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第75号
お奨め国内盤新譜(1)
2014.2.18〜2014.4.11


AEON



MAECD1335
(国内盤・3 枚組)
\4800+税
ファーニホウ:弦楽四重奏曲全集
 〜英国の才人、あまりにも精緻な技巧の真価〜

ブライアン・ファーニホウ(1943〜):
 ①弦楽四重奏のためのソナタ
  (または弦楽四重奏曲 第1番/1967)
 ②弦楽四重奏曲 第2番(1980)
 ③アダージッシモ
 ④弦楽四重奏曲 第3番(1987)
 ⑤弦楽四重奏曲 第4番 〜
  弦楽四重奏とソプラノのための*(1990)
 ⑥弦楽三重奏曲(1994)
 ⑦弦楽三重奏曲(1995)
 ⑧弦楽四重奏曲 第5番(2006)
 ⑨時の過ぎゆくあいだ I〜IV(2006)
 ⑩エクソルディウム(2008)
 ⑪弦楽四重奏曲 第6番*クレアロン・マクファーデン(ソプラノ)
アルディッティ四重奏団
 20世紀以来、英国楽壇のみならず世界で静かに物議を醸してきた「新・複雑性派」の大御所、ファーニホウの至芸を全曲録音で伝えられるのは、世界随一の前衛集団アルディッティSQだけ。おそるべき超絶技巧もお手のもの、入念な解釈がうみだす至芸の深み、浸りきりたい充実盤!

 20 世紀の現代音楽とは、今や再検証されるべき「近い過去」でもあり、同時に「いま」に続く道をつくってきた場所でもあり——激しく好みが分かれる現代作曲家のひとりでもあったブライアン・ファーニハウがすでに齢70 を超えたいま、その芸術性の早くからの理解者であり、「それが可能な」数少ない協力者でありつづけてきたアルディッティ四重奏団による全曲録音プロジェクトが形になったことは、前衛芸術史のうえでも画期的なできごとのひとつと言えるのではないでしょうか?
 こうした硬派な3枚組をじっくり作ってみせるあたりに、21 世紀の現代音楽シーンを音盤面から支えつづけているフランスaeon レーベルの本気度をひしひしと感じずにはおれません(名門アルディッティ四重奏団がこの数年間、この筋の通ったレーベルを彼らの信頼できるパートナーとして選び続けているのも、よくわかる気がします)。
 ハーヴィ、ラター、ブライヤーズ、ナイマン...さまざまな潮流の担い手を生んできた多彩な「英国現代音楽」のくくりのなかでも、B.ブリテンの友人たる正統派の大家L.バークリーの門下で学び、早くからバーゼルやドナウエッシンゲンなど大陸側での評価を高めてきたハーニフォウは事実上かなりの「王道現代音楽の人」であるはずなのですが、なにしろ彼のつくる音楽は極度に複雑なリズムや曲構造が根底にあるうえ、演奏者の超絶技巧がいたるところで大前提として必要になってくるところから「演奏不可能」「鑑賞者が認識しきれるはずがない」などの批判にもさらされ、静々と物議を醸さずにはいない濃い個性の作風(その一端はTwitter アカウント(!)にも反映されているような...)を誇る、きわめてユニークな存在として異彩を放ってきたのは間違いありません。
 しかしその極度に演奏困難な作品群をかなり早くから熱心にとりあげつづけ、その真価の普及に寄与してきた演奏家・演奏団体がいたというのは、彼の音楽がなによりもまず、あらがいがたい強いカリスマ的魅力をもつものであることの決定的な証左といえるのではないでしょうか?その数少ない猛者の代表格が、英国楽壇随一のカルテット、アルディッティ四重奏団なのです。
 最初の作品(すでに半世紀近く前、1967 年の作!)である、全24 楽章からなる演奏時間全40 分以上(!)の大作「ソナタ」はもちろん、共演する声楽家にもおどろくべき超絶技巧(コロラトゥーラなんてもんじゃないです、全ニュアンスを考慮しての...)を突きつける第4四重奏曲、あるいは2010 年の最新作である第6四重奏曲、トリオ、あるいはヴェーベルンをそこはかとなく想起させるごく短い象徴的作品「アダージッシモ」にいたるまで、ファーニホウが弦楽器数挺程度という限定された手段のなかでどれほど多元的な宇宙を織り上げてきたか、じっくり聴き究めるに足る全曲録音プロジェクトをアルディッティSQ が刻んでくれたという、このかけがえのない事実——いや、どこを聴いてもドキドキする完成度です!
 もちろん解説日本語訳付。
 


MAECD1333
(国内盤・2枚組)
\4000+(税
バッハ:フーガの技法(全曲)
 〜1901年製スタインウェイ・不均等調律で〜

 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
  フーガの技法BWV1080(全曲)
セドリック・ペシア(ピアノ)
使用楽器:スタインウェイ1901年製オリジナル 不均等調律
 ケージ記念年には、プリペアード・ピアノのための名曲で心を奪った現代音楽系の異才ペシア
 今度はなんと1901年のヴィンテージ・スタインウェイ!こだわりの調律で、バッハの問題作を!
 しなやかで冷徹、深い響きは楽器の力か、あるいは解釈の妙か。21世紀のフーガは一味違う!

 ピアノ——この楽器がいかに多面的な様相をもっているか、あらためて教えてくれる惚れ惚れするようなフランス盤が、現代音楽に強いaeonレーベルから届きました!弾き手はセドリック・ペシア。2012年、生誕100周年を迎えたジョン・ケージのフェティッシュな傑作『プリペアード・ピアノのためのソナタとインターリュード』のえもいわれぬ美しい銘解釈(MAECD1227)であらためて注目を浴びたこの異才、P-L.エマール(!)やCh.ツァハリアス(!)らの異才たちの門下で学び、フランス語圏スイス付近に広がる現代音楽ハードコアエリアで着実にキャリアを築きながら、実は現代音楽ばかりではなく、ベートーヴェンやシューマンなど前衛性をひそませたロマン派ピアノ音楽でも適性を発揮、さらにひとかどのバッハ解釈者としても名をあげてきたところ、じっくり構想をあたためながらリリースしてくれたのが 『フーガの技法』全曲録音とは——しかも、その使用楽器にも調律にもこだわりあり、というのがまた、彼がプリペアード・ピアノ使いであるだけにいっそう心そそられるではありませんか!
 ご存知の通り、バッハ晩年の絶筆であるとともに、その多声音楽技法の極致が示されているこの曲集は、未完であるという点、使用楽器がいっさい指定されていない点など、謎めいた魅力で私たちを惹きつけてやまない宿命的名品。ペシアはピアニストたちの『フーガの技法』録音がそうであるように、ゆったりしたテンポ設定で冒頭のコントラプンクトゥス1を弾きはじめますが、それはじっくり、ひとつひとつ確かめるように...というよりもむしろ、これからどんな謎が解き明かされるのか、知りたくありませんか...?と問いかけるかのような、実にあざとくも魅力的な響きにみちていて。100年以上前のニューヨーク・スタインウェイが醸し出す独特の響きの彫琢もありながら、そこで生きているのが「不均等調律」。ペシアはこの楽器のサウンドを最大限に生かしながら、同時にバッハの音の綾をいかに明確に浮き彫りにするか、バッハが計算していた不協和音の音程差をいかに繊細に読み解くかに傾注し、この調律にたどりついたのだそうです。
 それはいわば、19 世紀末の晩期ロマン派におけるニューヨーク・スタインウェイというよりもむしろ、20世紀最初の年に作られた、ベルクやバルトークやストラヴィンスキーやヒンデミットや...といった近代の巨匠たちの同時代を生きた、前衛を肌で知るピアノの響きなのかもしれません!緻密な解説(訳付!)にも、このアルバムの魅力を解き明かす秘訣はいたるところに潜んでおり、じっくり時間をかけて味わい尽くしたい充実のレコーディングなのです。

ALPHA



Alpha820
(国内盤・3 枚組)
\4800+税
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集
 〜弦楽合奏7人&完全二管によるロプコヴィツ邸試演時編成で〜

ベートーヴェン:
 ①ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 op.15
 ②ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 op.19
 ③ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 op.37
 ④ピアノ協奏曲 第6番 ニ長調 op.61a
 ⑤ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 op.58
 ⑥ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 op.73
アルテュール・スホーンデルヴルト(fp)
アンサンブル・クリストフォリ(古楽器使用)
 ついにBOX化! 稀代のフォルテピアノ奏者スホーンデルヴルトの名を不動のものにした、あの鮮烈な「完全2管だが、弦は7人」のロプコヴィツ邸編成によるベートーヴェン、つに全てがワンセットで。もちろん全解説日本語訳付、Accentのモーツァルト好況にさらなる攻勢を…!
 Alpha レーベルのBOX 化シリーズが始まって以来、いつ出てくれるか...と誰もが思っていたであろう「あの」痛烈な傑作録音が、ついにこの春セット化いたします!
 その驚くべき企画の周到さ、その鮮烈な演奏結果によって幅広いリスナーの度肝を抜いてきた、古楽のメッカ・オランダきってのフォルテピアノ奏者スホーンデルヴルトによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲録音...第1弾初出からかなりの年数を経ているにもかかわらず、また最初の「皇帝+第4番」が久しくプレス切れになってもバックオーダー引きも切らず...といった状態だったところ、全巻そろってのBOX で登場は嬉しい限りでございます。
 この企画が何より驚きなのは、その演奏編成...ベートーヴェン生前の演奏環境を徹底調査、使用するフォルテピアノが個々にこだわりありなのはもちろんのことですが、ここではなんと、ベートーヴェンの創意が最初に音として実をむすんだ場所、つまり公開初演前にパトロンのロプコヴィツ侯爵邸で行われていた試演会のときの演奏編成を徹底検証のうえ再現、その編成で全曲を演奏しているのです!ロプコヴィツ邸の大広間の大きさや想定される椅子の位置などから、ベートーヴェンの着想どおりの全パートの楽器を動員することはできるものの、弦楽器はほぼ各パートひとりずつ、ヴィオラとチェロのみ二人という異例の(室内楽編成というにはあまりに大きすぎる!)
 オーケストラがフォルテピアノと競い合っていたとのこと。当時のピアノはそもそも大劇場のようなところで響かせるような楽器としては作られておらず(この件に関してはベートーヴェンの門弟ツェルニーの証言もあります)、協奏曲もあくまで室内楽にできるだけ近い形で演奏するのが理想だったとのことで、この一見異例に見える演奏編成は非常に理にかなっていた——そのことを、スホーンデルヴルトと欧州古楽界の猛者たちが実地で、桁外れにすぐれた演奏で立証してくれたのが、この全曲録音だったのです!
 クレメンティの依頼でピアノ協奏曲に編み替えられたヴァイオリン協奏曲原曲の「第6番」やト長調の第4番では、室内楽的な曲作りがきれいに浮き上がるかたちに…そして第1ヴァイオリンの「独奏」の健闘ぶりに舌を巻く「皇帝」や第1番の強烈さは、まさにこれを知っていると知らないとでは「ほんとうのベートーヴェン」観が大きく変わってしまうのでは...といったインパクト!クラリネットのホープリッチ、18 世紀オーケストラのティンパニ奏者ファン・デル・ファルクやトラヴェルソのヒュンテラーなど、驚きのソリストが演奏陣を占めているのにも注目。





分売!
 いまだ売れ続ける超・問題作、「スホーンデルヴルト&Ens.クリストフォリのベートーヴェン協奏曲シリーズ」!
 ベートーヴェン時代のピアノ(フォルテピアノ)は音量が小さく、そのことは当初から作曲家たちも気づいていた。ベートーヴェンの弟子チェルニーも、ピアノ協奏曲は大きなホールで弾くべきではない、と考えていたくらいで、実際『皇帝』をはじめとするベートーヴェンのピアノ協奏曲でさえ、パトロンであるロプコヴィツ侯爵の私邸でプライヴェートな初演が行われたさいには、弦楽編成をぐっと絞り込んだオーケストラで聴かれていた…という前提のもと、当のロプコヴィツ侯邸の大広間を徹底検証、客席とのバランスや残響なども考慮したうえで「フル2管編成に対して、弦楽器は1・1・2・2・1程度」という驚愕の演奏編成を割り出したのが、2002 年に刊行されたS.ヴァインツィールの研究書『ベートーヴェンの協奏曲空間』。
 しかし学説というものは、それを納得させる具体例(この場合は「立派な演奏」)なくしては、ただの酒席の話題程度にしかならないもの——ヴァインツィールにとって何より幸いだったのは、オランダ出身の現代最高のフォルテピアノ奏者が、気の置けない演奏仲間である精鋭古楽奏者を集めてのEns.クリストフォリとともに、これをあざやかに例証する名演奏を打ち出してくれたことでした。
 番号の大きい協奏曲(つまり「皇帝&第4番」)から始め、「皇帝」の第一主題の勇壮さを第1ヴァイオリンたった1挺で描き出すという痛烈な演奏効果、作品そのものの室内楽的な美質をこれ以上ないくらいありありと示してみせた「第4番」で圧倒的な話題をさらったのが第1 集(Alpha079)。劇的な悲愴さを濃やかに表現しおおせた「第3番」や、現代ピアノでは物足りなさしか感じられなかった「第6番」(ヴァイオリン協奏曲のピアノ編曲)の本質的な美をはじめて教えてくれた名演が第2集(Alpha122)。そして喇叭とティンパニのない「第2番」や、壮大なスケール感で迫る「第1番」!
 ピアノはウィーン古典派の魂、モーツァルトも愛したヴァルター・モデル。

Alpha155
(国内盤、日本語解説付き)
\2940
踊れベートーヴェン!
 ベートーヴェン:
  1. ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 op.15
  2. ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op.19
アルテュール・スホーンデルヴルト
Ens.クリストフォリ(古楽器使用)
 (fp/ヴァルター・モデル)
Alpha155
(輸入盤/日本語解説なし)
\2300→\1990
 第1番のラルゴで猫がワルツを踊りだす。びっくりした。この体験はしておいたほうがいい。

Alpha122
(国内盤、日本語解説付き)
\2940
ベートーヴェン:
 ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品57
 ピアノ協奏曲 第6番 ニ長調 作品61a
  (ヴァイオリン協奏曲のピアノ協奏曲版)
アルテュール・スホーンデルヴルト(Fp)
Ens.クリストフォリ(古楽器使用)
ヴァルター1800年&フリッツ1810年頃)
Alpha122
(輸入盤/日本語解説なし)
\2300→\1990
 

Alpha079
(国内盤、日本語解説付き
¥2940
ベートーヴェン:
  ピアノ協奏曲第4番・第5番「皇帝」
アルテュール・スホーンデルヴルト
(フォルテピアノ〜J.フリッツ製作、1810年頃)
アンサンブル・クリストフォリ(古楽器使用)
(コルラード・ボルシ(第1ヴァイオリン)、
ヴィルベルト・ハーゼルゼット(トラヴェルソ)、
ペーター・フランケンベルク(オーボエ)、
エリック・ホープリチ(クラリネット)、
マールテン・ファンデル・ケルク(ティンパニ) 他)
Alpha079
(輸入盤/日本語解説なし)
\2300→\1990




