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第71号
お奨め国内盤新譜(1)
2013.6.18〜2013.8.16


AEON



MAECD1111
(国内盤)
\2940
バッハ×イタリア×ピアノ
 〜イタリア様式の鍵盤作品さまざま、

 協奏曲、変奏曲、カプリッチョ...〜
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 1.協奏曲ヘ長調BWV978〜ヴィヴァルディによる
 2.協奏曲ニ短調BWV974〜A.マルチェッロによる
 3.協奏曲ト長調BWV973〜ヴィヴァルディによる
 4.協奏曲ハ短調BWV981〜B.マルチェッロによる
 5.協奏曲ヘ長調BWV971「イタリア協奏曲」
 6.イタリア様式によるアリアと変奏 BWV989
 7.カプリッチョBWV992「最愛の兄の門出に」
オリヴィエ・カヴェー(p)
 バッハの音楽を、現代ピアノで——しかもチェンバロの二段鍵盤で対比を演出するような曲を、現代ピアノでわざわざ...聴く価値がいかにあるかということは、一聴すれば、わかるはず!
 ナポリ系の光あふれる音楽表現あればこそ、名手カヴェーの艶やかなピアニズムに陶酔。

 バッハが生きていた頃、ピアノという楽器はまだ本当に実験的に作られはじめたにすぎなかったことは、誰もがよく知るところ——新発明の珍しい楽器としてフリードリヒ大王のもとに置いてあったところ、バッハは少し弾いてみただけで色々問題点を発見し、難癖をつけたとも言われています。しかし彼とて、音量の変化を鍵盤で細やかに弾き分けられる機構そのものにはさぞや、食指が動かされていただろうことは、容易に想像がつくところ。
 彼らが鍵盤の曲をおもに弾いていたのは、タッチのニュアンスが音量には反映されない、どう弾いても同じ音量の音しか出ないチェンバロという楽器——しかしだからこそ、当時の人々の音量変化へのあくなき欲求から、チェンバロでも鍵盤を2台そなえつけ、片方で弱音、片方で強音を弾けるようにしたタイプのものが広く出回るようにもなりました。
 バッハの鍵盤楽曲のなかには、この二段鍵盤の音量対比をうまく生かして、さながらオーケストラと独奏者が対峙しているかのような箇所がいたるところに出てくる鍵盤楽曲も多々含まれているのですが、そのきわめつけはやはり、若い頃ヴィヴァルディやマルチェッロ兄弟など最先端のイタリア人作曲家たちによる協奏曲の編曲!イタリアの音楽様式というのは当時たいへんファッショナブルで魅力的なものでしたから、それを自分のものとして身につけるためには、自分で弾いてみるのが一番...とばかり、バッハは入手した協奏曲の楽譜を次から次へと鍵盤独奏用に編曲し、その過程でのちの「ブランデンブルク協奏曲集」などにつながるイタリア合奏曲様式に習熟したそうです。そんな、明らかに二段鍵盤チェンバロという楽器の特性に密着して書かれた音楽を、どうして現代ピアノであえて弾かなくてはならないのか?古楽ファンの方々のなかにも、そう考える人は決して少なくはないでしょう——
 しかし!現代ピアノでも素晴しいバッハが弾けることは、シフ、ペライア、コロリョフ、エマール...といった超一流の個性派ピアニストたちがさんざん証明してきたとおり。
 本盤に登場するオリヴィエ・カヴェーは、ピアノ音楽の玄人ファンをときめかせるに足る“知る人ぞ知る”な流派、ナポリ系の演奏伝統に連なる名手なのですが(その師匠はアルド・チッコリーニやマリア・ティーポだった...と言えば充分でしょうか)、ここでは前作のスカルラッティ盤でみせた明朗かつ緩急機微ゆたかなピアニズムをいかんなく発揮して、これらイタリア様式によるバッハ作品の数々の魅力が、音量の対比以外にもいたるところに潜んでいることを、圧倒的な説得力で知らしめてくれます。ピアノ・ファンなら、これは「聴くべきバッハ」かと——知らずにいるのがもったいないこの稀有の境地!
 前作スカルラッティ盤に次ぐ快挙が期待できそう!

ALPHA



Alpha192
(国内盤・訳詞付)
\2940
パーセル 不滅の英国人作曲家
 〜歿後出版された曲集からの作品を中心に〜

ヘンリー・パーセル(1659〜1695):
 ①喇叭をあたりに響かせろ
 ②ああ!恋をするのは何と喜ばしいこと
 ③おお孤独よ、わたしは喜んでおまえを選ぼう
 ④アルマンド ニ短調 ⑤まだ、わたしは願いをかけている
 ⑥あえて懸念の種を探すことはない ⑦クラントとホーンパイプ ニ短調
 ⑧音楽はつかのま ⑨薔薇よりも芳わしく ⑩新しいグラウンド ホ短調
 ⑪自然の声とはこういうものだ ⑫薔薇を満たした揺籠で
 ⑬ホーンパイプ ホ短調
 ⑭あなたは天におられ、何でもおできになると伺いました
 ⑮ああ、わたしたちは何と幸せなのでしょう
 ⑯嘆きの歌 〜ああ、泣かせておいて、いつまでも
 ⑰或るグラウンド ニ短調 ⑱ロンド ニ短調
 ⑲ヴァイオルをかき鳴らせ、リュートをつま弾け
 ⑳プレリュード イ短調 (21)ただいたずらに、恋の笛は
 (22)夕暮れどきの讃歌 〜今や太陽は、その輝きに覆いをかけ

《使用楽譜典拠》
 ◆『英国のオルフェウス OrpheusBritanicus』(1698/1702)
 ◆『音楽の祝宴 The Banquet ofMusick』(1688)
 ◆『精選曲集:ハープシコード、またはスピネットのための手習い
  A choice Collection of Lessonsfor the Harpsichord or Spinett』(1705頃)
 ◆『聖なる音楽さまざま Harmonia Sacra』(1714)
ニコラ・アクテン(バリトン独唱、ヴァージナル、バロックハープ)指揮
レイナウト・ファン・メヘレン(T)
スケルツィ・ムジカーリ(古楽器使用)
 その偉大さと普遍性は、意外に知られていないはず——伝わりにくいパーセル声楽の魅力を、完成度の高いアルバムひとつでストレートに痛感させてくれる。古楽大国ベルギーに集う異才たちとAlphaが手を携えあい、こだわり強く仕上げたパーセル盤は、まさに極上。

 「英国のオルフェウス」と讃えられたヘンリー・パーセルは、すぐれた作曲家が生まれないと言われた英国(って、これはビートルズに代表される20 世紀と、全欧州の音楽家が英国に憧れた15 世紀以前には一切通用しない「ロマン派クラシックの偏見」なのですが。)で、唯一英国人たちが誇れる大家でありつづけた、早世の天才作曲家——
 しかし、その魅力はいったいどれほど実感として理解されているのでしょう? 英語という、およそ17 世紀後半のバロックな音作りに乗せにくそうな言葉を易々と、きわめてわかりやすく玄妙なメロディと和声で音楽化していったパーセルの手腕がいまひとつ世界的に理解されていないとすれば、それは彼の書いた傑作に、英国国教会の特殊な演奏環境なしには成り立ちにくいオードやウェルカム・ソングなどが多く含まれていることとも、おそらく無縁ではないのでしょう(この点は、演奏編成もユニークなら音楽内容も歌手陣に決して優しくはない、あのラモーの一連の歌劇作品にも相通じるところかもしれません)。
 古楽大国ベルギーで、自ら歌い手でありながら鍵盤や撥弦楽器も弾きこなす多芸派ニコラ・アクテン率いるスケルツィ・ムジカーリは今、そんなパーセルの名品を個々のアリア単位で認識している歿後出版の曲集に着目、それらから入念に声楽名品をよりすぐり、器楽作品とバランスよく並べてみせることで、1枚のアルバムとして非常に完成度の高いパーセル傑作選をつくりあげてみせました。
 制作が稀代の古楽ブランドたるAlpha レーベル、録音技師はもとラ・プティット・バンド他のバロック・ヴァイオリン奏者だったRamee レーベルのライナー・アルント...という夢のような布陣で、あふれんばかりの古楽愛を全員が注ぎ込んでつくりあげられた本盤の魅力は、おそらく音を出しはじめた瞬間から直感的に伝わってくると思います。
 英語圏の古楽奏者たちが奏でる正真正銘本場のパーセルもさることながら、古楽の本場にして英国近代文化のルーツがたっぷり息づいている欧州大陸側の古楽奏者たちが“本気で”パーセルと向き合ったとき、かくも普遍的なパーセルの魅力が浮き彫りになるのかぱと驚嘆——極上フランス古楽やイタリアのハイテンション系とも易々と伍しうる、多彩な古楽器の音色もあざやかな本盤にふれれば、なるほどパーセルは英国にいなくても不滅の名声を博したに違いない...と強く感じられるはずぱ解説もAlphaだけに充実至極(歌詞ともども全訳付)、商品価値の高い逸品に仕上がっています!
 


Alpha192
(国内盤)
\2940
当時世界随一の宮廷楽団があったドレスデン
 ヴィヴァルディ/ ドレスデン宮廷のための協奏曲さまざまVol.1

アントニオ・ヴィヴァルディ(1678〜1741):
 1.ヴァイオリン協奏曲ヘ長調 RV569
 2.ヴァイオリン協奏曲ヘ長調 RV568
 3.ヴァイオリン協奏曲ニ長調 RV562
  「聖ロレンツォの祝日のために」
 4.ヴァイオリン協奏曲ヘ長調 RV571
 5.ヴァイオリン協奏曲ヘ長調 RV574
 6.アダージョ 〜
  ヴァイオリン協奏曲ヘ長調 RV568 緩徐楽章の別ヴァージョン
ゼフィラ・ヴァロヴァー(バロック・ヴァイオリン独奏)
アンネケ・スコット、
ジョゼフ・ウォルターズ(ナチュラルホルン)
アンナ・スタール、
マルクス・ミュラー(バロックオーボエ)
アレクシス・コセンコ指揮
Ens.レザンバサデュール(古楽器使用)
 Alpha レーベル今年下半期のとてつもない勢いは、この1枚から——
 世界随一の宮廷楽団ドレスデンの凄腕奏者たちを想定して、協奏曲の達人が多彩な音色をいかんなく駆使?

 最新研究が明かすホルンや低音楽器の謎、エキサイティングな古楽器演奏にフィードバックぼ創設当初、数年にわたって「ほとんどのアルバムは古楽器演奏」だった筋金入りの小規模レーベルAlpha ですが、最近は確かに(エリック・ル・サージュのシューマンやフォーレのシリーズに代表されるとおり)現代楽器でも痛快な内容のアルバムを多発するようになってきました。
 しかし、このレーベルのルーツでもある「古い時代の音楽は、当時の楽器と奏法で」という古楽器解釈路線では、やはりとてつもないアイテムが続出するのは今も変わらず——しかも、さまざまなレーベル運営経験をへた今、知られざる作曲家の逸品を掘り出してくるセンスもさることながら、大作曲家の思わぬ側面をありありと印象づけてくれる好企画が次から次へと出てくるのも、まったく頼もしいかぎりでございます(最近でも、シャルパンティエの隠れ名作やバッハ『ミサ曲ロ短調』の原型版など、痛快な企画が相次ぎました)。
 今年後半もかなり魅力的なラインナップ、思いがけない超大物演奏家の参入などが予定されているのですが、そうした快進撃の口火を切るかのように現れるのが、このヴィヴァルディ・アルバム——指揮はフランス古楽界でもとびきり多忙なトラヴェルソ奏者のひとりアレクシス・コセンコで、彼はこれまでAlpha レーベルですでに3枚、ポーランドの凄腕集団アルテ・デイ・スオナトーリ(いわば「ポーランドのオーケストラ・リベラ・クラシカ」というような存在で、レイチェル・ポッジャーと組んでのヴィヴァルディ盤(Channel Classics)で一躍有名になったのも10 年くらい前ですね)とともにC.P.E.バッハやヴィヴァルディのフルート協奏曲を録音、そのたびごと自ら解説を書き起こし、腕のたつ笛吹きとして、また周到な音楽学者ぶりも、その存在感をいかんなく発揮してきたところ。今回はあらためてヴィヴァルディで、指揮に徹して自らの新団体を率い、ヨーロッパ東西各国から集まった信頼のおける超・実力派たちをみごとにまとめながら、ホルン、オーボエ、ファゴット、コントラファゴット(!!)...とさまざまな楽器の音色の交錯を愉しませてくれるのです。
 「音色の交錯」…?そう——今回のテーマは「ドレスデンのヴィヴァルディ」。かの大バッハも憧れた、弦楽器も管楽器も非常に層のあつい名手揃いのオーケストラがあったドレスデン宮廷では、最新のイタリア様式にも非常に敏感で、ハイニヒェンやピゼンデルといった名手たちをイタリアに送り込んでは最新様式をフィードバックさせていたことで有名ですが、最近の研究が進むにつれ、ヴェネツィアの巨匠ヴィヴァルディがこの宮廷に果たした役割の大きさが改めて強く認識されるようになってきた様子。しかもホルンやファゴットなど異色楽器を多用する大型ヴァイオリン協奏曲も、実は思いのほか作曲年代が早かったらしいことも明らかになりました。
 完璧な腕前でスリリングに音を重ねてゆく名手たちの技量もさることながら、曲ごと微妙に違う音の取り合わせにヴィヴァルディの妙技を知るのも実に面白いぼ今回もかなり充実した解説付で(全訳添付)、知る愉しみにも事欠きません!

ARCANA 



Mer-A365
(国内盤)
\2940
ヴィヴァルディ:ファゴット協奏曲さまざま
 〜室内楽編成による〜

アントニオ・ヴィヴァルディ(1678〜1741)
 1.ファゴット協奏曲 変ホ長調 RV483
 2.ファゴット協奏曲 ハ短調 RV480
 3.ファゴット協奏曲 ト長調 RV494
 4.ファゴット協奏曲 イ短調 RV500
 5.ファゴット協奏曲 ハ長調 RV474
 6.ファゴット協奏曲 ニ短調 RV481
 7.ファゴット協奏曲 ハ長調 RV472
アルベルト・グラッツィ(バロック・ファゴット)
アンサンブル・ゼフィーロ(古楽器使用)
 ゼフィーロが帰ってきた!! 新しい季節に、Arcanaに——創設メンバーにして経験豊富なイタリア人の超実力派、アルベルト・グラッツィが変幻自在、悠々奏でるヴィヴァルディ。
 ドイツの文化か、イタリア気質か...その魅力を余すところなく伝える極少編成が、実に憎い!

