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第59号お奨め国内盤新譜(1)


10/14までの紹介分


AEON


MAECD1102
(国内盤)
\2940
これが、いまのクラシック音楽の最前線か
 ブルーノ・マントヴァーニ(1974〜)
  ①2挺のヴィオラと管弦楽のための協奏曲(2008)
  ②タイム・ストレッチ(ジェズアルドによる)
   〜管弦楽のための(2005)
  ③フィナーレ〜管弦楽のための(2007)
タベア・ツィンマーマン、
アントワーヌ・タメスティ(ヴィオラ)
パスカル・ロフェ指揮
ベルギー王立リエージュpo.
 なんて豪華な、この顔ぶれ——
 今、もっとも聴くべきフランス最重要の作曲家マントヴァーニが最新協奏曲のために選んだ楽器は「ヴィオラ2挺」...その弾き手は、超・大御所ツィンマーマンと新世代の異才タメスティ、そしてベルギー随一の「古びぬ老舗楽団」。

 「現代音楽」といっても、作曲家のあり方はさまざま。一昔前までは憑かれたように「誰もやっていないこと」を追求しないと芸術家扱いされない、とばかり、斬新すぎて耳になじみにくい音楽もずいぶん世に出回りはしましたが、今では(こんな言い方が成り立つのかどうか、ですが)「ポスト前衛」の時代に入ってきています。20世紀末のネオ・ミニマルミュージック全盛の時代以降、作曲家たちは「親しみやすさ」の方へと戻ってきているように思います。エストニアのアルヴォ・ペルト、ポーランドのグレツキ、日本の吉松隆...といった名匠たちはまさにその代表格ですが、実はこうした動きが最も顕著なのが、少し前までスペクトル楽派の牙城だったフランスなのではないでしょうか。ニコラ・バクリ、ティアリー・エスケシュ、エリック・タンギーら、音盤シーンでもしばしば名前のあがる1960 年代生まれの名匠たちもそうした風潮を象徴するような名品を多々残していますが、今やその後続世代も続々、めきめき頭角をあらわしています。
 その筆頭で最も注目されているのは、どう考えてもこの人。昨年8月、35 歳の若さでパリ音楽院の主幹に就任した天才中の天才、ブルーノ・マントヴァーニ。
 21 世紀に入ってから、フランス政府の委嘱作品や現代オペラなど大規模な作品上演でも話題を呼び、栄誉あるシャルル・クロ音楽賞でも作曲賞を受賞するなど、着々と新たな王道を踏みつつあるこの人。そんな彼の近作群が、現代芸術に深く通暁したaeon レーベルから登場。その弾き手は驚くなかれ、ギドン・クレーメルの共演者、現代ヴィオラ界を背負って立つツィンマーマンと、すでにソロや室内楽でもおなじみ、明らかにフランス最前線をゆく異才中の異才、アントワーヌ・タメスティ(!!)。バルトークやベルクを思わせる優美さと迫力の相半ばする二重協奏曲は、協奏曲という形式で「新しく、かつ本当に美しい」響きを綴れる人間が現代シーンにも続々登場するのだ、ということをひしひし感じさせてくれます。
 冒頭の無伴奏部分のなんと切なく美しいこと、そして技巧的局面の艶やかさ、ざわめく管弦楽、明快な曲構造...かつてバシュメットがカンチェリの協奏曲を、アンネ・ゾフィー・ムターがペンデレツキの協奏曲を初演したように、俊才指揮者ロフェ率いる名門楽団の響きとともに、この面々による堂々の名録音は今後、ヴィオラを語るうえでも欠かせない存在になるのでは。
 ドビュッシーの管弦楽作法を21 世紀的に再解釈したような「フィナーレ」(随所でまさに「牧神」さながら)、楽器群の扱いが巧みな「タイム・ストレッチ」など他の収録作品も(少なくとも、ショスタコーヴィチの交響曲が聴ける耳なら)何度も聴き確かめたくなりそうな、管弦楽的仕掛けに満ちた充実作。じっくり向き合いたい1 枚!

ALPHA


Alpha182
(国内盤・訳詞付)
\2940
ブリセーニョ スペイン風ギターのための舞曲と歌さまざま
 〜17世紀パリで、スペイン人作曲家は...ルイス・デ・ブリセーニョ(1626年前後に活躍)

  ①ビラーノ「子爵殿の馬は」
  ②パサカーリェ「妻をちゃんと躾けておれば」
  ③クリスマスのハカラ「御降誕を祝いに」AN
  ④フランスのトノ「おお!恋は狂おし」
  ⑤トノ・ウマーノ「泣け、泣くがいい、わが両の目よ」
  ⑥エスパニョレータ*
 ⑦ロマンセ:
  ルイス氏が、彼のギターや歌を侮った者たちに歌った歌
 ⑧ビヤンシーコ「違う、おれは違うんだ」AN
 ⑨トノ・ウマーノ「ああ、なんとひどい」(フランシスコ・ベルヘス作曲)
 ⑩サラバンダ「さあサラバンダだ」*
 ⑪器楽4題*:パサカーイェ/ガイタス(作者不詳)/戦の踊り/カナリオ
 ⑫ビヤンシーコ
 ⑬スペインのエール「小舟はいま岸辺にあって」
 ⑭フォリア「山の乙女よ、あなたの目は」(バタイユ編)
 ⑮セギディーリャ「おしえてくれ、なぜ泣いているのか」
   *は器楽のみのトラック、ANは作者不詳
ヴァンサン・デュメストル(バロックギター)指揮
ル・ポエム・アルモニーク(古楽器使用)
クレール・ルフィリアトル(S)
イザベル・ドリュエ(Ms)
ミラ・グロデアヌ(ヴァイオリン)
リュカ・ペレ(バス・ガンバ)
トル=ハラルト・ヨンセン、
マッシモ・モスカルド、
ヴァンサン・デュメストル(バロックギター)
マリー・ブルニシアン(スペイン式バロックハープ)
トマ・ド・ピエルフュ(コントラバス)
ジョエル・グラール(各種打楽器)
 ル・ポエム・アルモニーク、自家薬籠中の「17世紀フランス」へ…と思いきや、今度はスペイン!
 エール・ド・クール全盛期、パリの人々を驚かせたスペイン風バロック・ギターと、情熱の歌。艶やかなバロック・ダンスのリズムで、最強メンバーが今回も「数段上手」な響きを息づかせます!

 古楽シーンがどの国よりも活況を呈している国フランスで、あの忘れがたいAlpha レーベルが1999 年にリリースした記念すべき第1 弾アルバム以来、このレーベルの看板グループであり続けているル・ポエム・アルモニーク。
 徹底した時代検証と、「いま」のリスナーの意識にも敏感な新感覚を融合させるセンス抜群の俊才集団。
 主宰者デュメストルと花形歌手ルフィリアトルやマルゾラティらをはじめとするこのグループの俊才たちは、17 世紀フランスの知られざる音楽領域を誰よりも早く、そして深く追求してきました。その結実が、3枚組BOX でも手に入るようになった『エール・ド・クール三部作』(Alpha905)でしょう。またそのいっぽうでフランス音楽にも影響をおよぼしたイタリア17 世紀の「歌いながら語る」初期バロック作品でも、出色の感性を示してきました。
 しかしこのたび、彼らは再び得意中の得意分野、17 世紀のフランスへと立ち戻ります。
 んん、フランス?だってその演目はスペイン人の作曲家のもの・・・。
 そう、ここに登場するルイス・デ・ブリセーニョなる作曲家こそは、当時まだ弦が5筋しかなかったギター(バロックギター)という楽器をフランスにもたらし、リュート伴奏の宮廷歌曲とはまったく違う、直情的な人間の情念を生々しく伝えるスペイン語の歌を、パリの人々の耳に届けていた異才だったのです。
 いわばソルやアルベニスやファリャと同じく、パリだからこそ異国情緒への憧れとともに花開きうる、そんなスペイン音楽というものを、ブリセーニョはすでに17世紀に開花させてみせていたのです。
 彼がパリに来たのは1620 年代、デュマの『三銃士』の舞台となったルイ13 世時代のことですが、その直前までフランス王は現スペイン領のナヴァルから来たアンリ4世...両国の文化的な垣根は意外に低かったのかもしれません。ともあれ肝心なことは、本盤ではデュメストル以下、撥弦楽器奏者は全員バロック・ギターをかき鳴らしまくり、つま弾きまくり、歌い手たちはいつもの繊細でまっすぐな古楽歌唱に独特の情念を込め、きわめてスタイリッシュに「スペインの光と影」を描き出してゆくということ。
 執拗な低音のくりかえしが聴き手の血をたぎらせる変奏曲も、静かに哀調かきたてる歌も、Alpha ならではの生々しい自然派録音で、微妙な空気の揺れまで鮮やかに。これはAlpha ファンならずとも必聴。


旧譜
ル・ポエム・アルモニークの代表作「エールドクール3部作」
Si tu veux apprendre les pas a danser...
Alpha 905
(輸入盤)
3CD\4390
「ダンスのステップを教わりたいなら
 ル・ポエム・アルモニークがおくるリュリ以前のフランス音楽の世界
   〜ゲドロン、ボエセー、ムリニエ〜
 ピエールゲドロン(1565頃〜1620頃)
 アントワーヌボエセー(1587〜1643)
 エティエンヌ・ムリニエ(1599〜1676)・・・他によるエールドクールとバレー

  (Alpha005「人間喜劇〜ムリニエ作品集」
   Alpha019「コンソートのコンセール  〜ゲドロン作品集」
  Alpha057「わたしは死ぬことなく死に絶える 〜ボエセー作品集」
  …以上3枚がそのまま封入されています)
ル・ポエム・アルモニーク
ヴァンサンデュメストル(ディレクション、リュート)
ル・ポエム・アルモニークの代表作「エールドクール3部作」が限定発売の廉価BOXとして登場!
リュリ以前の多彩なフランス音楽を、生々しい演奏で満喫できる特用アルバム。好評を博してきた3タイトルが限定BOXとなって登場!
多彩で異国情緒豊かなムリニエ、繊細さと猥雑さの併在が素晴らしいゲドロン、国際感覚とフランス固有の典雅さが入り混じるボエセー...どれか1枚を買い逃している方も、BOX欲しさにこちらを買い求めて損はさせない仕上がり。

ALPHA


Alpha181
(国内盤)
\2940
バッハ:さまざまな楽器による協奏曲 VI
〜ブランデンブルク協奏曲第1番、管弦楽組曲第4番...〜 《完結編》

 ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685〜1750):
  1) 管弦楽組曲 第4番 ニ長調 BWV1069
  2) チェンバロ協奏曲 イ長調 BWV1055
  3) ブランデンブルク協奏曲 第1番 ヘ長調 BWV1046
  4) 4台のチェンバロと弦楽合奏のための協奏曲 ニ短調 BWV1065
カフェ・ツィマーマン(古楽器使用)
パブロ・バレッティ(vn, ヴィオリーノ・ピッコロ)
エマニュエル・ラポルト、ヤス・モイシオ(ob)
ハンネス・ルクス(ナチュラルtp)
トーマス・ミュラー、ラウル・ディアス(ナチュラルhr)
セリーヌ・フリッシュ、ディルク・べルナー、
コンスタンス・ベルナー、アンナ・フォンターナ(cmb)
 Alpha レーベルで最も注目されているシリーズ、ついに堂々完結!
 ブランデンブルク協奏曲からついに収録された「第1番」では、スイスの多忙な仕事人トーマス・ミュラーと、英国でも大活躍の名匠R.ディアスがホルンを!打楽器入りの最大編成第4組曲、4台チェンバロ協奏曲まで…!

 Alpha レーベル、この秋最大の話題盤になるに違いない、全クラシック・ファンがAlpha レーベルへと否応なしに意識を向けざるを得なくなる、そんな新譜がついに登場いたします。
 すでに第5作まで登場し、リリースされるたびごとに予想を上回るオーダーをいただき、さらに発売されてから何年も経っているシリーズ既出巻さえ、毎年ちょっとした新譜リリースと同じくらいの売れ行きをみせている、そんな人気沸騰のカフェ・ツィマーマン『バッハ:さまざまな楽器による協奏曲』シリーズ最新刊!
 フランスを拠点にアルゼンチン、フランス、チェコ、ドイツなどさまざまな国の俊才たちが結集、少数精鋭(多くの作品はバッハ時代の習慣をふまえ、1パート1人ずつの極少編成で演奏)でみずみずしく、生々しく、しかし作品の深さをどこまでも掘り下げるような誠実さを忘れない、そんなスリリングな演奏解釈でバッハの傑作群を演奏してきたカフェ・ツィマーマンは、今年3月初旬には異才ドミニク・ヴィス(C-T)のバックバンドとして待望の初来日も果たしました。
 さてそのカフェ・ツィマーマンの「ブランデンブルク・チクルス」、毎回『ブランデンブルク協奏曲』から1曲ずつを収録してリリースしてきましたが、残るはこの曲集最大の編成が必要になる「第1 番」・・・。しかし2人のナチュラルホルンは一体誰が?・・・と思いクレジットを見ると——やってくれました!バーゼル出身の異才トーマス・ミュラーと、かつてHyperion のロイ・グッドマン&ハノーヴァー・バンドによるハイドン交響曲全集でも人並み外れた腕前を発揮していた異才ラウル・ディアスのペア。二人がこの曲のいたるところに出てくるファンファーレを鮮やかに決めてくれるのは今から楽しみ!
 またユーグ・デショーの離れ業自然派録音で、その響きが鮮明に蘇る職人的エンジニアリングにも期待できるでしょう。音響の点で期待、といえば、同じように全4 曲中の最大編成を誇る管弦楽組曲の「第4 番」(ティンパニ入り!)、名手セリーヌ・フリッシュのほかZig-Zag Territoires に名盤あまたのリ・インコニーティ(もとカフェ・ツィマーマン出身のアマンディーヌ・ベイエールが主宰するアンサンブル)で活躍するチェンバロ奏者アンナ・フォンターナらが微妙な音のこすれ合いを愉しませてくれることになる「4台のチェンバロと弦楽のための協奏曲」(原曲ヴィヴァルディの超・異色作品!)なども期待大。
 独奏チェンバロ協奏曲はBWV1055、つまりシリーズ第1 巻に復元版(楽譜は消失したものの、このチェンバロ協奏曲の原型となっていたとされるオーボエ・ダモーレ協奏曲版を復元したヴァージョン)が収録されている一編を入れ、印象的なアルペッジョ音型などチェンバロ版特有の響きの味わいを愉しめます。
 音楽学者ジル・カンタグレルによる充実解説(全訳付)も「正面勝負!」ではなく、ツボを押さえたフランス人らしい語り進め方が魅力的。
 Digipack ジャケットの美麗さも含め、ひとつのオブジェとしての存在感はAlpha ならでは。見逃せないシリーズ完結作です!

