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第53号お奨め国内盤新譜(1)



AEON

MAECD0874
(国内盤)
\2940
D.スカルラッティ:鍵盤のためのソナタ
(17曲)
 ①ソナタ ニ長調 K.492 ②ソナタ ホ長調 K.381
 ③ソナタ ト長調 K.427 ④ソナタ ホ短調 K.394
 ⑤ソナタ 変ホ長調K.193 ⑥ソナタ ヘ長調 K.107
 ⑦ソナタ ニ長調 K.118⑧ソナタ ト長調 K.125
 ⑨ソナタ ニ短調 K.64(ガヴォット)⑩ソナタ ト長調 K.454(ホタ)
 ⑪ソナタ ヘ短調K.239(ファンダンゴ)⑫ソナタ ト長調 K.470
 ⑬ソナタ ニ短調K.32(アリア)⑭ソナタ ニ長調 K.45
 ⑮ソナタ ト長調K.547 ⑯ソナタ イ長調 K.39 ⑰ソナタ ト長調 K.124
オリヴィエ・カヴェー(ピアノ)
ナポリの血を宿したスイスの俊英は、稀代のスカルラッティ弾きマリア・ティーポをして「あなたの心にある、ナポリの響きに耳を傾ければいい」と言わしめた。巨匠チッコリーニも心を奪われた、なぜか心に引っかかる静かなピアニズム——じっくりお愉しみあれ!スカルラッティの鍵盤作品、といえば、もちろんアレッサンドロの息子ドメーニコの555 曲がだんぜん有名——チェンバロ奏者はもちろんのこと、昔からピアニストたちのなかにも、この作曲家のユニークな作風に心奪われる人は多くいたものでした。ホロヴィッツ、ミケランジェリ、メイエール...と往年の巨匠たちにもスカルラッティに定評のある人は少なくありません。とりわけ、いずれもEMI に数多くの名盤を残してきたナポリ生まれの二人の名匠、アルド・チッコリーニとマリア・ティーポの名演は、コンサートゴウアーも含め日本でも広く知られてきたところでしょう。ピエール・アンタイやスキップ・センペ、ニコラウ・フィゲイレドなど、近年のチェンバロ奏者たちの突き抜けたスカルラッティ解釈をよそに、ピアノで弾かれるスカルラッティには独特の魅力が宿っているもの——特に、チェンバロという楽器が市民権を得てきた近年では、わざわざピアノでスカルラッティ作品を録音しようとする人は、往々にしてちょっとした曲者、録音内容にもユニークな味わいをたたえているものが多いように思います。555 曲もあるソナタから、どの曲をどう選んで、どう並べるのか?という基本的なところから、チェンバロを意識した音作りにしてみたり、ピアノならではの響きを十全に活かしたり、その間で独自のポイントを突いてきたり...。そんなわけで、中世音楽から現代音楽まで抜群のセンスで「よい音楽」を切り取ってくるフランスのaeon レーベルから登場した、スイスの俊英ピアニストによるこのスカルラッティ・アルバムも、なんとも忘れがたい味わいに満ちています。「スイスの」といいながらも、演奏者オリヴィエ・カヴェーはナポリ系イタリア人の家に生まれ、幼い頃から長い時間をナポリで過ごしてきた男。なぜかスカルラッティやクレメンティなど、18 世紀イタリアのチェンバロ〜初期ピアノ音楽に執着があるようですが、そんな彼がとりわけスカルラッティに惹かれるのは、そこに自分の“心の故郷”であるナポリの血を感じるからなのだそう——少年時代にマリア・ティーポのレコードでスカルラッティの音楽に魅了されて以来、彼はそれらのソナタをよりよく弾くべくティーポ本人の門も叩いたのですが、彼女が教えてくれた最も大事なことは「あなたの中に流れているナポリの血に、耳を傾けなさい」ということ——その後、巨匠チッコリーニとも知遇を結んだあとも、かの巨匠はカヴェーのスカルラッティ解釈にあえてレッスンを施さず、君のスカルラッティを大事にしなさい、と激励したそうです。あるときは意外なまでに遅く、あるときは勢いづきながらも一音一音いつくしむように、またあるときは語りほぐすがごとく穏やかに...と、ソナタ1曲ごとへの愛と抜群の適性を感じる演奏解釈で綴られてゆく17 曲のソナタ集に、彼がつけたオリジナル原題は「ナポリ1685」。カヴェー曰く、「スカルラッティが(555 曲のソナタを書いた相手である)ポルトガル王妃やスペイン宮廷で仕事をするようになったのは、実に30 歳を越えた頃のこと——ナポリの血が彼のソナタに沁み込んでいるのも当然」。ティーポやチッコリーニの系譜をひく「生粋のナポリ人気質のスカルラッティ解釈」、聴くほどにクセになる響きは、南国が恋しい夏にもぴったりです!

ALPHA

Alpha 163
(国内盤)
\2940
デンマークの王様
 〜17世紀初頭、バロック前夜の北欧宮廷音楽〜
 ①ホルシュタイン公のお愉しみ(ヒューム)
 ②パドゥヴァン(シャイト)
 ③ホルシュタイン公のアルメイン(ヒューム)
 ④「ほっそり可愛いロビン」によるリチェルカール(シンプスン)
 ⑤スペインのパヴァーン(ロビンスン)
 ⑥クラント(ブライヤー)
 ⑦ヴォルト(シンプスン)
 ⑧我らが父は天界に(ペザセン)
 ⑨我らが父は天界に(ローレンツ)
 ⑩題名のない作品(ショップ)
 ⑪なんと甘美な二の腕よ(ペザセン)
 ⑫カンツォネッタ(フィールダンク)
 ⑬或るトイ(ロビンスン)
 ⑭或る単旋律聖歌(ロビンスン)
 ⑮アラマンダ(シャイト)
 ⑯パドゥヴァーナ(メルカー)
 ⑰ガリアルド(ボルフグレーフィンク)
 ⑱或るパヴァーン(メイナード)
 ⑲パドゥヴァーナとガイヤール(ジストゥー)
レ・ウィッチズ(古楽器使用)
Alphaに名盤続々の、曲者ぞろいな古楽グループ「レ・ウィッチズ」が2年ぶりに帰ってきた!今度の舞台は、なんと北欧デンマーク——素材感あふれる古楽器の交錯が気持ちいいプログラムはデンマーク英国ドイツと入り乱れ、「知る愉しみ」も気持ちよく刺激してくれます秀逸な古楽アルバムを、響きの本質を生々しくとらえた自然派エンジニアリングで提供しつづけてきた超一流小規模レーベルAlpha——「古楽」と「美的センス」というフランスならではの適性を活かしたアルバム作りで日本でもすっかり有名になってきましたが、そのラインナップをよく見てみれば、フランス音楽以外にも飛びぬけた仕上がりを誇るアルバムは枚挙に暇もないことがわかります。近年ますます話題のエリック・ル・サージュによるシューマン録音シリーズ、ル・ポエム・アルモニークのイタリア・バロックもの、一連のバッハ録音やショスタコーヴィチ...そんなAlpha 待望の古楽系新譜は、白ジャケット・シリーズの『このジグは誰のもの?』(Alpha502)や『フランダースのすてきな古楽』(Alpha526)など数々のクールな名盤を残してきたユニークな古楽グループ、レ・ウィッチズ久々の新録音!なんと今度の舞台は北欧ルネサンス——三十年戦争にかこつけて仇敵スウェーデン軍と戦ったデンマークの王様、クリスチャン4世時代の心を慰めたさまざまな音楽を、絶妙のプログラム進行で聴かせてゆこうというものです。デンマークの古楽?とお思いかもしれませんが、ドイツと国境を接する大陸領土もあるこの北欧の島国では、ルネサンス期には英国の「リュート歌手」ダウランドが擁護をもとめてやってきたり、後年は(一説によればデンマーク出身とも言われる)ブクステフーデが宮廷で活躍したりと、強力な国王の財力にかこつけて周辺諸国から偉大な音楽家も訪れた「隠れ音楽大国」——本盤の主人公たるクリスチャン4世も大の音楽愛好家として知られ、宮廷にはなんと80人近くの音楽家がつとめていたとか。デンマークは昔から英国ともかかわりが深く(中世には英国を支配した時期もあります)、ダウランドをすんなり受け入れるなど当時は英国音楽の影響が少なからずあったようで、本盤もヒューム、シンプスン、ロビンスン...といった英国系の作曲家による楽曲が多く含まれていますが、プロテスタントを奉じるお国柄ゆえ、デンマーク語によるコラールを多声楽曲に仕上げるなどドイツ音楽からの影響も強く、その流れからかハレのザムエル・シャイトやハンブルクのヨハン・ショップなど、ドイツ北方の作曲家の作品が含まれているのも注目点。デンマーク人では宮廷作曲家ペザセンによるセンス良く素朴な味わいの楽曲が選ばれています。賑やかなダンス曲、静かなソロ、荘厳にして優しさあふれるオルガン曲——ヴァイオリン、リコーダー、ガンバ、リュート...レ・ウィッチズの演奏が際立っているのは、ひとつひとつの古楽器がそれぞれソロ的に立ち回る「見せ場」を巧く作り、めくるめく変化に富んだ、それでいて統一感を失わないプログラムを作ってみせるところ!17 世紀オリジナルの教会オルガンの味わいも実にオーガニック! 晩期ルネサンス世俗楽曲のヴァラエティ豊かな甘みたっぷり、古楽の面白さを堪能するに絶好の1枚です。