 伝説的古楽プロデューサー、ミシェル・ベルンステンに見出されAstree レーベルで録音デビューした後、フランス古楽界最前線を走っていた2000 年代のAmbroisie レーベルで無数の名盤を刻み、あれよあれよといううちにBMG/Deutsche Harmonia Mundi にかっさらわれたかと思いきや、やりたいようにやりたいイタリア人気質が幸いしてか、凄腕集団ゼフィーロはやっぱり小規模レーベルでの小回りが利く痛快なアルバム作りに戻ってきてくれました!
 モンテヴェルディのマドリガーレじゃありませんが、まさにZefiro torna(西風は戻り)...そう、彼らが戻ってきたのはほかでもない、彼らを見出したベルンステンが後に創設したArcana レーベルだったのです!2007 年にベルンステンが急逝、その後の迷走をへてあえなく新体制もいったん休眠状態になったかと思いきや、このたび劇的な復活をとげてくれたカリスマ的古楽レーベル、Arcana。そこからまず登場したのが、日本でもすでに度重なる来日公演などですっかり古楽ファンにおなじみとなった、イタリアのバロック・オーボエ奏者アルフレード・ベルナルディーニとパオロ・グラッツィ、およびバロック・ファゴット奏者アルベルト・グラッツィらを中軸メンバーとする「アンサンブル・ゼフィーロ」とは、なんと嬉しい限りではありませんか!
 しかも、演目はここ近年とみにイタリア・バロック器楽界で話題を呼んでいるジャンルのひとつ、ヴィヴァルディのファゴット協奏曲!ドイツで現代楽器の教鞭もとっているセルジオ・アッツォリーニがNaive に録音したアルバムなども話題でしたが、あれもはや10 年前の盤——このたびソリストとして堂々その個性をあらわにしているゼフィーロ創設メンバーのA.グラッツィは、実はイングリッシュ・コンサート(来日メンバーだったことも!)やイル・ジャルディーノ・アルモニコなど超一流団体でも重宝がられてきた多芸な実力派。ソロで名前が出てくるバロック・ファゴット奏者には、そもそも芸達者じゃない人を見つけるのが難しいくらいなのですが、ともあれグラッツィ御大がここで繰り広げる変幻自在のファゴット奏法は、ヴィヴァルディという作曲家がいかに早くからこの音域の広い管楽器の特質を知り尽くしていたか十全に知らしめてくれる、どこまでも聴き究めたくなる・磨き抜かれた・味わいたっぷりの・とびきりな名演を紡ぎ出してくれています。
 トゥルキーニ合奏団やカフェ・ツィマーマンなどでよくその名を見かけるクレモナの俊才ニック・ロビンスンがリーダーをつとめているのも嬉しいところですが、リッチな通奏低音以外は各パート1人ずつの室内楽編成がまた作品美をきわだたせるのに何役も買っていて(つまり、ひとりたりとも凄腕じゃない人は加わっていない...ということです)。
 ヴィヴァルディは実のところ、ヴァイオリン協奏曲の次に数多く書いた協奏曲がなぜかこのファゴットのための協奏曲だったわけですが、この分野についての的確・学術的に詳細でありながら読みやすい解説(全訳付!)も必読ものです。

ARCO DIVA



UP0149
(国内盤)
\2940
コダーイ、グリエール、ラヴェル
 〜ヴァイオリンとチェロによる、二重奏のための近代3名品〜

 ゾルターン・コダーイ(1882〜1967):
  1.ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲op.7
 ラインホルト・グリエール(1875〜1956):
  2.ヴァイオリンとチェロのための八つの二重奏曲 op.39
 モーリス・ラヴェル(1875〜1937):
  3. ヴァイオリンとチェロのためのソナタ
フェリックス・フロシュハンマー(ヴァイオリン)
フローリアン・ローン(チェロ)
堅固な音楽センス=欧州楽壇最前線のリアリティ。名手がふたりいれば、極上室内楽に!
グリエールの秘曲の味わい深さもさることながら、競合盤多数のラヴェルやコダーイも引き締まった解釈で、鮮烈に...フランス語圏とドイツ語圏での研鑽が生きている名演。

 ヴァイオリンと、チェロ——この中音域ぬきの二重奏編成に、作曲家たちが本気で取り組み始めたのは、実に20 世紀初頭になってからのこと。確かに、古くはホフマイスターやヴィオッティ、ロッラといった室内楽を得意とする作曲家たちが折々にこの二重奏編成の音楽を書いていましたが、なにしろ中音域専門の楽器が存在しない編成となると、音作りはかなり工夫しなくてはならず、単純に通奏低音のかわりでチェロを置いているような音楽よりも、やはりこういった「それまでになかった編成」で野心的な曲を書こうとしていた20 世紀初頭の近代作曲家たちの作品が、がぜん聴きごたえがあるわけで。しかし中音域を埋めてくれるピアノやヴィオラなどがないということは、ヴァイオリンもチェロもつねに主役であり、対等の対決を余儀なくされつづけるという状況を強いられるうえ、単純に我が強いだけではだめ、バランス感覚をもって相手と聴きあい、競い合える弾き手でなくてはならない...と、この種の二重奏はかなりハードルが高いのも事実。
 そこへ出てきたArco Diva からの新譜は、さすが弦楽芸術大国、とてつもない弦楽四重奏団を折々輩出してきた国であるチェコのプロデューサーが手がけているだけのことはある、誰が聴いても一聴してわかるクオリティに驚かざるを得ません。両者はどちらも、フランス派の名手ピエール・アモイヤルが主宰するスイスの俊英団体カメラータ・ド・ローザンヌの気鋭メンバーでもあり、すでにソリストとして活躍中でもある欧州の若き才人たち!かたやヴァイオリンのフェリクス・フロシュハンマーが師事してきたのは、アモイヤルやイタリアの名匠アッカルド、そのうえアーロン・ローザンドやボリス・クシュニルら“東”の系譜をひく名手たちの薫陶も受けている俊才——バルカン民俗音楽のアンサンブルでも大活躍(最近、フランスの異国系奏者にはそういう才人が続々出ていますね!)という適性は、本盤でもグリエールやラヴェルの高雅さにひそむエキゾチックな味わいをきれいに引き出すのに一役買っているような。
 他方チェロのフローリアン・ローンは、競争率高きトロッシンゲン音楽大学で名匠ヨハネス・ゴリツキに師事していますが、少年時代をナミビアで暮らしてきた経験などもあり、多方面にわたる演奏活動に乗り出しているとのこと。曲者同士、しかし“和”なくして室内楽なし...そんなハイレヴェルの対話で、ロシア近代の隠れ名匠グリエールの傑作デュオが聴けるなんて、実に贅沢な話ではありませんか——損はさせない傑作3編、試聴機にも自信をもってお勧めできます!


旧譜:素敵な曲なんです
グリエール:チェロとピアノの為の12ページのアルバム
Gliere/Prokofiev-Gli Re,  Prokofiev: Great Russian Works for Cello
divox
CDX 25254
\2200→\1990
グリエール:
 チェロとピアノの為の12ページのアルバムOp51
プロコフィエフ:チェロ・ソナタ ハ長調Op119
エステル・ニッフェネッガー(チェロ)
ミラーナ・チェルンヤフスカ(ピアノ)
 「チェロとピアノの為の12ページのアルバム」という曲。それはもう、何の期待もしないでかけた。
 そうしたら、これがまあ、はまった。
 あの弦楽四重奏曲にも負けないほどの美しいロシア・ロマン。12曲の小品なのだけど(ニッフェネッガーはばらばらに解体して収録している。しかも途中でプロコフィエフを入れるという凝ったプログラミング。)、その1曲1曲がなんともいとおしい秀作。とくに数曲は一度聴いたら忘れられないような名旋律だったりする。
 例によってちょっとオリエンタルな雰囲気が漂い、それが抜群。
 ソ連の音楽的偉人であるグリエールだが、実はグリエール自身にはロシア人の血は流れていない。だがおそらくそれがグリエールをグリエールたらしめたのだろう。洗練された西欧の音楽気質と、ロシアの伝統的なロマン、そしてオリエンタルで異国的な情緒というのが違和感なくうまくミックスされ、完成されて生まれてくるのである。
 ソ連では「社会主義リアリズム」の模範的優等生的作曲家とみなされていたグリエール。そして時代にそぐわぬ(1875年生まれ−1956年没、シェーンベルクやアイヴズとほぼ同世代)保守的でロマンティックな作品を書き続けてきた。そんないろんな理由から大作曲家として世界に認められるには障害が多かった。
 が、数十年もたった今となっては、グリエールがどういう時代にどんな考え方で生きていようが、その作品が美しく優れていればそれはそれで価値があると思う。

録音:2007年7月




ARS MUSICI



AMCD232281
(国内盤・2枚組)
\3780
トリオ・ジャン・パウル〜シューマン&リーム
 ロベルト・シューマン(1810〜1856):
  1. ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 op.63
  2. ピアノ三重奏曲 第2番 ヘ長調 op.80
  3. ピアノ三重奏曲 第3番 ト短調 op.110
 ヴォルフガング・リーム(1952〜):
  4. 見知らぬ土地の情景I(1982)
  5. 見知らぬ土地の情景II:性格的小品(1982/83)
  6. 見知らぬ土地の情景III(1983/84)
  7. ピアノ三重奏曲(1972)
トリオ・ジャン・パウル
 ウルフ・シュナイダー(vn)
 マルティン・レーア(vc)
 エッカルト・ハイリガース(p)
 ドイツ楽壇最前線——というと、広く喧伝されているティーレマンやヤンソンスなどの巨匠指揮者たちが思い浮かぶかもしれませんが、ドイツが今なお音楽大国であるゆえんは、そうしたスーパースター級の巨匠たちが奏でるオーケストラ音楽の世界だけでなく、オピッツ、ツァハリアス、グレムザー...といったピアニスト方面、アルテミス四重奏団やアンサンブル・モデルンなど室内アンサンブル、さらには古楽バンドや合唱団...と、およそどこをとっても全方位的に世界的に通用する凄腕の層がぶあつく存在しているというところ。
 文化大国だけに「音楽だけやってればよい」という感じではない大御所たちも多いのが頼もしくもあり、一筋縄ではいかないところで、だからこそこの国は日本からも熱い視線が寄せられ続ける「憧れのクラシック大国」であり続けているのかもしれません。
 そうしたなか、ドイツ文学とわかちがたく結びつけられているロマン派以来のドイツ音楽を、かなり深いところまで掘りながら、隅々までいっさい隙のない、インスピレーションにあふれた緩急たくみな周到解釈で聴かせてくれるピアノ三重奏団が、トリオ・ジャン・パウル。
 彼らの録音歴というのは非常に慎重で、1993 年に大阪国際室内楽コンクールで優勝して以来すでにそうとうな数の重要な現代音楽作品も初演しているはずですし、世界中の大都市での演奏活動を通じて膨大な量にのぼるピアノ三重奏作品を演奏してきたはずなのに、CD では真に重要な作品を2〜3年に1度、考え抜かれたプログラムで(全集にするときも、そうでないときもありますね)録音してゆく...という入念ぶり。
 Digipack 仕様で新生Ars Musici から再リリースされ、めでたく国内仕様初流通となるこのシューマン・アルバムは、1999 年に録音された彼らの第2作(なんという慎重な録音進行)であるとともに、ドイツ文学と音楽とのつながりを強く意識し続ける彼らのこだわりがピアニストによる解説(全訳付)にまで反映された、じっくり聴き深めるに足る1作になっています。
 何より驚かされるのは、今よりずっと尖っていた頃の現代作曲家リームの作品が4曲も収録されているというところ——リーム自身が寄せた、シューマン愛にあふれる解説文(こちらも全訳付)とあわせ、シューマンの「子供の
情景」を連想させるタイトルの3作品がどういう音楽なのかを読み解いてゆくのも、本盤のもうひとつの愉しみ。“19 世紀当時は現代音楽”だったシューマンの多面性にも改めて気づかされる充実作なのです。
 

AMCD232-126
(国内盤・訳詞付)
\2940
シューベルト「ドイツ・ミサ曲」原典版
 シューベルト(1797〜1828):
  1. ドイツ・ミサ曲 D.872 〜管楽合奏伴奏による原典版
 ブラームス(1833〜1897):
  2. マリアの歌 作品22 〜無伴奏混声合唱のための
ゲオルク・ラーツィンガー指揮
レーゲンスブルク大聖堂少年合唱団
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、
ミュンヘン放送管弦楽団、
ミュンヘン放送交響楽団、
アウクスブルク・フィルハーモニー管弦楽団団員
 いまだ新録音はめったに現れず。19世紀当時さかんに編作されて広まった異形の充実作、シューベルトの「ドイツ・ミサ曲」を原典版で聴くなら、どうしてこの透明感ある名演に手をのばさずにおれましょう——ブラームス初期の逸品と併せ、歌詞日本語訳付でどうぞ。

 言わずと知れた「歌曲王」シューベルトと、女声合唱団の指揮者としても活躍していたブラームス。ドイツ語歌曲に名曲が多いこのふたりは、合唱曲の世界でも息をのむ傑作を数多く残しているわけですが(合唱団経験のある方なら、特によくご存知でしょう...)録音物は意外に限られてきてしまうもの。
 とくに、大作がありながら思いのほか新録音が出てこないのが、シューベルトの教会音楽関連ではないでしょうか? 大の文学愛好家でもあった若きシューベルトは、キリスト教に対しても独自の考え方を持っていて、本人の生前はおろか歿後もかなり長いあいだ教会では歌われなかった作品も多いようですが、その代表格が『ドイツ・ミサ曲』と呼ばれる、ミサ曲でありながらドイツ語で独自の祈りの言葉が紡がれる大作。
 しかもこの曲、当初しばらくは無伴奏合唱版や男声合唱版などの編曲版で広まり、木管群・金管群とティンパニからなる、手配に手間のかかる編成での演奏がなされるようになってからも、その形ではあまり聴く機会がなかったとのこと——20 世紀古楽復興に大きく寄与したDeutsche Harmonia Mundi を創設したフライブルクの音楽研究所が運営していた頃のArs Musici では、この異形の傑作を原作どおりの形でみごとな名演として収めた、忘れがたい名盤が制作されています。
 チェリビダッケやマゼールらと幾多の名演を紡いできたミュンヘン・フィルの名手たちをはじめ、管・打楽器パートに集う腕利きたちが精妙な響きを織りなすうえで、静かに、ひたすら味わい深いシューベルトの和声推移の妙を描き出してゆくのは、1000 年以上におよぶ歴史をもつドイツ南西部の名門・レーゲンスブルク大聖堂少年合唱団!こうした本格派の録音に起用される団体の常で、言われなければ少年合唱団だったことなど忘れてしまう真に迫った名演はここでも健在。
 他の競合盤に漂う異様に荘厳な重厚さを考えると、翳りを帯びつつ透明感にも事欠かない本盤の解釈は実にみずみずしく「19 世紀当時流」に感じられるはず!後半のブラームス『マリアの歌』でも、バッハを思わせる初期ブラームス特有の擬古的な音作りそのまま、神秘的な響きはほとんど超現実的なまでに美しく、深みある曲の魅力がじわじわ伝わってくる解釈が嬉しいところ。ドイツ楽壇の層の厚さを感じる逸品、作品成立と原典追求の経緯にまつわる解説はもちろん、歌詞まで日本語訳付でお届けします。お見逃しなく...!
 


