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第61号
お奨め国内盤新譜(1)


2/24までの紹介分


AEON


MAECD859
(国内盤)
\2940
ブラームス:初期傑作集〜
 1. ヘンデルの主題による変奏曲 作品24
 2. スケルツォ 作品4
 3. ガヴォット〜グルックの歌劇『オリードのイフィジェニー』より
 4. ピアノ・ソナタ第1番 作品1
ラウラ・ミッコラ(ピアノ)
 初期作品に光が当たらないのは、その魅力をきちんと読み解けるピアニストが少ないから...?
 深い呼吸でじっくり解釈され、いずれ劣らぬスケール感で迫ってくるブラームスの秘曲たち。ほとんど「幻の」ともいうべき第1 ソナタ、磨き抜かれた小品と変奏曲...圧倒的なピアニズム!

 ブラームスのピアノ独奏曲...といえば、私たちがまず思い浮かべるのは作品10 と78・79 の小品集、そして何よりも、あの最晩年に綴られていった、いっさいの虚飾を配した深い小品の数々。
 ほとんどの人は、彼がその初期に綴っていたピアノ作品の存在を知りこそすれ、めったに「聴こう!」とまでは意識しないのではないでしょうか。かろうじて光の当たることがあるとすれば、それは「作品5」を冠したピアノ・ソナタくらいのもの。そしてそのソナタは、誰もが知るとおり「第3 番」なのです。後年あれほどみごとな協奏曲を書き、自らもピアニストとしてさまざまな活躍をみせたブラームス。歌曲や合唱曲でもピアノという楽器をあれほど見事に使いこなしたブラームス。そのピアニズムの最初の発露が若者時代の「酒場のピアニスト」としての経験にあったとすれば、そこから芸術作品への第一歩を踏み出したときの初期作品に、まったく見どころがないなどということがあるでしょうか?
 そのことに対する何より雄弁な答えが、このフィンランド出身のピアニストによる充実至極のアルバムにありありと示されています。
 メナヘム・プレスラーやドミトリー・バシキーロフら「名教師」としても知られた曲者実力派たちの、あるいは名手マレイ・ペライアの薫陶を受けてきた彼女が圧巻のテクニックで、「充溢」という言葉が思い浮かぶような豊かなピアニズムで紡ぎ出すのが今回のブラームスです。
 その音楽は、ロマン派初期のヴィルトゥオーゾ・ピアノの世界と、ベートーヴェン崇拝に代表されるような古典的作品美への嗜好とを、ともに満たそうとする若き作曲家の創意にあふれたもの。そして同時に、早くも顕著にあらわれはじめた個性の発露を、驚くほど雄弁に伝えてくれるもの。
 グルックやヘンデルの旋律を借り、それをピアノの上で自分なりに展開してゆく手法には、この作曲家が早くからバロック以前の音楽に親しんできたこと、作品分析を作曲の肥やしにするセンスに秀でていたことをあらためて思い起こさせます。
 ブラームスがどういうつもりでそれらの作品を綴っていたか、その結果どんな音楽がそこに出来上がったか——詳細に分析してみせた解説もなかなか読みごたえがあり(全訳付)、演奏とあわせて読んでゆくことで、後年のあの交響曲へといたる「ソナタ形式との対峙」についても、あらためて思いを馳せたくなるのでは…。
 充実至極のピアノ・アルバム、どうぞお見逃しなく!

MAECD0101
(国内盤)
\2940
ミカエル・ジャレル、20世紀から21世紀へ
 〜無伴奏楽器のための独奏作品集〜
ミカエル・ジャレル(1685〜1750):
 1) ...幾枚かの葉が II...
  〜ヴィオラ独奏のための(1998)
 2) 捧げもの 〜ハープ独奏のための(2001)
 3) アソナンス(似た音同士)
  〜クラリネット独奏のための(1983)
 4) アソナンスII〜打楽器独奏のための(1991)
 5) プリズム〜ヴァイオリン独奏のための(2001)
ポール・メイエ(クラリネット)
ハエスン・カン(ヴァイオリン)
クリストフ・デジャルダン(ヴィオラ)
フローラン・ジョドレ(打楽器)
フレデリク・カンブルラン(ハープ)
 古楽、ロマン派、現代音楽——どんなジャンルでも、徹底して磨き抜かれた企画内容、充実した録音制作と稀有の名演で仕上げてきたaeon レーベルの快進撃は、ここから始まった。
 21世紀の黎明期、すでに第一級の巨匠だったジャレルと、名手たち。

 2010 年末、『レコード芸術』誌のレコード・アカデミー賞で異例の3部門受賞を果たしたaeon レーベル——その秘訣はやはり、古楽からロマン派をへて現代音楽まで、どんなジャンルでもぬかりなく「作品そのもの」「演奏そのもの」と向き合い、徹底してトラックひとつひとつを磨き上げてゆくプロフェッショナリズム、音楽と芸術的発見とを心から楽しんできたプロデューサーたちの制作姿勢にあったのでしょう。
 2011 年はこのレーベルの創設10 周年にもあたりますが、ちょうど今から10 年前、静かに歩みを踏み出したaeon レーベル最初のアルバムを、ここに日本語解説付でお届けしたいと思います。
 選ばれた作曲家は、ミカエル・ジャレル。
 フランス語圏で活躍するスーパープレイヤーたちが、その作品を演奏したことを誇らしげにプロフィールに記載する、フランスきっての超・実力派ですが、その作品群はすでに10 年前、「20 世紀最後の20 年における、最も存在意義のあった音楽」と絶賛されていました。
 音の響きというものと徹底的に対峙し、さまざまな現代語法を活かしながらも、あくまで「響きの詩情」にこだわりつづけてきたジャレル芸術の味わいは、このアルバムにおけるように、やはり「楽器ひとつだけ」で奏でられる無伴奏作品でこそ最も端的に親しめるというものです。
 タイトルからして詩情豊かな五つの音楽を奏でるのは、日本でもおなじみのクラリネット奏者ポール・メイエを筆頭に、フランス語圏を代表する錚々たるソリストばかり(ヴィオラのデジャルダンはその後もaeon で大きな活躍をみせますが、すでにこのアルバムで立派なソロを聴かせていたのです)。その後アレクサンドル・タローやアルディッティ四重奏団、イザイ四重奏団などのスーパープレイヤーが続々と参入してくるaeon の快進撃を予告するかのような豪華な顔ぶれが、一つ一つの楽器の思わぬ可能性を、それぞれの作品ごとに異なる精妙なアプローチで聴かせてくれます。そう——単体の楽器の「響き」を味わう、音楽展開というより、ただ絵を眺めるようにして「響きに身を浸す」こと。それが現代音楽へのアプローチの最初の一歩だとすれば、このアルバムほど端的に、多彩な楽器の魅力とともにその役目を果たしてくれる例はなかなかないと思います。
 そしていうまでもなく、作品の秘儀を解き明かすライナー解説も、全訳付。
 現代音楽を語ることばというのは往々にして「現代音楽を本気で知ろうとする人だけ」しかわからない、ものすごく排他的なテキストになることが多いのですが、添付の訳文ではそのあたりを徹底的に意識し、日常生活の語彙でジャレルの発想を語るような文章に仕上げるようにしています。極上の知的刺激と音響体験、このアルバムを通じて、音楽鑑賞の楽しみはさらに広がるはず。

MAECD1113
(国内盤・訳詞付)
\2940
ベルギーの歌姫ジレ、満を持してのソロ・デビュー盤
バーバー(1910〜1981):
 1) ノックスヴィル、1915年夏 op.24(1948)
ベルリオーズ(1803〜1869):
 2) 夏の夜 〜管弦楽伴奏付歌曲集(1838-43)
ブリテン(1913〜1976):
 3) イルミナシオン 〜ランボーの詩による(1940)
アンヌ=カトリーヌ・ジレ(ソプラノ)
ポール・ダニエル指揮
ベルギー国立リエージュ・フィル
 ガーディナー、ミンコフスキ、プラッソン...この10年、彼女の声を認めた巨匠たちは熱心なリピーターとして共演を重ねてきた。侮りがたきベルギーの歌姫ジレ、入念すぎるほど満を持してのソロ・デビュー盤は、その持ち味を十全に生かす異色選曲。