ARCANA

Mer-A323
(国内盤)
\2940
A.スカルラッティ:チェンバロのための作品集
 ①トッカータ ニ短調 ②トッカータ ヘ長調
 ③トッカータ ニ短調 ④トッカータ ト短調/ト長調
 ⑤トッカータ ニ短調 ⑥トッカータ イ短調
 ⑦第1旋法によるフーガ ニ短調
 ⑧第2旋法によるフーガ ト短調 ⑨第3旋法によるフーガ イ短調
 ⑩トッカータ イ長調
 ⑪トッカータ ト長調 ⑫二重フーガ ニ短調
リナルド・アレッサンドリーニ(チェンバロ)
使用楽器:ローマのフランチェスコ・デッボーニ1678年製作のオリジナル楽器
稀代の古楽指揮者アレッサンドリーニの、チェンバリストとしての本分を余すところなく示したこの「幻の名盤」が、ついに復活してくれました...!
ジャケットには新たに発見された作曲家の肖像を使用。演奏者自身による解説も充実、古楽ファン垂涎のリリースです!
現在イタリアにオーナー会社のあるArcana レーベルを発足させたのは、ジョルディ・サヴァールやホプキンスン・スミス、ブランディーヌ・ヴェルレといったスーパースターたちによる伝説的名盤を世に送り出してきた古楽レーベルAstree の創始者たる敏腕プロデューサー、故ミシェル・ベルンステン氏…というわけで、このレーベルには先日リリースされたばかりのファビオ・ビオンディによるヴィヴァルディの『マンチェスター・ソナタ集』(Mer-A422)、近日ようやくカタログ復活したエンリーコ・ガッティのコレッリ『作品5』(Mer-A423・7月下旬発売)など、ベルンステン氏の人脈による巨星たちの傑作音源がたっぷり眠っているのです!
2007 年にベルンステン氏が急逝しレーベル運営が一時休止して以来、流通休止ないし廃盤になっていたそれらの名盤群は、昨年からの新オーナー会社にイタリアきっての古楽プロデューサーや音楽史研究家が揃っていたこともあり、幸い去年から徐々に新パッケージなどでカタログ復活してきているのですが、今回は2010 年=アレッサンドロ・スカルラッティ生誕350 周年を記念して、リリース時には日本の古楽ファンたちのあいだでも話題となった後「幻の名盤」として入手困難になっていた、この傑作チェンバロ盤が復活してくれました!「スカルラッティ」で「チェンバロ」といえば、誰もがまっさきに思い浮かべるのはおそらく、ポルトガルとスペインの王室に仕え、555曲ものソナタを作曲したというドメーニコ・スカルラッティ。今なおピアノでも弾き親しまれている名匠ですが、ここに登場するのはその父親——といっても「スカルラッティの父」は、同じく音楽家でありながらほとんど地元でしか活躍しなかった「モーツァルトの父」や「ブラームスの父」などとは違います…というのは、いまさら申すまでもない話。稀代のオペラ作曲家・宗教音楽作曲家として、ナポリをバロック・オペラの牙城たらしめ、後年は「永遠の都」ローマの楽壇でも確たる地位を築き上げた、イタリア・バロックきっての声楽曲の大家として、末永く名声を誇った巨匠中の巨匠なのです(声楽を学ぶ人には「イタリア古典歌曲集」に収録されている名曲群でおなじみでしょう)。
重要作が声楽曲に偏りがちなため、日本ではその素晴しさも今ひとつ伝わっていない「父」スカルラッティですが、ここに収録されているのはすべて「歌なし」のチェンバロ作品——フレスコバルディやM.ロッシといった往年の名匠たちから続く、17 世紀ローマ楽派のチェンバロ芸術の伝統をみごとに受け継ぎ、チェンバロの音色が当意即妙、感性の迸りを感じさせるトッカータの数々を、あざやかに織り上げてみせる演奏者は...なんと、リナルド・アレッサンドリーニ御大!
1991年に収録された本盤は、モンテヴェルディのスペシャリストでもあるこの偉大な古楽指揮者が、演奏家としてどれほど卓越した存在だったかを改めて感じさせてくれる、堂に入ったタッチが聴きものです。スカルラッティがローマにいた頃のオリジナル楽器が響かせる端正な音色が、近接めのマイクで余すところなく収められているのも絶妙。
Mer-A334
(国内盤)
\2940
ヴィヴァルディ:さまざまなリコーダー協奏曲
 1. 室内協奏曲 ニ長調 RV97「羊飼いの娘」
 2. リコーダー協奏曲 ト長調 RV101(op.10-6)
 3. ナポリ風協奏曲 イ短調 RV108
 4. リコーダー協奏曲 ハ長調 RV444
 5. リコーダー協奏曲 ト長調 RV443
 6. リコーダー協奏曲 ヘ長調 RV442(op.10-5)
 7. 弦楽のための協奏曲 ト長調 RV163「コンカ」
ドロテー・オーベルリンガー(リコーダー)
ソナトーリ・デ・ラ・ジョイオーザ・マルカ(古楽器使用)
気がつけばスーパースターに成り上がり...というか、もともと天才奏者だから当然ですが。メジャーレーベルでも大活躍、けれども本分は着実そのものの古楽派プレイヤー!腕が冴えわたるのは、やっぱりヴィヴァルディ——周到な「現場的解釈」もイチイチ絶妙!
ちょっと前まで、日本では多くの音楽ファンがノーマークだったに違いない、ドイツ古楽界を代表する圧巻のリコーダー奏者、ドロテー・オーベルリンガー。数年前にDeutscheHarmoniaMundi と契約を交わし、堂々ポートレートをジャケットに続々キャッチーな名演をリリースしはじめた時には、メジャーレーベルにも古楽部門に対する良心が死んではいなかったのか?と瞠目させられたものでした。というのもこの名手、実は音盤シーンではそれ以前から決して未知の存在ではなかったのです——ただ、そのリリースがMarc Aurel Edition というドイツの小規模レーベルを中心に行われていたため、また録音していたのが中世〜ルネサンスの作品など、日本では人目を引きにくいジャンル(さらに言うなら、リコーダー奏者に必ずしも強い光の当たらない録音)も含まれていたため、ソロ奏者として世界的に名前が出てくるようなタイプには見えなかった...
しかし、その腕前は筋金入り。リコーダーという楽器はつくりが簡素なままバロック期まで使われ続けてきた楽器で、オーケストラ用に改良されていった近代管楽器よりもむしろ、シンプルなつくりの中世楽器に近いもの。ドイツ最大の「古楽の坩堝」ともいえるケルンで活躍を続けたオーベルリンガーは、中世〜ルネサンス期の楽器にも深く親しんで、この楽器のつくりを肌と魂にたたき込んで来た本格派ですから、その吹奏はまさに自分の身体で歌っているような自然さもあり、「最も親しい他者」として楽器の持ち味を尊重し、それを十二分に引き出す才覚にも長けているのです!
そんな地道なキャリア形成の末、DHM でメジャーデビューを果たす直前、彼女は音盤シーンから古楽復興を支えた名プロデューサー、ミシェル・ベルンステンの主宰するArcana レーベルにすばらしく周到に古楽的、かつ多くの人の心を捉えずにはおかないようなヴィヴァルディ録音を残していました——ベルンステン急逝によって早々と入手不可→廃盤となったこの名録音(おそらく、日本でも存在すら知らない人のほうが多いでしょう)、2009 年のArcana 新体制下できちんとリリースが予定されており、このたび待望の国内盤流通初登場にいたりました。「これぞバロック!」と日本の多くの方が思うような、そして最近の古楽ファンの肥えた耳をも満足させずにはおかない、スリリング&エモーショナル、かつ充実した作品解釈が光る名演の連続!
曲ごとに的確な歴史的楽器を使い分けているのはもう当然、パリでのヴィヴァルディ人気をかんがみて、当時フランスで人気のあったヴィエル(ハーディガーディ)を加えたり(演奏者は中世音楽の天才集団「ラ・レヴェルディ」のミルコヴィチ!)、「コンカ」という副題のある弦楽合奏のための協奏曲に、中間楽章の音型から復元されたリコーダー・ソロを添えてみたり(これがしっくり合うんです)。
しかもバックに控えているのは、1パート1人編成によるイタリア古楽界きっての俊英集団、ソナトーリ・デ・ラ・ジョイオーザ・マルカ!ヴィヴァルディ作品を織り上げる室内楽的緊密さが精彩鮮やかにきわだつのも、彼らならではでしょう!

