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第74号
お奨め国内盤新譜(1)
2013.12.17〜2014.2.14


ALPHA



Alpha952
(国内盤・訳詞付)
\2940
リュリとシャルパンティエの『テ・デウム』
 〜フランス盛期バロック「偉大なる世紀」の偉容〜

マルク=アントワーヌ・シャルパンティエ(1643〜1704):
 1.テ・デウム H.146〜合唱と器楽合奏のための
ジャン=バティスト・リュリ(1632〜1687):
 2.テ・デウム LWV55〜合唱と器楽合奏のための
ヴァンサン・デュメストル(指揮)
ル・ポエム・アルモニーク(古楽器使用)
カペラ・クラコヴィエンシス(合唱)
アメル・ブラヒム=ジェロウル、
オロール・ビュシェール(S)
レイナウト・ファン・メヘレン(オートコントル=高音テナー)
ジェフリー・トムスン(T)
ブノワ・アルヌー(B)
ジャン=フランソワ・マドゥーフ、
ジョエル・ラエンス(指孔なしナチュラルトランペット)
 痛快、痛快!
 BCJでも大活躍のマドゥーフ、ニケの楽団で活躍するラエンスら“喇叭手”をゲストに迎え、新年を寿ぐ「だけじゃない」あの傑作と、作者シャルパンティエの仇敵にして意外に録音が出ないリュリの名品を——Alpha看板アーティストならではの勢い、必聴です!

 21 世紀に入って以来、並居るメジャーレーベルの新譜を押しのけ話題盤を続出、しかもその大半が古楽ものという、クラシックCD セールスの常識を覆す攻勢をみせ「小規模資本レーベルの革命」とうたわれた、フランスのAlpha レーベル——その創設時からの看板グループたる古楽集団、ヴァンサン・デュメストル率いるル・ポエム・アルモニークが、2年以上の沈黙を破り、ついに待望の新譜をリリースしてくれました。しかも、これまでの小編成&発掘系古楽から一転、ティンパニや金管・管弦楽まで動員したうえ大合唱が加わり、フランス・バロックを代表する巨匠リュリとシャルパンティエという、ビッグネーム推しのゴージャスな録音にぱ曲は「テ・デウム」、新年のお祝いなど晴れがましい場面で歌われてきた合唱曲をふたつ。

 太陽王ルイ14 世の王室音楽総監督だったリュリと、そのリュリに疎まれ生前は活躍の場が著しく制限されていたものの、20 世紀に入ってから再発見が進み、その桁外れの才能で人々を魅了してきたシャルパンティエの作例——とくにシャルパンティエの「テ・デウム」は、冒頭で鳴り響くトランペットの行進曲がたいへん有名で、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの放送番組でも使われ続けてきたほどですが、やはり周到な作品研究を旨とするル・ポエム・アルモニークだけに、演奏解釈はひとくせもふたくせもある内容。
 まず何より、トランペットには指孔なしの本格派ナチュラル楽器を吹きこなす世界的名手、バッハ・コレギウム・ジャパンなどでも大活躍のJ-F.マドゥーフがトップがゲストにぱ第2喇叭もエルヴェ・ニケの楽団で華々しく妙技をみせてきたラエンスが迎えられ、アクセントの効いた古楽ティンパニの上、見事な音程感覚のもと鋭く響きわたるファンファーレは実に壮麗。デュメストルはリュリ作品でもシャルパンティエ作品でも「当時の教会音楽におけるテンポ感覚」を徹底して考え抜き、あえて緩急をあまりつけない一貫したテンポで演奏を続けており、これが大編成古楽バンドの響きとあいまって、実に痛快な演奏効果を生み出しています。
 例によって音楽学者や指揮者による充実解説も全訳&訳詞付。見逃せない傑作古楽盤です!
 


Alpha604
(国内盤)
\2940
樫本大進(ヴァイオリン)&エリック・ル・サージュ(ピアノ)
 フォーレ:ヴァイオリンとピアノのための作品全集
  〜ピアノを伴う室内楽全集5〜

ガブリエル・フォーレ(1845〜1924):
 ①ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番 イ長調 作品13
 ②ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番 ホ短調 作品108
 ③子守唄 作品16 ④初見視奏のための小品
 ⑤ロマンス 作品28 ⑥アンダンテ 作品75
樫本大進(ヴァイオリン)
エリック・ル・サージュ(ピアノ)
 フランス最前線をゆくル・サージュが、シューマン全曲録音に続き敢行したフォーレ室内楽全集、大好評シリーズ最終巻を飾るは、ベルリン・フィル首席としてますます注目を集める樫本大進!
 初期の大傑作、晩期の第2ソナタ、そして4編の小品...解き明かされる粋の真髄、じっくりと。

 ピアニスト大国たるフランスでも、ソリストないし手練の室内楽奏者として、現役最前線屈指の活躍をみせている俊才エリック・ル・サージュ。大好評のうちにシューマンの室内楽&ピアノ曲全集11巻のシリーズ録音を終えたばかりの頃、Alpha のプロデューサーが「今度はフォーレ!もうすぐ録音開始!」と喜び勇んで連絡をしてきてから、はや2年——じっくり折をみながらリリースされてきた同シリーズも、ついに5巻目の最終巻となりました。そこでル・サージュと対等のパートナーシップをみせることとなったのが、今やベルリン・フィルの新たなコンサートマスターとして、確実に新時代の欧州、いや世界的クラシック・シーンで存在感を強めつつある樫本大進——2月にはベルリン・フィルの精鋭が集う室内楽団、ベルリン・フィル八重奏団のメンバーとして来日が決まっているところ、その活躍の場がドイツ語圏だけに限定されないことをあらためて印象づけるかのごとく、小規模資本レーベルの革新とうたわれたフランス随一の名門、Alpha レーベルでの録音盤がついにリリースされるというのは、きわめて見逃せない情報ではないでしょうか?
 フォーレがヴァイオリンとピアノのために書いたソナタ2曲といえば、かねてから無数のソリストたちが好んでとりあげ、録音もしてきた超重要ジャンル。しかしル・サージュの録音シリーズはすでにシューマンの頃から(『レコード芸術』誌や朝日新聞の「試聴室」などで絶賛をもって迎えられてきたこともあり)確実に地盤を固めてきた、つまり、耳をすませば必ず何かがある演奏しか出てこない!ということが日本のユーザーにも周知徹底しているところ。
 フォーレ盤も既存4盤が好調なうえ、つい先日日本リリースあいなった連弾やフルート作品を集めたシリーズ第4作が、まさにいま発売中の『レコード芸術』誌で特選に輝いていることもあり、このタイミングでの超・王道演目の登場は確実に売り場を賑わせてくれることでしょう。
 例によって充実解説は日本語訳付、とくにこのシリーズは必ずフォーレにかかわりのある詩がひとつ選ばれ、それを軸に解説が続いてゆく...という読み応えのある内容なのですが、今回もその部分まで含めしっかり訳出、フォーレという作曲家が初期の第1ソナタに、あるいは晩期の第2ソナタに、どんな気配を宿らせたのか、じっくり聴き深める手引きとなってくれるでしょう。4つの小品の併録も嬉しいところ。

ARS MUSICI


AMCD232-163
(国内盤)
\2940
シューベルト:ピアノ連弾のためのソナタと幻想曲
 フランツ・シューベルト(1797〜1828):
  1. ピアノ連弾のためのソナタ ハ長調「グラン・デュオ」D.812 / Op. posth.140
  2. ピアノ連弾のための幻想曲 ヘ短調D.940 / Op. posth.103
フォルカー・シュテンツル、
ハンス=ペーター・シュテンツル(ピアノ)
 現代ドイツ最前線の、ピアノ・デュオ——圧倒的な一体感と驚くべきコントラストの妙でおりなすシューベルトの...否、連弾レパートリー最重要の大小2傑作、いかんなき仕上がりの名演!
 解説も丁寧で読み応えあり(全訳付)、音楽愛あふれるArs Musici レーベルの面目躍如。