 さすがはaeon レーベル。
 このレーベルに集まってくるアーティストはほぼ例外なく「その道の超一流」。
 今回のアンヌ・カトリーヌ・ジレ。・・・欧州歌劇界を(たとえばDVD リリースを通じて)熱心に追っておられる方なら、この10 年間に彼女の名前を目にする機会がどんどん増え、とくにガーディナーやミンコフスキら、古楽にも通じた偉大なオペラ指揮者たちのプロジェクトで実に精妙な歌いこなしを聴かせてきたことに、気づかずにはおれなかったのではないでしょうか?
 ベルギー出身、巨匠プラッソンのもとトゥルーズでフランスの聴衆を席巻、その後もパリ、リヨン、チューリヒ...と「くせのある」ヨーロッパ随一の劇場をどんどん征していった彼女は、本来なら5、6年前にソロ盤を出していてもおかしくなかったような超・実力派。しかし彼女はずっと「自分の声とキャラクターを活かせる作品とは?」と考え続けていました。
 そうして満を持してようやく彼女の名を冠したアルバムが現れたとき、そこに踊っていたのは時代も国も違う、三人の「B がつく巨匠」。しかも冒頭には、誰もが最もなじみの薄いと思われる「アダージョ以外のバーバー」を配してみせたのです。しかし上にも書いた通り、この選択が与える印象は圧倒的!夏の静かな夜を思わせるみずみずしい管弦楽、商業的下品さとはおよそ対極にあるような、フランス語話者が艶やかにうたいあげる英語の詩。20 世紀になおロマンティックなものが息づいていたとすれば、それはバーバーにおいてこそ理想的な結実をみせていたのだ...と強く思わずにはおれない傑作です。そのような歌を紡げる声がベルリオーズ『夏の夜』に合わないはずがありません。そして最後に控えている、ブリテン作品での圧倒的な鑑賞体験。
 美しく充実した音楽を聴こうというのであれば、この1枚を素通りする理由はありません。ご注目を!

AEON


MAECD1109
(国内盤)
\2940
クセナキス:チェロのための作品全集
  ①ノモス・アルファ〜無伴奏チェロのための(1966)
  ②カリスマ〜クラリネットとチェロのための(1971)
  ③コットス〜無伴奏チェロのための(1977)
  ④エピシュクレス〜チェロ独奏と12楽器のための(1989)
  ⑤風のなかの藁(パーユ)〜チェロとピアノのための(1992)
  ⑥フネム=イドゥヘイ〜ヴァイオリンとチェロのための(1996)
  ⑦ロスコベック〜チェロとコントラバスのための(1996)
  ⑧ディプリ・ジア 〜ヴァイオリンとチェロのための(1951)
アルノ・ドフォルス(チェロ)
②ベンヤミン・ディールチェンス(cl)
④アンサンブル・ムジークファブリーク
⑤ダーン・ファンドヴァール(p)
⑥⑧ヴィベルト・アールツ(vn)
⑦ロード・レール(cb)
 現代音楽の枠を超え、あらゆるジャンルの音楽愛好家から注目される人物のひとり、クセナキス。その芸術性を端的に知るには、「定点観測」が一番。もちろん味わうなら、最高級の演奏で。欧州楽壇で最も刺激的な活躍を続けるチェロ奏者がaeonにいま刻んだ、金字塔的全集。

 「現代音楽」と書いただけで、音楽ファンのなかには恐れをなして耳をふさいでしまう方も少なくないかもしれません。しかしそのなかでもごく一握り、まごうことなき現代作曲家でありながら、クラシック内外を問わずロック、ジャズ...と幅広い音楽のユーザーが(たとえ遠巻きにでも)意識せずにはおれない、誰もが耳をそばだてる“20世紀の巨匠”ともいうべき現代作曲家が何人かいます。ジョン・ケージ、武満徹、ルチアーノ・べリオ、ピエール・ブーレーズ、ジェルジ・リゲティ、フィリップ・グラス、アルヴォ・ペルト、アルフレート・シュニトケ、モートン・フェルドマン。
 そしてルーマニア生まれのギリシャ系フランス人、数学的演算を音楽芸術に持ち込み電子音楽の技法を使いこなした異才中の異才ヤニス・クセナキスを、そのなかに数え上げることに異論のある方はまず、いないでしょう。
 楽譜を読むところから難解そのもの、演奏にはとてつもない超絶技巧を要し、時には初演したピアニストの指から血が迸るほど、時にはコンピュータによる確率計算が作曲・演奏行為の一部に組み込まれ、人間が一度に認識できる情報量を軽やかに超える内容の音楽ができてしまう…など、クセナキスを知ろうとするかぎり、およそ聴き手を震え上がらせずにはおかない話ばかりが挙がってきます。
 が、まずは「音楽」に耳を傾けたいもの。そうすれば、そうしたクセナキスのさまざまな試行錯誤がすべて、あくまで最終結果としての「音の芸術」「響きの芸術」から離れていなかったことが、よくわかるはずですから。
 もっと別の言い方をするなら、作品は演奏者なしには成り立ちませんし、演奏者が独自に「演奏の素晴らしさ」を志す以上、私たち聴き手との接点はかならず生まれるもの。誰かが演奏している以上、どんなに難解とされる音楽でも必ず「接点」ができるわけで、そこで音に実際に触れ、感じ、そして(もし心に余裕があれば)考える・・・そういう機会を作ってくれるという点で、クセナキスは実に示唆に富んだ作品を数多く残してくれたわけです。
 ともあれ、1枚のCD に収録するには、何らかのかたちで曲を絞らなくてはならないところ。そこで本盤のように「チェロの作品だけ!」という、わかりやすい切り口でいわば定点観測のようにクセナキスの音楽にふれてゆくと、さながら現代美術家の回顧展のように「なるほど、そうだったのか!」と、いろいろなことが実に明確になってくるわけです。
 現代音楽のみならず、ロマン派王道系や古楽などでも秀逸なアルバム作りをみせているフランスのaeonは、その意味で本当にセンス抜群...フランス最前線の原題音楽界とのつながりも密接なこのレーベルの新譜では、オランダ出身の現代音楽界の寵児アルヌ・ドフォルスを中心に、腕利きの名手たちがクセナキスの精巧なスコアを読み解き、歿後10 周年を迎えたこの作曲家が何を表現しようといていたのか、どんな技法がそこにあったのか、中期から晩期にいたる作品群を通じて伝えてくれます。
 読み解く愉しみも、感じ取る愉しみも満載、演奏者たちが超一流だからこそ、邪念なしに(?)作品と向き合えるわけです。もちろん、周到な作品解説の全訳付。

AEON


AMCD232-341
(国内盤)
\2940
バロック随一の語り口でリコーダーの魅力をたっぷり伝えてくれる傑作曲集
ヨハン・クリスティアン・シックハルト(1682頃〜1762):
 4本のリコーダーと通奏低音のための協奏曲(コンセール)集 作品19
 1. 協奏曲(コンセール)第1 番 ハ長調
 2. 協奏曲(コンセール)第4番 ヘ長調
 3. 協奏曲(コンセール)第2番 ニ短調
 4. 協奏曲(コンセール)第5番 ホ短調
 5. 協奏曲(コンセール)第3番 ト長調
 6. 協奏曲(コンセール)第6番 ハ短調
フラウタンド・ケルン(古楽器使用)
 リコーダー全盛期、それはテレマンやバッハの活躍した時代。
 軽やかに飛び回るメロディ、きれいに和音をつくるアンサンブル、バロック随一の語り口でリコーダーの魅力をたっぷり伝えてくれる傑作曲集。演奏陣も作品美も絶妙の1枚、待望の国内仕様リリース!

 リコーダーが活躍する名盤は数あれど、意外と出てこないのがアンサンブル系の名盤。ソロのスーパープレイヤーはいろいろなところで活躍して名盤も作りますが、録音しよう!とまで思える腕利きを4人集めるとなると、やはり至難の業なのでしょう。
 ドイツ語圏きってのハイレベルな古楽の中心地ケルンで、ムジカ・アンティクヮ・ケルンのメンバーとしても活躍しながら1990年以来独自のアンサンブル活動を続けているフラウタンド・ケルンは、その意味で非常に貴重な存在——しかも嬉しいことに、ルネサンス小品集のような「リコーダーアンサンブルの定番」ばかりでなく、本盤のように「いまのところ知名度は低いけれど、聴けば聴くほどバロックの面白さ・美しさにハマってしまう!」というような思わぬレパートリーを開拓し、その魅力をあざやかに知らしめてくれるセンスも抜群なのです。
 ドイツ・ハルモニア・ムンディの母体でもあったフライブルク・ムジークフォールムが主宰してきた秀逸レーベルArsMusici は、彼女たちの活動とデビュー盤以来歩みをそろえてきましたが、ここにご案内する国内仕様アルバムは、アマチュア・リコーダー奏者たちがアンサンブルで愉しむ演目のひとつでありながら、あまり録音が出回っていない「シックハルトの四重協奏曲」。シックハルトはかつて「リコーダーの神様」フランス・ブリュッヘンがテレフンケン(現Teldec/Warner)にリコーダー音楽を積極的に録音していた頃、テレマンやオトテールらと同じくらい意識的にプログラムに交えていた作曲家です。
 ドイツ中部ブラウンシュヴァイクで生まれ、ハンブルク、アムステルダム、さらにはスウェーデンやノルウェーなど北方で活躍を続け、一時はバッハの雇用主でもあったケーテン侯にも曲集を献呈するなど、広範に活躍を続けたシックハルトは、テレマンやヘンデルなどと同じく管楽器のための合奏曲集を数多く出版し、生前はとくにオランダで大きな人気を誇っていたそうですが、作品にふれてみれば、その人気の意味もよくわかるでしょう。
 リコーダーという楽器にまるで無理をさせず、アルト4本でいちばん美しい音が出るところだけを使いつつ、4筋のメロディラインがむだに重ならず、きれいなハーモニーを奏でたり艶やかな交錯をみせたり、歌心あふれる遅い楽章もスリリングな急速楽章も、どこをとっても聴きどころ満載。
 曲集のタイトルはバッハの「ブランデンブルク協奏曲集」と同じく「ドイツ語圏のフランス語」でConcert とあり、確かに「協奏曲」とも読めますしイタリアン・スタイルの音楽内容ではありますが、全員が主役!の感じは「コンセール(特定のソロを必ずしも念頭に置かない合奏曲)」というフランス様式の曲題にむしろ近いかも。
 ヴィヴァルディやテレマンの曲調でリコーダーの良さを満喫したい方には、何よりもおすすめの1枚です!