ARS MUSICI

AMCD232-312
(国内盤)
¥2940
ハイドン:チェンバロ独奏による鍵盤ソナタ集
ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809)
 1.ソナタ* ハ長調 Hob.XVI-1(1760)
 2.ソナタ 変ロ長調 Hob.XVI-18(1767?)
 3.ソナタ 変イ長調 Hob.XVI-46(1765/67)
 4.ソナタ* イ長調 Hob.XVI-5(1763以前)
 5.ソナタ* ニ長調 Hob.XVI-19(1767)
 6.ソナタ ト短調 Hob.XVI-44(1765/67)
 *ハイドンの楽譜表記は「ディヴェルティメント」
ロバート・ヒル(チェンバロ)
使用楽器:パリのパスカル・タスカン1769年モデルによる
(2段鍵盤/製作:キース・ヒル、1998年)
ハイドンの「ピアノ・ソナタ」は、かなりの数がチェンバロで作曲されていた・・・でも本当にチェンバロで弾いたときピアノを凌駕できてしまうのは、この大天才くらいのもの!!音楽学研究所であるドイツ・ムジークフォールムが主宰してきたレーベルだけに、ARS MUSICIには音楽学的考証をへた注目すべき録音が続々…しかもレーベル運営者のセンスが絶妙で、企画倒れに終わらない、音楽的にひろく支持を集めずにはおかない飛びぬけたクオリティの録音ばかりが揃っているからたまりません。
今回お届けするのは、人によっては(たとえばグレン・グールド)モーツァルトのソナタよりも断然面白い!という意見も多いハイドンのピアノ・ソナタ——おっと、「ピアノ」というのは今の発想で、そもそもピアノが普及し出すのは1780年前後のこと、つまり1750年代から作曲にいそしんできたハイドンにとって、初期には断然チェンバロのほうが親しみ深かったのです。実家から少年聖歌隊の寄宿舎に預けられ、そこを追い出されたあと、やっと見つけた屋根裏部屋に虫食いだらけのおんぼろチェンバロを置いて、初の一人暮らしを「王様気分」で愉しんだ...なんて逸話も。そしてこの「おんぼろチェンバロ」で、ハイドンは大バッハの次男C.P.E.バッハの先進的なソナタを弾きまくり、作曲センスの基礎を養ったのでした。
かくて、少なくとも1770年代くらいまでのハイドンの「ピアノ・ソナタ」は、チェンバロで弾いたほうが正統的なはず——と音楽学的な意見をぶつけたところで、この楽器はピアノと違い、音量変化のニュアンスがつけられないわけで、実際ピアノよりもうまく弾くのは至難の業。ところが!本盤はかけてみてすぐわかることでしょうが、チェンバロのはずなのに、びっくりするほどニュアンス豊か!普通の2段鍵盤チェンバロの機構をフル活用して、時には音色変化ストップを上手に使いこなしながら、チェンバロでしか達成しえない独特の境地をハイドン作品から引き出してみせたのは、誰か...?それが1970〜80年代、Archivに無数の名盤を残した古楽界の革命的集団ムジカ・アンティクヮ・ケルンの鬼才チェンバロ奏者ロバート・ヒルだったと知れば、なるほど!と納得される古楽ファンも多いのでは。録音2001年、故郷アメリカでもドイツでも益々活躍中のこの異能の人、本盤ではひとくさり「チェンバロ演奏のいま」について充実した論説も寄せています(もちろん全訳添付)。チェンバロで古典派を・という意外な試みの旨みと驚き、たっぷり詰まった1枚なのです!
AMCD232-221
(国内盤)
\2940
ディッタースドルフ:
 「レクィエム」、およびその他の傑作教会音楽
カール・ディッタース・フォン・ディッタースドルフ(1739〜1799):
 1. レクィエム ハ短調
    〜独唱、合唱と管弦楽のための
 2. 聖ヤン・ネポムツキーの栄誉に捧ぐ
    〜バス独唱、合唱と管弦楽のためのモテット
 3. 聖ラウレンティウスのリタニア
    〜独唱、合唱と管弦楽のための
ゲオルク・ラーツィンガー指揮 コンソルティウム・ムジクム・ミュンヘン
レーゲンスブルク大聖堂少年合唱団
ハンナ・ファリネッリ(ソプラノ)
ビルギット・カルム(アルト)
ハイナー・ホプナー(テノール)
ニコラウス・ヒッレブラント(バス)
ARCHIVやDHMに名盤あまた…メジャー盤でも大活躍した超・秀逸少年合唱団が聴かせるのは、盛期古典派の 名盤僅少もいいところな大作曲家・ディッタースドルフ!ARS MUSICIのいいところは、音楽学的センスとCD制作的センスの両方がみごと満たされている点…と上でも書きましたが、この1枚もまた、そのことを本当によく示してくれています。プログラムのハイライトに「レクィエム」を置いた、不当に等閑視されている大作曲家ディッタースドルフの傑作教会音楽集!
ディッタースドルフはハイドンと同じ頃、10代の頃からヴァイオリニストとしてめきめき才能をあらわし、作曲センスもいかんなく示して、ウィーン古典派の「時代の寵児」となった人。皇帝ヨーゼフ2世やプロイセン国王フリードリヒ=ヴィルヘルムなど、友人モーツァルトが寵を欲しがった名君たちにことごとく愛顧を受けたほか、ドイツ語オペラ「医者と薬剤師」はモーツァルトの「フィガロ」を追い落とすほどの大人気作となったほど。
室内楽作品や交響曲、協奏曲など器楽作品にも忘れがたい名品が多いのは古典派ファンには有名でしょうが、本盤ではその知られざる教会音楽方面での活躍をありありと示す作品を3つ、大作・小品・短編集...とバランスのよいプログラムで聴かせてくれるのです。(モーツァルトならさしずめ戴冠ミサ&エクスルターテ&リタニア、というようなバランスの良さ!)わけても「レクィエム」は日本中に数多いるというレクィエム・コレクターの皆様を興奮させずにはおかないような、「古典派の短調」特有の深みが清らかな合唱で俄然引き立つ興奮の瞬間の連続!「怒りの日」での高貴な金管や打楽器も絶妙です。
けれども何より嬉しいのは、演奏の核を占めるのが、ドイツ南部で長きにわたる伝統を誇るレーゲンスブルク大聖堂合唱団である…という驚くべき事実!日本の合唱界でも圧倒的な存在感を誇る巨匠ハンス・マルティン・シュナイトのタクトのもと、ARCHIVで数々の傑作バッハ録音を聴かせ、DHMにも清らかな古楽クリスマス盤を残すなど、およそ過去半世紀のあいだ無数の名盤を生んできた精鋭集団だけに、プロ成人合唱団さえ及びもつかないような迫真の表現を聴かせてくれます。合奏陣の充実した響きも絶妙…オールド・ファンにも古楽ファンにもおすすめ!の秀逸盤なのです。
AMCD232-322
(国内盤)
\2940
ヨハンネス・ブラームス(1833〜1897):
 1. 弦楽四重奏曲 イ短調 作品51-2
ジュゼッペ・ヴェルディ(1813〜1901):
 2. 弦楽四重奏曲 ホ短調
アルテミス四重奏団
ナターリャ・プリシチェペンコ、
ハイネ・ミュラー(vn)
フォルカー・ヤーコプセン(va)
エッカルト・ルンゲ(vc)
あっという間に結成20周年…が去年のことに。今やヨーロッパを代表する四重奏団となった「新世代の大御所」アルテミスSQが、最強メンバー時代に残していた見過ごしがたい名盤。とにかく新録音の少ない「巨匠たちの隠れ名曲」、この飛びぬけた名演はほんとうに貴重!
日本のクラシック音盤界は、全体的にどのくらい「いま」に即しているのでしょうか——なにぶん「往年の名盤」に弱いお国柄、「飛びぬけた弦楽四重奏団」として知られているのが、21 世紀の今でもアルバン・ベルクSQ/スメタナSQ/ジュリアードSQ...といった感じだったり、DGG と密接な関係を続けてきたエマーソンSQ やハーゲンSQ「だけ」が巨匠格だったりしても、何ら不思議はないのかもしれません。彼らの至芸の偉大さは否むべくもないのですが、しかしその一方で、ここ四半世紀のあいだに圧倒的な存在となってきた、1980〜90 年代デビューの「別格」四重奏団は、日本でももっと広い層に名を売っていても良さそうな気がします。パリジイSQ、ヴィハンSQ、ロザムンデSQ...日本に支社のあるメジャーレーベルが録音しないというだけで、広告戦略の欠如ゆえにヨーロッパでの快進撃がうまく日本のシーンに反映されない偉大なグループは、事情通の方々としては、それこそ枚挙に暇がないほどでは?と思うほど。ともあれ、ここに登場するアルテミスSQ の場合、かなり状況は恵まれていたと言っても差し支えないでしょう! 結成は意外と古く、創設メンバーがリューベック音大在学中だった1989 年にまで遡るそうですが、2002 年以来かなりの頻度で来日しているばかりか、Virgin レーベルに録音されてきた名盤群が東芝EMI から続々リリースされるなど、存在感を発揮する機会も少なからず——近年ではベートーヴェン全曲録音も完成間近、そぞろ大御所感も出てきた「今をときめく」ドイツ最高峰のこの四重奏団、Virgin に移籍して活発に名盤群を生み出す直前に、先見の明あるARSMUSICI のプロデューサーとこんな充実プログラムの傑作録音を残していたのです!
演目はどちらも「巨匠の名品」でありながら録音が思いのほか出てこない、ましてやアルテミスSQ のような大物たちの新録音で聴ける機会となるとこれまた稀有、ブラームスとヴェルディの弦楽四重奏曲。何の偶然か、両曲とも同じ年、1873 年に作曲された傑作です(ブラームスは「ドイツ・レクィエム」と「交響曲 第1 番」のあいだ、ヴェルディは「アイーダ」初演後、ともに創意が充実しきっていた最盛期の作!)。さらに言うなら、どちらもアプローチを間違うと全然輝かない難曲でもあると思うのですが、なにしろ弾き手はアルテミスSQ。若々しい弦音を至高のアンサンブルで重ね合わせながら、若くしてこの風格あり、と驚かされる構築感で、作品の旨味をじっくり味あわせてくれるのです。新世紀のヨーロッパを騒がせ続けるだけのことはある...と感嘆至極、オールド・ファンにも、これら隠れ名曲2曲との「出会い」を求めておられる方にも、安心してお勧めできる立派な「本物」です!

