラノ、ジェラルディーヌ・カゼー...実に堂々たる風格に、古代彫刻の美のような、なめらかな表現の妙が宿る歌い口は、モーツァルト初期のオペラ・セリアにもぴったりなら、『後宮からの誘拐』のような中期傑作や「夜の女王のアリア」のような「押し付けがましくない風格」の求められる作品でも絶妙に映え、モーツァルトの筆致をあざやかに際立ててみせます。
しかしながら、そんな歌の魅力を十二分に盛り上げてみせているのが、痛快なティンパニで開始される冒頭トラックの序奏以降、三つの管弦楽のみトラックも含め、いたるところで存在感を強く主張してやまない南西ドイツ・フィルの演奏!アテネ歌劇場で長年揉まれてきた新世代の音楽監督クリストプロスによる精妙解釈のもと、ピリオド奏法を強く意識したフレーズ感が、歌の流れをしっかりサポートして盛り上げながら、古楽的な様式感覚は(創設1932 年という老舗であるこのオーケストラならではの)滋味あふれる音色の深みと何ら矛盾なく折り合うのが不思議なところ(その意味では、現代楽器使用ながらウィーン・コンツェントゥス・ムジクスにも似ているところがあるような)。オペラ歌手との受け答えがしっかりできていればこそ、これだけ自己主張しても「歌」が損なわれないのでしょう。
オーケストラ愛好家にも、今まで知らなかった「歌劇作曲家モーツァルト」の面白さへの門戸を開いてくれる1枚となるはず。見逃せない1枚です!

RAMEE

RAM0906
(国内盤)
\2940
J.S.バッハ:六つのモテット BWV225〜230
 1. モテット「来たれイエス、来たれ」BWV229
 2. モテット「イエス、わが友」BWV227
 3. モテット「主に向かって新しき歌を歌え」BWV225
 4. モテット「恐れるな、われ汝の傍にあり」BWV228
 5. モテット「われ汝を離さん」BWV.anh.159
 6. モテット「聖霊は我らの弱きを助け給う」BWV226
 7. モテット「なべての民よ、主を賛美せよ」BWV230
ペーター・コーイ指揮
セッテ・ヴォーチ(古楽声楽アンサンブル)
ロビン・ブレイズ、ダミアン・ギヨン(カウンターテナー)
なんと豪奢なメンバー、BCJ公演など日本でも熱烈な支持をあつめる古楽ソロ・ヴォーカリストたちが勢ぞろい、各パート1人のソロ編成でバッハ対位法の綾を解きほぐす。総指揮はなんと、巨匠コーイ!
ラ・プティット・バンドやアンサンブル・レザグレマンなど、古楽大国ベルギー最前線の一流バンドで活躍を続けてきたバロック・ヴァイオリン奏者ライナー・アルントが主宰するRameeレーベルは、キプロス島の中世音楽のえもいわれぬ美しさや、現存最古のチェンバロの音色、ベートーヴェンのライヴァルだったものの素行が悪く忘れ去られた大家の傑作...など、私たちの意表をつくところから絶美の音楽を見つけ出してくる、実にセンスのいいレーベル。そのセンスそのままに、今度はメジャーな作曲家の、意外に広くは知られていないジャンルの思わぬ名演を提案してくれました。
合唱ファンにはおなじみではあるものの、オーケストラや室内楽など楽器ものベースでクラシックに親しんで来たファンにはまだ手付かずの方も多いであろうバッハ作品、六つのモテットBWV225〜230!通奏低音を添える以外はア・カペラ編成、あの複雑精緻にからみあいながら美しい響きを織り上げてゆくバッハの対位法芸術を、人の声という、ごく身近な音響体で再現できてしまう、しかも6曲とも傑作ばかりで、時には対置された二つの合唱が歌い交わす、などというからくりもあったりと、実に愉しみの尽きないレパートリー。しかし、さすがは「意外な音にこだわりあり」のRamee——普通の合唱で歌っているわけではないのです。近年、バッハ研究家たちも注目している「リフキン説」に従い、合唱パートのひとつひとつを一人ずつに任せる極小編成(OVPP(One Voice Per Part)というそうです)をとり、ごく簡素な響きのなか、エッセンシャルにバッハ音楽の精髄を聴かせてくれるのです!魂をぶつける入魂の・という感じではなく、ヴィブラートは控えめ、休符のたびに1フレーズごと、ふわりと着地させるような歌い方。これが息を呑むほど、うつくしい!それもそのはず、歌い手は現代のハイレヴェルな古楽界で旺盛な活躍を続ける精鋭ぞろい、中にはロビン・ブレイズやダミアン・ギヨンなど、日本でも名が通ったスーパーシンガーまでいるのですから...。そのうえ、指揮者はそれこそ日本でも古楽ファン垂涎の的、大歌手ペーター・コーイ!たった数人のアンサンブルでも、彼の指揮あればこそ、ここまで美しくまとまるのだ、と気づかされる瞬間がいたるところ。まるでルネサンス重唱のような不思議な浮遊感は、これらの曲を初めて聴く人を易々と魅了するでしょうし、曲をよくご存知の方々の認識も新たにしてくれることでしょう。作曲家の父の従兄弟J.C.バッハの作とされていたものの、近年バッハの真筆と判明したBWV.anh.159 の収録も、嬉しい魅力のひとつです。