 プロで長く活躍しているピアノ・デュオ・ユニットは、いうまでもなく凄腕ぞろい——なにしろピアノで生きている人間、それもソロで弾いても桁外れの腕前をもっていながら、貴重な自己実現の時間のかなり多くをデュオ活動に捧げるわけですから、それに見合うだけのものがなければ続けてゆけるわけがないのです。
 ふだんは別々に活動しているソリスト同士がデュオをやるときの「差がきわだつ」演奏もかけがえなく良いのですが、ラベック姉妹やデュオ・クロムランクのように、世界的にもデュオとしての認知が高いユニットがこのジャンル屈指の傑作を弾くときの、驚くばかりの一体感、逆に両者のコントラストを打ち出す磨き抜かれたテクニックには実に息をのむものがあります。世界随一のクラシック大国ドイツの第一線で活躍を続け、日本でも数多くの門弟を育ててきたデュオ・シュテンツルも、そうした超一流のデュオ・ユニット——Deutsche Harmonia Mundi と同母体で発足したドイツの良心的小規模レーベルArs Musici には、彼らの至芸が光るデュオ作品(連弾曲も、2台もピアノのための作品も...)の銘録音が多々残されていて、生前のブラームスが弾いていた1880 年製シュトライヒャー・ピアノによる『ドイツ・レクィエム』のピアノ版(AMCD233-483)のように高い評価を博している例も少なくないのですが、ここに国内仕様初出となるのは、そんなデュオ・シュテンツルの良さがさまざまな意味で最上の音楽体験をもたらしてくれる逸品中の逸品! ピアニストが二人いるからこそつくりあげられるシンフォニックな壮大さも、ダイナミズムあふれる音のドラマも、シューベルトと同じドイツ語話者であるからこその深いロマンや慈しみあふれる悲哀の情も、すべてここに詰まっている…といっても過言ではないかもしれません。ピアノという楽器が日増しに市民生活にくいこんでいった19 世紀初頭、都市生活者たちの暮らしに密着した創作活動を続けていたシューベルトが、ピアノ独奏曲やピアノ伴奏の歌曲だけでなく連弾や2台ピアノ作品も多々書いていたことはご存知のとおりですが、本盤に選ばれているのは、彼の連弾作品のなかでも飛びぬけて大がかりな2作品——かたや「グラン・デュオ」の異名をもつハ長調の大ソナタ、かたや最晩年に書かれた、単一楽章だけで演奏時間20 分近くにもおよぶ壮大なハ短調の幻想曲D.940!前者は歿後出版されたさいシューマンが「これは交響曲の連弾版だったのでは?」などという説を提案したため、管弦楽版で演奏・録音されることもある大作。連弾系の超重要作品のひとつとして録音も多いところ、ドイツ楽壇で先陣を切ってデュオ・レパートリーの魅力を広めてきたシュテンツル兄弟の磨き抜かれた解釈は既存名盤群と並ぶ、避けては通れない堂々たる名演!繊細さがきわだつ幻想曲の美にも息をのみます。
 連弾というものの可能性、ドイツ楽壇最前線のクオリティ、知っておくべき傑作録音です!

COO RECORDS


COO-037
(国内盤)
\2800+税
石塚 勇/OCTAVIST オクタビスト 超低音ヴォイスの魅力
 1. 蚤の歌(モデスト・ムソルグスキー Oc/fg/p)
 2. ステンカ・ラージン(ロシア民謡 Oc/p)
 3. オール・マン・リバー(ジェローム・カーン Oc/p)
 4. ミスティ(エロル・ガーナー Oc/g)
 5. ムーン・リバー(ヘンリー・マンシーニ Oc/g)
 6. モナ・リザ(ジェイ・リビングストーン Oc/g)
 7. トゥー・ヤング(シルヴァー・ディー&シド・リップマンOc/p)
 8. スターダスト(ホーギー・マイケル Oc/vn/p)
 9. ソー・イン・ラブ(コール・ポーター Oc/vn/p)
 10. 『2つの間奏曲』第1楽章(ジャック・イベール fl/vn/p)
 11. オンブラ・マイ・フ(ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルOc/fl/p)
 12. ガボッタ(マヌエル・ポンセ p)
 13. ゴンドラの歌(中山晋平/根本 Oc/p)
 14. 朧月夜(岡野貞一Oc/T/p)
 15. 七つの子(本居長世Oc/T/p)
 16. どこかで春が(草川 信Oc/T/p)
 17. この道(山田耕筰Oc/T/p)
 18. 夢で逢いましょう(中村八大Oc/T/fl/p)
石塚 勇(オクタビスト)
前田ヒロミツ(テノール T)
根本英子(ピアノ p) 助川太郎(ギター g)
前田正志(ファゴット fg)
岩井真美(ヴァイオリン vn)
増田多加(フルートfl)
 石塚 勇 Profile
 1963 年新潟県糸魚川市生まれ。県立高田高等学校、東京芸術大学卒業。声楽を故渡邊高之助、箕輪久夫、高橋修一の各氏に師事。在学中よりポピュラー音楽の世界で活動し、NHK 教育テレビへのレギュラー出演やテーマソング等の歌唱を手がける。また数百曲のCM ソングや外国アニメの吹き替え、編曲、音楽制作、朗読を行っている。
 97 年よりザ・キングトーンズのメンバーとして各地のコンサートや映画「ショムニ」、サントリーレッドCM 等に出演。声の参加作品はディズニー「クマのプーさん」イーヨー役の歌唱、「ザ・ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」、「新世紀エヴァアンゲリオン」、「カントリーベアーズ」、「アンパンマン」、「大奥」、「ハッピーフィート2」等の映画、NHK 教育「むしまるQゴールド」の挿入歌「ミドリガメのうた」を高橋洋子さんとのデュエットで発売している。ロシアンコーラスの最低音を歌うオクタビストとして東京トロイカ合唱団のラフマニノフ「晩祷(ばんとう」全曲演奏会に2004 年より毎年出演を続けている。
  ブログ 超低音歌手日記「http://deepseabass.seesaa.net/」

CYPRES



MCYP1668
(国内盤・訳詞付)
\2940
パトリック・コーエン=アケニヌ
 アルカンジェロ・コレッリ(1653〜1713):

  ①ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ニ長調op.5-1
  ②トリオ・ソナタ ニ短調 作品1-11
  ③トリオ・ソナタ ト長調 作品1-9
  ④ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ヘ長調op.5-10
  ⑤トリオ・ソナタ ト短調 作品2-6
  ⑥チャコーナ ト長調 作品2-12
  ⑦ラ・フォリア ニ短調 作品5-12
 フランソワ・クープラン(1668〜1733):
  ⑧パルナスス山、またはコレッリ讃
パトリック・コーエン=アケニヌ(バロック・ヴァイオリン)
Ens.レ・フォリー・フランセーズ(古楽器使用)
バンジャマン・シェニエ(バロック・ヴァイオリン2)
フランソワ・ポリ(バロック・チェロ)
ベアトリス・マルタン(オルガン、チェンバロ)
アンドレ・エンリック(テオルボ、アーチリュート、バロック・ギター)
 記念年を過ぎ...たからこそ、復権への流れはますます充実をみせる、コレッリ探求の道——イタリア・バロック最大のヴァイオリン芸術家は、同時にフランス音楽史においても大切な存在。
 フランス古楽界の躍進とともに歩むコーエン=アケニヌ快心の1枚、クープラン作品も絶妙!!

 昨2013 年に歿後300 周年を迎えたことの余波か、コレッリに関する見逃せない新譜がCypres から届きました!
 ローマの作曲家コレッリは、イタリアだけでなくフランスでもきわめて重要な存在—-従来イタリア音楽に強い抵抗感を示していたのが17 世紀フランスの宮廷人たちだったのですが、コレッリのヴァイオリン音楽(とくに一連のソナタ)がフランスに届くや、その魅力の虜となってしまった人が続々現れ、イタリア音楽の受容に大きな拍車をかけたのです。
 とくに、誰よりもフランス的なクラヴサン(=チェンバロ)独奏曲を書いたフランソワ・クープランが、コレッリのソナタに強く惹かれるあまり、自分でもイタリア風ソナタを書きたいという欲求に抗えなくなり、いつのまにかフランスにおけるイタリア風合奏曲のパイオニアにもなってしまった...というのは有名な話。後年は『コレッリ讃』という寓意的合奏曲をトリオ編成のために書き、この偉大なローマの巨匠が諸芸神やアポロ(太陽神にして芸術の神)の住まうパルナスス山へと向かうさまを、あざやかな音楽で描写してみせたのでした。
 本盤は、そうした意味でフランスの古楽器奏者たちにとってもかけがえのない存在であるコレッリに光をあてるべく、彼自身が形式そのものの完成をみちびいたトリオ・ソナタ形式や独奏ソナタ形式による作品のかたわら、クープランの『コレッリ讃』を末尾に配するという、まさにフランスの古楽集団ならではのプログラム構成をじっくり味あわせてくれる内容——その仕掛け人は、古楽先進国フランス屈指の研究機関、ヴェルサイユ・バロック音楽センターの弦楽器部門でも活躍をみせてきた名匠パトリック・コーエン=アケニヌ!
 W.クリスティのレザール・フロリサンをはじめ、フランス古楽界の躍進とともに歩んできたさまざまな一流古楽バンドでコンサートマスターをしてきたこの俊才が、深い信頼でむすびついたレ・フォリー・フランセーズの面々(Alpha にもモーツァルトとルクレールの名盤があります。Alpha092および083)と織り上げる精妙なコレッリ解釈は、1枚でこの作曲家の全容をあざやかに解き明かすプログラム構成、充実した解説(全訳付)とあいまって、いま古楽を愛する人たちに「必聴!」と推せる内容になっています。
 