AMCD232-278
(国内盤)
\2940
シュテンツル兄弟〜2台のピアノのための
ブラームス(1833〜1897):
 1. ハイドンの主題による変奏曲op.56b
  〜作曲者自身による2台のピアノ版
マックス・レーガー(1873〜1915):
 2. ベートーヴェンの主題による変奏曲とフーガop.86
  〜2台のピアノのための
リスト(1811〜1886):
 3. ドン・フアン(ドン・ジョヴァンニ)の追憶
  〜2台のピアノのための
フォルカー・シュテンツル、
ハンス=ペーター・シュテンツル(ピアノ)
 ブラームスの「あの傑作」は、ご存知のとおり2台ピアノ版がオーケストラ版より先に成立。
 そしてドイツ晩期ロマン派の変奏芸術は、レーガーにおいて爛熟のきわみに達した...ドイツ現代を代表する大ヴェテランふたりが、充実したピアニズムで聴かせる傑作群!

 1台だけでもオーケストラに匹敵しうる音楽世界を紡ぎ出してしまう楽器、ピアノ——それがもし2台あったなら、そしてピアニスト同士が阿吽の呼吸で通じ合えるデュオ・パートナー同士だったら、音楽世界はどれほど豊かになることか...!そういうことをいかんなく教えてくれるユニットも昨今決して少なくはありませんが、かつてのコンタルスキー兄弟やラベック兄弟に匹敵する存在感をこの世界で放っているユニットといえば、現代ドイツ楽壇ではまず間違いなくシュテンツル兄弟に間違いないでしょう!
 すでに近年、ブラームス自身が購入にたずさわり自らもサロンでよく弾いていたというシュトライヒャー1880 年製のピアノに向かい、作曲者自身が編曲した『ドイツ・レクィエム』の連弾版を圧巻の技量で聴かせてくれた(NCA233-486)のが記憶に新しいところですが、彼らはそれ以前にもすでに20年来、折にふれて日本にも訪れ、数多くの門弟たちを育ててきた筋金入りの大ヴェテラン。その名録音が、かつてDeutsche Harmonia Mundi と同母体で創設されたArs Musici レーベルにいくつか眠っていたとあっては、それらを掘り起こさない手はない...!と、ここで順次あらためて国内仕様でリリースしてゆくのでございます。
 まず何よりお届けしなくてはならないのは、このブラームスとレーガーの大作変奏曲を中心としたアルバム——ブラームス交響曲全曲録音の余白の常連にして、演奏時間のうえでも立派に交響曲と張り合える傑作「ハイドンの主題による変奏曲」は、ちょっと解説などを読んでみれば必ず書いてあるように、2台ピアノ版の方が先に仕上がっている、れっきとしたピアノ曲として接するべき大作。シュテンツル兄弟はこの微妙な変化の味わいが生きる変奏芸術を、一糸乱れぬ確かなピアニズムの一体感でスケール豊かに聴かせてくれます。
 かたやレーガーの作品は、かつてブラームスも指揮したマイニンゲン宮廷楽団最後の音楽監督、ドイツ・ロマン派の正統な後継者たる作曲家の技量がいかんなく発揮された充実作で、かの楽聖のバガテルop.119 から主題をとり、緻密な変奏がくりひろげられてゆくのが聴きどころ。これもブラームス作品同様、ピアノ版がオーケストラ版と同じ頃に出た作品でした。
 ピアニストふたりの一体感が問われるうえ、緻密な曲構造をよく理解していなくてはここまで絶妙な鑑賞体験はまず得られないところ、いかに彼らが“腕利き”であるかは、最後に置かれているリストの技巧的デュオでもじっくり堪能できることでしょう...!
 


AMCD232-198
(国内盤・訳詞付)
\2940
ハノーファー少年合唱団
 リスト、ヴィドール、コダーイ
  〜合唱、オルガン、近代音楽がみた昔日の伝統〜

 リスト(1811〜1886):
  ①ミサ・コラリス(合唱によるミサ)S.10(1865)
 コダーイ(1882〜1967):
  ②パンジェ・リングヮ(歌え、舌よ)
   〜混声合唱とオルガンのための(1929)
 シャルル=マリー・ヴィドール(1844〜1937):
  ③混声合唱、バリトン合唱、オルガンと
   小オルガンのためのミサ曲 作品36(1878)
ハインツ・ヘニッヒ指揮
ハノーファー少年合唱団
トビアス・ゲッティング(オルガン)
マルティン・リュッセンホップ(オルガン)
 “あの”バッハ・カンタータ全曲録音で、レオンハルト・コンソートと共演していた銘団体はヘレヴェッヘの合唱団と同じく、単体でも稀代の精鋭集団として活躍を続けていた——
 清廉で神秘的な響き、デュリュフレやフォーレにも比しうる美の世界を、精妙・静謐に

 ハノーファー少年合唱団——その名は私たちの心にも、かのヘレヴェッヘ率いるコレギウム・ヴォカーレ同様、グスタフ・レオンハルトがニコラウス・アーノンクールとともに録音しつづけ金字塔的全集となった、世界初のバッハ・カンタータ全曲古楽器録音での合唱団として、深く刻まれているところ...そしてこの由緒正しき合唱団は、およそ少年合唱とは思えないほどの引き締まった演奏解釈をする精鋭集団として、独自の活動でもきわめて広範な活躍をみせてきました(他にもロンドン・バロックなどとのバッハ録音、ケント・ナガノ指揮によるマーラー3番への録音参加など、明敏なファンほどこの名前に行き当たるタイミングは多いであろう上、来日公演も数多くこなしてきたので、それこそ釈迦に説法...と怒られそうですが)。
 古楽系、なかんずくバッハやシュッツをあざやかに歌いこなす合唱団の常として、彼らもまたロマン派以降の作品で独自の境地を聴かせてくれるわけですが、ここにお送りするArs Musici への録音(しかもこのレーベルが、まだDeutsche Harmonia Mundi を創設したフライブルクの音楽研究所によって経営されていた時代...以後、レーベル経営体制変更に伴い暫く廃盤状態が続きました)は、そんな彼らの手腕を何より的確に示してくれる注目の1枚——
 嬉しいのは、なかなか録音されない演目が三つ、それぞれの魅力と存在感がいやおうなしに引き立つかたちで収録されているというところ。
 齢50 を超えたところで下級聖職者の資格をとったばかりのリストが手がけた、中世以来のグレゴリオ聖歌のメロディをきわめて神秘的に活かした秘曲「ミサ・コラリス」の清廉・静謐な美しさにも息をのみますが、合唱曲を書かせたら20 世紀でも5本の指に入るのでは...?と思うほど、実は合唱曲に傑作が多いコダーイの逸品も、そしてなにより、オルガン曲とごく一部のフルート作品ばかりが注目されるにとどまっているフランス近代の多作な名匠ヴィドールが、フォーレの「レクィエム」よりも早く書いていた擬古風のうつくしい1編...と、隅々まで発見の喜びにあふれた選曲がなんと憎いことか。オルガンも常に控えめで清らか。解説も充実(歌詞とも全訳付)、じっくり楽しみたい1枚なのです!

CONCERTO



CNT2015
(国内盤4枚組+DVD)
\8820
R.アーン(1874〜1947)ピアノ独奏のための主要作品全集
レナルド・アーン(1874〜1947)
 ①うろたえる夜鶯
  (全53 曲 第1集:最初の組曲/第2集:東洋/第3集:旅の手帖/第4集:ヴェルサイユ)
 ②恋文のような音楽、およびその他の未発表作品(全12 曲)
 ③創意(アンスピラシオン)
 ④ジュヴェニリア(初期作品集 全6曲)
 ⑤月の光 〜音楽による小話(全11 章)
 ⑥繋がれて* ⑦詩人たちへの賛美の前に*
 ⑧アンジェロのパヴァーヌ* ⑨画家たちの肖像画(全4曲)
 ⑩はじめてのワルツ(全11 章)⑪ソナチネ ハ長調
 ⑫HAYDNの名による主題と変奏
 ⑬まどろむ酒神の巫女*
 ⑭世界の創造*
《DVD》
 ドキュメンタリー『レナルド・アーンのピアノ』
  (企画制作:ジャン=クリストフ・エティエンヌ&アルテ・ノヴァ・レナルド・アーン協会)
  NTSC 仕様 *世界初録音
クリスティーナ・アリアーニョ(ピアノ/ファツィオーリ)
 レナルド・アーン!! いろいろなところで名前ばかりは散見するものの、そしてなんとなく(フォーレやドビュッシーなどに通じるような)とびきりの「瀟洒なフランス音楽」の魅力を味あわせてくれそうな予感ばかり振りまいているものの、その世界にじっくり向き合える機会がめったにないどころか、そもそもいくつかの大事な作品さえ、あまり録音されてこなかった、不遇なる「幻の巨匠」のひとり...
 フォーレやドビュッシーの同時代人、つまり、まさしく私たち現代人の耳に快いフランス近代の魅力たっぷりな作曲家たちの多くは、フランス楽壇にピエール・ブーレーズやヤニス・クセナキスのような「予測不能の前衛音楽」(聴くのがこわい系の現代音楽?)こそ聴くに足るもの...というような風潮ができあがった20 世紀半ば以降、意味もなく軽視され黙殺されてきたものですが、CD 時代に入ってから続々復権が続いているそうした作曲家たち(ゴベール、シャミナード、フローラン・シュミット、ジャン・クラ、デュポン、ロパルツ、ヴィエルヌ...)は概して「なぜこんなにいい音楽が」と嬉しい驚きをもたらしてくれるもの。
 レナルド・アーンはまさしくそういう作曲家のひとりなのですが、なにぶん活躍期はベル=エポックまっさかり、音楽好きだろうとそうでなかろうと、近所づきあいも家庭の暮らしも客間のピアノが(今でいうテレビのように)娯楽の中心のひとつだった時代。アーンはとてつもない数のファッショナブルな歌曲やピアノ曲で人気をさらっていたうえ、アイコン的有名作「うろたえる夜鶯」が全53 曲からなる巨大曲集になっていて収録作どれも甲乙つけがたし...という状況だからか、まとめて録音される機会というのがどうしても少なかったのかもしれません。
 ともあれ、その復権に長足の進歩をもたらしてくれそうなのが、このクリスティーナ・アリア−ニョによる「主要作品全集」(おそらく未確認作品が多いので「全集」と言ってはいないだけで、現状見つかっているかぎりの作品は(多数の初録音曲も含め)最大限収録されているはず)
 すでにARTSやBrilliantClassics などでルイ・オベールや「六人組」の女性作曲家タイユフェル、とびきりのサティ・アルバムなどを世に送り出し、高い評価を博しているこの繊細なるフランス近代音楽の名解釈者が、自らプロデュースにも大きく関わって4枚ものCD を費やし、ダイナミズムと繊細さを兼ね備えた絶妙解釈でじっくりその魅力を伝えてくれる傑作BOX にまとめてくれたのです。
 音楽学者J-C.エティエンヌの解説(全訳付)も充実しているだけでなく、エティエンヌ自身が制作にかかわってドキュメンタリー映像も作り、DVD で収録(NTSC 仕様・日本語字幕はなし)。Concerto レーベルならではのパッケージの美麗さも高級感あふれ、本格派らしさを強く感じさせてやまない仕様。
 


CNT2080
(国内盤)
\2940
マスカーニ:ピアノのための作品全集
 ピエトロ・マスカーニ(1863〜1945):
 ①ノヴェッリーナ(若葉のような娘)②キアイアの海岸にて
 ③わたしの最初のワルツ(A.ザイデル編)*
 ④間奏曲(『カヴァレリア・ルスティカーナ』間奏曲の原作版)
 ⑤クリスマスの笛吹きの娘
 ⑥人形たちのガヴォット
 ⑦随想、サン・フランシスコにて(断片)*
 ⑧新世界行進曲(勝利のマーチ)*
 ⑨アンダンテの主題 ⑩はじめての水浴(断片)
 ⑪人の世に注ぐ涙あり
 ⑫叙情的幻影 〜ローマにて、ベッリーニの『聖女テレジアの法悦』を眺めつつ
 ⑬トミーナの間奏曲
 ⑭交響曲ヘ長調(作曲者自身によるピアノ連弾版)*(*:世界初録音)
マルコ・ソリーニ(ピアノ)
サルヴァトーレ・バルバタノ(ピアノ/連弾共演)
 ふと気がつけば、この巨匠も生誕150周年! オペラ作曲家はオペラだけに生きるにあらず、歌心あざやかなサロン小品から、ドイツ古典派音楽を強烈に意識した痛快交響曲までレスピーギの登場を準備した“イタリア近代前夜”の魅力を、同国の俊才が精緻に、艶やかに。ほとんどオペラや声楽曲の世界で活躍したがゆえに、日本では年季の入ったクラシック・ファンもその真価にふれていない大作曲家というのは、意外にいるものです。
 プッチーニ、グノー、オッフェンバック、リュリ、モンテヴェルディ、ペルゴレージ、ボイート、ジョルダーノ...オペラの本場イタリアの作曲家にはとくに多い気もしますが、なんてもったいない話!あの艶やかな旋律美、歌心あればこその豊かな和声感覚、そしてとびきりのセンスがもたらす、絶妙な盛り上がりのドラマ——日本でいう“クラシックの王道”たるドイツ語圏の作曲家たちも、精緻な作曲芸術と不可分なそうしたイタリア流儀の音楽技法には、昔から大きな影響を受けてきたわけで、その領域にいっさい目が向かないなんて、音楽鑑賞人生のうえでは大きな損失といっても過言ではないくらい。イタリア・ミラノに本拠をおくConcerto レーベルは、折々そうした間隙をうまく埋めてくれる、イタリアの音楽や演奏家たちの魅力にあらためて気づかせてくれる忘れがたい録音を世に送り出してきたのですが、この秋に向けての1枚でとくに注目すべきリリースが、これ!『カヴァレリア・ルスティカーナ』の大成功とともにオペラ・ファンの心に深く刻まれ、その後も『友人フリッツ』『イザボー』『アミーカ』...と、ドイツ語圏・フランス語圏・南米まで巻き込んで世界的な名声を博したオペラ作曲家マスカーニの成功が、実は決してオペラだけにとどまらない、多元的な作曲センスの賜物だったことをありありと実証してくれる、彼のピアノ独奏作品のすべてを集めたアルバムです。
 イタリアのオペラ作曲家たちも、若い頃には音楽院でドイツの古典派・ロマン派音楽に触れ、大いに刺激を受けた人が実は少なくないのですが、マスカーにもそのひとり。ここでは彼が若い頃に書いたハイドン流儀の古典派風交響曲(作曲年代的にはブラームスやブルックナーなどの傑作と同時期)を、彼自身がピアノ連弾に編曲していたヴァージョンの精緻な名演が聴けるのがとくに嬉しいところ。
 他にもラヴェル、ラフマニノフ、プロコフィエフ...といった“同時代の”ピアニスト作曲家たちをよそに、彼もまた多元的かつ耳をとらえてやまない魅力的な小品を数多く書いていたことが、本盤のあざやかな演奏解釈からよく伝わってきます。
 解説(全訳付)も各曲解説含め充実していますが、同じイタリアの実力派ヴィルトゥオーゾM.ソリーニの艶やか&行き届いた演奏が何より素晴しいのが、やはり本盤の大きな“うまみ”だと思います!