RICERCAR

MRIC295
(国内盤)
\2940
《Ricercarレーベル最新カラーカタログ付》
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 1. 深き淵より BWV131 〜4声の独唱、オーボエ、
  ヴァイオリン、2面のヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のための
 2. われ満ち足れり BWV82 〜バス独唱、
  オーボエ、2挺のヴァイオリン、ヴィオラと通奏低音のための
 トーマス・ゼッレ(1599〜1663):
 3. 深き淵より 〜5声の独唱と通奏低音のための
クリストフ・ベルンハルト(1627〜1692):
 4. 深き淵より 〜ソプラノ独唱、2挺のヴァイオリンと通奏低音のための
ヨハン・フィリップ・フェルチュ(1652〜1732):
 5. 深き淵より 〜ソプラノ独唱、ヴァイオリン、
  ヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のための
クリストフ・グラウプナー(1683〜1760):
 6. 深き淵より 〜4声の独唱、オーボエ、
  2挺のヴァイオリン、ヴィオラと通奏低音のための
リチェルカール・コンソート(古楽器使用)
ベルナール・フォクルール(org)
マルセル・ポンセール(ob)
フランソワ・フェルナンデス(vn)
グレタ・ド・レゲル、
ジェイムズ・ボウマン、
ギィ・ド・メ、
マックス・ファン・エフモント(独唱)他
とびきりの老舗古楽レーベルRicercarが、躍進の時期に本気でバッハに向かい合ったらこんなにとびきりの精鋭陣が集まって、驚くほど濃密な名録音をつくりあげてしまいました。待望のカタログ復活! 歴史的名企画「ドイツ・バロックのカンタータ」からの併録も適切!古楽大国ベルギーで1980 年から活動を開始、ドイツ北方の歴史と重なる文化遺産(美術、オルガン…)を誇りながらも国土の半分はフランス語圏、というお国柄を最大限有利に活用、フランス古楽から本格ドイツ・バロックまで膨大な曲目を、とびきりの気鋭奏者たちと録音しつづけてきたRicercar レーベル。21 世紀初頭に運営が頓挫し過去盤はすべて廃盤となったものの、すぐにレーベルは復活、保管庫に眠る過去カタログは少しずつ現役復活をとげています。とりわけ注目すべきは、近年『フォル・ジュルネ』での来日が相次ぐリチェルカール・コンソートの名盤群!柔軟な演奏編成をとるこのグループからは、クイケン兄弟の次以降のベルギーにおける重要な演奏家がことごとく参加、特に1990 年代前半の録音は新旧世代のスーパープレイヤーがしれっと集結していますから、カタログ復活した録音にはがぜん注目が集まろうというものです。さて!今回Ricercar レーベル創設30周年を記念するカタログ付ヴァージョンとして復活してきた音源は、そんなリチェルカール・コンソート最盛期の大本命、バッハのカンタータ!バッハが残した200 曲以上の教会カンタータは、その多彩さと充実した音楽内容ゆえ常に変わらぬ古楽ファン垂涎のジャンルですが、Ricarcarはそのルーツを探る連続録音企画『ドイツ・バロックのカンタータ』シリーズで、17 世紀初頭以降の知られざる名匠たちの傑作カンタータを掘り起こしてきた実績もあり。本番の目玉となる2作のバッハ作品は、どちらかといえば17 世紀以来の伝統に忠実な極小編成楽曲。また『ドイツ・バロックの〜』シリーズ録音から、四つの異なる世代の名匠たちがBWV131 と同じ賛美歌をもとに作曲したヴァラエティ豊かな作例も編み込んで、音楽史の流れの末にバッハがある、ということを明確に辿れるアルバムとして再編成してあるのが絶妙!演奏陣はもちろん精鋭揃い…現代の名匠フォクルールがまだ同団体で現役、というのも嬉しい点でしょう!
MRIC294
(国内盤)
\2940
ピエール・アテニャンの舞踏曲集〜七つの『ダンスリー』より
ピエール・アテニャン(16世紀)編纂
『ダンスリー(舞曲集)』第1〜第7集より
 (1)バス・ダンス「ラ・マグダレーナ/トゥルディオン」
 (2)スコットランドのブランル第1連
 (3)パヴァーヌ〜パヴァーヌ「道を誤った女」〜第10と第15のガリヤルド
 (4)プレリュード(リュート独奏)
 (5)恋神は、わたしが眠っているものと思って*(セルミジ作曲)
 (6)第18パヴァーヌ(ハープ独奏)
 (7)アルマンド「そしてあなたはどちらへ、リュセット夫人」〜
  第2・第6・第5・第4のアルマンド
 (8) ブランル・ゲ「くすぐりたいのは君のえくぼ」〜
  第28・第23・第42・第7のブランル
 (9) あなたの前で*(セルミジ作曲)
 (10) バス・ダンス「あなたの前で」
 (11) バス・ダンス「この体は去りゆくとも、あなたのもとに心は留まる」
 (12) お目覚めなさい、お嬢さんたち*(サンドラン作曲)
 (13) 第1パヴァーヌ〜第1ガリヤルド
 (14) バス・ダンス「ブラシ」
 (15) ポワトゥーのブランル
 (16) ブルゴーニュのブランル
 (17) パヴァーヌ
 (18)苦しまなくてはならなくて*
  (セルミジ作曲/変奏部分はアドリアン・プティ・コクリコによる)
 (19) ガイヤルド
 (20) パヴァーヌ〜神々のパヴァーヌ〜ガリヤルド
 (21)わたしの恋人は実に貞淑*(サンドラン作曲)
 (22) パヴァーヌ「わたしの恋人は実に貞淑」〜ガリヤルド
 (23) 第19 パヴァーヌ
 (24) 第3と第1のバス・ダンス〜第8、第9と第39のトゥルディオン
 (25) バス・ダンス「ラ・ガッタ、とイタリア語で」〜
  バス・ダンス「その靴はどうも苦手だ」
     *は独唱つきのトラック
ドゥニ・ラザン=ダドル指揮
アンサンブル・ドゥス・メモワール(古楽器使用)
エルザ・フランク、ジェレミー・パパセルジオー(bfl/ob)他
古楽ファンなら、必聴です! そうでなくても、これは当面愉しめる。
Astree/Naiveに名盤あまた、超・名門古楽集団ドゥス・メモワールが、古楽大国ベルギーのRicercarに登場、しかも「最新研究をふまえたアテニャンの舞曲集」。
古楽器のうまみ炸裂の絶品盤です。