ARCO DIVA



UP0153
(国内盤)
\2800+税
プシホダに捧ぐ 〜こまやかに、いとおしく、
 懐かしきヴァイオリン小品の世界〜

 イェネー・フバイ(1858〜1937):
  ①ヘイレ・カティ(やあ、カティ)〜『チャルダの情景』より 第4曲
 エルガー(1857〜1934):
  ②愛のあいさつ 作品12(プシホダ編)
 リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949):
  ③ワルツ 〜楽劇『薔薇の騎士』より(プシホダ編)
 ラフマニノフ(1873〜1943):
  ④ヴォカリーズ
 サラサーテ(1844〜1908):
  ⑤アンダルシアのロマンス 作品22
 フランティシェク・ドルドラ(1868〜1944):
  ⑥思い出(クライスラー編)
 エデ・ポルディーニ(1869〜1957):
  ⑦踊る人形(ヴィルヘルミ編)
 ドヴォルザーク(1841〜1904):
  ⑧ユーモレスク 第7番 作品101-7
  ⑨ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ ト長調 作品100
  ⑩遠き山に陽は落ちて 〜交響曲第9番「新世界より」より
   (プシホダ編)
トマーシュ・ヴィンクラート(ヴァイオリン)
マルティン・フィラ(ピアノ)
 古き良きヴァイオリンの美は、やはり小品に宿るもの。弦楽芸術の確かな伝統をもつチェコから長く愛されてきた名匠プシホダの「こころ」を21世紀に甦らせる名手が、ひたすら美しい弦の響きとともに紡ぎ出した、愛さずにはおれない名品集...玄人ファンにも、贈り物にも!
 今回、2ページ先ではオペラ歌手たちの歴史的録音を扱ったアルバムをご案内していますが、そもそも録音技術というものが最初に商業利用されはじめたとき、津々浦々の家庭で味わえる極上音楽を詰め込んだ盤として人気があったのは、何よりもまず「歌」—-しかしながら、当時の録音技術で収録された78 回転SP 盤でも、歌声と並んで鮮明な音を今なお味わえるもののひとつが、往年の巨匠たちによるヴァイオリン録音ではないでしょうか。
 この楽器の音色に、人の声に近い性質があるためなのかもしれませんが、長年クラシックを聴き続けて来られている方々にも、ティボー、ブッシュ、クーレンカンプ、シゲティ...と往年の巨匠たちの名を聞くだけで心もそぞろ...といった思いをなさる方も多いことでしょう。
 いまだ色褪せぬ魅力をたたえた、SP 時代の名録音—-その真の魅力はやはり、演奏時間5 分ほどの小品にこそ宿っているのかもしれません。
 LP やCD といった比較的長時間の再生ができるメディアがなく、短い時間ごとレコード盤を裏返し、載せ替えなくてはならなかった時代には、長大な協奏曲録音などもさることながら、SP 盤の片面だけで全曲が収まる小品の演奏で凝縮された感性をみごと発揮、多くの人の心を(いまだに)とらえてやまなかった名手も多く活躍しました。レオポルド・アウアー、ミッシャ・エルマン、モード・パウエル、あるいは若き日のメニューイン...しかしながら、そうした小品の彫琢をひときわ美しく再現し、かけがえのない音楽を紡いだ象徴的な人物として誰よりも忘れられてはならないのは、クライスラーやハイフェッツなどと同じく自ら編曲も手がけたチェコの名匠、ヴァーシャ・プシホダ(1900〜1960)ではないでしょうか?
 フバイ、バッツィーニ、エルガー...といった諸外国の音楽家たちもさることながら、ドヴォルザークやフィビフらチェコ19 世紀の名旋律をかけがえのない美音、まろやかな解釈で極上の響きに息づかせてみせるその至芸が、日本のみならず祖国でも根強く愛されていたことが、このたびチェコArco Diva の新譜で明らかになりました。弾き手はトマーシュ・ヴィンクラート——チェコ出身で長らくウィーン・フィルのメンバーとしても活躍をみせてきたこの俊才はいま、自分が生まれるより13 年も前に亡くなったプシホダに限りない敬愛を捧げるべく、かの名匠が愛奏してきた名曲をみずみずしい感性で、しかし確かにプシホダにも通じる滋味と慈しみにあふれた名演で次々と聴かせてくれるのです。
 チェコの「いま」の息吹に満ちていながら、何十年もの時間を何事もなかったかのように超えてみせる、伝統あればこそのヴァイオリン芸術...ヴィブラートの妙、さりげないポルタメント、誇示されないが筋の通った超絶技巧。
 ピアノのM.フィラとの音楽対話も絶妙、多くの人ののかけがえのない愛聴盤になってくれそうな1枚です。

ARS MUSICI


AMCD232-340
(国内盤)
\2800+税
リスト:ロ短調ソナタ、およびさまざまな超絶技巧編曲作品
フランツ・リスト(1811〜1886)
 ①メフィスト・ワルツ第1番 S.514
 ②ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
 ③シューマンの歌曲「献呈」S.566b
 ④イゾルデの愛の死 S.447 〜
   ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』より
 ⑤シューベルトの歌曲「アヴェ・マリア」S.558-12
 ⑥メンデルスゾーンの歌曲「歌の翼に」S.547-1
 ⑦ショパンの歌曲「乙女の願い」S.480-1
 ⑧シューベルトの歌曲「魔王」S.558-4
イーゴリ・カメンツ(ピアノ)
 かつての「コンクール猛者」は、録音シーンに慎重にやってきた——ロシア・ピアニズムの潮流を受けつつ、ドイツ楽壇に確たる立ち位置を得たカメンツの超絶技巧には、確かな深みがある。リストというフィルタを通じて厳選された傑作群、そしてロ短調ソナタ...埋もれてはならない名盤!
 ピアノ・コンクールというものが今にもまして話題になる時代だった1980 年代、スタニスラフ・ブーニンとともに世界各地の著名なコンクールを騒がせつづけた異才のひとりが、本盤の主人公イーゴリ・カメンツであるのは確かなのですが、しかしそもそもコンクールというのはあくまで若手の登竜門。その後の人生を通じてピアニストが芸術家としての深みを増してゆくのだとしたら、私たちはあくまで「その後」に目をむけるべきなのでしょう(そう...ムターやアルゲリチを語るのに、いまさらコンクールの話題にこだわりすぎる人がおそらくそういないであろうことと同じです)。
 そして音楽家の演奏活動というものが、そもそもレコーディングを中心に動いていることはめったにない…ということも、レコード&CD 蒐集を中心に音楽を鑑賞しているとつい忘れがちになってしまう事実。この世の中には、録音物をあまり作ってはいなくとも、本国でとてつもなく充実した演奏活動を続けている凄腕の名手がたくさんいるのです(日本に来日するアーティストたちのなかにも、音源をほとんど持っていない人が何人か思い浮かぶのは...あとは国内の名手たちでも、活発な演奏活動と音源リリースのペースが決してむすびついていない人は多々いるではありませんか)。カメンツの録音の歩みはきわめて慎重で、コンクール時代の勢いで名刺代わりの録音を残すようなこともせず、Ars Musici から最初のアルバムがリリースされたのは実に1999 年、コンクール時代から10 年にもおよぶ準備期間をへてのこと。
 名匠マルグリス門下にロシア・ピアニズムの基礎を叩き込まれたのちロシアを去り、ドイツ楽壇で確かな立ち位置を築いてきた彼はその後、Oehms Classics にも3枚のアルバム(ベートーヴェン、チャイコフスキーの独奏曲集ひとつずつ、シューマンのピアノ五重奏曲)を残していますが、超絶技巧をものともせず、そのなかで思索を続けられる深遠な芸術性を誇る、そんなカメンツの本分が最も端的に現れているのはやはり、Oehms 移籍前、Ars Musici で制作されたこの完璧なリスト・アルバムではないでしょうか?リストのピアニズムの中軸を占めるロ短調ソナタでは、かつてセルジウ・チェリビダッケにも指揮を師事した彼ならではの徹底した洞察が隅々まで行き渡り、そのあとに録音されている一連の編曲作品でも、リストという才人の心と指を通じ、シューマンやシューベルト、あるいはワーグナーの至芸をおのずと語らしめる、ふと気がつけば常人離れした超絶技巧が駆使されていることも忘れていた...というような、あまりの自然な語り口に、息をのむほかありません。
 稀有のピアノ芸術を味わえる「録音」という媒体ならではの魅力が、シックなDigipack ジャケに凝縮されている1枚なのです。

CONCERTO



CNT2076
(国内盤)
\2800+税
ロッシーニの室内楽曲さまざま
 〜ベル・カントの心とイタリア器楽〜

 ロッシーニ(1792〜1868):
  ①パガニーニに一言 〜
    ヴァイオリンとピアノのための
  ②ヴァイオリンとピアノのための序奏、主題と変奏
   (序奏&変奏:ジョヴァッキーノ・ジョヴァッキーニ作曲)
  ③ホルンとピアノのための前奏、主題と変奏
  ④涙ひとすじ(主題と変奏)〜
   チェロとピアノのための
  ⑤チェロとピアノのためのアレグロ・アジタート
  ⑥クラリネットとピアノのための幻想曲
  ⑦ささやかなファンファーレ〜ピアノ連弾のための
  ⑧行進曲(パ・ルドゥーブレ)〜ピアノ連弾のための
マルコ・ソリーニ、
サルヴァトーレ・バルバタノ(p)
ミラノ・スカラ座管弦楽団ソリスト
フランチェスコ・マナーラ(vn)
マッシモ・ポリドーリ(vc)
ダニーロ・スターニ(hr)
ファブリツィオ・メローニ(cl)
 イタリアは「歌の国」。一流のオペラには、それを支える超一流オーケストラがつきもの…!
 ミラノ・スカラ座のトップ奏者たちは、肌で「うた」を知り「合わせ」の至芸を心得た才人揃い
 しなやかな弦、美しく憧憬をさそうホルン、クラリネットの妙音...知るべき領域、たっぷりと!
 「ロッシーニの室内楽」ひと聞けば、おそらく若書きの弦楽ソナタがまっさきに思い浮かぶかもしれませんが...あれはあれ。ここではオペラの大家として功なしとげ、30 代で悠々自適の引退生活に入り、オペラを書かないロッシーニとして第二の人生を謳歌していた頃の、磨き抜かれた逸品が集められています。
 1820 年代までイタリア大都市とパリを中心に華々しくオペラの傑作をものしてきたあと、ロッシーニはパリ暮らしで美食を追求しつつも、作曲家としては決してペンを捨てていたわけではなく、管弦楽を伴う『スターバト・マーテル』のような大作も書いていましたが、ここに集められている作品の中心は、1857 年(ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』、ヴェルディ『シチリアの晩鐘』、グノー『ファウスト』...確実に新時代が来ていた頃ですね)から晩年の10 年ほど、徐々に綴っては曲集にまとめていった『老年のいたずら(老いのあやまち)』からの小品が続々。
 ナポレオン3世による第二帝政期、市民の暮らしがどんどん豊かになりつつあるなかで余裕綽々、パリのイタリア人として暮らしていたロッシーニの才覚は衰えるところを知らず、センス抜群の歌心と圧倒的なドラマ作りの妙を(オペラと較べればはるかに)短い演奏時間にぎゅっと凝縮した傑作の数々——
 それらはやはり、同じイタリアの「うた」を知る名手たちが奏でてこそ、隅々まで魅力がきわだつのだひと強く思わせてくれるのが、ミラノに本拠を置くConcerto レーベルからのこの新譜!
 なにしろ演奏陣はみな、あのミラノ・スカラ座で日々とてつもない大歌手・大指揮者たちと仕事を続けている各セクションのトップ奏者たちばかりひふくよかで押しのあるホルンの響き、軽快なクラリネットの立ち回りにひそむほのかな哀愁、絶美のヴァイオンに絶美のチェロ...圧倒的なセンスの奥には、もともとDNA レベルで持っていた才能のうえに日々の仕事で刷り込まれていったであろう、イタリアならではの歌心を強く感じずにはおれません!
 室内楽ファンにもおすすめなのはもちろん、歌好きにも「楽器」を再発見する絶好のチャンスになりそうな1枚。好感度大です
 


CNT2082
(国内盤)
\2800+税
プッチーニの歌劇『ジャンニ・スキッキ』全曲と
  弦楽四重奏のための「菊」、六つのピアノ小品

 プッチーニ(1882〜1924):
  ①歌劇『ジャンニ・スキッキ』(全曲)

  ②弦楽四重奏のための「菊」
  ③アダージョ イ長調(p 独奏)
  ④小さなワルツ(p 独奏)
  ⑤電気ショック〜華麗なる小行進曲(p独奏)
  ⑥アルバムの一葉(p 独奏)
  ⑦小さなタンゴ(p 独奏)
  ⑧1916 年のピアノ小品(p 独奏)
ミラノ・スカラ座弦楽四重奏団
マルコ・ソリーニ(p)
ロベルト・セルヴィーレ(Br)
チンツィア・リッツォーネ(S)
フランチェスコ・ピッコリ、
ジャンカルロ・ボルドリーニ(T)
アンナ・リタ・ジェンマベッラ(A)他
ファブリツィオ・マリア・カルミナーティ指揮
ベルガモ・ドニゼッティ交響楽団
 なるほどなあ・・・こういうカップリングもありか・・・。


 イタリア楽壇最前線は、やはり圧倒的...プッチーニ『三部作』の白眉にして、最後の完成作、むせかえるような「うた」の美、ゾクゾクするような一体感のアンサンブルに、ひたすら耽溺したい...!
 しかも貴重なピアノ曲の全てと、あの絶美の「菊」をスカラ座SQで聴ける...極上のイタリア、ここに。

 ミラノに本拠を置くConcerto レーベルですが、やはりイタリアは「歌の国」、そしてミラノはスカラ座の御膝元。
 ふだんは器楽中心のレーベルとおもいきや、やっぱりオペラとなると目の色が変わると思わずにはおれない、気合の入りまくった新譜の登場です!
 ベル・カント全盛の19 世紀を受け、イタリア・オペラが爛熟のきわみにあった20 世紀、 『トスカ』『蝶々夫人』『西部の娘』...と次々新作をものして話題を呼び続けていたプッチーニが、第一次大戦のあいだ徐々に書きあげていった「三部作」の最後を飾る傑作喜歌劇『ジャンニ・スキッキ』(1918)は、次作にして未完の『トゥーランドット』を前に、このオペラの大家が完成させた最後の作品となりました。
 全1幕とは思えないほど起伏に富んだドラマの流れを、このアルバムではイタリア歌劇界最前線で活躍する幅広い世代の名歌手たちが、むせかえるほど美しいベル・カントのきわみそのまま、ああ本当に全員が舞台を愛しているのだと強く感じずにはおれないアンサンブルの一体感と「間」の巧みさ、ゾクゾクするような歌心で仕上げてくれました。
 キャストも粒ぞろいで、主人公ジャンニ・スキッキを演じるロベルト・セルヴィーレはかつて、ザルツブルク音楽祭でカラヤン指揮のもと『ドン・カルロ』のタイトルロールを歌うという超・堂々たる立ち回りもみせつつ、ひそかに巷で評価も高いらしいNaxos 盤『セビーリャの理髪師』でも大活躍、映像作品『リゴレット・ストーリー』でもタイトルロールで存在感をアピールするなど、多芸ぶりがきわだつ名歌手。古楽方面でも経験を積んできたチンツィア・リッツォーネの歌うヒロインの「私のお父さん」も惚れ惚れする味わい、恋人リヌッチョを演じるフランチェスコ・ピッコリはシャイー、メータ、ボニングらの重要盤にも多く参加している芸達者で、ああ筋金入りと嬉しくなる確かな歌と立ち回り...
 万事が本場直送の磨き抜かれた仕上がりに、つい高めのイタリアワインを開けたくなる思いでございます。
 Concerto レーベルの嬉しい計らいは、ここにプッチーニの非常に貴重なピアノ曲のすべて(全6曲)を、イタリア随一の才人ソリーニ(昨年は生誕150 年だったマスカーニの曲集でも名演を聴かせてくれました)の確かな解釈で収録しておいてくれたこと——そしてもうひとつ、数少ないイタリア・オペラの大家による珠玉の室内楽曲、あの「菊」を、すでに同レーベルでも活躍しているミラノ・スカラ座SQ の絶美な名演で収めてくれていること...