COO−RECORDS


COO-035
(国内盤)
\2940
This is guitarist
 1 パリャーソ(E.ジスモンチ)
 2 リラクタントブリッジ (R.タウナー)
 3 テンポフェリーズ〜
   宇宙飛行士のサンバ(B.パウエル)〜ジェット機のサンバ(A.C.ジョビン)
 4 ブルーモンク(T.モンク)
 5 プレリュード No.3 (ヴィラ=ロボス)
 6 トラベシア (M.ナシメント)
 7 シャンゴーの歌(B.パウエル)
 8 2つのギターのためのエチュード (林光)
 9 べべー(H.パスコアール)
 10 上を向いてあるこう (中村八大)
 11 無伴奏チェロ組曲1番プレリュード(バッハ)
 12 星影のステラ(ヴィクター・ヤング)
 13 水とワイン(E.ジスモンチ)〜アーサブランカ (H.テイシェイラ)
助川太郎(ギター)
ゲスト:尾尻雅弘(ギター)
助川太郎:
1 9 7 3 年東京生まれ。米国バークリー音学大学卒。ブラジル音楽、ジャズ、クラシック、即興演奏などジャンルを超えて活動するギタリスト。
ジャズのバックグランドに加え、クラシックで培った音色、ブラジル音楽の多彩なリズム、特殊奏法を多用した即興、エフェクターを駆使したサウンドなど、多彩で個性的な演奏が持ち味である。ブラジル固有の弦楽器であるカヴァキーニョなども得意とする。近年では民族楽器「口琴」に深く魅せられ、口琴奏者としての活動も開始。ギターとカバキーニョ、口琴を併用する演奏スタイルで、様々なミュージシャンとのツアーやレコーディングなど、音楽シーンに全く新しい世界観をもたらしている。
ソロアーティストとしてブラジルの器楽“ショーロ”を現代的にアレンジしたソロアルバム「No t u r n o 」を2 0 0 8年に発表。ヴォーカリストEMiKO VOiCE とのブラジル音楽ユニット“メヲコラソン”として、 2008 年アルバム「ホールトーン」(COO-300)、2012 年「ホールトーン2〜アントニオ・カルロス・ジョビン曲集〜」(COO-301)をリリース。

FUGA LIBERA



MFUG714
(国内盤)
\2940
ドヴォルザーク:
 チェロ協奏曲“第1番”&弦楽セレナード
  〜幻のイ長調協奏曲!〜

 1. チェロ協奏曲 第1 番 イ長調(1865)
  (ヤルミル・ブルグハウセル版)
 2. 弦楽のためのセレナード 作品22(1875)
アレクサンドル・ルーディン(チェロ&指揮)
ムジカ・ヴィーヴァ室内管弦楽団
 あの三大チェロ協奏曲に数え上げられるロ短調協奏曲だけではなかった——
 最初期の傑作、痛快な仕上がりは格別そのもの。ピアノ譜だけで残っている管弦楽部分を忠実に再現したブルグハウセル版をもとに、ピリオド奏法の達人集団でもあるムジカ・ヴィーヴァ魅力全開の名演で!

 「ドヴォルザークのチェロ協奏曲」といえば、誰もが晩年のロ短調協奏曲を思い浮かべるところ——
 しかし、ちょっとこの傑作についての何かを読んだことのある方なら、ドヴォルザークがごく若い頃、プラハの暫定国民劇場(のちの国民劇場が出来る前、まだオーストリア支配下だったプラハで暫定的にチェコ語作品を上演すべく建造されたオペラハウス。スメタナ『売られた花嫁』がここで初演)で一緒に仕事をしていたチェロ奏者から頼まれ、イ長調のチェロ協奏曲を書いていた...という逸話をご存知のはず。しかし、世の名曲至高主義のなせるわざか、このイ長調協奏曲は残念ながら、その後ドヴォルザークがロ短調協奏曲を書き上げるまでずっと「チェロは協奏曲の独奏楽器には向かない」と標榜していたこととあいまって、大して聴かれもしないうちから失敗作扱いに甘んじる不運をたどることとなったようです。
 ところが、すでに20 世紀のうちから、この曲の復権への動きは始まっていたのです——
 そして今回、かねてから歴史に埋もれた19 世紀以前の傑作を続々発掘、作曲当時の楽器や奏法をもふまえたピリオド志向の演奏法でスタイリッシュ&エキサイティングな演奏解釈によって秘曲復権の道を歩んできたロシアの精鋭集団ムジカ・ヴィーヴァが、この知られざる傑作と正面から向き合ってくれたのです!
 なにしろ同楽団の指揮者ルーディンは自ら稀代のチェリストでもあり、その高雅にして堅固な運弓は、秘曲の作品美をあざやかに浮かび上がらせるには最適! 楽譜がどのような経緯で復元されてきたかは当盤解説参照(全訳付)として、長大すぎる!との批判もかこってきたドヴォルザークの書法を手際よく読み解き、結果的に響きわたる音楽はまさに、メンデルスゾーンからブルッフにいたる19 世紀中盤の高踏的なロマン派スタイルを漂わせた、痛快そのものの一編に——
 同時収録されている弦楽セレナードでの、メリハリの利いたスリリングな演奏解釈とあいまって、本盤はドヴォルザークをはじめとする国民楽派の「しつこさ」が苦手な方にも、また堅固な解釈のなかにそのしつこさの影を感じてゾクリとしてしまうロマン派好みの聴き手の方々にも、等しくお勧めできる痛快な1枚に仕上がっています。秘曲発掘は、これだからやめられませんね...!

GRAMOLA



GRML98941
(国内盤)
\2940
モーツァルトハウスのバセットホルンと、ファゴット
 〜ウィーン生粋の娯楽音楽〜

モーツァルト(1756〜1791):
 ①3本のバセットホルンによる『魔笛』*
  (1791 年頃の編曲譜より7曲+新編曲5曲)
 ②ディヴェルティメント ヘ長調 KV439b-3
   〜2本のバセットホルンとファゴットによる
 ③『フィガロの結婚』によるディヴェルティメント
   〜2本のバセットホルンとファゴットによる
 ④アダージョ ヘ長調 KV410
   〜2本のバセットホルンとファゴットによる
    *ラインホルト・ブルンナー(第2 バセットホルン)
ハインツ=ペーター・リンスハルム&
ペトラ・シュトゥンプ(バセットホルン)
ミラン・トゥルコヴィチ(ファゴット)
 “音楽の都”ウィーンの超・名所、モーツァルトハウス直送。
 この楽都の最前線をゆく俊才たちと古楽器でも現代楽器でも大ヴェテラン、アーノンクールの協力者トゥルコヴィチ御大が余裕綽々、阿吽の呼吸で聴かせる「バセットホルン系モーツァルト」は、隅々まで本場の絶品!

 バセットホルン…クラリネットとバス・クラリネットの間くらいの音域をカヴァーする、18 世紀末にひと頃ウィーン周辺で流行をみた楽器。モーツァルトはこの楽器のためにかなりたくさんの名品を残していますが、当時この楽器はおもに盛り場で人気オペラの名旋律などを奏でる管楽合奏に重宝がられていたようです(中低音から高音域もかなり出せるので、2、3本あればそれだけで幅広い音楽が演奏できるため)。ウィーン古典派の心意気は、ウィーン暮らしが長い演奏家にしかわからない...と主張する人がこの「音楽の都」には少なからずいるそうですが、それは現地で暮らしているとひしひしと感じられるであろうだけでなく、何よりもまず、管楽合奏の音楽などを聴いていると折々に痛感されるところ——
 管楽器はその人の「はなしことば」と演奏とが密接につながっている部分もあるようで、その意味でもウィーン特有のドイツ語の言い回しや方言で育ってきた人たちの管楽器演奏にこそ、ウィーンの「息吹」がそのまま宿っている...ということになるのでしょう。
 そうしたことを折々に強く感じさせる、実に頼もしくも愉悦あふれる録音が、ウィーン中央部にあるグラーベン広場(というより、大通り?)にある老舗レコード店を母体にもつ、Gramola レーベルからのこの1枚——

 ウィーンの楽壇に通じたディレクターたちは近年、生前のモーツァルトがウィーンで最も人気だった頃に住んでいた家(通称「フィガロハウス」)に作られた小さな博物館的観光名所「モーツァルトハウス」との連携により、ここで一流演奏家たちを集めて常時行われている演奏会から、すぐれた演奏をライヴ音源として音盤化するようになったのですが、本盤はまさにそうした企画のひとつで、モーツァルト自身が暮らしていたくつろぎの空間に、同市で活躍を続けてきた実力派クラリネット奏者たちをはじめとする「本場奏者たち」の演奏によるウィーン生粋の古典派娯楽音楽が広がる、まさに本場直送のひとときを、いつもながらの美麗パッケージで、周到な解説付(全訳付)で皆様のお手元に届けられるようになったのです。
 「本場直送」の感覚で何より驚かされるのが、すでにバセットホルンの現代音楽シーンでの復興にも寄与している俊才ふたりに加えて、ウィーン・フィルとN.アーノンクールの古楽器バンドという、ある意味大曲にあるふたつの団体で長年ファゴット(ないしバロック・ファゴット)を吹いてきた大御所、ミラン・トゥルコヴィチがさりげなく全面参加していること。18 世紀末頃の編曲譜による「魔笛」の三重奏版にいくつかの新編曲を加えた意気揚々のトラック群、トゥルコヴィチの頼もしい低音に思わずため息が出てしまう三重奏曲群(KV439bの楽譜は、19 世紀にはバセットホルン三重奏ではなく、クラリネット2本とファゴットで演奏できる楽譜として出回っていました)...これぞ、生粋のウィーンの息吹。折にふれ取り出して末永く愉しみたい1枚です。


GRML988967
(国内盤)
\2940
大資本レコード産業の広告戦略などというものがいかに音楽性と無関係であるか
 ウィーン・コンツィリウム・ムジクム
  ウィーン、古典派の精華
   〜ウィーン古楽界の老舗中の老舗、結成30周年記念ライヴ!〜

 ミヒャエル・ハイドン(1737〜1806):
  ①交響曲第39 番 ハ長調 (1788)
 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜1791):
  ②バセット・クラリネット協奏曲 イ長調 KV622
 ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809):
  ③交響曲第101 番 ニ長調「時計」
パウル・アンゲラー指揮
ウィーン・コンツィリウム・ムジクム(古楽器使用)
エルンスト・シュラーダー(バセット・クラリネット)
 ウィーンに「古楽器演奏」を軟着陸させた名門団体を、ご存知ですか?
 ついに結成30年、着実に積み重ねられてきた経験あればこその確かさ、「音楽の都」の伝統ゆえの深み——「他の土地では出せない」ウィーン古典派の心意気、当時の楽器とともに。他の追従を許さぬ境地!

 ウィーン・コンツィリウム・ムジクム——大資本レコード産業の広告戦略などというものがいかに音楽性と無関係であるかを、この団体ほど強く感じさせてくれる古楽オーケストラがあったでしょうか。
 「古楽器演奏」というものの意義がまだ世界的にもそれほど広く浸透していなかった1980 年代初頭、ウィーンで産声をあげたこの団体の創設者パウル・アンゲラーについては、ひょっとすると超名門・南西ドイツ室内管弦楽団の指揮者としてご存知の玄人リスナーの方が比較的おられるのでは...とも思うのですが(Claves に名盤がいくつか)、それまで現代楽器による室内合奏の世界で活躍してきた彼が、すでに数十年の歴史をもっていたウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(N.アルノンクール主宰)を横目に、独自の古楽器アンサンブルとして発足させたのが、このウィーン・コンツィリウム・ムジクム。
 ウィンナ・ワルツと同じように、ウィーン古典派の音楽にも(たとえばオーストリア民謡の要素、オーストリア・ドイツ語の抑揚...といったものがそうさせるのでしょうか)この地で暮らしてきた演奏家でなくてはたどりつけない境地がある...という意見があるようですが、そんな独自の感覚を持ち合わせたウィーンの演奏家たちが、自ら古楽器を手に「それで、自分たちと同じ心意気の連中が、18 世紀にはどういう音楽をやっていたのだろう?」と、地元の人間の目線で古楽器演奏に乗り出したとなれば、その演奏があらゆる他地域の演奏家たちのそれをしのぐ、えもいわれぬ適性を感じさせたとしても、まず不思議はないわけです!本盤はこの筋金入りの本場集団が、結成30 周年にさいし満を持して世に送り出したプログラム——
 彼らのアルバムは、プレイエル、ヴァンハル、ディッタースドルフ...と古典派愛好家にしか通用しなさそうな「知られざる昔日の巨匠たち」の作品だけで〆られていることも多いのですが、今回は誰もがよく知る傑作2曲に、「交響曲の父」ハイドンの弟で、モーツァルトと同じくザルツブルク大司教の宮廷に仕え、宗教音楽の大家としても絶大な名声を誇っていたミヒャエル・ハイドンの逸品(交響曲でも多作だった彼の曲のなかでも、これは古典派ファンならおなじみの曲かもしれません)が1曲入る...という接しやすいプログラム。かなり入魂の解説にも唸らされますが(全訳付)、演目それぞれに彼らの「自分たちの音楽」をやっているという思い入れが伝わる、周到な作品解釈が何より嬉しいところ——
 独特のリズム感覚で響くティンパニ、弦のアゴーギグの味わい深さ(確かに、アルノンクールの古楽器演奏にも通じるところがあるような)...しかも、モーツァルトのクラリネット協奏曲は原作どおりの音で吹けるバセット・クラリネットでの演奏!「これぞ本場」な、これを聴かずしてウィーン古典派は語れない!と言いたくなる境地、ぜひご体感いただきたいところでございます。
 


GRML98935
(国内盤)
\2940
ウィーン・フィルの若きコントラバス奏者、エデン・ラーチ
 〜ウィーン・フィルのソリスト、めくるめく独奏芸術の世界〜

 ジョヴァンニ・ボッテジーニ(1821〜1889):
  ①ドニゼッティの歌劇『ランメルモールのルチア』による幻想曲
  ②ベッリーニの歌劇『テンダのベアトリーチェ』による幻想曲
 フェレンツ・ヴェチェイ(1893〜1935)/エデン・ラーチ編:
  ③悲しきワルツ ハ短調
 ゴットフリート・フォン・アイネム(1918〜1996):
  ④無伴奏コントラバスのための「ソナタ・エニグマティカ」作品81
 ペートリス・ヴァスクス(1946〜):
  ⑤ベース・トリップ 〜無伴奏コントラバスのための
 ニコロ・パガニーニ(1780〜1840)/スチュアート・サンキー編
  ⑥ロッシーニの歌劇『モイーズ(エジプトのモーセ)』による幻想曲
 ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844〜1908)/ティボール・コヴァーチ編:
  ⑦熊蜂の飛行
エデン・ラーチ(コントラバス)
ヤーノシュ・バラージュ(p)
ザ・フィルハーモニクス(ウィーン・フィル団員)
 名門ウィーン・フィルの若きソリストは、なんと侮りがたい異才なのでしょう——!
 コントラバスを縦横無尽に操り、超絶技巧などもはや余裕綽々、無伴奏作品での小宇宙も実に味わい深く響く——通念をくつがえすコントラバスの可能性、何とも快い響きの低音盤!