アンサンブル・ドゥス・メモワール!! この名前だけで「おお!」と唸らずにはおれない方が、2010 年現在なら結構おられるのではないでしょうか?およそ1990 年代後半くらいから、あの伝説的レーベルAstree(現Naive 傘下)で「ルネサンスものの面白いアイテム」が出てきたら、それはかなりの高確率でこのフランス随一の古楽集団のものでした。いわば、21 世紀初頭におけるル・ポエム・アルモニークと同じくらいのカリスマ集団といっても過言ではないかもしれません(今あらためて手元の既存盤を探ってみると、そのメンバーにはリュシアン・カンデル(aeon の『オケゲム:いかなる旋法にもなるミサ』の仕掛人)、セルジュ・グビウ(ル・ポエム・アルモニークの重要メンバー)、アンヌ・アズマにブリュノ・ボテルフといった名歌手たち、S.アブラモヴィツにP.ボケにF.エシェルベルジェに…と今もっとも多忙な古楽奏者たちが居並び、そりゃ名盤になるわけだ、と納得)。
そんな超実力派集団が、ベルギーきっての名門古楽レーベルRicercar に満を持して登場。
充実解説には主宰者ラザン=ダドル自身や演奏陣も一筆寄せていますが(全訳添付)、このアルバムは何をかくそう、プレトリウス「テルプシコーレ」やスザートの曲集群と並んで最も重要なルネサンス舞曲集、フランス王室印刷職人ピエール・アテニャンの「ダンスリー」にまさしく「満を持して」彼らが向き合った注目盤なのです!
ピッチ392Hz と520Hz(!!)の精妙管楽器がオーガニックに響きを合わせ、ニュアンス豊かなガット弦の「弓を返すアクセント」も絶妙に、中世末期からルネサンス期にかけ流行した数々の舞曲がダイナミックに続いていきます。
MRIC296
(国内盤・3CD)
\5670
『ヴィオールの防衛』の三部作 (3CD-BOX)
 〜バロック晩期のフランスと、イタリア器楽の流入〜
 序章:サント・コロンブ師の墓標
  〜17 世紀フランスのヴィオール作品
 第1章:バス・ド・ヴィオールの防衛
  〜ドレ、ケー・デルヴロワ、ロラン・マレ他、
   18 世紀の晩期ヴィオール作品
 第2章:ヴァイオリンの台頭
  〜デュヴァル、ルベル、ドルネル、ルクレール
  バロック晩期フランスのヴァイオリン作品
 第3章:チェロの野望
   〜コレット、バリエール、ボワモルティエ
    他、18 世紀フランスの初期チェロ作品
リチェルカール・コンソート(古楽器使用)
フィリップ・ピエルロ(vg)
フランソワ・フェルナンデス(vn)
鈴木秀美(vc)
ライナー・ツィパーリング(第2 チェロ、第2 ヴィオール)
ソフィー・ワティヨン(通奏低音ヴィオール)
エマニュエル・バルサ、
オレステ・デ・トンマーゾ(第3・第4 チェロ)
ダニエル・エティエンヌ(フラウト・トラヴェルソ)
ピエール・アンタイ、
ロベール・コーネン、
ギィ・パンソン(クラヴサン=チェンバロ)
Ricercarレーベルの核ともいえる金字塔的録音が、ついに待望のBOX仕様で復活!
長らく入手不可だったこと自体が不思議なくらいの、フランス・バロックを語るうえで不可欠な決定的名演!
フェルナンデス・鈴木・ピエルロの3名手、18世紀の美意識を鮮やかに再現今年早くも創設30年を迎える、古楽大国ベルギーきっての老舗レーベルRicercar。創設者ジェローム・ルジュヌは自ら録音技師であり音楽学者でもあり(『リチェルカール古楽器ガイド』(MRIC100)は、全編彼の執筆と編集で成り立っています...日本語訳版もあと1,2週間でようやく登場!)、フランス語圏の古楽シーンの成長を創成期に近い頃からずっと体感してきた生き証人。そんなRicercarレーベルには、今や世界の古楽社会にさまざまなかたちで大きな影響を及ぼしているスーパープレイヤー集団リチェルカール・コンソートが、フランス・バロック器楽芸術が18 世紀に経験した大変革のあり方を絶妙の選曲と詳細な解説で伝えてくれる、3連作のアルバムを残しています。18 世紀、どんどん人気が出てきたヴァイオリンやチェロなど「外来の楽器」と、それに伴うイタリアやドイツの音楽美意識の流入にさらされて、「フランス古来の高貴な楽器」だったはずのヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)がどんどん廃れていった...そんな折の1740 年、ユベール・ル・ブランという人が『ヴァイオリンの台頭とチェロの野望に対する、バス・ド・ヴィオールの防衛』という文章を発表。ヴァイオリンとチェロを野心満々の外国人タレントに見立て、彼らの狼藉にヴィオール夫人がぴしゃっと気品を示すという風刺小説的内容が、当時のフランスにおける音楽事情をよく表していて、音楽史の文献にはよく名前の出てくるこの小論が、この三連作アルバムの出発点になっています。ヴィヴァルディの最晩期、ヘンデルの『メサイア』初演とほぼ同じ時期といえば、いま多くの人が一番「バロックらしい」と感じる聴きやすい音楽が流行していた頃——そんな時代のセンスで綴られていった、ヴィオラ・ダ・ガンバの玄妙な音色を生かした繊細な音楽や、ヴァイオリンの機能性がフランス的な機微と絶妙にマッチしたソナタ、アクロバティックなパッセージから切ない歌心まで変幻自在のチェロ作品などを、「ヴィオール編」「ヴァイオリン編」「チェロ編」それぞれ1枚ずつのアルバムに集め、最高の演奏陣で録音されたこの三連作は、Ricercar のレーベル休止期に全編廃盤になったまま、古楽ファンたちにとって長らく「幻の録音」となっていました。まさに待望の復活というほかない今回の登場にさいし、初リリース時には含まれていなかった別音源も「序章」というかたちで収録。フランス・ヴィオール音楽の流れが、17 世紀まで遡って辿れる充実アイテムになりました。主宰者ルジュヌ氏入魂の解説も、もちろん完訳付! 古楽棚を活性化すること間違いなしの充実BOXでございます!
〜 序章 サント・コロンブ師の墓標 〜
 1. サント・コロンブ師のトンボー マラン・マレ
 2. 無伴奏ヴィオールのための第3組曲 デュ・ビュイソン師(1622/23〜1680)
 3. 無伴奏ヴィオールのためのシャコンヌ ド・マシー師(生歿年不詳、17 世紀後半)
 4. 無伴奏ヴィオールのための組曲 ニ短調 ド・マシー師
 5. 父サント・コロンブのトンボー サント・コロンブ2世(1660 頃〜1720 頃)
 6. 2面のヴィオールのための サント・コロンブ師(1640 頃〜1700 頃)
 第44 コンセール「悔恨のトンボー」