Alpha811
(国内盤・6枚組)
\6300

直接メールで
お問い合わせください
上記シリーズの全集セット、初回完全限定盤
 バッハ: ブランデンブルク協奏曲(全)、管弦楽組曲(全)、その他協奏曲さまざま
  〜『さまざまな楽器による協奏曲』

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 【CD I】
  チェンバロ協奏曲ニ短調BWV1052/
  オーボエ・ダモーレ協奏曲イ長調BWV1055a/
  ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調BWV1042/
  ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調BWV1050
 【CD II】
  ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調BWV1048/
  2挺のヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV1043/
  序曲(管弦楽組曲)第1番ヘ長調BWV1066/
  オーボエとヴァイオリンのための協奏曲ハ短調BWV1060a
 【CD III】
  ブランデンブルク協奏曲第4番ト長調BWV1049/
  オーボエ協奏曲ニ長調BWV1053a/
  3台のチェンバロと弦楽合奏のための協奏曲ハ長調BWV1064/
  序曲(管弦楽組曲)第2番ロ短調BWV1067
 【CD IV】
  ヴァイオリン協奏曲イ短調BWV1041/
  2台のチェンバロと弦楽合奏のための協奏曲ハ長調BWV1061/
  三重協奏曲イ短調BWV1044/
  ブランデンブルク協奏曲第2番ヘ長調BWV1047
 【CD V】
  序曲(管弦楽組曲)第3番BWV1068/
  チェンバロ協奏曲ヘ短調BWV1056/
  ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調BWV1051/
  3台のチェンバロと弦楽合奏のための協奏曲ニ短調BWV1063
 【CD VI】
  序曲(管弦楽組曲)第4番BWV1069/
  チェンバロ協奏曲イ長調BWV1055/
  ブランデンブルク協奏曲第1番ヘ長調BWV1046/
  4台のチェンバロと弦楽合奏のための協奏曲ニ短調BWV1065
カフェ・ツィマーマン(古楽器使用)
【独奏】パブロ・バレッティ、アマンディー
ヌ・ベイエール、
ダヴィド・プランティエ(vn)
ディアナ・バローニ(ft)
ミヒャエル・フォルム(bfl)
パトリック・ボジロー、
アントワーヌ・トリュンチュク(ob)
ハンネス・ルクス(tp)
トーマス・ミュラー、
ラウル・ディアス(hr)
セリーヌ・フリッシュ、
ディルク・べルナー、
アンナ・フォンターナ(cmb)他
 うーん・・・分売で買い揃えてきたのにここへ来てこの仕打ちか!・・・しかし、まあこれから聴こうという方にはちょうどよい。
 カフェ・ツィマーマンの協奏曲録音シリーズ、一気の6枚組セット。初回完全限定、しかも・・・安い。
 まるでヨーロッパの田舎町のピクニックで披露されたような、繊細でほのかで、なんとも機微に満ちた演奏。バッハのコンチェルトがここまで優雅に、しかも刺激的に演奏されたことがあったろうか。
 これまで1枚も聴いてなかった方は、このセットに出会えて幸せ。
 初回オーダーのみの生産になるので、9/12以降にこの告知をご覧になられた方は、アリアCDに直接お問い合わせください。
 シリーズ全巻のBOX ヴァージョンも登場!
 お求めやすい価格で6巻全部、すべて日本語解説付にてリリースいたします。
 完全限定盤のため、すべてのご注文をお受けできない可能性がありますので、何卒ご考慮ください。こちらでも気をつけておきます。

 さて——この素晴らしいシリーズ完結を記念して、Alpha レーベルが憎い限定商品をつくってまいりました。カフェ・ツィマーマンの『バッハ:さまざまな楽器による協奏曲集』シリーズ全巻を、ひとつのBOX に収めた期間限定6枚組仕様。なくなりしだい市場から消滅いたします。もちろんCD6枚すべての日本語解説付(商品本体に増えた要素は、これまで収録されていなかった解説のドイツ語訳と上記写真の美麗アウターケースのみ)、6枚分でこの価格ですが、制作元では「最初のオーダーのみ対応、もちろん初回プレス分が切れしだい終了」とうたっていますので、どうかその点をよくお含みいただければ幸いです。ちなみにこのシリーズ名「さまざまな楽器による協奏曲集」というのは、実は6曲からなる『ブランデンブルク協奏曲集 Concerts avec plusieurs instruments』の楽譜の浄書譜に記されていたフランス語タイトル——当時のドイツ貴族たちのあいだではフランス語がお洒落な言葉だったので、バッハもそれに倣ってフランス語でこう表題を書いています。カフェ・ツィマーマンはこの協奏曲集からCD1枚ごと1曲ずつを選び、そのほか3曲ずつを加えてこのシリーズを制作してきた次第。畢竟、このBOX には『ブランデンブルク協奏曲』全曲が揃っているだけでなく、いつしか『管弦楽組曲』全4曲も収録されてしまいました。他にも複数チェンバロを使う協奏曲もひとわたり、BWV1055 にいたっては「チェンバロ協奏曲版」と「復元オーボエ・ダモーレ版」の双方を聴き比べられる嬉しさ。いわずもがな演奏は極上、全点分の日本語解説含め、BOX として非常に価値が高いことは疑い得ません!

ARCO DIVA


UP0106
(国内盤)
\2940
極上のクラリネット室内楽アルバム
 チェコのクラリネット、チェコのピアノ 〜20世紀中欧芸術の面白さ〜

 ①ヨセフ・パーレニーチェク(1914〜1991):
  小さなパルティータ 〜クラリネットとピアノのための
 ②ボフスラフ・マルティヌー(1890〜1959):
  クラリネットとピアノのためのソナチネ
 ③ミロスラフ・イシュトヴァーン(1928〜1990):
  クラリネットとピアノのためのソナタ
 ④カレル・フサ(1921〜):
  三つの習作 〜無伴奏クラリネットのための
 ⑤ヴィクトール・カラビス(1923〜2006):
  クラリネットとピアノのための組曲
イルヴィン・ヴェニシュ(クラリネット)
マルティン・カシーク(ピアノ)
 ヨーロッパ随一のプレイヤーによる「クラリネット+ピアノ」は、たいていハズレなし、を実感する、古都プラハ発・しっとり大人の室内楽。
 激情にうったえないのにしなやかに変幻自在、俊才ヴェニシュと名手カシークによる、メロウでスリリングな対話劇。

 木管ソロとピアノからなる二重奏での室内楽アルバムが出てくるとき、ただの管楽器の妙義お披露目に終わらない確率が一番少なく、管楽器関係者受けにとどまらないセンス抜群の1枚に仕上がっている確率が一番高いのが、クラリネット関係なのではないでしょうか。
 ソナタにも恵まれているし(ブラームス、ウェーバー、メンデルスゾーン、20 世紀にはバーンスタインやアーノルドや…)、国を問わず名品多数、20 世紀以降のレパートリーも充実しているうえ、そもそもクラリネットという楽器が土くさい民俗調から端正な形式美、軽快な超絶技巧から麗しい歌心、諧謔的な表情づけから真摯な深み...と、およそ表現の幅がきわめて広いおかげでもあるのかもしれません。
 そんなレパートリーの選択の幅を生かして、演奏家もできる人ほど工夫のある人が多いような...そうしたことが逐一あてはまるのが、クラシックの伝統にかけてはヨーロッパ随一の国、チェコから届いたこのアルバム。
 演奏者はふたりともチェコ人で、皆様に多少なりともなじみがあるとすれば、ピアニストの方かもしれません——Arco Diva レーベルでソロと室内楽の名盤を続出している俊才ピアニスト、マルティン・カシークが今回タッグを組んだのは、ブルノ音楽院とプラハ音大でチェコ東西の伝統の粋をたたき込まれたのち、パリ音楽院で名教師カペザリの門下に学んだという多面的な新世代奏者、イルヴィン・ヴェニシュ!
 すでに現代作曲家たちの信望もあつく、チェコのみならず世界的に活躍を始めているこの逸材、今回のアルバムでは全面的にチェコ20 世紀に照準を絞っています。そう「20 世紀」——現代ではなく。ラヴェルやプロコフィエフを生んだこの世紀の音楽が、ごく一部の(そしてなぜか非常にめだつ)前衛系の作曲家たちの作品を除き、意外なくらいロマン主義・近代音楽的な親しみやすさにあふれた名品ばかりだったことが、こういう定点観測的なプログラム(登場する作曲家はすべてチェコ人)ではいっそうよくわかると思います。
 ドビュッシーらフランス近代の影響も大きいマルティヌーやパーレニーチェク、アメリカに渡った亡命世代の代表格ともいえる巨匠フサ、自らクラリネット奏者だったカラビス、そしてチェコ東部の中心都市ブルノに生まれ、ヤナーチェク同様に地元の民俗音楽のエッセンスをふかく追及したイシュトヴァーン...5者それぞれの個性はさまざまながら、演目に共通しているのは「親しみやすさ」と「深い味わい」。耳を聾する前衛性をてらったものはなく、ああターリヒやクーベリックを育んだ国と時代よ...と嬉しくなるくらい。
 センス抜群、変幻自在のブロウを聴かせるクラリネットに、明らかに伴奏というよりほとんど主役を奪わんばかりのピアノの存在感...大人の室内楽、本場の確かさ。そんなフレーズもおのずと思い浮かぶ、極上のクラリネット室内楽アルバムなのです。両奏者の機微をとらえた録音も自然で好感度大!

ARS MUSICI


AMCD232-297
(国内盤)
\2940
リストと、後期ロマン派の超絶技巧ピアノ
〜リスト、タウジヒ、ラフマニノフ〜

 フランツ・リスト(1811〜1886):
  ①スペイン狂詩曲S.254〜「スペインのフォリア」と「アラゴンのホタ」による
 セルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943):
  ②ピアノ・ソナタ第2番 ロ短調 op.36(1931年版)
 カール・タウジヒ(1841〜1871)編曲:
  ③ヴェーバー「舞踏へのお誘い op.65/J,260」
  ④J.シュトラウス2世「ワルツ:どうか生き返って」
 フランツ・リスト:
  ⑤ウィーンの夜会〜シューベルト作品によるワルツ・カプリースS.427-6
  ⑥超絶技巧練習曲 第10番 S.139-10
イーゴリ・カメンツ(ピアノ)
 指揮者でもあり、ヴァイオリンも弾く。ピアニストとして征したコンクールは、数知れず——20世紀末に輝かしくもユニークなキャリアを駆け上ったドイツのロシア人カメンツは、こんなに忘れがたい録音を残していた!

 Ars Musiciでの傑作録音、堂々国内リリース。まだインターネットなどなく、LP レコードの全盛期からCD がメジャーになってきた頃——1980 年代後半、日本人ピアニストたちの活躍を介して「世界のピアノ・コンクール」というものに興味を持たれた方は少なくないと思われますが、そんな「昭和末期」頃のコンクール世界でいたるところに名前が出、あまつさえ国際的に有名なコンクールでいくつも優勝を続けてきた異能のピアニストが2人います。どちらもまだ「鉄のカーテン」の向こうにあった国、ロシアの出身者。
 ひとりは日本でも非常に有名な異才、スタニスラフ・ブーニン——そしてもうひとりが本盤の主人公、イーゴリ・カメンツ。
 なにしろこのピアニスト、1978年(まだ10 歳の頃!)にハンブルク・スタインウェイ・コンクールで優勝して以来、イタリアのセニガリア国際で2度、さらにシンシナティ、エンナ、ヴィオッティ...と17もの世界的コンクールで優勝しただけでなく、超難関として知られるブゾーニ国際で2度、ポルトガルのヴィアンナ・ダ・モッタやポルト国際などのコンクール、ブダペストのリスト国際コンクールなどで延べ15もの2位入賞も果たしているという破格のコンサート荒らしだったのです。その後レコード会社との契約などせず、ドイツを拠点に着実にキャリアを築いてきた、いわば「現場肌」の大物なのですが、やはりドイツでの評判はきわめて高かったようで、折々の重要なアーティストを見抜くセンスのあるArs Musici レーベルもさっそく 1998 年、このような充実アルバムを録音しているのでした。
 同レーベルの経営体制変更後、こうして国内仕様でお送りできるようになった本盤は、Ars Musici ならではの周到なプログラムが注目どころ。
 本年生誕200 周年を迎えるフランツ・リストの作品を軸にして、リストも非常に高く評価していたという才能豊かな門弟タウジヒ(!)と、世界の音楽シーンにおける存在感の強さと演奏技量で事実上リストの衣鉢を継いだにも等しいピアニスト作曲家ラフマニノフ、このふたりの「桁外れの技巧派」たちの作品をカップリングしてみせ、ロマン派音楽と超絶技巧というものがいかに分かちがたく結びついていたかを強く印象づける、そんなプログラムになっているのです!
 凡百のピアノ・アルバムと違うのは、そうしたプログラムの周到さのみならず、コンクール参加期以降も生まず弛まず磨かれ続けてきた、その研ぎ澄まされた技巧的ピアニズムの妙...冒頭のスペイン狂詩曲の颯爽と軽やかな弾き終わりは「リスト自身もそうだったのでは」と思わされるくらい軽やかで小憎らしく、ラフマニノフは激烈・熾烈なフォルティシモの瞬間でさえ声部間の分離が神がかり的に明瞭、曲全体を見据えた展開のうまさは何度でも聴き確かめたくなるほど!他にもタウジヒ版シュトラウス・ワルツや「舞踏へのお誘い」に聴くサロン的洒脱さ満載の超絶技巧(これは本当に指が回って音楽性もないと無理ですよね…)、そして最後は王道に戻ってリスト「超絶技巧」第10 番の息をのむような超絶技巧の応酬、嵐とドラマ、磨き抜かれた艶やかすぎるピアニズム...圧巻のクオリティと「発見」の喜びが相半ばするそのアルバム内容は、埋もれさせておくのがもったいない充実度なのです。
 レビュー高得点も期待できる、充実のリスト盤!

CONCERTO


CNT2044
(国内盤・訳詞付)
\2940
バッサーニ:オラトリオ『神の慈悲を告げる喇叭らっぱ』
 〜コレッリの師匠と呼ばれた男、1676年フェラーラ〜
  ジョヴァンニ・バッティスタ・バッサーニ(1647〜1716)

 1) トリオ・ソナタ 作品5−8
 2) オルガン独奏のためのトッカータ
 3) オラトリオ『神の慈悲を告げる喇叭』(全曲)
Ens.スティルモデールノ(古楽器使用)、
マニフィカート声楽アンサンブル
アンア・ベッシ(Ms)
エレナ・カルツァニーガ(A)
パオロ・ボルゴノーヴォ(T)
ジャンルーカ・ブラット(Bs)
ジョルジオ・トージ、ミコル・ヴィターリ(vn)
カルロ・チェンテメーリ(org)他
 並ぶものなきバロック・ヴァイオリン最大の巨匠コレッリ...の「師匠」・・・も、やはりすごかった!
 艶やかなオラトリオもさることながら、序曲的ソナタではコレッリの先駆けをみせる手腕の確かさ。録音・演奏とも迫真のライヴ感&端正な仕上がり。

 バッハもヴィヴァルディもヘンデルも、バロック室内楽といえば「トリオ・ソナタ」の形式が非常に大切。そしてこの作曲形式を完成の域へと導いたとされているのが、ヴァイオリンの名手でもあったローマの巨匠アルカンジェロ・コレッリ(1653〜1713)。しかしコレッリは「トリオ・ソナタの祖」のように言われるばかりで、このコレッリがいったい誰に教わったのか?ということはあまり話題になりません。
 しかし当然のことながら「師」というのは偉大なもの。
 ルネサンスの大画家ラファエロの師にペルジーノという名匠がいたように、あるいはベートーヴェンにハイドンが、ランボーにヴェルレーヌが、ブレンデルにフィッシャーが、宮下あきらに本宮ひろ志がいたように(いえいえ・・・)、「巨匠の偉大な師」の存在はしばしば見過ごせないもの。しかもその師匠の作風を探ってゆくと、巨匠の偉大な仕事と思われていたことが、そのかなりの部分を「師」に負っていたことに気づかされたりするから、面白さは尽きません。
 そう——コレッリの場合も然り。
 その作風にはローマに落ち着く前、まだ北イタリアのボローニャやフェラーラで研鑽を積んでいた頃に出会ってきた17 世紀中旬の偉人たちの影響が、探れば探るほど色濃くあらわれているのも事実なのです。
 そして今ここにヴェールの脱ぐのは、多くの伝記で「コレッリの師!」と名のあがるパドヴァ生まれの偉人、バッサーニの傑作オラトリオ...!
 イタリアの音楽史上に眠っていた「聴くべき音」を見つけてくる、その絶妙なセンスが嬉しいミラノCocnerto レーベルからの、待望の充実古楽器録音。
 オラトリオ『神の慈悲を告げる喇叭』は1676 年フェラーラ初演、6年後にはボローニャで再演された充実作で、キリスト教的な道徳観を説く歌詞(和訳付)を、イタリア・バロックならではの美質に満ちたメロディ(こういうところがコレッリに受け継がれていったのですね!)を誇るアリア、演奏効果抜群の合唱、多面的な表情をみせる通奏低音、独自性の高い弦...といった演奏編成でダイナミズム豊かに聴かせてくれる逸品!
 イタリア古楽界の先端を担う名手たちの繰り広げるヴィヴィッドな演奏が、直接音の味わいを最大限に生かしながらも、教会堂ならではの温もりある残響でじわりと聴かせてくれる、Concerto 特有の生々しいエンジニアリングでリアリティ豊かに蘇ります(リアリティあふれる音響も、器楽勢にまで浸透した弾き手たちの妙なる歌心も、今にも切れそうな繊細なカンティレーナを紡ぐガット弦も...まるで17世紀当時のイタリアにいたらこうだろうな、とさえ錯覚させる臨場感!)。
 同じく注目すべきは、序曲として挿入されている「コレッリ以前の」トリオ・ソナタ(!)と、リアルな教会堂らしい雰囲気を一層盛り上げてくれる短いオルガン独奏曲。コレッリ風の美しいメロディ・和声感覚は、こんな昔にその雛形があったのですね...ついつい聴きとおしてしまう、充実の逸品です。