 コントラバス独奏ものはスカラ座首席奏者によるボッテジーニの名演(Concerto レーベル)が実に好適な動きをみせてくれていますが、今度はウィーンの中央に本拠をかまえるGramola レーベルから、ウィーン・フィルの若きソリストによる独奏盤が届きました!
 エデン・ラーチ——ハンガリー出身、1981 年生まれと言いますからまだ30 代に入ったばかりなのですが、その音作りの風格ときたら、およそ若手とは思えない、圧倒的な経験を積んできた奏者のそれとしか言いようがない、なるほどさすがウィーン・フィルでソロに抜擢されているだけのことはある...!と、どのトラックを聴いていても強く思わされる腕前なのです。
 すぐれたアンソロジー系ソロ盤の常として、このアルバムも演奏者の個性がありありと感じられながら、どのトラックでも作品の美質がよく際立っていて、演奏者を、というより、それぞれの曲を聴きたくなって取り出すことも多そうな1枚となっています。19 世紀に「コントラバスのパガニーニ」とうたわれたイタリアの名匠ボッテジーニによる大作2編や、ゲイリー・カーの名盤にも収録されているコントラバス奏者たちの腕試し「モーセ幻想曲」など、超絶技巧系の作品における息をのむような立ち回りも痛快ではありますが、このアルバムに飛び抜けた「格」をもたらしているのはやはり、20 世紀オーストリアを代表する新古典主義的作風の名匠アイネムと、ペルトなどにも通じるメディテーション系の響きの送り手でもあるラトヴィアの巨匠ヴァスクスの、それぞれの無伴奏作品——コントラバスただ1本で、重低音の迫力だけではない、倍音の魅力がきわだつユニークな小宇宙を描き出してみせる手腕に、ぜひともライヴで聴いてみたい...!との思いを抱く聴き手も多いのではないでしょうか。詳しくは「音」も届いておりますので、ぜひともまずはご体感いただいたいところ。
 


GRML98870
(国内盤・3枚組)
\5040
モーツァルト:弦楽四重奏曲第14〜19 番
 〜モーツァルトハウスで聴く『ハイドン・セット』の6傑作・全曲〜

 1. 弦楽四重奏曲第14 番ト長調KV387「春」
 2. 弦楽四重奏曲第15 番ニ短調KV421
 3. 弦楽四重奏曲第17 番変ロ長調KV458「狩」
 4. 弦楽四重奏曲第16 番変ホ長調KV428
 5. 弦楽四重奏曲第18 番イ長調KV464
 6. 弦楽四重奏曲第19 番ハ長調KV465「不協和音」
ウィーン・イェス四重奏団
エリーザベト・イェス=クロップフィッチュ(vn1)
マリー・イザベル・
クロップフィッチュ(vn2)
ノラ・ロマノフ=シュヴァルツベルク(va)
シュテファン・イェス=クロップフィッチュ(vc)
 ウィーン楽壇最前線。
 「音楽の都」の空気が、ここに詰まっている——モーツァルトが全盛期に暮らしていたドームガッセ5番地の建物にある博物館、モーツァルトハウスでのライヴ収録。

 当の傑作が生み出された頃の作曲家の自邸に響く、ニュアンス豊かな「ウィーンの弦」の美...ひウィーンはいつもウィーン...というのは、この「音楽の都」で奏でられている音楽についても言えることなのかもしれません。
 古くは神聖ローマ皇帝のための音楽に始まり、オーストリアとその周辺地域のさまざまな民俗音楽、ウィーン古典派にウィンナ・ワルツ...と、この古都で奏でられてこそ独特の味わいを放ちはじめる音楽があることは、クレメンス・クラウスやウィリー・ボスコフスキーらが奏でるワルツに何より象徴的にあらわれているだけでなく、この町で育まれた古典派の音楽(とくに、モーツァルト全盛期)にも、やはりウィーンの人間でなくては感じられない、表現できない味わいがあるのだ...と言う人は少なくありません(フォーレやドビュッシーの、プーランクやサティの機微を理解できるのはフランス人だけ...というのと似ていますね)。

 古楽器演奏がこれほどさかんになり、18 世紀当時の楽器と奏法こそが音楽の造形美を、作曲家が思い描いた通りに再現できるひという考え方がすっかり浸透した今でも、私たちは古楽器的なアプローチか否かをまったく問わず、ウィーンの音楽家たちが奏でるウィーン古典派の音楽に、どうしても強く惹かれずにはおれない——そうしたことをしみじみと感じさせてやまないのが、この「音楽の都」の中央にあるグラーベン広場に店を構える老舗レコードショップが母体の、Gramola レーベルから続々リリースされてくる音盤の数々。
 この町の楽壇とともに育ってきた制作陣は近年、モーツァルトがウィーンで最も高い人気を誇っていた頃に暮らしていた「フィガロハウス」にある博物館モーツァルトハウスと提携、ここで行われるライヴを音盤化して世界に発信してゆくというプロジェクトを進めています。
 本盤はその記念すべき最初のリリースで、演奏陣はウィーン最前線をゆく音楽一家イェス=クロップフィッチュ家の二人を中心とするソリスト集団、ウィーン・イェスSQ!意気揚々とテンション高く音を紡ぎながら、1 音1音、この町を舞台に活躍してきた往年の名手たちの滋味あふれる音作りをさえ彷彿させる、あのしっとりとした情緒をかたときも忘れない演奏解釈で聴かせてくれるのは、我らが天才作曲家が大先輩ハイドンへ敬意をこめて捧げた6曲の傑作四重奏曲。
 そもそもこれらが作曲されたのは、まさにモーツァルトがこのフィガロハウスで暮らしていた時期でもあり、当時モーツァルトはハイドン、ディッタースドルフ、ヴァンハルら同市屈指の作曲家たちとプライヴェートで弦楽四重奏を愉しんでいたそうですから、本盤は真の意味で「産地直送のモーツァルト」ということになるわけです。
 フィガロハウスにまつわる物語も含め解説は全訳付。Digipack 外装も美しく、徹頭徹尾「ウィーンの空気」を感じさせてやまないセット...ウィーン楽壇最前線の音作りの妙、じっくり聴き究めたい3枚組です。
 


GRML98924
(国内盤)
\2940
フランツ・リスト、旅する名手
 〜ピアノのための傑作さまざま〜

フランツ・リスト(1811〜1886):
 ①ハンガリー狂詩曲 第8番 嬰ヘ短調 S.244-8
 ②エステ荘の噴水 S.163-4 〜『巡礼の年 第3年』より
 ③ダンテを読んで ソナタ風幻想曲(ダンテ・ソナタ)S.161-7〜
  『巡礼の年 第2年:イタリア』より
 ④夜想曲集「愛の夢」(全3曲)
 ⑤メフィスト・ワルツ 第1番 S.514
ドンカ・アンガチェヴァ(ピアノ)
ブルガリアのピアニズムが今、アツい——新世代はパリで、ブリュッセルで、そしてウィーンで!
故郷から旅路へ、恋の逃避行をへて、文学世界へ...リストという芸術家の生き方を象徴のような充実プログラムで、その巧まざる優美な、そして桁外れな至芸に酔うひととき。

 ブルガリアのピアニスト!といえば、誰もがまず思い浮かべるのが往年の名匠、昨年惜しまれながら亡くなったアレクシス・ワイセンベルクでしょう——しかしこの欧州の東の果てにある歴史長き国では、東西冷戦時代が終わった後もなお続々と、世界レヴェルで活躍を続けているピアニストが続々登場、まさに引きも切らない状況なのです。大御所どころではパリ音楽院の名教師になったエミール・ナウモフを筆頭に、フォルテピアノ奏者として寺神戸亮と緊密なデュオもくりひろげているボヤン・ヴォデニチャロフ、RCA からの新譜登場もあったヴェセリン・スターネフ、そしてエリザベート王妃国際コンクールで華々しく世に出たふたりのとてつもない異才、プラメナ・マンゴヴァとエフゲニー・ボジャノフ...どうでしょう、こうしてみれば本当に折々、さまざまな名手が頻繁にあらわれていることに気づかされるではありませんか!
 そして音楽の都ウィーンでも、ブルガリア人の活躍はめざましいものがあります——同市中央に本拠のあるGramola レーベルは、すでに昨年その丁寧に磨きあげられた音作りが非常に高く評価された編曲集「リストなのか、シューベルトなのか」(GRML98931)で良心的なピアノ音楽愛好家たちの興味を弾いたドラ・デリイスカを世に送り出していますが、他にも弦楽器奏者たちを交えてのトリオ・ダンテで1枚、スラヴの感性と異様なまでに相性のよいラテンの魂を聴かせてくれたピアソラ・アルバム(GRML98973)を録音しているメンバーのひとり、ドンカ・アンガチェヴァという名手もやはり、ちょっと見逃せない存在だったのです!
 ウィーン・ハイドン・トリオの名匠ハインツ・メディモレチ、ないしロシアの系譜を伝えるオクサナ・ヤブロンスカヤのような大物たちに揉まれてきた俊才ですが、本盤は完全にそんな彼女の独壇場、うっかり手を出しかねるリストの難曲ばかりを集めながら、バランスよく『愛の夢』全曲などを中軸にもってくるあたりのセンスも絶妙。冒頭の「ハンガリー狂詩曲」の勢いから「エステ荘の噴水」でのしなやかな解釈へ、大曲「ダンテ・ソナタ」をへて『愛の夢』を三連続、そして意気揚々のメフィスト・ワルツへ...ハンガリー出身の超絶技巧の名手が、イタリアを旅し、文学や恋に耽溺しながら、やがて紳士的な悪魔のような、余人かなわぬ独自の芸術性を確立してゆく、まさにリストの生涯をたどるかのようなプログラムを易々と弾きこなしてみせるのですから、その企画性の高さも含め、やはりちょっと侮れないピアニストではありませんか!

INDESENS!



INDE051
(国内盤)
\2940
匂いたつような美音〜ソレンヌ・パイダッシ登場!
 ピエルネ、フランク、サン=サーンス...
  〜ヴァイオリンとピアノのためのフランス近代音楽さまざま〜

 サン=サーンス(1835〜1921):
  1.ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第1番 ニ短調 作品75
 ガブリエル・ピエルネ(1863〜1937):
  2.ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ニ短調 作品36
 フランク(1822〜1890):
  3.ピアノとヴァイオリンのためのソナタ イ長調(1886)
 マスネ(1842〜1912)/マルシック編:
  4.タイースの瞑想曲 〜歌劇『タイース』より
ソレンヌ・パイダッシ(ヴァイオリン)
ローラン・ヴァグシャル(ピアノ)
 高雅なヴァイオリンの艶やかさ——フランス近代には、有名な傑作もあれば「秘曲なのに至高」もあり。
 フランクのソナタでその圧倒的な音楽性に驚かされながら、未知の名品に出会える喜びも味あわせてくれる

 ロン=ティボー国際コンクールの覇者パイダッシ、あまりにもあざとく喜びに満ちたデビュー盤に、陶酔...

 フランス近代音楽——フォーレやドビュッシーやラヴェルに代表される、あの高雅で美しい音楽世界。多くの人が知っている傑作も数あるなか、ドイツ中心・オーケストラ音楽こそ至高の音楽史ではしばしば見過ごされてきた傑作がきわめて多く眠っているのも、フランス近代音楽を聴いてゆくことの面白さ・奥深さにつながっているのかもしれません。
 ピアノ小品や歌曲はそれこそ数知れず、交響曲なども意外に多く(比較的知られているところでも、たとえばショーソン、デュカス、マニャール、トゥルヌミル...といったあたりの交響曲群さえ存在からしてそう広く認知されていない気が)、オペラにいたっては傑作群さえなかなか上演機会に恵まれない...という状況のなか、何よりも「知られざる傑作」に出会う機会が多いのはやはり、室内楽ではないでしょうか。それも、ソナタや弦楽四重奏曲など、かなり大規模な作品からしてそうなのですから、音盤探索の興趣もつきないところでございます。本盤のプログラムは非常にバランスよく「フランス近代の傑作と秘曲」を同時に味わえる充実内容を、その高雅さそのままに伝えてくれるフランス人の俊才たちの名演で聴ける...というのがまず嬉しいところ。

 フランクのソナタや「タイースの瞑想曲」など、演奏者の技量を聴き確かめられる傑作と一緒に、秘曲系の音盤ではおなじみながら大舞台には出て来にくいピエルネの高雅なソナタ(傑作!!)、近年ようやく録音が増えてきたもののフランス人奏者の録音が意外に見つからないサン=サーンスの第1 ソナタ(フランス近代文学の傑作、プルースト『失われた時を求めて』で象徴的に使われている「ヴァントゥイユの楽想」がこれではないか...とよく言われる曲ですね)という、広く聴き親しまれていてもまずおかしくないはずの名品がふたつ!