MCYP7615
(国内盤・訳詞付)
\2800+税
フランス近代「知る人ぞ知る」俊才ブリュノーの壮大な『レクィエム』
アルフレッド・ブリュノー(1857〜1934):
 1.レクィエム(1884)〜
  4人の独唱者、合唱、児童合唱、6本のトランペット、
  2台のハープ、オルガンと大管弦楽のための
クロード・ドビュッシー(1862〜1918):
 2.『ペレアスとメリザンド』組曲(マリユス・コンスタン版)
リュドヴィク・モルロ指揮
ベルギー王立モネ劇場交響楽団・合唱団
ミレイユ・ドランシュ(S)
ノラ・ギュビシュ(Ms)
エドガラス・モントヴィダス(T)
ジェローム・ヴァルニエ(Bs)
ベルギー王立モネ劇場少年少女合唱団、
フランデレン放送合唱団
『レクィエムと七つの世紀』で確実な成功を収めたベルギーCypresから、名門楽団の思わぬ新録音!
 フランス近代の「知る人ぞ知る」の俊才ブリュノーの壮大な『レクィエム』は、復権の価値ある大作——
 巨大編成による壮麗な響きも、フランス近代ならではの静謐さも、極上の演奏解釈で、じっくりと。

 ご存知のとおり、亡くなった人を悼むカトリック・ミサのための音楽『レクィエム』は、なぜかクラシックCD の世界においてはユニークなジャンルでありつづけています——というのも、このジャンルに深い愛着を寄せる人が多く、モーツァルトやヴェルディ、フォーレらの傑作はもちろんのこと、古くはルネサンスからバロック・古典派・ロマン派・近代を問わず、「レクィエム」と名がつく曲の音源は必ず入手したい...という音楽ファンの方が、不思議と多いのです。
 これが日本だけの現象ではないらしいことは、かつてはArion レーベルがさまざまな音源を結集して制作したレクィエムBOX、最近ではベルギーの俊英レーベルCypres の『レクィエムと七つの世紀』など、諸外国のレーベルもレクィエムに特化した一大企画を折々世に送り出していることからもわかります。
 とくにCypres レーベルのシリーズは、ブルックナーの思わぬ若書きを収録した第3巻(MCYP1654)をはじめ、いまだに予想を上回る注文が来る、つまり「あればあっただけ出てゆく」シリーズ。そんな好企画を成功させたこのレーベルから、なんと欧州随一の歌劇場であるブリュッセルの王立モネ劇場との連動で、こんな驚くべき新譜が舞い込んできたのです!

 アルフレッド・ブリュノー・・・。
 エルガーやレオンカヴァッロ、シャミナードらと同じ1857 年生まれ、つまり19 世紀末に頭角を現した世代のこの名匠、マスネ門下で才覚をあらわし、おもにオペラの領域で活躍したため、日本のファンにはなじみが薄いかもしれませんが、その若き日の意欲作『レクィエム』は、フォーレの傑作が生まれる数年前に書かれ、ドビュッシー「『牧神の午後』への前奏曲」の2年後に英国で世界初演された忘れがたい名品。
 かつてBMG でジャン=ジャック・ウトマン指揮の録音も出ていましたが、今度はフランス語圏ベルギーを代表する王立モネ劇場の申し分ない布陣と、2012 年からその終身首席指揮者に就任した名匠リュドヴィク・モルロ(少し前に出た、ナタリー・デセイ主演のヴェルディ『椿姫』DVD の指揮者)、さらに独唱陣には近年の欧州歌劇界でフランスものや古楽系レパートリーを中心に破竹の勢いをみせる俊才陣を迎え、壮麗かつ洗練された響きでこの隠れた傑作を存分に味あわせてくれる名演に!
 余白には20 分以上、ドビュッシーの傑作歌劇『ペレアスとメリザンド』からの管弦楽組曲を艶やかに収録してくれているのは、なんとも嬉しい「おまけ以上」の計らいです。

 解説充実全訳付(訳詩も)、さらなる「レクィエム」の傑作、存分にどうぞ!

PAN CLASSICS



PC10293
(国内盤・訳詞付)
\2940
南から北へ 17世紀ドイツ・バロックの歌と幻想
 〜独唱カンタータ、幻想様式、ソナタ...〜

 ◆ヨハン・ショップ(1590 頃〜1667):
  ①全地よ、主に向かって喜びの叫びをあげよ(S, vn, bc)
 ◆ヨハン・フィリップ・フェルチュ(1652〜1732):
  ②深い淵の底から(S, vn, vg, bc)
 ◆ヨハン・パッヘルベル(1653 頃〜1706):
  ③オルガン独奏のためのチャコーナ ヘ短調(org)
  ④わたしの身は確かな肉(S, vn, vg, bc)
 ◆ヨハン・フィリップ・クリーガー(1649〜1725):⑤第7ソナタ(vn, vg, bc)
 ◆ハインリヒ・イグナーツ・フランツ・ビーバー(1644〜1704)作と推定:
  ⑥おお、やさしきイエス(S, vn, bc)
 ◆ザムエル・カプリコルヌス(1628〜1665):
  ⑦イエスさま、わたしたちの贖(あがな)い主(S, vg, bc)
 ◆ザムエル・エーバルト(1655〜1684):
  ⑧憐れんでください、救世主であらせられるかた(S, vn,vg, bc)
 ◆ディートリヒ・ブクステフーデ(1637〜1707):
  ⑨天に向かって、わが父のほうへ
    (S, vn,vg, bc)S: ソプラノ vn:ヴァイオリン
     vg:ヴィオラ・ダ・ガンバcmb:チェンバロ org:オルガン bc:通奏低音
ハナ・ブラジコヴァー(S)
Ens.コルダルテ(古楽器使用)
ダニエル・ドイター(vn)
ハイケ・ヨハンナ・リントナー(vg)
マルクス・メルクル(cmb,org)
 近年バッハ・コレギウム・ジャパンやコレギウム・ヴォカーレ・ヘントなどでも大活躍の超・気鋭歌手、ようやくソロの傑作盤でドイツ古楽をたっぷり聴かせてくれることに——
 コジェナーだけじゃないチェコ出身の古楽歌手の攻勢をしみじみ実感できる古楽超優良盤、じっくりお愉しみを...!

 欧州古楽界の世代交代は近年めざましいものがあり、つい少し前まで気鋭の若手と言われていた人たちがもう巨匠の域に達していたり、あろうことか引退してしまったり——聞きなれない名のプレイヤーが実はすでに大御所だった、などということも日本ではししばでしょうが、幸い古楽ファンの皆様に対する印象がかなりマメにアップデートされているジャンルがあるとすれば、それは声楽の世界、なかんずくオランダやドイツの古楽界で活躍している歌手たちかもしれません。なぜなら、日本にはバッハ・コレギウム・ジャパンがあるから——欧州でも躍進めざましい鈴木雅明率いるこの楽団、バッハの本場ドイツでさえ認知度はすさまじく高く、そのバッハ教会カンタータ全曲録音シリーズを同ジャンル録音の筆頭にあげる人も多いほど。

 そのバッハ・コレギウム・ジャパンが数ヵ月おきに日本でも定期公演を行い、そこに欧州屈指の、オランダやドイツで活躍中の名歌手がしばしばゲスト出演しているおかげで、私たちは「誰をまっさきに追うべきか」を意識できるというものです。バスのペーター・コーイやソプラノのカロライン・サンプソン、カウンターテナーのロビン・ブレイズやダミアン・ギヨン...彼らの名がいかに大きな意味を持っているか私たちが強く認識しているのも、バッハ・コレギウム・ジャパンの活動が欧州と日本の古楽界をひそかに繋いでいればこそ、なのかもしれません。そうしたなか、近年にわかに存在感を強めている歌い手がいるとすれば、それはまさしく本盤の主人公ハナ・ブラジコヴァー(BCJ 表記は「ブラシコヴァ」)ではないでしょうか。その並外れた技量は、すでにRAMEE レーベルからリリースされているペーター・コーイ指揮のバッハ・モテット集(RAM0904)、あるいは一連のフィリップ・ヘレヴェッヘとの録音(ビクトリア「レクイエム」LPH005、バッハのカンタータ集LPH006 など)でも常々リスナーの皆様を魅了していますが、ここでは堂々アルバムのメインアーティストとして、バッハ以前の、まだ様式が定まりきらないなか独特の魅力を放ってやまないドイツ・バロック名品群を、あの妙なる声をあざやかに操って聴かせ続けてくれます。
 ドイツ語圏の17 世紀は、合唱一辺倒を脱し、南国イタリアからもたらされた独唱の至芸が追求されるなか、幻想様式やソナタなどの器楽スタイルも発展した時代——ドイツ屈指の古楽拠点ケルンで揉まれた俊才が集うEns.コルダルテとともに、ヴァイオリンやガンバとの阿吽の呼吸も絶妙、極少編成ならではの古楽の魅力をたっぷりと!
 