AEON


MAECD1110
(国内盤)
\2940
今や最も注目されている気鋭カルテットが放った、後期の傑作2作
ベートーヴェン:
 1) 弦楽四重奏曲第12 番 変ホ長調 op.127
 2) 弦楽四重奏曲第14 番 嬰ハ短調op.131
ブレンターノ四重奏団:
 マーク・スタインバーグ、
 セレーナ・キャニン(vn)
 ミッシャ・エイモリー(va)
 ニナ・マリア・リー(vc)
 ベートーヴェン演奏が、どんどん塗り替わっている——アメリカ出身、英国からも熱烈な讃美を受け、今や最も注目されている気鋭カルテットが放った、後期の傑作2作の新録音。作品の充実をこともなげに受け止め、さらりと呈示するのに深みたっぷり...たまりません。

 ベートーヴェン新録音!と鳴り物入り風に言うのは、たいてい交響曲の新録音——けれど考えてみれば、ベートーヴェンが生涯をかけて追求した重要ジャンルがあと二つあるわけで、弦楽四重奏曲とピアノ・ソナタの世界でも重要な新録音はもっと出てもいいはずなんですが、全曲録音となるとなかなか出てきませんし(ピアノ・ソナタはZig-Zag Territoires レーベルからF-F.ギィ氏のツィクルスが始まりましたが)、単発での注目度はどうしたものか極度に下がってしまうようです。だからといって、これらのジャンルでの演奏史が千年一日のごとく塗り替わっていないかというと、まったくそんなことはないのです。
 少し前に完成したアルテミス四重奏団の全曲録音や、ライプツィヒ四重奏団の素晴らしい新解釈もありますし、すでに「作品18」の6曲が全て出揃っているミケランジェロ弦楽四重奏団の演奏ももちろん・・・と散発的には注目すべき新録音が「往年の巨匠たち」を追い落とさんばかりの勢いで世に膾炙しつつあります。
 そんな中にもうひとつ、ズシンと響く新録音がまたしても登場いたしました。
 欧米での活躍ぶりは20 世紀末以来めざましいの一言に尽きるアメリカ東海岸の天才集団ブレンターノSQ 。
 彼らが、古楽から現代音楽まで「よい音楽」は何でも丁寧にとりあげてくれるaeon レーベルから世に問う初ベートーヴェン盤は、なんといきなり後期の2作。それも、あの長大な第14 番と本格的な「後期の始まり」を飾る第12 番というのですから、ずいぶん思い切ったことを...と驚かされるわけですが、その演奏を実際に聴いて、なるほど!と腑に落ちかつ深く驚愕。なにしろブレンターノSQ といえば、1992 年のデビュー早々から破竹の勢いで東海岸のシーンを席巻、クリーヴランド弦楽四重奏賞をはじめいくつかの賞をさらった後にプリンストン大学の常任団体になり(弦楽四重奏団としては初の快挙)、世界に冠たるイギリス室内楽シーンの牙城ウィグモア・ホールの聴衆を熱狂させつづけている超人気団体。彼らはとにかく王道レパートリーばかり演奏していればよい、という発想が嫌いらしく、『フーガの技法』に現代作品を織り交ぜたプログラムを披露したり、ジョスカン・デプレのシャンソン、モンテヴェルディやジェズアルドのマドリガーレといったルネサンス〜バロックの声楽作品を弦楽四重奏で弾いてしまったりと、「楽曲構造」というものの面白さを昔から独自に追求してきた知性派グループ。
 完璧な技量、みごとに揃った呼吸で変幻自在にくりひろげられるベートーヴェン後期の複雑精緻な音楽世界。
 余裕綽々の音楽構想からくりだされる演奏の整然とした迫力だけでも魅力十分。
 聴き深めれば深めるほど細部までくっきり、彼らがこれっぽっちの妥協もなしに作品と対峙し続けてきた結果がこの解釈なのだ、ということを否応なしに印象づけられます。
 室内楽をじっくり聴き込む楽しさ、ベートーヴェンの深みを改めて実感できる、忘れがたい名演の登場です。

ALPHA



Alpha161
(国内盤)
\2940
またもや凄腕新星現る!
 バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのための三つのソナタ 他
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)
 1) ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ホ短調BWV1023
  (ヴィオラ・ダ・ガンバを使った演奏)
 2) ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ト長調 BWV1027
 3) チェンバロのためのトッカータ ハ短調 BWV911
 4) ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ニ長調 BWV1028
 5) ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ ト短調 BWV1029
リュシル・ブーランジェ(ヴィオラ・ダ・ガンバ/ティールケ・モデル)
アルノー・ド・パスクアル(チェンバロ/J-H.ジルバーマン・モデル)
 久々に出ます!Alphaのバッハ。
 このレーベルが連れてくる未知の演奏家は、いつだって名手ばかり...今度のガンバ奏者とチェンバロ奏者は、どちらも5歳から古楽器を弾いてきた本物の古楽器奏者!たおやかで雄弁、精妙解釈も銘器の美も、自然派録音で際立ちます!

 アンサンブル・ピグマリオンによる2枚の「ミサ・ブレヴィス」録音、カフェ・ツィマーマンの『さまざまな楽器による協奏曲』シリーズ、セリーヌ・フリッシュのゴールトベルク変奏曲、エレーヌ・シュミットの「語るような」無伴奏...21世紀に入ってからフランスが「古楽先進国」としての存在感を強めるなか、同国屈指の古楽レーベルとして発足したAlpha がリリースするバッハ音源は、これまでことごとく大好評を博してきたといってもまず過言ではないでしょう。5年以上前に発売されたタイトルでも、いまでも売れ続けているものが大半です。それはもちろん、単にAlpha がブランドとして確立されてきたためではなく、各アイテムが必ず大きな発見や深い鑑賞体験をもたらしてくれる、高水準のラインをつねにクリアしつづけてきたからでしょう。
 そんな「Alpha のバッハ」に新たに加わるこの新譜も、まさにそうしたクオリティを易々と体現している充実盤。
 本盤のふたりの演奏家はまず現時点ではほとんど知られていないフランス古楽界の新星。リュシル・ブーランジェとアルノー・ド・パスクアル・・・。にもかかわらず、演奏はまさしくAlpha 音源ならではの充実度。たおやかに弓を返しながら表情豊かに歌を紡いでゆくガンバの美音、響きのよいチェンバロの音色を精妙に転がして対位法の綾を織り上げてゆく鍵盤奏者、両者のしなやかなアンサンブル、無音の呼吸感の雄弁さ(と、それを余さず収録しおおせた自然派録音の妙)...何者かと慌ててプロフィールを確認すれば、驚いたことに両奏者とも5歳の頃からガンバやチェンバロを弾き始めた、というではありませんか。およそ1990 年代以降、フランスの古楽教育の現場はそれまでの劣悪な環境がうそのように整備され、ヴェルサイユ・バロック音楽センターやロヨモン研究所などをはじめとする欧州屈指の古楽教育機関が整えられて一躍「古楽先進国」と呼ぶにふさわしい状況になったのですが、本盤の二人はまさに、その素晴しい環境から叩き上げられてきた21 世紀型の古楽奏者、というわけです。
 もうひとつ注目すべきは、使用楽器。ド・パスクアルの弾くチェンバロは現代の名工フィリップ・ユモーが手がけた精巧な復元楽器で、バッハが弾いた初期ピアノの製作家の甥、J.H.ジルバーマンのモデル。対するガンバも素晴らしい復元楽器ですが、こちらのモデルはバッハ存命時のライプツィヒで活躍していた名工ティールケの楽器がモデル。つまりここに収められているのは、バッハ自身が作曲時にイメージしていたであろう響きそのものなのです。 こういったこだわり一つにも、やはりAlphaで録音されるバッハのアルバムは一味違う...と唸らされずにはおれません。



Alpha旧譜
カフェ・ツィマーマンの
バッハ:『さまざまな楽器による協奏曲』シリーズ
全集セット、初回完全限定盤
 あと2セット在庫あり!