GRAMOLA



GRML99011
(国内盤)
\2800+税
ハース、コルンゴルト、ハイドン
 〜弦楽四重奏曲3様 伝統と、近代と〜

 パヴェル・ハース(1899〜1944):
  ①弦楽四重奏曲第2番op.7「猿の山から」*(1925)
 エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト(1897〜1957):
  ②弦楽四重奏曲第2番op.26(1933)
 ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809):
  ③弦楽四重奏曲第63番op.64-5 「ひばり」(1790)
アダマス四重奏団
 クラウディア・シュヴァルツル(vn1)
 ローラント・ヘルレット(vn2)
 アンナ・デカン(va)
 ヤーコプ・ギスラー(vc)
 イヴァン・ブルビツキ(perc)*
 室内楽ファンにとって“知る人ぞ知る”の名曲ハース第2、あの美しいコルンゴルトの第2...
 みずみずしさと古雅な美しさが同居する近代2作のあと、あらためて響くハイドンの清らかさ。
 理屈ぬきに耳が、心が魅了されてしまう!音楽大国オーストリアの凄腕集団、一味違います。

 さすがウィーン楽壇、音盤に結晶するものの「質」があらゆる意味で違う——そう思わずにはおれない1枚が、ウィーンの中心部に本拠を置くGramola レーベルから届きました。アダマス四重奏団、2004 年結成。若い団体ではありますが経験充分、満を持して録音したこのアルバム、選曲も曲順もまったくもってひとくせもふたくせもある周到さ!
 冒頭の作品は1920 年代、チェコの若き気鋭パヴェル・ハースが作曲した異色の弦楽四重奏曲——終楽章でセンス抜群の打楽器が興を添えるこの音楽が書かれた頃、チェコは隣国スロヴァキアとともに幾世紀にも及んだオーストリア支配を脱し、まさに輝かしい未来へと時代が切り拓かれつつあった頃でした(大家マルティヌーが、奨学金を得て意気揚々パリに飛び出していったのも、まさにこの頃のこと)。ひそかに室内楽ファンのあいだで注目されてきたこの逸品を、圧巻の躍動感と絶美のカンタービレでしなやかに、彫琢あざやかな解釈でじっくり聴かせてくれる4人にはけだし脱帽...とおもいきや、そのあとには世紀初頭から天才少年として楽都ウィーンで名をあげてきたコルンゴルト(そういえば、今年は新国立劇場で彼の『死の都』がとりあげられ、その名に再び光が当たりつつありますね...!)が、大戦の危難が迫りくる1933 年のウィーンで書いた、もうむせかえるような美にあふれた、陶然とせずにはおれない耽美なる第2四重奏曲が...ウィーンの団体でこの曲に傾聴できるというのはほんとうにかけがえのないこと、まばゆいばかりの輝きから心そそる深い影まで、アダマス四重奏団の音作りは本当に彼らが一流の素質をそなえた才人たちであることを、強く印象づけてやみません。Gramola レーベルにしては珍しいDigipack 仕様のジャケットの美しさとあいまって、この2曲それぞれ、どちらかひとつの名演に接するだけでも本盤は「買い」だと思うのですが、彼らがただの鼻息荒い若手などとは違うことを実証してくれているのが、この曲順をへて最後に置かれているハイドン!少し速めのテンポ設定で、来るべき春をのびやかに謳歌するかのように奏でられるハイドンの「ひばり」に、ほのかに感じられる陰翳…そう、この傑作は1790 年、ハイドンがロンドン遠征にあわせて書いた作品番号64の曲集に含まれる1編、1790 年といえば、ヨーロッパはまさにフランスで勃発した大革命に動揺せずにおれなかった不安の時代の始まり。
 ある種のテーマ性も感じられる選曲を頼もしく感じつつ、どの曲も1曲だけじっくり聴くのにもうってつけの、筋金入りな解釈が詰まった1枚です。
 

GRML99014
(国内盤・訳詞付)
\2800+税
ブラームス:ドイツ・レクィエム
 〜ピアノ連弾伴奏版で浮かび上がる、作曲者の真意〜

ブラームス(1833〜1697):
 ドイツ・レクィエム(ピアノ連弾伴奏版)
トーマス・ヒーメツベルガー指揮
シネ・ノミネ合唱団
エレーナ・コポンス(S)
アドリアン・エレート(T)

ヨハンナ・グレープナー、
ヴェロニカ・トリスコ(p)
 ドイツ・レクィエム。作品本来のしなやかな魅力は、オーケストラの大音響から解き放たれてこそはじめて見えてくる...!
 19世紀以来のオーセンティックな縮小編成=ピアノ連弾伴奏版で、独唱者にウィーンの「いま」を代表する名歌手ふたりを招いての、気鋭合唱団の快挙。

 ブラームスの『ドイツ・レクィエム』は、数多くの名盤で知られる傑作—-かつて『新しい道』と題した論考のなかで「彼がその魔法の杖を思うがままに振るい、合唱と管弦楽のための宗教曲を書くことにその力を費やしてくれたなら...」とシューマンが若きブラームスに薫陶を授けていらい、彼はずっとこのような大作を作曲しようと心に決めていたそうです。
 シューマンの死が1856 年、それから12 年後に(まさしく「交響曲第1番」と同じくらい長期にわたる構想)『ドイツ・レクィエム』は世に送り出され、初演時にはユニークな歌詞選択が批判の的にさらされもしたものの、しだいにドイツ語圏を中心に広く受け入れられ、世界随一の名作合唱曲と目されるようになったのでした。
 当然名盤も多いのですが、私たちはこの大作を前につい、指揮者やオーケストラの息をのむばかりな銘解釈に耳をとられてしまっていたのではないか...と、楽都ウィーンの中心部に本拠を構える老舗Gramolaから届いたこの新譜を耳にして、しみじみ思わされました。
 そう——ここではオーケストラの多彩な音色や圧倒的音量の魅力に霞むことなく、ブラームスが書いたとおりの音楽が、ピアノ連弾による容赦なく一体感ある音色で、実にくっきりと浮かび上がるのです。

 録音技術のなかった19 世紀には、オーケストラがいないところで大規模大作を味わうための手段として(どこの家にもたいてい居間に置いてあった)ピアノの連弾譜で演奏して楽しむ...というやり方が発達しており、ブラームスの『ドイツ・レクィエム』にも作曲者自身による編曲版など、数々の連弾伴奏譜が出回っていたのでした(本盤はおそらく作曲者自身の版にもとづく演奏)。
 合唱はシネ・ノミネ合唱団—-すでにバッハのモテット全6曲(GRML98871)で豊かな名演を聴かせてくれたうえ、NCA レーベルで録音進行していたハーゼルベック指揮の“古楽器による”リスト交響詩全集第1巻でも美しい声を添えていた、ドイツ語圏南部でいま最も意欲的な合唱団のひとつ。
 そこへソリストとして共演しているのは、近年ウィーンを中心にオラトリオ歌手として着実に世界の信頼を得、マリナー、ベルニウス、レオポルト・ハーガーからステファーヌ・ドゥヌーヴまで多くの大指揮者たちに独唱者として招かれているスペインの才人コポンス...そして新国立劇場のオペラ公演にもたびたび出演、世界に羽ばたく名歌手として活躍をみせるアドリアン・エレート。
 そして本盤の隠れた主役ともいえる、ピアノ連弾をつとめるウィーン出身の2俊才の、なんと息の合った、精妙な音作りの細やかさ...。
 この曲を幾多の名盤で知る人にもぜひ聴いていただきたい、作品像を問い直す傑作盤です!
 


GRML98918
(国内盤)
\2800+税
バルバラ・モーザー(ピアノ)/
 ピアノに息づくベル・カント 〜19世紀、オペラとピアノ

  ウンベルト・ジョルダーノ(1867〜1948):
   ①ラツィンスキーの夜想曲
  フランツ・リスト(1811〜1883):
   ②ドニゼッティの歌劇『ランメルモールのルチア』の追憶
   ③『愛の夢 三つの夜想曲』(全3曲)
   ④ベッリーニの歌劇『夢遊病の娘』の名旋律による幻想曲
  ジョルジュ・ビゼー(1838〜1875):
   ⑤帰郷〜『ラインの歌』より
  イニヤス・レバック(1818〜1891):
   ⑥ヴェルディの歌劇『椿姫』による幻想曲(モーザー編)
  カール・ツェルニー(1784〜1857):
   ⑦幻想曲「ウィーン新市街の焼け跡」作品345
  ジョアキーノ・ロッシーニ(1792〜1868):
   ⑧わが最後の旅への行進曲と回想〜『老年のいたずら』よ り
  ポリーヌ・ヴィアルド=ガルシア(1821〜1910):
   ⑨セレナーデ
  シャルル・グノー(1819〜1892):
   ⑩『三つのことばのないロマンス(無言歌)』(全3 曲)
    ※曲順は①②⑤③⑥⑦⑧⑨⑩④
バルバラ・モーザー(ピアノ)
 歴史ある楽都ウィーンだからこそ、こういう筋金入りのピアノ・アルバムが出てくるもの...!
 オペラの音は、「歌い手」がいなくともクラシック・ファンをここまで惹きつけてやまない——
 周到なプログラムでロマン派の意外な魅力をあぶり出す、ブッフビンダー門下の異才登場!
 19 世紀は、いま私たちがクラシック音楽と呼ぶジャンルの需要層が大きく増えた時代——市民オーケストラやアマチュア合唱団も続々結成され、モーツァルトやベートーヴェンやヘンデルや...といった「往年の巨匠」たちの音楽が広く受け入れられていった頃。
 けれどもそうした古典派以前の名品には、当時からやはりどこか高踏なイメージもつきまとっていたようで。何より多くの人々が「日常のなかの非日常」として歓迎していたのは、着飾って出かけるイベントの一環としてのオペラであり、客間で日常的に接していたピアノ曲であったわけです。
 このことに着目して素晴しいアルバムを制作してくれたのが、「音楽の都」ウィーン生粋の多芸な名手、バルバラ・モーザー!今なお新たな挑戦を続けファンの信頼も厚い巨匠ルドルフ・ブッフビンダーの門下で学んだほか、カナダやドイツでも研鑽を重ね、ウィーンとゆかりの深いロシアの大物オレグ・マイセンベルクの薫陶も受けているこの才人、さすが楽都ウィーンの只中で「歴史のつづき」としての楽壇を生きているだけあって、こうして「ピアニストから見据えたオペラ全盛期」を切り取ってみせるにしても、なんとセンス抜群の選曲をしてくれていることでしょう!
 19 世紀オペラの核ともいえるベル・カント、すなわちオペラ的な意味での美しい声の至芸をキィワードに、その全盛期を彩ったロッシーニ、ドニゼッティ、ベッリーニ、ヴェルディらイタリアの巨匠たちの音楽はもちろん、『ファウスト』のグノー、『カルメン』 のビゼーら傑作の書き手にも目をくばり、彼らの思わぬピアノ名品にも光をあてつつ、ピアノ芸術の頂点をきわめたリストの、あるいは市井のピアノ演奏を支えた練習曲の書き手にして自ら超絶技巧の俊才でもあったツェルニーら、19 世紀ピアノ音楽の知られざる傑作やとてつもない有名曲(『愛の夢』全3曲!)も収録。さらには19 世紀欧州歌劇界に姉マリブランや父ガルシアらとともに名を馳せ、ツルゲーネフやジョルジュ・サンドら文人たちとも親しかった名歌手=作曲家=名教師ポリーヌ・ヴィアルド=ガルシアの逸品を偲ばせる周到さ...このような音の物語を綴るにあたって、20 世紀へと門戸を開いたジョルダーノの名旋律でアルバムをはじめてみせるあたりも心憎いかぎりです。
 解説も懇切丁寧(日本語訳付!)、読み解くうちに19 世紀という「クラシックの黄金時代」が見えてくるのも嬉しいところ。しかし何より、磨き抜かれた演奏の素晴しさと選曲の妙です!
 


GRML99000
(国内盤)
\2800+税
ヤヴォルカイ兄弟参加!
モーツァルト(1756〜1791):
 1. 弦楽四重奏曲第15 番 ニ短調 KV421
 2. 弦楽四重奏曲第21 番 ニ長調 KV575
  (プロイセン四重奏曲 第1 番)
モーツァルトハウス・ウィーン弦楽四重奏団
シャーンドル・ヤーヴォルカイ(vn1)
高橋和貴(vn2)
アレクサンダー・パーク(va)
アダム・ヤーヴォルカイ(vc)
 伝統を確かに受け継ぎながら、日々進化しつづける「音楽の都」ウィーンのモーツァルト演奏——1784年以降、作曲家が最も幸せだった時期に暮らしていた“フィガロハウス”での録音シリーズ
 来日公演も好評だったヤーヴォルカイ兄弟参加の最新作は、深みにも鮮烈さにも瞠目...!
 「音」を聴いたら俄然、彼らのことがもっと知りたくなる——そんなモーツァルト録音が、ウィーンの中心部に本拠を構えるGramola レーベルから届きました。
 20 世紀初頭に創設されたSP レコード店を母体とするこのレーベルは、オーストリア楽壇から確かな信頼を得ており、ここにお届けする録音はかつてモーツァルトが住んでいた家を博物館として改装した、ウィーン屈指の観光名所「モーツァルトハウス」との提携企画...すでに何タイトルかがこのシリーズでリリースされていますが(バセットホルン曲集(GRML98941)およびイェス四重奏団の『ハイドン・セット』全曲3 枚組(GRML98870)、日本語解説付にて発売中)、モーツァルトハウスでじかに録音されたこれらの演奏は、作曲家自身が曲の構想を練ってペンを走らせていた場所で鳴り響く、ある意味でモーツァルト自身に最も近いところで奏でられている音にほかなりません。
 そうした録音を許された演奏者たちには、クラシック音楽の本場オーストリアの歴史と伝統とを背負いながら、その最先端の「いま」を代表する名手たちが居揃っている——
 しかも、今回はこのモーツァルトハウスの名を堂々、団体名にまで冠した弦楽四重奏団が活躍をみせているのですぱ 4人の弾き手はみなソリストとしても注目を集める若き俊才たちで、日本の若き俊英・高橋和貴氏の参加も頼もく、さらに第1ヴァイオリンとチェロはなんと、昨年デュオで来日、痛快な名演で全会場を沸かせたヤーヴォルカイ兄弟がぱすでに相当に弾き込まれ、無数のとてつもない名盤があまた存在するモーツァルト中・後期の2曲をプログラムに掲げていながら、おそらくどちらの曲でも、聴きはじめたとたん過去のあらゆる名演の記憶が一瞬で吹き飛び、誰との比較でもなしに、ただひたすらに彼らのみずみずしい音楽に引き込まれずにはおれないのではないでしょうか...?
 晴れがましい明快な音楽が多いニ長調で書かれた“プロイセン第1”での、あふれんばかりの愉悦を絶妙にコントロールしながら音の彫琢をじっくりつくりあげてゆく解釈もひたすら痛快なら、『レクィエム』や『ドン・ジョヴァンニ』と同じデモーニッシュなニ短調で書かれた「第15番」での、身を切られるような深みと、その深みあればこその折々の爽快さとの、たとえようもなくエキサイティングな交錯にも手に汗握らされる——
 こういう録音を聴いていると、名曲とは本当にさまざまな演奏で確かめられてこそ、“聴く側”にとってもかけがえのない生きたものとなり、他の演奏から受ける感動もひときわ大きくなるのだ...!とあらためて思わずにはおれません! 
 

GRML98992
(SACD Hybrid)
(国内盤)
\3000+税
イルンベルガー(vn)
 リヒャルト・シュトラウス:

 1. ヴァイオリン協奏曲ニ短調 op.6(1882)
 2. ヴァイオリンとピアノのためのソナタ変ホ長調 op.18(1888)
トーマス・アルベルトゥス・イルンベルガー(vn)
マルティン・ジークハルト指揮
イスラエル室内管弦楽団
ミヒャエル・コルシュティック(p/シュトライヒャー1884年)
 生誕150周年!オーケストラ語法の達人R.シュトラウス、発掘されるべき傑作はたくさんある。

 『英雄の生涯』よりも早く、意欲たっぷり練り上げられていた充実の協奏曲を、ウィーンの異才が名匠ジークハルトとともに織り上げる。名作ソナタでの共演は、知る人ぞ知るコルシュティック!
 今年(2014 年)は“最後のドイツ・ロマン派”のひとり、R.シュトラウスの生誕150 周年——オペラと管弦楽の世界で大成功した人ですから、世界中の一流オーケストラや歌劇場が彼に捧げるプロジェクトを大いに盛り上げるであろうこと間違いなし...ではありますが、とにかく長い人生のあいだ精力的に作曲を続けた多作家でもありますから、続々と知られざる傑作が発掘されたり、重要ながら光があたりにくい名作の再評価が進んだり...といったことも出てくることでしょう。
 そういった動きは演奏会でもさることながら、やはり録音物制作のきっかけにもなるもので。
 楽都ウィーンの中心に本拠をおくGramola レーベルからも、さっそく充実度満点かつ演奏内容も惚れ惚れするほど痛快な1枚が届きました!R.シュトラウスはご存知の通りかなり早熟な芸術家で、今なお高く評価されている『ドン・ジュアン』『英雄の生涯』『ツァラトゥストラかく語りき』といった管弦楽曲のほとんどが30 代半ばまで(つまり「モーツァルトが生きた時間のあいだに」ということでしょうか)に書かれていることからもそれはよくわかりますが、仰天するのはそれ以前、10 代・20 代に書かれた作品のクオリティ!
 18 歳の頃作曲した管楽合奏曲が、時の大指揮者フォン・ビューローを驚かせ、そこから若き作曲家の快進撃が始まったそうですが、そこで見逃せないのが、24 歳の時に書かれ今なお偏愛を寄せるヴァイオリニストも少なくない名品「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」と、フォン・ビューローのもとで名をあげようとしていた時期に意欲満点で仕上げられた充実作「ヴァイオリン協奏曲」——後者はブラームスの傑作からわずか数年後、ばっちりロマン派全盛の時代に作曲が進められ、ピアノ伴奏版での初演から8年後には本盤に聴くオーケストラ伴奏版がケルンで初演されています。ヴァイオリンの重音を多用しながら、めくるめく濃厚な音楽展開を綴ってゆくその内容の豊かさは、まさに同時代の「ドン・ジュアン」、あるいは事実上のピアノ協奏曲「ブルレスケ」などにも通じる味わい——先日ウィーン・ロマン派の大家ゴールトマルクの協奏曲でめくるめく実績をあげたオーストリアの異才イルンベルガーは今回も絶好調、日本でもブルックナーの指揮をはじめとみに活躍がめだつ巨匠ジークハルトも的確なタクトで作品美をあざやかに伝えてやみません。
 さらにソナタではなんと、知る人ぞ知る新時代の異才コルシュティクが共演者...!そのうえピアノは(晩年のブラームスが愛した)シュトライヒャー1884 年製、まさに作品と同じ頃に作られた古雅なる銘器!記念年早々の、聴き深めがいある名盤の登場です!