〜 第1章 バス・ド・ヴィオールの防衛 〜
 7. 小さな鐘、または教会の鐘 マラン・マレ(1656〜1728)
 8. ヴィオールと通奏低音のための第2組曲 ジャック・モレル(生歿年不詳、18 世紀初頭)
 9. ロンドー「ラ・ピエレット」 ジャン=バティスト・カピュス(〃)
 10.トリオによるシャコンヌ ト長調 ジャック・モレル
 11.ヴィオールと通奏低音のための第2組曲 ロラン・マレ(1690 頃〜1750 頃)
 12.ヴィオールと通奏低音のためのフーガ シャルル・ドレ(生歿年不詳、18 世紀中盤)
 13.ヴィオールと通奏低音のための第3組曲 ルイ・ド・ケー・デルヴロワ(1680 頃〜1760 頃)
 14.2面のヴィオールのための第1ソナタ ルイ・ド・ケー・デルヴロワ
 15.ヴィオールと通奏低音のための組曲 ルイ・ド・ケー・デルヴロワ
 16.ヴィオールと通奏低音のための第6ソナタ 作曲者不詳

〜 第2章 ヴァイオリンの台頭 〜
 17.ヴァイオリンと通奏低音のための ルイ=アントワーヌ・ドルネル(1685〜1765)
  ソナタ ニ長調「ラ・フォルクレ」
 18.ヴァイオリンと通奏低音のための フランソワ・デュヴァル(1672〜1728)
  第2ソナタ ト長調
 19.ヴァイオリンと通奏低音のための ジャン=フェリ・ルベル(1666〜1747)
  第4ソナタ ホ短調
 20.ヴァイオリンと通奏低音のための ジャン=マリー・ルクレール(1697〜1764)
  第10 ソナタ 嬰へ短調

〜 第3章 チェロの野望 〜
 21.協奏曲ニ長調「ラ・フェニクス」 ミシェル・コレット(1709〜1795)

〜4面のチェロと通奏低音のための
 22.2面のチェロのための第3ソナタ ニ長調 ジョゼフ・ボダン・ド・ボワモルティエ
 23.チェロと通奏低音のための ジャン=バティスト・マセー (1691〜1755)
 第3ソナタ イ長調 (1687〜1767)
 24.チェロと通奏低音のための ジャン・バリエール(1705〜1747)
 第4ソナタ ホ長調
 25.2面のチェロのための「未開地の人たち」 作曲者不詳(原曲:ラモー)
 26.チェロと通奏低音のための ジャン=バティスト・カナヴァス
 第4ソナタ ニ長調 (1713〜1784)
 