CONCERTO

CNT2056
(国内盤)
\2940
ピッツェッティ:ピアノ三重奏曲、およびその他の室内楽作品集
イルデブラント・ピッツェッティ(1880〜1968):
 1. ピアノ三重奏曲 イ短調(1925)
 2. 三つの歌(1924)〜チェロとピアノのための
 3. マリオ・コルティに捧ぐ歌(1906)
  〜ヴァイオリンとピアノのための
 4. 語らい(1948)〜ヴァイオリンとピアノのための
 5. 婚礼祝いのアリア(1960)
  〜ヴァイオリンとピアノのための
 6.アリエッタ(1923)*〜チェロとピアノのための
  * 世界初録音
トリオ・ディ・パルマ アルベルト・ミオディーニ(p)
イヴァン・ラバリア(vn)
エンリーコ・ブロンツィ(vc)
イタリアの晩期ロマン派——現代どころか、近代というにも心地よすぎる、この絶美の世界。レスピーギとともに「オペラ以外のイタリア近代音楽」を確立していった名匠ピッツェッティのあまりにも美しいピアノ三重奏曲ほか、名手ブロンツィら、イタリア屈指の俊才たちの名演でロマン派音楽の大流行にひとつ区切りがついたあと、そのあと難渋難解な「現代音楽」なるものの世界に突入する前に、20世紀初頭には音楽史上、ひところ「近代」という名で現代音楽とは別に考えたい時期があるわけでして——たとえばドビュッシーやラヴェル、あるいはマーラーやレーガー、ないしはホルストやヴォーン=ウィリアムズ...いやもう少し下って、フランス六人組やプロコフィエフ、コルンゴルトくらいまで含めてもいいのかもしれませんが、つまりこの時期に書かれた音楽の大半は、20世紀にあっても「現代」ではなく、ずっと接しやすい、クラシック・ファンに愛聴されやすい感性に貫かれたものばかりなのです(シェーンベルクやその一党、あるいはアイヴズにカーター...といった前衛音楽家は、当時はまだ「少数派」だったわけで)。なんで今こんなことを改めて書いてみたかというと、ここに紹介する新譜の作曲家ピッツェッティが、長年オペラ一辺倒だったイタリアという国にあって、まさしくその「近代」の最も重要な時期を支えた大家のひとりだからです。同時代人のレスピーギやマリピエーロらとともに「1880 年の世代」と呼ばれもした彼は、20 世紀イタリア歌劇界きっての名作『大聖堂の殺人』(1958)をはじめオペラも数々残しているものの、かつて18 世紀以前にはイタリアでも独自の興隆をみていた室内楽や管弦楽曲、あるいは宗教曲...といった「オペラ以外」のジャンルでも華々しく活躍、イタリア近代の音楽関係者をオペラ世界の外へと連れ出してみせた重要作曲家だったのでした。その美質を端的に味わうのに、ソリストとしても縦横無尽の活躍をみせ日本にも何度か来日している俊英チェロ奏者エンリーコ・ブロンツィを筆頭に、イタリア屈指の室内楽奏者が集うトリオ・ディ・パルマがじっくり弾き込んだ解釈で録音してくれた最新新譜ほど好適なものはないでしょう! 演奏時間が本番中最大のピアノ三重奏曲は、1925 年という比較的早い作曲年代さえ驚異!と思えるほど、ほとんどロマン派と言っても過言ではないほどの艶やかな感受性と確たる形式感に貫かれた傑作——ブラームスとフォーレの間を行くような、と言えば伝わるでしょうか?実に聴き応えある、心とろかさずにはおかない名品です。ヴァイオリンとチェロがそれぞれの美質をいかんなく発揮する併録の小品群も、イタリア人ならではの歌心とピッツェッティ随一の節度ある形式感がうつくしい結晶をみせた名品ばかり——どこから聴いても心打たれる、ネオ=ロマンティシズム的なジャケット絵画の美そのままの艶やかな室内楽世界に、ぜひ魅せられてください!