COO RECORDS


COO-023
(国内盤)
\2940
アーレントのある教会
 〜山の向こうのオルガン、海の向こうのオルガン
  イタリア様式とヨーロッパ〜

 ベルナルド・パスクィーニ(1637〜1710):
  ①パッサカリア 変ロ長調
 ドメニコ・スカルラッティ(1685〜1757):
  ②三つのソナタ K61・K92・K328
 ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1750):
  ③プレリュードとアレグロ ト短調
  ④協奏曲op.4-5
 ヘンリー・パーセル(1659〜1695):
  ⑤音階によるグラウンド ⑥ヴォランタリー ト長調
  ⑦二段鍵盤オルガンのためのヴォランタリー
 ディートリヒ・ブクステフーデ(1637〜1707):
  ⑧カンツォーナBuxWV173 ⑨いざ来ませ、異邦人の救い主よBuxWV211
  ⑩パッサカリア ニ短調BuxWV161
 ジュゼッペ・サンマルティーニ(1700〜1750):⑪ソナタ ト長調
 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
  ⑫ファンタジアBWV562 ⑬いざ来ませ、異邦人の救い主よBWV659
  ⑭主イエス・キリスト、われらを顧みたまえBWV655
  ⑮ファンタジアとフーガ ハ短調 BWV537
  ⑯最愛のイエスよ、われらここに集いてBWV731
ロレンツォ・ギエルミ(オルガン/J.アーレント1986年建造)
 イル・ジャルディーノ・アルモニコから、世界的ソリスト&指揮者へ、そしてバーゼルの教授へロレンツォ・ギエルミの長く静かな躍進を止めるものは、誰もいない。
 日本最初のアーレントの銘器で縦横無尽、その美質とバロックの魅力をじっくり伝えます。

 ロレンツォ・ギエルミ——古楽器演奏を長年追ってこられた方は、この人の息長くも充実した活躍ぶりに、どこかで感嘆を禁じ得なかった瞬間があるのではないでしょうか。
 まだイタリアの古楽界が手さぐり状態だった頃から活躍をはじめ、この国唯一の古楽録音機関がNuova Era レーベルだった頃に録音をはじめ、創設間もない頃のイル・ジャルディーノ・アルモニコで通奏低音奏者として活躍、ミラノのサン・シンプリチアーノ・バシリカ大聖堂で正規奏者をつとめながら、今や世界随一の古楽養成機関バーゼル・スコラ・カントルムでオルガン科の主幹となり、さらにドイツのトロッシンゲンやリューベックでも教鞭をとるだけでなく、世界各地でマスタークラスを開催しつづけている...飽くなき超・仕事人にして、もはやイタリア最大の巨匠オルガニストのひとりと言えるまでの存在になりました。
 そんなギエルミ氏が日本でひいきにしているオルガンがあります——東久留米市にある「聖グレゴリオの家」の礼拝堂に設置されているその銘器は、ドイツ各地に点在するバッハ時代前後の歴史的銘器を「バロック期当時の状態」に復元しつづけてきた現代の名工アーレントが、あのカザルスホールの銘器よりも前に、日本で最初に建造したオルガンにほかなりません。
 滋味ある響きと明瞭な音の分離が稀有の共存をみせるこの銘器で、これを最初に弾いた人物でもあるというギエルミ氏が、楽器本来の素晴らしさをくまなく堪能させてくれるヴァラエティ豊かな演奏世界を堪能できるのがこの最新録音。
 本人はあくまで「オルガンのスペックを最大限に引き出す選曲を」とは言いながら、隠れたテーマとしておのずから浮かび上がってくるのは「イタリア様式の存在感」。英国人パーセルも、ドイツ北方の伝統の担い手ブクステフーデも、そしていわずもがなヘンデルやバッハも、バロック期の作曲家たちはみなイタリア音楽のセンスの良さに憧れつづけた。このアルバムを聴いていると、あらためてその音楽様式の魅力がひしひしと伝わってきます。
 初版刊行時に楽譜出版社が完全独奏版も用意していたというヘンデルの協奏曲「作品4」に聴く偉容と繊細のコントラスト(バッハのイタリア協奏曲のよう)、スカルラッティのソナタをオルガンで弾いたときの絶妙な敏捷性とテンポ感(痛快)、ブクステフーデやバッハの深みをしみじみ実感させてくれる緩徐楽節の妙。聴きどころ満載の1枚に仕上がっております!

CYPRES


MCYP7605
(国内盤)
\2940
ビアラン:管弦楽のための3 傑作
 〜ベルギー近代の知られざる名匠、再び〜
アドルフ・ビアラン(1871〜1916)
 ①英雄的詩曲(1907/11)〜管弦楽のための
 ②ワロン狂詩曲(1910)〜ピアノと管弦楽のための
 ③東洋の物語(1909)〜管弦楽のための
ピエール・バルトロメー指揮
(ベルギー王立)リエージュ・フィル
ディアーヌ・アンデルセン(ピアノ)
 英国、フランス、ドイツ、ロシア...1900年前後の「ベルギー近代音楽の素晴らしさ」はたんに周辺大国の音楽史に埋もれていただけだった。
 真にじっくり愉しめる音楽鑑賞の糧はベルギー近代に。
 巨匠バルトロメーのあざやかな指揮が、そのことをじっくり教えてくれます。

 クラシックの歴史のなかで、「過去の遺産」がしっかり蓄積され、その一方で「新しさへの渇望」もまだまだ健在だった19 世紀末から第一次大戦前までの頃というのは、おそらく最も実り豊かな時代だったのではないでしょうか。だからどの国でも本当にレヴェルの高い音楽が作曲されていたのですが、歴史は弱肉強食なもの、「過去の遺産」となるとどうしても、大国として注目を集める国のものばかり目立つようです。
 ドイツのR.シュトラウス、フランスのドビュッシーやラヴェル、英国のエルガーやヴォーン・ウィリアムズ、ロシアのリムスキー=コルサコフやプロコフィエフ、あるいは後年アメリカに移住したバルトークやラフマニノフやマルティヌー...と、この時代の音楽は今「大国の音楽史」としてしか記憶されていないように思われます。・・・しかし、そうした「声の大きい」国々の影で静々と、周辺諸国の音楽のいちばんおいしいところを絶妙のセンスで抽出しながら、熾烈な競争社会がくりひろげられていたのが、英・仏・独・蘭という大国・強国に囲まれた芸術国家ベルギーの楽壇だったのです。
 辛うじて有名なところではヴァイオリニストでもあったイザイ、そして昨今急速に復権が進んだジョンゲン(1873〜1953)が知られていますが、彼らが突然変異だったわけでも何でもなく、ベルギーの近代音楽界そのものが実力派作曲家たちの宝庫だったのです。
 ベルギーの芸術シーンは昔から、現状に甘んじずよいものを追求する探究心に桁外れのものがあり、20 世紀中はそれが結果的に「さらなる前衛音楽へ!」というような楽壇の傾向を生み、刺激的で注目すべき現代音楽を求めてしまったため、晩期ロマン派〜近代初期のすぐれた作曲家たちを「19 世紀の雰囲気に甘んじた旧人類」として意図的に退けてしまいました。
 ・・・しかし、そう——「現状に甘んじず、よいものを」と探究を怠らないベルギー人作曲家たちは、逆に1900 年前後にはどこよりも早くフランスの印象主義やロシアの民俗音楽作法、ドイツのポスト=ワーグナー近代語法などを導入、それらを絶妙のセンスで融合させ、またとない美しさと充実した深みを併せ持つ音楽世界を展開していたのです。
 このビアラン曲集も、日本語訳付で国内盤リリースがなされるに足る、もっと聴かれるべき名盤。
 ビアランは20 世紀前半までフランス語圏ベルギー屈指の大都会だったシャルルロワで活躍、フランス近代音楽の息吹を間近で感じながら、ドイツ国境からも遠くないこの地で独墺系ロマン派の伝統も身につけ、指揮者として王立モネ劇場のオーケストラとも仕事を続けたのですが、第一次大戦の動乱であえなく早世した不遇な天才。
 色彩感ある管弦楽作法や地元の民謡を生かしたダイナミックな曲作りは、確かにフランス流儀ともロシア流儀ともとれますし、それでいて堅固な曲構成にはブラームスやR.シュトラウスらのドイツ的感性も感じられます。
 ビアランの復権に意欲を燃やし、すでにビアラン室内楽選が日本でも実績をあげているアンデルセン女史を協奏曲ゲストに、フランス語圏ベルギー屈指の名門リエージュ・フィルを振っているのは、この楽団を世界に通用する一流へと育んだピエール・バルトロメー!! 巨匠自ら指揮に乗り出した情熱が、絶美の管弦楽語法を艶やかに際立たせます。
 嬉しい発見、またしても!


CYPRES アドルフ・ビアラン の旧譜

MCYP4611
(国内盤)
\2940
アドルフ・ビアラン(1871〜1916):
 1. ピアノ五重奏曲 ロ短調(1913)
 2. ピアノとチェロのためのソナタ 嬰へ短調(1915)
ディアーヌ・アンデルセン(P)
マルク・ドロビンスキー(Vc)、
ダネル四重奏団
 フランス語圏ベルギーの近代作曲家は、ルクーにイザイ、それにジョンゲンがいる程度では終わらなかった! アンサンブル・ジョゼフ・ジョンゲンの主宰者であり、21世紀のジョンゲン復権に邁進しているピアニスト、ディアーヌ・アンデルセン女史が、ジョンゲンの傍ら再評価に尽力しているのが、このアルバムで紹介されている名匠ビアラン—いや、知れば知るほど「そりゃ復権したくなるわ!」と納得してしまう逸材だ。
 第一次大戦の犠牲となって1916年に亡くなったというこのビアラン、大雑把にいえば、フランク派とワーグナーに強く感化されたフランス語圏の作曲家たちの潮流にくみする一人なのだろうが、その音楽たるやかなり個性的——ひとくちにどういった個性、と表現するのは難しいけれど、本盤のトラックはどれも古典的な形式のわりにきわめて強烈な求心力、しなやかに伸縮する表現の妙に満ちて聴く者の耳をとらえて離さない!
 ピアノ五重奏曲など、たった5人で弾いているのにしばしば交響曲かと錯覚するくらい、壮大さと多彩さにあふれている。対するソナタは「ピアノとチェロのための」とベートーヴェン流の順列で題がついているが、チェロへの要求度はおそろしく高く、まさに強烈な表現力で迫るその音楽の素晴らしさを、名手ドロビンスキーは壮絶なテクニック・鮮やかな歌心で十二分に表現してみせる。ブリテンやショスタコーヴィチのソナタに勝るとも劣らない長大な傑作。
 フランスものやドイツもの、英国ものなどに負けない「ベルギー近代音楽」の素晴らしさを強くアピールする名盤。

FUGA LIBERA


MFUG587
(国内盤)
\2940
フランクのソナタ、イザイの小品
 〜ベルギー世紀末、チェロとピアノのための室内楽〜
セザール・フランク(1822〜1890):
 1) チェロとピアノのためのソナタ イ長調(1886)
ウジェーヌ・イザイ(1858〜1931):
 2) 子守唄 作品20(チェロとピアノによる)
 3) 悲しい詩 作品12(チェロとピアノによる)
アレクサンドル・クニャーゼフ(チェロ)
プラメナ・マンゴヴァ(ピアノ)
 こ、この豪華すぎる顔合わせで、この近代屈指の隠れ名作が味わえるとは——
 あのフランク特有の浮遊感と堅固な曲構造を、クニャーゼフ抜群のチェロがしなやかに綴ってゆく。そのパートナーは、あのとてつもない技量を秘めた異能の人マンゴヴァ。

 世紀末情緒、絶美...ベルギーものを、もう1 枚。
 ベルギー人演奏家ではないものの、演奏家ふたり(そして作曲家も)のビッグネームぶりにまず驚かされます。
 昨今はフランスSaphir レーベルからもしばしば登場していた、ロシアの巨星、アレクサンドル・クニャーゼフ。
 そしてピアノを弾いているのが、フォル・ジュルネで静々と存在感を強めてきた桁外れの異才、ブルガリアのプラメナ・マンゴヴァ。
 二人とも飛びぬけて個性的かつ存在感ある音楽性を誇るヴィルトゥオーゾで、なるほどこの顔合わせでの録音は確かにアリだろう、と思いつつ待っておりましたが、結論としては、まさに読みどおりの仕上がり。
 ベルギー近代楽壇の面白さについては、前述のビアラン盤のところでひとわたり書きました。そうした1900年前後のベルギー楽壇の盛り上がりの下地をつくったのは、おそらく同じフランス語圏(当時ベルギーはほぼ全面的に「公式言語はフランス語」のムードでした)の大国フランスの楽壇で強い存在感を放ち、ベルギー人芸術家ここにあり、と全世界に知らしめた二人の音楽家の存在が大きかったに違いありません。
 パリ音楽院と双璧をなすフランス近代作曲界の牙城、スコラ・カントルム音楽院の教授たちの精神的指導者になったセザール・フランクと、フランコ=ベルギー派のヴァイオリン演奏の伝統を支えた生粋のヴァイオリン芸術家ウジェーヌ・イザイ...とくにフランクは、ドイツ的なソナタ形式に新境地をもたらした、すべての楽章に同じ主題を使う「循環ソナタ形式」の確立者として音楽史上に名を残していて、その最初の作例として有名なのが、本盤でも演奏されているイ長調ソナタ。
 この曲は1886 年、若い友人イザイの結婚を祝して送られたヴァイオリン・ソナタとして有名ではありますが、実はチェロ版というのが存在しているということも比較的知られていると思います。どうやらフランクは当初、このソナタをチェロのための作品にしようと思っていたところ、やおらイザイの結婚話が飛び込んできたため予定を変更したのだとか。
 チェロ版で聴いてみると、そのしなやかな節回しは野太くも優しいチェロの音色にもぴったり。高音域での涙を誘う旋律美もまたチェロならではの味わい。それを緩急自在に濃密な演奏で織り上げてみせるのが、あの異色のバッハ無伴奏で深い深い音楽世界を描き出したクニャーゼフ。そしてそこへからむ(否、対峙する)ピアノが、室内楽でも一切自らの個性を見失わないマンゴヴァ。本当に贅沢な音楽空間がここでは約束されているのです。
 さらに嬉しいのは、無伴奏ソナタ以外ほとんど聴く機会のないイザイ作曲の小品がふたつも収録されていること。いずれもヴァイオリン作品からの編曲でありながら、やはり繊細さと色濃い情感とが相半ばする響きは、弦の音色が低音に移ってみても絶妙の味わいを宿しています。
 欧州シーン最先端の「極上の室内楽」のあり方を凝縮した、さりげなく強力な1 枚。

MFUG581
(国内盤)
\2940
J.S.バッハは、マリンバで...〜無伴奏ソナタ、無伴奏組曲、いくつかの小さな音楽帳〜
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 ①無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第1番 ト短調 BWV1001
 ②三つのメヌエットBWV Anh.114〜116
 ③ポロネーズ BWVAnh.119
 ④行進曲 BWV Anh.124
 ⑤ミュゼット BWV Anh.126
 ⑥無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007
 ⑦前奏曲とフーガ 変ロ長調 BWV866
クーン・プラーティンク(マリンバ)
 概して素敵な鑑賞体験を約束してくれる「バッハ編曲もの」——その中でも、これはとびきり!
 ボン、と優しく音を置いてゆく、音の珠が連なり、対位法の綾をなしてゆくマリンバ。バッハの音楽は、どの楽器に置き換えても極上。弾き手が古楽畑の俊才なら、なお...!