INDESENS!


INDE057
(国内盤)
\2800+税
パリのフルート、さまざまな無伴奏
 ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
  ①無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013
 アルテュール・オネゲル(1892〜1955):
  ②山羊の踊り 〜無伴奏フルートのための
 クロード・ドビュッシー(1862〜1918):
  ③シランクス 〜無伴奏フルートのための
 ウジェーヌ・ボザ(1905〜1991):
  ④幻像 作品38 〜無伴奏フルートのための
 フランシス・プーランク(1899〜1963):
  ⑤廃墟に向けて子守唄を吹く、笛吹きの像
 ジャック・イベール(1890〜1962):
  ⑥無伴奏フルートのための小品
 ピエール=オクターヴ・フェルー(1900〜1936):
  ⑦無伴奏フルートのための三つの小品
 ロジェ・ブールダン(1923〜1976):
  ⑧傷ついた牧神 〜無伴奏フルートのための
 パウル・ヒンデミット(1895〜1963):
  ⑨無伴奏フルートのための八つの小品
 ジークフリート・カルク=エーレルト(1877〜1933):
  ⑩無伴奏フルートのためのソナタ・アパッショナータ 作品140
 カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714〜1788):
  ⑪無伴奏フルート・ソナタ イ短調
ヴァンサン・リュカ(フルート)
 パリ音楽院、ベルリン・フィル、そしてパリ管の首席として名をあげ、今やフランス随一の名手に。
 才人リュカが満を持して世に送り出した、傾聴すべき「ひとふでがき」の音響世界。大バッハから「記念年」の次男バッハまでのあいだ、近代の巨匠たちの技芸、深々と...
 無伴奏のフルートで1枚のアルバムを作るというのがどれだけの決意を必要とするか、想像するだにあまりあること...
 ましてやパリ管のトップ奏者として、この“管楽器の王国”を代表する世界随一のオーケストラの顔役のひとりになっている人物とあれば、なおのこと。
 大指揮者が振る「牧神の午後への前奏曲」や気鋭名手が弾くメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲でも絶妙の吹奏を聴かせる立場にあるヴァンサン・リュカが、オーケストラとも、あるいは室内楽の共演者ともいっさい無縁の状態で、音楽史上、無伴奏フルートのために書かれた傑作と目される重要作品をことごとく網羅した、きわめて傾聴に値する1枚のアルバムを満を持して世に問うてくれたことは、21世紀のいま、どれほどかけがえのないことでしょう...
 パリ音楽院で腕を磨いてきた生粋のフランス人だけに、フランス六人組やボザ、イベールといったフランス近代ものはもちろんお手のもの——
 嬉しいのは、36歳で早世しながら、両大戦間のパリで諸外国からやってきた同世代の気鋭作曲家たちと、ユニークな活躍を続けたオクターヴ・フェルーの逸品まで収録してくれていること。さすがパリの名手、センスが違います。しかしリュカは決して、母国フランスに縛りつけられている演奏家ではありません——
 無伴奏フルート作品の白眉ともいえる、ドイツの名匠カルク=エーレルトの「ソナタ・アパッショナータ」、管楽器作品の多いヒンデミットの名品など、ドイツ方面の骨太の逸品にも確かな適性を感じさせる充実解釈を打ち出してみせる...そして彼の才覚が一面的でないことを何より強く印象づけるのが、このアルバムの冒頭と末尾に配された、バッハ父子の傑作。父バッハの、あの「佳品」というにはあまりにも充実度の高い逸品を、リュカのしなやかで濃密、倍音成分をゆたかに感じさせる音でじっくり聴けるのも嬉しいところですが、アルバムを締めくくる作品として、本年生誕300周年を迎えるエマヌエル・バッハの、父の作品と同じ調性で書かれた無伴奏ソナタを配すなど、実に周到なアルバム構成ではありませんか。
 刻一刻と移り変わる人の心の機微をみごと翻案してみせた、あのエマヌエル・バッハの至芸をフルートひとつでじっくり聴き確かめながら、この楽器の可能性の広さに改めて思い至る…無伴奏盤の新たなる至宝、お見逃しなく。
 


INDE049
(国内盤)
\ 2800+税
ヤン・ターリヒ2世
 バルトーク(1881〜1945):

  44 の二重奏曲(全曲/第36 曲変奏版付)
   〜2挺のヴァイオリンのための
ヤン・ターリヒ2世、
アニェス・ピカ(ヴァイオリン)
 バルトークの作曲様式が、おどろおどろしいと感じるなら...まずは何より、愛すべきこの曲集に!
 民俗音楽とクラシック近代音楽の語り口の接点であり、ヴァイオリンを芸術的に扱うか、親しみやすく鳴らすかの接点であり。「弦の国」チェコの名手とフランスの俊才、爽快な名演!

 エッジの効いたビート感、突き抜けたスピード感などが魅力で、意外にクラシックを聴かない音楽ファンにもひそかに愛されている大作曲家がいます。ストラヴィンスキーがその筆頭なら、意外やショスタコーヴィチ、ライヒ、バルトーク...といったラインの作曲家たちも。逆に彼らの音楽は、クラシック・ファンのほうが尻込みしてしまうというか、時に強烈すぎるほどパワフルなサウンドに圧倒されてしまったり...結果、どうしたものかシェーンベルク周辺の十二音系作曲家たちと同様、もう100 年も前の音楽がなぜか「現代音楽」よばわりで敬遠されすらしているというのは、なんとも不思議な現象ではありませんか(R.シュトラウスやホルスト、ブリテン、プロコフィエフ...と、その世代にも広く愛されている作曲家はいるというのに、ふしぎなものです)。
 ともあれ、『弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽』や『管弦楽のための協奏曲』など、歴史的名盤に事欠かない痛快なオーケストラ音楽であったり、あるいは迫真の表現で聴き手をグイグイ圧倒するヴァイオリンとピアノのためのソナタであったり、そうしたおそろしげな音楽ばかりがバルトークという作曲家を敬遠させているのだとすれば、何はともあれ、つとに知られたこの曲集に接してみるのがよいと思います。ピツィカートから重音からメロディアスな歌心から多声交錯するポリフォニーまで、ヴァイオリン2挺だけでできるありとあらゆるスタイルの音楽がひしめきあっていて、どの曲も1曲1分前後、飽きる前にすぐ次の曲へ...否、もっと聴きたいような余韻を残しつつ、どの曲も絶妙の満足感を与えて終わるという、ほんとうに磨き抜かれた小品集の至宝べもともとはヴァイオリン学習者のために書かれたのだそうですが、その音楽的価値から折々録音する演奏家も少なくはなく(かといって多いわけではないのですが)、まれに二人のヴァイオリニストがリサイタルを企画すれば、腕のたつ人ならまず間違いなく何曲かをプログラムに盛り込む作品ではありますが、そうなるのも当然、なにしろそこにはバルトーク随一の強いアクセントを旨とするハンガリー民俗音楽調のテイストがあふれていながら、同時に誰が聴いても心そそられずにはおれない、親しみやすさ抜群の優しい心が宿っているのです(←あいまいな表現ですが...まさにそんなかんじですよね?)。
 嬉しいことに、パリ管弦楽団のソリストたちをはじめ、フランスの俊才が集うIndesens!レーベルから、思わぬ新名盤が登場いたします——
 弦楽器演奏の伝統とアンサンブル能力の高い演奏家が多いことで知られるチェコの俊才ヤン・ターリヒ2世(ターリヒ四重奏団の創設者ヤン・ターリヒ1世の息子)と、フランス新世代の俊英アニェス・ピカの、隅々まで音楽愛と洗練に貫かれた1枚べ難局だらけのこの曲集を、悠々あざやか、それでいて細部まで徹底して磨き抜いた解釈でじっくり聴かせてくれるのです!
 


INDE055
(国内盤)
\ 2500+税
ラングラメ(hrp)&ベルリン・フィル団員による
 ドビュッシーと、ハープ
  〜フランス屈指の名手が奏でる、オリジナル作品・編曲さまざま〜

 クロード・ドビュッシー(1862〜1918):
  ①ベルガマスク組曲(全4曲)
  ②小組曲 〜二つのチェロとハープのための(D.リニカー編)
  ③夢④ロマンティックなワルツ
  ⑤グラドゥス・アド・パルナッスム博士〜『子供の領分』より
  ⑥神聖な舞曲と世俗の舞曲(室内編成版)**
  ⑦二つのアラベスク(ルニエ編)
  ⑧チェロ*とハープのためのソナタ**
   ※②⑥⑦以外はM.=P.ラングラメ編
     **⑥⑧はINDE040 より再録
マリー=ピエール・ラングラメ(hrp)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団員
 アリーヌ・シャンピオン、
 ルイス・エスネオラ(vn)
 マドレーヌ・カルッツォ(va)
 ダーフィト・リニカー、
 ルートヴィヒ・クヴァント*(vc)
 ヤヌシュ・ヴィジク(cb)
 ドビュッシー + ハープ。玄妙、繊細、この組み合わせが成功しないはずがない——しかし極上のエスプリを描き出せるのはやはり、名門ベルリン・フィルで活躍するフランス人奏者、ラングラメだからこそ。まばゆい輝きと静かな響き、フランス印象主義音楽の機微、どこまでも。

 イージーリスナーから玄人ファンまで、「フランス音楽の繊細さ」が欲しい気持ちにぴたりと寄り添う音楽を無数に残したフランス近代の大作曲家、ドビュッシー。しかも彼は20 世紀初頭、フランス音楽が最も美しかった時代に、なによりも玄妙な調べを奏でる楽器・ハープのために何曲かの傑作を書いてくれています。
 当時はまさしくハープ音楽も意外な充実をみせていた時代で、とくにフランス語圏ではゴドフロワやルニエ、トゥルニエら、19 世紀後半のフランス音楽の洗練をあざやかにこの楽器に反映させてみた名演奏家=作曲家たちが続々登場、彼らが残した編曲譜によって古今の名曲もハープで奏でられるようになったのです。
 そう——このハープという楽器もまた、チェロやオーボエなどと並んで“イージーリスナーから玄人ファンまで”幅広く愛されつづけている特徴的な楽器のひとつ。ここにお届けするのは「ハープ」+「ドビュッシー」、まさに待望のワードが出会った理想的な1 枚——そのうえ、ドビュッシーや彼のまわりのハープの名手たちと同じく、フランス語で生まれ育ってきたフランス人の弾き手、しかも全世界に冠たるベルリン・フィルで活躍を続ける現代きっての名手マリー=ピエール・ラングラメとあっては、どうして食指を伸ばさずにおれましょう!
 ハープ録音の記念碑的新譜ともいうべきこのアルバム、美しい楽器のフォルムが生きるジャケットを掲げて丹念な制作を進めてきたのは、確かな自然派録音を旨とし、パリ管弦楽団のソリストらフランス随一の名プレイヤーたちからも愛されてきたIndesens!レーベル、つまり企画者も生粋のフランス人。選曲もあざやかで、ドビュッシーの同時代人であるルニエ(harmonia mundi france に俊才グザヴィエ・ド・メストルの名盤がありますね!)が編曲した「アラベスク」はもちろんのこと、「月の光」を含む『ベルガマスク組曲』、風雅なロマン派情緒の残り香をまとった初期の名品「夢」、隠れファンも少なくない初期の管弦楽作品「小組曲」の思わぬ編曲版(チェロ二つとハープ!)など、企画だけでも心そそられる名品が続々...
 ハープの機微を知り尽くしたルニエやラングラメ自身の編曲もたくみで、この楽器の良いところを余さず伝えてやみません。
 そのうえ、チェロ・ソナタのハープ編曲版、最初からハープのために書かれた『舞曲』と2傑作を、ベルリン・フィルの才人たちとの名演まで既存録音から再録してくれる行き届きよう。大切に愛聴したい1枚なのです!

PAN



PC10309
(国内盤・2枚組)
\4000+税
F.シュミット 〜ヴィトゲンシュタインの左手に捧ぐ
 ピアノ協奏曲、五重奏曲 他
 1.左手のためのピアノ協奏曲 変ホ長調
 2.管弦楽のためのシャコンヌ
 3.ベートーヴェンの主題による変奏曲
  〜ピアニストの左手と管弦楽のための
 4.ピアニストの左手と弦楽四重奏のための五重奏曲
カール=アンドレアス・コリー(p)
ヘルベルト・ベック指揮
ウィーン・ジュネス管弦楽団
ヴェルナー・トーマス・アルベルト指揮
ヴィンタートゥーア・ムジークコレギウム管弦楽団*
ザラストロ弦楽四重奏団
 ラヴェルだけじゃないです、むしろラヴェルは「遅れてきた」人——ヴィトゲンシュタインの左手は最初の大戦後、この大作曲家とともに魅力的な傑作を生み続けてきた...俊才コリーの最も重要なディスコグラフィのひとつ、歴史に一石を投じた注目の録音が静かにいま、セットで復活...!

 ご存知の通り、『ボレロ』の大家ラヴェルは後年オーケストラ音楽の分野で注目すべき成果をあげながら、あの「左手のためのピアノ協奏曲」という異例の大作でも充実したオーケストレーションを聴かせてくれています。
 このラヴェルの傑作が、第一次大戦で右手を喪い、左手だけで弾くレパートリーの発見・拡充につとめてきたウィーン出身の名手、パウル・ヴィトゲンシュタイン(1887〜1961)に捧げられていることは有名。しかし、考えてもみてください——ヴィトゲンシュタインが左手ひとつで活動するようになったのは、第一次大戦の惨禍のあとのこと。1920 年代という音楽史の上でもきわめて豊穣なひとときを、このような意識の高い才人がむだに過ごしていたはずがありません。そう、ラヴェルの協奏曲は実のところ、ヴィトゲンシュタインのすばらしき左手に捧げられた作品としてはかなり後のものに属するのであって、そのみごとな復活を早くから支えてきた作曲家が他に幾人もいたことは、つねに注目されるべき事実ではないでしょうか?
 なにしろ彼はウィーン出身、両大戦間にきわめて豊かな活動歴を残したコルンゴールトやハンス・ガールなど、ウィーン生粋の作曲家たちが彼に捧げた作品もいくつかあるところ、とくに多くの曲を残したのが、スロヴァキア生まれのオーストリア人フランツ・シュミット(1874〜1939)!老年期に親ナチズムに傾いたことで盲目的な拒否にもさらされてきたこの大家に限らず、1920 年代に黄金時代を迎えた名匠たちや当時の傑作群を、なぜか必ず第二次大戦の惨禍とむすびつけて語りたがる人は後を絶ちませんが、それよりもまず、私たちは音楽そのものに耳を傾けてみたいもの——晩期ロマン派の馥郁たる香りをたたえた作風は、ラフマニノフやR.シュトラウス、マーラーなどにも通じる充実度、オーケストラ・ファンをうならせる大家がヴィトゲンシュタインの左手のために残した早い時期の作品である「変奏曲」は、今まさに聴きたいベートーヴェン「春のソナタ」からの引用がじっくり展開されてゆく、芳香と退廃のロマンティシズムが美しい傑作!充実した管弦楽作品「シャコンヌ」の併録も嬉しいところですが、最後には晩年のシュミットの創作活動が思想的偏向などに曇らされていなかったことの証左とも言える傑作、左手ピアノと弦楽四重奏のための五重奏曲が収められているのがまた嬉しいところ!
 演奏も上々、とくにカール・エンゲル門下の俊才コリーが全編にわたって周到・玄妙な超絶技巧を味あわせてくれるのが魅力です。幻の2名盤がセットで入手しやすくなったうえ、ジャケットにもウィーン世紀末のクリムトの傑作をあしらい、洗練されたパッケージに。見逃せない逸品です!
 


