アリア・レーベル 第106弾
何か腹にイチモツある
ハンス・スワロフスキー&ウィーン国立歌劇場管
ブラームス:交響曲第1番
AR 0106 1CD-R\1700
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ものすごい人なのである。
シェーンベルクとウェーベルンに音楽理論を学び、R・シュトラウスとワインガルトナーに指揮法を師事した。
指揮者としてはウィーン響首席指揮者、グラーツ市立劇場音楽監督、ウィーン国立歌劇場の指揮者も務めた。
教育者としてはウィーン国立音楽大学指揮科の教授として活躍、門下にはクラウディオ・アバド、マリス・ヤンソンス、ズービン・メータ、アダム・フィッシャー、イヴァン・フィッシャー、ヘスス・ロペス=コボス、ブルーノ・ヴァイル、日本人では、尾高忠明や湯浅卓雄、矢崎彦太郎、大町陽一郎らがいる。
とんでもない人。
で、自ら指揮棒を執り録音もいくつか行っているが・・・この評価がすごい。
「その音楽は楷書的でしっかりしたものではあったが、あまり面白いものではなかった。」(指揮者のすべて)
「模範的な解釈で知られ、残された録音からもそうした芸風が伝わってくる。」(世界の指揮者名鑑866)
「尋常でないほど音楽の運びがぎくしゃくしがちな指揮者」(クラシックの聴き方が変わる本)
・・・要はボロカスなわけである。
つまらないと。
すごい役職を歴任し、弟子にもすごい人はいるが、ご本人の指揮はたいしたことない、と。
店主も昔この人について「多くの有名指揮者を育てながら、自身は名指揮者かただの凡人か判別つかぬまま今に至る伝説のひと。」とコメントしている。
ところがその後店主が聴いたスワロフスキーの録音は、ヘタウマの極致というような妙竹林な演奏ばかりで、怪獣アニメのような素っ頓狂な終わり方のマーラー5番、ちょっと危ういワーグナー管弦楽曲集、怪奇趣味的な幻想交響曲、ムード歌謡のようなチャイコフスキー1番・・・
ところが、それらのCDは現在ほぼ壊滅状態。
人気も知名度もないうえに評論家から「つまらん」と言われるのだからそれも仕方がない。先日ようやくワーグナーの「指環」全曲がCD化されたのは奇跡と言っていい。
なので、多くの人にこの指揮者をもう一度正当に評価してほしいと思い、今回彼の録音で最も有名なブラームスの交響曲第1番に登場願ったわけである。
・・・ところが、これ、残念ながらそれほどムチャはしてないし、それほど妙竹林ではない。
上記で言われているような「模範的・楷書的」要素が多分にある。
しかし評論家の片山杜秀氏曰く、
「出来の悪いロボットでも指揮したのかという風な、つぎはぎだらけのブラームス。
フレージングは異様で、スムースさがまるでない。切れそうなところが切れず、切れなさそうなところが切れる。テンポの変化も妙に人工的で、各セクションはバラバラに陳列されている感じ。
はて、この演奏をどう評価すべきか。単に下手ということか。いや、そんなネガティヴな判断を下してはシェーンベルクの弟子で、アバドやメータを育てた名指揮者教授のスワロフスキーに申し訳ない。
これはむしろ、ロマン派とは流麗とか重厚だとか、そういう世間の常識を打ち壊す、異化演奏の極致なのではないか。
そう考え出すと、この1枚はたちまち異様な輝きを帯びてくるのである。」(クラシック名盤大全)
そこまでベタ褒め(?)する勇気は店主にはないが、極端な個性はないものの、なかなか奥深いものを感じさせてくれる何か腹にイチモツある演奏であることは間違いない。
ということで、試しにどうぞ。
1950年代のフランス盤、音はあまりよくないです。
またスワロフスキーのブラームス交響曲第1番には、南ドイツ・フィル(詳細不明)との録音年不明の録音があるが、それとは別。
こちらのほうが古いです。
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