 こういう周到なプログラムを弾いているのが、本盤をもってソロ・デビューとなるフランスの才人、欧州ではわずか数年であっというまにスターダムにのしあがってきたソレンヌ・パイダッシ...というのには本当に驚かされます(最近の若手デビュー盤は、ほんとうに一筋縄ではゆかない)! 2009 年にハノーファー国際コンクールに入賞、さらに翌2010 年にはロン=ティボー国際コンクールで優勝(フランス人としては1955 年のデヴィ・エルリ以来の快挙!)——このあたりから欧州各地で人気をあげ、昨2012年にはフランスの著作権団体Adamiから「レヴェラシオン(今年の最注目株)」賞を授けられ、益々勢いにのりつつある...なんて業界事情は本当にどうでもよくて、まずはぜひ「音」を聴いていただきたい1枚。フランス人奏者ならでは!とあらためて思わずにはおれない匂いたつような美音を、絶妙の“揺らし”で繰り出しながら、作品の美質をふわりと浮かび上がらせてみせる...あまりの薫り高さにむせかえってしまいそう!
 共演のローラン・ヴァグシャルは、瀬尾和紀(fl)との来日公演で日本でも有名になりつつありますが、室内楽奏者としての手腕はパリ管弦楽団ソリストたちとの共演などでもおなじみ。筋金入りの本物フランス室内楽、雑誌レビューなども期待できそうですね!

NCA


NCA60212
(国内盤)
\2940
暮れゆく季節、揺れる弦 〜ベルリンの作曲家たちと〜
  ライナー・ベーム(1952〜):
   ①ノラ・アストルガに捧ぐギター二重奏曲(1984)
  クラウス・フェルトマン(1951〜):
   ②アンティノミー(1980/94)
   ③アタッカ(1981)④ …を待ちながら(1994)
  クラウス・マルティン・コピッツ(1955〜):
   ⑤秋の音楽(1985/86)
  ヘルゲ・ユング(1943〜):
   ⑥前奏的小品(1991)
    ※収録曲順は ①-②-③-⑤-⑥-④
クラウス・フェルトマン、
ライナー・フェルトマン(ギター)
 アンビエントに、うつろう時を思う——誰もが詩情や季節感を感じる、そんなギターの対話。
 現代音楽だからと遠ざかるのはもったいない、いろいろな角度から味わえる、響きの美しさ。
 ケージのようにも、フラメンコのようにもなるギターとともに、深まりゆく季節を過ごしたい1枚。
 現代音楽にアレルギーを感じる人にこそ聴いてほしい!と思うアルバムの登場です。20 世紀末、まさに同時代を生きるベルリンの作曲家たちのギター楽曲が6曲——と聞くといかにも難渋な現代音楽盤のように感じられるかもしれませんが、あにはからんや。そこに広がる響きの世界は、紅葉をあしらったジャケットが醸し出す秋の季節感そのままの、誰の耳にも詩情や季節感を感じさせてやまない、やさしくも奥深い音にあふれているのです!あえて「アンビエント系現代音楽」と呼んでもいいかもしれない、よく聴いていると十二音技法やミニマルミュージック的処理など、確かに20 世紀後半以降の音楽らしい語彙がたっぷり盛り込まれているのですが、このアルバムのすごいところは、そういうものが苦手な耳にも不愉快さを感じさせない。
 かわりに、季節の風情や、微妙な心の機微の移ろいのようなものが静かに伝わってくる、しっとり暮れゆく秋を過ごすお供になってくれそうな響きがずっと続いてゆくところ——
 アルバム原題にもなっている「秋の音楽」はその好例で、肌寒さのなかで静かに木々が色づいてゆくような雰囲気のなか、そっと不安がしのびよったり、過ぎてしまった夏を思い出したり...といった情感がなんとなく感じられる不思議な音楽。
 


NCA60257
(国内盤)
\2940
ブラームスにはあと2曲のヴァイオリン・ソナタがあった!
 ブラームス:最後の二つのソナタ
  〜ヴァイオリンとピアノのために書かれていた、未知の領域〜

 ブラームス(1833〜1897):
  ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ヘ短調 op.120-1
  ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 変ホ長調 op.120-2
  (クラリネット・ソナタからの作曲者自身による編曲)
 アルベルト・ディートリヒ(1829〜1908)、
 ローベルト・シューマン(1810〜1856)、
 ヨハンネス・ブラームス(1833〜1897):
   “F.A.E.”のソナタ(1853)
アンネマーリエ・オーストレーム(vn/ガット弦使用)
テルヒ・ドスタル
(p/シュトライヒャー1880年製オリジナル、作曲者使用楽器)
 「ブラームスのヴァイオリン・ソナタ」は、第3番で終わりではありません!最晩年に書かれたソナタ2曲は、作曲者自身の手で周到に、クラリネット版からヴァイオリン版へ変更されていた...その成果を、ブラームスが知っていた19世紀の楽器の響きで。それに、FAE全曲版まで!

 「ブラームスのヴァイオリン・ソナタ」といえば、1878 年から1886 年にかけて作曲された3曲の傑作があまりにも有名...というより、これで全曲という理解が普通だと思いますし、ちょうどCD1枚にうまく収まる長さなので、そうした傑作全曲盤が折々にあらわれるわけですが、今回のアルバムはそうした通念をさまざまなポイントでくつがえしてくれる、ブラームス・ファンのみならず全ロマン派音楽愛好者に聴いていただきたい1枚!

 なんといっても一番大きいのは、ブラームスの創意が極限まで高まった晩年に、実はあと2曲ものヴァイオリン・ソナタが生み出されていた!という事実——
 あまり知られていないことなのですが、ブラームス晩期を代表する2曲のクラリネット・ソナタは、その後ヴィオラ版が作成されたことは有名でも、実はもうひとつ、ヴァイオリン版でも出版されていたのです!しかもブラームスは、ヴィオラ版ではクラリネットのためのパートにほとんど手心を加えなかった一方で、このヴァイオリン版にはいろいろなところで明らかにわかる変更点があり、出版社にも折々どう刊行すればよいか、細心の注意をはらって書き送っているという思い入れの強さで、これを第4・第5 のヴァイオリン・ソナタとみなしてよい、まさに巨匠晩期の創意が「ヴァイオリンのために」発揮された見過ごしがたい名品なのだ...という事実に気づかされます。実際、その音を聴いてみれば、すぐに(曲のよさもあってのことでしょうが)誰もが最初からヴァイオリンのための作品だったかのように錯覚してしまうのでは——
 そういう嬉しい驚きを、このアルバムでは生前のブラームスが(まさにこれら2曲の編曲作品の実演でも)弾いていたという、1880 年製のシュトライヒャー・ピアノで聴けるのが何よりの興奮ポイント。しかも、こうした企画では共演者の楽器まで古楽器とまではいかないのが普通でしょうが、なんとここでは弦楽器奏者も年代物のグヮルネリにガット弦を張り、19 世紀の弓を使って、まさにブラームスが聴き親しんでいたであろう通りの響きでこれらを演奏してくれているのです(それにしても、フィンランド出身の若き名手はふたりとも、実に艶やかなブラームスを紡ぐ人たち…引き締めるところは引き締め、実に聴きごたえあります!)。そして本盤がもうひとつ嬉しいのは、ソナタ全曲録音の余白などに収録される若書きの「スケルツォ」の全貌、つまりブラームス以外あとふたりの作曲家との共作で仕上げられた「FAE のソナタ」の全楽章が、まったく同じ19世紀楽器で聴けるという事実——
 名手ヨアヒムの誕生日に捧げられたこの曲でも、ディートリヒ作曲による冒頭楽章から実に艶やかな歌が流れ出します。ブラームス自身のすぐそばで聴いているような、絶美の企画...楽器についての説明も含め解説(全訳付)も的確で充実。
 


NCA60255
(国内盤)
\2940
リスト:交響詩『プロメテウス』・『ハムレット』
 『祭りの賑わい』・『揺り籠から墓場まで』
 〜19世紀当時の楽器による〜

 フランツ・リスト(1811〜1886)
  1. 交響詩第5番「プロメテウス」
  2. 交響詩第7番「祭りの賑わい」
  3. 交響詩第10 番「ハムレット」
  4. 交響詩第13 番「揺り籠から墓場まで」
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー管弦楽団(古楽器使用)
 現在、シリーズ最新刊。19世紀中盤にまったく新しい管弦楽作法を打ち出していったリストの革新性は、オーケストラ編成や使用楽器・奏法を徹底して当時流にしただけでなく録音会場の広さや残響にまでこだわってこそ。鬼才ハーゼルベック、ますます際立つ至芸!「現代の慣習どおり弾いていたのでは、リストの革新性はわからない」——
 仕掛け人である指揮者マルティン・ハーゼルベックの主張は、このシリーズにおいてはほんとうに過不足なく示されてきたと思います。バドゥラ=スコダやデームスがいちはやくフォルテピアノを「再発見」し、アルノンクールやレツボールといった桁外れの異才を折々に生んできたオーストリア古楽界にあって、ロマン派オルガン音楽の再発見のかたわら、自ら主宰するウィーン・アカデミーという古楽器楽団で18世紀以降の音楽の「真の姿」を徹底的に解き明かしてきた俊才指揮者。今や現代楽器のオーケストラでも活躍をみせている彼が、信頼できるオーストリア周辺のすぐれた古楽器奏者たちの力を総結集し、19世紀ドイツ楽壇で異彩を放ちながら同時代人たちにさえ正しく理解されることのなかった「リストの新しい管弦楽芸術」、交響詩のほんとうの姿を解き明かそうとするプロジェクトも、これでいったん区切りを迎えることとなります!
 交響詩シリーズ堂々の最終巻(...まだ「ファウスト交響曲」や一連のオラトリオ、メフィスト・ワルツやハンガリー狂詩曲、それに『死の舞踏』などが残っている!と未来に期待をかけたいですね!!)では、古くから録音こそされてきたものの意外に新名演は出てこない『プロメテウス』に始まり、秘曲『祭りの賑わい』やメータ、マズアら大指揮者たちの録音でも知られる『ハムレット』、そして唯一晩年になってから作曲された異色の交響詩『揺り籠から墓場まで』にいたるまで、1枚のアルバムにまとめられた曲目としては申し分のない選曲!5弦コントラバスや1830 年製オリジナル(!!)のピストン式ウィンナホルン、ドレスデンやベルリンで発見されたリスト生前のオーボエやコーラングレ...と、どのセクションを見ても垂涎の的というほかない使用楽器(解説同様、詳細一覧部分まで全訳付)のなかには、このシリーズ録音を続けてゆく過程で新たに見つかったり、協力者が名乗りをあげて提供してくれたり...といった欧州楽壇ならではのフィードバックもあったのだとか。そうしたわけで、交響詩シリーズのしめくくりを飾るこの巻に、ヴァイマール時代に作曲された12 曲の交響詩の最後を飾った『ハムレット』と、晩期のオーケストラ作品である『揺り籠から墓場まで』という、リスト管弦楽芸術のふたつの究極的結実を持ってきたのは、まさしくハーゼルベックのプロジェクトがいかに確かであったかを示す証左ともいえるかもしれません。
 信じられないほどの一体感で、まるで有機的に呼吸する19 世紀の美しい獣のようなオーケストラ...!ピリオド管楽器のみならず、ソリスト奏法とは違う19 世紀式オーケストラ奏法に従い、ヴィブラートを抑えきった弦楽器
(こちらも歴史的銘器満載!)の響きも、ため息が出るほどの美しさ。じっくり聴き究めたい1枚、ご注目を!

PAN CLASSICS



PC10287
(国内盤・訳詞付)
\2940
A.ファリーナと、ナポリ・バロックの「夜の音楽」
 〜リコーダー、歌、羊腸弦との交錯〜

◆アントーニオ・ファリーナ(1675 年頃活躍):
 ①セレナータ「星をちりばめた戦車に乗って」
 ②カンタータ「ポジリポにて」
 ③安らぎなさい、美しいひと
◆ピエートロ・マルキテッリ、通称ペトリッロ(1643〜1729):
 ④リコーダー、弦と通奏低音のためのソナタ 第1番
 ⑤リコーダー、弦と通奏低音のためのソナタ 第9番
◆アレッサンドロ・スカルラッティ(1660〜1725):
 ⑥リコーダー協奏曲 第23番 ※曲順は①④②⑥③⑤
アンドレアンヌ・パカン(ソプラノ独唱)
アンナ・シュテークマン(リコーダー)
アンドレア・フリッジ指揮
Ens.オデュセー(古楽器使用)
 南国の「夜のバロック」は、妖艶にして快楽的、そしてとびきりオーガニック——
 リコーダーは軽やかに飛びまわり、歌い手はまっすぐな美声で静かに恋をうたいあげる。
 スリルと抒情を、羊腸弦の伴奏に乗せて——電撃的に伝わる音の快楽と奥深さ、体感あれ。

 ナポリのバロック!!
 地中海の真中に張り出したイタリア半島の南部は、何百年にもわたってスペインの支配地でありつづけ、イタリアでありながら北部とはまるでテンションの違う、非常にユニークな文化が育まれた場所——ルネサンスを経験し、文化というものに敏感になっていったスペイン人たちやイタリア人たちは、バロック期には地元の民俗文化を生かしながら高度に知的な芸術理論を展開するという、よその土地ではまず見られない独特の芸術世界育んでいました。その末にあるのが、アレッサンドロ・スカルラッティやペルゴレージ、ポルポラなどに代表される、後期バロックのわかりやすいオペラぱそのメロディセンスがヨーロッパ全体を席巻し、ヘンデルの痛快なオペラや協奏曲に、あるいはバッハの末子J.C.バッハを介してモーツァルトに...と、私たちが親しんでいるバロック〜古典派の美しい音楽へと続いていったわけですが、本盤はそうした「南の地元文化」と「バロック後期の美しいメロディセンス」がひとつにまじりあう、1700年前後のナポリ独特の音楽がどれほどストレートに私たちの耳と気持ちを刺激するか、あざやかに伝えてくれる逸品ぱ 東西ヨーロッパ各地から集まった国際派の演奏集団が描き出すのは、オーガニックな木材の味わいそのまま流麗な旋律美を愉しませてくれるリコーダーひとつ、耳を脅かさない真っ直ぐな古楽歌唱で心を和らがせてくれるソプラノひとり、そして羊腸弦で変幻自在、スリリングな緊張感からしなやかな抒情までニュアンスたっぷりの響きを織り上げてゆく、小編成の弦楽バンド——
 プログラムの中心にあるのは、1675年にA.ファリーナという作曲家が刊行した曲集いらい、ナポリの風物詩となっていった「夕暮れどきに恋をささやく窓辺の音楽」、セレナータ。
 基本的には独唱にヴァイオリン2部と通奏低音が添えられる、小回りのきく編成ならではの親密な音作りで恋心をうたいあげる作品が多く、つまりは室内カンタータの屋外版というわけですが、ナポリでは別荘地でもあるポジリポの海岸でこの種のセレナータが夕暮れどきに奏でられ、多くの旅行者たちがその調べに恍惚となった...と伝えられています(この伝統が、ドニゼッティやロッシーニらのベルカント時代にまで続くのでした)。恋の主人公と無縁であれば、その響きはなんとも優しく癒しの音色に感じられるもの——確かに、南国の暑さを和らげるには絶妙の清涼音楽です。
 その雰囲気をいや増しに高めてくれるのが、アルバムの半分を占めるリコーダーと弦による作品群——短調和声が折々に妖艶な「夜の空気」を演出するなか、スリリングに軽やかに飛びまわる笛の音の愛らしさ・痛快さときたら...店頭演奏向きな、人を選ばないストレートな魅力あふれる古楽盤です!
 