FUGA LIBERA

MFUG567
(国内盤)
\2940
シューベルト、イザイとブラームス
 〜ヴァイオリンとピアノによる傑作3選〜
フランツ・シューベルト(1797〜1828):
 1. ピアノとヴァイオリンのための二重奏ソナタ イ長調 D574
ウジェーヌ・イザイ(1858〜1931):
 2. 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ ニ短調 Op.27-3
ヨハンネス・ブラームス(1833〜1897):
 3. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第3番 ニ短調 op.108
イリアン・ガルネッツ(ヴァイオリン)
アリーナ・ベルク(ピアノ)
天才奏者発掘にかけては「センス」「地の利」ともに抜群のFuga Libera主宰者がぞっこんほれ込む、21世紀の逸材ふたり——年齢なんて関係ない、瑞々しく紡がれる傑作3篇に、ヨーロッパ楽壇の「いま」を肌で感じたい。見過ごしがたい室内楽アルバム!
ベルギーという国は、フランスとオランダの間にあるだけでなく、少し東に行けばドイツとも目と鼻の先。これら3つの隣国の言葉が公用語になっていて、多言語話者なんてざらにいる...周辺諸国に翻弄されながらも、19世紀には諸外国に先駆けて産業革命を達成、「クラシック音楽」が最も面白い変化をみせた19世紀末〜20世紀初頭に、ちょうど文化大国としての繁栄の絶頂をみた国でもありました。もちろん中世〜ルネサンス期にも、この地域からすぐれた音楽家はたくさん輩出していますが(たとえばネーデルラント楽派)、作曲家フランクやヴァイオリン奏者=作曲家のヴュータンにイザイ...といった巨匠たちの活躍した1900年前後の時代をへて、20世紀にもグリュミオー(vn)、ジョゼ・ヴァン・ダム(Br)、クイケン兄弟、フォクルール(org)...と名手・巨匠は後を絶たず。新世代の名手も続々輩出しているだけでなく、たとえばルーマニア出身のボベスコ(vn)や日本人の堀米ゆず子(vn)など、諸外国の演奏家でベルギーに拠点を定め、この国の音楽文化に大きく貢献してきた音楽家も少なくありません。それというのも、クラシック演奏家のための国際コンクールのなかでも特に重要な「エリザベート王妃国際コンクール」がブリュッセルで行われているのが大きな要因のひとつ——このコンクールを目指してベルギーにやってきて、この地の豊かな音楽生活に惚れ込み、定住してしまうのでしょう。
そんなベルギーに拠点をおくFuga Libera レーベルは、これまでにも同コンクールでの入賞者のなかでも将来有望な人材にいち早く目をつけ、これまでにトリオ・ダリ(大阪国際コンクール優勝)、ミロシュ・ポポヴィチ(ピアノ...デビュー盤のシューマン作品集は『レコ芸』特選)、プラメナ・マンゴヴァ(ピアノ...やはりデビュー盤のショスタコーヴィチで『レコ芸』特選)らの名盤を世に送り出してきた実績もありますが、その慧眼でもって今回見出されたのは、ルーマニア出身のピアニストと、その隣国で旧ソ連の1国だったモルドヴァの出身者であるヴァイオリニスト——いずれも20歳前後(!)の若手ではありますが、何はともあれ、Fuga Libera レーベル主宰者の慧眼をご信頼あれ。思い切りのいいだけじゃない、絶妙なコントロールで作品美の核へと迫るガルネッツの弦音は、熾烈な競争率を勝ち抜いてエリザベート国際コンクールで入賞を果たしただけある、またメニューイン、ブロン、ハガイ・シャハム...といった名教師たちの薫陶も頷けるカリスマ性を秘めているのです!ピアニストのアリーナ・ベルクは彼よりもさらに年下ですが、自発性たっぷりのピアノが曲に独特の呼吸感と旨味を与え、なんとも聴きごたえあり。両者と同じ年頃のシューベルトが作曲した二重奏ソナタなんて、爽快・絶品もいいところです。FugaLiberaの「質」をひしひしと感じさせる、秀逸な1枚!
MFUG569
(国内盤・2枚組)
\4515
モーツァルト:弦楽三重奏のための作品全集
 1. 弦楽三重奏のためのディヴェルティメント 変ホ長調KV563
 2. 弦楽三重奏のための六つの前奏曲とフーガKV404a
トリオ・フェニクス
 シャーリー・ラウプ(vn)
 トニー・ネイス(va)
 カレル・ステイラールツ(vc)
モーツァルトが晩年どんどんハマっていった「対位法」——その先にあったのは、やはりバッハの芸術だった! あざやかなメロディラインの交錯をきれいに解き明かしながら曲の瑞々しさと深さを静かに浮き彫りにする——これぞ、ベルギー最前線の室内楽!
Fuga Libera レーベルで活躍する演奏家たちには、その拠点であるベルギーの音楽シーンのあり方をさまざまなかたちで代表するような俊英奏者が少なくないのですが、このアルバムに登場するトリオ・フェニクスの3人も、ベルギー室内楽の最前線をかいま見せてくれる超・実力派たち。Fuga Libera レーベルではマーラー作品の室内楽編曲、モーツァルトやレーガーの室内楽作品集などで異色の透明感あふれる演奏解釈を呈示してくれているアンサンブル・オクサリスのヴァイオリン奏者、シャーリー・ラウプがトップをとるほか、全員が別の演奏団体でも活躍している多忙な腕利き室内楽奏者(ヴィオラのネイスは来日公演も頻繁なダネルSQ で活躍していた名手ですし、チェロ奏者ステイラールツは知る人ぞ知る気鋭集団ベートーヴェン・アカデミーでソロ奏者をつとめる、古楽器も弾ける逸材だったり)。
そんな演奏陣の確かさはともかくとして、このアルバムの注目点はやはり、意外にも見過ごされがちな「モーツァルトと弦楽三重奏」という位相に着目したところでしょう! 弦楽四重奏曲やヴァイオリン作品などばかりに気をとられてしまいがちですが、モーツァルトは晩年のごく短期間、この弦楽三重奏という編成にもひときわ興味を寄せていた時期がありました。
——「3」という数字が、彼も所属していた秘密結社フリーメイスンで重要な意味を持つ数字だから、ということもあったのでしょうが、同時に彼は仲間うちで室内楽を愉しむさい、しばしば好んでヴィオラを弾いていたのだとか。弦楽三重奏ではヴィオラ・パートにきわめて大きな存在感が与えられることになりますから、書いていても弾いていても楽しかったに違いありません。ともあれ、彼の弦楽三重奏のための作品といえば、誰もがまず思いつくのはKV563 のディヴェルティメント...日に日に募ってゆく彼への負債に取立てがましいことをしなかったフリーメイスンの盟友、プーフベルクに「せめてもの返礼」とばかり献呈されたこの三重奏曲は、生活苦などどこ吹く風・の晴朗な音楽のなかに、晩年のモーツァルトならではの諦念が美しく滲む一大傑作...これひとつでも十分アルバムのトリとなるでしょうが、本盤でむしろ注目したいのは、抜粋では折々聴く機会もある「前奏曲とフーガ」KV404a の全曲をきっちりまとめて収録してくれているところ——複数パートの絡み合いの面白さ、つまり「対位法」の妙にとりつかれたモーツァルトが、かの大バッハの「平均律クラヴィーア曲集」などから作品を選んで、自ら偏愛していた弦楽三重奏という編成に編み代え、適宜オリジナルの前奏曲もつけてみたという異色作ですが、全曲通して聴ける機会というのは実に貴重。しかもトリオ・フェニクスの演奏は(併録のKV593 にしてもそうですが)全体の協和のなかで各パートの独立性をすっきり際立たせるタイプで、これらの作品の妙味を味わうにはうってつけ! 流し聴きにも気持ちよく、じっくり聴けば聴くほど、モーツァルトの意外な側面に気づかされる。折々はっとさせられる、秀逸な全曲録音なのです!

INDESENS!