SAPHIR

LVC1104
(国内盤)
\2940
ドビュッシー(1862〜1918):
 1. フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ
 2. 六つの古代墓碑銘 〜フルート、ヴィオラと
  ハープのための「復元版」(ファブリス・ピエール編)
アラン・ルヴィエ(1945〜):
 3. 蝶々は飛翔する
  〜3種のフルート、ヴィオラとハープのための
パトリック・ガロワ(fl)
ピエール=アンリ・クスエレーブ(va)
ファブリス・ピエール、
フランシス・ピエール(hrp)
世界にあまねく知られたフランス・フルート楽派の申し子ガロワが、今やフランス室内楽界の大御所たる存在となった実力派奏者たちと紡いでゆく、ひたすら繊細なドビュッシー。
初演編成に肉薄した「古代碑銘」は、“古代楽器の笛と竪琴”を思わせる意外な美しさ!
パトリック・ガロワ——いまさら改めて紹介するまでもありません、フランス・フルート楽派の2巨頭ジャン=ピエール・ランパルとマクサンス・ラリューに師事したのち、飛ぶ鳥を落とす勢いで世界的な活躍をみせてきた、フルート界の申し子ともいうべきスーパープレイヤー。そんな彼の演奏で、全フルート音楽中の至宝といっても過言ではない、あのドビュッシーの傑作ソナタを聴けるとは、なんと幸いなことでしょう! しかも、共演陣は抜かりなくも鮮烈な技量を誇る名室内楽プレイヤー、P=H.クスエレーブがヴィオラを弾き(近年Saphir レーベルで彼の録音が多く聴けるようになったのは、その活躍地から地理的にきわめて遠い日本の私たちにとって本当に良いことだと思います)、リリー・ラスキーヌやピエール・ジャメらと並んでフランスのハープ史に名を残した超・実力派フランシス・ピエールとその息子、今ではフランス・ハープ楽派の伝統を双肩に背負って立つ男ファブリス・ピエールが加わる、という、室内楽好き・フランス音楽好きなら「おお!」と唸らずにはおれない顔ぶれ。この録音はかつて3D Records というフランスの小規模レーベルで制作されたのですが、世界レヴェルでの流通状態は非常に悪く、このたびSaphir 音源として新規に登場したことによっていわば国際デビューを果たしたような、幻の音源なのです。
「ソナタ」における気合の入った精妙かつ細やかな解釈だけでも商品価値は十分以上にあるのはもちろんですが、併録されている『六つの古代碑銘』が注目度大。「古代碑銘?」と首をかしげられる方は、本作をピアノ曲としてご存知だからと思いますが、どうやらドビュッシーは当初この曲を2本のフルート、2台のハープとチェレスタという意外な編成のために作曲していたとのこと——しかも、作曲年代は1901 年と、ピアノ版が出版されるよりも実に10 年以上前に書き上げられていたのです。残念ながらその「原曲」の楽譜は失われてしまいましたが、名手ファブリス・ピエールはそのことを踏まえ、自分たちのリサイタルのプログラムに組み込めるよう、本作をハープ2台とフルート、ヴィオラという編成のために編み直したのでした。詩人ピエール・ルイスが「古代ギリシャの詩から翻訳した」との触れ込みで発表した『ビリティスの唄』という詩集の朗読に添えるべく作曲された、という本作成立の経緯を彷彿させるがごとく、ここでフルートとハープは「古代の笛と竪琴」そのものの独特な風合を感じさせ、ピアノで聴いていたときとは全く違う、いかにも古代然とした神秘的な響きを醸し出してくれます(作品そのものの認識も改まる、なんとユニークかつ絶妙な演奏でしょう...)。
両作のあいだには、楽器の技巧には一家言あり・なパリ音楽院の名匠アラン・ルヴィエによる、これまた繊細で美しい「蝶々の飛翔」を収録。演奏陣の驚異的な巧さゆえ、この編成の美質を十二分に味わえるトラックになっています。
LVC1048
(国内盤)
\2940
フォーレのチェロ、デュパルクのソナタ
 アンリ・デュパルク(1848〜1933)
  1. ピアノとチェロのためのソナタ
 ガブリエル・フォーレ(1843〜1924)
  2. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
   第1 番 作品13(演奏者によるチェロ版)
  3. エレジー 作品24 4. ロマンス 作品69
  5. 蝶々 作品77 6. セレナード 作品98
  7. シシリエンヌ 作品78
アンシ・カルトゥンネン(チェロ)
トゥイヤ・ハッキラ(ピアノ)
優雅であり男性的でもある、中低音の響き—チェロの音色は、フォーレの音楽によく似合う。けれど、本盤のひそかな注目ポイントは...歌曲の天才デュパルクが残していた希少な器楽作品たるチェロ・ソナタ!
艶やかな解釈で色づきはじめる、静かな浪漫情緒…先刻、フランスのレーベルaeon からリリースされた『シューベルトと、チェロ』(MAECD0868)——かの「歌曲王」が残した数多くの傑作ドイツ語歌曲の歌唱パートを、チェロで濃やかに奏でていった意外な名盤——が静々とすばらしい売れ行きを見せているのをまのあたりにして、ああ、やはりみんなチェロが好きなのだ...という実感を新たにいたしました。もちろん「試聴があればなおのこと」ではありますが、何はともあれ「チェロ」というキィワードは、それが優美さや静かなロマンティシズム、叙情性や大人びた雰囲気...といったものと結びつくとき、おのずと多くの人の心を惹きつけずにはいないのでしょう。
さて——そんなふうにチェロの魅力を最大限に引き出してくれる作曲家のひとりでありながら、思いのほか後回しにされているような印象があるのが、フランス近代で最も優美な音楽をつむぎだす天才、ガブリエル・・フォーレ。晩年になってから、やおら作曲した2曲のチェロ・ソナタがけっこうな難曲なためか、はたまた多くの人が考えるであろう「フォーレらしさ」一辺倒では終わらない手の込んだ曲だからか(なにしろ時代は20 世紀初頭、シェーンベルクやストラヴィンスキーの重要作品群とほぼ同じ頃の作なのです)、チェリストたちは意外とフォーレ作品をまとめて録音しないもののようです(オフェリー・ガイヤールのAmbroisie 盤、今でも入手可能なのでしょうか?)。
そんな渇を癒すかのように、パリ1区の真ん中で小劇場経営を続けるオーナーが溢れんばかりの音楽愛を注いで制作しているSaphir レーベルから、いかにもフォーレならではの魅力をたたえた小品群と「1曲のソナタ」を収録したアルバムが登場!
小品群は中〜後期の作品で、アンコールピースとして広く人気を集める「シシリエンヌ」や「エレジー」をはじめ、繊細なニュアンスで絶美のメロディを綴ってゆく、いかにもフォーレらしい音楽。このアルバムの嬉しいポイントは、「1曲のソナタ」もまさにそうした路線の音楽である点——何を隠そう、これは初〜中期の傑作である有名曲、第1ヴァイオリン・ソナタをチェロに移し変えたものなのです!
あの艶やかなヴァイオリンの歌が大人びた中低音弦の響きに移し変えられてみただけで、曲の雰囲気はがらりと変わって実に新鮮、それでいてフォーレ特有の玄妙さが少しも失われていない、作品の魅力を再発見できること間違いなしの注目トラック...。
しかし「注目」といえば、明敏な室内楽ファンやフランス音楽ファンの方々にはむしろ、フォーレとともに本盤の主役格として登場している、デュパルク初期のソナタ(1867 年作曲)の方が断然気になるはず!なにしろ17 曲の歌曲があまりに美しく有名で、その他にはめったに器楽作品を残していない作曲家ですから、これを収録してくれただけでも感涙もの、そのうえ演奏も実に引き締まったみずみずしい解釈とあっては、聴かずにいる方が勿体ないわけです。
パリに録音にやってきたフィンランドの気鋭奏者ふたり、実に頼もしい仕事をしてくれました。