PC10221
(国内盤・訳詞付)
\2940
イタリア、中世からルネサンスへ
 〜14〜15世紀イタリアのアルス・ノーヴァ芸術〜

 ①喜べフィレンツェ(PdF) ②きらめく星よ(Ro)
 ③おお美しき薔薇、天使の真珠*(B) ④おおやさしいエノキよ(GdF)
 ⑤おお、世界は何も見えておらず、へつらいに満ちている*(JdB)
 ⑥愛らしい天使の瞳が(PdB)
 ⑦恋するおとめ、憐れみを垂れてくれたら*(FL)
 ⑧しとやかな乙女よ(FL) ⑨おお美しい薔薇よ(B)
 ⑩新たなる帝国は、星々のあいだ*(BdP)
 ⑪力あふれる君主の御世にて(JdB) ⑫愛の神が私を歌わせる(Ro)
 ⑬傷つきやすい少女の年ごろに(AdF) ⑭あなたの穏やかな瞳の光が(JdB)
 ⑮緋色に輝く光の筋が/あなたがたは正義を愛したまえ(JdB)
 ⑯なんと心は痛む、叶わないなら*(FL) ⑰ご婦人よ、私がこころを(Re)
 ⑱フランスの貴族に(BF)
 ⑲天からもたらされたあらゆる苦難を越えて/パドヴァの偉大な子が(JC)作者不詳
  (ロッシ写本 Ro・ボローニャQ15写本 Bq15・レイナ写本 Re)
  パオロ・ダ・フィレンツェ(1355頃〜1436 PdF)
  ジョヴァンニ・ダ・フィレンツェ(生歿年不詳・14世紀 GdF)
  ヤコヤ・ダ・ボローニャ(生歿年不詳・14世紀 JdB)
  フランチェスコ・ランディーニ(1325〜1397 FL)
  アンドレア・ダ・フィレンツェ(生歿年不詳・14世紀 AdF)
  ベルトラム・フェラギュ(1385頃〜1450 BF)
  ヨハンネス・チコーニア(1370頃〜1412 JC)
  バルトリーノ・ダ・パドヴァ(生歿年不詳・14〜15世紀 BdP)
  プロヴォスト・ダ・ブレーシア(生歿年不詳・15世紀初頭 PdB)
アンサンブル・ペルラーロ(古楽器使用)
ジョヴァンニ・カンタリーニ、
アニエシカ・ブジィンスカ=ベネット(歌)
エリザベス・ラムジー、
マルク・レヴォン(ヴィエル、ピック式リュート)
ロレンツァ・ドナディーニ(歌・総指揮)
 ネーデルラントばかりがクローズアップされるルネサンスですが、実はすでに14世紀から活況は始まっていた。フランス語圏とのつながりも強かったイタリアのアルス・ノーヴァ芸術を古楽教育の拠点バーゼルで腕を磨いてきた異才たちがあざやかに料理。なんと美しい響き!
 14 世紀イタリア——まだオペラも存在していないどころか、新大陸発見以降の産物であるトマトも唐辛子もいまだ誰も知らなかった頃。ローマにも私たちが知るヴァティカンのサン・ピエトロ大聖堂は影も形もない、そんな時代の音楽が今に蘇るというのは、なんと驚くべきことでしょう!もっとも、中世音楽研究の現場からすれば、14 世紀はすでにかなり「近代寄り」。音楽理論書も含め、史料は少なからず発見されており、即興のセンスに長けた驚くほど腕のたつ音楽家たちが、この時代の音楽を続々と開拓しつづけているのです。
 本盤に集う演奏家たちもまた、古楽教育のメッカであるバーゼル・スコラ・カントルムで腕を磨いた俊才揃い!
 おそらく向こう数年のあいだに個々続々とソロで名前を売りはじめるであろう異才ばかりで(ヴィエル(中世のヴァイオリンの祖先)を弾くエリザベス・ラムジーはRicercar レーベルの『ヴァイオリンは、どこから来たのか』(MRIC333)でも活躍をみせています)、火薬というものが戦場に導入される前、美しくも無骨な金属鎧に身をかためた君主たちが戦場をかけまわり、勝ち取った平和の日々に心を安らがせていたであろう「王侯たちの音楽」を、精彩あざやかに綴ってゆく——この時代の音楽というのは、当意即妙の即興センスなしにはそもそも(プロが聴かせるくらいの)音楽としてなりたちにくいものも多いわけで、あえてその世界に踏み込んだ異才たちの「知」と「情」をかねそなえた演奏は、むしろクラシックというジャンルを超えて広く人を魅了してやまない響きに満ちているのです!
 羊腸弦をこする音とはじく音だけを伴奏に、玄妙な中世風の和声感のなか、低音楽器ぬきで綴られてゆく音楽の浮遊感、オーガニックな自然的美質...作品背景の解説も歌詞同様に全訳付、中世末期の異界に思いをはせながら、ゆったりと心の旅としゃれ込みたいもの。本格的な国内盤のない分野、見過ごせない1枚!
 


PC10236
(国内盤・訳詞付)
\2940
アレッサンドロ・デ・マルキ(cmb)指揮
 パスクィーニ:『カイーノとアーベレ』(1671)
  〜イタリア後期バロックの幕開け〜

 アレッサンドロ・ストラデッラ(1639〜1682):
  ①ソナタ 第6番
 ベルナルド・パスクィーニ(1637〜1717):
  ②オラトリオ『カイーノとアーベレ(カインとアベル)』
 アルカンジェロ・コレッリ(1653〜1713):③4声のソナタWoO.2
   ※①を序曲とし、
    ②の途中に③の楽章が場面の区切れ目ごとに挟まる曲順で収録。
アレッサンドロ・デ・マルキ(cmb)指揮
イル・テアトロ・アルモニコ(古楽器使用)
ナディア・ラーニ(S)
クラウディオ・カヴィーナ(C-T)
アンドレアーナ・ガランテ(S)
ジャンパオロ・ファゴット(T)
フリオ・ザナシ(Bs)
アッティリオ・クレモネージ(org)
 Symphonia レーベル幻の録音、Pan Classics より復活!
 モンテヴェルディと18世紀をつなぐ「はざま」のイタリア声楽曲は、ため息がでるほどドラマティックで美しい...!
 その後のイタリア古楽界の躍進を担う俊才ばかりが集う画期的名演、全編歌詞訳付です。

 近代クラシック音楽のルーツとも言えるオペラという芸術様式を生み出し、欧州に冠たる音楽の本場でありつづけてきたイタリア——楽譜その他の音楽遺産は膨大、とくに欧州全土がイタリア人の音楽を求めていた16〜18 世紀の楽譜は、イタリアのみならず諸外国にも数多く保管されており、古楽研究の進展とあいまって、当時の興奮をみごと甦らせてくれる名演・名盤がこの数十年のあいだに続々生み出されてきたのですが、現在すでに廃盤・入手困難となっているものも多々。とくに2010 年に活動停止したSymphonia レーベルは、Nuova Era、Stradivarius、Tactus などと同じく、古楽器演奏がようやくイタリアにも根付きはじめた1990 年前後から、その活況を担ってきた名手たちの重要な録音を数多く制作していたため、音楽史のうえでも見過ごせない、眠らせておくのはあまりに惜しい名盤もそこには多く含まれていました。幸いドイツのPan Classics から復活したこのパスクィーニのオラトリオ録音は、ご覧のとおり、のちに名匠リナルド・アレッサンドリーニやベルギーのルネ・ヤーコプスらのプロジェクトで世界的な活躍をみせたり、自らアンサンブルを結成して旺盛な活躍に乗り出したり(とくにラ・ヴェネジアーナのクラウディオ・カヴィーナ)...と、今では考えられないほど豪華な顔ぶれが揃っていることでも驚愕させられる1枚!
 指揮はアレッサンドロ・デ・マルキ、その後Naive ヴィヴァルディ・エディションなどで名盤を連発するアカデミア・モンティス・レガリスの音楽監督——そして作品も演奏も、これほどの面々が改めて現代に蘇らせようとしただけのことはある内容ぱアルバムの中軸はフレスコバルディ亡き後のローマ鍵盤楽派を代表する巨匠パスクィーニが、1671 年に作曲したオラトリオ。年代からして最も見過ごされてきた時期にある一編(1680〜90 年代以降の、ないし1640 年以前のイタリア音楽は意外な名盤が多いのに…)ですが、すでに1700 年前後の、たとえばA.スカルラッティや初期ヘンデルをさえ予感させる旋律美や整然とした音楽展開が、モンテヴェルディやカヴァッリら17 世紀前半のイタリアを盛り上げてきた巨匠たちの、さまざまな実験的語法を盛り込んだ初期オペラ的スタイルとあいまって、まさに「イタリア音楽ができてゆく過程」をつぶさに感じさせるエキサイティングな内容になっているのです!
 しかもデ・マルキはコレッリの未出版作品(全5楽章)を曲中にうまくばらして配し、当時のオラトリオ上演の常どおり、さながら幕間の間奏のように的確なタイミングで奏でるという、繊細なセンスを問われる演奏スタイルをとっています。旧約聖書の有名なエピソードも、詩人アポローニの手にかかると実にドラマティック、先がわかっていても登場人物たちの心情に強く引き寄せられてしまう——解説・歌詞とも全訳付、本場直送の魅力を、じっくりと!

