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再生産!
SCRIBENDUM
ムラヴィンスキー・イン・モスクワ
1965&1972
(7CD)\7000→\4990

 
 かつて日本のクラシック業界を一斉風靡したSCRIBENDUM。
 過去の貴重な音源をライセンス取得して復刻するレーベル。
 日本の代理店と日本のショップ・バイヤーが知恵を出し合いメーカーに直接リクエスト、復刻の音源にまで口を挟み、納得した状態のものだけCDリリースするというこだわりのレーベルだった。
 このムラヴィンスキー・ボックスも「イン・モスクワ」ということで「1965年」と「1972年」に分かれて発売され、すさまじい売れ行きとなったベストセラー・ボックス。
 ただすぐに完売、多くのファンを悔しがらせた。

 しかしあまりの熱い要望に「1965年」と「1972年」をセットにして復活販売された。

 しかしそのボックスもあっというまに完売。さすがにもう復活はないと思われた。
 その「1965年」と「1972年」のセットがこのたび晴れて再生産されることに。


 これまであまり誉められたことのなかったムラヴィンスキーのメロディア復刻CDの音質だが、イアン・ジョーンズの復刻で音質も良好。

 前半の1965年録音といえば、ムラヴィンスキーの代表的録音として知られる「ルスランとリュドミュラ」序曲を始めとする管弦楽小品、そして賛否両論のシベリウス第7番、宇野功芳氏が「モーツァルト演奏史上に永遠に残る」といった不吉なほどに美しいモーツァルト39番、強靭極まりないスタイルで作品の極限を表現せしめた「弦楽器、打楽器とチェレスタの為の音楽」、おそるべき軍隊行進曲「ワルキューレの騎行」、そして壮絶なオネゲルの「典礼風」、と名演をあげだすときりがない。
 なにかあると「1965年の・・・」と言われる、ムラヴィンスキーの録音史の中でも特別な年である。
 後半の1972年も異常な燃焼度と相性の良さを見せるベートーヴェン、ブラームスといったドイツの大曲、そして数ある録音の中でも最も凄絶と言われる1972年1月30日のチャイ5と、こちらも名演目白押し。

 ただ、さすがに今度切れるとちょっと次はないような気がする。どうか今度はお見逃しなきよう。



 下の欄で、評論家の許光俊氏が「オレのクラシック(青弓社)」で取り上げていたこのセットについてのコメントを転載しておきますね。
 買いたくなります。
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SC 503
(7CD)
\7000→\4990
CD1
 ・グリンカ:『ルスランとリュドミュラ』序曲  1965年2月26日
 ・ムソルグスキー:モスクワ河の夜明け  1965年2月21日
 ・リャードフ:バーバ・ヤガー  1965年2月21日
 ・ショスタコーヴィチ:交響曲第6番  1965年2月21日
 ・グラズノフ:『ライモンダ』第三幕への前奏曲  1965年2月21日
 ・ムソルグスキー:モスクワ河の夜明け(別テイク)  1965年2月21日 
 ・リャードフ:バーバ・ヤガー(別テイク)  1965年2月26日
 ・ワーグナー:『ローエングリン』より第三幕への前奏曲  1965年2月
 ・ワーグナー:『ワルキューレ』よりワルキューレの騎行  1965年2月
レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 
エフゲニー・ムラヴィンスキー(指揮) 
CD2
 ・モーツァルト:『フィガロの結婚』序曲  1965年2月23日
 ・モーツァルト:交響曲第39番  1965年2月23日
 ・シベリウス:トゥオネラの白鳥  1965年2月23日
 ・シベリウス:交響曲第7番  1965年2月23日
 ・ワーグナー:『ローエングリン』より第三幕への前奏曲(別テイク)  1965年2月23日
 ・ワーグナー:『ワルキューレ』よりワルキューレの騎行(別テイク)  1965年2月23日
CD3
 ・ヒンデミット:交響曲『世界の調和』  1965年2月26日
 ・ストラヴィンスキー:バレエ音楽『ミューズの神を率いるアポロ』  1965年2月26日
CD4
 ・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲   1965年2月28日
 ・バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタの為の音楽   1965年2月28日
 ・オネゲル:交響曲第3番『典礼風』  1965年2月28日
CD5
 ・ベートーヴェン:交響曲第4番 OP.60  1972年1月29日
 ・ベートーヴェン:交響曲第5番 OP.67『運命』  1972年1月29日
 ・ワーグナー:『神々のたそがれ』~「ジークフリートのラインへの旅」  1972年1月26日
CD6
 ・ワーグナー:『タンホイザー』~「ヴェヌスベルクの音楽」  1972年1月27日
 ・ブラームス:交響曲第3番 OP.90  1972年1月27日
 ・ショスタコーヴィチ:交響曲第6番 OP.54  1972年1月27日 
CD7
 ・チャイコフスキー:幻想序曲『フランチェスカ・ダ・リミニ』 OP.32 1972年1月27日
 ・チャイコフスキー:交響曲第5番 OP.54  1972年1月30日
 ・ワーグナー:『神々のたそがれ』~「ジークフリートの葬送行進曲」 1972年1月26日
 ・ワーグナー:『ワルキューレ』~「ワルキューレの騎行」  1972年1月26日
イアン・ジョーンズ(リマスタリング・エンジニア)