Porpora: Pastoral Cantatas
PC10285
(国内盤・訳詞付)
\2940
ポルポラ 古典派前夜、ナポリ・バロックの巨匠
 〜牧人たちの室内カンタータさまざま〜

ニコラ・ポルポラ(1686〜1768):
 1.室内カンタータ「ふるえる海の囁きは」
 2.室内カンタータ「セベートの妖精と羊飼い」
 3.チェロと通奏低音のためのソナタ ヘ長調
 4.室内カンタータ「これがあの森だろうか」
 5.室内カンタータ「ほら、夜明けの光が」
 6.四つのパルティメント
 7.室内カンタータ「恋の素敵な安らぎを」
マリーナ・デ・リーゾ(メゾソプラノ独唱)
ステーファノ・アレージ指揮
Ens.スティーレ・ガランテ(古楽器使用)
 ヨーロッパは、この人の綴るメロディに酔いしれた——ナポリ楽派の華やかなる巨匠、若きハイドンにまで多大なる影響を与えたポルポラの持ち味は、なんと言っても「歌」にあり。
 ヴィヴァルディやヘンデル好きなら、知らないなんてもったいない!精選7曲、訳詞付き!

 音楽史をちょっとでも読んでみると、バッハやヘンデルが活躍していた18 世紀前半のヨーロッパ音楽が、実はいろいろな意味で、イタリア人たちのオペラに隅々まで乗っ取られていたことに気づかされるはず—— 楽器のためだけの音楽なんて、この時代は「歌のかわり」でしかなかったのです!
 大国の君主たちはこぞって名歌手を宮廷に呼び、もし財力があるなら、惜しみなくそれを与えて名歌手の歌を独占することもありました(“神と同じく唯一の”ファリネッリがスペイン王家に雇われたり、マルケージだか暮れシェンティーニだかが報酬額を倍にするよう、ロシアの女帝エカチェリーナに面と向かって平然と言ってのけたり...)。
 そんな時代にあって、劇場に行かずとも艶やかなメロディの歌声をじっくり楽しめ、プライベートで歌の味わいを堪能できるジャンルとして流行したのが、通奏低音伴奏ひとつあれば(ないし、他にほんのいくつかの楽器を添えるだけで)大丈夫な小編成向き声楽曲—-とくに、古代神話に出てくる理想郷で暮らす羊飼いたち・半妖精たちの恋物語をうたった室内カンタータは、18 世紀オペラ芸術の粋を津々浦々で愉しめるものとして、ヨーロッパ各地で大人気を巻き起こし、楽譜もどんどん出回ったとか。そういったなかで、誰よりもすばらしいカンタータを書くことで有名だったのが、オペラの本場ナポリで腕を磨き、卓越したメロディセンスで欧州各地を虜にしつづけた大作曲家、ポルポラ!大バッハやヘンデルより1歳年下で、晩年こそ流行の変化についてゆけず貧窮のなかで死んだそうですが、それが「ポルポラの音楽などつまらないものだ」と言い張る根拠になってしまうなら、私たちはモーツァルトやヴィヴァルディの音楽をも「時代の変化についてゆけなかったから無価値」と言わなくてはならなくなってしまいます——
 そう!全盛期のポルポラの音楽には、イタリア語歌詞の魅力を越えた、ユニヴァーサルに世界中の人々を魅了できるだけの魅力的なメロディがあったからこそ、それらの楽譜がさかんに出版されたり筆写されたりしてきたわけで、その味わいはすでにバロック音楽(というより、精確には「18 世紀の音楽」)に耳がなじんでいる私たち21 世紀のクラシック好きにとっても、やはり抗いがたく訴えてくるものがあるのです。
 ここではそんなポルポラの名曲群から、羊飼いの恋物語をテーマにした5曲を厳選。イタリア勢を中心に欧州各地で筋の通った解釈を聴かせ続けているアンサンブル・スティーレ・ガランテによる手際よい名演は、ポルポラが誰なのか、どれほど素晴しいメロディセンスの持ち主だったかを、艶やかな響きで強烈に印象づけてやみません。
 羊フィギュアをあしらったDigipack のジャケットが異様にかわいすぎるのがまたポイント(ちょっとしたギフトにも最適そう!)...南国イタリアを思うもよし、重厚オーケストラ音楽への清涼剤として愉しむもよし。
 今回も歌詞全訳付、なかなか読めないポルポラにまつわる解説も全訳付です。どうぞお見逃しなく!
 


PC10284
(国内盤・トラック別物語解説付)
\2940
レツボール&アルス・アンティクヮ・アウストリア
 ヨハン・ヨーゼフ・フックス(1660〜1741):
  『ドイツ語による受難オラトリオ』

   (1731 年ウィーン初演・全曲)
グナール・レツボール(バロック・ヴァイオリン)
アルス・アンティクヮ・アウストリア(古楽器使用)
聖フローリアン大聖堂少年聖歌隊(ソリスト)
 「皇帝レクィエム」の作曲者、つとに知られたバロック後期の「皇帝たちの作曲家」——全ドイツ語圏の長、ハプスブルク皇室に仕えたフックスの偉大さは、後期作品ほど強烈に。
 正体が明らかになったオラトリオの、息をのむ旋律美、スリリングな音楽展開の妙...!

 オーストリア古楽界で、圧巻の技量と天才的な音楽史研究の勘をもって強い存在感を放っている異能のバロック・ヴァイオリン奏者、グナール・レツボール——昨年末『レコード芸術』誌でいまさらのようにアカデミー賞に輝いたあたりから彼のアルバムはどれも動きがよくなってきたのですが(今年末にはArcana レーベルからも新譜登場あり!)、彼の素晴らしいところは、自身がすぐれたバロック・ヴァイオリン奏者であるだけでなく、修道院での聖歌隊からの音楽研鑽を軸とした、17〜18世紀オーストリアの音楽実践のあり方を、時には少年合唱や極少編成などにもフレキシブルに対応しつつ、できるかぎり本来の姿どおりに再現しようという意識が徹底しているところ。時にはトランペットやティンパニまで入る壮麗な祝典音楽で、弦楽器を各パートひとりに絞る...という、あくまで史実ありきの演奏解釈で思わぬ美質を探りあててみたりするのですから、その録音物にはひとつひとつ、かけがえのない価値が宿っている...と言ってもまず、過言はありません。

 そんなレツボールの音楽史センスがいかんなく発揮されているのが、この最新録音。
 バロック後期のオーストリアでは、この巨匠の存在なしには何事も起らなかったのでは...?と思えるほどの名声を誇った巨匠、J.J.フックスの、なんと晩年の大作が新たに発見されていたのです!

 フックスは後年ハイドンやベートーヴェンらが勉強の基礎として使った作曲理論書「パルナスス山への階段」の著者としても有名ですが、そうした理論家気質をよそに、生前は最新のイタリア様式を多声様式とあざやかにかけあわせるセンスに長けた、ドイツ語圏南部きっての巨匠として、素晴しいオペラを連発していた一流作曲家として生きていた人——
 晩年になればなるほど、その至芸の深みがどんどん味わいを増してくるあたり、同時代のドレスデンで活躍したゼレンカを彷彿させるところもあるようですが、今回発見されたのは、長らくイタリア人作曲家カルダーラの作として見過ごされてきた『ドイツ語による受難オラトリオ』。
 これがウィーンの皇室という知的社会を念頭に置いた実に不思議な一編で、キリストの受難物語を、ギリシャ神話のペルセウスによるアンドロメダ姫救出の物語になぞらえ、象徴的にうたいあげてゆく...という不思議な作品になっているのです。つまり、表面上はギリシャ神話の世界を扱ったオペラになっている・・・
 しかし音作りの接しやすさは、そうした「実は深い」セッティングを全く意識させない、実に聴きやすい仕上がり。フックス、やはり侮れない作曲家です…しかもレツボールは各パートひとりずつの極少編成で、バッハやテレマンにも比しうるこの大家の充実作をまさしく18 世紀そのままの響きに翻案してゆく、その頼もしくも味わいに満ちた響きの妙がまた痛快...18 世紀オーストリアのオラトリオ上演習慣を厳密に守り、少年歌手が起用されていながら、そう聴かなければまず気づかないのでは...と思えるほどの技量。
 歌手自身の才覚もありつつ、指揮者レツボールの腕も確実にあるのでしょう。フックスが何者なのかを知るうえでも好適な1枚ですし、Arte Nova『皇帝レクィエム』の感動が忘れられない方にもぜひお勧めしたい、フックスの魅力が正統的に、そして十二分に再現されている注目作なのです。

RAMEE



RAM1203
(国内盤・訳詞付)
\2940
アリアンナ・サヴァール(歌、ハープ)
 暁の星 〜大航海時代、スペインの歌と器楽曲〜

 ①スペインのカラータ、通称“テルツェッティ”(ダルツァ)
 ②スペインのカラータ(ダルツァ)
 ③あなたは魅力的で(作者不詳)
 ④心を失くしてしまった(J.ポンセ)
 ⑤ああ、不幸なわたし(バダホス)
 ⑥ああ、自分をどう慰めればよいのだ(レオンのJ)
 ⑦理由なき心の疼き(デュ・ブリュケ)
 ⑧アルブルケルケ、アルブルケルケ!(作者不詳)
 ⑨礼節ある過ち(ペーザロのユダヤ人グリエルモ)
 ⑩アルタ(デ・ラ・トレ)
 ⑪ラ・スパーニャ(ジスランまたはヒスリン)
 ⑫騎士さま、何の御用?(作者不詳)
 ⑬母さん、俺の悲しみは(エスコバル)
 ⑭ディンドリン(作者不詳)
 ⑮夜明けにおいで(作者不詳)
 ⑯結婚の失敗(フェルナンデス)
 ⑰どうした、そんなに沈んで、グラナダの王よ(エンシーナ)
 ⑱レダよ飲むがいい(作者不詳)
 ⑲ある高い山の暗い小路を(リベラ)
 ⑳人生はかくも重い(作者不詳)
 (21)乙女よ、神の母よ(アンチエータ)
 (22)喜びを苦しみと換えた方がましだ(エンシーナ)
 (23)この世の良いものは皆すぐに(エンシーナ)
アリアンナ・サヴァール(歌、ハープ)
コリーナ・マルティ(リコーダー、チェンバロ)、
ミハウ・ゴントコ(ビウエラ他)指揮
Ens.ラ・モルラ(古楽器使用)
イベリア半島に、イスラム教徒の国があったころの記憶が、まだありありと鮮明だった頃——
躍進めざましい「ジョルディ・サヴァールの娘」多芸なる歌手アリアンナが俊才集団とうたう、ルネサンス初期の憂愁、他者へのまなざし…スペイン古楽演奏史、いとも豊かに塗り替わる。
大航海時代—-スペインの地からイスラム勢力やユダヤ人らが一掃され、キリスト教国としての統一スペインができた頃。新大陸発見という大きなニュースに湧くスペインは、欧州の中心ともいうべき最強の国家でした。
 英国やポルトガルをものともせず(無敵艦隊の敗北はまだ先の話)、地中海の真中を占めるナポリやシチリアまで配下に収め、盛期ルネサンスのローマを略奪しまくり、イタリア半島さえ支配しかねない勢い——そんな時代のスペイン音楽はほんとうに驚くほど先進的で、古楽を聴き慣れた方々なら、もう100 年くらい後の音楽と言われても不思議はないと思ってしまうような曲もたくさんひルネサンス以降の芸術音楽のルーツが詰まっていると言っても過言ではない、そうした大航海時代のスペイン音楽(および、スペイン音楽に刺激されたイタリア音楽)の数々を、中世〜初期ルネサンスの器楽作品復興に熱をあげる異才集団ラ・モルラがビウエラ、弓奏ビウエラ、ギテルヌ、初期チェンバロ、ルネサンスリコーダー、ハープ...といった珍しい古楽器の数々を用いてあざやかに再現してゆくのですが、そこに歌い手として招かれたのはほかでもない、スペインの古楽シーンから世界を牽引する立場となった古楽の導師ジョルディ・サヴァールの愛娘、アリアンナ・サヴァール(!)というから嬉しい話ではありませんか。
 艶やかにして真っ直ぐなその古楽歌唱は、この時代のルネサンス祭壇画に描かれた青空をも思わせる美しさで、情念うずまく光と闇の詩句をきれいに、この“いま”に息づかせてゆく——充実の解説(訳詩とあわせて全訳付)にはアンサンブル共同主宰者ミハウ・ゴントコによる演奏解釈についての説明もあり、珍しい古楽器の使われ方についての示唆的な話題も豊富。
 オーガニックな響きに遠く異国を想うもよし、ルネサンス絵画鑑賞のお供にするもよし...知られざる音の発掘、やはりRamee レーベルの得意芸ですね!