Alpha811
(国内盤・6枚組)
\6300
バッハ:ブランデンブルク協奏曲(全)、管弦楽組曲(全)、その他協奏曲さまざま
  〜『さまざまな楽器による協奏曲』
 シリーズの全集セット、初回完全限定盤
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 【CD I】
  チェンバロ協奏曲ニ短調BWV1052/
  オーボエ・ダモーレ協奏曲イ長調BWV1055a/
  ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調BWV1042/
  ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調BWV1050
 【CD II】
  ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調BWV1048/
  2挺のヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV1043/
  序曲(管弦楽組曲)第1番ヘ長調BWV1066/
  オーボエとヴァイオリンのための協奏曲ハ短調BWV1060a
 【CD III】
  ブランデンブルク協奏曲第4番ト長調BWV1049/
  オーボエ協奏曲ニ長調BWV1053a/
  3台のチェンバロと弦楽合奏のための協奏曲ハ長調BWV1064/
  序曲(管弦楽組曲)第2番ロ短調BWV1067
 【CD IV】
  ヴァイオリン協奏曲イ短調BWV1041/
  2台のチェンバロと弦楽合奏のための協奏曲ハ長調BWV1061/
  三重協奏曲イ短調BWV1044/
  ブランデンブルク協奏曲第2番ヘ長調BWV1047
 【CD V】
  序曲(管弦楽組曲)第3番BWV1068/
  チェンバロ協奏曲ヘ短調BWV1056/
  ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調BWV1051/
  3台のチェンバロと弦楽合奏のための協奏曲ニ短調BWV1063
 【CD VI】
  序曲(管弦楽組曲)第4番BWV1069/
  チェンバロ協奏曲イ長調BWV1055/
  ブランデンブルク協奏曲第1番ヘ長調BWV1046/
  4台のチェンバロと弦楽合奏のための協奏曲ニ短調BWV1065
カフェ・ツィマーマン(古楽器使用)
【独奏】パブロ・バレッティ、アマンディー
ヌ・ベイエール、
ダヴィド・プランティエ(vn)
ディアナ・バローニ(ft)
ミヒャエル・フォルム(bfl)
パトリック・ボジロー、
アントワーヌ・トリュンチュク(ob)
ハンネス・ルクス(tp)
トーマス・ミュラー、
ラウル・ディアス(hr)
セリーヌ・フリッシュ、
ディルク・べルナー、
アンナ・フォンターナ(cmb)他
 シリーズ全巻のBOX ヴァージョン!お求めやすい価格で6巻全部、すべて日本語解説付。
 完全限定盤のため、完売の際は何卒ご容赦ください。

 Alpha レーベルが憎い限定商品をつくってまいりました。カフェ・ツィマーマンの『バッハ:さまざまな楽器による協奏曲集』シリーズ全巻を、ひとつのBOX に収めた期間限定6枚組仕様。なくなりしだい市場から消滅いたします。
 もちろんCD6枚すべての日本語解説付(商品本体に増えた要素は、これまで収録されていなかった解説のドイツ語訳と上記写真の美麗アウターケースのみ)、6枚分でこの価格ですが、制作元では「最初のオーダーのみ対応、もちろん初回プレス分が切れしだい終了」とうたっていますので、どうかその点をよくお含みいただければ幸いです。ちなみにこのシリーズ名「さまざまな楽器による協奏曲集」というのは、実は6曲からなる『ブランデンブルク協奏曲集 Concerts avec plusieurs instruments』の楽譜の浄書譜に記されていたフランス語タイトル——当時のドイツ貴族たちのあいだではフランス語がお洒落な言葉だったので、バッハもそれに倣ってフランス語でこう表題を書いています。カフェ・ツィマーマンはこの協奏曲集からCD1枚ごと1曲ずつを選び、そのほか3曲ずつを加えてこのシリーズを制作してきた次第。畢竟、このBOX には『ブランデンブルク協奏曲』全曲が揃っているだけでなく、いつしか『管弦楽組曲』全4曲も収録されてしまいました。他にも複数チェンバロを使う協奏曲もひとわたり、BWV1055 にいたっては「チェンバロ協奏曲版」と「復元オーボエ・ダモーレ版」の双方を聴き比べられる嬉しさ。いわずもがな演奏は極上、全点分の日本語解説含め、BOX として非常に価値が高いことは疑い得ません!


CALLIOPEまさかの復活!

 昨年惜しまれながら消滅した仏CALLIOPE。アリアCDでもその在庫を求め世界中の倉庫をあさって開催したのがこのセール
 そうしたらなんとINDESENS!レーベルに統合されてまさかの復活。かつての名盤はとりあえずは廃盤となるらしいが、新譜もすでに登場しているらしい。
 今回紹介するのは、まずCALLIOPEの代表的アルバム、ナヴァラのバッハ無伴奏全曲(上記CALLIOPEセールでも取り上げてますが)。そして最新アルバム2点。
 これからどういう展開を見せるのかまだ不透明な部分はあるが、期待したい。


CAL3642
(国内盤・2枚組特価)
\3150
しなやかさと深みで心に残る歴史的名演
 ナヴァラ〜J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)
『無伴奏チェロ組曲』BWV1007〜1012
《CD I》 《CD II》
 第1番ト長調 BWV1007 第2番ニ短調 BWV1008
 第3番ハ長調 BWV1009 第4番変ホ長調 BWV1010
 第6番ニ長調 BWV1012 第5番ハ短調 BWV1011
アンドレ・ナヴァラ(チェロ)
 レーベルの成功を導いた象徴的チェリストのひそやかな名盤も、新出発とともに再登場。

 Calliope(カリオープ)——フランスを代表するオルガンの巨匠アンドレ・イゾワールのバッハ全集や、フランスのスウェーデン人インゲル・セーデルグレンによるベートーヴェンのソナタ全集、あるいはチェコ・ターリヒ四重奏団による数々の弦楽四重奏曲の名盤群、あるいはアニー・ダルコやテオドール・パラスキヴェスコといったピアノの名匠たちなどの名盤の数々。
 20 世紀半ばから着実に積み重ねられてきた経験、CD 時代に入っても優良な録音は決して廃盤にせず、幾度となくプレスを重ねてきた「よいものはよい」との姿勢を崩さず、攻めも守りも信念をもって貫いてきたCalliope。これこそは、20世紀フランス楽壇の懐の深さと良心とを音盤面で象徴する、誇り高きインディペンデント・ブランドだったのです。 
 そんな Calliope の復活に伴い、フランスの伝説的チェロ奏者アンドレ・ナヴァラのこの録音をまっさきにご紹介できるのは、やはり大きな喜びと言わなくてはなりません。
 今からちょうど100 年前、スペインにほど近い大西洋側の南仏の保養地ビアリッツで生まれたアンドレ・ナヴァラは、イベールやフランス六人組らの活躍を間近に見ながらパリ音楽院で研鑽を積み、パリ・オペラ座の首席奏者としてトスカニーニ、フルトヴェングラー、ワルター...といった巨星たちのタクトを経験。フォイアマンやカザルスに教えを受けながら、カール・フレッシュやオスカル・シェヴチークらのヴァイオリン・メソードを積極的にチェロ奏法に取り入れ、大戦後はパリ音楽院のほかドイツのデトモルト音楽大学、イタリアのシエナ・チギアーナ音楽院などでも教鞭をとり、後代の巨匠たちを幾人も育てました。
 逞しくも色香の漂う低音の美で広く世界を魅了しながらも、トゥルトゥリエやフルニエら同時代のフランス人チェリストたちが何度も再リリースされる傍らで、ナヴァラの偉業は人々の記憶から失われかけていました。
 しかし1977 年。もはや生ける伝説ともいうべき域に達したナヴァラがCalliope に録音した『無伴奏』は、決してブレない太い軸ともいうべき解釈を柱に、1音1音が磨き抜かれた経験の豊かさとともに深く心に響いてくる、それでいて手に汗握る迫真のスリルをかたときも失わない見事な演奏でした。
 自在に動き回る弓が艶やかに旋律線を、力強くリズムを刻む、まるで飲み頃に寝かせた長熟系の南仏赤ワインのような、しなやかさと深みで心に残る歴史的名演。
 レーベルを、いや20世紀のバッハ演奏史・フランス楽壇の歴史を知る上でも、この名盤を知らないのは大きな欠落といっていいでしょう。

CAL1103
(国内盤)
\2940
マックス・ブルッフ(1838〜1920):
 1) 七重奏曲 変ホ長調(1849・遺作)
フェリクス・ヴァインガルトナー(1863〜1942):
 2) 八重奏曲 作品73(1925)
フランス八重奏団
 ジェフ・コーエン(p)
 ジャン=ルイ・サジョ(cl)
 アントワーヌ・デグルモン(hr)
 ジャック・タロー(fg)
 長沼由里子、
 ジャン=クリストフ・グラル(vn)
 ローラン・ジュアンノ(vc)
 ミシェル・フーケ(cb)
 Calliope レーベルの素晴らしさ、その1...見つけてくる秘曲が本当に「掘り出し物」ばかり!
 ヴァイオリン協奏曲で有名なブルッフの最初期重要作をあざやかな名演で聴いた後控えているのは...大指揮者ヴァインガルトナーの、精妙優雅な大編成室内楽...!