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 許光俊氏が「オレのクラシック(青弓社)」より



(1965年セット)

 今度発売されるムラヴィンスキー・セットのサンプルを聴いてひっくり返らんばかりに驚いた。いまのところ私が聴いたのは1965年の演奏だけだが、これはたいへんなことになったと思った。

 いずれも、かねてから知られていたお得意のレパートリーである。それどころか、既出の演奏の再発売も多数含まれている。しかし、音質が信じられないほどいいのだ。とても同じ演奏とは思えないほどなのだ。細部が手に取るようにわかる。
 客席のノイズや雰囲気もクリア。まるで伝説のレニングラード・フィルをステージ間近で聴いているかのようだ。音質を向上させての再発売は昨今引きも切らないが、これほどまでに目覚ましい差違を示した例も珍しいに違いない。美女の身を隠していたヴェールがすべて剥ぎ取られたかのようだと言っても過言ではない。

 ソ連の録音水準は本来こんなに高かったのである。黙って聴かされたら、誰ひとりとして1960年代のソ連録音とは当てられないはずだ。とんでもない原テープが眠っていたものである。

 鍛えに鍛えたオーケストラの力業は、世界一と言い切ってもよい。カラヤンやショルティが技術を大衆を籠絡するために用いたのとは対照的に、ムラヴィンスキーは大胆にして繊細の極致をゆく。そのスリルには胸の鼓動を抑えかね、結局、1日で4枚をぶっ続けに聴いてしまうはめになった。

 リャードフの「バーバ・ヤガー」のカミソリのような切れ味。グロテスク。「ライモンダ」冒頭の激烈な一撃。火柱のような高揚。「ローエングリン」における火花の炸裂。いずれも最初の数秒で打ちのめされる。モーツァルト「交響曲第39番」メヌエット楽章の威厳。「トゥオネラの白鳥」の氷のような弦楽器。「弦打楽器とチェレスタのための音楽」の立体感。激流のような音のぶつかりあい。「典礼風」の酷薄と残虐。「世界の調和」の電撃的な音響世界。終結の圧倒的エクスタシー。いかなる感傷も捨て去って物理的な音の運動に賭けたショスタコーヴィチ。

 これらを聴けば、昔ムラヴィンスキーの生を聴いた人たちが、イチコロでやられてしまったわけがよくわかる。そして、やられなかった人たちが敬遠して遠ざかってしまった訳がよくわかる。かくも強烈な音楽には、無条件に征服されてしまうか、拒絶して遠ざかるか、ふたつにひとつしか対応の方法が残されていないのではないか。

 相変わらずクズのようなCDが無限に発売されているが、このセットこそ陳腐と凡庸の荒れ野に燦然と咲き誇った花でなくて何だろう。



(1972年セット)


 今度のアルバムで一番気に入ったのは、ワーグナー「タンホイザー」から抜いてきたヴェーヌスベルクの音楽。これはすごいぞ。青年・中年大喜びの官能的ネットリ演奏ではないが、思いの外弦楽器が柔らかい響きを出している。レニングラード・フィルはこんなふわふわした音も出せたのだ。まるでドビュッシーみたいな絶妙の弱音は陶酔的。かと思いきや、切れ味抜群の、渦巻く音響の乱舞も登場する。硬軟両極端をきわめた音楽に恍惚とする13分だ。これは危ない。こんなものを知ったら、聴くものがなくなっちゃう。

 「ジークフリートの葬送行進曲」ではまさに心臓をえぐるような低弦が聴けるし、ソヴィエトならではのワイルドなトランペットも脳天をつんざく。「ラインへの旅」で次々に音が沸騰していくような、あるいはグイグイ力ずくで迫ってくるような様子も壮観だ。とはいえ感情的には全然ウェットじゃないのはいつも通りだ。

 ベートーヴェンの交響曲第4番は、アルトゥスから出ている日本ライヴだってもちろん悪くないけれど、私はこちらのほうが好きだ。もっとシャープで、張りつめている。
 それより驚きは第5番のフィナーレ。音がぐんとよくなって、印象が変わった。音楽が火の玉になって飛んでくる。ものすごい力強さで疾駆する。他の誰とも違う演奏だ。ソナタ形式の論理性ではなくて、音の塊自体で圧倒するような演奏。この温度の高さは異常。

 チャイコフスキーの「フランチェスカ・ダ・リミニ」はムラヴィンスキーがすごすぎて、他の演奏家で聴く気がしない曲だ。さすがのスヴェトラーノフ先生も、この曲では足下にも及ばない。金管楽器も打楽器も、もはやサディスティックとまで言いたくなる衝撃力。それとともに得体の知れぬ不気味さが怖い。

 でもこのCDのあとで、腑抜けた現代の演奏を聴いていられるとしたら、それはあまりにも鈍感というものではなかろうか。鈍感の方が幸福だとは思うけどさ。






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