RICERCAR



MRIC333
(国内盤)
\2940
ヴァイオリンは、どこから来たのか
 〜16・17世紀、最初期のヴァイオリン音楽さまざま〜

 ①リチェルカーレ「ラ・スタンジェッタ」(オブレヒト)
 ②天使ガブリエルが遣わされ(ジョスカン・デプレ)
 ③誰のそばを通るのか、恋の神よ〜ト調のカルメン(ヨハンネス・ジスラン)
 ④アヴェ・マリア(ヨハンネス・レジス)
 ⑤ごきげんよう、慈愛の皇后(エンゲランドゥス2世)
 ⑥おお、生贄は神聖なり(トロンボチーノ)
 ⑦「ラ・スパーニャ」による第27 多声楽曲〜
  平安を、主よ(C.フェスタ)
 ⑧美しき薔薇を捧げましょう、薫り高く(ブリュメル)
 ⑨ラ・カネーラ〜動きをつけて(作曲者不詳)〜パドヴァの貴婦人(ベンドゥージ)
 ⑩その思いがわたしを苛むなら(S.フェスタ)
 ⑪聖ヨハネの讃歌(ドレミの起源)〜
  「ラ・スパーニャ」による第79 多声楽曲〜同・第113 多声楽曲(C.フェスタ)
 ⑫わたしを苦しめる恋(S.フェスタ)
 ⑬ろくでもない老女〜細身の剣(ベンドゥージ)
 ⑭第7リチェルカーレ(ヴィラールト)
 ⑮すばらしい奇跡(ヴィラールト)
 ⑯薔薇の調べ(ヴィラールト/バッサーノ)
 ⑰聖別されたるものは喜ばしきかな(フィリッポ・ダ・ルラーノ)
バティスト・ロマン(ルネサンス・ヴァイオリン)指揮
アンサンブル「音楽の鏡」(ル・ミロワール・ド・ミュジーク)(古楽器使用)
 ご存知の通り、ヴァイオリンの歴史は16世紀にまで遡る——でも、いったいどんな曲が弾かれていたのでしょう?
 古文書・絵画など歴史的資料を徹底検証、生まれたばかりのヴァイオリンの真相を解き明かす、典雅で興趣の尽きない「ルネサンスのヴァイオリン芸術」!
 歴史的資料に事欠かない古楽大国ベルギーの老舗レーベルRicercar ですが、さすが音楽学者が長年にわたりディレクターをつとめているだけあって、こういう筋の通った企画を、純粋に音楽アルバムとしての完成度とみごとに共存させてくるあたり、まったく嬉しくなってしまう侮りがたさです。つい先日も、19 世紀の偽作だとばかり思われていた「ヴィターリのシャコンヌ」が正真正銘の新作だったことを解き明かす注目盤(MRIC326)で、ヴァイオリン音楽史に一石を投じたばかりのところ、今度はなんとさらに時代を遡り、バロック・ヴァイオリンどころか「ルネサンス・ヴァイオリン」なるものの真相を突き止めよう!という、古楽ファンなら必ず通らずにはいられない注目企画を送り出してきたのです!
 ふだんバロック前後の音楽を古楽器で聴いていると、つい「ヴァイオリンの流行は17 世紀から始まり、それ以前からあるヴィオラ・ダ・ガンバ属を押しのけていった」というような話題しか触れないでいることも多いものですが、明敏なクラシック・ファンの皆様もご存知の通り、昔日の名工アンドレア・アマティ(1505 頃〜1577)のそれをはじめ、現存するヴァイオリンの銘器でもとくに古いものは、実にその歴史を16 世紀まで遡ることができるわけで、じっさい古い宗教画などをみても、いかにもヴァイオリン!というような弦楽器を奏でている天使の絵などは16 世紀のハイ・ルネサンスの時期から存在していたのも事実。とはいえ、16 世紀には楽譜を書く習慣はもうできていても、それを何で弾くか?まで明記する習慣はまだなかったので、16 世紀のルネサンス音楽家たちがヴァイオリンで何を奏でていたのかまでは、丹念に音楽史研究を続けてゆかないとわからないことも多いのです。
 そうした研究の末、本盤では欧州最前線で活躍する古楽弦楽器奏者たちが、ヴァイオリンの(というより、実はヴァイオリンよりヴィオラの方が重要だったのかも?)やってきたルーツを探りながら、ネーデルラント楽派の声楽曲編曲やイタリア最初期の印刷楽譜などから入念に拾い集めてきた貴重な器楽作品など、「原初のヴァイオリン音楽」の典雅な美しさ、超絶技巧を弄する文化以前の美のあり方を、たっぷり楽しませてくれます。


旧譜から

MRIC326
(国内盤)
\2940
“ヴィターリのシャコンヌ”の正体
 〜T.A.ヴィターリとG.B.ヴィターリ、ボローニャ楽派の弦楽芸術〜

トマゾ・アントニオ・ヴィターリ(1663〜1745):TAV
ジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィターリ(1632〜92)GBV
 ①トマゾ・ヴィタリーノの楽譜(TAV)
 ②ヴァイオリン独奏のための「喇叭のカプリッチョ」(GBV)
 ③フルラーナ(フォルラーヌ)(GBV)
 ④バラバーノ(GBV)
 ⑤ヴァイオリンが時を告げる(GBV)
 ⑥ルッジェーロ(GBV)
 ⑦パッサメッツォ イ短調(TAV)
 ⑧第1ソナタ イ短調(TAV)
 ⑨第12ソナタ:チャコーナ(シャコンヌ)(TAV)
 ⑩ソナタ ニ長調(TAV)
 ⑪ヴィオローネのためのベルガマスカ(GBV)
 ⑫ヴァイオリンのためのベルガマスカ(GBV)
 ⑬パッサメッツォ(GBV)
 ⑭ヴァイオリン独奏のためのトッカータ(GBV)
 ⑮第2ソナタ イ短調(GBV)
ステファニー・ド・ファイー(バロック・ヴァイオリン)
使用楽器:ジョヴァンニ・パオロ・マッジーニ1620年製作オリジナル
アンサンブル・クレマチス(古楽器使用)
 まさか、この曲が実は「18世紀のオリジナル作品」だったとは——音楽史上の発見の興奮をさますどころか、ますます興奮に油を注ぐかの凄腕名演に酔わずにおれない...
 古楽大国ベルギー発、欧州古楽勢の俊才たちが解き明かす「ヴィターリのシャコンヌ」とその周辺。

 古楽大国ベルギーを過去30年以上にわたり音盤面から支えてきたRicercar レーベルは、主宰者自身がエンジニアであり、同時に音楽学者でもあるという筋金入りの古楽レーベルなのですが、その良さが最上のかたちで結晶したアルバムがまたもや登場ぱ近年のピリオド・アプローチ全盛の流れのなか、19世紀〜20世紀初頭にひところ流行した「偽作なんちゃってバロック」の傑作(たとえば、ヴァイオリンの名手クライスラーが「作曲」していたコレッリ、プニャーニ、タルティーニ、フランクール...「風の」作品など)はますます録音されにくくなっていますが、その煽りを最も大きく受けているのが、おそらく「ヴィターリのシャコンヌ」ではないでしょうか——
 コレッリの「ラ・フォリア」と並ぶ、超絶技巧も少なからず駆使しなくては極上の演奏には仕上がらない難曲でありながら、どうにもバロック期の作にしてはやたらと情感表現が濃密すぎ、加えて楽譜資料をきちんと突き止めた学者があまりおらず、ごく何となく「19世紀に作られた偽作」という風評が立ちはじめ、いつのまにかとんと新録音を見かけない(メジャーや国内盤など、ここ数十年皆無に近い状態??)レパートリーになってしまいました。
 ところが...近年、実はこの曲の確かな18世紀史料が発見されたとのことで(そのあたりは本盤の解説(長大ですが全訳つきます)に詳述されています)、驚くべきことに、この異形の変奏曲が実は18世紀オリジナル、間違いなくT.A.ヴィターリの真作だったことが判明したというのです
 うかつな遊びはやりにくい、古楽専門家の猛者が揃うベルギーでこのようなアルバムが出てきたということは、これはどうやら信頼に足る事実のよう——解説を読み解きながら、実は父子2代にわたって一族の名を高めた「ヴィターリ家」の2名匠の音楽世界は、彼らの活躍地であり、かつコレッリやトレッリが若い頃に修行を積んだ場所でもあるボローニャのヴァイオリン芸術がどういうものだったのか、バロック中期から後期へと移る時代がどういう時期だったのか、さまざまなかたちで彷彿とさせてくれます。
 羊腸弦の魅力そのまま、「シャコンヌ」の世界が新たに立ち現れる…古楽ファン向けというより、ヴァイオリン・ファン向けのアイテムとして注目されそうな…何はともあれ、本当に見逃せない1枚なのです

ZIG ZAG TERRITOIRES



ZZT327
(国内盤・2枚組)
\4515
アマンディーヌ・ベイエール(バロック・ヴァイオリン&指揮)
 コレッリ:合奏協奏曲集 作品6(全12曲)
  〜作曲家歿後300周年!〜

アルカンジェロ・コレッリ(1653〜1713):
12 の合奏協奏曲 作品6(全曲)
 1.第1 番ニ長調 7.第7 番ニ長調
 2.第2 番ヘ長調 8.第8 番ト短調「クリスマスの夜に」
 3.第3 番ハ短調 9.第9 番ヘ長調
 1.第4 番ニ長調 7.第10 番ハ長調
 2.第5 番変ロ長調 8.第11 番変ロ長調
 3.第6 番ヘ長調 9.第12 番ヘ長調
アマンディーヌ・ベイエール(バロック・ヴァイオリン&指揮)
Ens.リ・インコニーティ(古楽器使用)
 古楽シーンでの静かなコレッリ記念年ブーム+ベイエールのカルト人気...これは「来る」!
 バロック・ヴァイオリン芸術の登竜門、バーゼル・スコラ・カントルムの旗手ベイエールが満を持して世に問う、近代芸術音楽はじめての“ビッグネーム”最後の傑作曲集に注目!

 ヘンデルやヴィヴァルディ、大バッハなどが生きた時代にはすでに「伝説的巨匠」になっていた、西欧近代音楽史上はじめての“世界的に名の通った大作曲家”アルカンジェロ・コレッリ(今年歿後300周年)による、最後の傑作協奏曲集...を、一昨年のバッハ無伴奏( ZZT110902 )と昨年のヴィヴァルディ(ZZT310)でバロック・ファンを越えた名声を確立しつつある古楽器奏者アマンディーヌ・ベイエール率いる俊才集団、リ・インコニーティによる演奏で!
 ・・・とあれば、古楽アイテムに敏感なユーザー層はもちろん、古楽奏法やバロックが気にはなっているものの“とっかかり”が見つからないなあ...と感じておられる王道クラシック・ファンも、まず意識せずにはおれないはず!
 コレッリは17世紀半ばに生まれ、当時めざましくヴァイオリン芸術が発展しつつあったイタリア北部でめざましい活躍をみせて頭角をあらわし、はじめ芸術音楽の牙城ボローニャ、次いで“永遠の都”ローマを拠点に活躍、自身の桁外れなヴァイオリン演奏技巧によって、そしていっさい駄作のない選び抜かれた傑作ばかりを楽譜出版する作曲家として、イタリアはおろかフランス、ドイツ語圏、さらには遠く英国やオランダ、北欧にいたるまで絶大な名声を誇った巨匠中の巨匠!
 1700年に刊行されたソナタ集(作品5)は無数の追従者を生み(終曲「ラ・フォリア」はいまだに有名ですね!)バロック・ソナタ形式の至宝となりましたが、生前早くから書きためてきたオーケストラ向け合奏作品を12曲まとめた作品6の合奏協奏曲集もまた、歿後1714年に刊行されるや絶大な支持を得て、ヘンデルの合奏協奏曲集やヴィヴァルディの「調和の霊感」も含め圧倒的な影響力を誇る曲集となりました。
 ヴァイオリン2挺とチェロ(および通奏低音)からなる「独奏群(コンチェルティーノ)」と、比較的大人数の弦楽合奏からなる「大合奏(リピエーノ)」を対置させてゆく合奏協奏曲形式の模範となったこの金字塔的傑作を、コレッリ歿後300周年にあたる今年のハイライト的リリースとなる本盤で味わえるのは、バロック・ファンならずとも興奮を禁じ得ないところでしょう!
 独奏群側と大合奏側でチェンバロを使い分け(オルガンも併用)、曲ごと変わるソロ奏者には俊才・川久保洋子さんのお名前も!
 コレッリ作品を、日々欠かせない「いのちのパン」にたとえたベイエール自身のコメント含め、解説(全訳付)も高い充実度を誇る内容、歿後300 周年にあらためてコレッリと向き合うには絶好のリリースというわけです。



(LP)


SIGNUM(LP)

SIGLP 287
(2LP/180g重量盤)
\4600

Signum ClassicsのLP第1弾はマクリーシュ!
 新・ヴェネツィアの戴冠式1595

 鐘の音/ハスラー:イントラーダ/
 ベンディネッリ:トランペット・ソナタ第333番/
 G.ガブリエリ:第2旋法によるトッカータ/入祭唱/
 ベンディネッリ:総督の到着 〜 トッカータ第26番/
 G.ガブリエリ:第1旋法によるイントナツィオーネ/
 A.ガブリエリ:
  キリエ(5声)、クリステ(8声)、キリエ(12声)、グローリア(16声)/
 集会祈願/使徒書簡/
 G.ガブリエリ:昇階曲 〜 カンツォーナ(12声)/福音/
 A.ガブリエリ:第7旋法によるイントナツィオーネ/
 G.ガブリエリ:奉献唱 〜 聖マルコを祝福せし神が(10声)/
 序唱/A.ガブリエリ:サンクトゥス&ベネディクトゥス(12声)/
 ベンディネッリ:サラシネッタ第2番/
 G.ガブリエリ:カンツォーナ(15声)/主の祈り/
 アニュス・デイ/
 G.ガブリエリ:第5旋法によるイントナツィオーネ/
 A.ガブリエリ:聖体拝領 〜 おお、聖なる饗宴よ(5声)/
 G.ガブリエリ:カンツォーナ(10声)/聖体拝領後の祈り/
 グッサーゴ:ソナタ・ラ・レオナ/
 G.ガブリエリ:すべての民よ、手を打ち鳴らせ(16声)
ガブリエリ・コンソート&
 プレーヤーズ
ポール・マクリーシュ(指揮)
 Signum ClassicsのLP第1弾はマクリーシュ!"新・ヴェネツィアの戴冠式1595"!《180g重量盤LP2枚組! 》

 ガブリエリ・コンソート&プレーヤーズの結成30周年を記念してリリースされた『新・ヴェネツィアの戴冠式1595』が、「LP(180g重量盤)ヴァージョン」で登場!
 ポール・マクリーシュがさらなる研究、時代考証を重ねた『新・ヴェネツィアの戴冠式1595』では、1595年にサン・マルコ寺院で行われたヴェネツィアの第89代ドージェ(元首)の戴冠式を音楽で再現。
 サックバットやコルネット、オルガン、男声合唱などを中心とした、ジョヴァンニ・ガブリエリ、アンドレア・ガブリエリなどヴェネツィアの作曲家たちの音楽、グレゴリオ聖歌、鐘の音など、当時ヴェネツィアに響いたであろう音が鮮やかに蘇る!

 録音:2012年2月28日−29日&3月1日、ドゥエ・アビー(バークシャー/イギリス)/180g重量盤、収録時間約74分





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