 さきほど「20 世紀フランス楽壇の良心」と書いたCalliope レーベルですが、その最大の魅力のひとつが「偏見なく良いものを見つけてくる慧眼」。演奏者の選択にしてもそうなのですが、このレーベルのカタログには非常に多くの、いわゆる「秘曲」に属する部類の音楽が含まれているうえ、それらがことごとく「いい曲!」と驚かずにはおれない名品ばかり(それもLP 時代からずっと!)。これはやはりプロデューサー自身のセンスによるところが大きかったのでしょう。
 ちょっと記憶にあるだけでも、たとえばヴァイオリンの名手でモーツァルトと同時代に活躍したフランスの混血児サン=ジョルジュの傑作集(!)、ピッコロのためのロマン派・近代小品集(吹き手は“管の国”フランス随一の名手ボーマルディエ)、ホルン合奏のための「聖フベルトゥス(サンチュベール)のミサ」、デュカスのピアノ曲全集、古楽器によるクロンマーのハルモニームジーク...など、それぞれの領域の固定ファンのみならず、そうした音楽を聴いたことのないリスナーまでも直ちに取り込んでしまえるほど、ポテンシャルの高い「知られざる名品」に続々と光を当ててきました。Calliope の功績は、世界規模での大きな文化貢献とさえ言えると思います。
 このたび新体制になってからの完全新譜としてお目見えするこのアルバムにも、そうしたCalliope 本来の「良心」がありありと息づいています。
 かたやブルッフ最初期の隠れ名作(11 歳で書いたとはとうてい思えない天才的充実作)、かたや日本でも早くから熱心なファンの多かった大指揮者フェリクス・ヴァインガルトナー(ベートーヴェンのハンマークラヴィーア・ソナタの管弦楽編曲も有名ですね)の“古き良き”かぐわしさにあふれたネオ=ロマン派的大作。
 このふたつの秘曲を、フランス楽壇の誇るヴェテラン奏者たちによる豪華アンサンブルがきわめて意識の高い演奏でじっくり聴かせてくれる・・・なんという贅沢な発見の喜びでしょう!ヴァインガルトナー作品にはピアノも入って、さながらロマンティックな室内交響曲とでも呼びたくなるようなシンフォニックな広がりが美しく、ブルッフ作品ではロマン派初期の息吹もまだ健在な音作りがたまりません。

CAL1102
(国内盤)
\2940
ドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906〜1976):
 1. 弦楽四重奏曲第1 番ハ長調 op.49(1938)
 2. 弦楽四重奏曲第3 番ヘ長調 op.73(1946)
 3. 弦楽四重奏曲第8 番ハ短調 op.110(1960)
ルートヴィヒ(ルドヴィーグ)四重奏団
ジャン=フィリップ・オードリ(第1vn)
エレニード・オーウェン(第2vn)
パドリーグ・フォーレ(va)
アンヌ・コペリ(vc)
 Calliope レーベルの素晴らしさ、その2...選ばれる演奏者たちに、一切ハズレがないこと。
 実は1985年結成の超・ヴェテラン団体、フランスの超実力派ルートヴィヒSQが満を持して放つ、ショスタコーヴィチの絶妙選曲3作はどれをとっても「桁外れの出来」。

 審美眼の高い聴衆を相手に、20世紀半ばのLP 時代からインディペンデントで着実に実績をあげつづけてきたCallippe レーベル——その成功の秘訣は「プロデューサーの慧眼」にあったと思うのですが、プログラム選出のセンスもさることながら、驚くべきは演奏家を発掘して継続的に録音してもらうコネクションを保ち続ける、その腕前。
 レーベル発足当初に巨匠アンドレ・イゾワールのバッハ・オルガン作品全集をスタートさせ、他にもチェコのターリヒ四重奏団やロシアのミハイル・ルディ、フランスのパスカル・アモワイヤルなどの実力派ピアニストなど、Calliope と好んでタッグを組み続けた実力派たちの腕前はどうしたものか、惰性を感じさせるようなところがまったくないのです。
 実は上記のパリ八重奏団もまさにそんな路線を正しく受け継いだスーパープレイヤー集団だったりもするのですが(ヴァイオリンの長沼さんは超ヴェテランですし、ピアニストのジェフ・コーエンは現代音楽での活躍やカリスマ伴奏者としても有名)、Naxos でのブラームス作品群、Arion でのジャン・アラン室内楽集など渋い録音歴を築いてきたフランスの超実力派・ルートヴィヒ四重奏団(フランス語圏では誰も彼も「ルドヴィーグ」と発音しているようです)がこのレーベルに新たに加わったのも、そうしたCalliope の「演奏陣の確かさ」をあらためて印象づけてくれる、歓迎すべき選択だったといえるでしょう。
 結成から25年、日本ではほとんど無名に近いにもかかわらずフランスでは確かな支持を勝ち得てきたこのヴェテラン団体の弾くショスタコーヴィチの、最初の1音目から明らかに「何かが違う」と感じさせる飛び抜けたクオリティ。ベートーヴェン以後おそらく最も充実した金字塔的傑作の連続にもかかわらず各曲の知名度が意外に低いのでは?と思われるショスタコーヴィチの四重奏曲群から中後期の名品をバランスよく選び、一つ一つにまったく異なる音楽世界を、それぞれ「これ以上先に進めない」というくらい徹底して読み込み、互いにまるで似ていない音楽宇宙を鮮やかに織り上げる手腕には、玄人リスナーも舌を巻くに違いありません。
 新時代へ向けて、この団体のさらなる動向にも興味が高まろうというもの。今後も更なる充実盤が出てくることでしょう...極上の室内楽体験を約束してくれる新名盤、どうぞお見逃しなく。

CARO MITIS



CM003-2010
(SACD Hybrid)
(国内盤)
\3360
イーゴリ・チェトゥーエフ
 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集4

  1. ピアノ・ソナタ第4番 変ホ長調 op.7
  2. ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 op.31-2
  3. ピアノ・ソナタ第27番 ホ短調 op.90
イーゴリ・チェトゥーエフ(ピアノ)
 ファツィオーリ・ピアノ使用による前3作から時は過ぎ——大好評シリーズに、続々新作登場。 仏DIAPASON 誌 Multichannel SACD-Hybrid 5点満点受賞!
 第4作は、ソナタとしての均整と充実度が充実のきわみをみせる「第4番」ほかベートーヴェンの創作史上の「要」たる短調2作での解釈も光る。楽器を活かすセンスも絶妙。

 誰もが何かと自分の意見を表明したがるお国柄のフランスには、かなり点の辛いCD 批評ページのある雑誌がいくつかありますが、なかでも『ディアパゾン Diapason』はその代表格。
 この雑誌でここ近年批評にさらされてきたベートーヴェンのソナタ録音はいくつもありますが、そのなかでもとくに高い評価を得ているのが、昨年始まったZig-Zag Territoires レーベルのF-F. ギィによる全曲録音(ZZT-111101、『レコ芸』でも特選)、そして7年前から定期的に1枚ずつリリースされてきた、このCaro-Mitis レーベルでイーゴリ・チェトゥーエフが継続しているシリーズ。
 ウクライナの俊才チェトゥーエフが、徹底してDSD 録音&SACD ハイブリッドでのリリースを貫いているロシアのCaro Mitis にデビューしたのはもう8年前。デビュー盤はシュニトケのソナタ全集(CM009-2004)という曲者ですが、そのときから使用楽器に独特な個性をもつイタリアのファツィオーリ社のピアノを選び、独特の演奏効果をあげてきました。その後2005年からベートーヴェンのソナタ全曲録音を周到な選曲で1枚ずつ発表、最初の3作はシュニトケ録音同様にファツィオーリを使い見事な効果をあげ、日本でも『レコード芸術』誌での相次ぐ特選・準特選獲得に代表されるとおり、チェトゥーエフが筋金入りのベートーヴェン解釈者であることを強烈に印象づけました。
 ところがここに久々にご紹介できる運びとなった「第4弾」では一転、使用楽器はスタインウェイに変わっています。
 これまでの3作での繊細な解釈から考えるに、ベートーヴェン作品に深い洞察を持つチェトゥーエフなりの判断がそこにあったのではないかと思うのですが、実際その演奏結果はやはり「圧巻」の一言。細やかな配慮を感じさせるテンポ設定、泰然自若でありながら一切ブレのない縦横無尽なアゴーギグは過去3盤と同じ、そして全ソナタのなかでも特にソナタ形式の完成度が高い「第4番」での充実度みなぎる彫琢などは、まさにスタインウェイという楽器ならではのスケール感。
 つまりチェトゥーエフというピアニストはおそらく「ピアノであれば何でもよい」というのではなくて、ひとつひとつの楽器の個性をじっくり見極め、その美質を自分の表現にうまく活かすセンスにひときわ長けているのです。
 謎めいた中期の異色作「第27番」やファンタジー溢れる「第17番」での抑揚に富んだ音作りも周到な演奏設計で、深い鑑賞体験をもたらしてくれます。そのクオリティは上にも書いた辛口批評誌『ディアパゾン』が堂々5点満点をつけていることからも推して知れましょう。


