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スタッフ : NAXOSには多くの功績がありますけど、そのうちのひとつはオムニバス小品集をクラシック・ファンに定着させたことですよね。
店主 : そうだっけ?
スタッフ : だって、ほら北欧系の管弦楽小品集とか、イギリス弦楽小曲集とか、NAXOSのオムニバスものってすごく定評あるじゃないですか。
店主 : 初心者向けオムニバスものはどこのレーベルでも売れてるよ。
スタッフ : いや、初心者向けじゃなくて、本格的なクラシック小品集。
店主 : ああ。既存の音源の寄せ集めじゃない、オリジナルに企画・録音された小品集アルバムね。
スタッフ : そうですう。
店主 : ただNAXOSも寄せ集めアルバムはあるけどね。小品集でも指揮者や演奏団体がひとつだけだったらオリジナル・アルバム。演奏家に複数の名前が出てきたら寄せ集めアルバム。
スタッフ : まあ、そんな内輪の話はいいとして。やっぱりNAXOSの小品集アルバムで一番人気があるのは「イギリス弦楽小曲集のシリーズ」でしょうか。
店主 : 第6集まで出てるんだっけ?
スタッフ : はい。・・・もしどれか1枚薦めるといえばどれですかね。
店主 : うーん。どれも同じような感じの曲だからな。罪のない天国的で幸福な曲。ちょっと少女趣味っぽい。
スタッフ : というか、これはそういう作品を集めたシリーズですから。
店主 : だったら、どれもいっしょだろ?・・・と言いたいとこけど、実はときどきグッとくる名曲があるのも確かだ。
スタッフ : たとえば?
店主 : 第1集だったら・・・ヴィッド・ライアンの「小組曲」。
大作曲家目白押しの第2集ならブリッジの「横町のサリー」。
第3集は傑作が多いけど、マルテッリの「からかい」、フィンジの「前奏曲」、「ロマンス」。
第4集ではホープの「モーメンタム組曲」。
レア作品ばかりの意欲的アルバム第5集からは、ルイスの組曲「ナヴァラの娘」とアイアランドの「ダウンランド組曲」。これらはなかなか聴かせる。
スタッフ : なんですか、クールなこと言ってずいぶん熱心に聴いてるじゃないですか。実はファンなんでしょう?それならそうと・・・。
店主 : うるさい。
スタッフ : それにしても有名な作曲家がいませんね。エルガーやホルスト、ディーリアスやヴォーン・ウィリアムズとかも入ってたと思いますが。
店主 : こんな小品集でビッグ・ネームを意識するなんて愚の骨頂。こういうアルバムは、人知れずひっそりと咲いているような秘曲を聴くことにこそ醍醐味があるんだ。
スタッフ : 失礼しました。
店主 : まあ、だまされたと思って第6集のカースの「ウィントン組曲」の『SONG』と、第4集のブリッジの「2つの小品」の『Valse - Intermezzo』を聴いてみろよ。わが身の罪をざんげして人生やり直そうと思うに違いない。
スタッフ : ぜひそうしてください。
店主 : うるさい。
ただ、イギリス近代の弦楽作品にこの2曲ほどの悲哀やロマンを求めないという人もいるかもしれんからな。軽くて上品な雰囲気を味わえればいい、という人はサイコロを振って出た目の集を買えばいい。正直どれもレベルが高くて、まず外れはないから。
スタッフ : やっぱりこのシリーズ好きなんでしょう?
店主 : うるさい。
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