PC10296
(国内盤・訳詞付)
\2800+税
カルダーラ:幻の『レクィエム』
 〜ウィーンの皇室、そして…〜


アントニオ・カルダーラ(1670〜1736):
 1.レクィエム(「続唱」全編含む現存部分のみ)
 2.トリオ・ソナタ 第5番op.1-5
 3.チェロと通想低音のためのソナタ 第15 番
 4.『悲しみのミサ』(ミサ・ドロローザ)〜
  サンクトゥス・ベネディクトゥス・アニュス・デイ
ダニエラ・ドルチ(cmb, org)指揮
Ens.ムジカ・フィオリータ(古楽器使用&合唱)
ヨナタン・ペシェク(バロックvc)
 「レクイエム・ファン」必聴! 後期バロックの“幻の”傑作、バッハにも比しうる迫真の表情!
 ヴィヴァルディとほぼ同時代、ウィーンの皇帝を魅了した音楽史上の巨匠カルダーラが残した「続唱」全編を含む驚くべき逸品、陰鬱な響きと鮮烈な輝きの対比。室内楽曲も粒ぞろい!

 ご存知のとおり、クラシック音楽ファンのなかにはなぜか「レクィエム愛好家」という方が意外なまでに多いもの。ふだん教会音楽など滅多に聴かないにけれど、この“死者のためのミサ曲=レクィエム”というジャンルだけは例外...という方のあいだには、モーツァルトやヴェルディ、フォーレ、デュリュフレ、ドヴォルザーク...といった古典派・ロマン派以降の巨匠たちの大作群はもちろん、意外な作曲家や知られざる巨匠が残した『レクィエム』の録音物やライヴなどにも敏感に反応、それらの作曲者たちのすぐれた成果を深く聴き親しんでおられる方も少なくありません。
 そんなレクィエム偏愛傾向をお持ちの方々には絶好のニュースであり、そうでなくともバロック・ファンか王道クラシック・ファンかを問わず、これは必ずや「響く」であろうと思われる瞠目のレクィエムが、音楽史の闇からさらにまた1作浮びあがってきたのです。
 作曲者は、アントニオ・カルダーラ——そう、バロック後期のイタリア人作曲家たちのなかでも、ウィーンの神聖ローマ皇室で、ドイツ語話者である巨匠フックスのかたわら「本場イタリアの名匠」として大いに愛されていた作曲家ぱ世代的にはヴィヴァルディとほぼ同じ頃の人で、早くからチェロ奏者として活躍をみせ、晩年にみごとなチェロ・ソナタ集もまとめている人物ですが(本盤にもその素晴しい作例がひとつ収められています)、楽譜がレクィエム全編におよんでいないため謎に包まれたまま演奏されてこなかった『レクィエム』が本盤の中心プログラム。断片とはいえ、現存する楽譜はこの死者ミサの式次第全体のおよそ半分におよぶ部分はカヴァーしているうえ、あの「怒りの日」や「涙の日」など聴かせどころに事欠かない最も長大な部分、レクィエムの肝と言っても過言ではない「セクエンツィア(続唱)」の部分はきちんと残っていたという有難さ。ウィーンからもそう遠くないプラハで見つかったこの楽譜を、せんだって才人テレマンの思いがけぬ国際センスを浮き彫りにした名盤「音楽の世界地図」の録音(PC10291)で絶妙の名演を聴かせてくれた欧州最前線の古楽グループが、あまりにもあざやかに料理してくれましたぱ冒頭からヴァイオリンの高音側をほとんど使わない陰鬱な響きが胸を刺し、トランペットが高らかに響く「喇叭は不思議な音を...」の章をはじめ、抑揚あふれる音作りの驚くべきドラマチュルギーはまさしく、皇帝=覇者の音楽生活を支え続けた名匠だったのが決して世渡り能力ゆえのことではなかった、まごうことなき実力ゆえのことだったと強く認識させてくれる、求心力あふれる音楽を紡ぎ出しているのです!
 合間に室内楽曲がふたつ(闊達・優美なバロック・チェロが美しい…)、既存録音もる「悲しみのミサ」からの抜粋で他の録音と聴き比べてみたなら、耳の肥えたバロック・ファンもドルチ&ムジカ・フィオリータの音作りが間違いなく欧州第一線にあることを強く認識するに違いありません。
 訳詞・解説訳付、ご注目を!

PASSACAILLE


PSC973
(国内盤)
\2800+税
C.P.E.バッハ 晩年の室内楽曲
 〜三つの四重奏曲、ハンブルクのソナタ、無伴奏ソナタ〜

カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(1714〜1788):
 ①四重奏曲 イ短調 Wq.93/H.537
 ②フルートと通奏低音のためのソナタ ト長調
  Wq.133/H.564「ハンブルクのソナタ」
 ③四重奏曲 ニ長調 Wq.94/H.538
 ④四重奏曲 ト長調 Wq.95/H.539
 ⑤無伴奏フルート・ソナタ イ短調 Wq.132/H.562
ヤン・ド・ヴィンヌ(フラウト・トラヴェルソ)
マールテン・ブーケン(va)
ルール・ディールティーンス(vc)
シャレヴ・アド=エル(fp/ヴァルター・モデル)
 エマヌエル・バッハ生誕300年—Passacaille レーベル秘蔵の1枚、国内流通盤化!

 ハンブルクに移り世界的巨匠となった後、モーツァルトの『フィガロ』よりも後に書かれた、なぜかめったに録音されない傑作四重奏曲、そして若書きの無伴奏...古楽大国ならではの名演で!

 2014 年が記念年にあたる作曲家のなかでも、意外に音盤シーンを賑わせてくれるのでは?と思われる「次男バッハ」ことカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ。日本のファンのあいだでも「新譜が出れば必ず買う」という方が思いのほか多いらしいことは、これまでにご紹介してきたアルバムの販売実績からなんとなく窺えるところでございます。
 Passacaille レーベルにも、少なくとも2タイトル注目すべきアイテムがあるのですが、まずはこちらから——この作曲家が最晩年にたどりついた独自の境地をしめす、室内楽作品集!

 エマヌエル・バッハといえば「父の大バッハ直々に教えを受けた次男」で「フリードリヒ大王に仕えフルートの作品を数多く書いたものの、特異な作風があまり理解されず冷遇された」ということが何かと話題にのぼりますが、父の友人で洗礼立会人もしてくれた巨匠テレマンの死にともない、ハンブルク市の音楽監督に抜擢されたのが1768 年——つまりそれ以降20 年間にわたって、彼は「うだつのあがらない不遇な通奏低音奏者」から一転、欧州中の音楽通から尊敬をあつめる巨匠として生きつづけているのです。
 この時期には彼ならではの音楽的感性が凝縮された鍵盤楽曲が続々と著され、多くの有識者たちがそれらに刺激を受けていたのですが、時代はまさしく古典派まっさかり。本盤に収録された三つの「四重奏曲」(実際にはチェロ・パートが鍵盤左手パートとほぼ同じで省略可能、事実上の三重奏曲としても演奏されます)は、モーツァルト最後の三大交響曲と同じ年に書かれた、彼の至芸の到達点をしめす重要作品であるとともに、優美な曲想と複雑な対位法の技芸とがまったく矛盾なく共存する、聴き深めるほどに魅力的な音楽...であるにもかかわらず、なぜかほとんど録音がなされない不遇の名品なのです。
 古くは伝説的銘団体ムジカ・アンティクヮ・ケルンの元メンバーたちによるEns.レザデューの名録音などもありましたが、すでに時代は21 世紀——本盤では古楽大国ベルギーきってのトラヴェルソ奏者であり、かつPassacaille レーベルの主宰者でもある名手ヤン・ド・ヴィンヌを中心に、欧州古楽界で多面的な活躍を続ける名手たちがしなやかな名演で、これらの逸品の美質をたくみに彫りあげてゆきます。
 この新機軸のかたわら、『フィガロの結婚』が書かれた年になお晩期バロック的作風で仕上げられた「ハンブルクのソナタ」も実にうつくしく興味深いうえ、初期の傑作である無伴奏ソナタの、ド・ヴィンヌによるしなやかな古楽器演奏まで収録されているとは、なんと嬉しい選曲でしょう!
 解説全訳付、見過ごしがたい1 枚です!
 


PSC9524
(国内盤)
\2800+税
ゼレンカ さまざまな合奏曲
 〜協奏曲、組曲、シンフォニア、ヒポコンドリー 1723年、プラハでは...〜


ヤン・ディスマス・ゼレンカ(1679〜1745):
 1. 協奏曲 ニ長調 ZWV186
 2. ヒポコンドリー(フランス序曲)ZWV187
 3. 序曲(組曲)ト長調 ZWV188
 4. シンフォニア イ短調 ZWV189
パウル・ドンブレヒト(バロック・オーボエ)指揮
Ens.イル・フォンダメント(古楽器使用)
 バッハもテレマンも一目置いた——明敏な古楽ファンも、その音楽のユニークさは先刻承知。
 宗教音楽ではバッハにさえ追い迫る傑作を無数に残したドレスデンの巨匠、思いがけず故郷チェコともゆかりの深い協奏曲、シンフォニア...絶妙の古楽器演奏でじっくり味わうべき!
 20 世紀初頭までに有名になっていたのが、真の大作曲家というわけではありません——歴史とは残酷なもの、後世人とは無情なもの。真価を見極めず、ただ名前が無名であるというだけで、見過ごされてきた「心を揺るがし得た傑作」、年月がたつうち幾多の偶然から忘れられてしまった知られざる巨匠は、歴史上数知れずいるものだ...多くの人がそういったことに気づきはじめたのが20 世紀中後半だったとすれば、音楽史研究というものの母国でもあるドイツで誕生したArchiv やDeutsche Harmonia Mundi といったレコードレーベルが、かなり早い段階からその魅力を世界に知らしめようと奮戦してきた過去の作曲家たちのなかには、幸い数十年の時をへて徐々に有識者たちのあいだで重視されるようになってきた名匠も何人かいます。
 テレマンやヴィヴァルディはいわずもがな、シュッツやモンテヴェルディ、シャルパンティエ、ビーバーなど17 世紀の大家たち、あるいはファッシュ、クヴァンツ、バッハの息子たち...といった18 世紀の巨匠たち...そうしたなか、バッハも憧れた最強の宮廷楽団を擁していたドレスデンのザクセン選帝侯家で、宮廷作曲家として数々の教会音楽を作曲してきたゼレンカの偉業は、レコード会社の尽力により確実に知名度を高めてきた大家のひとりとして、ディスコグラフィにも比較的恵まれている一人といえます。
 近年では彼の故郷チェコの古楽界が充実してきたおかげで、教会音楽のすぐれた名品もかなり多く発掘されるようになってきましたが(Zig-Zag Territoires レーベルからの『請願のミサ』(ZZT080801)が大いに注目され、2011 年には『サライ』誌の年間大賞にも輝きました)、20 世紀の半ばからハインツ・ホリガーやバリー・タックウェルら、現代楽器畑の超・大御所たちの確かな演奏によって全世界にアピールを強め続けてきたのが、このゼレンカの室内楽や合奏作品など、器楽系の傑作群。ドレスデン宮廷の精鋭楽団がいなくては演奏できなかったであろう、極度に演奏のむずかしいそれらのユニークな名品(技巧的というだけでなく、楽章構成や音楽展開などトリッキーなところも多いのです)はしかし、当時流儀の古楽器演奏でこそ映えるというもの。
 古楽器演奏の拠点ともいうべきベルギーで、多忙な演奏活動を続ける名手が居並ぶイル・フォンダメントによる小規模編成のこの録音こそ、その真価を活き活きと伝えてくれる絶妙のヴァージョンと言えます。
 「ヒポコンドリー(沈鬱病)」と題された謎の単独楽章(折々に短調の和声が影さす印象的な傑作)での精妙なニュアンスも、多楽章のトリッキーなシンフォニアも、少数精鋭の名手集団だからこそ映える緊密なアンサンブルと細やかなアクセントの味わいがたまりませんぱ「なぜ、プラハ1723 年なのか」も含め解説も端的・充実(全訳付)。ジャケも美しい秀逸盤です!



何度でも紹介します。
すごいです、ゼレンカ

独HM
88697 52684- 2
\2500→\2290
ゼレンカ:ミゼレーレ ハ短調
J・S・バッハ:カンタータ第12番「泣き、嘆き、憂い、怯え」BWV.12
アントニオ・ロッティ:3部合唱のためのミサ曲
トーマス・ヘンゲルブロック(指揮)
バルタザール=ノイマン合唱団と管弦楽団

 プラハ城のほとりにロレッタ教会という聖母マリアにちなんだ教会がある。かつてモーツァルトもそこを訪れ、オルガンを弾いたという。
 そのロレッタ教会から歩いてすぐのところに、客が3,4人も入ればいっぱいになりそうな小さなクラシックCD専門ショップがある。
 そこで珍しいCDがないかいろいろ物色していた。

 そのとき、今回のチェコ旅行最大の衝撃が店主を襲った。
 いや、店主の長いような短いような35年のクラシック視聴人生の中でも10本の指に入る恐るべき体験。

 突然、これまでまったく聴いたことのない宗教曲が始まったのである。
 それがすごい曲だった。
 魂の底を干渉するかのような地獄的な通奏低音に、漏れそうな吐息をそのまま肺に戻させるような迫力の合唱。しかもその展開は背筋が戦慄するほどに刺激的で天才的。

 誰だ?こんな曲を作ったのは!?
 この劇的なまでの痛切さ!これに匹敵できるのは、ただモーツァルトのK.626のレクイエムだけか・・・?
 とにかく常人ではない。
 見たいような見たくないような、おそるおそる、試奏中のアルバムに手をやる。
 ・・・誰だ?

 ・・・ジャン・ディスマス・ゼレンカ。

 ゼレンカ?
 あのゼレンカ?
 初心者の頃バロック音楽の代表的な作曲家の勉強をしていると、イタリア人でもドイツ人でもフランス人でもイギリス人でもなく、突然「ボヘミア人」という肩書きでポツンと、完全に浮いた形で登場する後期バロックの作曲家がいた。それがゼレンカ。・・・当時、どう分類していいのかわからず、理解の妨げになるので、いなかったものとしてノートから消したりした。その後ARCHIVなどから出た代表的作品のアルバムを聴いてみたが、かつて「いないものとして」存在をムリヤリ封じ込めたその作曲家の作品は、どう聴いても魅力的に思えなかった。
 最近になっても、ときおりバロック宗教作品アルバムの中に1曲が入っていたりすることはあったが、とくに店主の印象を変えてくれるようなことはなかった。
 そんな、店主にとってはどうでもいい、いるのかいないのかどっちでもいいような、あのゼレンカ・・・?
 まさか。
 しかし何回CDのジャケットを見ても、それはまちがいなくゼレンカの作品だった。まさに今自分が足を踏み入れているここボヘミア出身の。
 このプラハまで来たのなら、これまでの非礼を許して、この地方出身の作曲家の最高の音楽を堪能させて上げよう。・・・まるで神様がそう言っているかのようにその音楽は店主の耳に鳴り響いた。

 怒涛の合唱が終わり、ようやく曲名をみた。
 ミゼレーレ。
 ゼレンカのミゼレーレ。・・・あったか?全然知らない。
 曲はわずか15分ほど。あっという間に終わる。前半の激しいMISERERE部分と中間の穏やかなGLORIA PATRI、そしてラストにもう一度MISEREREが戻ってくる。
 曲としては中間部がやや天才的な魅力に欠けるきらいもある。とはいえ両端部のMISEREREの突出した異様なまでの存在感を浮き立たせるにはかえって好都合。ラストにMISEREREがもう一度始まったときは全身に鳥肌が立った。
 そして曲が終わった。
 心が落ち着くまでには少し時間が必要だった。胸の高鳴りを押さえ、店頭に飾ってある1枚を買って帰った。

 しかし旅先で恋に落ちることがよくあるように、これもちょっとした気の迷いかもしれない。帰国してから数日して、ようやく再びそのアルバムをかけた。
 気の迷い?とんでもない!
 スピーカーから響いてきたその曲は、あのプラハで聴いたときよりなお一層の迫力と衝撃で眼前に鳴り響いた。信じられない。
 先ほども言ったが、これほどの音楽はモーツァルトのK.626だけじゃないのか・・・。