Sudwestdeutsche Philharmonie Konstanz

SWPK-M002
(国内盤)
\2940
モーツァルト(1756〜1791):
 1. 交響曲 第41番 ハ長調 KV551「ジュピター」
 2. 交響曲第39 番 変ホ長調KV543
ヴァシリス・クリストプロス指揮
南西ドイツ・フィルハーモニー交響楽団
脈々とつづくドイツ管弦楽の伝統。その最先端は、こんなにも新鮮、こんなにも深い!
引き締まったピリオド系サウンドの痛快さも、耳の肥えた聴き手の国だけに、もはや常識。「その先」を垣間見せてくれる、王道作品の鮮烈解釈!そして意外な「未知の交響曲」…?
鮮烈なモーツァルト解釈を繰り出す「本物のドイツ楽団」の自主制作シリーズ。都市の規模にかかわらず、どんな街にもオーケストラや歌劇場があり、演奏会やオペラがあるごと、地元の人々が続々つめかけ、ただでさえ肥えている耳でじっくり鑑賞、気に食わなければ批判もいとわず…オーケストラの数は世界一とも言われている国・ドイツには、たとえ地方都市であっても、地元の聴き手たちの耳が肥えているゆえにか、驚くべき高水準を保っている楽団が少なくありません。中には、千年一日のごとくな大時代的解釈に甘んじたりしておらず、作品によってピリオド奏法の導入やヴァルヴなし金管楽器への変更など、シーン最先端のスタイルを当たり前のように取り入れ、私たち日本の聴き手が「新鮮!」と感慨を新たにせずにはおれない解釈をさらりとやってのける楽団も。ここに紹介する南西ドイツ・フィルも、まさにそんな超・最先端の地方オーケストラのひとつ! あの滋味あふれる音色で音盤ファンにも有名なプフォルツハイムの南西ドイツ室内管とは全く違う、スイスにほど近いボーデン湖畔に位置する古都コンスタンツを本拠とする気鋭楽団で、1932 年創設とその歴史は古いものの、繰り出すサウンドのみずみずしさは鮮烈そのもの。とりわけ得意とするのは古典派解釈——音楽監督クリストプロスは若手ながら歌劇場経験も豊富なたたき上げ人材、モーツァルトの「歌心」をきれいに汲みあげ、一糸乱れぬアンサンブルをスマートに統率、奥ゆかしい響きの妙(このあたりはまさに、音楽水準の高い国の歴史ある楽団ならでは!)をピリオド・アプローチ的みずみずしさと見事に一体化させてゆく手腕は、モーツァルト最後の三大交響曲の両端傑作、第39 番や「ジュピター」のような聴かせどころ&注目ポイント満載の曲目でこそ最大限に発揮されようというものです。
いたるところにあらわれる管楽器の精妙ソロ、絶妙に音を割る金管に手際よくも鮮やかなティンパニのアクセント、えもいわれぬ美音でぴったり合わせてくる弦楽器の機能性と味わい、スピーディなピリオド系サウンド…演奏クオリティが気になるバイヤー様、このオーケストラのモーツァルト音源サンプルもお出しします!「耳目を引けるモーツァルト」と面白がって頂けること、請け合いです。
6月上旬の全国ツアーではモーツァルト交響曲連続演奏会もありますから(すみだトリフォニーホール)、予習盤としても最適!!
SWPK-M001
(国内盤)
\2940
ヘンデル(1685〜1759)
 1. 水上の音楽 第1 組曲 ヘ長調 HWV348
 2. 水上の音楽 第2 組曲 ニ長調 HWV349
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)
 3. 管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068
ヴァシリス・クリストプロス指揮
南西ドイツ・フィルハーモニー交響楽団
「ドイツの伝統」が、ピリオド・アプローチをここまで見事に受け入れてみせた——ナチュラル金管は高らか&艶やかに響きわたり、弦はしなやか&精妙に揃って動く、21世紀に現代楽器オーケストラで奏でられる、考えうるかぎり最高のバロック解釈ここに!「1932 年創設、ドイツ南西部の地方オーケストラが奏でる『水上の音楽』」——こう聞いただけで、どんな演奏を想像されるでしょうか?おそらく、本盤はその予想をみごとに裏切るに違いありません。世界一数多くのオーケストラが活動を続ける国ドイツには、今や伝統にしがみついてばかりではなく、シーン最先端で注目される音楽解釈を意欲的に反映させている注目団体も少なくないのです。スイスを対岸に眺めやるボーデン湖畔の街コンスタンツを本拠とする南西ドイツ・フィルは、フランスやイギリスの気鋭楽団にはない、深々とした呼吸で伸縮する温もりあふれる弦セクションや、味わい深いソロを聴かせる実力派の管楽器セクションを誇っていながらも、若き音楽監督クリストプロスのもと「作曲家が念頭に置いていたサウンド」の再現にあくなき意欲を燃やし、バロック作品にも臆せず取り組んで、きわめて堂に入った古楽奏法で説得力ゆたかな演奏をくりひろげるのです! ホルンやトランペットなどの金管が重要な立ち回りをみせる『水上の音楽』でも、絞り込まれた弦楽編成が一糸乱れぬアンサンブルでしなやかに歌を綴る上で、ヴァルヴのないバロック時代のナチュラルホルンやナチュラルトランペットを導入した金管セクションが、折々素朴な味わいで気持ちよく音を割りながら、絶妙のテクニックで伸びやかに、爽快な響きを重ねてゆく——「ヘンデルは大編成ほどいい」と豪語したビーチャム卿のゴージャスさも、「これが本物のバロック!」と隅々まで徹底した考証を怠らないエルヴェ・ニケの緊張感も、ましてパイヤール室内管の「歌」にこだわった解釈も、このクリストプロス&南西ドイツ・フィルの魅力とは無縁でしょう。ヘンデルやバッハの、18 世紀音楽の「ことばはこび」を確実にふまえた心地よさが、いわばカール・リヒターの解釈姿勢を21 世紀流にやってみたような「確かさ」に貫かれた、極上のくつろぎと静かな興奮を提供してくれるのです。ご存知「G線上のアリア」を含む『管弦楽組曲 第3 番』でも、透明感あふれる弦の響きがいやおうなしに聴き手の心を安らがせ、ナチュラルトランペットの絶妙な歌いまわしには「古楽の正しさ」にしがみつくだけでは得られない味わいが...!古楽ファンも、「ドイツの伝統」に一家言あり・の玄人リスナーも、このアルバムにおける名演の連続は、ちょっと色々な意味で「必聴」ですよ!

