アリア・レーベル第115弾
男ミュンシュが大上段から振り下ろす
ミュンシュ&ボストン交響楽団
ドヴォルザーク:交響曲第8番
ARD 0115 1CD-R\1800→\1590
今から20年前、拙著「クラシックは死なない!(青弓社)」にこんな文章を載せた。
「ミュンシュのライヴはすごい。確かにすごい。だからよけいにボストンSOとのスタジオ録音はまるで腑抜けの優等生のように扱われることがある。
だがこの演奏は優等生でもかなりホネのある優等生である。隠された筋肉美と鋭利な知性を持った悪の美少年。あまり音楽本では取り上げられないが、こんなに整然としていながら人の心を乱す演奏はそうない。
ミュンシュはドヴォルザークの交響曲をこの1曲、この1回しか録音しなかった。しかし、この演奏だけで「ミュンシュのドヴォルザーク」は永遠に語り継がれていくだろう。だが不幸にもこの録音のことはあまり知られていない。
ミュンシュ一世一代のドヴォルザーク演奏である。」
ただその後単発CDは廃盤となり、数年後「86枚組大全集ボックス」で復活したがいまはそれも廃盤。これだけの名演が今は聴けないのである。
実はその後ARDMORE が「ASSR 3028」で発売したことがある(現在廃盤)。本当はアリア・レーベルで発売するつもりだったのだが、第1楽章の強奏部分の音割れがどうしても納得できず、最終リマスタリングの段階でリリースを断念し、それではもったいない、ということでARDMOREが音源を引き取って発売したのである。(その過程は「ASSR
3028」発売時にお伝えした通り)
ただ・・・往生際の悪い店主、どうしてもこの演奏のことをあきらめきれず、あれから数年たったいま、ARDMOREにもう一度リマスタリングをお願いした。「もう1回チャレンジしたい」と。
ARDMOREは再度リマスタリングしてくれたのだが、結果はやはり数年前と同じ。第1楽章の音が荒い。
これはアリア・レーベルで販売する水準ではない・・・と思った。
でも諦めたくなかった。
ARDMOREが廃盤の今、そしてほかのレーベルからも出てない今、この音源はアリア・レーベルで出しておくべきではないのか。
その思いが強かった。
結局その後何回リマスタリングをやり直してもらっただろう。とくに第1楽章は最低でも7回はやり直してもらった。
そうして最後にもう1回リマスタリングをすることで第1楽章の音はギリギリ及第点に到達した。それでも聴き始めは荒っぽく聴こえると思う。
なので今回は特別にアリア・レーベルとしては初めて特価で販売しようということになった。
一人でも多くの人に聴いてほしいので。
男ミュンシュが大上段から振り下ろす大ナタのような指揮棒。剛毅で勇ましく曲がったことが嫌いな、こんなドヴォルザークの交響曲第8番があってもいい。
終楽章の輝かしいファンファーレが始まるころにはすっかりこの盤に魅了されてると思う。
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