 そう思った瞬間・・・ふと考えた。
 モーツァルトはこの曲を聴かなかったか?
 ボヘミア生まれのゼレンカ。ひょっとして晩年何度もプラハを訪れたモーツァルトが、彼の地でこの曲を聴いた可能性はないのか?いや、待て。ゼレンカなら活躍したのはドレスデンか。ドレスデン・・・モーツァルトは・・・行ってる。そう、最晩年のベルリン旅行のときドレスデンに寄った。1789年の4月中旬。ドレスデンの滞在は確か1週間ほど。始めの2,3日こそ忙しくしていたようだが、後半の2,3日は何もすることがなくブラブラしていた。しかもドレスデンでミゼレーレが演奏されるのは復活祭の前の四旬節とされる。この年の復活祭がいつだったかはわからないが、4月の中旬が多いことを考えれば、モーツァルトが滞在した4月中旬のドレスデンでゼレンカのミゼレーレが演奏されていた可能性はあるのではないか?そしてブラブラしていたモーツァルトがたまたまその場に居合わせることは??
 もちろん死後50年近くたっているゼレンカの作品が当時演奏されるものなのか、わからない。すべてが店主の想像である。・・・しかしあのK.626に強い影響を与えたんじゃないかと思いたくなるほど・・・この曲のインパクトは大きい。
 こんな曲があるのだ。
 数多くの名盤を抜き去り、今年最高のアルバムはプラハで出会った。

 蛇足ながら、数少ない同曲の別演奏も聴いてみた。全然違う。ものすごく生ぬるい演奏もあった。
 それを思うとこの録音は、ドイツの俊英ヘンゲルブロックが再発見し、作品を洗いなおし、改めて世に問うた、きわめて貴重なものだったのかもしれない。

 


PSC933
(国内盤・訳詞付)
\2800+税
ブリュッセル、18 世紀の教会で
 〜逝ける者に捧ぐミサとグラン・モテ〜

 アルフォンス・デーヴ(1666〜1727):
  ①死者に捧ぐモテ「おお、いのち限りある者たちよ」
 ピエートロ・トッリ(1650頃〜1737):
  ②死者に捧ぐミサ(レクィエム)
パウル・ドンブレヒト指揮
Ens.イル・フォンダメント(古楽器使用)
グレタ・ド・レジェル、
ドミニク・ファン・ド・サンド(S)
ヤン・カールス(T)
マルニクス・ド・カット(C-T)
ディルク・スネリングス(Bs)
 古楽大国ベルギーは、実は古くからの音楽大国だった——ドイツでバッハが、フランスではクープランが活躍をみせていた18世紀初頭、国際都市ブリュッセルに花開いたセンス抜群の音楽世界を、この国の「いま」を代表する俊英集団イル・フォンダメントの名演で!

 古楽の世界がいつになっても面白いのは、ひろく知られた定番名曲に追い迫る、思いがけない傑作が歴史の闇から「たえず」発掘されつづけているということ——
 「古楽はバッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディだけでいい」という聴き方でゆくと、彼らの(バッハはまあそんなにないかもですが)いまひとつ好みでない曲や「実は偽作だった」などといった音楽にも、多大な時間を費やすことになりかねません。
 ここで大事なのは「名前もきいたことがない作曲家の作品を、わざわざ演奏家やレコード会社が時間を取って録音&CD 化するということは、そこにそれだけの価値があるから」という、意外に認識されていない重要な事実——

 とくに、古い音楽の史料がたっぷり残っているだけでなく、古楽演奏がもはや広く定着して、耳の肥えた聴き手が無数にいるベルギーのような国で、思わぬ未知領域がそうやって再開拓されるようなことがあったなら、まず迷わず手を伸ばしてみたほうがよいと思います。

 本盤はアニマ・エテルナやコレギウム・ヴォカーレ、レザグレマンといったベルギーの超一流古楽バンドにいくつも参加し、とりわけ多忙な活動を続けている腕利きが居並ぶ実力派集団イル・フォンダメントによる、ブリュッセル中央駅にほど近い聖ミシェル=グデュル大聖堂に伝わる古文書に含まれていた手稿譜資料の発掘企画。
 その音楽監督たる名匠ドンブレヒトはレオンハルトやクイケン兄弟、ブリュッヘンらの録音にも数多く参加してきた大物ですが、さすが古楽大国の最先端を張ってきた人だけあって、その審美眼がいかに確かだったかを痛感させてくれる1枚になっています。かたやアルバムの大半を占める大作、録音シーンでは近年ひそかに音盤が増えている「ミュンヘンのイタリア人」トッリの長大な『レクィエム』は、バッハやヴィヴァルディがとみに名声を高めた1720 年代に書かれた、実にドラマティックな逸品。
 他の隠れ名盤でこの作曲家の腕をご存知の方なら思いつかれるであろうとおり、長大な曲構想をまったく長大と感じさせない緩急あざやかな音作り、メロディアスなフレーズを紡ぎ出すにあたってのイタリア人面目躍如ともいうべきセンス、楽隊編成をフル活用した多彩な音色表現...と、まさに「南のテレマン」と呼びたくなるような手際の良さ。
 ミュンヘンのバイエルン選帝侯がひところ南ネーデルラントを領有、宮廷人たちとともにブリュッセルにいた頃の作品だそうですが、フランス語文化圏でありつつもイタリア音楽最先端の響きを柔軟に受け入れていったベルギー18 世紀ならではの美質は、その少し前に書かれたデーヴのややフランス寄りなモテットにも美しい反映をみせています。
 よく見ればカピーリャ・フラメンカのディルク・スネリングスや大御所グレタ・ド・レジェルら、独唱陣も多士済々...訳詞・解説とも充実、知る愉しみを十全に満たす名盤です!
 


PSC964
(国内盤・訳詞付)
\2800+税
フェーオ:ヨハネ受難曲(全曲)
 〜古典派前夜、ナポリ楽派の知られざる至芸〜

フランチェスコ・フェーオ(1691〜1761):
 『我らが主イエス・キリストの受難、
  ヨハネの福音書による(ヨハネ受難曲)
ドロン・シュライファー(C-T・福音書記者)
クリスティアン・アダム(T・イエス)
ミルコ・グヮダニーニ(T・総督ピラト)
バルバラ・シュミット=ガーデン(Ms)
ロレンツォ・ギエルミ指揮
ラ・ディヴィナ・アルモニア(古楽器使用)
ヴァレーゼ室内合唱団
 バロック末期の「受難音楽」は、ここまでスタイリッシュに洗練され、かくも激情に満ちていた...!
 バッハの受難曲もかくや...というのは、決して誇張ではないと思います。レチタティーヴォの雄弁さ、イタリア古楽勢の絶妙解釈。ペルゴレージの傍ら、ナポリに生まれた異形の名作、完全訳詞付!

 「受難曲などバッハで十分」と思っていたとしたら、それはとてももったいないこと——「バロックはバッハだけあればよい」というに等しい、本当にすばらしい音世界を切り捨ててしまう発想なのだ...と、本盤を少し聴いているうち切実に思われてきます。そもそも受難曲というのは、キリスト教の世界で言う「受難節(四旬節)」、つまり復活祭の前までの、派手なことは謹んで暮らさなくてはいけない時期に上演された音楽。この時期はオペラが上演できない...というので、では教会音楽なら...と、凄腕の作曲家たちが気合十分すばらしい音楽を書いていることが多いため、未知の作品でもびっくりするくらい充実した傑作に出くわすことが少なくありません。
 イタリアが古楽後進国だった20 世紀末、「オペラの本場・ヴィヴァルディやスカルラッティの故郷に古楽がないと思うなよ!」と斬新・鮮烈なバロック解釈で世界を瞠目させた革命的グループ、イル・ジャルディーノ・アルモニコで長く鍵盤奏者をつとめたロレンツォ・ギエルミが「ナポリですごい受難曲を見つけた!」と興奮交じりに教えてくれたのが、数年前——ぜひとも国内仕様でリリースせねばと思っていた名盤が、このフェーオなる18 世紀ナポリの作曲家による『ヨハネ受難曲』でした。

 フェーオは1735 年、病床についていた夭逝の天才作曲家ペルゴレージが『スターバト・マーテル』を作曲中に彼のもとを訪れ、病を押して仕事を進めようとする若者をいさめた...という逸話でも音楽史に名を残していますが、この『ヨハネ受難曲』もそのときのペルゴレージ作品と同じく、ナポリ楽派の大先輩A.スカルラッティの先駆作にならって作曲されたとのこと。
 しかしその音楽内容は明らかに斬新、イタリア、それもダ・カーポ・アリア全盛のオペラ世界が活況を呈していたナポリにいたにもかかわらず、フェーオの音作りはむしろバッハその他のドイツ人プロテスンタント作曲家たちさながら、全編レチタティーヴォ主体でほとんどアリアなし、しかし器楽を積極的に参入させ、まるで音による受難絵巻のごとく、かたずを飲んで物語展開を追うほかない、ひたすらエキサイティングな音作りを体現してみせているのです!
 ギエルミ率いるイタリア古楽界の俊才たちは、メンバーからして豪華そのもの——通奏低音には先日スヴェーリンクの作品集で好評をさらった渡邉孝氏、多忙をきわめるノリノリの異才マルコ・テストーリ(チェロ)や異才ハープ奏者マルグレート・ケルら、とんでもない大物たちが名を連ねています。この布陣で名演にならないわけがない...室内編成とは思えない迫真のドラマ、自然派録音で生々しく伝わる古楽器のサウンド、欧州最前線の俊才歌手たちの驚くべき演技派名唱——試聴機にも有効そうな、聴いているだけで南イタリアの濃厚な赤ワインが欲しくなる痛快盤なのです!

Φ(Phi)



LPH013
(国内盤・チャプター別あらすじ付)
\4000+税
ヘレヴェッヘ/
 ハイドン(1732〜1809):
  オラトリオ『四季』Hob.XXI:3
   〜独唱、合唱と管弦楽のための
フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮
シャンゼリゼ管弦楽団(古楽器使用)
クリスティーナ・ランズハマー(S)
マクシミリアン・シュミット(T)
フローリアン・ベッシュ(Bs)
 異才ヘレヴェッヘ、快調の自主レーベルPhiからのさらなる新譜は、ハイドン最後の超・大作!

 最大級の演奏編成を誇る「19世紀はじめのハイドン」の真相を、鮮烈にして泰然自若な一体感あふれる古楽器オーケストラ&合唱で...
 演劇性とオーセンティシティ、稀有のバランス!
 かつてレオンハルトとアルノンクールによる世界初の「古楽器によるバッハ・カンタータ全集」録音プロジェクトに合唱指揮で参加したのも今は昔、今やベルギーの文化大使としても活躍、王立フランダース・フィルの音楽監督としても活躍をみせるなど、多面的な芸術家としてユニークな存在感を放ち続けるフィリップ・ヘレヴェッヘ——

 2010 年より始動した自主制作レーベルPhi(フィー)も快調そのもの、すでに12 タイトルを数える既存アルバムの売れ行きも軒並み好調、バッハ新録音が大人気なのはいうまでもなく、モーツァルトの晩期交響曲やドヴォルザーク、ベートーヴェンらの大作が痛快な売れ行きをみせるかたわら、なんとビクトリアやジェズアルドなどルネサンス・ア・カペラものでさえ他にまるでひけをとらないセールスを記録する勢い...
 そうしたなか、2014 年最初の新録音として登場したのはなんと、“交響曲の父”ハイドンが晩年、ロンドンでの成功をうけてウィーン最大の巨匠となった頃に創意のすべてを注ぎ込んだ意欲的大作『四季』!

 合唱指揮者ヘレヴェッヘの本分があざやかに反映された一体感あふれる演奏解釈は、このコントラファゴットやトロンボーンまで駆使したハイドン最大編成のオーケストラが動員される大作でもいっさいブレることがありません(そのあたりはまさしく、ベートーヴェンの『ミサ・ソレムニス』(LPH007)でみせた稀有の名演の再来といえるでしょう)。
 ご存知のとおり、ハイドンの晩年にはウィーンの音楽文化は大いに発展し、たんなる娯楽を越えた、真摯な芸術的内容を誇る大作オラトリオというものにも需要が高まり、モーツァルトがヘンデルの『メサイア』を再編曲して上演したり、ベートーヴェンが『オリーヴ山でのキリスト』や大作ミサ曲を発表したり...といったことがなされる下地もできていたところ、当代きっての巨匠中の巨匠ハイドンの新作オラトリオにたいする期待はさぞ大きかったとみえ、彼はその期待に応えるべく創意をふりしぼった結果、その後企画していた弦楽四重奏曲も完成させられなくなるほど衰えてしまったそうです。
 まさに命を削って完成にこぎつけたこの大作、並居る現代楽器・古楽器の名録音をよそに、このヘレヴェッヘ&シャンゼリゼ管弦楽団による驚くべき一体感、躍動感あふれるコントラストは明らかに出色の存在感、確実に新名盤の地位を得るに違いありません。
 オラトリオの物語を追うのに十分なチャプター解説&解説全訳付、本格派ならではの魅力が詰まった傑作録音...プレス切れの谷間にかからぬよう、潤沢な在庫確保のほどを!

RICERCAR



MRIC311
(国内盤・訳詞付)
\2800+税
シュッツ『音楽による葬送』他
 〜『ドイツ・レクィエム』のルーツ〜

  ハインリヒ・シュッツ(1585〜1672):
   ①音楽による葬送 SWV279〜281
   ②主よ、今こそあなたは(シメオンの賛歌)SWV432
   ③わたしは甦った者、わたしは命 SWV464
   ④主よ、今こそあなたは(シメオンの賛歌/別作品)SWV433
   ⑤これぞまことの言葉 SWV277
  ザムエル・シャイト(1587〜1654):
   ⑥オルガン独奏のためのコラール「わたしたちはみな、神を讃えます」**
  マルティン・ルター(1483〜1546):
   ⑦コラール「安らぎと喜びのうちに、わたしは旅立ちます」(オルガン*付)
    ※曲順は②③④⑤⑥⑦①
リオネル・ムニエ指揮
Ens.ヴォクス・ルミニス(古楽器使用)
鈴木優人*、
ベルナール・フォクルール**(org)
 グラモフォン・アウォード受賞、ディアパゾンドール...数多の受賞経歴を誇る名盤、ついに訳詞付の解説訳完備で日本上陸!
 バッハ・コレギウム・ジャパンの名匠たちも多数参加、欧州でいま最も熱い古楽歌手たちが結集、バッハ以前のドイツ最大の巨匠の傑作を刻む..!

 ドイツ・ロマン派屈指の合唱大作『ドイツ・レクィエム』には、驚くほど古い「手本」と目されている重要作があります——19 世紀半ば、バッハやそれ以前の“古楽“に人々の注目が集まりはじめた頃にいちはやく再評価が進み、古き巨匠の代表格としてシャイン、シャイトらと「ドイツ三大S」などとも称されるようになった巨匠中の巨匠、ハインリヒ・シュッツの『音楽による葬送』...1635 年、シュッツが楽長として君臨していたドレスデン宮廷からもそう遠くないゲーラという町を治めていた、外交の才にたけた見識深き貴族ハインリヒ・フォン・ロイスが亡くなったさい、生前のハインリヒから依頼を受けてまとめられていたこの充実作が葬儀にさいして演奏されていますが、その歌詞はドイツ語聖書の各所から「死」にまつわる章を選り抜いてまとめられた——

 そう、ブラームスが『ドイツ・レクィエム』でまったく同じことをやったのに「伝統と違う」などと騒がれてしまった“事件”は、240 年も前に巨匠シュッツによって何の咎めもなく実現していたことだったのです。
 死者を悼み、死を神の世界へ向かう旅立ちとして喜んで受け入れようとするキリスト教的死生観のもと、シュッツの常どおりきわめて精妙な音作りで強い情感をうつくしく表現してゆく。——6人の独唱者と補強声部(合唱)、通奏低音からなるコンチェルタンテ編成でまとめられた本作には、すでに数多くの名盤が存在してはいるものの、おそらく現時点で現代最高の傑作と目しても間違いないであろう珠玉の名録音が登場。
 
 数年前の新しい録音ながらすでに英Grammophone 誌の年間大賞をもぎとり、世界屈指の点が辛い批評誌たる仏Diapason 誌も文句なしに金賞(ディアパゾン・ドール)を捧げずにおれなかった本盤の演奏陣は、バッハ・コレギウム・ジャパンにもたびたび来日する名歌手が揃う少数精鋭俊才集団、ヴォクス・ルミニス。
 昨年は現代舞踏家・勅使川原三郎との共演や調布音楽祭キィパーソンとしての多忙な活躍など、大いに存在感を高めた鈴木優人氏(BCJ 鈴木雅明氏のご子息)もオルガンで参加、センスよい即興的伴奏でルターのコラールに彩りを添えるトラックなど聴きどころも含め、通奏低音奏者としての気鋭ぶりをいかんなく発揮!
 ヘレヴェッヘの合唱団でも活躍をみせる名歌手たちをはじめ、日本でも愛されているオランダ=ベルギー系の古楽歌唱の粋あればこその抜かりない名盤、解説・歌詞全訳付にて堂々の上陸です——お見逃しなく!