 「バッハ編曲もの」にハズレは少ない、なにしろ曲がバッハなのだから...とは思いつつ、またアルバムコンセプトを見ただけで「ああ、その楽器でやったらそりゃあいいよね」とわかったような気にさせられつつ、聴いてみたら結局圧倒的にハマってしまう。そういう異色バッハ盤というものがあると思うのです。今回はごらんのとおり「マリンバでバッハ」——、すでにこの時点で「そりゃ素敵に決まっている」という感じがありますでしょうか?実際そのとおり、いやそのとおり以上なのです。
 演目の軸にあるのは二つの「無伴奏」、しかしそれらは、ジャンル違いの意欲的プレイヤーがバッハ作品で紡ぎ出すタイプの魅力とも、少し違う。バッハ自身が無伴奏弦楽器のひとふでがきの「言外」に匂わせていた響きや音をたくみに拾いあげ、マリンバという(まずバッハ自身は知らなかったであろうことは確かな)楽器で紡ぎ出せる語彙のうえにそれを再構築してみせる。そのセンスはほとんど17 世紀以前の楽曲を楽譜から復元してゆくのにも似た、非常に古楽的なアプローチさえ感じさせるところがあります。
 それもそのはず——本盤でマリンバを弾いているのは、「古楽大国」ベルギーの最前線をゆくラ・プティット・バンドやアニマ・エテルナ、イル・フォンダメント、コレギウム・ヴォカーレ・ヘント...といった超一流古楽バンドでティンパニを受け持ってきた「古楽畑」の才人、クーン・プラーティン!
 一音、また一音...と優しい打音でバッハ作品の「静」と「動」を、悲哀と喜びを、慟哭と微笑を、ユーモアと家族愛を、ニュアンスたおやかに弾き分けてゆく、そのセンスの良さ...ただ聞き流しにするだけでも、きっと何かしら一風変わった、すばらしく上質な空気が漂うに違いありません(その穏やかな魅力をきれいに反映したような優しい文体の解説文(全訳付)を書いているのが、さりげなくACCENT に名盤続々のチェンバロ奏者エーヴァルト・ドメイエール)。『無伴奏ヴァイオリン〜』のフーガ楽章で、安らかな美音がその安心感を保ったまま、いつのまにか壮大・深遠なメロディラインの交錯を緻密に描き上げているのに気づいたときの驚き、『無伴奏チェロ組曲』での重音を代弁する繊細な分散和音、メヌエットや行進曲などの小品での、あらがいようのない優しさ。聴きどころ満載です。
 バッハの間口の広さに驚き、しみじみ身をまかせたい逸品。

MFUG577
(国内盤)
\2940
華麗なる三拍子 〜19世紀のピアノで、巨匠たちのワルツを〜
 フランツ・シューベルト(1797〜1828):
  ①「レントラー」と呼ばれるドイツ風舞曲 D.366(ブラームス編)
 ヨハンネス・ブラームス(1833〜1897):
  ②ワルツ集 作品39
 リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949):
  ③『薔薇の騎士』のワルツ(オットー・ジンガー編)
 モーリス・ラヴェル(1875〜1937):
  ④ラ・ヴァルス(リュシアン・ガルバン編)
 ヴォルフガング・リーム(1952〜):
  ⑤さらに短いワルツさまざま
イング・スピネット、ヤン・ミヒールス(p)
使用楽器:エラール1892年オリジナル
 繊細で優美。ワルツの魅力は、19世紀芸術とそのまま同義だったのか、それとも...
 1892年製エラールが醸し出す、いつかどこかの感じ。「ワルツ」をテーマに、大作曲たちが残した傑作群を、歴史的フォルテピアノの全き名手ふたり、あざやかに。

 「会議は踊る、されど進まず」——遠隔地コルシカの生まれから末はフランス皇帝となって、ヨーロッパ中の君主たちに下剋上の恐怖感を植えつけたナポレオンの侵略劇が終焉を迎えたあと、列強の為政者たちがウィーンに集まり戦後処理の相談、しかし八方よく収まる議決にはなかなか至らず、いつも議決を先延ばしにしたまま夕方がきて会議は中断、ところがその後やんごとなき各国代表たちは急に元気になって、ウィーン名物でもあった社交舞踏会にいそいそと出かけて行った...ああ結局何も決まらないではないか、という状況を皮肉って出てきたこの名台詞、じつは(この会議では独立国にはしてもらえなかった)ベルギー代表の貴族が口走った言葉だったそうです。
 それから15年後に待望の独立を果たしたベルギーは、みるみるうちに文化大国になり、21 世紀の今や、過去の文化遺産を正しく見直すことにかけては抜群のセンスを誇る偉人の多い「古楽大国」になりました。クイケン兄弟、フィリップ・ピエルロ、ヨス・ファン・インマゼール、ヘレヴェッヘ…といった古楽界の巨星たちから世界中の古楽アンサンブルで活躍する多忙な若手にいたるまで、この国の古楽プレイヤーの層の厚さは今や目をみはるばかりですが、そのなかでもとくに注目すべきが「フォルテピアノ奏者の充実度」。ちょっと思い起こしただけでも、インマゼール、その門下生でブリュッセル在住のクレール・シュヴァリエ、ヴィーラントの息子ピート・クイケン、現代ピアノもこなすボヤン・ヴォデニチャロフ...と、ソリストとしてもアンサンブル奏者としても桁外れに多元的な活躍をみせている弾き手が新世代・旧世代を問わず続々。
 そんなベルギーのフォルテピアノ界を支える重要人物が、王立ブリュッセル音楽院で教鞭をとるヤン・ミヒールスとイング・スピネットの二人。
 ここで彼らはなんと「19 世紀末のエラール・ピアノを連弾する」という、①古いピアノというものを知り尽くした②プレイヤーが二人も③しかも両者とも、古いピアノに対する意識の摺合せも感性の相性もばっちり...という、まさに人材豊富なベルギー古楽界でなくてはまずありえないような演奏スタイルで、絶妙の録音を残してくれたのです!
 テーマは「ワルツ」。
 現代ベルギー人にとっての心の故郷、ジャック・ブレル1959 年のヒット曲『千拍子のワルツ』を原題に、古楽大国ベルギーならではのスタイルで「古き良きサロン文化の象徴」ともいえるワルツを、ここではシューベルト、ブラームス、シュトラウス...といった超・巨匠の作品を有名・無名作品を厳選してプログラミング。各々10数楽章ある曲ばかりのところ、上手に曲を区切って並べ、シューベルトからブラームスへ、そこから20世紀の異才リームによる擬古的作品へ。
 そして、時間を越えてワルツのリズムを延々紡いでゆくのが、1892年に作られたオリジナルのエラール・ピアノというのが実に憎いところ!古いピアノ特有のほどよい丸みを帯びた典雅な音色の煌びやかさが、魔法のような三拍子の連続とあいまって、いつしか私たちの心を遠い「今ではない、いつか」へと誘わずにはおきません。こういうのを企画倒れに終わらせない古楽感性は、やはりベルギー人ならでは。静かにハマる上質盤です。

INDESENS!

Fabien Wallerand: Art Of The Tuba
INDE027
(国内盤)
\2940
パリのチューバ 〜大都市の休日と「管の王国」
 エーリヒ・W.コルンゴルト(1897〜1957):
  ①きみが幸せになるように〜
   『五つの歌曲』op.38 より(ワレラン編)
 ダーフィト・ポッパー(1846〜1913):
   ②邂逅op.3-5〜チェロとピアノのための(ワレラン編)
 パウル・ヒンデミット(1895〜1963):
  ③バス・チューバとピアノのためのソナタ(1955)
 ジョン・スティーヴンズ(1951〜):
  ④トライアングル〜ホルン、トロンボーンとチューバのための(1978)
 ロランド・セントパーリ(1977〜):
  ⑤アレグロ・フオーコ(快速に、炎のように)〜チューバとピアノのための(2005)
 アロン・ロムハニ(1974〜):
  ⑥パラレルズ(平行線)〜チューバとピアノのための(2008)
 ミシェル・ゴダール(1960〜):
  ⑦ディープ・メモリーズ(鮮烈な記憶)〜チューバ三重奏のための
 ファビアン・ワレラン(1979〜):⑧ビニャレス〜チューバ三重奏のための
 ジョン・スティーヴンズ:⑨秋〜チューバとピアノのための(2009)
ファビアン・ワレラン(チューバ/パリ・オペラ座ソロ奏者)
ニコラ・ヴァラード*(トロンボーン)
ダヴィド・ドフィエ*(ホルン)
ミシェル・ゴダール(2nd チューバ) *パリ・オペラ座ソロ奏者!
ステファーヌ・ラベリ(3rd チューバ)
マレヴァ・ベキュ(ピアノ)
 本当に翳らない「管楽器の王国」の栄光——は、低音域でもやっぱりセンス抜群だった!
 ここまで圧倒的に豊かでウマくて洒脱でスタイリッシュだと、もうニンマリするしかありません。大都市パリの暮らしを彷彿させる変幻自在のチューバ芸術、ゲストにセルパンの「あの人」も!

 チューバ!
 コントラバスと一緒で、この楽器のことを、ものすごく低い音域でモヤモヤ音を響かせているだけだろう...なんて思っている方はいませんか?このアルバムに関しても、まさかここまで多元的なことができようとは、ちょっと想像できないのでは?
 「管楽器の王国」ことフランスの超・名門、パリ・オペラ座管弦楽団でチューバ首席をつとめる桁外れの俊才ファビアン・ワレランの吹きこなすチューバ・・・大げさなことを言うと「サックスにおけるマルセル・ミュールと同じくらいの偉業」。そして「この楽器の可能性はファゴットやチェロをさえ凌ぐのでは」、と思えてくるほど。チューバであることを忘れさせる絶妙の感性、圧倒的な技量で音を紡いでゆくのです!
 音程完璧、抑揚あでやか、深みあるカンタービレも現代風の迫力も「ブラスらしさ」も痛快な超絶技巧(とそれをみっともなく誇示しないセンスの良さ)も、「チューバのソリスト」と聞いて望みうるすべてのもの以上の何かを、ワレランはあなたにもたらしてくれることでしょう。
 本格派の腕前の確かさが知りたければ、当然のように組み込まれているヒンデミットの定盤ソナタをじっくり聴ききわめていただければよし——その前に収録されているポッパーやコルンゴルトなど晩期ロマン派系の曲でも何ら不自然さはなし、もういっそモーツァルトのヴァイオリン・ソナタあたりを編曲して吹いてほしいくらいの音楽性に、きっと魅せられずにはおれないことでしょう。
 そして、さらにドキドキするのがゲスト陣! ホルンやトロンボーンが加わる作品では、同じパリ・オペラ座のピットで活躍するソロ奏者ふたりが惜しげもなく参加。そしてパリの地下鉄やポンピドゥー・センター周辺の「芸術都市!」な大都会っぽさも想起させる、素敵な低音の唸りが気持ちいいチューバ三重奏ものでは、なんとチューバの前身とも言われる古楽器セルパンでジャズをやってしまう異色の名手、ミシェル・ゴダール様が桁外れな腕前で主役の向こうを張ってみせます!

INDESENS!


INDE004
(国内盤)
\2940
若き日のデュティユー
 〜管楽器のためのさまざまな名曲と「作品1」〜

 デュティユー:
  ①サラバンドとコルテージュ(1942〜
   バスーンとピアノのための
  ②フルートとピアノのためのソナチネ(1943)
  ③コラール、カデンツァとフガート(1950)〜
   トロンボーンとピアノのための
  ④オーボエとピアノのためのソナタ(1947)
  ⑤ピアノ・ソナタ 作品1(1948)
パリ管弦楽団のソリストたち &
パスカル・ゴダール(p)
ヴァンサン・リュカ(フルート)
アレクサンドル・ガテ(オーボエ)
マルク・トレーネル(バスーン)
ダニエル・ブレシンスキ(トロンボーン)
 管楽器の王国フランスの「いま」を代表する伝統の担い手たちが「フランス近代の大家」、つまりフランス六人組の同時代人としてのデュティユーのとっつきやすさを、艶やかに伝える!
 あまりにしなやか、あまりに高雅。この人もやはりフランスの芸術家だった——解説も詳細!

 アンリ・デュティユーは今なお存命中なうえ曲も書いているということで、決して過去の人などではなく、ばっちり現代作曲家ということができます。さながら、20 世紀初頭にサン=サーンスがそうであったように。そしてこの作曲家の存在感もまた、長い経歴のなかで変化をくりかえしながら一本筋の通った音作りを続けてきた...という点において、やはりサン=サーンスを彷彿させずにはおかないように思います。
 数年前、ボルドー=アキテーヌ管弦楽団がドイツのArte Nova で録音した素晴らしい管弦楽作品集のおかげで、また大家ロストロポーヴィチが作曲委嘱した管弦楽付チェロ作品などのおかげで、デュティユーという人を「フランスならではの色彩感覚をそなえた管弦楽作曲家」として認識されている方も多いことでしょう。しかしながら、色彩感にすぐれた管弦楽作曲家ということは、往々にして「管楽器の扱いを熟知した人物」というのと同義でもあります。このことがいかにデュティユーにもあてはまるか、それを極上の演奏で解き明かしてくれるのが、このパリ管弦楽団(11 月末にも来日しますね!)のトップ奏者たちによる、素晴らしいデュティユー初期作品集なのです。
 上にも書いたとおり、デュティユーは今なお現役で曲を書いている人ではありますが、そのデビューはもうずっと前、1940 年代頃のこと——なにしろ彼は1916 年生まれなのです(ドビュッシーもデュカスもファリャもサン=サーンスも(!)生きていた頃)。
 ここに収録されているのも、彼がパリ音楽院を出るか出ないかの頃から駆け出しの時代に書かれた作品ばかりで、フルート奏者としてスタートした大指揮者ゴベールや、音楽史とグレゴリオ聖歌研究の権威でもあったモーリス・エマニュエル、あるいはルーセルやストラヴィンスキーといった20 世紀初頭の巨匠たちから吸収したことが、デュティユー随一の高雅なセンス(そう!この高雅さこそ、フランスの演奏家たちにしか再現しえない最も魅力的な境地であり、私たち聴き手の心と五感に直接訴えかけてくる部分なのです)とともに、みごとな発露をみせているのがわかります。
 原文が簡略なテクストのみに終わっていることも多いIndesens レーベルのライナーノートも、この作曲家への限りない愛に突き動かされてか、非常に詳細な作品解説と解題になっていて(これを全訳付でお届けいたします)、フランス20 世紀の音楽世界というものが、世間離れした前衛芸術でもなんでもなく、あくまで触感確かな、シャガールやユトリロの絵やトリュフォーの映画やヌーヴェル・キュイジーヌのおいしい料理などと同時代の文化だったことを、あらゆる角度から実感させてくれるのでした。
 既に大好評を得ているサン=サーンスの管楽器室内楽曲全集(INDE010)やプーランクの同種の曲集(INDE013)と並ぶ、パリ管の面目躍如の好企画です!

NCA


NCA60234
(国内盤)
\2940
リスト:ダンテ交響曲&システィーナ礼拝堂を想って
 (19世紀当時の楽器による)

フランツ・リスト(1811〜1886)
1. ダンテの『神曲』による交響曲(ダンテ交響曲)
2. システィーナ礼拝堂を想って
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー(古楽器使用)、
シネ・ノミネ合唱団
 「リスト生誕100周年」に、驚くべき企画が登場。これは、ぜひ解説までじっくり読むべきかも。
 長大な解説の完全日本語訳付、価格分の損はさせません。
 リストならではの管弦楽作法を知るなら、この古楽器録音はインマゼール盤と並ぶ必聴クラス。静かなる異才、炸裂。

 Membran 傘下、名盤・充実企画あまたのNCA レーベル、本年最大といっても過言ではない重要リリース盤。
 リストが生きていた19世紀、クラシックの楽器は彼自身が弾いていたピアノをはじめ、みな現代の姿へとたどり着く前の変化の過程にあったことは、御存じのとおり。ならば、ロマン派の時代にあって管弦楽音楽のあり方に驚くべき新機軸を盛り込んでみせたフランツ・リストが思い描いていた響きが、いったいどのようなものだったのかは、当時の楽器の状態や演奏法を知らなくては全くイメージできないのではないか。・・・そう考えていち早く「古楽器によるリスト管弦楽作品集」を録音してみせたのが、『レコード芸術』で特選盤に輝いたインマゼール&アニマ・エテルナの傑作盤だったとすれば、それからなお数年の研究期間をへて、リストの生地ハンガリーにより近い「ひそかな古楽拠点」ウィーンで静々と計画をあたためていたのが、この国屈指の古楽器奏者たちを育ててきた超・重要古楽オーケストラ「ウィーン・アカデミー」の主宰者、マルティン・ハーゼルベック。
 ハーゼルベックは自らオルガン奏者として、リスト芸術のもう一つ知られざる重要ジャンル、オルガン作品の原題校訂譜の監修にあたるなど、古楽器畑にいながら長年リストの音楽を思わぬ側面から見つめ続けてきた異才。ウィーン古典派と19 世紀ロマン派の息吹そのまま、オーストリア人にしか体得しえない独特のリズム感を古楽器演奏のノウハウと矛盾なくからみあわせ、充実した古楽器演奏を提案しつづけてきたウィーン・アカデミーは、今やArcana で大活躍中の異才バロック・ヴァイオリン奏者グナール・レツボールが一時コンサートマスターをつとめていたり、ハンガリー古楽界の俊才バラーシュ・ボザイがチェロを弾いていたりと、中欧の古楽シーン育成に大きく寄与した重要団体でもあります。リストの基本的な管弦楽作品の「19 世紀の響き」をインマゼール盤で実感したなら、今度は必ずやこちらを聴くべき。
 稀代の文学通だったリストが、欧州近代文学の曙を飾ったとも言えるイタリアの詩人ダンテの傑作『神曲』にインスパイアされて作曲した『ダンテ交響曲』は、その鮮烈かつダイナミックな音楽表現、涙をさそう感動的なカンティレーナ、長大な演奏時間、どれをとっても19 世紀の並居る傑作管弦楽曲にひけをとらない大作ながら、注目される機会が今一つ少ない不遇の傑作...それがぱリスト生前の楽器やオーケストラ編成、演奏解釈のあり方を徹底的に検証、管楽器の一部はリストが指揮していた頃のヴァイマール管弦楽団が実際に使用していたものまで動員してのこの録音を聴けば、本当のコントラバスの低音、本当の金管の咆哮、本当の木管のバランスや理想的なガット弦の透明感...と、『ダンテ交響曲』に秘められた周到な音響表現が納得できる・・・いや、痛いくらいに脳髄を刺激してくれるはず。そしてリストがいかに精緻な音響設計をしていたのか空恐ろしくなるはず。
 その秘訣は、ヴァイマール楽団の真実を解きあかした長大な解説(全訳添付)でさらに理解が深まり、いよいよ面白くなること請け合いです。圧倒される喜び、読み解く愉しみ——「古楽器演奏」の醍醐味が、この1作に詰まっています。漫然と聴き過ごしたくない傑作盤、ご注目ください!

