アリア・レーベル第128弾
あまりのすさまじさに聴き終わったあと涙目になる
アリーヌ・ヴァン・バレンツェン/1947年の「熱情」
ARD 0128 (1CD-R)\1800
1897年にアメリカで生まれ、幼くしてパリへ移住したアリーヌ・ヴァン・バレンツェン。
7歳でベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を演奏し、9歳でパリ音楽院に入学してマルグリット・ロンらに学んだ後、わずか11歳で第1位を取って卒業した(その史上最年少の記録はいまだに破られてない)。しかもその年同じく1位だったのがユーラ・ギュラー、そして2位がクララ・ハスキルだったというのだから尋常でない。
アリーヌ・ヴァン・バレンツェン、異常な天才といっていいと思う。
その演奏はズバリ自由奔放。
というか、ムチャクチャ・・・の一歩手前。
パリ音楽院で長らく教授活動をしていたというが、こんな人に教えられたら生徒は一体どういうことになるのか?(こういうことになる、といういい例がシプリアン・カツァリス。・・・なるほど。)。
さてそのバレンツェン、その音源はこれまでほとんどCD化されなかったのでその演奏を聴く機会は極めて限られていたが、ここで紹介するのはベートーヴェンの「熱情」を含むアルバム。
この1947年の「熱情」が異常。
とくに終楽章の異様な追い込みは、戦前のギーゼキング、ポリーニの1986年ライヴに勝る。
というか別次元。今まで聴いたこともないような異色の演奏。
途中など指のもつれなのかそういう解釈なのか分からなくなる。
聴いてると3回くらい椅子から転げ落ちると思う。
そして最後、彼女は自分勝手に突き進んで自爆を遂げる。あまりのすさまじさに聴いているほうは涙目になって口あんぐり。
こんな爆裂したベートーヴェンをおススメするとはアリアCDの店主はなんと悪趣味な、という人もいるいかもしれない。
そうかもしれない。
だが聴き終わったあと涙目になるような、そんな演奏は滅多にないではないか。
なんにしてもバレンツェン、おそるべき個性を持った怪物。聴いておいて損はない。
さらに後半には1952年の「ワルトシュタイン」と2度目の「熱情」を収録。
こちらはスケールの大きな演奏が聴ける。
あたかも、昔じゃじゃ馬だったお姫様が帝の地位について、貫禄ある女王になったかのような。
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