TRANSART

TRM168
(国内盤)
\2940
禁じられた遊び 〜至高のギター・アンコール作品集
 フランチェスコ・タレガ(1852〜1909):
  ①アルハンブラの想い出
  ②ヴェルディの歌劇『椿姫』による幻想曲
  ③アラブ奇想曲
 アグスティン・バリオス(1885〜1944):
  ④ワルツ 作品8-4 ⑤神の愛に捧ぐもの ⑥大聖堂
 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)/
  シャルル・グノー(1818〜1893):
  ⑦アヴェ・マリア(モレッティ編)
 ジューリオ・レゴンディ(1822〜1872):
  ⑧レヴェリ=ノットゥルノ(夢想/夜想)作品19
 フランツ・シューベルト(1797〜1828):
  ⑨アヴェ・マリア(モレッティ編)
 エンリケ・グラナドス(1867〜1916):
  ⑩アンダルシア風
 イサーク・アルベニス(1860〜1909):
  ⑪マヨルカ 作品202(バルエコ編)
  ⑫朱色の塔(セゴビア編)
  ⑬グラナダ(バルエコ編)
 ヴィットーリオ・モンティ(1868〜1922):
  ⑭チャルダーシュ(モレッティ編)
 フェルナンド・ソル(1778〜1839):
  ⑮禁じられた遊び(イェペス編)
フィロメーナ・モレッティ(ギター)
南国イタリアの西に浮かぶ、サルデーニャ島出身の完全無比なるギタリスト——
その至芸で紡ぎ出される、磨き抜かれた傑作小品の数々!もはや巨匠の風格さえ漂う、圧倒的な余裕、隅々までぬかりのない技量、比類ない情感…Transart への2003 年デビュー以来、このレーベルでのリリースはもう5枚目になりますから、彼女がいかに素晴しいギタリストであるか、そしてその新譜が常にどれほど、ひとつも見逃せない傑作に仕上がっているか、よくご存知の方は日本でもだいぶいらっしゃるに違いありません。イタリア領でも西の島嶼部、シチリア島の北に浮かぶ謎の大島サルデーニャから世界にその名を轟かせるカリスマ的スーパープレイヤー、フィロメーナ・モレッティ! Transart では2枚のバッハ盤(TRM133・147)があまりに見事な仕上がりを誇っているため、いまだに連綿とセールスが止まらないばかりか、エモーショナルな魅惑の響き満載なヴィラ・ロボス作品集(TRM138)や、ライヴとはとても思えないほどの完成度を誇る(しかし客席ノイズ含め臨場感ばっちりな)圧巻のソロ・リサイタル盤(TRM107)などの魅力も、じわりじわりと浸透しているようです。Transart は“ライヴ録音専門”を標榜しているレーベルですが、私担当が思うに、このフィロメーナ・モレッティほどそのレーベルポリシーをみごとに体現しているアーティストはいないのではないでしょうか? 何しろクラシック・ギターというのはライヴではあまりに危険要素が多く、きれいな音を紡ぎ続けるだけでも至難の業というのに、彼女はそれをどんな環境でも難なく決めてみせ、しかもその場の空気をすっと自分に引き寄せる痛烈な求心力を持った演奏を聴かせる、その求心力は、いつも“聴衆がいる”という緊張感から生まれたものにほかならず。しかし最新新譜である本盤では、そんな張り詰めた空気をものともしないフィロメーナ・モレッティが、くつろいだ聴衆との対話の時間でもあるアンコールでよく取り上げてきたナンバーを集めた1枚——『アルハンブラの想い出』に始まり『禁じられた遊び』で終わる、途中アルベニスやグラナドスの傑作に2曲の超有名『アヴェ・マリア』…と、ギター入門盤にも最適・などとヌルい薦め方だってできてしまうプログラムですが、とにかくこれが飛び切りに、巧いのです!通俗名曲と思っていた曲が信じがたい威容とともに「場」に息づき、すっかり吸い寄せられてしまった心に、しみじみ、余裕綽々のギターの美音が沁みわたる…1音1音、かっこよすぎます。なんでしょうこの格の違い?「モンティのチャルダーシュ」(!)さえこんなに高雅・霊妙に弾ける人なんて、あらゆる楽器奏者のなかでも彼女一人だけでは?じっくり傾聴し続けたい傑作盤が、またひとつ生まれました。

