CALLIOPEまさかの復活!
昨年惜しまれながら消滅した仏CALLIOPE。アリアCDでもその在庫を求め世界中の倉庫をあさって開催したのがこのセール。
そうしたらなんとINDESENS!レーベルに統合されてまさかの復活。かつての名盤はとりあえずは廃盤となるらしいが、新譜もすでに登場しているらしい。
今回紹介するのは、まずCALLIOPEの代表的アルバム、ナヴァラのバッハ無伴奏全曲(上記CALLIOPEセールでも取り上げてますが)。そして最新アルバム2点。
これからどういう展開を見せるのかまだ不透明な部分はあるが、期待したい。 |
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CAL3642
(国内盤・2枚組特価)
\3150 |
しなやかさと深みで心に残る歴史的名演
ナヴァラ〜J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)
『無伴奏チェロ組曲』BWV1007〜1012
《CD I》 《CD II》
第1番ト長調 BWV1007 第2番ニ短調 BWV1008
第3番ハ長調 BWV1009 第4番変ホ長調 BWV1010
第6番ニ長調 BWV1012 第5番ハ短調 BWV1011 |
アンドレ・ナヴァラ(チェロ) |
レーベルの成功を導いた象徴的チェリストのひそやかな名盤も、新出発とともに再登場。
Calliope(カリオープ)——フランスを代表するオルガンの巨匠アンドレ・イゾワールのバッハ全集や、フランスのスウェーデン人インゲル・セーデルグレンによるベートーヴェンのソナタ全集、あるいはチェコ・ターリヒ四重奏団による数々の弦楽四重奏曲の名盤群、あるいはアニー・ダルコやテオドール・パラスキヴェスコといったピアノの名匠たちなどの名盤の数々。
20 世紀半ばから着実に積み重ねられてきた経験、CD
時代に入っても優良な録音は決して廃盤にせず、幾度となくプレスを重ねてきた「よいものはよい」との姿勢を崩さず、攻めも守りも信念をもって貫いてきたCalliope。これこそは、20世紀フランス楽壇の懐の深さと良心とを音盤面で象徴する、誇り高きインディペンデント・ブランドだったのです。
そんな Calliope の復活に伴い、フランスの伝説的チェロ奏者アンドレ・ナヴァラのこの録音をまっさきにご紹介できるのは、やはり大きな喜びと言わなくてはなりません。
今からちょうど100 年前、スペインにほど近い大西洋側の南仏の保養地ビアリッツで生まれたアンドレ・ナヴァラは、イベールやフランス六人組らの活躍を間近に見ながらパリ音楽院で研鑽を積み、パリ・オペラ座の首席奏者としてトスカニーニ、フルトヴェングラー、ワルター...といった巨星たちのタクトを経験。フォイアマンやカザルスに教えを受けながら、カール・フレッシュやオスカル・シェヴチークらのヴァイオリン・メソードを積極的にチェロ奏法に取り入れ、大戦後はパリ音楽院のほかドイツのデトモルト音楽大学、イタリアのシエナ・チギアーナ音楽院などでも教鞭をとり、後代の巨匠たちを幾人も育てました。
逞しくも色香の漂う低音の美で広く世界を魅了しながらも、トゥルトゥリエやフルニエら同時代のフランス人チェリストたちが何度も再リリースされる傍らで、ナヴァラの偉業は人々の記憶から失われかけていました。
しかし1977 年。もはや生ける伝説ともいうべき域に達したナヴァラがCalliope
に録音した『無伴奏』は、決してブレない太い軸ともいうべき解釈を柱に、1音1音が磨き抜かれた経験の豊かさとともに深く心に響いてくる、それでいて手に汗握る迫真のスリルをかたときも失わない見事な演奏でした。
自在に動き回る弓が艶やかに旋律線を、力強くリズムを刻む、まるで飲み頃に寝かせた長熟系の南仏赤ワインのような、しなやかさと深みで心に残る歴史的名演。
レーベルを、いや20世紀のバッハ演奏史・フランス楽壇の歴史を知る上でも、この名盤を知らないのは大きな欠落といっていいでしょう。 |
CAL1103
(国内盤)
\2940 |
マックス・ブルッフ(1838〜1920):
1) 七重奏曲 変ホ長調(1849・遺作)
フェリクス・ヴァインガルトナー(1863〜1942):
2) 八重奏曲 作品73(1925) |
フランス八重奏団
ジェフ・コーエン(p)
ジャン=ルイ・サジョ(cl)
アントワーヌ・デグルモン(hr)
ジャック・タロー(fg)
長沼由里子、
ジャン=クリストフ・グラル(vn)
ローラン・ジュアンノ(vc)
ミシェル・フーケ(cb) |
Calliope レーベルの素晴らしさ、その1...見つけてくる秘曲が本当に「掘り出し物」ばかり!
ヴァイオリン協奏曲で有名なブルッフの最初期重要作をあざやかな名演で聴いた後控えているのは...大指揮者ヴァインガルトナーの、精妙優雅な大編成室内楽...!