SAPHIR



LVC1186
(国内盤)
\2800+税
フランス × チェロ × 八重奏
 〜音のニュアンス、音の色〜

  レナード・バーンスタイン(1918〜1990):
   ①『ウェスト・サイド・ストーリー』より
   〔アメリカ/ひとつの心/トゥナイト〕*
  リヒャルト・ワーグナー(1813〜1883):
   ②歌劇『ローエングリン』第1幕への前奏曲*
  アントニーン・ドヴォルザーク(1841〜1904):
   ③スラヴ舞曲 op.72-2**
  マルティン・マタロン(1958〜):
   ④ニュアンスから色へ(オリジナル新作)
  ガブリエル・フォーレ(1845〜1924):
   ⑤『ペレアスとメリザンド』組曲*
  クロード・ドビュッシー(1862〜1918):
   ⑥『三つの夜想曲』より〔雲/祭り〕*
     * ルノー・ギユ編 **ジェローム・ピンジェ編
レ・フィラールセリスト”
(フランス放送フィル・チェロ八重奏団)
ジャン=クロード・オークラン、
ポリーヌ・バルティソル、
ルノー・ギユ、
マリオン・ガイヤール、
カリーヌ・ジャン=バティスト、
ジェレミー・マイヤール、
クレモンティーヌ・メイエール、
ナディーヌ・ピエール、
ジェローム・ピンジェ、
ダニエル・ラクロ、
ニコラ・サン=ティヴ(vc)
 名門オーケストラのチェロ・セクションが奏でる、絶妙サウンドの連続——洒脱と深み、多民族国家ならではのバランス感覚、フランスの「いま」はやはり、一味違
 選曲の妙もさることながら、フォーレなどのフランスものはやはり、自家薬籠中の相性...!

 昨今の欧州の一流オーケストラ団員には、もはやクラシックだけしか弾かない人というのがどんどん少なくなっている——というより、ジャンルの壁など気にしていたのでは良い音楽などできないことくらい、彼らは先刻承知なのです。だからこそ、軸足を置いているクラシックの分野に帰ってきたときにも、自由な感覚でまったく新しいサウンドを提案しつつ、確実に伝統の重みを受け継いだ、比類ない音作りができるという次第。そうした現状を典型的にあらわすアルバムを、パリの只中に拠点があるSaphir レーベルが制作していたのです。
 演奏はフランス放送フィルの俊才たちが集う「レ・フィラールセリスト」...ベルリン・フィルの楽団内アンサンブルに代表される「チェロ八重奏」という編成はおもいがけず広がりがある演奏形態で、彼らは実にさまざまな音楽の可能性をこの編成で愉しませてくれるのです。
 エッジの効いた運弓のパフォーマンスあり、重奏な響きから軽快な音作りまで自在なハーモニーあり、左右から歌い交わす空間性あるサウンドスケープあり...なんといっても、余裕綽々バーンスタインの傑作でアルバムをスタートさせてみせるあたり、「いま」の余裕が強く感じられるところではあります。
 アルゼンチン生まれの作曲家マタロンの新作も良い感じにクールぱワーグナーでの息をのむ繊細な響き、ドヴォルザークでは多民族国家フランスならではの堂に入った民俗情緒があざやか、そしてフォーレ『ペレアスとメリザンド』組曲は全編にわたってフランス団体の面目躍如、細やかな機微から堂々としたドラマティックな浪漫的雰囲気にいたるまで、ほんとうに隅々まで磨き抜かれて高雅そのもの——
 その流れのまま絶品ドビュッシーで締めくくる、という流れに、ああやっぱりフランスの名門だ、との思いを強く感じずにはおれません。
 何度も折にふれ聴きたくなる魅力たっぷり——その魅力の秘訣にほどよく迫った小沼純一氏の書下ろし解説もまた、小気味よい鑑賞体験を呼び込んでくれるのです。

ZIG ZAG TERRITOIRES



ZZT344
(国内盤・8 枚組)
\8800+税
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集BOX
 〜完全BOX 化・特別価格〜


ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1685〜1750):
 1.弦楽四重奏曲(全16 曲)
 2.弦楽四重奏のための「大フーガ」
ベルチャ四重奏団
コリーナ・ベルチャ(vn1)
アクセル・シャヘル(vn2)
クシシュトフ・ホジェルスキ(va)
アントワーヌ・ルデルラン(vc)
「レコ芸」特選を連発、上下2分巻でリリースされ大好評を博した新時代の決定的録音、早くもBOX仕様でリリース決定!

 この種のアイテムはなくなると二度と入手付加になるのでどうぞお早目に確保のほどを...
 EMIからZig-Zag Territoiresへ移籍、冴えわたる至芸ぱこういうBOX が早々に出てくるというのは考え物な時代なのか、それとも純粋にありがたいことだと考えるべきか——ソナタに比して意外に全曲録音プロジェクトがめったに出てこない、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲をすべて収め、各4枚組の上下2分巻(ZZT315・ZZT321)でリリースされたベルチャ四重奏団の偉業は、昨2013 年、どちらの巻も相次いで『レコード芸術』誌で特選に輝いたばかり。
 とくに「下巻」(ZZT321)は特選をいただいたのがつい最近でもあり、いまだに軽快な勢いでオーダーが伸び続けている状態にあります。この勢いがおそらく一段落するかしないかのうちに到着してしまうであろうアイテムが、この上下セットのBOX仕様——もちろん全曲それぞれの解説を含むCD解説全訳も添付、BOX 仕様だけにプレス切れ次第「再生産なし」の状態になるであろうことも充分予想されるところ、この価格での国内仕様リリースとさせていただくことにいたしました。
 ベートーヴェンにとって、弦楽四重奏曲という分野は交響曲と同じく最初の作品を世に送り出すまでさんざん試行錯誤をくりかえし、最後の作品群はピアノ・ソナタよりも後まで(そしてもちろん、第9交響曲の後までも)作曲を続けていたという、まさに入魂のジャンル。初期作品(作品18の6曲)には磨き抜かれたセンスと堅固な形式感覚のみごとな調和があり、ドラマあふれる「傑作の森」時代に書かれた3曲の「ラズモフスキー四重奏曲」(第7〜9番)や「ハープ」「セリオーゾ」の異名をもつ第10番・第11番など充実至極の中期名品をへて、晩年に書かれた5曲はどれひとつとっても桁外れの深みと広がりをもつ小宇宙のごとき世界を体現している...これがピアノ・ソナタなら演奏者ひとりの探求の道で全曲録音へとむすびつきますし、交響曲であればオーケストラ単位のプロジェクトとして企画成立しやすいのでしょうが、弦楽四重奏団となるとやはり、個々の力量と解釈が高ければ高いほど、ベートーヴェン全曲録音には敷居が高くなるのか、この10〜20年でも驚くほどプロジェクトが少ないもの(アルテミス、ミケランジェロ、そしてこのベルチャ…)。しかし名曲であればあるほど「古の決定的録音」だけでなく、できるだけ多くの、新旧両世代の録音を聴き確かめ、その深みをさらに知りたくなるというもの——
 ルーマニアから来たベルチャSQ の4人が届けてくれた新録音は、鮮烈なみずみずしさと勢いがありながら同時に底知れぬ深みをもえぐり出してみせ、何度聴き確かめてもその深みを隅々までとても知り尽くせない、そういう侮りようのない魅力がひしひし伝わってくる「本物」だからこそ、世界一耳が肥えている部類に入る日本のクラシック・ファンの方々にも支持されているのだと思います。
 


ZZT343
(国内盤)
\2800+税
インマゼール/「展覧会の絵」
 ラヴェル(1875〜1937):
  ①マ・メール・ロワ 〜子供のための五つの小品
  (管弦楽による組曲)
 ムソルグスキー(1839〜1881)/ラヴェル編:
  ②展覧会の絵
ヨス・ファン・インマゼール指揮
アニマ・エテルナ・ブリュッヘ
ZZT343
(輸入盤)
\2400→\2190
(日本語解説なし)
 「古楽器演奏」が20世紀を探りつつあるのは、もはや当たり前...ならばなぜ、今までこの傑作を古楽器で世に問える鬼才がいなかったのか?!
 あらゆる刺激を込めて鬼才インマゼールの探求と挑戦は続く——春の話題をさらうこと間違いなし、超・注目盤!

 F−X.ロト指揮するレ・シエクルの『春の祭典』ピリオド解釈が話題を呼んだのは、この作品の初演100 周年記念年のことだったか——
 そう、時代は今や21 世紀。20 世紀は「前世紀」であり、あらためて問い返すべき未知の世界。世紀前半には録音物も残っているとはいえ、とくにオーケストラの音、ステージ上で演奏されていた響きを鮮明に収録できる時代ではなかったわけで、作曲家たちが思い描いていたであろう響きを徹底的に分析・検証し、古楽器演奏のノウハウを生かして当時の響きを探るということが、もっとなされてもよいはずなのです。
 こうしたことにいちはやく気づいていた異才のひとりが、古楽大国ベルギー屈指のピリオド楽器オーケストラ、アニマ・エテルナ・ブリュッヘを率いるヨス・ファン・インマゼール——フォルテピアノ奏者として頭角をあらわし、モーツァルトのピアノ協奏曲の古楽器録音もかなり早くから体系的に行っていたうえ、シューベルトの「冬の旅」やドビュッシーのピアノ曲など、“当時の楽器”での演奏があまりなされていなかった分野にどんどん切り込んでゆき、Zig-Zag Territoires レーベルに来てからもチャイコフスキー、リスト、プーランク...と、ロマン派後期以降のオーケストラ世界をどんどんピリオド楽器で検証・再提案しつづけてきたこの驚くべき古楽器系指揮者が、新たに問う新譜で手がけたのはなんと...ムソルグスキーの『展覧会の絵』、ラヴェル編曲版!
 ラヴェルがこの作品を編曲したのは1922 年、今とはいろいろな点でオーケストラの演奏習慣が違っていた頃でもありますが、インマゼールは常日頃から古楽器演奏で共演を続けているオーケストラの俊才たち(欧州古楽界きっての多忙な面々ばかり!)とじっくり作品解釈を突き詰めていったようで、使用楽器に関する銘記はないものの、冒頭のトランペットから明らかに何か古色蒼然、確かな知見に基づいて楽器選択がなされているであろうことを強く感じさせる響きが聴こえてくる... そして「只者ではない!」という確信は、だれしも「こびと」にさしかかったあたりで痛烈に感じると思います。
 のそっと独特のリズム感、不気味なまでのオーケストラの共感—-解釈が周知徹底されているであろう統一感で、驚くべきサウンドが次から次へとくりだされるさまは、まさにこの異才ならではの音作り!ヴィブラートの使い方、絶妙なパッションの盛り上げ方、聴きどころがいたるところにあり、この演奏そのものを早く検証していただきたいところ!
 併録の「マ・メール・ロワ」のえもいわれぬ不思議な優美さも一聴に値——指揮者自ら執筆にあたった解説の全訳付、この春いちばんの注目盤!!
 


ZZT340
(国内盤)
\2800+税
マリアンヌ・ミュレール
 バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのための「四つの」ソナタ

  ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
   1) ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ト短調 BWV1029
   2) ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ト長調 BWV1027
   3) ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ニ長調 BWV1028
   4) ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ト長調 BWV1019
     (ヴィオラ・ダ・ガンバによる演奏)
マリアンヌ・ミュレール(ヴィオラ・ダ・ガンバ、ヴィオラ・バスタルダ)
フランソワーズ・ランジュレ(チェンバロ/ドレスデン宮廷1739 年モデル)
 知る人ぞ知る、とてつもないフランス古楽界の重鎮ふたり。夢の顔合わせは、もう比類ない結果!
 あまりに美しいヴィオラ・ダ・ガンバのしなやかさ、繊細なチェンバロの音設計——
 これを聴かずして、21世紀のバッハ演奏は語れない。編曲含め、周到すぎる至芸の世界!

 フランスは今や誰もが知る古楽先進国なのですが、そうなったのは比較的最近のこと——1980 年代までは、先進的かつ熱心な“先人たち”の地道な努力があり、その地盤のうえでウィリアム・クリスティ、“パリの”ヘレヴェッヘ、マルゴワールらの快進撃が始まったのでした。そうした過渡期にも確かに自分の道を見据え、まだまだ世間の目がバッハやヴィヴァルディら、比較的コンサヴァティヴなクラシック・ファンにも通用するビッグネームの傑作の歴史的解釈にばかり集中していた当時から、“クープラン以前の”フランス・クラヴサン楽派の祖シャンボニエールの名品をあざやかに弾きこなしていた生粋のフランス派の古楽鍵盤奏者が、本盤のフランソワーズ・ランジュレ——彼女の活躍はしかし、遠く海をへだてた日本の熱心な古楽ファンにも確かに伝わっており、ほとんど録音物が入手しづらかった20 世紀末から、数少ない貴重なCD 録音はカルト的人気を誇っていたものでした。
 そしてそのかたわら、フランスきっての隠れ古楽拠点・南仏リヨンで彼女とともに活躍、フランス人のみならず日本や世界各地の後代のスーパープレイヤーたちに薫陶を授けてきたガンバ奏者が、マリアンヌ・ミュレール!!Zig-Zag Territoires にも名盤がいくつか眠っていますが、古楽の世界では(商業ベースの広告戦略にはほとんど乗っていないにもかかわらず)実力ひとつで世界各地に熱狂的信奉者を増やしてきた彼女たちふたりの名匠がいま、なんと満を持して「バッハ晩期のあの傑作群」を録音してくれたのです!
 ご存知のとおり、ヴィオラ・ダ・ガンバはバッハの時代ほとんど廃れかかっていた古い楽器ですが、我らが「音楽の父」はこの楽器に独特の愛着をみせ、『マタイ受難曲』のクライマックスでも効果的に使ってみせただけでなく、自らの作曲技芸の総決算に入った晩年、自らの室内楽作法を総括すべく3曲のソナタを書いたときにも、まさにこのガンバを使用楽器に指定したのです。
 なぜか当時フリードリヒ大王の宮廷でガンバが偏愛されていた、という背景もありつつ、だったのでしょうが、チェンバロ(鍵盤)奏者の右手をひとつの楽器に見たて、奏者ふたりで三重奏的な音楽内容を綴ってゆくこれらのソナタは、ガンバ奏者にとっても、その響きを愛する音楽愛好家にとっても、まさにバロック後期の至宝とも言うべき存在。
 ワンポイント録音的発想による自然派サウンドでも知られるZig-ZagTerritoires レーベルは、リュビモフ、インマゼール、バンキーニ...といった音響解釈へのこだわりが強い古楽奏者たちにも愛されてきたところ、今回もその徹底したナチュラルな音響再現が弓の返しのニュアンスや微妙な空気感まで収めきって、実に聴きごたえある聴覚体験——そしてその万全のコンディションで味わう名匠二人の至芸の、なんと自然で磨き抜かれていることか...!間違いなく、ガンバの導師クイケンやサヴァール、その後の並居る異才たちの名盤を堂々おびやかす傑作解釈といえます。
 ヴァイオリン作品をガンバで弾いたBWV1019 のソナタも、はじめからこの楽器が想定されていたのでは...?と思わせるほど、自家薬籠中のあざやかな解釈で自然に仕上げてみせています。

マーキュリー(値下げ再発売)

国内仕様盤(すべて日本語解説付)
※日本語オビ・解説付きの国内盤仕様ですが、日本語解説は原文全訳ではなく、
読みやすい文章量にまとめたかたちでお届けいたします。


GRAMOLA


GRML98981
\2500+税
ドヴォルザーク:チェコ組曲(八重奏版)/ベートーヴェン:七重奏曲op.20
 ベートーヴェン:七重奏曲 op.20/
 ドヴォルザーク:チェコ組曲
  (ウルフ=グイード・シェファーによる八重奏版)
ヨーロピアン・チェンバー・プレイヤーズ゛(EU青少年管弦楽団メンバー):
ジョルト・ティハメール・ヴィションタイ、
エイミー・カーディガン(vn)
ラファエル・ハントシュー(va)
コルネリア・ブルクハルト(vc)
ベンジャミン・カニンガム(vc)
トーマス・レッセルズ(cl)
ポヴィカス・ヴビンゲリス(fg)
アルフレード・バレラ(hr)
日本語解説付
 4種類の弦楽器にクラリネット、ファゴット、ホルン。7種類の異なる楽器を使うユニークな編成のためにベートーヴェンが七重奏曲を書いたのは、彼の交響曲デビューとほぼ同じ頃のことでした。全6楽章からなる、モーツァルト時代いらいのディヴェルティメント(娯楽音楽)に通じるこの音楽こそ、彼が中欧の音楽伝統のまっただなかで音楽活動を続けていたことの証です。
 本盤ではそのあとに、牧歌的で伸びやかな楽想と健康的な響きが魅力のドヴォルザーク中期の逸品「チェコ組曲」を収録——ベートーヴェン作品とほぼ同編成(第2ヴァイオリンが加わるのみ)にアレンジされた版で、両作品の親和性とみずみずしい作品美を際立たせる欧州屈指の名手たちにも脱帽。
 こういう充実したアルバムを世に送り出せるのも、音楽の都の只中に本拠をおくGramolaレーベルの慧眼あればこそ!
 

