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ロシアの若手チェロ奏者スタドレルのデビュー・アルバム
チェロ小品集
これがすこぶる感動的なアルバムだった
NORTHERN FLOWERS


 

 ロシアの若手チェロ奏者スタドレルのデビュー・アルバム。
 なにげなく聴いたのだが、これがすこぶる感動的だった。

 スタドレルは1991年サンクト・ペテルスブルク生まれの若手。
 F.ヘルメルソンやD.ゲリンガスらに師事、既に数多くの国際コンクールに入賞。
 ソリストとしてもサンクト・ペテルブルグ・フィルやマリインスキー劇場管弦楽団との共演のほかヨーロッパ各地の音楽祭にも参加している。
 2015年には来日も果たしているのでその演奏に接した方もいるかもしれない。

 そのスタドレルのチェロ小品集なのだが、・・・これがとても深く、とても熱く、とても優しい1枚だった。
 「白鳥」や「エレジー」、「ヴォカリーズ」などの超有名曲もあるのだが、おそらくスタドレルの愛奏曲なのだろう、珍しい曲が散りばめられていて、それがまあひとつひとつ素敵なのである。
 
 グラズノフの「エレジー」、チャイコフスキー「眠れる森の美女」からのソロ、デシャトニコフの「変奏曲」、ヴェルディの「群盗」から前奏曲、ポッパーのハンガリー狂詩曲など、スタドレルの思いいれたっぷりのチェロ秘曲が並ぶ。
 とくにヴェルディの「群盗」から前奏曲なんて、涙が出そうなくらいヴェルディ!ただのチェロ編曲だろう、なんてとんでもない!この人、歌心があるのである。ヴェルディが分かっているのである。

 そしてシベリウスの正真正銘秘曲「マリンコニア」。
 この曲を入れるというところで、この人がこのアルバムに込めた想いが分かる。

 マリンコニア・・・「メランコリー」・・・憂鬱・・・。シベリウスが亡くなった娘のために書いたとも言われている。
 シベリウスの「悲しいワルツ」が「泣き度72点」、「春の歌」が「78点」だとしたら、この曲の「泣き度」は「88点」。
 シベリウスの全作品の中で最も悲劇的で痛切な曲。
 胸をかきむしるように狂おしい部分が何度も出てくる。
 とくに最後は涙なしではちょっと聴けない。そこまで切なさ哀しさを盛り上げないでいいだろうというところでもう一回盛り上げる。
 これを書いたときのシベリウスの気持ちを思うとちょっと辛い。

 そんなアルバムの最後に・・・メシアンの「イエスの永遠性への賛歌」。

 この人、頭いいし、優しい。

 デビュー・アルバムでここまでの水準のものを作り上げたスタドレル。きっとすばらしいチェリストになっていくだろうと思う。
 名手ヘルメルソン、ゲリンガスに師事したというのはだてではない。






 若手と思えない深々とした思い。ラフマニノフのヴォカリーズ。
https://youtu.be/qAya4Zwf5vw





NORTHERN FLOWERS
NF/PMA9979
\2600
「アレクセイ・スタドレル〜チェロ・リサイタル」
 グラズノフ:リストへの追憶へのエレジー/
 チャイコフスキー:感傷的なワルツ,
  眠れる森の美女からのソロ/
 ラフマニノフ:ヴォカリーズ/
 デシャトニコフ:「家を手に入れた」による変奏曲/
 ヴェルディ:「群盗」前奏曲/
 シベリウス:マリンコニア(メランコリー)/
 サン=サーンス:祈り、白鳥/
 フォーレ:エレジー/
 ポッパー:ハンガリー狂詩曲/
 メシアン:イエスの永遠性への賛歌
  (世の終わりのための四重奏曲より)
アレクセイ・スタドレル(Vc)、
カリーナ・スポソビナ(Pf)


録音:2008年





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