さきほど「20 世紀フランス楽壇の良心」と書いたCalliope
レーベルですが、その最大の魅力のひとつが「偏見なく良いものを見つけてくる慧眼」。演奏者の選択にしてもそうなのですが、このレーベルのカタログには非常に多くの、いわゆる「秘曲」に属する部類の音楽が含まれているうえ、それらがことごとく「いい曲!」と驚かずにはおれない名品ばかり(それもLP
時代からずっと!)。これはやはりプロデューサー自身のセンスによるところが大きかったのでしょう。
ちょっと記憶にあるだけでも、たとえばヴァイオリンの名手でモーツァルトと同時代に活躍したフランスの混血児サン=ジョルジュの傑作集(!)、ピッコロのためのロマン派・近代小品集(吹き手は“管の国”フランス随一の名手ボーマルディエ)、ホルン合奏のための「聖フベルトゥス(サンチュベール)のミサ」、デュカスのピアノ曲全集、古楽器によるクロンマーのハルモニームジーク...など、それぞれの領域の固定ファンのみならず、そうした音楽を聴いたことのないリスナーまでも直ちに取り込んでしまえるほど、ポテンシャルの高い「知られざる名品」に続々と光を当ててきました。Calliope
の功績は、世界規模での大きな文化貢献とさえ言えると思います。
このたび新体制になってからの完全新譜としてお目見えするこのアルバムにも、そうしたCalliope
本来の「良心」がありありと息づいています。
かたやブルッフ最初期の隠れ名作(11 歳で書いたとはとうてい思えない天才的充実作)、かたや日本でも早くから熱心なファンの多かった大指揮者フェリクス・ヴァインガルトナー(ベートーヴェンのハンマークラヴィーア・ソナタの管弦楽編曲も有名ですね)の“古き良き”かぐわしさにあふれたネオ=ロマン派的大作。
このふたつの秘曲を、フランス楽壇の誇るヴェテラン奏者たちによる豪華アンサンブルがきわめて意識の高い演奏でじっくり聴かせてくれる・・・なんという贅沢な発見の喜びでしょう!ヴァインガルトナー作品にはピアノも入って、さながらロマンティックな室内交響曲とでも呼びたくなるようなシンフォニックな広がりが美しく、ブルッフ作品ではロマン派初期の息吹もまだ健在な音作りがたまりません。 |
CAL1102
(国内盤)
\2940 |
ドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906〜1976):
1. 弦楽四重奏曲第1 番ハ長調 op.49(1938)
2. 弦楽四重奏曲第3 番ヘ長調 op.73(1946)
3. 弦楽四重奏曲第8 番ハ短調 op.110(1960) |
ルートヴィヒ(ルドヴィーグ)四重奏団
ジャン=フィリップ・オードリ(第1vn)
エレニード・オーウェン(第2vn)
パドリーグ・フォーレ(va)
アンヌ・コペリ(vc) |
Calliope レーベルの素晴らしさ、その2...選ばれる演奏者たちに、一切ハズレがないこと。
実は1985年結成の超・ヴェテラン団体、フランスの超実力派ルートヴィヒSQが満を持して放つ、ショスタコーヴィチの絶妙選曲3作はどれをとっても「桁外れの出来」。
審美眼の高い聴衆を相手に、20世紀半ばのLP
時代からインディペンデントで着実に実績をあげつづけてきたCallippe
レーベル——その成功の秘訣は「プロデューサーの慧眼」にあったと思うのですが、プログラム選出のセンスもさることながら、驚くべきは演奏家を発掘して継続的に録音してもらうコネクションを保ち続ける、その腕前。
レーベル発足当初に巨匠アンドレ・イゾワールのバッハ・オルガン作品全集をスタートさせ、他にもチェコのターリヒ四重奏団やロシアのミハイル・ルディ、フランスのパスカル・アモワイヤルなどの実力派ピアニストなど、Calliope
と好んでタッグを組み続けた実力派たちの腕前はどうしたものか、惰性を感じさせるようなところがまったくないのです。
実は上記のパリ八重奏団もまさにそんな路線を正しく受け継いだスーパープレイヤー集団だったりもするのですが(ヴァイオリンの長沼さんは超ヴェテランですし、ピアニストのジェフ・コーエンは現代音楽での活躍やカリスマ伴奏者としても有名)、Naxos
でのブラームス作品群、Arion でのジャン・アラン室内楽集など渋い録音歴を築いてきたフランスの超実力派・ルートヴィヒ四重奏団(フランス語圏では誰も彼も「ルドヴィーグ」と発音しているようです)がこのレーベルに新たに加わったのも、そうしたCalliope
の「演奏陣の確かさ」をあらためて印象づけてくれる、歓迎すべき選択だったといえるでしょう。
結成から25年、日本ではほとんど無名に近いにもかかわらずフランスでは確かな支持を勝ち得てきたこのヴェテラン団体の弾くショスタコーヴィチの、最初の1音目から明らかに「何かが違う」と感じさせる飛び抜けたクオリティ。ベートーヴェン以後おそらく最も充実した金字塔的傑作の連続にもかかわらず各曲の知名度が意外に低いのでは?と思われるショスタコーヴィチの四重奏曲群から中後期の名品をバランスよく選び、一つ一つにまったく異なる音楽世界を、それぞれ「これ以上先に進めない」というくらい徹底して読み込み、互いにまるで似ていない音楽宇宙を鮮やかに織り上げる手腕には、玄人リスナーも舌を巻くに違いありません。
新時代へ向けて、この団体のさらなる動向にも興味が高まろうというもの。今後も更なる充実盤が出てくることでしょう...極上の室内楽体験を約束してくれる新名盤、どうぞお見逃しなく。 |