PASSACAILLE



PSC922
(国内盤)
\2940
Ens.イル・フォンダメント
 ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1759):

  1. 二つの合奏体のための協奏曲 第2番 ヘ長調 HWV333
  2. 王宮の花火のための音楽 HWV351
   (管弦楽版)
  3. 二つの合奏体のための協奏曲 第3番 ヘ長調 HWV334
パウル・ドンブレヒト(ob)指揮
Ens.イル・フォンダメント(古楽器使用)
 「わざわざ出す」には、わけがある——俊才集団イル・フォンダメントの名演、ここにあり!
 意外に新録音が出ないヘンデル屈指の大曲3編、スタイリッシュかつ勇壮に決めてくれる俊才集団は、古楽大国ベルギーならではの超越的クオリティ!見過ごしがたい逸品です。
 昨年から突如、日本語解説付の国内流通が始まったベルギーの秀逸レーベル、Passacaille(パサカーユ)。
 すでに創設から10 年近く、欧州ではもはや安定したリリースが期待の的となっているレーベルのひとつではありますが、その最大の特徴は、主宰者自らもベルギー古楽界、いや世界の古楽界に冠たるフラウト・トラヴェルソ奏者=楽団指揮者であるということ。
 その名はヤン・ド・ヴィンヌ、すでにACCENT やRicercar などといったベルギーの名門古楽レーベルでも数々の名演を刻んできた俊才!数々のアンサンブルや古楽奏者たちとの現場での関わりが、このPassacaille での新名盤群につながっているのはもちろんですが(その意味では、やはりベルギー古楽界で腕を磨いてきたバロック・ヴァイオリン奏者ライナー・アルントが主宰するRAMEE レーベルと少し似ていますね)、とくに肝心なのは、看板アンサンブルのひとつとして、かつてグスタフ・レオンハルトやフランス・ブリュッヘンらの世代の伝説的巨匠たちと対等にわたりあってきたバロック・オーボエ奏者パウル・ドンブレヒトが率いる俊才集団、イル・フォンダメントを擁しているところかもしれません。Fuga Libera にも名演の多いこの団体、1990 年代からゼレンカ、ハイニヒェン(近日ご案内!)、テレマン、バッハ...と幾多の重要なバロック作曲家たちをとりあげ、それぞれの傑作を的確なプログラム構成でじっくり聴かせる名録音を多数制作しており、それらの大半がPassacaille によって世界に発信されてきているなら、どうして日本語解説付ヴァージョンでその偉業を紹介せずにおれようか...!というわけです。
 改めての国内流通版第1弾には、やはりこの名盤を——ヘンデルが王室の祝典のために書いた『王宮の花火の音楽』は、エルヴェ・ニケやロバート・キングの瞠目名盤で知られる初演時の巨大編成管楽合奏版ではなく、作曲家自身が「ぜひとも弦楽器を加えて演奏すべき」と語っていたことをふまえ、初演数ヵ月後にロンドン捨子養育院で演奏されたときのような、弦楽を交えた演奏会ヴァージョンでの演奏。古楽器演奏でこのヴァージョンをきっちり弾くと、現代楽器の巨大オーケストラで聴くのとは打って変わって、スマートかつ鮮烈な作品美が否応なしにきわだつ印象!
 その前後に配されているのは、大昔のクリストファー・ホグウッド指揮AAM 盤以来ほとんど新録音に恵まれていない「二つの合奏体のための協奏曲」…これも「花火」同様にヘンデル晩年の充実作で、既存作品の転用も含みつつ、オーボエ・ホルン・ファゴットからなる独奏楽隊ふたつが弦楽合奏の上で歌い交わす壮麗な曲作りは「なぜ新録音が出ない?」とやきもきするほど...しかし、このイル・フォンダメントによる馥郁たる古楽器演奏の録音さえあれば、まず不足感もないわけです。
 的確な解説も全訳付、「わざわざ出す」に足る充実度、ぜひご体感くださいませ!
 

PSC921
(国内盤)
\2800+税
ハイニヒェン ドレスデン楽長の優雅な宮廷音楽
 〜さまざまな楽器と合奏曲〜

 ヨハン・ダーフィト・ハイニヒェン(1683〜1729):
  1.七声の協奏曲 ト長調 S214 (2ob,2vn,2va,bc)
  2.オーボエ協奏曲 ト短調 S 237 (ob,str,bc)
  3.序曲(組曲)ト長調 S206 (str,bc)
  4.オーボエ・ダモーレ協奏曲 イ長調 S228
   (ob-d'amore, str, bc)
  5.ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 S224(vn, str, bc)
  6.序曲(組曲)ト長調 S205 (2ob, fg, str, bc)
パウル・ドンブレヒト(ob/ob-d'amore)指揮
Ens.イル・フォンダメント(古楽器使用)
 テレマンやゼレンカだけじゃないぱ「バッハ同時代系」でもとくに注目すべき協奏曲作家、かのドレスデン宮廷楽団の指揮者をしていたヴァイオリンの名手、その多芸なセンス!
 各楽器の鳴らし方を心得た名匠の至芸を、古楽大国ベルギーの俊才集団が、鮮やかに。
 昨年から弊社取扱となったPassacaille は、古楽大国ベルギー屈指のフラウト・トラヴェルソ奏者ヤン・ド・ヴィンヌが主宰しているだけのことはあり、この国の古楽器合奏の最先端をとらえた痛快なリリースを、決してコマーシャリズム的な派手さに埋没することなく提案しつづけている好感度大のレーベル。日本の古楽ファンは概して、レオンハルトやクイケン兄弟など、この地域の古楽ムーヴメントを支えてきた巨匠たち、あるいはその門下生たちの演奏に親近感を感じる方が多いようで、このレーベルに録音しているアンサンブルや古楽奏者たちの滋味ゆたかな演奏解釈は、店頭演奏などできっと強くアピールするのでは、とあらためて思う次第であります。
 比較的コンサヴァティヴに、特定の作曲家(それも、誰もが名前を少しだけ知っていて何となく関心を持っていそうな人たち)に焦点を当てたアルバム作りを折々してくれるのも、このレーベルの嬉しいところ。
 おかげで私たちは、音楽史で名前ばかり聞きかじった「昔日の巨匠」がそれぞれどういう人だったのか、じっくり聴き確かめられるという次第——本盤もまさにそうしたPassacaille レーベルの美点が凝縮されたような1枚なのです。そうぱ主人公はヨハン・ダーフィト・ハイニヒェン...ライプツィヒの聖歌隊監督職にうんざりしはじめたバッハが「隣の芝生は...」的に憧れまくっていた、欧州随一の名手が居並ぶドレスデンの精鋭宮廷楽団で楽長をしていたのが、まさにこのハイニヒェンなのです。
 しかも彼はバッハが『ブランデンブルク協奏曲集』を書いたケーテンの宮廷で、バッハの先任者として楽長をしていたこともある...そうしうたことからか、音楽史家たちは早くからその作品に注目、すでに20 世紀初頭には現代楽譜もまとめられていたほか、手稿譜もかなり閲覧可能。しかし古楽器演奏でないと味わいが出にくいのか、はたまたナチュラルホルン向けのパートなど現代楽器でも極度に演奏がむずかしい箇所が散見されるのか、古楽器演奏主体の時代になるまで、この痛快なバロック・オーケストラ・サウンドを堪能できる機会はめったにありませんでした。
 音盤面でも恵まれているとはいいがたく、めぼしいところでは20 年も前にリリースされたムジカ・アンティクヮ・ケルンの2枚組があるくらい(昨年抜粋盤が再発売)...
 そこへ、レオンハルトやブリュッヘンら巨匠世代の名盤群でも活躍しているバロック・オーボエの巨匠パウル・ドンブレヒトが主宰するベルギーの俊英集団、イル・フォンダメントが的確な1枚ものでPassacaille レーベルに録音している本盤は、演奏内容の確かさ(なにしろ、ラ・プティット・バンドやコレギウム・ヴォカーレ・ヘント、レザグレマンなどベルギー随一の古楽集団のメンバーが多数参加しているグループぱ)でも選曲の良さでも出色の出来で、店頭演奏していたら「最上のテレマン?ヘンデル初期の名品?」とバロック・ファンの心をそそること間違いなし!
 組曲、協奏曲、弦、管、はてはオーボエ・ダモーレのような「気になる楽器」もソロで聴こえるなど、古楽器演奏ファンの心をそそる仕掛けが多々。解説も的確にまとめられており、バッハ時代のドレスデン最大の大家のひとりを知るにはうってつけの1枚!
 


