アリア・レーベル第2弾
クレンぺラー&フィルハーモ二ア管/ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」
ARIA AR 0002
1CD-R\1700
クリップスのチャイコフスキーの交響曲第5番で幕を開けたアリア・レーベル。
第2弾はクレンペラーとフィルハーモニアによる「運命」。
本当は第1弾で出すつもりだった。何はともあれどうしてもこの曲を、そしてこの演奏を早く出したかったのである。
・・・「運命」を聴くにおいて、絶対にはずせない演奏。
人類が到達した最高の芸術のひとつ。
今回本当に久しぶりに聴いたら、昨今の古楽器的爽快演奏を聴きなれた耳には随分古色蒼然、前世紀的印象を受けた。
こんなにも傍若無人に悠然たる演奏だったかと唖然とした。
しかし聴き終わるころには、この演奏が鳴り響いた時代の空気が部屋に充満し、最近聴いていた音楽は一体なんだったんだろう、となかなか現実に戻れなかった。
近頃はクラシックの敷居を下げることに熱心な音楽家も多いようだが、この演奏を聴いて本来クラシックがどういうものかもう一度考えてほしいと思った。
聴き終わったあと、生命力に満ちた「怒り」のような感情が全身にみなぎって離れない。
大胆で自信たっぷりの真っ向勝負。
濃厚でエネルギッシュな生命力。
厳格で敬虔な緊張感。
指揮台の上にはクレンペラー、オーケストラの背後にはベートーヴェン・・・。
この両者が仁王立ちしてこちらを凝視している中、まるまる40分間この音楽を浴び続けるのだから、聴き終わったあと人間が変わってしまっても不思議ではない。
ご存知のように70代を過ぎてようやく全盛期を迎えようとしていたクレンペラー。
そんなときに抑鬱症が彼を蝕み、さらに寝タバコが原因で重度の火傷を負う。
瀕死の重唱だったらしく、回復までに1年がかかった。
しかしその病床のクレンペラーに、稀代の音楽プロデューサー、ウォルター・レッグはフィルハーモニア管との終身契約を申し出る。
1959年8月、クレンペラーはそれを受諾し、同楽団初の常任指揮者の座にも就くことになる。
するとどうだろう、精神を病み、重度の火傷を負ったはずの70代の老人は、まるで若者のようにあっという間に回復。
何事もなかったかのように大曲の録音に挑むようになる。
そう、これはそのときの録音なのである。
聴いてみてほしい。
生命力に満ち満ちた、ほとばしるようなエネルギー。
文字通り満身創痍で1年近く床に臥していた老人が放った音楽には思えない。
人間にはこんな力があるのである。
原盤は12inch Columbia SAX2373。
結構広がり感もあるし低音も響くしARDMOREの復刻状態は想像以上にいい。が、そうはいっても限界はある。ビリビリいうところもたまにあるので、そこのところはご理解ください。
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