旧譜
イーゴリ・チェトゥーエフ
ベートーヴェン:ソナタ全集Vol.1〜3
Beethoven: Complete Piano Sonatas Vol. 1
CM004-2005
(国内盤)
\3360
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集Vol.1
 1. ソナタ第7 番 ニ長調op.10-3
 2. ソナタ第23 番 ヘ短調op.57「熱情」
 3. ソナタ第26 番 変ホ長調op.81a「告別」
イーゴリ・チェトゥーエフ(ファツィオーリ・ピアノ)
ロシア発のハイエンド音盤レーベルCaro Mitis が、ファツィオーリ・ピアノによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲録音に乗り出した! 電撃リリースとなる第1 弾は大本命の「熱情」ソナタを含む、初期と中期の充実作3曲!どんどんと新機構を取り入れていったフォルテピアノという楽器の可能性を、楽聖が次々と験していった時期の作品だけに、使用楽器を気にするタイプの奏者がそれぞれのピアノの持ち味をどれだけ引き出せるか?という点が聴きどころではあるが、本盤のチェトゥーエフはその点でみごとに期待に応え、空気の振動をも仔細に伝えるCARO MITIS の秀逸な録音技術とあいまって、スコアの隅々にまでくまなく光をあててゆくかのよう!とくに「熱情」など、ダイナミズム豊かな演奏が冷徹なまでのスコア読み込みのうえで見事にコントロールされており、次は、次は?と聴くほうも真剣になってしまうほど。チェトゥーエフ——このウクライナの俊英、現代音楽にも造詣が深いだけに、今後も周到なスコア読み込みのうえでさらなる面白い世界を築いてくれそう。期待値充分の新全集のスタート、ぜひ今後のリリースにもご注目ください!
Beethoven: Complete Piano Sonatas Vol. 2
CM006-2006
(SACD Hybrid)
(国内盤)
\3360
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集Vol.2
 1. ソナタ第8番 ハ短調op.13「悲愴」
 2. ソナタ第15番 ニ長調op.28
 3. ソナタ第24番 嬰ヘ長調op.78「テレーズ」
イーゴリ・チェトゥーエフ(ファツィオーリ・ピアノ)
第1弾は、文句なしの「レコ芸」特選——そりゃそうです、こんなにウマくて繊細なんだから!ファツィオーリ特有の、あの精緻な機動力をあざやかに生かしきった全集録音第2巻は 「悲愴」を目玉にしつつ、シンフォニックな15番&愛らしい24番、1枚で多彩な魅力満載! やっと出たか!という気がしないでもない、第1弾が好調なすべり出し(『レコ芸』特選、その節は一時プレス切れでご迷惑をおかけしました…)をみせたチェトゥーエフのベートーヴェン全集。ファツィオーリ・ピアノを使い、かつDSD録音でその機微を余すところなく収めた絶妙のピアノ・ソナタ集、第2弾もなかなかバランスのとれたプログラムで、名盤あまたのこの名曲群を、あらためてこのシリーズで傾聴する意義が、はっきりと伝わってくる仕掛けになっているのがまた素晴らしく。冒頭にまず王道名曲「悲愴」を置き(なんて試聴機向きな…)、ピアニシモまで綺麗に均一なファツィオーリの美質をあざやかに印象づけたあと、ダイナミックな4楽章構成のソナタ15番で、この楽器ならではの、緩急自在にして華美さの披瀝に陥らない手堅い魅力を打ち出し、最後に佳品「テレーズ」でさらりと締める。通して聴いても疲れない仕組みではありますが、もったいないので1曲ごとじっくり、その魅力を聴き極めたいところ。ウクライナの名手チェトゥーエフ、相変わらずファツィオーリ使いが完璧。こんなに見事な解釈を聴かされてしまうと、全集録音にまっしぐら・ではなく合間でブラームスとかシューマンとか、近代ものとかもファツィオーリで録音しないかなあ、などと思ってみたり。とまれ文句なしの第2弾、どうぞご注目あれ!

CM006-2007
(SACD Hybrid)
(国内盤)
\3360
ベートーヴェン:ソナタ全集Vol.3
 1. ピアノ・ソナタ 第1番 ヘ短調 op.2-1
 2. ピアノ・ソナタ 第2番 イ長調 op.2-2
 3. ピアノ・ソナタ 第3番 ハ長調 op.2-3
イーゴリ・チェトゥーエフ
 (ピアノ/ファツィオーリ2280912)
初期のソナタで、その腕前をばっちり堪能。ロシア唯一のHybrid-SACD 専門レーベルCARO MITIS で2006 年からスタートした、ウクライナの俊英イーゴリ・チェトゥーエフによるファツィオーリ・ピアノでのベートーヴェン・ソナタ全集。
 軽い気持ちで始めた録音でないことは、作品構造をよく踏まえた充実の解釈の連続に示されているところ。じっさい「熱情」「告別」「第7番」の組み合わせによる第1弾(CM004-2005)は『レコード芸術』で準特選、「悲愴」・「テレーゼ」「田園」と入った第2弾(CM006-2006)は堂々特選!!この曲集の刊行当時、ベートーヴェンは26 歳。彼自身の意志で最初に出版する本格的なピアノ・ソナタ3曲は、ピアノ先進都市ウィーンの聴衆をすぐに熱狂へと誘いました。いずれも師匠ハイドンの影響がありありと息づいている(当時まだ、ハイドンも現役の作曲家でした)短調1曲に長調2曲のこれらのソナタ、実は現代ピアノで弾くのはなかなか厄介、曲構造がわかっていないと、すぐにつまらない演奏結果に...その点、チェトゥーエフはこれまでの実績から、こうした初期ソナタへの適性がいかにあるかは実証済み!!


CONCERTO


CNT2057
(国内盤)
\2940
ピッツェッティ:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ、
 チェロとピアノのためのソナタ
〜イタリア近代、レスピーギの重要な同時代人〜

 イルデブランド・ピッツェッティ(1880〜1968):
  1) ヴァイオリンとピアノのためのソナタイ長調(1919)
  2) チェロとピアノのためのソナタヘ長調(1921)
トリオ・ディ・パルマ イヴァン・ラバーリア(vn)
エンリーコ・ブロンツィ(vc)
アルベルト・ミオディーニ(p)
 20世紀——レスピーギの「ローマ三部作」とともに「イタリアは、オペラだけじゃない!」と作曲家たちが主張し始めたころ。
 その充実した傑作室内楽2編を、曲本来の歌心たっぷりイタリアの名手たちと味わい尽くす喜び。
 イタリアのブラームスかラフマニノフか、堅固な名演!