PSC985
(国内盤)
\2940
ヴェルディ、オルガン奏者としての素顔
 〜オペラと編曲 さまざまな小品を通じて〜

 ヴェルディ(1813〜1901):
  ①「アイーダ」凱旋行進曲
  ②「運命の力」祈りの場面(メノッツィ編)
  ③「椿姫」二重唱(メノッツィ編)
  ④「椿姫」によるハルモニウムのための幻想曲(ロマーノ編)
  ⑤「オベルト」四重唱(スペラーティ編)
  ⑥ フランチェスコ・フロリモに捧ぐアルバムの一葉
  ⑦「椿姫」ロマンツァ(トルッツィ編)
  ⑧「十字軍のロンバルディア人」合唱(ベルトッキ編)
  ⑨「ジョアンナ・ダルコ」大凱旋行進曲
  ⑩子守唄 ⑪「トロヴァトーレ」カヴァティ—ナ(スペラーティ編)
  ⑫「マクベス」合唱 ⑬「ファルスタッフ」終幕のフーガ(カリニャーニ編)
  ⑭「椿姫」第3幕への前奏曲(トルッツィ&ムーツィオ編)
  ⑮ピアノのためのロマンツァ ⑯チェンバロ(!)のためのワルツ
  ⑰「ナブッコ」葬送行進曲 ⑱「トロヴァトーレ」アリア(トルッツィ編)
  ⑲「四つの宗教的小品」〜アヴェ・マリア(ルポリーニ編)
  ⑳「オテロ」バッラービリ(サラディーノ編)
リューヴェ・タミンハ(オルガン、スピネット)
 これは愛らしいサウンド!
 イタリア19世紀には、意外に古風な伝統も生きていた——信心深いイタリア人たちをオルガンで愉しませ、オペラにも折々この巨大楽器を使う指示を入れてきたヴェルディの思わぬ音響世界を、作曲者にごく近しい楽器で——中にはチェンバロを使う曲も?!

 2013 年は、記念年としては何よりもまずヴェルディとワーグナーで盛り上がった年だったのですが、他にもコレッリその他の記念年作曲家たちを含め、毎年年末にはその年にからんだ作曲家の思わぬ企画が届き「なぜもっと早くリリースしてくれない!」とやきもきするのですが...この一風変わったヴェルディ作品集も、聴きはじめてすぐに強く思わずにはおれなかった1作。
 とはいえもちろん、こういうものは時を選んで売れなくなるというものではありません——なにしろ、企画がすごい!原題にいわく「オルガニストとしてのヴェルディ」。いったい誰が、あの「乾杯の歌」や『アイーダ』の凱旋行進曲の作曲者が、オルガンで何かを弾くなどというようすを想像したでしょう?
 しかし、これにはちゃんとわけがあるのです——ヴェルディが幼少の頃はまだ、イタリアは色々な意味で18 世紀を引きずっており、音楽養育もしばしば教会の聖歌隊に連なって...というパターンが多く(音楽院というものがイタリア各地にできてくるのは、ヴェルディが少し成長した頃のこと)、ピアノの普及率も実はドイツ語圏フランス語圏などとはやや違っていたため、若きヴェルディは折にふれオルガンやチェンバロ(!)のような、当時としてもそろそろ用がなくなりはじめていた津々浦々にはある、18 世紀来の「古楽器」でむしろ音楽に親しんでいたのでした。長じるに及んでも、いくつかのオペラの重要な場面にオルガンを使ってみたり...と、幼少の頃に教会のオルガンで刷り込まれた音響体験は、おもいのほかヴェルディの音楽性に影響を与えていたようです。そこで、そういったオルガン向けのヴェルディ作品の編曲などを集め、時には(オルガン奏者たちが18 世紀の末頃からそうしていたように)ピアノの曲まで動員しながら、またヴェルディの生家で父親が買い与えていたというスピネット(小型チェンバロ!)まで用い、意外にもオルガンの響きから素顔のヴェルディに迫ってみせたのが、このアルバム!
 演奏者名をみてさらに驚愕、なんと、中世末期に遡る歴史的オルガンとそのレパートリーの演奏で知られる超・実力派の古楽系オルガニスト、リューヴェ・タミンハ御大ではないですか!確かなタッチで抑揚豊かに、どこかオルゴールの癒し感さえ思い起こさせるヴェルディのオルガン音楽の世界を紡いでゆく解釈のあざやかさに、改めて脱帽...例によって解説翻訳付、この思わぬ「生のままのイタリア19 世紀」をぜひ発見してください!
 


PSC984
(国内盤)
\2940
ロレンツォ・ギエルミ(チェンバロ)
 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):

  1. フランス組曲 第1番 ニ短調 BWV812
  2. フランス組曲 第1番 ハ短調 BWV813
  3. フランス組曲 第1番 ロ短調 BWV814
  4. イタリア様式によるアリアと変奏 BWV989
  5. イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971
ロレンツォ・ギエルミ(チェンバロ)
使用楽器1:キース・ヒル2001年/18世紀ドイツ作者不詳モデル
使用楽器2:アンドレア・レステッリ2003年/ハノーファーの
クリスティアン・ファーター1738年モデル
 来日公演も大好評——バーゼル・スコラ・カントルムの俊才、じわり深まる音楽性。
 バッハと同時代のモデルによるドイツ型チェンバロを、しなやかに弾きこなし「音楽の父」が体感していたフランスの洗練、イタリアの明快、ドイツの滋味を、じっくりと。

 近年しばしば単独来日を重ねていた欧州屈指のオルガンの巨匠、ロレンツォ・ギエルミ——イル・ジャルディーノ・アルモニコ初期の快進撃を支えたこの異能の鍵盤奏者は2013 年末、主兵ラ・ディヴィナ・アルモニアと来日、イタリア古楽界の最先端をゆくプレイヤーたちがいかに伸縮自在、古楽の枠を大きく踏み越えたとてつもない音楽性を花開かせているかを、あらためて強烈に印象づけてくれました。拠点であるミラノの18 世紀の大家サンマルティーニや、ヴェネツィア派の巨匠ガルッピ...作曲家の知名度では音楽のすばらしさは測れない!とばかり、スウィングしたりロックだったり、エキサイティングなステージ作りは「いまさらまさか古楽器演奏=かたくるしい、と思ってないですよね?」といわんばかりに突き抜けた、痛快な鑑賞体験を与えてくれるものでした。
 その一方で、多くのすぐれたオルガニストたちがそうであるように、ギエルミもまた他のどんな作曲家よりもバッハに深く傾倒している名匠——若き日にも自ら正規奏者をつとめる聖シンプリチアーノ教会でバッハ作品の全曲演奏会シリーズを敢行したことで有名ですが、その才覚は(イル・ジャルディーノ・アルモニコでの活躍ぶりにみたとおり)オルガンのみならずチェンバロでもいかんなく発揮されてきたところ。こうして届いた最新のソロ・アルバムも選曲からして周到、ユーザーの心をくすぐる内容に!というのも本盤、バッハ屈指の鍵盤楽曲である『フランス組曲』全6編をセットで録音するのではなく、まずは前半3曲をまとめ、そこに(フランス風の音楽とともに当時のドイツ音楽に強く影響を与えていた)イタリア様式による2段鍵盤チェンバロ作品の至宝、あの「イタリア協奏曲」と「アリアと変奏」をぶつけてきてくれたのです。
 2枚組ではなかなか手を出しにくい分野も、こうして後続巻をイメージさせながら期待感をあおるプログラムで迫られると、つい心が動きます。しかもその演奏内容がまたすばらしい...曲によって使い分けられている二つの楽器はどちらも、バッハのすごした18 世紀ドイツのモデルを現代の名工たちが復元製作した銘器で、しなやかさと芯の強さを兼ね備えたその美音、二段鍵盤での音量の厚みの違いをギエルミはあざやかに使いこなし、泰然自若、才気と構築感とが絶妙なバランスをみせる解釈の妙で聴く者を魅了してやみません。ここ10 年で大きく塗り替わりつつある古楽界の地図…その道標として、聴いておきたいバッハ盤!

PHI(Φ)



LPH012
(国内盤・訳詞付)
\2940
フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮
 J.S.バッハ、聖歌隊監督として
  〜1723年から1724年へ、コラール・カンタータ形式の確立〜

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 ①卑しき輩のわたしを、誰が選びましょうか BWV48
  (1723.10.3初演/A,T,Cho,tp,2ob,2vn,va,bc)
 ②主よ、お望みのままにわたしのもとへ BWV73
  (1724.1.23初演/S,T,B,Cho,hr,2ob,2vn,va,bc)
 ③彼らはあなたを追放するだろう BWV44
  (1724.5.21初演/S,A,T,B,Cho, 2ob,fg,2vn,va,bc)
 ④わたしは信じます、主よどうか不信からお救いください BWV109
  (1723.10.17初演/A,T,Cho,2ob,2vn,va,bc)
フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮
コレギウム・ヴォカーレ・ヘント(古楽器使用)
ドロテー・ミールズ(S)
ダミアン・ギヨン(C-T)
トーマス・ホッブズ(T)
ペーター・コーイ(Bs)
 こんなタイミングで「ヘレヴェッヘのバッハ」のさらなる新譜に出会えるとは、なんと嬉しいこと!
 めったに録音されない意外な秘曲カンタータも含め、暗中模索でカンタータを書きはじめた「音楽の父」、ライプツィヒ着任当初の多芸ぶりを、あまりにあざやかな演奏で聴ける喜び...!