PAN CLASSICS


PC10245
(国内盤・2枚組・
日本語解説付き)
\4515
グナール・レツボール(バロック・ヴァイオリン)
 ビーバー:ヴァイオリン独奏のためのソナタ集(1681)

  1.ヴァイオリン独奏[と通奏低音]のためのソナタ集(1681/全8曲)
  2.描写的ソナタ 〜ヴァイオリンと通奏低音のための
グナール・レツボール(バロックvn)
Ens.アルス・アンティクヮ・アウストリア(古楽器使用)
ローレンツ・ドゥフトシュミット(バス・ガンバ、ヴィオローネ)
ミヒャエル・オマーン(バス・ガンバ)
ロベルト・センシ(ヴィオローネ)
アクセル・ヴォルフ(テオルボ、リュート)
ヴォルフガング・ツェラー(チェンバロ、オルガン)
PC10245
(輸入盤・2枚組)
\3290
 いつ紹介しようかずっと迷っていた一枚。国内盤の案内が来たので、解禁。
 「ロザリオ」の影に隠れてなかなか日の目を見ないビーバーの「もうひとつの」ソナタ。演奏はレツボール。「ロザリオ」で聴かせてくれたあの濃厚な音楽がここでも聴かれる。宗教性や崇高さが後退する分、歌謡性、庶民性が増し、舞踏感覚に優れるレツボールはいかにも楽しげにヴァイオリンで歌い、踊る。そこに「ロザリオ」でも聴いたような甘く切ない調べが始まるからたまらない。
“音楽の国”オーストリアの古楽界、いつのまにか深く鮮烈になっていたそのシーンを代表するのは、やはり超・鬼才グナール・レツボール! 17世紀ザルツブルクの超絶技巧派ビーバーが残した「影のロザリオ」的盲点秘曲の決定盤、バロック・ヴァイオリンの奥義炸裂。2010 年に活動休止したイタリアSymphonia レーベルのカタログには、日本でもほとんど流通するチャンスがなかったものの、決して埋もれさせてはいけないような超・名盤がゴロゴロ含まれているのは、明敏な古楽ファンならいわずとしれた周知の事実——本当にうれしいことに、昨年末から多くの音源がPan Classics やGlossa などの気鋭レーベルに移行し、徐々に市場復活を遂げてくれています。とくに最近では、Glossa レーベルにあのSymphonia 初期の超・名盤、エンリーコ・ガッティ率いるEns.アウローラの『17〜18 世紀イタリアのヴァイオリン芸術』がGlossa で待望すぎるほどの復活を遂げ、わたくし担当もいちユーザーとして感激している次第でございます。しかし!Symphonia が積極的に紹介してくれた異才バロック・ヴァイオリン奏者は、ガッティだけにあらず——アーノンクールやバドゥラ=スコダらが静々と下地を作っていた“音楽の国”オーストリアの古楽シーンを代表する、学究性も比類ないテクニックもカリスマ性もすべて妥協いっさいなしの異才グナール・レツボールも、このレーベルから数多くの意欲的企画を発表してきたものでした。このたびPan Classics レーベルから完全復活することが決まり、担当が小躍りせずにおれなかったのが、このビーバー2 枚組アルバム!ビーバーは17 世紀末のドイツ語圏で最も高く評価されていたヴァイオリン奏者=作曲家のひとりで、モーツァルトより1世紀ほど早くザルツブルク大司教の宮廷で活躍していた異能の天才。最も有名な作品は変則調弦を駆使した超絶技巧的ヴァイオリン曲集『ロザリオのソナタ』で、こちらは数々の名盤にも事欠かないのですが、その陰でひどく見過ごされているのが、この1681 年にまとめられた『ヴァイオリン独奏のためのソナタ集』。内容的には『ロザリオ』にまったく劣らないのに、タイトルのそっけなさが損をしているのかもしれません——しかしこの曲集、ビーバーが合奏ではない独奏楽器としてのヴァイオリンの可能性をどこまでも追求し、8曲の収録曲のどれをとっても抒情・技巧性・先の読めないエキサイティングな展開…とヴァイオリン音楽に期待したいものが全て揃っており、しかも意外に長い曲が多いので、本盤でもレツボールのとほうもない思い切りのよさ、繊細な音作りとダイナミックな技巧性・抒情性の交錯をひたすらじっくり味わえる、知らずにいるとバロック・ファンとしては大いに損な注目作なのです。そのうえビーバー初期の知る人ぞ知る傑作、バロック・ヴァイオリンの上で鳥や猫が鳴きだしたり、戦争が始まったりする異色作『描写的ソナタ』までさりげなく収録してくれているのですから…さきにリリースされたコレッリのガンバ版「作品5」(PC10250)と同様、これも少し試聴したらやっぱり2枚欲しくなってしまう「2枚組であることがお得」な逸品だと思います。よく見れば通奏低音陣も超・実力派ぞろい。つくづく贅沢なアルバムなのです!(国内代理店より)

PAN CLASSICS


PC10250
(国内盤・2枚組)
\4515
グイード・バレストラッチ
   コレッリ:ヴィオラ・ダ・ガンバによる「作品5」のソナタ集

 アルカンジェロ・コレッリ(1653〜1713)
 ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集 作品5
 (全12曲/18世紀の手稿譜によるヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音のための全曲編曲版)
グイード・バレストラッチ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
通奏低音:パオロ・パンドルフォ、エウニセ・ブランダン(vg)
ガエータノ・ナジッロ(vc)、
エドアルド・エグエス(テオルボ)、
ルチアーノ・コンティニ(アーチリュート)、
マッシミリアーノ・ラスケッティ(cmb, org)
 「イタリア生まれの」ヴィオラ・ダ・ガンバという楽器をじっくり聴くなら、これが最強でしょう。
 ヨーロッパ古楽界きっての超実力派バレストラッチが、同郷人コレッリへの限りない愛を誰しもを魅了せずにはおかない名演に結晶させてみせた、ゲストも超豪華の圧倒的名演。

 2010 年に活動休止したイタリアのSymphonia レーベルは、日本の熱心な古楽音盤ファン垂涎の決定的名盤を多々制作していたのですが、幸い今年はGlossa やPan Classics でその音源が再登場を続けており、後者は「国内盤初出!」と流通網拡大にも寄与できるようになったのが嬉しいところ。
 このたび新たにリリースされる本盤も、輸入盤登場時にひそかなブームを作ったのち市場から忽然と姿を消したアイテム——明敏な古楽系ファンの方なら、そのポテンシャルはよくご記憶ではないでしょうか。あの、18 世紀のありとあらゆるヴァイオリン芸術家たちに絶大な影響を及ぼしたローマの巨匠コレッリのソナタ集op.5(その第12 曲は、ヴァイオリンを学ぶ人が必ず通るあの「ラ・フォリア」ですね)を、なんと全編ヴィオラ・ダ・ガンバ独奏で弾いてしまった驚くべき2枚のアルバムが、ここに2枚組アルバムとしてカタログに復活してくれます!
←Symphonia初出時はこんなジャケでした!

 何が嬉しいって、その演奏陣の豪華さには目をみはるばかり——主役のガンバ奏者は昨今弊社扱で新譜・旧録国内初出とも傑作盤続々のイタリアのスーパープレイヤー、グイード・バレストラッチ!
 もうこの時点で名演は保障されたも同じですが(詳細後述)、よく見れば通奏低音陣がますます充実していて、曲によってガンバ、バロック・チェロ、テオルボ、アーチリュート、オルガン、チェンバロ...と楽器の組み合わせを変えるという趣向のもと、上にみるとおり日本でも大人気の超・実力派リュート奏者E.エグエス、Glossa での名盤群で知られるポスト・サヴァール世代随一のガンバ奏者P.パンドルフォ、エンリーコ・ガッティとの共演でめきめき頭角を現してきたバロック・チェロ奏者G.ナジッロ、広範な活躍で知られるリュート奏者L.コンティニに、エスぺリオンXX の古株でもあるE.ブランダン...と、まさに新旧世代の超・豪華メンバーが続々なのです。
 しかし、何より肝心なのはその演奏内容——1700 年の初版刊行当初から大人気で編曲版も多々出たというコレッリの「作品5」ですが、ここで使われているのは18 世紀最初の10 年間に作られたと言われる同時代の編曲楽譜。ヴィブラートなしに滑らかに、ふくよかな振動でオーガニックな響きを漂わせるガンバ特有のガット弦の音色は、適切な楽器を使っていることもあり、重音にも機能的に対応するうえ敏速なパッセージもお手のもの(これは弾き手がとてつもない名手だからこそ、でしょうが)。
 そもそもガンバは、「たまにはバロックを」、と聴きたい時にもしっくりくるメロディのはっきりした音楽が思いのほか少ないものなのですが、このコレッリ盤は真っ先におすすめできます!
 全曲じっくり聴き極めるに足る——否、ここに手が伸びるなら必ずや全曲聴きたくなるはずですから、2 枚組価格はむしろお買い得。

RAMEE

Bononcini: Barbara ninfa ingrata
RAM1006
(国内盤・訳詞付)
\2940
ボノンチーニ、この目覚ましきイタリア・バロックの俊才
 〜室内カンタータとトリオ・ソナタ〜

ジョヴァンニ・ボノンチーニ(1670〜1747):
 ①シンフォニア 作品4-9(2vn・bc)
 ②カンタータ「きみが話すとき、きみが笑うとき」(T・bc)
 ③カンタータ「バルバラ、不実な妖精」(T・2vn・bc)
 ④シンフォニア 作品4-12(2vn・bc)
 ⑤カンタータ「苦しみに取り巻かれて」(T・vn・bc)
 ⑥カンタータ「そう、ドリンダは昼の太陽」(T・2vn・bc)
アンサンブル・リリアード(古楽器使用)、
シリル・オヴィティ(テノール)
レオノール・ド・レコンド(バロック・ヴァイオリン)他
 この数年、店主が気になって気になって仕方がない、ボノンチーニの新譜。

 ジョヴァンニ・ボノンチーニ——多くの人が「ヘンデルの対抗馬としてロンドンの貴族たちに担ぎ出され、もろくも人気を失ったイタリア人作曲家」としてご存じかもしれませんが、これは本当にもったいないこと。当時ロンドンの貴族たちは、自分たちにとって文化後進地域の田舎としか思っていなかったドイツから若造作曲家がやってきて、我らが先進国のオペラハウスを席巻してしまったのが面白くなく、それなら本場イタリアから申し分ない巨匠を呼んできてアイツをつぶしてやれ、とばかりにボノンチーニを担ぎ出したわけですが、おそらく彼の敗因は「歴史と時間の流れが真の美を証明した!やっぱりヘンデルは素晴しかった」なんて無責任な話ではなく、たんにヘンデルが新時代の流行にかなった曲を書いていたというだけの話。
 つまりボノンチーニはもはや「昔の人」になっていたというのが実情でしょうが、今こそボノンチーニがなぜ「ロンドン貴族に担ぎ出されたのか?その音楽はどれほどのものだったのか?」と確かめるにはうってつけの時代なのだと思います。
 そして——事実、その音楽は心底素晴らしい、およそハズレなし!と言ってもいいくらい。
 古楽先進地帯のヨーロッパではこの点すでにもう四半世紀ほど前から見直しが進んでいて、音盤シーンだけ見ても、ここ10 年のあいだにArcana、Tactus、Zig-Zag Territoires、Ramee…といった古楽に強いレーベルが、続々ボノンチーニの作品集(なかんずく、声楽曲)を出してきたことからもわかるでしょう(単体アルバムの発売点数はおそらく、同時代の巨匠アレッサンドロ・スカルラッティのそれにも負けていないはず)。
 明敏な古楽プレイヤーたちをここまで熱狂させるその音楽は、1700 年前後(つまりヴィヴァルディやヘンデルの様式が大流行する前、ちょうどコレッリのソナタが最も人気だった時代)のイタリア音楽の真骨頂、つまり絶妙の和声進行に乗せて、ほんとうに美しいメロディを紡ぐ芸術が最も洗練されつつあった時代の、ひとつの理想ともいうべき境地をみせているのです。
 ロンドンに来る前は全ドイツ語圏の名目上の最高権力者、ウィーンの神聖ローマ皇帝に仕えていたばかりか、イタリア中の貴族たちがボノンチーニの室内カンタータに熱狂し、いわゆるナポリ楽派もボノンチーニのメロディセンスから多くを学んだと言われていますが、本盤の演奏に触れれてみれば、なるほど確かにと納得せずにはおれなくなるはず。
 ヨーロッパ各地の歌劇場でも活躍するフランスの実力派古楽歌手オヴィティの優美な声は、そのわかりやすく美しいメロディセンスをきわだたせるのにぴったり。対する器楽陣ではヴェルサイユ系のアンサンブルでも活躍する俊才レコンドを中心に、古楽器の響きを知り尽くした俊才たちが痛快・鮮明なアンサンブルを聴かせてくれます。

RAM1006
輸入盤
¥2400
ジョヴァンニ・ボノンチーニ:シンフォニア&カンタータ集
上記国内盤の輸入盤。解説がなくてもいいかなあ・・・という方に。


店主お奨めのボノンチーニのアルバム

BRL 93349
(2CD)\1200
ボノンチーニ:
 室内ディヴェルティメント第1−8番
 カンタータ集

  
ラ・スタジョーネ・アルモニカ
セルジオ・バレストラッチ(指揮)

グロリア・バンディテッリ(コントラルト)
アンサンブル・アウローラ
クリスティーナ・ミアテッロ(ソプラノ)
グイド・モリーニ(ハープシコード)
アンドレア・フォッサ(チェロ)
 ボノンチーニ。
 ・・・イタリア・バロックにいたかなあ、という程度にしかその名を聞いた覚えがなかったのだが、その「室内カンタータ」が、それはもう素敵な曲だった。
 こんな美しい作品を書く人がただもののはずがない。

 ジョヴァンニ・ボノンチーニ。
  1670年にモデナに生まれる。代々続く音楽一族の一人で、父も弟も有名な作曲家である。
 ボローニャの聖ジョヴァンニ大聖堂で楽長を務め、その後はミラノ、ローマ、ウィーン、ベルリンでも活動をして順調に大作曲家としての道を歩んだようである。
 しかし彼の一大転機は50歳のとき。
 彼は当時の一大音楽消費都市ロンドンに呼ばれたのである。
 ここで成功すれば、ウィーンやベルリンなどとは比べ物にならないくらいの一攫千金も夢ではない。実際ヘンデルはそれを成し遂げた。少しでも野心や自信がある者なら、その誘いを断ることは難しいだろう。
 ただ、今の芸能界がそうであるように、当時の音楽界もみんなきれいな心の持ち主で優しい人ばかりということはなかった。ロンドンに行けば夢もあるだろう、しかし同時にどす黒い闇もある。事実賢明なるハッセは同じような誘いを断っている。
 さて、当時ロンドンで音楽界を牛耳っていたのはヘンデル。しかしオペラ・ブームが加熱する中、ヘンデルだけではオペラ製作が足りなくなりボノンチーニが呼ばれたということだが、実際は飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍していたヘンデルの敵対勢力がボノンチーニをライバルとして呼んだというのが本当のところらしい。二人の共作などという豪華なオペラ(「ムツィオ・シェーヴォラ」)もあるが、その後ボノンチーニは期待通り、ヘンデルを駆逐する勢いで人気オペラを書き続ける。
 そうした中、両者の争いは政治や宗教も絡んでの抗争に発展する。いや、もともとあった抗争に広告塔のようにうまく利用されたのかもしれない。
 挙句の果てに、他人の作品を流用することには寛容だった当時の時代にあって、ボノンチーニはこともあろうに「盗作」の容疑でロンドンを追い出される。ヘンデルが、というより、ヘンデルを擁する派が勝利したということか。
 ヘンデルのような若造にしてやられる形でロンドンを去ったボノンチーニ。汚名と屈辱に満ちた追放劇。
 その後彼はパリやリスボンなどで活動していたらしいが、最終的にはウィーンで野垂れ死んだと聞く。1747年7月9日。ヘンセルが晩年の栄光と名声を勝ち得ているとき。