TUTTI RECORDS

TUT003
(国内盤)
\2940
ラヴェル:ソナチネ、クープランの墓
トンボー、高雅にして感傷的なワルツ、およびその他のピアノ曲
モーリス・ラヴェル(1875〜1937)
 1. ソナチネ(1905)
 2. 哀しき鳥たち 〜『鏡』(1906)より
 3. 高雅にして感傷的なワルツ(1911)
 4. クープランの墓(トンボー)(1918)
 5. 亡き王女のためのパヴァーヌ(1899)
クロード・ベスマン(ピアノ)
説明のつかない、強い求心力。後ろ髪を引かれるように引き込まれてしまうラヴェル解釈。その師匠は・・・ラヴェルとの親交で知られる異能の人ヴラド・ペルルミュテール!
ひそやかに鮮烈な個性を放つ、この謎のラヴェル弾き。
自己主張がなければ社会生活も送れない「個人主義世界」たるヨーロッパのなかでも、あらゆる局面でとりわけ個人的見解が問われる国・フランス。発言ひとつひとつに自分の意見を交えなければ人間扱いされない、との強迫観念があるのかと思う瞬間もしばしばですが、全員がそういう意識で生きているからこそ、子供の頃からごく自然と揉まれて、鮮烈な個性がそこかしこに育ってゆくのでしょう。そのなかで生き延びて成功をものにしてゆくためには、日本での成り上がり方とはまた違ったトリュック(手練手管)が求められるのでしょうが、ともあれ、信じられないくらい個性的な音楽性で聴き手の心をつよく惹きつけてやまないのに、最大級の変人が数多くいるがゆえ?なかなか諸外国にまで名前の出てこない超・実力派のピアニストというのが、この芸術大国フランスにはゴロゴロしているのかもしれない…と、この新譜を聴きながら考えました。
音符と音符の間のとり方、打鍵のアタックや滑らかなパッサージュの作り方、どれひとつとっても得体の知れない個性が光る、そうして浮かび上がってくるラヴェル解釈、静かな佳品ソナチネに始まり、まるで初めて聴くような新鮮さをたたえた「クープランの墓」や「哀しき鳥たち」、1拍ごとに説得力豊かな香気がほとばしる「高雅にして感傷的なワルツ」、最後のトラックとして鳴り出してしばらく何の曲かと思うほど、ありふれた感じが全くしない「亡き王女のためのパヴァーヌ」...どうにも説明しようのない、なぜか心に引っかかってやまない、としか言いようのない不思議な求心力で迫ってくるこのピアニストの名は、クロード・ベスマン。
パリ音楽院の声楽科で歌曲伴奏クラスをひとつ受け持っているそうですが、そんな役回りに収まっているのが不思議なくらい(否、この人の伴奏する歌曲というのもぜひ聴いてみたい)、みごとに磨きぬかれた個性がそこに息づいているのです!
で、経歴を読んでみて少し合点がゆくことには、この人の最も重要な師匠は、作曲家ラヴェル自身との親交があったことで知られる20 世紀フランス最大のピアニストのひとり、異才ヴラド・ペルルミュテールなのだそう!いやいや、確かにペルルミュテール門下からは他にもジャン=フランソワ・エセールやジャック・ルヴィエのような個性派ピアニストも出てはいますが、これほど深く魅力的なラヴェルを聴かせる人物が潜んでいるなんて、本当にフランスは底知れない芸術大国ではありませんか...!
当然のように「音」はありますし、ちょっと先乗りで媒体露出もできるよう画策してみます。今でこそルーマニアや南米でマスタークラスを開催しているくらいの国際活動ぶりのようですが、ぜひ日本にも来ていただきたいものです...!
TUT001
(国内盤)
\2940
トランペット協奏曲 五つの様相
 アレクサンドラ・パフムートヴァ(1929〜):
  1. トランペット協奏曲(1982)
 レインホルト・グリエール(1874〜1953):
  2.トランペットと管楽合奏のための協奏曲
 ルッジェーロ・レオンカヴァッロ(1857〜1919):
  3. 歌劇『道化師』より「衣装をつけろ」
   (コルネット独奏とブラスバンド)
 リシャール・ガリアーノ(1950〜):
  4. トランペット、アコーディオンと管弦楽のための三つの舞曲
 オリヴィエ・ヴォンデルシェール(1968〜):
  5. プレリュードとファンク
   〜トランペットと金管アンサンブルのための
ティアリー・ジェルヴェ(トランペット)
バスティアン・スティル指揮
管弦楽団・吹奏楽団
ジャン=フィリップ・ダンブレヴィル、
ヨーク・クビアク(指揮)
「管楽器の王国」であり、「諸国民の集まる国」であり、「モードの国」でもあるフランス。ジャンルを超えた斬新なセンスで、ストレートに新古典主義的な近現代作品から「道化師」の名アリア、タンゴ=ミュゼットまで鮮やかに吹きこなす、トランペットの至芸…!
『フェリーニの道化師』の印象的な幕切れ、マイルズ・デイヴィスの鮮烈な感性、野球観戦の絶妙な盛り立て役…トランペットという楽器の活躍の場は、必ずしもクラシックの範疇に収まりきるものではないわけですが(というより、クラシックの領域はむしろ活躍の場が限られてくるくらい?)それでも、この楽器を主役に据えてみるやり方にも、実にさまざまなパターンがあるもので。トレッリやテレマンの協奏曲など「室内楽まがいのバロック協奏曲」としての参入もあれば、ブラス・アンサンブルでの活躍もあり、オーケストラの山場での登場もあれば、室内楽や現代音楽的な扱いもあり——クラシックの領域内でのトランペットの活躍が、どれだけ多彩たりうるか?ということ、またクラシック・ファンにも楽しめる範囲で、どのくらいトランペットが音楽ジャンルの越境を実現できる楽器なのか?ということを、いやというほど教えてくれるのが、この「管楽器の王国」フランスから届いた新譜!
すでにIndesens!レーベルで「フランスに管楽芸術あり」を強く印象づけてくれたプロデューサーが手がけるサブレーベルTutti Records の第1弾リリースでもある本盤は、ロマン派末期を過ぎ近代に入ってから、この楽器のための協奏曲が再び書かれるようになってからの、折々の意外な傑作を4作収録。古くはロシア近代の名匠グリエールによる隠れ名曲から、同じロシア系のバフムートヴァによる擬ロマン派風協奏曲(艶やか・堅固!)、またタンゴ=ミュゼット的なシックさを醸し出してやまないアコーディオンの天才リシャール・ガリアーノによる1編では、エッジの効いたトランペットの立ち回りが実に瀟洒。さらにレオンカヴァッロ『道化師』の超・有名曲をトランペットであざやかに吹きこなしたトラックまで収録——これもまさしく、フェリーニの愛したイタリア的・ラテン的な“トランペットならではの哀愁”を漂わせる絶妙トラックに仕上がっております。リヨン音楽院とパリ音楽院で腕を磨いたフランス人ソリスト、T.ジェルヴェの男性的なサウンドは実に頼もしく魅力的!アコーディオンのからみの妙、吹奏楽団伴奏(グリエール、レオンカヴァッロ)の表現が思いがけず変幻自在で濃やかなのは、やはり「管楽器の王国」の精鋭集団ゆえのこと。飽きの来ない「想定外の1枚」です!



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