GRML98939
\2500+税
クラリネットのさまざまな「顔」〜古典派・近代・そしてジャズ〜
 ①モーツァルト:クラリネット協奏曲(サラモン編曲による室内版)
 ②プーランク:クラリネットとピアノのためのソナタ
 ③マイク・ガーソン(1945〜)「ジャズ変奏曲、バラードとジャズ・エチュード」
ヴィルフリート・ゴットヴァルト(cl)
アンナ・ワーグナー(p)
リーボル・マイスル、
榎本麻衣子(vn)
ヨハンネス・フリーダー(va)
吉井健太郎(vc)
フランツ・シャーデン(cb)
日本語解説付
 クラリネットは18世紀後半のウィーンで突如人気を得て以来、クラシックの世界でも、また大衆音楽の世界でも、つとに愛されてきました。ウィーン交響楽団で40年も首席をつとめた名匠ゴットヴァルトが同オケの実力派たちと刻んだ待望のソロ盤は、モーツァルトの傑作協奏曲の室内楽版(古典派)、プーランクの傑作ソナタ(近代)、デヴィッド・ボウイとの共演でも知られる米国ジャズ界の大物による新作(ジャズ)...と、この楽器の多面性を説きあかす名演の連続。
 しなやかな響きはウィーン生粋の味わい...というところでしょうか?頼もしくも聴き深めがいのある、視野の広がる1枚。
 

GRML98810
\2500+税
ウィーン・ユーバル・トリオ
 モーツァルト:
  六つのソナタKV10-15(1764)(鍵盤、フルート、チェロのための)
 フンメル(1778-1837):ロシア民謡「美しきミンカ」による変奏曲op.78
ウィーン・ユーバル・トリオ:
ハンス・ギスラー=ハーセ(フラウト・ダモーレ)
エーヴァ・ラントカンマー(vc)
サラ・ブライアンズ(p)
日本語解説付
 ザルツブルク生まれの天才少年モーツァルトが、父に連れられ渡英していた8歳の頃、ロンドンで英国王妃に捧ぐべく書いた6曲のソナタは、チェンバロとフルートかヴァイオリンが参加必須、これにチェロを添えてもよい、という編成。同じく天才少年として、成人したモーツァルトに弟子入りしたフンメルの傑作は、ほのかな東の香り、民俗情緒のにじむ名品。どちらもチェロ入りトリオ編成で、楽都ウィーンの超ヴェテラン奏者たちが惚れ惚れするような確かな解釈で聴かせてくれます。これぞウィーン室内楽。
 しかもフルートは中低音域が美しいフラウト・ダモーレを使用...ふわっと味わいある響きに「さすがひ」と唸る要素満載の極上室内楽盤なのです。


ARCO DIVA


UP0107
\2500+税
チェコの弦、新たな世界へ 〜ヤナーチェク、エネスク、バルトーク、マーハ〜
 ①マーハ(1922〜2006):悲歌
 ②ヤナーチェク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
 ③エネスク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番 ヘ短調 op.6
 ④バルトーク:ルーマニア民俗舞曲集(セーケイ編)【紹介】
マルティナ・バチョヴァー(vn)
アレクサンドル・スタリー(p)
日本語解説付
 技巧的な要素の多いソナタや組曲を選び、磨き抜かれた仕上がりのディスクを刻むということは、ヴァイオリニストたちにとっては決して生易しいことではありません。なにしろ、ライヴァルは世界中にいるのですから...
 しかしチェコ国内を拠点に活躍するバチョヴァーのソロ・デビュー盤は、中欧の演奏家たちは(ポートレートの美しさをある意味で軽やかに裏切る)本格派の演奏ができないと、そもそも録音をしないのだ...とあらためて気づかせてくれる充実度。「東」「近代」に特化した3傑作の選曲に、チェコ現代の巨匠による小品をひとつ...選曲も筋が通っています。
 

UP0031
\2500+税
パルドゥビツェ・チェコ室内フィル
 ①ドヴォルザーク:弦楽セレナード ホ長調 op.22
 ②チャイコフスキー:弦楽セレナード ハ長調 op.48
レオシュ・スワロフスキー指揮
パルドゥビツェ・チェコ室内フィル(弦楽合奏)
日本語解説付
 これぞチェコの弦。
 日本への来日も相次ぎ、音楽大国チェコの名門オーケストラやオペラハウスとも、また東京都交響楽団やセントラル愛知交響楽団など日本の楽団とも名演をくりひろげている名匠スワロフスキーは、1997〜2009年にはプラハの歌劇場で活躍をみせるかたわら、同国屈指の頼もしき室内楽団、パルドゥビツェ・チェコ室内フィルの首席指揮者をしていました。
 この時期にチェコのArcoDivaレーベルに刻んだ弦楽合奏の傑作2編は、チェコの弦楽演奏の伝統に裏打ちされた堅固さのもと、指揮者との確かな信頼関係のうえで伸びやかな調べの層を重ねる少数精鋭の弦楽合奏が実に心地よい名演。見過ごせない逸品なのです。
 

UP0154
\2500+税
スカルラッティのソナタを、ギター2挺で
 D.スカルラッティ:
  ①ソナタ ト長調 K.33 ②ソナタ ニ長調 K.208
  ③ソナタ ニ長調 K.209 ④ソナタ ト短調 K.466
  ⑤ソナタ ト短調K.467 ⑥ソナタ イ短調 K.417
  ⑦ソナタ ニ長調 K.491 ⑧ソナタ イ短調 K.238
  ⑨ソナタ イ短調 K.239 ⑩ソナタ ニ短調 K.30
デュオ「シェンプレ・ヌエボ」:
 マチェイ・フレムル、
 パトリック・ヴァツィーク(g)
日本語解説付
 スペイン語圏とゆかりの深い楽器ギター。しかしご存知のとおり、この楽器の世界的名手はなぜか中欧・東欧にも多いのですひブルガリアの異才デューシャン・ボグダノヴィチ、コンクール荒らしのポーランド人グジェゴシュ・クラヴィエツ...2007年から祖国チェコを皮切りにドイツ、イタリアなどギター・フェチ大国で大活躍中のデュオ「シェンプレ・ヌエボ」もその一員。バッハと同じ頃、スペイン宮廷に仕えたスカルラッティの傑作群は、ギターの響きとも相性抜群ひ彼らの痛快・緻密な音使いを堪能できる極上ギター盤です。

JB RECORDS


JBR014
\2500+税
パリの印象 〜フランス近代の室内楽、ポーランドの名手たち〜
 〔フォーレ、ドビュッシー、デュティユー、ボザ〕
 ①フォーレ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 第1番 イ長調 op.13
 ②ドビュッシー:チェロとピアノのためのソナタ
 ③デュティユー(1916〜2013):フルートとピアノのためのソナチネ
 ④ボザ(1905〜1991):フルートとピアノのためのアグレスティード(試験課題曲)
ヤン・クシェショヴィエツ(fl)
クリスティアン・ダノヴィチ(vn)
マルツィン・ミシャク(vc)
アンナ・ルトコフスカ=ショック(p)
日本語解説付
 プラシド・ドミンゴがとあるインタビューで「今はポーランドの音楽家がアツい」と強く語っていたのも記憶に新しい昨今。いうまでもなく、ショパンやヴィエニャフスキ、ルービンシュタインやシェリングらの時代から、ポーランドの名手たちの飛び抜けた技量は世界的に愛され、フランスやドイツの近代音楽にも刺激を与えてきました。フランス近代作品への比類ない適性を感じさせる名演4編、これらドイツをはさむ2大国の芸術世界が恋しくなる...Digipackジャケの美しさを裏切らない精妙解釈に陶然となります。
 

ARCANA
Mer-A374
\2500+税
モーツァルト:管楽合奏によるダ・ポンテ三部作 〜
 モーツァルト(1756〜1791):
  ①『フィガロの結婚』によるハルモニームジーク
  ②『ドン・ジョヴァンニ』によるハルモニームジーク
  ③『コジ・ファン・トゥッテ』によるハルモニームジーク
アルフレード・ベルナルディーニ(ob)指揮
アンサンブル・ゼフィーロ(古楽器使用)
 Erato古楽部門、Astreeの立ち上げ...欧州古楽界を支えた鬼才録音技師ミシェル・ベルンステンが生涯最後に創設したArcanaレーベル。
 2009年以降はイタリアのレーベルになり、着実にイタリア古楽界の才人たちとよい仕事をしてきた末、DHMなどメジャーレーベルでも活躍をみせた天才古楽器管楽バンド・ゼフィーロもその傘下に。2004年にAmbroisieでリリースされていた流麗・痛快な「管楽合奏によるモーツァルト三大歌劇」、ここに復活べ古楽器のツボを押さえた驚くべき名演、原作を知らなくとも、この古楽器の響きの艶やかさは必聴ですべ
 
CALLIOPE
(INDESENS!)

CAL1208
\2500+税
カルロ・テッサリーニ(1690頃〜1767):
  ①ヴァイオリンと通奏低音のための六つのソナタ op.14(1748・全)
  ②ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタop.2よりソナタ第2・3・4番
マルコ・ペドローナ(vn)
マルコ・モンタネッリ(cmb)
 1748年出版のソナタ集が本盤の中心。バッハが亡くなる少し前、マンハイム楽派やナポリ楽派が18世紀後半へ向けて音楽様式を洗練しつつあった頃、ヴェネツィアで修業を積んだ名匠テッサリーニの室内楽はアムステルダムで楽譜出版され、たいへんな人気を誇っていました。
 「現代楽器でバロック様式の演奏法を」という、イタリアで意外に多いタイプの演奏スタイルで奏でられる名曲群は、よどみなく洗練されたメロディセンスの魅力を幾倍にも増幅させてやみません。
 聴けば聴くほど細部のつくりにも感心させられる、テッサリーニこそ「今聴くべき作曲家」
 
PAN

PC10247
\2500+税
ベルナルド・パスクィーニ(1637〜1710):
 2台のチェンバロのためのソナタ集(1704年・手稿譜/全14曲)
アッティリオ・クレモネージ、
アレッサンドロ・デ・マルキ(cmb)
 活動休止したイタリアの伝説的古楽レーベルSymphoniaの貴重な音源、復活べビオンディ「四季」でイタリア古楽界が世界的にブレイクする少し前、明敏なる鍵盤奏者=音楽学者デ・マルキが、のちにルネ・ヤーコプスのオペラ企画の敏腕助手として名をなすクレモネージと録音したのは、ヴァイオリンの巨匠コレッリと同じ頃ローマ楽派を支えた偉大な鍵盤作曲家パスクィーニの異色作べ現存譜には、通奏低音が2パート書いてあるだけ。あとは鍵盤奏者自身が右手部分を創意あざやかに補わなくてはならないのですが、このようなバロック期特有の演奏習慣に通じた2名手はみごと、300年以上前の作曲家が課した挑戦に応え、装飾音の妙から合奏曲並の豊穣な音使いまで、チェンバロ音響芸術の多彩を縦横無尽に伝えてやみません。
 
CONCERTO

CNT2073
\2500+税
ラフマニノフ:ピアノ連弾のための作品集〜六手連弾曲を含む〜
 セルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943):
  ①幻想曲op.7(四手連弾版・世界初録音)
  ②六つの小品op.11③ロマンス ト長調
  ④イタリア風ポルカ
  ⑤チャイコフスキー『眠れる森の美女』から5章
   (ラフマニノフ編曲による四手連弾版)
  ⑥六手連弾のためのワルツ
  ⑦六手連弾のためのロマンス
マルコ・ソリーニ、
サルヴァトーレ・バルバタノ、
フランソワ=ジョエル・ティオリエ(p)
 19世紀末。若きラフマニノフは師タネーエフの紹介で、巨匠チャイコフスキーのバレエを津々浦々の家庭でも楽しめるよう、ピアノ連弾のために編曲する仕事をもらい、ロシア楽壇への足掛かりをつかみました。
 連弾という演奏スタイルが、日常に音楽を取り込むための手段だった時代...イタリアの名手デュオ、ソリーニ&バルバタノは一糸乱れぬアンサンブルで、その魅力を解き明かします。かつてEMIなどに名盤を刻んだ超・大御所のF-J.ティオリエが六手連弾で参加しているのにも驚愕!! 超絶技巧の外連をいやらしくなく昇華する「うたごころ」は、主役ふたりの歌心あればこそ。
 
CONCERTO

CNT2075
\2500+税
とめどない思い、再び 〜南のほうへ
 昼下がりの歌(M.D.プホル 1957-)
 アルフォンシーナと海(A.ラミレス 1921-2010)
 解き放たれた悪魔(H.フェルナンデス 1851-1886)
 ミロンガ(J.カルドーソ 1949-)
 バルガスのサンバ(E.ファルー 1923-)
 三つのメキシコ民衆歌(M.ポンセ 1882-1948)
 ヴィッラ31(G.ミルト 1972-)
 さらば友よ(J.C.サンデルス 1890-1935)
 宣教師たちの時代(F.ブスタメンテ 1777-1861)
  他 全23トラック
ジューリオ・タンパリーニ(ギター)
 クラシックのシーン最前線で叩き上げられた本格派の演奏家が、同時にジャンル越境も易々とこなすギターの世界は、演奏家仲間でも別ジャンルとの接点が多々。
 タレガやロドリーゴなど王道クラシック曲の音盤でもきわめて高い評価を博すタンパリーニは19世紀以来の南米の作曲家たちの名品を、ブラジル&南米のよりポピュラーなギター名曲とあざやかに組み合わせ、接しやすくも本格派な南米アルバムを提案べ米国系ポピュラーとラテン系現代曲からなる『とめどない思い』に続く越境型名盤です。
 
CONCERTO

CNT2062
(2CD)
\3300+税
ペシェッティ:九つの鍵盤ソナタ(1739)〜古典派前夜、あでやかなチェンバロ音楽〜
 ジョヴァンニ・バティスタ・・ペシェッティ(1704〜1766):
  『チェンバロのためのソナタ集』1739年ロンドン刊(全9曲)
フィリッポ・エマヌエーレ・ラヴィッツァ(チェンバロ/タスカン1769年オリジナル)   
 機構上制約の多いチェンバロ音楽の技芸の経験が積み重ねられ、極度なまでに洗練されていったのが18世紀。ピアノ発明前夜の時代、巨匠ポルポラの協力者として指揮者=鍵盤奏者としてロンドンで活躍したヴェネツィア出身のペシェッティは、同時代のスカルラッティの単一楽章形式とは違う、古典派を予感させる全3楽章で艶やかなソナタを残しました。
 豊潤さと切れのよさを兼ね備えた美音がたまらない、18世紀フランス・モデルの楽器で、ヴィヴァルディとモーツァルトの間をゆくロココ風の歌心・様式美を堪能させてくれるのは、こうした「古典派前夜のチェンバロ音楽」のエキスパートP.E.ラヴィッツァべ チェンバロ音表現の極致、様式感と多様性、ありそうで意外にない「ロココの鍵盤独奏ソナタ」、少し聴いたらCD2枚分聴き確かめたくなる魅力。



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