INDE013
(国内盤・2CD)
\4515
プーランク:管楽器のための室内楽作品全集
フランシス・プーランク(1899〜1963):
 ①笛吹きが廃墟に子守唄を聴かせる(無伴奏フルートのための)
 ②クラリネットとバソンのためのソナタop.32
 ③2本のクラリネットのためのソナタop.7
 ④オーボエ、バソンとピアノのためのソナタop.43
 ⑤ホルン*、トランペットとトロンボーンのためのソナタop.33
 ⑥ピアノと木管五重奏のための六重奏曲op.64
 ⑦クラリネットとピアノのためのソナタop.184
 ⑧フルートとピアノのためのソナタop.164
 ⑨オーボエとピアノのためのソナタop.185
 ⑩ホルンとピアノのためのエレジー *
エマニュエル・シュトロッセ、
クレール・デセール(p)と
パリ管弦楽団のソリストたち
フランシス・オルヴァル(hr)
ヴァンサン・リュカ(fl)
アレクサンドル・ガッテ(ob)
フィリップ・ベロー、
オリヴィエ・デルベス(cl)
マルク・トレーネル(bn)
フレデリク・メヤルディ(tp)
アンドレ・カザレ(hr)
ギヨーム・コテ=デュムラン(tb)
「管の国フランス」の、いま——パリ管の超絶的名手たちの面目躍如、ピアニストも豪華!本場奏者だからこそ生きるレパートリー、堂々しっかり全曲録音&日本語解説付きで登場!大好評につき品切れ中(今週入荷!)のサン=サーンス盤に次ぐ、艶やか・高雅な名演奏!歴史ある「管楽器の王国」フランスの世界的名手たちが続々と新録音を発表しているIndesens! (アンデサンス)レーベルといえば、クラシカルなレパートリーとは少し趣の異なる管楽器ユーザー向け楽曲などをほどよく取り入れたアルバム作りでヒットを連発、世界的トランペット奏者エリック・オービエの20 世紀協奏曲集のような「クラシックでは売りにくい?」と思われるアイテムで驚くほどの好実績をあげるなど、CD ショップ的通念を軽やかに覆す名盤も出す一方、先日は「サン= サーンスの管楽器のための室内楽作品全集」(INDE010)という、いわば盲点を突くようなかたちでクラシック愛好家の心をわし掴みにする注目盤もリリース。相変わらず侮れないレーベルだと思っていたところへ、今度は売れ行き好調のサン=サーンス盤に次ぐパリ管スーパープレイヤー結集アルバムが登場! フランス19 世紀が誇る巨匠がサン=サーンスだったとすれば、今回は20 世紀フランスきっての多作・多芸な名匠、プーランクによる管楽器のための室内楽をすべて集めたアルバムでございます。同世代のミヨーやオネゲルらと「フランス六人組」と括られることも多いこの名匠の作品は、においたつような洒脱さと真摯そのものの深みとが紙一重で隣りあう、その点にこそえもいわれぬ魅力があるのですが、この「紙一重」のラインをうまく再現するのは本当に難しいようで、やはり同じフランスに暮らす名手たちでなくては到達しえない境地というものがどうしても出てくるもの。まして、ある意味はなしことばと切っても切れないと言われる管楽器演奏の領域となれば...!プーランクは自身のピアノ録音もありますし、生前の作曲家を知る演奏家たちの録音も残されてはいますが、彼の音楽の面白いところは、同じフランス系演奏家でも違う世代ごと、また異なった側面を垣間見せてくれるところ——本盤の演奏家たちは元来が超一流(なにしろ「管の国」が誇るパリ管弦楽団のトップ奏者たちですから)なだけでなく、ジャズやクレズマーなどクラシック外のジャンルでも腕を磨いてきた達人がいたり、その感性はまさしく「21 世紀型」。ちょっと上の世代のパユやメイエらともかなり趣きの違った、それでいて「明らかにプーランクそのもの」な音作りは、素敵な南仏ワイン(軽いのでも、カオールやルーションの年代物でも…)なんて傾けながらじっくり聴き極めるに足る奥深さ!よく見ればピアニストも「ラ・フォル・ジュルネ」でおなじみ、Mirare で名盤続出中のデセール&シュトロッセという嬉しさ。フランス随一のエスプリ満載、洒脱にして高雅な深みをぜひご堪能ください!

JB RECORDS

JBR008
(国内盤)
\2940
〜クラリネットと弦楽四重奏、室内楽の可能性〜
オンジェイ・クカル(1964〜):
 1. クラリネッティーノ
  〜クラリネットと弦楽四重奏のための
モーツァルト(1756〜1791):
 2. クラリネット五重奏曲 イ長調 KV591
レジェー・コーカイ(1906〜1962):
 3. クラリネット小四重奏曲(クヮルテッティーノ)
アストル・ピアソラ(1921〜1992):
 4. 五重奏のための協奏曲
エンニオ&アンドレア・モリコーネ(1928./1964〜):
 5. ニュー・シネマ・パラダイス(M.ムルス&J.ズヴァリチ編)
ヤン・ヤクプ・ボクン(クラリネット)
スロヴァキア四重奏団
東欧人は、やっぱり底力からして違う——作品美をきわだたせながら、古臭さとは無縁!
精妙でありながら自由闊達。王道中の王道というべきモーツァルト作品の桁外れな名演を中心に、クラリネット界で有名なコーカイの傑作やアンコール小品など、選曲も絶妙です!今回ご案内の3点は、正直どれをとっても「一切妥協なし」のクオリティは痛快なまでで、どれを買っても損はさせない内容なのですが...「日本ではまだまだ聞き覚えのない、ポーランドの腕利きクラリネット奏者のプライヴェート・レーベルから出た1枚」という本盤の第一印象は、その内容の飛びぬけた素晴しさと驚くほどに落差がある、としか言いようがありません。ヤン・ヤクプ・ボクン——名手ツィメルマン率いる精鋭集団ポーランド祝祭管弦楽団のメンバーでもある彼は、チェコやドイツにもほど近いシロンスク地方ヴロツワフを拠点にしており、ヨーロッパ各地への演奏旅行も少なからぬ多忙なプレイヤー。ここで共演しているのは、隣国スロヴァキアの首都ブラティスラヴァを拠点とする、スロヴァキア四重奏団とストレートな名を名乗る弦楽四重奏団...1999 年結成の若いカルテットと思いきや、その音楽感性・室内楽センスが「さすが東欧!」と瞠目させられるほどのクオリティなのです!ヴィブラートを適度に抑えた表現、クラリネットのなめらかさ、平明に弾くことでこそ(これ、ただ平たくのっぺり、というのとは全然違うわけですが)いや増しにきわだつ「モーツァルト晩年の、枯淡の美」...絶品です。原盤タイトルにもなっている「クラリネッティーノ」は、プラハ室内管のリーダーを長らく務めてきた名手、ヴラフ四重奏団のオンジェイ・クカルが書いた一編——いかにもクラシック!という手堅さが自由自在なセンスと並存する、実に小気味いい逸品です。「クラリネット奏者のレパートリー」といえば、弦楽四重奏団との共演のさい多くの演奏家たちが好んでとりあげる室内楽曲の定番、コダーイやバルトークと同時代のハンガリー人作曲家コーカイによる「小四重奏曲(クヮルテッティーノ)」の収録も嬉しいところ——民謡調とソナタらしさが絶妙の並存をみせる小さな充実作を、ボクンとスロヴァキアSQ は磨きぬかれた完成度を誇る解釈でじっくり聴かせてくれるのです!そしてアルバム最後には、モリコーネやピアソラの名旋律も...クラリネットと弦楽四重奏で味わいたいサウンドの全てが、最上のかたちで結晶した1枚なのです!

PAN

PC10218
(国内盤)
\2940
ジュゼッペ・マリア・カンビーニ(1746〜1825):
 1. 弦楽五重奏曲 第1 番 変ホ長調
 2. 弦楽五重奏曲 第4番 ハ短調
 3. 弦楽五重奏曲 第23 番 ト長調
アンサンブル・アントラクト(古楽器使用)
プラメナ・ニキタソヴァ、ファニー・ペスタロッツィ(vn)
エマニュエル・カロン(va)
ドゥニ・セヴラン、フェリクス・クネヒト(vc)
ウィーン古典派3巨匠の同時代人で、彼らに比しうる腕前を誇った数少ないラテン系の名匠名前だけはご存知の方も少なくないでしょう——木管五重奏曲の先駆者は、弦楽器の扱いの方が巧かった?精緻さ・爽快感・情感、すべて古楽器演奏で明かします今井信子、ウィーン弦楽六重奏団、ローランド・ペンティネン...メジャーレーベル一辺倒ではなくなったヨーロッパの録音界で、小規模レーベルにも世界的名手が多く集まっているところが続々増えていますが、スイスのPan Classics もそのひとつ。しかもディレクターには音楽学に精通したスタッフもいるようで、いわゆる「音楽史もの」でも学究性に偏らず、広い層のファンにアピールのある「知られざる銘曲・巨匠」を見つけてくるのもとにかく上手いのですが、革命期前後のパリを大いに沸かせたイタリア人の人気作曲家カンビーニによる、ハイドン=ベートーヴェン級の充実室内楽作品を絶妙の古楽器演奏で聴かせてくれるこの1枚も、まさにそんな秀逸盤といえるでしょう。
こうした作曲家については、どんなに言葉を尽くすよりもまず本当は曲そのものを聴いていただくのがベストなのでしょうが、ともあれまずは「カンビーニって誰?」という方のためにざっとご紹介を。ボッケリーニの生地ルッカからもほど遠からぬ港町リヴォルノで生まれたカンビーニは、ボッケリーニの協力者として知られるヴァイオリニストのマンフレーディに師事し、彼ら二人のほかタルティーニの弟子ナルディーニも呼び込んで、全員がソリストという贅沢な弦楽四重奏団で活躍。その後、当代きっての管弦楽芸術のメッカたるパリのコンセール・スピリチュエルで協奏交響曲をいくつも披露、あわせて室内楽作品の出版でも人気を博し、大いに名声をあげたのでした。モーツァルトの手紙にもパリ旅行中あたりでちらっと登場するこの巨匠、初期にはパリ古典派らしい洗練された耳あたりのいい管弦楽曲を書いていたほか、木管五重奏という編成を誰よりも早く試みたことでも知られていますが、実はそのほか生涯にわたって本領を発揮できたのが、弦楽四重奏曲や弦楽五重奏曲といったタイプの曲種!そのいずれをも100 曲以上残しているのですが、とりわけ1800 年前後あたりからの後期作品は、モーツァルトの「悪魔的な闇」の部分をそっくりそのまま「天使の光」に換えたような、美しさと切なさにむせかえるような逸品が少なくありません。録音は結構出ていながら、その実安定供給されている盤があまりにも少ない不遇なこの大家に、このたびスイスの秀逸レーベルPan Classicsが正面から向き合ってくれました!
チェロを2 本使った、ボッケリーニ・タイプの弦楽五重奏曲3編——ドラマティックな短調作品をひとつ挟んで、1790 年代の中期作品から後期にいたる絶妙の選曲で、ベートーヴェンのそれに勝るとも劣らない長大な展開をあざやかに織り上げる手腕をたっぷり愉しませてくれます。スイス、ドイツ、ベルギーなどの一流古楽バンドで多忙な日々を送る古楽器奏者たちのアンサンブルも、呼吸ぴったり...「パリ暮らしの、ベートーヴェンのライヴァル」と呼んでも全く差し支えない、そんな充実した音楽が3曲もあるとなれば、聴かずにいるほうが勿体ないというものでございます!

