アリア・レーベル第130弾
悶絶必至、トスカニーニの爆裂演奏
ブエノスアイレスでの「第9」
ARD 0130 (1CD-R)\1800
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今から13年前、拙著「クラシックは死なない!」でも紹介していた、1941年7月24日、トスカニーニ最後のブエノスアイレス公演の「第9」。
悶絶必至のトスカニーニの爆裂演奏。これをアリア・レーベルからリリースできることになった。
音質は最悪の部類に入るが、なにせその演奏がすべてを吹き飛ばしてしまう。
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とんでもないものを聴いてしまった。1941年7月24日。トスカニーニ最後のブエノスアイレス公演。
トスカニーニの異常性を知るには格好の1枚と言っていい。当時のブエノスアイレスが音楽先進都市であることはわかるが、ここまで燃えるかトスカニーニ。
この激烈ぶっ飛びの第9を聴かされたら、いくらトスカニーニが過激な指揮者だったとわかっていたとはいえ、これまでのこの指揮者への認識を改めなければならなくなる。
しょっぱなからとても第9とは思えないテンションの高さ。ティンパニの強打は録音のせいかもしれないが、それにしてもその異常な推進力は正気の沙汰じゃない。
そしてオーケストラも狂ったような興奮状態。アンサンブルは崩壊寸前で、勢いに任せて次のパッセージにいくといった綱渡り。
こんなテンションで行ったらこれからどうなんるんだという心配をよそに、第2楽章ではさらに壮絶な地獄絵巻を展開し、激しいノイズを完全に打ち消す。山師が純朴な村人をだまして血祭りに上げているかのよう。
・・・これはただのオーケストラいじめではないのか。
トスカニーニ、何かいやなことがあったのか、それともとんでもなく嬉しかったのか、何かがなければこんなとんでもない演奏は生まれない。
ただ終盤にかけて理性を取り戻したのか少しノーブルな演奏に変質していく。が、第1,2楽章の異常性は、是非是非一聴の価値あり。こんな体験なかなかできない!
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実はこの1941年の春、トスカニーニはNBC交響楽団と喧嘩、決裂。このオーケストラをいったん辞任している。
なのでこの「第9」を指揮した7月は、NBC響とは契約を交わさずフィラデルフィア管弦楽団などに客演したり、自由気儘にしていた頃。
この演奏の時のトスカニーニもニューヨークを離れはるばる南米までやってきたわけだが、「おれはこんなところまで来ていったい何をしてるんだ」と憤懣やるかたない思いでこの南米の素朴なオーケストラに八つ当たりしていたのかもしれない。
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