 イタリアの作曲家といえば、誰もがまず思い浮かべるのは①ヴィヴァルディ以前のバロック作曲家、②ヴェルディやロッシーニやドニゼッティらオペラ作曲家、③ベリオやシェルシら現代作曲家たち、このどれかだと思うのですが(…③になると、もうなかなか出てきにくいですが)、それで全てと思ってしまうのはまったくもって勿体ない話。最も著名な例外として、私たちは(中高生の教科書に出てくるくらい有名な)『ローマ三部作』の作曲家オットリーノ・レスピーギを知っているわけで、そのすぐれた管弦楽作品はオペラの世界にはない、しかし明らかにイタリア人らしい、「歌と情念、芸術と歴史」に彩られた独特の音楽芸術が息づいているのも、少なからぬクラシック・ファンがよくご存知のはず。
 そう、19 世紀までは何を措いてもオペラ一辺倒だったイタリアも、1880 年代くらいから徐々にドイツ的なオーケストラや室内楽への興味が高まりはじめ、そうした音楽を書いて発表する作曲家が徐々に増えてきた末、20世紀前半には「1880 年の世代」と呼ばれた3人の作曲家が、この国に全く新しい、オペラ以外の芸術音楽の礎をしっかりと築き上げたのでした。
 その3人とはマリピエーロ、さきに名をあげた巨匠レスピーギ、そして...本盤の主人公、イルデブランド・ピッツェッティだったのです!
 ピッツェッティは他のふたりよりも意識的に?オペラの世界でも活躍を続け、然るべき名声もものにしていたのですが、その「イタリア人は歌心」という心意気そのままに、彼はとりわけ室内楽方面で注目すべき傑作をいくつか残しています。本盤に収録されているのも、2曲でCD まるまる1枚が埋まるほど、それぞれ聴きごたえのある長大なソナタ。どちらも1920 年前後、つまり時代的にはバルトークやシェーンベルクがさかんに活躍していた頃ではありますが、それは同時に「プッチーニとラフマニノフとR.シュトラウスの時代」でもあったわけです。
 2曲のソナタは彼らの作品にも比しうるスケール感があるだけでなく、その長大さをちっとも冗長と感じさせない、ロマン派風味と巧みな構成力に貫かれた名品。その魅力を縦横無尽に味あわせてくれるのは、近年Concerto レーベルでみるべき活躍を続けているイタリア屈指の名手3人。来日公演も好評だったエンリーコ・ブロンツィの雄大かつ緻密なチェロ演奏もさることながら、ミオディーニの存在感あふれるピアニズムも、ラバーリアの繊細かつダイナミックなヴァイオリン・サウンドも、まさにイタリア人でなくてはたどりつけない色艶に富んだ美の境地。
 イタリア流儀の室内楽の魅力をぞんぶんに味わえる充実した室内楽アルバム...正直、聴き逃すのは惜しい逸品です!

CYPRES


MCYP1663
(国内盤)
\2940
19世紀、ロマン派時代のオーボエ作品さまざま
 〜サロンのための小品とソナタ〜
 ヨハン・ヴェンツェル・カリヴォダ(1801〜1866)
  ①オーボエとピアノのためのサロン小品 作品228
 トマス・アトウッド・ウォルミスリー(1814〜1856)
  ②オーボエとピアノのためのソナチネ
 クララ・シューマン(1819〜1896):③三つのロマンツェ 作品22 〜オーボエとピアノのための
 グスタフ・シュレック(1849〜1918):
  ④オーボエとピアノのためのソナタ 作品13
 アントニオ・パスクッリ(1842〜1924):⑤ナポリの追憶 〜
  オーボエとピアノのための
 アドルフ・デランドル(1840〜1911):⑥序奏とポロネーズ 〜
  オーボエとピアノのための
 ローベルト・シューマン(1810〜1856)/
  ヨーゼフ・ヨアヒム(1831〜1907)編:
  ⑦夕べの歌 作品85-12 〜
   ピアノ連弾曲からオーボエとピアノのために編曲
エリック・スペレール(オーボエ)
トーマス・ディールチェンス(ピアノ)
 19世紀、オーケストラの時代——ロマン派の作曲家たちは、決して、ヴァイオリンやチェロやピアノのためにだけ室内楽を書いていたわけではありません! オーボエの抒情的な魅力を彼らが見過ごしたはずがないのです。
 ベルギーの俊才スペレール、慧眼あらたかな秘蔵名曲選。

 「ロマン派に、室内楽のレパートリーがない!」と管楽器奏者たちが嘆いているとすれば、それは丹念に曲を探していない(もちろん、そんな時間はなかなかとれるものではありませんが)からだったのかも。と、ベルギーの俊才エリック・スペレールがつくりあげたこの素晴らしいオーボエ作品集を聴いて思いました。19 世紀末に巨匠主義・天才崇拝がすっかりクラシック界に根づいてからというもの、聴き手が失神するくらい圧倒的な名作・名演でなくてはだめだ...とばかり、どこかスパルタ的なクラシック鑑賞が長く続いてきたものですが、CD 時代以降(さらにIT革命以降)、そうした天才至上主義が見過ごしてきた音楽史上の遺産はどんどん発掘されていて、穏やかに耳を傾けたくなる、それでいて決してヌルさとは無縁の、磨き抜かれたサロン小品のたぐいが、続々と見出されるようになってきています。
 室内楽大国ベルギーの見過ごしがたい才人たちが丁寧なアルバム作りを続けているCypresレーベルから登場したこのアルバムは、そんな19 世紀楽壇の知られざる音楽のうち、オーボエを主役にした思わぬ名品を、CD まる1枚を埋めきるほどたっぷり集めた逸品。
 作品解説もしっかりしたもので(例によって全訳付)、ドイツ、フランス、イタリア、英国...とさまざまな国の楽壇を彩った、オーボエとピアノの二重奏による傑作の数々を、当時の空気を思い描きながら味わえる充実作です。
 そもそも考えてみてください。メンデルスゾーンやグリーグやドヴォルザークや...といった19 世紀きっての大作曲家たちが、オーケストラ作品のなかであれほど美しいメロディを託しつづけたオーボエという楽器がです、しかも、それらを吹きこなす名手が各地で活躍していた時代に、室内楽シーンでその魅力を堪能できるような逸品が書かれさえしなかった筈があるはずがないわけです。
 クララ・シューマンの影ある抒情、メンデルスゾーンの友人ウォルミスリーの堅固な書法、名手パスクッリの華麗なテクニックがみせるスリルとドラマ、カリヴォダやシュレックの手堅くも忘れがたいメロディセンス。作曲家の知名度への先入観なしに本盤に接してみていただければ、現代音楽にまで通じたT.ディールチェンスのピアニズムをパートナーに得て奏者スペレールがくりひろげる美しい吹奏もさることながら、彼が真の名曲を選び出す慧眼にも心底感服せずにはおれないのではないでしょうか。
 発見の喜びに満ちた、どこをとっても捨て曲なしの1枚——オーボエをますます好きになること必至、見過ごしがたい実力派アルバムの登場です。ご注目を!

CYPRES


MCYP1658
(国内盤)
\2940
知られざる超・実力派作曲家、またしても発見される。
J.G.ヤニッチュ、ベルリン宮廷の実力派
〜六つの交響曲〜
ヨハン・ゴットリープ・ヤニッチュ(1708〜1763)
 1. 交響曲(シンフォニア)変ホ長調
 2. 交響曲(シンフォニア)ト長調I
 3. 交響曲(シンフォニア)ホ長調
 4. 交響曲(シンフォニア)変ロ長調
 5. 交響曲(シンフォニア)ト長調II
 6. 交響曲(シンフォニア)ヘ長調
アンティーキ・ストルメンティ(古楽器使用)
 知られざる超・実力派作曲家、またしても発見される。
 バロック末期というより古典派初期、フリードリヒ大王の宮廷にコントラバス奏者として仕えた謎の作曲家ヤニッチュは、「最初期の交響曲作曲家」でもあった。
 緊密な音作りの逸品群を、秀逸古楽器演奏で。

 「知られざる偉大な作曲家」というのはいくらでもいるもので、その素晴らしさを再発見して新たな演奏で愉しむことほどぜいたくなことはありません。
 ここにもまた「よく知っていたはずの時代」から、思わぬ名品を書く作曲家が飛び出してまいりました。
 ヤニッチュ。
 その名前は音楽史の本などではたまにお目にかかるものの、その作品の実態に触れる機会はめったにありません。そんなところに、欧州東西の超・実力派が集まるドイツ西部の気鋭集団アンティーキ・ストルメンティが、やってくれました!
 ヤニッチュという名前といい、生まれがシェレジエン地方(つまり、マリア=テレジア治世からフリードリヒ大王がかっさらったポーランド北部の土地)である点といい、どうやらポーランド系の作曲家なのでしょうが、彼はフリードリヒ大王がまだ皇太子の頃から宮廷楽員として仕えており、つまりは「軍人王」の綽名を持つ父フリードリヒ=ヴィルヘルム1世に、「フルートにうつつをぬかすんじゃない!」と叱られていた、そんな時代からフリードリヒ大王の音楽趣味につきあってきた人物。
 よくフリードリヒ大王の音楽趣味が脆弱だったとか、C.P.E.バッハの先進的才能をまるで理解しなかったとか否定的な文脈でこの王宮の音楽を説明する文章がありますが、プロイセン宮廷での“王道派”の音楽がいかに美しく繊細な魅力を放つものだったか、今日の私たちをも魅了してやまない味わいに富んでいたかは、昨今次々と再発見されているクヴァンツ、J.G.グラウン、F.ベンダ...といった「王の寵愛を受けた」作曲家たちの作品を聴けばよくわかること。
 そしてそのことがこのヤニッチュにもまったく言えるわけで、全3楽章からなるイタリア・オペラ序曲形式を応用したシンフォニア(というより、もう18 世紀半ばの作例なのですから「交響曲」と言ってしまって差し支えないと思います)の数々は、当時の多くの合奏曲のように弦楽合奏だけに甘んじず、ナチュラルホルン2本を効果的に盛り込み、アクセントの利いた実に痛快な音作り。 
 ところどころフルートやオーボエも交じえ、当時急速に進化したプロイセン宮廷楽団の闊達な演奏ぶりもかくや、と思わせるスタイリッシュな古楽器演奏が楽しめます。
 ほどよい残響感ある自然派録音も好感度大(Alpha でも活躍するA.ブロンディオのエンジニアリング)。末永く楽しめそうな貴重な発見、聴き逃しては大損です!