RAMEE

RAM1003
(国内盤・2CD)
\4515
バッハ:無伴奏チェロ組曲BWV1007〜1012
 〜ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラによる全曲録音〜
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 『無伴奏チェロ組曲』(全6曲)
ドミトリー・バディアロフ(ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ)
チェロを縦にかまえるようになったのは、実は意外と最近のこと?“肩からかけるチェロ”ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの再発見に大きく寄与した楽器製作者=プレイヤー、日本でも旺盛な活動を続けてきたバディアロフ氏が、ついに録音した本命大作...!ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ。ここ近年、日本の古楽ファンのあいだで静かな——否、決してそんな慎ましやかなものではない話題を呼んできた謎の弦楽器!なにしろ日本でも有名なシギスヴァルト・クイケンや寺神戸亮といった「バロック・ヴァイオリンの大御所」たちが、チェロのレパートリーやチェロ・パートを続々この楽器で演奏しはじめたのですから、聴き手の側でも騒然となるのは必至というもので!ヴィオロンチェロとはご存知のとおり、チェロのイタリア語によるフルネーム。「ダ・スパッラ」とはイタリア語で「肩の」という意味。ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラとは、普通よく知られているチェロのようなに縦に構えるのではなく、エレキギターのように紐をめぐらせて肩にかけ、ヴァイオリンのように横に構えて弾くチェロなのです。実際、古楽盤のジャケットなどでもよく見かけるルーヴル美術館の目玉大作のひとつ、ヴェロネーゼの『カナの婚礼』の画面中央にいる楽師に代表されるとおり、古い絵画資料にはそうやってチェロを横に構えている例のほうが(ことによると、チェロを縦に構えている例より?)圧倒的に多いため、実はこの弾き方のほうが昔はスタンダードだったのでは?という説さえ昨今では提案されているほどです。バッハの『無伴奏チェロ組曲』は第6組曲が通常のチェロではたいそう弾きにくく、別の古楽器のために書かれたのでは?とピッコロ・チェロを使う古楽奏者もいたのですが(たとえばA.ビルスマ)、近年では左手がヴァイオリンと同じような指使いで弾けるヴィオロンチェロ・ダ・スパッラでの演奏も市民権を得始めているようです。現代チェロのようにエンドピンで床と接しているわけでもなければ、バロック・チェロのように楽器を挟んだ両足を通して床へ振動が伝わるわけでもない、ある種の浮遊感さえ漂う不思議な音色の魅力は、ここ2,3年のあいだ日本でもさかんに続けられてきたスパッラ擁護派のライヴ活動によって、かなり広く知れ渡っているのではないでしょうか。そう、「スパッラ擁護派のライヴ活動」——この擁護派の最重要人物の一人が、オランダやベルギーで古楽を学び、2007 年から2009 年まではなんと他ならぬ日本に拠点を置いていた古楽器製作家=奏者、ドミトリー・バディアロフ氏だったのです!サンプル到着前からこうして前乗りでインフォメーションをお届けしているのは、彼がすでに、シギスヴァルト・クイケンや寺神戸亮といった偉大な古楽器奏者たちのライヴで使われているヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの製作者として、また彼自身の日本での旺盛なライヴ活動を通じ、明敏な古楽系バッハ・ファンの方々に広く名前をアピールしてきている現状をふまえてのこと——古楽器の音色を活かした自然派録音が魅力のRamee は、プロデューサー=録音技師ライナー・アルントがラ・プティット・バンドやリチェルカール・コンソートで演奏してきたバロック・ヴァイオリン奏者ですから、演奏者との深い協力関係のなかで、スパッラの味わいを周到に伝える録音が味わえるに違いありません。見逃せない注目盤です!