 ボノンチーニが当時ヘンデルの最大のライバルとしてロンドンで活躍したというのは事実。しかし現在ボノンチーニの栄光を身近に感じることはできない。できるとすればヘンデルがボノンチーニから流用したとも噂される「オンブラマイフ」くらいか。彼の代表作であるオペラも現段階CDリリースは皆無。一度転落した音楽家に未来は微笑まなかった。ロンドンにはおそらくボノンチーニの楽譜とかも残っていただろうが、敵対勢力が陣取っていた中、ボノンチーニが去った後それらがどんな扱いを受けたかは容易に想像できる。

 音楽史には、こうした、さまざまな悪意や偏見によって歴史から葬り去られた天才作曲家や大傑作が山のように存在していたのだろう。
 今回はせめてこの甘く美しく崇高で気品に満ちたカンタータを聴くことで、汚名と屈辱にまみれ歴史の闇に葬られた一人の天才作曲家へのせめてものはなむけとしたい。
 後で気づいたが、カンタータの1、2曲目の伴奏はアンサンブル・アウロラ。もちろんヴァイオリンはエンリコ・ガッティである。(「まだまだクラシックは死なない!」より)

RICERCAR


MRIC319
(国内盤)
\2940
ゲオルク・ベーム・・・ バッハの師匠
 〜オルガンのための作品集〜

ゲオルク・ベーム(1661〜1733):
 ①プレルディウム(とフーガ)ハ長調 ②高き天より我は来たれり
 ③いざ来たれ、聖なる霊よ ④汝、昼日にして光なる救世主
 ⑤プレルディウム(とフーガ)イ短調
 ⑥最愛の神にのみ統べられし者みな(コラール・パルティータ)
 ⑦救世主は死の縄に繋がれぬ」(1段の手鍵盤と足鍵盤のための)
 ⑧救世主は死の縄に繋がれぬ」(1段の手鍵盤と足鍵盤のための)
 ⑨わが愛しき神に ⑩天にまします我らが父よ
 ⑪天にまします我らが父よ(2段の手鍵盤と足鍵盤のための)
 ⑫プレルディウム(とフーガ)ニ短調
ベルナール・フォクルール(オルガン)
使用楽器:アルクマール聖ラウレンティウス教会(オランダ)のファン・ハーヘルベール・オルガン
 現代最高の古楽オルガン奏者、バッハ全集(MRIC289)とブクステフーデ全集(MRIC250)で圧倒的支持を集める巨匠フォクルール、「バッハ以前」シリーズの新録は本当に久々!
 さりげなく堂々とした風格を幾倍も印象づける、迫力と繊細をあわせもつ銘器の音も痛快!

 古楽大国ベルギー随一のRicercar レーベルで、15 年の歳月をかけ、15 種類の歴史的オルガンを使い分けて収録された『バッハ:オルガンのための作品全集』(MRIC289/16 枚組)が今なお熱烈な支持を集めて売れ続けているほか、ブクステフーデのオルガン作品全集(MRIC250/5枚組)をこの作曲家の歿後300 周年に大成、今や日本でも最も人気の高いオルガニストのひとりであるベルギーの名匠、ベルナール・フォクルール。
 2009 年にバッハ全集を、また昨2010 年には大バッハ最後の作品である『フーガの技法』をオルガンで弾くという偉業(MRIC303)を打ち立て、なおも好調な売れ行きとともに名を高めつつあるこのオルガニストが、長年にわたって継続しているプロジェクトがあります。
 それはヨーロッパ各地にある歴史的オルガンの銘器を渡り歩きながら、「バッハ以前」のドイツ語圏の巨匠たちの傑作を録音し、単体アルバムを制作してその作曲家の名をあらためて現代の聴き手にも印象づけてゆく...というもの。これもRicercar レーベルで継続している企画で、すでにブクステフーデの先人トゥンダーのアルバム(MRIC239)と、オランダ出身のラインケンとブクステフーデの門弟ブルーンスという新旧の佳作の天才たちのダブル全集(MRIC204)は、すでに日本語解説付でリリースされ、いずれも好評を博しています。
 ブクステフーデ全集以後、このシリーズはいったん区切れたのか、まだまだ弾いてほしい名匠はいるのに(ヴェックマン、プレトリウス、スヴェーリンク…)と思っていたところに、2011 年5月に録音したての最新盤がお目見えしてくれるとは、嬉しい限りではありませんか。しかも今回選ばれたのは、オルガンの大家として知られる大バッハが「唯一」直接教えを受けたらしいと判明している先人、ゲオルク・ベームなのです!
 ベームはハンブルクからもそう遠くない北ドイツのリューネブルクという町でオルガニストをしており、バッハは1700 年から1703 年にかけてこの町におり、ベームの教えを受けたと考えられています。その作風は17 世紀の偉大な伝統を脈々とそのペンに受け継ぎながらも、先人ブクステフーデとは明らかに違う「ベーム特有」というほかない大胆なスケール感の作り方や、思いがけぬ転調、意外な半音階の表現力...といった要素は聴けば聴くほど「なるほど!バッハの元ネタはここだったのか!」と驚かされることばかり。
 輸入盤まで視野に入れれば決して競合盤皆無の作曲家ではないとはいえ、これは明らかに、往年のマリー=クレール・アランやヘルムート・ヴァルヒャの名演による拭いがたい記憶をさえ一新する(というか、彼らとは趣きの角度をやや変えた)新たな決定盤。
 歴史的検証を経て「最もベームの作風にふさわしい」とフォクルールが判断した17〜18 世紀式の銘器が、瑞々しいタッチを古色蒼然と彩ってくれています。

MRIC304
(国内盤)
\2940
仏蘭西軍楽は愉し〜ドイツにやってきたオーボエ合奏〜
 ヨハン・フィッシャー(1646〜1716):
  ①組曲イ短調(2ob, t-ob, fg, bc)
 ヨハン・ミヒャエル・ミュラー(1683〜1743):
  ②ソナタ ト短調 ③ソナタ ヘ長調(どちらもob solo, 2ob,t-ob, fg, bc)
 ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681〜1767):
  ④パルティ(組曲)ハ短調(2ob, t-ob, fg, bc)
 ヨハン・フリードリヒ・ファッシュ(1688〜1758):
  ⑤協奏曲 ト長調(2ob-c, 2va, 2fg, bc)
 クリストフ・フェルスター(1693〜1748):
  ⑥協奏曲ト長調(3ob, 2fg)
  ob: オーボエ/t-ob: ターユ・ド・オーボワ(中音域オーボエ)/
  ob-c: オーボエ・ダ・カッチャ/fg:ファゴット/va: ヴィオラ/bc: 通奏低音
ブノワ・ローラン(バロックオーボエ、オーボエ・ダ・カッチャ)
アンサンブル・リンガ・フランカ(古楽器使用)
 バッハがオーボエを愛用したのは、フランス文化への憧れがあったから——?!
 オーボエという楽器の来し方を解きあかす、18世紀ドイツの知られざる音楽領域。なめらかで温かいニュアンス豊かなバロック木管を、古楽大国最前線の俊英による名演で。

 クラシックの世界に多少なじんでくると、古い音楽では弦楽合奏のほか、ことさらオーボエが活躍する機会に恵まれていることに気づかされると思います。リコーダーも横吹式フルートもトランペットもホルンも、1700 年頃にはすでにちゃんと存在していたのに(存在していただけならクラリネットもそうですが)、オーケストラにしたり顔で座っているのはいつもオーボエ(とその同属低音楽器として使われるようになったファゴット)ばかり。バッハもテレマンもヘンデルも、何かとこの楽器を重宝がって、あまつさえ協奏曲などでソロを任せさえしています。バッハのカンタータにいたっては、最も多いオーケストラ編成が「弦+オーボエ群」なのではないでしょうか。テレマンの合奏組曲もそうですし、ヘンデルも「弦楽合奏+オーボエ合奏」という編成をよく使いますね。
 ・・・なぜか?
 それはオーボエという楽器がありふれていたから、というよりもむしろ、宮廷人たちがこの楽器をことさらお洒落なものとして好んだから。
 フランスで使われはじめたオーボエは、ルイ14 世の野外バンド「ラ・グランテキュリ(王室大厩舎楽団)」の標準編成に組み込まれて、壮麗で繊細な管楽サウンドを響かせていたのです。当時ドイツ語圏(のみならずヨーロッパ全土)でファッションリーダーといえば、それはすなわちフランス王室。というわけで、ドイツ各地に点在していた貴族の宮廷でも、こぞってフランス風を模したオーボエ合奏が雇われ、宮廷楽団の弦楽器奏者たちとオーケストラでも共演したのでした。
 とはいえ、憧れだけではこの複雑な楽器をまねてみせることなど不可能。そのあたりの経緯も含め、オーボエ文化の興味深い歴史を説き明かす音楽学者ジェローム・ルジュヌ氏の詳細解説(全訳付)とともに、バッハと同時代のドイツ宮廷人たちの心を愉しませていた「本物の宮廷音楽」の響きをここに甦らせてくれたのは、古楽大国ベルギーでいま最も多忙なオーボエ奏者のひとりブノワ・ローランのもとに集まった、才能あふれる腕利き古楽奏者たち。
 バロック・オーボエの音、あのほんのり淋しげな風情の素朴で繊細な音色が重なりあうとき、その微妙な音のずれが醸し出すオーガニックなニュアンスはまさに、古い風景画の木蔭に息づく色彩変化の味わい。これはぜひとも「音」で実感してみていただきたい境地です。
 とにかく演奏陣がとびきり巧いだけでなく、選曲もファッシュやテレマンら比較的有名な「バッハの同時代人」のほか、文献などではよくでてくるヨハン・フィッシャーなど「フランス帰り」の名匠たちも含まれていて、発見の喜びを心ゆくまで堪能させてくれます(これがまた、どれも粒ぞろいの名品…なかにはオーボエ四重奏を“オーケストラ”に見立ててオーボエ独奏が立ちまわる協奏曲もあり)。本格派にして快適・痛快な1枚。

SAPHIR


LVC1107
(国内盤・訳詩付)
\2940
フランツ・リスト(1811〜1886):
 『十字架への道』S.53(1878-79)
  〜合唱とピアノまたはオルガンのための
ニコール・コルティ指揮
ノートルダム・ド・パリ少年聖歌隊
デイヴィッド・セリッグ(ピアノ)
 「リストの年」にこそ聴きたい、その音楽的深みを真の意味で伝えてくれる傑作合唱曲。
 作曲者の生前には演奏されることのなかった、そのあまりにも前衛的な試み、聴き手の胸を強く揺さぶり続ける響きの味わいを、精妙さで胸うつ精鋭合唱団の演奏で!

 いうまでもなく、今年はリスト生誕200 周年。
 若い頃から超絶技巧のピアニストとして、また驚くべき音楽語法を使いこなした先進的作曲家として、足かけ60 年ほどのキャリアを誇るこの音楽史上の巨人の世界をあらためて聴き深めてみたいところですが、こんな機会だからこそ目を転じてみたいのが「管弦楽作品」と「声楽作品」。そう、リストは1848 年からしばらくヴァイマール宮廷楽団の指揮者をしながら「交響詩」という新しい作曲ジャンルを開発したほか、1861 年からカトリックの総本山ローマに隠棲、1865 年にはフランチェスコ会に連なる下級司祭の資格を得て、かねてからの信仰生活をいっそう深めていったのですから、これら2分野はいわば、ピアノ曲と同じくらい重要なリストの側面にほかならないのです。
 そこで「リストの宗教声楽曲」を聴こうとするとき、ぜひとも最初に耳を傾けて戴きたいのが、この『十字架への道』。
 それは合唱をオルガンまたはピアノが支えるだけという簡素な、しかし19世紀いらい非常にひろく普及していた音楽演奏形態で奏でられる、一編の交響曲のような合唱音楽。
 ピアノというある種モノトーンの響きの世界であれほど無辺の和声言語・音楽言語を紡ぎ出してみせるリストが、ひとたび「合唱」という本来きわめて多元的な表現可能性を秘めている編成を使えるようになったなら...それも、キリスト教信仰というものを何十年も見つめ続けた晩年に、一切のむだをそぎ落とした晩期のあの作風を身につけてからのリストが、この合唱という演奏編成で音楽を綴ったなら・・・どれほど深く広い音楽世界を描き出せてしまうのか。
 作曲は1878〜79 年、ワーグナーの『ニーベルングの指輪』以後でもなお、時代はこの曲についてゆけなかったのか、リストの生前には演奏される機会がないままでした。
 ユダヤ祭司たちの策略で逮捕され、群衆にののしられて十字架にかけられ、全人類の罪をかぶって死にゆくイエスの運命を、ひたすら精妙な合唱でうたいあげてゆく——そのベースになっているのは、中世からつづくグレゴリオ聖歌の旋律。
 フランス屈指の、いや世界随一の統率力と表現力を誇る「少年離れした」少年合唱団、ノートルダム・ド・パリ少年聖歌隊を率いる大御所合唱指揮者ニコール・コルティの見据えた音楽世界は、なんと広大、なんと充実していることでしょう!オーストラリア出身のフランスの超・仕事人セリッグが響かせる、伴奏というよりも『マタイ受難曲』の福音書記者並に存在感のあるピアノの美しさにも注目。
 知れば知るほど注目すべき作品なのに競合盤がほとんど出ない異色作の、決して見過ごせない訳詞付名録音の登場です!

SAPHIR


LVC1130
(国内盤)
\2940
新たなる神話〜レベッカ・シャイヨ
 リスト(1811〜1886):
  ①バラード第2番 ロ短調
  ②愛の夢 第3番
  ③ラ・カンパネッラ(ブゾーニ版)
  ④ピアノ・ソナタ ロ短調
レベッカ・シャイヨ(ピアノ)
 レベッカ・シャイヨ!
 日本では音盤シーンはおろかコンサート・シーンでも情報皆無に等しかったフランスの俊才。しかしその驚くばかりのセンス抜群のピアニズムは、巨匠アラン・ムニエ(チェロ)、才人サンティヴ(ヴァイオリン)らフランスを代表する超実力派・ヴェテランたちとの共演による“室内楽版”ショパンの協奏曲第1番の録音(LVC1129)により明らかにされ、当盤はあっという間にベストセラーの仲間入りを果たした。
 彼女の師匠は、シュタルケルの共演者として名盤あまた、現在は米国ブルーミントンの銘教諭になっているジェルジ・シェベック。そして往年の巨匠レオナード・ホカンソン、さらに『ピアノ版フォーレのレクィエム』でも話題をさらったナディア・ブーランジェ最後の弟子エミール・ナウモフ…と、すでにこのあたりからただものじゃないと思っていたら、やはり、そのピアニズムが漂わせる堂々たる風格とにおいたつような香気は、ちょっと他に類をみないほど極上のものでした。
 そんな彼女が制作した録音がもうひとつ、やはりSaphir レーベルの主宰者から送られてきました。
 今年生誕200年、ますます注目の集まるフランツ・リストの作品集!
 ごらんのとおり、収録曲は完璧なまでにこの作曲家の「ベスト・オブ」になっていますが、それでも大向こう受けする超絶技巧中編8曲、とかそういった選曲ではなく、本当にピアノ音楽を愛する人がまず聴きたいリスト作品である「ロ短調ソナタ」と「バラード第2番」を軸に、広い範囲でつとに有名な「ラ・カンパネッラ」と「愛の夢」の2傑作をカップリング。こんな隙のないプログラムのリスト盤は、パフォーマーとしてもピアノ芸術家としても確たる自信がなければ、まず恐ろしくて制作できないでしょう。どの曲でも(曲を思い出してみてください)、これでもか!といった技巧のひけらかし方はせず、よどみなく流れる清水のごとく流麗なピアニズムで、むしろ曲想の穏やかさを際立たせようとするかのごとき弾き方で。そうすると聴き手の側としては、本当にリラックスしてそれぞれの音楽の世界に入り込める。そうして静々とリスト世界の深さを実感し、そうして聴き終えたあとの、疲れとは無縁の底知れぬ充実感。ショパン盤にも劣らぬ充実体験を、実感いただけるはずです!