 合唱畑から稀代の古楽指揮者へ、そして世界的なマエストロへ。快進撃はますます続くベルギーの名匠フィリップ・ヘレヴェッヘのプライベート・レーベルPhi は2013 年、ほんとうに豊作続きでした——2012 年末、迫力と崇高よりも人間的な連帯感がまるで生き物のような温もりを生む『ミサ・ソレムニス』がそのまま年明けまでセールスを記録しつづけ、初のヘレヴェッヘ不在によるバッハ無伴奏ヴァイオリン曲集(LPH008)、ベルギー王立フランダース・フィルとの驚くべきドヴォルザーク(LPH009)、来日と合わせての「ヘレヴェッヘ初の古典派交響曲」ことモーツァルト晩年の3大交響曲(LPH011)、そして最新の『レコード芸術』誌で特選に輝いたジェズアルド(LPH010)...否、ジェズアルドに限らずPhi レーベルの2013 年は、2012 年に続き、ほぼすべてのリリースが『レコ芸』特選という快進撃を破らず維持するかたちになったのです!
 そして、2014 年も——2012 年に「音楽の父」バッハがライプツィヒに着任した年のカンタータ4編をリリース(LPH006)、かねてから散発的に録音してきたこの大家のカンタータを、自分のレーベルでもあらためて連続録音してくれるのだ!という嬉しい先鞭を切ってくれたところ、今回はその翌年にかけての、バッハがコラール・カンタータの手法を確立してゆく過程での作品ばかりを集めた1枚に!
 オーボエ2本と弦楽合奏という「フランス流儀の」オーケストラ体制が定着していったのも、カンタータの最後をコラールで締めくくり、そのクライマックスへ向けてレチタティーヴォとアリアを交錯してゆく作法も、ここでは少しずつ確立されてゆくようすが窺えます。
 ギュンター・ラミンやカール・リヒターの名盤で知られるBWV44 やBWV73 もさることながら、なぜか全集以外では滅多に録音されないBWV109 まで、比較的小規模な編成の曲ばかりながら内容のヴァラエティは申し分ないところ——しかも研究めざましいコルノ・ダ・ティラルシ(スライドホルン)や無弁楽器の探求が進むトランペットなど、金管楽器を独奏で扱った作品が多いのも聴覚的に楽しいところ(アラン・ド・リュッデルの名演は乞うご期待)!オルガンやオーボエまで名手ぞろいで固められた、合唱と器楽が一体の生物のような団結をみせるアンサンブルの粋はもちろん今回も健在。
 またもや「特選」路線をひた走りそうな待望のバッハ新録音、お見逃しなく!

ZIG ZAG TERRITOIRES



ZZT100301
(国内盤2 枚組・訳詞付)
\4300+税
バッハ:ヨハネ受難曲(全曲)
 〜欧州古楽界の最前線で〜
ジュリアン・プレガルディエン(T・福音書記者)
ブノワ・アルヌー(Br・イエス)
ドミニク・ヴェルナー(Br・総督ピラト、聖ペトロ)
ブノワ・アレール指揮
ラ・シャペル・レナーヌ(古楽器使用)
 続々と刷新されてゆく欧州古楽界——その転機を彩る傑作録音、堂々国内仕様発売へ!

 明らかにテンションの違う演奏陣の頼もしさ、「冒頭部以外は1725年中心に」という思わぬ独自校訂版。『ヨハネ受難曲』の演奏史に残る充実録音、じっくり聴き深めたい逸品。
 ヨーロッパ古楽界の目覚ましい世代交代は留まるところを知らず、かつてメジャーレーベルが広告過多なまでに古楽奏者たちを売り込んでくれていた頃の「俊才」たちはもはや「巨匠」の域に達している場合がほとんど——彼らの来た道を踏み固め、現場最前線でさらなる痛快な演奏をくりひろげ、ネットラジオ・ファンや欧州在住のクラシック・ファンを興奮させている気鋭古楽奏者たちは、必ずや日本のファンをも興奮させずにはおかないはず!
 その証拠に、数年前にはギリシャ出身の歌劇場指揮者T.クルレンツィス率いるシベリアの古楽集団ムジカエテルナが『レコード芸術』特選を連発したり(ショスタコーヴィチ(!)でレコード・アカデミー賞にも輝きました)、Alpha でカフェ・ツィマーマン(合奏)、Passacaille でロレンツォ・ギエルミ(オルガン)、Zig-Zag Territoires でアマンディーヌ・ベイエール(ヴァイオリン)、Arcana でEns.オデカトン(古楽合唱)...と、20世紀には全く無名かほとんど注目されていなかった異才たちが数々の名盤で痛快なセールスを記録しつつあるのが昨今の現状。そうした欧州古楽界の活況を肌で知るには、やはりバッハの傑作にふれてみるのが一番でしょう。なにしろ、ヨーロッパの名だたる古楽アンサンブルで仕事をとってゆくためには、古楽奏者たちは概してリハーサル時に必ずバッハのカンタータなどから数曲演奏してみることを要求されるうえ、そもそも音楽院時代からバッハはとりわけみっちり練習を重ねていることもあって、その傑作を録音するとなるとみな否応なしに“戦意”は高くなり、充実した名演につながる可能性が非常に高いのです(最近の事例では、アンサンブル・ピグマリオンによる『ロ短調ミサ』の原型(Alpha188)の痛快名演、Cypres レーベルでのレ・フォリー・フランセーズによるチェンバロ協奏曲集(MCYP1661)などがその好例)。

 この『ヨハネ受難曲』の思わぬ名演も、そのひとつ!『マタイ受難曲』と違い決定稿と呼びうるものがなく、幾多の版の異同が何かと話題になるこの曲の、最も異例な1725年改訂版に着目し、そこにしかない楽曲を盛り込みながら通汎稿の細部を徹底して見直していった周到な解釈準備もさることながら、とにかく演奏が隅々まで素晴しい!
 福音書記者役で数々の名演を刻んだ名歌手クリストフ・プレガルディエンの息子ジュリアンの立ち回りはまさに堂に入ったもの、K617 レーベルにドイツ17世紀ものの名盤が多いフランスの俊才集団ラ・シャペル・レナーヌは、いかにもドイツ・バロックの至宝への適性が絶妙!テンション高く、しかし細部まで周到な解釈を怠らず、異才集団をみごとまとめあげているのは、ヘレヴェッヘ、ユングヘーネル、ペーター・ノイマン...といった異能の古楽指揮者たちの信頼も厚い名歌手ブノワ・アレール——声楽大作で大指揮者たちと現場を重ねてきた名歌手が声楽曲の指揮者として名演をくりひろげるというのは、欧州古楽界の勝ちパターンのひとつ。
 何はともあれ「音」に震撼していただきたい、今年の早春に解説訳&訳詩付でじっくり味わって頂きたい名盤なのです。お見逃しなく!
 


ZZT336
(国内盤・2枚組)
\3700+税
ユーリ・マルティノフ(歴史的ピアノ)
 ベートーヴェン/リスト編:

  1. 交響曲第3番 変ホ長調「英雄」(1840/1865 編曲)
  2. 交響曲第8番 ヘ長調(1863〜65 編曲)
ユーリ・マルティノフ(歴史的ピアノ)
使用楽器:ライプツィヒのブリュトナー社
 1867年頃製作オリジナル
 『レコード芸術』特選の連続。アレクセイ・リュビモフの後を追い、独自の境地をひた走る——
 ロシア・ピアニズムと古楽演奏。作曲者の真意を見きわめるため、確かな解釈を重ねる名手マルティノフの充実シリーズ、ついに「英雄」と「あの小傑作」の宇宙を解き明かす...!
 冷戦終結以来、旧東側の音楽シーンは大きな変化をとげつつあり、とくにポーランドやチェコに欧州随一の古楽拠点ができるなど(仏・独・蘭などの一流古楽バンドほか、バッハ・コレギウム・ジャパンのメンバーをはじめ日本の俊才古楽奏者たちも続々フェスティヴァル出演を果たしています)、古楽器演奏への関心の高まりはきわめて大きな成果をあげつつあるようです。
 なにしろ、冷戦時代から基本的な耳の鍛えられ方が一味違う、クオリティの高い音楽シーンで揉まれてきた俊才がごろごろしているわけですから、彼らが古楽のノウハウを知るや否や、それこそ18世紀にボヘミアの名手たちが欧州中のオーケストラを席巻した頃のように、ひとつ頭ぬきんでた古楽奏者たちが続々東から押し寄せても不思議はなかったわけです。
 とくに見過ごせないのが、ロシア出身のフォルテピアノ奏者ユーリ・マルティノフ——冷戦終結直後から西側に渡りさかんにレコーディングをくりかえしてきたネイガウス門下の異才・アレクセイ・リュビモフを彷彿させるかのごとく、モスクワ音楽院でレフ・オボーリンの系譜に連なる名匠ヴォスクレセンスキーに師事したのち、フランスで徹底的にフォルテピアノ奏法を身につけ、今やリュビモフの頼もしい連弾パートナーとしても活躍している俊才!
 近年はZig-Zag Territoires レーベルで、リスト編曲によるベートーヴェンの交響曲を19 世紀のピアノで録音しつづけており、既存2タイトルはいずれも『レコード芸術』誌特選・準特選と痛快な好成績もマーク——それもそのはず、古楽器の特性を肌で覚えているかのような対応力で、現代ピアノと同じように弾いたのでは全く持ち味が出ない19 世紀のヴィンテージ・ピアノを絶妙のサウンドで鳴らし切り、リストが思い描いてたであろう「ベートーヴェンの傑作を、どうしたら“いま(=当時)”のピアノで再現できるか」を見据えた興奮満点の演奏解釈で、かの超絶技巧の編曲群の存在意義をあらためて印象づけてくれる名演を続けているのですから、どうして傾聴せずにおれましょう?
 前2作はリストが若い頃にあたる1837 年のエラール・ピアノが使われていましたが、今回の最新録音では彼がドイツに来て以降、ヴァイマール宮廷楽団でのオーケストラ指揮者体験をへて完成された一連の編曲によりふさわしい、楽譜出版年代とほぼ変わらない1867 年頃のライプツィヒ・ブリュートナー社製オリジナルを弾いているのですから、注目度はさらに高いと言わなくてはなりません。
 あの長大な「英雄」からして興奮の連続、「なるほど、こうか!」という発見の喜びも随所にあるだけでなく、とにかく興奮必至の演奏内容はじっくり聴き深めるに足る充実度...音量のはげしいコントラスト、細やかなピアニシモに宿る歴史的ピアノ特有の繊細さ、超絶技巧をそれと感じさせぬほどの技量、どこをとっても申し分ありません。
 例によって解説でも時代と編曲内容をよく掘り下げてあり、読み応え十分(全訳付)。ベートーヴェン受容を知るうえで外せない新譜なのです!

値下げ・再発売


Alpha・Pan Classics・Passacaille
〜欧州バロック・シーン最先端より・注目盤7選〜
国内仕様盤(すべて日本語解説付)
※日本語オビ・解説付きの国内盤仕様ですが、日本語解説は原文全訳ではなく、
読みやすい文章量にまとめたかたちでお届けいたします。

ALPHA



ALPHA 817
\2400+税
ル・ポエム・アルモニーク『オスティナート』〜フランス発・まわりのバロックに恋して〜
 クラウディオ・モンテヴェルディ、ルイ・デ・ブリセーニョ、
 フランチェスコ・マネッリ、ジョン・ジョンスン、トーマス・ロビンスンの
 声楽曲・室内楽曲(全16曲)
ヴァンサン・デュメストル(リュート)指揮
ル・ポエム・アルモニーク(古楽器使用)
「小資本レーベルの革命」といわれたフランスAlphaの躍進は、この国の古楽シーンの刷新と切っても切り離せません。創設時から看板アーティストとして名盤を生んできたル・ポエム・アルモニークは、すでに古楽ファンにもおなじみのカリスマ的集団。2014年に来日を控え、イタリア、スペイン、英国のレパートリーを抜粋・再収録したお求めやすいアルバムが日本上陸...新時代古楽への一歩にぴったりの逸品ぱ
  


ALPHA 954
\2400+税
太陽王ルイ14世の王室礼拝堂 〜「偉大なる世紀」の巨匠たち〜
 シャルパンティエ:テ・デウム、神よお救い下さい/
 ドラランド:ミゼレーレ/
 デュモン:雅歌、2声のプティ・モテ/
 クープラン、ダンドリュー、マルシャン、ルベーグのオルガン小品(5曲)
Ens.ラ・フェニーチェ、ル・ポエム・アルモニーク 他
 (古楽器使用)
アンリ・ルドロワ(C-T)
ミシェル・ブヴァール、
フレデリク・デザンクロ、
ジャン=バティスト・ロバン、
フランソワ・エスピナス(org)
フランスおよびフランス語圏ベルギーの最先端をゆく古楽奏者たちが、シャルパンティエ『テ・デウム』をはじめ、高雅かつ心癒されるフランス・バロック教会音楽を艶やかに。折々オルガン独奏をはさみ、王たちの響きを。
  


ALPHA 955
\2400+税
フランス王室の響き 〜宮廷の愉しみ、劇場の愉しみ〜
 リュリ:
  序曲「プシュケー」「カルナヴァル」、「町人貴族」トルコの行進、
  「アマディス」「ファエトン」シャコンヌ、「アルミード」パサカーユ、他/
 クープラン:「神秘の障壁」他クラヴサン小品4曲/
 シャルパンティエ、カンプラ:小歌曲/
 マレ:スペインのフォリア【紹介】
カフェ・ツィマーマン、
カプリッチョ・ストラヴァガンテ、
リチェルカール・コンソート(古楽器使用)
フレデリク・ハース(cmb)
ソフィー・ワティヨン(vg)
これぞフランス・バロックぱなオーケストラ作品を中心に、AlphaとRicercarからの厳選音源でたどる古楽器サウンド。ガンバやチェンバロの独奏トラックも充実!
 とくに、バロック・オペラ通以外にはなかなか接する機会のない「フランス・バロックのルーツ」リュリ作品の本格解釈を手軽に味わえるのが嬉しい1枚です。
 

PASSACAILLE



PSC994
\2400+税
ジョヴァンニ・ガブリエーリ(1557-1612)歴史的オルガンとコルネットによるカンツォーナ集
 ガブリエーリ:カンツォーナ、トッカータ、リチェルカーレ、フーガ
 (全23曲/2曲はコルネットとオルガン、3曲はコルネット2本とオルガン)
ブルース・ディッキー、
ドロン・シャーウィン(ツィンク=木管コルネット)
リウヴェ・タミンハ
 (ボローニャ、聖ペトローニオ教会の歴史的オルガン 1475&1531)
日本語解説付
ボローニャ聖ペトローニオ教会にあった、15〜16世紀の歴史的オルガン、奇跡の復元。
古楽界でカルト的人気を誇るオルガニストのL.タミンハが、壮麗・整然と奏でるルネサンス末期の絶美世界...木管コルネットの超・達人ふたりの共演も息をのむ美しさ!!
 


PSC962
\2400+税
コレッリの遺産 〜師匠と追従者たち〜
 コレッリ(op.5-9)、カルボネッリ(op.1-2)、モッシ(op.1-5)、
 ヴィスコンティ(op.2-5)、カストルッチ(op.1-4)、ロカテッリ(op.8-10)
 ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ/モンタナーリ:ジグ
リッカルド・ミナージ(バロック・ヴァイオリン)
マルコ・チェッカート(バロックvc)
ジューリア・ヌーティ
(cmb,,,,org)
マルグレート・ケル(トリプルハープ)
18世紀の熱狂的なコレッリ追随者たちのソナタは、どれをとっても超一流。イル・ジャルディーノ・アルモニコでさんざん暴れてきた俊才ミナージ、奔放なまでの自在さがたまらない、ガット弦の至福。
 

PAN



PC10248
\2400+税
ファルコニエーリ(c....1585-1656)「カンツォーナ、シンフォニア、ファンタジア集」
 ファルコニエーリ『カンツォーナ、シンフォニア、ファンタジア集』
  (1650ナポリ刊)〜21の合奏曲
Ens.イザベッラ・デステ(古楽器使用)
アリアーヌ・モレット(総指揮)
野入志津子(アーチリュート、テオルボ)
フレディ・エシェルベルジェ(org cmb)
ジャン・チュベリー(コルネット)他
フレスコバルディやシュッツと同じ頃、スペイン領ナポリで生まれ、イタリア北部で頭角をあらわし、最後はナポリに戻り病没。ファルコニエーリの洗練された合奏曲には、バロック・ソナタ前夜の重要作品が多数。フォリア、パサカーリェなどの変奏曲も。まとめて聴く機会は貴重。
作曲者についての解説付。
 


PC10294
\2400+税
C.P.E.バッハ:チェロ協奏曲全集(全3曲)
 カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714〜1788):
 チェロ協奏曲 イ短調Wq.170・
 変ロ長調Wq.171・イ長調Wq.172(全3曲)
アントニオ・メネセス(vc)
クリストフ・ポッペン(vn・指揮)
ミュンヘン室内管弦楽団
2014年は、大バッハの次男C.P.E.バッハの生誕300周年ぱディスク・ファンにはひそかな熱狂的愛好家も多い作曲家。
 Pan Classics2003年頃の体制変更直前に録音されていた幻の名盤、復活。名匠メネセス、颯爽とした美が痛快。ECMに名盤のあるポッペンもセンス抜群。



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