RICERCAR

MRIC297
(2CD)
(国内盤)
\3885
ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(1710〜84)
 1. 鍵盤のための協奏曲...4曲+断片楽章
  (ホ短調+/へ短調+/ヘ長調*/イ短調*/変ホ長調*)
 2.シンフォニア=交響曲...2曲(ニ短調+/ヘ長調*)
 3. 鍵盤ソナタ...2曲(イ長調/変ロ長調)
 4. 鍵盤のための小品...3曲
  (第8フーガ/二つのポロネーズ)
ギィ・パンソン(チェンバロ/フォルテピアノ)
+:リチェルカール・コンソート(古楽器使用/指揮:アドリアン・シャモロ)
*:イル・フォンダメント(古楽器使用/指揮:パウル・ドンブレヒト)
知っている人は知っている——弟の「次男」C.P.E.バッハさえ及びもつかぬほど、大バッハの悪名高き「長男」の作風はきわめて奇矯、おどろくほどの表現力!!古楽大国ベルギーの超・精鋭陣による絶品解釈で、その存在意義に驚く充実の2枚組!
「バッハの息子たち」が、圧倒的なまでの父親の存在感をよそに、群小と片付けるにはあまりに偉大すぎる強烈な個性を発揮していたことは、今更あらためて申すまでもないかもしれません——とくに次男のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714〜1788)にいたっては、フリードリヒ大王の宮廷やハンブルク生活のなかで綴られた傑作群を通じ、明らかに18 世紀屈指の巨匠だったことがもはや一般音楽ファンのレベルにまで浸透して久しいことと思います。あるいはモーツァルトが若い頃感化されまくった、洗練された古典派センスの持ち主、末っ子ヨハン・クリスティアン・バッハ(1735〜1781)…しかし、彼ら国際的な活躍をみせた弟たちをよそに、父親である大バッハの寵愛を兄弟中だれよりも強く受けたのが、長男であるヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(1710〜1784)だったのでした。
かの巨匠がわざわざ「ヴィルヘルム・フリーデマンのための音楽帳」なる鍵盤作品集を手ずから綴ったほど、幼い頃から英才教育を受けて育ったこの長男、兄弟中でも飛びぬけて才能豊かだったようで、オルガン演奏もチェンバロ演奏もひとかどの若者に成長していったのですが、しかし父親の溺愛がよくなかったのか、自分の天才を信ずるあまり世を軽んじて暮らし、オルガニストなり宮廷音楽家なりの職務はどれも長続きせず、最後は貧困の底で亡くなってしまいます。けれども、歴史というか時間の流れは全てを流し去ってしまうもの——現代に残されたのはただ、そうした彼の伝説と、くつがえしようのない音楽的価値を誇る貴重な作品の数々だけ!私たちはその作品のずばぬけた存在感ゆえ、ただただ作者の天才に恐れ入るほかないのです。
そんな体験をCD2枚にわたってじっくり味わえるのが、この古楽大国ベルギーきってのレーベルRicercar からの廃盤復活音源!アリス・ピエロ(vn)、鈴木秀美(vc)、エリック・マトート(cb)...と精鋭ぞろいのベルギー古楽陣、この国を代表する実力派古楽鍵盤奏者ギィ・パンソンが奏でるチェンバロと初期フォルテピアノで示されるのは、古典派時代にもかかわらずベルリオーズもかくや、というほど斬新な和声進行を聴かせる「18世紀の前衛音楽」ともいうべき鍵盤独奏曲や、魂を悲痛さで抉り取るような迫真の表現をいたるところに忍ばせた小編成交響曲(C.P.E.バッハも及ばぬほどの力強さ!)、痛快なスピーディさや心洗われる歌心で聴き手を惹きつけてやまない鍵盤協奏曲の数々...!まさに長男の面目躍如です。
名前だけご存知で作品は知らず...という方にも、ディープなフリーデマン・ファンにも、その作風の肝をストレートに浮かび上がらせたこれらの充実トラック群は「必聴」の一言です!
MRIC303
(国内盤・2枚組)
\4515
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 『フーガの技法』BWV1080
  ※第14 曲は未完版とフォクルール補筆版を併録
ベルナール・フォクルール(オルガン)
ようやく復活した金字塔的録音『バッハ:オルガン作品全集』が大人気継続中のさなか、やってくれました巨匠フォクルール!! 「バッハの楽器」オルガンで弾かれてこそ宿る風格。フォクルールだからこそ滲み出る自然さ...バッハ・ファン必聴の最新録音!
ベルナール・フォクルール——長年入手不可能だったバッハ・オルガン作品全曲録音が待望のカタログ復活を遂げ(当然のように『レコード芸術』特選を頂きました)、日本でも改めて熱狂的に受け入れられるようになった折も折、古楽大国ベルギーきっての、いや世界のオルガン界でも今や屈指の巨匠となりつつあるこの大物オルガニストが、これまでに録音したことのないバッハの超・大作を最新録音してくれたとは、なんと驚くべきことでしょう...! バッハ全曲録音を完成させたはずのフォクルールが「これまでに録音したことのないバッハの超・大作」?一見矛盾するようですが、まあ実態はごらんのとおりです——今回録音されたのは、使用楽器の指定がいっさいないために、もともとオルガン作品には分類されていないバッハ晩年の問題作『フーガの技法』! 複数のメロディラインを、同じ主題(主要なメロディ)をさまざまに展開させながら別々に同時進行させてゆく「フーガ」という作曲スタイルをバッハは何より得意としており、晩年にその技芸の集大成として作曲されたものの、最後の第14 曲を完成させぬままバッハが亡くなったため、未完成部分の謎とあいまって、バッハを愛する人たちを魅了しつづけてやまない大作です。楽譜を見ると、使用楽器の指定はなく、パート(声部)ごとに譜段がバラされている形になっているので、合奏曲として演奏する人もいれば、そもそも演奏を前提とせず、楽譜を目で追って愉しむ知的な作品だ、と考える人もいたり、それがどう「再現」されるべきなのかをめぐっても多くの意見が飛び交っているのですが(グスタフ・レオンハルトの博士論文で結論づけられているように、チェンバロで演奏されるのが最も正統的、という見方もひろく認められています)、18 世紀当時の演奏習慣を考えると、これがオルガンで演奏されるのにふさわしい楽譜であることもまた事実——なにしろバッハの音楽の精神的ルーツである17 世紀の音楽には、ドイツでもイタリアでもフランスでも、オルガン作品の楽譜を通常の3段譜(右手・左手・足鍵盤)で書かず、進行するメロディラインごとに譜段を1段ずつとって記譜していた作曲家が少なくなかったのですから! そんなわけで、オルガンによる『フーガの技法』録音も昔から珍しくはないものの(たとえば往年の巨匠ヘルムート・ヴァルヒャ)、近年ではフォクルールほどの超・大物による録音がなかったところですし、『フーガの技法』自体はピアノのP-L.エマールやアデールをはじめ、21 世紀に入ってからも別編成でさまざまな注目盤が出ており、ファンの興味をますます掻きたてている現状。同じRicercar から出ている上記のバッハ・オルガン作品全集(16 枚組)の人気とあいまって、話題にならないはずがない重要リリースといえるでしょう! 「全集」録音のときからドイツ語圏とその周辺のさまざまな歴史的オルガンをじっくり弾きこなしてきたフォクルールだけに、満を持してのこの録音でも楽器選択は正統・的確——バッハが育ったチューリンゲン地方の古い特徴を活かして復古的に建造された名工トマの楽器で、豊富な音色選択を的確に用い、パートごとの進行がごく自然に浮かび上がるようにした解釈は、たんに音楽知の追及に終わらない、音楽としての美に貫かれています。トラック選択により、未完部分をそのまま弾き止めるヴァージョンと、フォクルールによる補完版とが聴けるのも、これまた実に嬉しいところ!例によって解説はフォクルール自身が執筆(全訳添付)、末永くじっくりつきあえる、ファン必携の金字塔的録音です!

SAPHIR PRODUCTIONS

LVC1109
(国内盤)
\2940
ベートーヴェン(1770〜1827):
 1. 連作歌曲集『遥かなる恋人に寄す』op.98
ローベルト・シューマン(1810〜1856):
 2. 幻想曲 ハ長調 op.17
 3. 連作歌曲集『詩人の恋』op.48
ジル・ラゴン(テノール)
ジャン=ルイ・アグノエール(ピアノ)
楽聖ベートーヴェンの「傑作」のなかでも、なぜか新譜に恵まれない重要連作歌曲!と生誕200周年続行中、そろそろ世間の目も向いてきたシューマンの比類ない大傑作...を歌っているのはなんと!古楽から近現代まで何でもござれの異才、ジル・ラゴン!!「ジル・ラゴン!!」——Saphir レーベルの制作者二人とリリースシートを繰りながら話していたとき、シューマンとベートーヴェンの新譜で、有名曲ばかりで...というような側面から本盤を紹介してきた彼らの前で、担当は目に飛び込んできたこの歌手の名を小さく叫んでしまいました。ジル・ラゴン!18 世紀以前のフランス・オペラがウィリアム・クリスティやマルク・ミンコフスキらの一党によって続々再発見されていった20 世紀の最後の四半世紀、Erato やharmonia mundi france の重要なリリースでは実にしばしば、この芸達者な美声の持ち主の名にめぐり会ったものでした。古いフランスのレパートリーに特有なオートコントルという男声の高音域を艶やかに歌いこなし、そのままテノール音域でも色香あふれる繊細な歌を聴かせる異才で、近年ではフォン・オッターのオッフェンバック・アルバム(DGG)やケント・ナガノ指揮リヨン歌劇場のドビュッシー『ペレアスとメリザンド』(Erato)などにも登場、そのかたわら同じく侮りがたい個性を誇る古楽歌手ブリュノ・ボテルフと「ア・ドイ・テノーリ」なる異色ユニットを組んで本格古楽レパートリーを聴かせたり、およそ型にはまらぬ活躍を続けている彼が、よりによってドイツ・リート、それもこんな王道レパートリーを録音するとは! と、古楽目線・フランス好き目線で心底驚かされたリリースではあるのですが、その目線に立たずとも、一般のクラシック・ファンにとっても十分インパクトがあるのはやはり『遥かなる恋人に寄す』の収録! ベートーヴェンの代表作をあげてゆくとき、歌曲部門で必ず言及されるこの連作歌曲集、互いの収録曲の繋がり方といい歌詞の仕上げ方といい注目度満点の充実作なのに、どうしたものか新譜がめったに出ないのですから...広範をきわめる活躍で培われたジル・ラゴンの当意即妙の歌い口は、この曲の美質にあらためて気づかせてくれる聴きどころに事欠かないインテンスな解釈を織り上げてくれています。先日リリースされたストラヴィンスキー室内楽作品集でも大活躍してくれた俊才ピアニスト・アグノエールの立ち回りも自発性たっぷり——それどころか、両連作歌曲のあいだでシューマンの大作幻想曲もじっくり聴かせてくれる贅沢さ。そして「詩人の恋」——およそ全てのリート歌手が独自の思い入れを持っているに違いないこの大作連作曲集を、薫り高くも味わい深い解釈で聴かせるジル・ラゴンの才覚に、あらためて感じ入ること必至! 末永く聴き深めたい充実録音です。




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