LVC1120
(国内盤)
\2940
マリー=カトリーヌ・ジロー
 ショパン:即興曲&ロンド全集
  + エコセーズ、タランテッラ、追憶…

ショパン(1810〜1849):
 エロルドの歌劇『リュドヴィク』の
  エール「わたしは修道服を商う者」によるロンド・ファヴォリ 作品12
 ロンド 第1番 ハ短調 作品1
 ロンド 第2番 ヘ長調「マズルカ風」作品5
 ロンド 第3番 ハ短調 作品16
 パガニーニの追憶三つのエコセーズ 作品72
 タランテッラ 変イ長調 作品43
 即興曲 第1番 変イ長調作品29
 即興曲 第2番 嬰へ短調 作品36
 即興曲 第3番 変ト長調 作品51
 幻想即興曲 嬰ハ短調 作品66
マリー=カトリーヌ・ジロー(ピアノ)
 知る人ぞ知る秘曲発掘の才人ジロー、正攻法でも最強です。
 耳の肥えたピアノ音楽ファンならご存知、まさに“知る人ぞ知る、あの”超俊才、秘曲発掘のセンスと抜群のピアニズムをどちらも兼ね備えているという点ではフランスでも右に出る者はまずいないであろうヴェテラン異才、マリー=カトリーヌ・ジロー。
 彼女がこれまで録音してきた膨大な数アルバムには「ル・フレム作品集」「モーリス・エマニュエル作品集」「オクターヴ・フェルー作品集」「サマズイユ作品集」…と、フランス音楽史をひもとけば必ず出てくる名前でありながら作品像がほとんど知られていなかった「知られざる巨匠」の体系的録音がゾロゾロ含まれ、しかもその演奏内容があまりに完璧なため、フランスのディアパゾン・ドール賞や「ル・モンド・ド・ラ・ミュジーク」の最高賞「ショック」、権威ある「フランス音盤大賞」のような栄誉に輝いた盤も少なくありません(というか、続々そんな賞ばかり)。・・・というか、すでにフランス政府から文芸シュヴァリエ賞を授けられているあたりからも、いかに彼女がフランスの事情筋・芸術愛好家たちに支持されているかがわかることでしょう。
 そんなジローの制作するショパン・アルバム。
 ごらんのとおり、そのプログラムはショパンに傾倒するピアノ・ファン垂涎の選曲というか、まさにかゆいところに手が届く内容。なにしろ一番のポイントはやはり、ショパンの出版作品群の最初を飾る「作品1」のロンドが収録されているところ。そしてその流れで、ロンドと名のつくピアノ独奏専用の曲はエロルド(エロールとも表記されますが、最後のd はフランス人はだいたい読みます)の人気オペラにもとづくロンド・ファヴォリまで含め、4曲すべて収録。他の収録曲にもエコセーズ、タランテッラ、そして作品番号のない、ワルシャワを訪れたパガニーニに熱狂したショパンが書いたという「追憶」、となかなか聴く機会のないものばかり。よくぞ集めてくれました。
 そしてアルバムの最後には堂々、弾き手いかんで大きく印象の変わるあの三つの即興曲、そして超・有名曲の部類にも入るであろう「幻想即興曲」へ…と、考え抜かれたプログラム展開を通じ、ショパンのピアニズムを別の角度から考えさせてくれる周到な流れ。
 よどみなく流れる音の珠、曲の味わいをおのずと語らしめるセンスの良さ、ショパン・ファンにも他の多くの人々にも、じっくり聴き楽しんでいただきたい秘かなる名盤です。

SAPHIR


LVC1125
(国内盤・2枚組特価)
\3465
ジャン=パトリス・ブロス...各種クラヴサン(=チェンバロ)
 太陽王のクラヴサン〜6種類の銘器で聴く
  フランス・クラヴサン楽派、黎明期から最盛期へ〜


【CD I】
 ピエール・アテニャン(1494〜1551)編 ①パヴァーヌ
 アドリアン・ル・ロワ(1520〜1598)編
  ②リュートの調弦による小さなファンタジア
 ルネ・メザンジョー(1568〜1638)③サラバンド*
 エヌモン・ゴーティエ(1575〜1651)④シャコンヌとジグ*
 ピエール・シャバンソー・ド・ラ・バル(1592〜1656)
  ⑤歌曲「信じますか、おお美しき太陽」(メルセンヌ編?)
 ジェルマン・ピネル(1600〜1661)⑥サラバンド*
 ジャン・ドゥニ(1610〜1684)⑦調律が良好か確かめるプレリュード
 アンリ・デュモン(1610〜1684)⑧アルマンド
 エティエンヌ・リシャール(1621〜1669)⑨サラバンド
 ジャック・シャンピオン・ド・シャンボニエール(1601〜1672)
   ⑩クラント「イリス」⑪ サラバンド「若き西風たち」
 ルイ・クープラン(1626〜1661)
  ⑫組曲
   (プレリュード/シャンボニエールのアルマンド/
    ヴォルト/カナリー/アルデルのガヴォット)
 ジャック・アルデル(1643〜1678)⑬クラント
 ニコラ・ルベーグ(1631〜1702)⑭荘重なシャコンヌ
 ジャン=アンリ・ダングルベール(1629〜1691)
  ⑮シャンボニエールのクラント「イリス」とサラバンド「若き西風」
  ⑯リュリ『アルミード」の序曲
  ⑰シャンボニエールのトンボ—

【CD II】
 ルイ・ニコラ・クレランボー(1676〜1749)①ジグ
 ジャン=フィリップ・ラモー(1683〜1764)プレリュード(1708年の第1曲集より)
 マラン・マレ(1656~1728)③ポーランドの女
 エリザベート・ジャケ・ド・ラ・ゲル(1666〜1729)④フランドルの女
 ルイ・マルシャン(1669〜1732)⑤ヴェネツィアの女
 フランソワ・クープラン(1668〜1733)『クラヴサン奏法』(1716)所収のプレリュード(全8曲)
  *ダングルベールは編曲によるクラヴサン版  
ジャン=パトリス・ブロス
 ...各種クラヴサン(=チェンバロ)
 使用楽器:クーシェ・モデルによる17世紀アントウェルペン型ヴァージナル、G.サッバティーノ1710年製作によるオリジナルのリュート・クラヴサン、クラヴィオルガヌム、クレシ・モデルによる18世紀イタリア型楽器、ブランシェ・モデルによる18世紀フランス型楽器、クロル1774年製作によるオリジナル楽器(計6種)

 クラヴサン——いかにチェンバロという呼称が日本語で定着していようとも、フランス音楽を語る人たちはいつも、この国特有の鍵盤文化に敬意を表し、チェンバロのことをフランス語でそう呼びます(誰がクープランの『チェンバロ曲集』などと書くでしょう?あるいはラモーの『ハープシコード曲集』と書いただけで、何だか味わいも機微もすべて吹き飛んでしまう不思議さ...)。
 もともと17 世紀に「楽器の王」だったリュートのまねごとばかりしていたこの楽器の歴史を、もっと古い16 世紀のヴァージナルの時代まで遡り、17 世紀の「太陽王」ルイ14 世の治世を通じてどんどん新たな魅力が追求されてゆき、いつしか「フランス・クラヴサン楽派」というヨーロッパ随一の音楽世界ができあがるまでの過程を、CD2枚全36トラック、6種類のさまざまな古楽器・復元楽器を通じてじっくり堪能させてくれるのが、経験豊かなフランスの超実力派ジャン=パトリス・ブロスによるこの新譜!
 今回は完全新録音で、ブロス自身がフランスで出版したばかりの総合的なクラヴサン研究書に付属するCD、という位置づけで作られていることもあり、とにかく考え抜かれた構成の充実度がたまりません!
 ちなみにJ-P.ブロスという人物、フランス輸入盤を20世紀から買いあさってこられた方にはPierreVerrany でのユニークな18世紀もので特に有名なのでは...レパートリー開拓には一家言ある異才であるとともに、実はフランスではそれこそウィリアム・クリスティやヘレヴェッヘあたりが活躍するよりも前から、在学中の1970年代からクラヴサン奏者をしてきた超・大物でもあります(本当に筋金入りのコレクターなら、EMI 時代のアナログ盤をお持ちの羨ましい方もいらっしゃるかも?)。
 ガット弦を張ったリュート=クラヴサンの感動的にたおやかな響き、ヴァージナルとクラヴサンの違い、複弦のニュアンス、書法の変化…あらゆる瞬間、あらゆる細部に「クラヴサンを聴く喜び」が詰まっています。桁外れに本格派の逸品です!

SAPHIR


LVC1093
(国内盤)
\2940
フランス現代音楽界の重鎮作曲家であり、同時にフランス・ピアニズムの継承者
 ミカエル・レヴィナスのシューマン

ローベルト・シューマン(1811〜1886)
 ①謝肉祭 作品9 ②交響的練習曲 作品13
 ③蝶々 作品2
ミカエル・レヴィナス(ピアノ)
 ラヴェルとの関係で知られる異才ペルルミュテールから譲り受けたもの、そして作曲家として見据えてきたもの。透明感ある美音で艶やかに、シューマンの「響きと変化」を解きあかす妙演。

 ミカエル・レヴィナス。ご存じ、フランス20 世紀末の現代音楽シーンで最も注目すべきムーヴメントのひとつ「スペクトラル音楽」の重要な旗手のひとりで、響きの美しさと妙がきわだつ名品を着々と生んできた現代屈指のクリエイター。しかしレヴィナスにとって、作曲活動はその人生の「ひとつの顔」にすぎません——なにしろこの異才、碩学ジャック・デリダと論を競った20 世紀フランス屈指の哲学者、新たな存在論の思索家エマニュエル・レヴィナスを父に生まれ、その知的環境のなかで作曲・創作という行為と向き合いながら、そのかたわら一人の卓越したフランス派ピアニストとしても研鑽を積んできた人だったのですから。
 「作曲家の弾くピアノ?」といぶかしがることなかれ...作曲の師匠がメシアンとその妻イヴォンヌ・ロリオだったとすれば(考えてみれば、この二人もピアノを弾きますね)、ピアニストとしての研鑽の師は、かつてラヴェルと親交を持ち、その作品解釈について重要な助言を受けてきたという往年の異才、ヴラド・ペルルミュテール——ないしはフルトヴェングラーの共演者として有名なイヴォンヌ・ルフェビュールだったのですから。
 そのレパートリーも現代作品などではなく(新しい表現を求めるなら、彼なら「作曲」でその気持ちを晴らすのかもしれませんね)、すでにPierre Verany やAdes などで録音してきたのもベートーヴェンやシューマン、フランクなど19 世紀作品が大半。Aeon レーベルでもフランス最高峰のヴィオラ奏者ジェラール・コセと、飛びぬけてすばらしいヒンデミットを聴かせてくれていました(長くプレス切れでしたが、昨今2年ぶりにプレス復活とのこと。)。
 そんなレヴィナスが、パリの中心部にある劇場を拠点とするSaphir レーベルに録音した新しいソロ盤は、シューマン初期の傑作3編。バランスの良いプログラムですが、何より注目すべきは、3曲ともシューマン自身が(やがて悲恋の末に妻となる)クララ・ヴィークへの気持ちに目覚める前の作品であること。そしてそれらが、シューマンの作品群のなかでもとびきり「色彩感」「多彩さ」「絶えず変化してゆく響き」といったものを強く意識した音楽であること——このあたりはさすが、「音」を音響の波形レヴェルで分析して美しい響きへと向かおうとする作曲家の一派「スペクトラル楽派」らしい意識といえそうです。
 事実、アルバムに関する興味深いインタビュー(全訳添付)のなかでもレヴィナスはこの点に言及、ピアノというものが「音響空間をつくりだす存在」であることにふれ、その観点からシューマン芸術の粋を解きあかしてみせます(「クララへの想い」に言及せずシューマンの芸術性を追っているのがポイント)。こういった意識をそのまま「音」に結実させた解釈は、残響の使い方をつよく意識した精緻なピアニズムと、全体の構造と物語性を見据えた展開のつくり方がまさに聴きどころ。
 「創作芸術」の原点を再認識させてくれる音楽内容、充実の解説、フランスのレーベルならではの美しいパッケージ…CD アルバム制作かくあるべし、の貴重な1枚。


AEON旧譜
ジェラール・コセ&ミカエル・レヴィナスのヒンデミット

MAECD0312
(国内盤)
\2940
ヒンデミット(1895〜1963):
 1. 無伴奏ヴィオラ・ソナタ
 2. ヴィオラとピアノのためのソナタ
ミカエル・レヴィナス(1949〜):
 3. からみあう文字II〜無伴奏ヴィオラのための
 4. からみあう文字IV〜弦楽五重奏のための *
ジェラール・コセ(va)
ミカエル・レヴィナス(p)
*ルートヴィヒ四重奏団
仏Classica 誌 10 点満点レビュー受賞!!フランス最高峰!バシュメットやW.クリストと並ぶヴィオラの巨匠、満を持してのヒンデミット!
しかし驚かされるのは、ひたすらみずみずしい、透明なピアノ—ー息をのむ高次元さ現代作曲家=稀代の解釈者。
ヒンデミットは、こんなにきれいな音を書いていたのか…!マーラーやドビュッシーらの生きていた頃、いわゆる「近代」になって急激に充実しはじめたヴィオラのための音楽のなかでも、自らヴィオラ奏者でもあったドイツ随一の作曲家、ヒンデミットの二つのソナタといえば、言わずと知れた傑作中の傑作!

ZIG ZAG TERRITOIRES


ZZT071102
(国内盤初紹介)
\2940
国内盤初紹介 エンリーコ・オノフリ
 「ヴァイオリンの歌声」
  〜17世紀イタリア、声楽は器楽になる〜


【登場する作曲家】
 マルコ・ウッチェリーニ(1603 頃〜1680)
 ジョヴァンニ・バッティスタ・フォンターナ(1571頃〜1630頃)
 クラウディオ・モンテヴェルディ(1567〜1643)
 リッカルド・ロニョーニ(1550 頃〜1620 頃)
 ダーリオ・カステッロ(1590頃〜1658頃)
 カルロ・ジェズアルド・ダ・ヴェノーサ(1566〜1613)
 ジョヴァンニ・バッサーノ(1558頃〜1617頃)
 ジローラモ・フレスコバルディ(1583〜1643)
 ジョヴァンニ・アントニオ・パンドルフィ・メアッリ(1629〜1680以降)
 フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ(1690〜1768)
【収録作品】
 ①2声のソナタ(チーマ)
 ②ソナタ「満足したルチミニア」(ウッチェリーニ)
 ③第2ソナタ(フォンターナ)
 ④コルネットとトロンボーン、またはヴァイオリンとヴィオローネのためのソナタ(チーマ)
 ⑤第3ソナタ(フォンターナ)
 ⑥マドリガーレ「麗しきアンジョレッタが」*(モンテヴェルディ)
 ⑦「この別れに際して、なお」によるパッサッジョ(ロニョーニ)
 ⑧第2ソナタ(カステッロ)
 ⑨マドリガーレ「涙を拭いて、その美しい目から」(ジェズアルド/オノフリ編)
 ⑩第2リチェルカータ(バッサーノ)
 ⑪マドリガーレ「かたき心に武具をまとい」*(モンテヴェルディ)
 ⑫アリア「そよ風がそんなに優しく吹くなら」*(フレスコバルディ)
 ⑬ソナタ「ラ・チェスタ」(パンドルフィ=メアッリ)
 ⑭ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラによるカノン(ヴェラチーニ)*: オノフリ編の器楽版エンリーコ・オノフリ(vn)アレッサンドロ・タンピエーリ(vn、リュート)マルグレート・ケル(バロック・ハープ)リッカルド・ドーニ(cmb/org)アレッサンドロ・パルメーリ(vc)マリア・クリスティーナ・ヴァージ(va)
エンリーコ・オノフリ(バロック・ヴァイオリン)
Ens.イマジナリウム(古楽器使用)
 昨年に続き、今年も来日公演が間近! イル・ジャルディーノ・アルモニコのスーパープレイヤー、今や日本でもファン騒然の鬼才!

