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こんな贅沢な時間を味わいながら死んでしまえたらどんなに幸せだろう
ミケランジェリが目の前で弾いているときと同じ気持ちになれる稀有なCD

ミケランジェリ/ショパン・コンサート イン・プラト
DIAPASON DRCD79 1CD\2400→\1290
〜2/18(日)・・・でも在庫限り



 ああ。
 初めてミケランジェリが目の前で弾いているときと同じ気持ちになれるCDに出会えた。

 ミケランジェリの演奏を間近で見た人は、誰でもあの魔術のような雰囲気に息を呑んだと思う。
 これまで多くのピアニストのコンサートを聴いて観てきたが、あんな切れるような緊張感とあんな夢のような幻想体験を味あわせてくれたのはミケランジェリだけである。
 ミケランジェリの狂信的な信奉者ではないが、今でも目をつぶればあの日のコンサートの音が聴こえる。

 ただ、CDではそこまでの奇跡的な時間を味あわせてくれることはない。彼のCDには立派で素晴らしい演奏の録音がたくさんある。本当にどれもすごいと思う。
 だが、あのコンサートで体験させてくれた、聴いている人を魔術にかけてどこか遠くに連れ去ってしまうようなことは、さすがにない。
 バチカン・ライヴやそれ以外のいくつかのアルバムでは、もう少しで催眠にかかりそうなのに、それでも遠くまで連れて行かれることはない。

 だから今回のプラト・ライヴもそれほどの期待はしていなかった。
 貴重な録音とはいえ、さすがに40年も前の録音。
 遺族や現地の人たちにとってはなんだか特別な録音らしいが、そこまでの期待はできない。

 実際サンプルを送ってもらっていきなり始まった「幻想曲」は、予想以上に音が悪く、「ミケランジェリを聴くにはちょっと辛いなあ・・・」と思った。
 ただ演奏はすばらしい。変なミスタッチはあるけれど。

 ・・・ところが、ピアノ・ソナタ第2番の第3楽章レント。
 その開始2分、中間部が始まって、状況が一変した。

 あのミケランジェリの演奏が始まったのである。
 あの魔術が始まったのである。

 その瞬間からだが硬直して、思考が止まった。
 もうなんともどうにも表現しようがない。
 夢のように自在なテンポ、幻の世界から聴こえてくる音色、闇に吸い込まれそうな弱音。
 なにより催眠状態で起立させられているような不思議な緊張感。

 まさにあのコンサートのときとまったく同じ。

 事実、静寂のしじまに観客たちの沈黙の興奮が聴こえる。
 あのときの店主と同じ、彼らも今「こんな贅沢な時間を味わいながら死んでしまえたらどんなに幸せだろう」、と思っているのだ。

 あのコンサートから15年あまり。
 こういうCDをずっと探していたが、その一方で絶対に不可能と思っていた・・・。

 その感動は、あとから登場するバラードとポロネーズでもほぼ同じような雰囲気で体験することができる。
 だがソナタの第3楽章の異常空間は、絶対的に特別。
 どうか心して、そのつもりで聴いてください。(「やっぱりクラシックは死なない!」より)





DIAPASON
DRCD79
\2400→\1290
ミケランジェリ/ショパン・コンサート イン・プラト
 ショパン:

  幻想曲へ短調op.49、前奏曲嬰ハ短調op.45、
  ソナタ第2番変ロ短調/
  マズルカヘ短調op. 68-4/嬰ト短調op. 33-1/変ニ長調op. 30-3/
  嬰へ短調op. 59-3/
  バラード第1番ト短調op.23-1/
  アンダンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズop. 22
アルトゥーロ・ベネデッティ=ミケランジェリ(P)

 イタリアのトスカーナ州、プラトは、フィレンツェから20キロ離れた美しい街だが、ここのテアトロ・メタスタシオは、美しい内装、外観を保つ名門劇場で、ミケランジェリはこの土地を愛し通算で10回のリサイタルを開いた。アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリとプラトの縁は、今なお高名なロベルト・フィオラヴァンティ(1948年にプラート・コンサート協会を設立し、組織)との個人的な友好関係によって生まれた。当演奏はファン垂涎のオール・ショパン・プログラム。全盛時の迫力と音色の輝かしさが見事に記録されている。
 演奏から33年後の2000年に、当演奏はアーカイヴから発見され、慎重な音源修復がなされ、ミケランジェリ夫人、ミケランジェリのスタッフによる音質の承認を得て、地元銀行のスポンサーシップを得てCD化され関係者向けに配布された。日本代理店は現地代理人を通じ、一般発売化の交渉を長期に渡りしてまいりましたが、DIAPASONオーナーの病気や何よりもミケランジェリ未亡人、ジュリアナ女史が今年87歳という高齢であり、静かな生活を欲しており、こうした未発表ライヴ録音のCD化に対しては極めて慎重な姿勢だったため実現は 困難を極めました。ですから近年、他レーベルが巨匠のライヴ録音をいくつかCD化している件については、その正当性について首を傾げざるを得ません。今回のリリースは、私家版の体裁に準拠する約束と音質について夫人の承認がある音源ゆえに修復、改変を一切行わないことを条件にDIAPASONが特別に許されたものです。

―許光俊氏による日本語ライナーノートより―
 ここでミケランジェリが奏でているのは、私たちがショパンというと連想する類の音楽とは著しく異なると言うしかないだろう。最初の「幻想曲ヘ短調」の冒頭からして、リズムの正確さ、明快さが際だつ。北ヨーロッパ的な霧や闇の雰囲気、あるいは幻想性は微塵もない。ミケランジェリはあらゆる音の響きや動きを手に取るようにわからせる。音符のひとつひとつが、あたかも地中海の明るい光に照らされているかのようにくっきりと見える。ハイドンのソナタを聴いているかのような錯覚すら起こさせよう。とはいえ、注意深く聴くと、この明るさのうちにも実に微妙、精妙な陰影が施されていることに気づかされる。和声的な響きの変化をこれほどまでに明瞭にさらけ出した演奏は、ほとんど他にないのではないか。まるでプリズムによって分解された光の七色を見せられているようだ。

1967年6月28日プラト・メタスタシオ劇場ライヴ・ステレオ





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