 イル・ジャルディーノ・アルモニコのファンにしてみれば「ようやく!」という感もあるかもしれませんが、ここ数年で日本でも大いに知名度を上げたイタリア古楽界きっての俊才中の俊才、エンリーコ・オノフリ。
 イタリアはさすがヴァイオリン発祥の国だけあって、古楽界にも世界的に大暴れしているヴァイオリニストが少なくありませんが(ビオンディ、カルミニョーラ、ガッティ...)オノフリはビオンディが活躍する前からサヴァール御大のアンサンブルでラテン系古楽界を盛り上げてきた筋金入りの実力派で、全盛期のWarner/Teldec では「イル・ジャル」の屋台骨として、縦横無尽の超絶技巧とカンタービレで全世界を魅了してきた大ヴェテラン。去年・今年とAnchor Records で筋金入りの18 世紀アルバムを発表、ソロ奏者としての存在感をあらためて日本にもアピールするにとどまらず、今秋も昨年同様に来日が控えているとか。
 そんな俊才の本格派録音がZig-Zag Territoires からも1点——そのきわめて興味深くもセンス抜群な解説の日本語訳とともに、国内仕様でお届けする次第です。
 それは相当コアな古楽企画もばんばん出してきた、俊才プロデューサーのいるレーベルなればこその1枚。「人間の歌こそ最高、すべての楽器は歌声を模倣すべし」とされていた一方、楽器だけで演奏される音楽はただの余興、即興演奏か歌の編曲くらいしかなかった頃から、17 世紀前半のあいだにイタリア人はいかにヴァイオリン音楽を盛り上げてきたか?そのダイナミックな歴史を、絶妙の演奏を通じて肌で実感させてくれる、題して『ヴァイオリンの歌声』。その変幻自在の運弓は、まさに歌声を操るかのごとくガット弦を思うがままに操り、モンテヴェルディの重唱作品を「歌手なし」で弾いてみせたトラックでは、ほとんど歌詞さえ聴こえてくるかのような、もはや魔術的境地とでもいうようなオノフリ世界を堪能させてくれます。
 どんどん吸い込まれてしまう求心力たっぷりのアンサンブルに驚きクレジットを見てみれば、異能の古楽ハープ奏者ケルに多忙をきわめるバロック・ヴィオラ(!)の異才タンピエーリ...とスーパープレイヤー続々!欧州古楽界ならではの、桁外れの企画とクオリティに酔いしれさせてくれる妙盤です。

ZIG ZAG TERRITOIRES


ZZT110401
(国内盤)
\2940
プーランク、フォーレ、ドビュッシー
 〜フランス近代の3巨頭と、フルート〜

 フランシス・プーランク(1899〜1963)①フルートとピアノのためのソナタ
 ガブリエル・フォーレ(1845〜1924)
  ②フルートとピアノのための小品(1907)
  ③シシリエンヌ 作品78 ④ファンタジー 作品79
  ⑤子守唄(ヴァイオリンとピアノのための)作品16
 クロード・ドビュッシー(1860〜1918)
  ⑥フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ
  ⑦シランクス〜無伴奏フルートのための
   (原作の朗読付版/朗読なし演奏 各別トラック収録)
  ⑧『牧神の午後」への前奏曲(フルートとピアノ版)
 フランシス・プーランク(1899〜1963)
  ⑧笛吹きが廃墟をあやす 〜無伴奏フルートのための
ジュリエット・ユレル(フルート)
アルノー・トレット(ヴィオラ)
クリスティーヌ・イカール(ハープ)
エレーヌ・クヴェール(ピアノ)
フロランス・ダネル(「シュランクス」の語り)
 なめらかで、艶やか。
 パリ音楽院出身→ゲルギエフ時代からロッテルダム・フィルのソロに。フランス・フルート楽派と諸外国をつなぐこの天才奏者の「心」は、やはりフランスにあった。
 ヴィブラートを抑えた丸みある音色はどこまでも玄妙、古典美でも、印象派的繊細でも。

 「管楽器の王国」と言えば、やはりフランス——この新しいアルバムは、そのことをあらためて痛感させてくれる内容!
 ヴァイオリンやピアノ、チェロといった、昔から濃密な表現が突き詰められてきた楽器群のための音楽ばかりがもてはやされていたドイツ語圏の室内楽を横目に、すぐれた演奏家たちと製作家たち、そして稀代のオーケストラ作曲家たちが心を一つにして「管楽器のための芸術を深めよう!」と、フランスの音楽関係者たちが積極的に管楽器とかかわりあうようになったのが、19 世紀末。おかげで、フランス近代音楽の美質がきわめて理想的なかたちで反映された傑作も多々生まれたのでした。ここではごらんのとおり、フォーレ、ドビュッシー、プーランク...と、およそ人気の点でも申し分ないフランス近代の3大家の曲ばかりがよりすぐられ、彼らがフルートのためになした貢献の最も美しいところを、パリ音楽院出身のフランスの俊英がいともあざやか・艶やか・そしてなめらかに描き上げてくれます。
 軸になるのは、プーランク晩年の多元的な傑作ソナタと、ドビュッシーがやはり晩年に手がけた、あのハープとヴィオラを伴う絶美のトリオ。
 これらの作品はフランス人の演奏家の手にかかるとひときわ魅力的なニュアンスが引き立ちはじめるのですが、ここでは吹き手がひと癖ある俊才だからでしょうか、いずれの曲も静々と存在感を放ち、いつの間にか吹き手の世界にからめとられてしまう。そう、妙にリキんだヴィブラートはなく、吹き口にしつこさはいっさいないのに、まるで手慣れた職人芸で手の込んだアシエット・デセールを仕上げてゆくスイーツ職人(陳腐なたとえですみません…)のように、軽やかに「いちばん欲しい音」を見つけてゆくのです。
 こんなにも周到な吹き手ジュリエット・ユレルは、1998 年、つまりゲルギエフが名盤続出していた頃からロッテルダム・フィルでソロ奏者をつとめてきた経験豊かな異才!
 その繊細で巧みな音楽作りに艶やかに絡むのは、アンサンブル・コントラストの録音やブルッフの協奏曲などで実績もあげている異才ヴィオラ奏者A.トレット、ソリストとしても注目すべき活躍を続けるC.イカールに、ユレルと長年にわたってデュオ・パートナーでありつづけてきた俊英エレーヌ・クヴェール。このピアニストも音盤界にソロ名盤が多々ある名手ですから、プーランクやドビュッシー作品でフルートと対等以上の存在感を放っていたとしても不思議はないわけです。...って、ドビュッシー?そう、このアルバムの目玉のひとつには、この作曲家がフルート独奏で開始してみせた異色管弦楽曲「牧神の午後への前奏曲」を、フルートとピアノのために編曲したヴァージョン(フルート通には有名?)があるのです!さらに「シュランクス」では通常通りの無伴奏版と、自筆譜に添えられていた詩の朗読をつけた、音楽内容も異なる別演奏まで収録。きわめて充実度の高い本場奏者の周到企画なのです!

ZIG ZAG TERRITOIRES


ZZT110502
(国内盤・訳詞付)
\2940
ヴェックマン:教会コンチェルト、室内楽と独奏曲
マティアス・ヴェックマン(1616〜1674)
 ①教会コンチェルト「なにゆえ、独りで座っているのか」
 ②4声と通奏低音のためのソナタ 第2番
 ③教会コンチェルト「泣くな、見よ」
 ④コラール・ファンタジー「来たれ、聖なる霊」(オルガン独奏)
 ⑤4声と通奏低音のためのソナタ 第9番
 ⑥チェンバロ独奏のための組曲 ニ短調
 ⑦詩編第126編「主がシオンの捕われ人を」
ビビアヌ・ラポワント(cmb)&
ティアリー・メデール(org)指揮
アンサンブル・レ・シクロープ(古楽器使用)
ユジェニー・ワルニエ(S)
ダミアン・ギヨン(C-T)
ロバート・ゲチェル(T)
ブノワ・アルヌー(Bs)
 ドイツ・バロック、旧世代から新世代へ——あまりに見過ごされすぎていたハンブルクの名匠マティアス・ヴェックマン。
 緩急自在のその作風を、声楽曲・室内楽曲・チェンバロ曲・オルガン曲、とすべての角度からみずみずしくも緻密な古楽解釈で。

 このところ、フランス語圏の古楽奏者たちによるドイツ語圏古楽の掘り起こしが益々めざましくなっているような気がします。
 このアルバムも、ここ10 数年来ヨーロッパで最も古楽が市民権を得ている国のひとつ、フランスならではの瑞々しい感性で綴られたヴェックマン像を、声楽・器楽・室内楽、とあらゆる分野からよりすぐられた大小七つの傑作を通じて味わえる逸品。
 でもヴェックマンとは誰か?・・・というと、実はこの作曲家、ブクステフーデをへてバッハへと至るドイツ北方のオルガン芸術の大家として有名なだけでなく、実は17 世紀ドイツ語圏最大の港町ハンブルクで、町の名士たちからもきわめて信望の厚かった「17 世紀のテレマン」とでもいうべき多芸な作曲家だったのです。
  17 世紀ドイツ語圏の音楽というと、基本的にシュッツの荘重かつ深ーい声楽作品や、ブクステフーデの壮麗なオルガン音楽や、あるいはオーストリアのユニークな描写音楽、フランス音楽そのままなフローベルガ—の鍵盤作品…と「重厚」か「キッチュな魅惑」しかないかのような印象があるかもしれませんが、このヴェックマンという作曲家はその意味で実にバランスのとれた作風を誇っており、イタリアのバロック・オペラ作曲家たちにも劣らぬメロディセンス、人心とろかす和声進行の妙、迫真の演奏効果を生む半音階進行使いの巧みさ...と、その作品群に聴く作法の多彩さには目をみはるばかり。
 さて、演奏陣ですが、かつてムジカ・アンティクヮ・ケルンのArchiv 録音でもしばしばクレジットされていた超・実力派T.メデール(メーダー)と、カナダ出身の多忙なチェンバロ奏者ラポワントを中心に据える磐石の体制。そして彼らのソロも1曲ずつ収録しながら闊達な室内楽、ソリストたちの歌唱力が大きくモノを言う教会コンチェルト、と多彩な選曲。よく見れば歌い手4人は全員、他の録音でも大活躍している「いま、最も多忙ぱ」な古楽歌手ばかり。
 「バッハ以前」の音楽世界をCD1枚で概観できるのがヴェックマンのいいところ、その理由も解説訳文できっちり解き明かされます。

ZIG ZAG TERRITOIRES


ZZT090803
(国内盤・訳詩付)
\2940
ヤン・ディスマス・ゼレンカ(1679〜1745):
 オラトリオ『贖い主イエスの聖墓所についての悔悟』ZWV63(1736)
ヴァーツラフ・ルクス指揮
コレギウム1704(古楽器使用)
コレギウム・ヴォカーレ1704(合唱)
 聴きはじめた瞬間から圧倒的な存在感で迫る——ゼレンカ宗教曲は、バッハと同等以上?
 日本語解説付で好評を博した『誓願のミサ』に続き、コレギウム1704が新たに録音した傑作盤がもうひとつ。緩急自在のバロック・サウンド、深くエキサイティングなこの大作!

 4月に新譜リリースして以来、『朝日新聞』で特選、さらに『サライ』誌上でも紹介され、今なお静かな売れ行きが定着しつつあるのが、ZigZagTerritoires に録音されたゼレンカ『誓願のミサ』。バッハの同時代人たちのなかでも、このチェコ出身の異才の書く教会音楽はひときわ素晴らしい!と、日本の熱心な古楽ファンたちのあいだで噂されるようになったのが、確か今から20 年ほど前でしょうか。昨今では、いくつかの器楽合奏曲(「カプリッチョ」と呼ばれる組曲や多重協奏曲など)はもはや古楽器でも録音乱立状態になってきたかたわら、本当にわずかずつではありますが、「バッハに勝るとも劣らない、いや同等以上?」とも称される宗教曲の録音も増えてきたように思います。
 ただ歌詞訳・解説訳付の国内流通盤は、やはり滅多にないまま。
 そうした中、キリスト教的な含みを超えて万人に語りかける音楽力にあふれた『誓願のミサ』で痛快名演を聴かせてくれた“ゼレンカの同郷人たち”、俊才V.ルクス率いるチェコ随一の古楽集団コレギウム1704 が、Zig-ZagTerritoires に録音したさらなる傑作盤のリリースは、その渇をいやしてあまりある満足度をお約束できる超・名演中になっています。
 ゼレンカがコントラバス奏者として仕えはじめたドレスデンの宮廷では、後から宮廷作曲家として雇われた世界的天才ハッセのオペラが人気で、彼は日陰的存在に甘んじていたといいますが、同僚のピゼンデルはその音楽を熱狂的に讃えていたそうですし、テレマンやバッハのような外地の同時代人たちもその才能にほれ込んで、いくつもの作品を演奏したり楽譜出版したりしたものでした。本盤の収録作品は、「贖い主(=全人類の罪をかぶって十字架での苦しみを味わったイエス・キリスト)」の「聖墓所(処刑3日後に復活するまで遺骸が安置されていた場所)」について思いをはせる、四旬節(復活祭に先立つ節制期間)の上演を見込んで作曲された大作オラトリオ。マグダラのマリア、聖ペテロ、ダビデ王という意外な登場人物たちが思いを綴るアリアとレチタティーヴォの交錯は、全曲のダイナミズムもさることながら(オーボエ4本を加えた弦楽編成の、何と変幻自在でエキサイティングな表現語法!チェコの名手たちの演奏手腕も「誓願のミサ」同様、息をのむ技量です!)、アリアは演奏時間10 分を超える大作ばかりで、歌詞がイタリア語なこともあり、まさにバロック末期(というか「ギャラント様式全盛期」)ならではの美しいメロディと迫真の和声語法に魅了しつくされること間違いなしです。
 コレギウム1704 の演奏がコントラスト豊かに「いまどきの古楽サウンド」の最高峰をきわめたような弾き方なためか、BGM にしていてもいつの間にか耳をそばだててしまう、気がつけば長大な作品全体を聴きとおしてしまう...バッハの音楽が好きなら、おそらく古楽慣れしていなくても、この演奏に引きずり込まれずにはいないはず!
 『誓願のミサ』が静々とセールスを伸ばしつつある今こそアピールしたい、一般ファンの古楽方面への興味を刺激すること間違いなしの逸品なのです。


ZIG ZAG 旧譜
ゼレンカ:ミサ曲「誓願のミサ」

ZZT080801
(国内盤)
\2940
ヤン・ディスマス・ゼレンカ(1679〜1745)
 ミサ曲 ホ短調 ZWV18「誓願のミサ」(1739)
ヴァーツラフ・ルクス指揮
コレギウム・ヴォカーレ1704、
Ens.コレギウム1704(古楽器使用)
 早くから由緒正しき精鋭楽団、ドレスデン宮廷楽団にヴィオローネ(コントラバス)奏者として参加していたチェコ出身の音楽家ゼレンカは、後から人気作曲家ハッセが仕事仲間に加わり、宮廷の趣味を最新のイタリア・オペラ全盛にしてしまったため、宗教音楽の大家として活躍をみせるチャンスに恵まれなかったと言われていますが、敬虔なカトリック教徒だったゼレンカの残した教会音楽は、いわばプロテスタントにおけるバッハの作品にも充分すぎるほど張り合える、驚くべき表現力が凝縮された傑作の連続にほかなりません。
 1738 年、大きな病魔に襲われ「この病を生き延びたら、神への感謝をミサ曲のかたちで残す」と願いをかけたゼレンカが、翌年めでたく快復したあとに作曲した『誓願のミサ』は、この作曲家の晩期における途方もない深まりを十全に示してやまない名品——いや、無名古楽作品と思って聴き始めたら、おそらく仰天してしまうに違いありません!
 バッハの大作群にも比しうる長大さ、先の読めなさ、和声展開の妙、息をもつかせぬ躍動感、静謐な弱音の響き...圧倒的な聴きごたえは、CD1枚の収録時間を埋め尽くす演奏時間がむしろ短く感じられるほど。躍進めざましいチェコ古楽界をベースに、すでにヨーロッパでは引く手あまたの多忙な俊才ヴァーツラフ・ルクスの率いる精鋭集団が、合唱の他はオーボエ属と弦だけとは思えないほど精緻なアンサンブルで、その魅力を十二分に伝えてくれます。



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