FOK(プラハ放送響自主制作盤)


FOK0004
(国内盤)
\2940
「いま最も生で聴きたくてたまらない指揮者」のひとり、イジー・コウト
リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949):
 1. 交響詩「ドン・キホーテ」op.35*
 2. 交響詩「死と変容」op.24
イジー・コウト指揮
プラハ交響楽団(FOK)
* ミロシュ・ヤホダ(チェロ)
イジー・フルニーク(ヴァイオリン)
パヴェル・ペジナ(ヴィオラ)
 チェコ→ドイツ→チェコ。
 叩き上げの巨匠イジー・コウトが、ドイツ=オーストリア系の最も贅沢なレパートリーを真っ向から受け止め、きわめて充実した解釈に仕上げてくれました。2度にわたる来日未遂の虚を補ってあまりある嬉しいリリース、じっくり聴き深めたいものです。
 2009 年、2011 年——近年は2度も来日のチャンスがありながら、どちらもやむにやまれぬ理由でキャンセル。日本にも熱心なファンは多いにもかかわらず来日が果たせず、中欧の音楽家魂と叩き上げのドイツ=オーストリア作品への適性を誇る新時代の巨匠イジー・コウトこそは、多くのクラシック・ファンにとって「いま最も生で聴きたくてたまらない指揮者」のひとりなのではないでしょうか?
 中欧きっての音楽大国チェコで早くから才能をあらわし、当時の言い方に従えば“西側”の世界的イヴェントであるブザンソン青年指揮者コンクールでも華々しい実績をあげ、超・実力派として将来を嘱望されながら、1968 年のソ連軍チェコ介入にさいしても自らの信念を曲げなかったため若くして国外追放、しかしその後は西ドイツを中心に着実にキャリアを積み重ね、ドレスデンやベルリンの劇場でまたとない経験を積み、いつしか冷戦後の祖国からも熱狂的に受け入れられる世界的名匠のひとりに。そんなイジー・コウトは今や2006 年秋のシーズン以降、祖国の首都プラハでもとくに歴史あるオーケストラのひとつ、プラハ交響楽団の首席指揮者として、国内外とも認める大指揮者といって差し支えないでしょう。
 さて、ということで今回のアルバム。すぐれたワーグナー歌劇指揮者であるとともに、交響曲や管弦楽作品などの指揮者としても高く評価されているコウトのタクトで、ドイツ語圏のオーケストラ音楽のひとつの絶頂ともいうべきリヒャルト・シュトラウス作品を聴けるというのは、来日公演の欠如を埋め合わせるに足る歓迎すべき音盤リリースではないでしょうか?
 大作中の大作「ドン・キホーテ」と、短いながらオーケストラの様々なセクションがごまかしようのない腕前を持っていないと美しく仕上がらない「死と変容」。プログラム的にも申し分ありませんが、やはり演奏内容がとても素晴らしい「ドン・キホーテ」では、オーケストラの首席奏者たちをソロに立てるという本来あるべきスタイルで(とはいえ何しろ名門楽団、3者とも実に聴かせどころを心得ていらっしゃる…)、引き締まったアンサンブルを紡ぎながら緻密な解釈を重ねて壮大なスケール感へとむすびつける。その職人技ともいうべき作品解釈の確かさに、強く心打たれずにはおれません。「死と変容」でもプラハ交響楽団の実力派ぶりがみごと引き立つ充実演奏が実に頼もしいところ。冒頭からしばらく続く弦楽部分の味わい深さ・美しさにも、しみじみ聴き惚れずにおれないでしょう。
 オーケストラ自主制作レーベルFOK、第4 弾にしてこの仕上がり——「別指揮者」「新旧交響曲2作」「ソロつき定期公演風」と来て、ある意味ひとわたりのお披露目はこの4作目で一段落という気がしないでもないので、次はぜひドヴォルザークやマルティヌー(まだ1曲も出ていない)の傑作交響曲あたりに臨んでいただきたい頃?
 何はともあれ、いろいろな意味で期待感をそそる充実至極の1枚であります。


輸入盤、既発売

FOK 0004-2
\2300→¥2090
イジー・コウト&プラハ響
 R・シュトラウス(1864-1949):
  交響詩「ドン・キホーテ」Op.35(*)
  交響詩「死と変容」Op.24(+)

録音:2009年1月7-8日(+)、9月16-17日(*)、プラハ市民会館スメタナ・ホール、ライヴ
プラハ交響楽団
イジー・フルニーク(ヴァイオリン(*))
パヴェル・ペジナ(ヴィオラ(*))
ミロシュ・ヤホダ(チェロ(*))
イジー・コウト(指揮)


FUGA LIBERA


MFUG590
(国内盤)
\2940
“ドビュッシーのトンボー”
 〜ドビュッシーの『練習曲集』と後期作品、そして追悼作品〜
クロード・ドビュッシー(1862〜1918):
 ①英雄の子守歌〜
  ベルギー国王アルベール1世陛下とその兵士たちに敬意を表して(1914)
 ②練習曲集 第1巻・第2巻(1915)
 ③アルバムの一葉:慈善団体「負傷者の衣」のために(1915)
 ④悲歌(1915)⑤炭火の温もりに照らされた、日々の夕暮れ(1917)〜
〜ドビュッシーへの追悼作品さまざま〜〜
 マリピエロ(1882〜1973):⑥レント
 デュカス(1865〜1935):⑦牧神の遥かな嘆き
 バルトーク(1881〜1945):⑧ソステヌート・ルバート
 ルーセル(1869〜1937):⑨ミューズたちの歓待
 ファリャ(1876〜1946):⑩讃歌(ドビュッシーの墓に捧ぐ)
 ストラヴィンスキー(1882〜1971):⑪「管楽器によるサンフォニー」のための断章
ヤン・ミヒールス(歴史的ピアノ)
使用楽器:エラール1892年製作オリジナル

 今から100年前の「ほんとうの響き」。当時の楽器でこそ、ドビュッシーの思い描いた革新的音響の真相がわかるはず。
 最新発見の遺作をはじめとする秘曲群と「練習曲」で歴史的楽器の名手が問い直すドビュッシーのピアニズム、そして驚くべき追悼作品群。

 ヤン・ミヒールス、ブリュッセル王立音楽院で教鞭をとるこの俊才、すでにFugaLibera レーベルではさまざまな演奏者の共演者として活躍をみせてきましたが、ついに録音してくれたこのソロ・アルバムは、企画も周到なら演奏もみごとなまでに充実した内容。
 ドビュッシーの後期作品に光をあて、ピアノの音響世界を一新させたこの大作曲家が晩年に綴った隠れ重要作である2冊の「練習曲集」を軸に、2001 年に新発見された(!)ドビュッシー最後のピアノ曲(炭火の温もりに...)や「悲歌」などの秘曲を併録。さらにドビュッシーが亡くなったさい、大作曲家たちが『ルヴュ・ミュジカル』誌の呼びかけに応じて作曲した追悼作品まで集め、ドビュッシーのみならずバルトーク、ファリャ、ストラヴィンスキー...といった名匠たちの音楽世界までも「当時の楽器」で問い直そうという、実に刺激的な内容なのです。
 これが単なる「歴史的ピアノで弾きました」というだけの企画でしかなかったら、単なる物珍しさで終わるでしょう——しかし、そこはさすが名手ミヒールス。今のピアノとはだいぶ異なる古雅なエラールの響きをよく理解し、かそけきピアニシモから壮麗なフォルテまで、和音も単音も実に美しい音色をこの歴史的楽器から弾き出してみせ、「これが100 年前の、ほんとうのドビュッシー周辺の響き...?」と、作品像を静かに一新させてくれる魅惑の解釈で仕上げてくれているのです。
 当時の響きの嗜好や作品背景に言及した充実解説も全訳付。ドビュッシー=ジャポニズム!のジャケットも美麗な、価値ある1枚なのです。


MFUG586
(国内盤)
\2940
ジョンゲン:ヴィオラとピアノのための作品全集
 〜ベルギー近代、フランスとドイツのあいだで〜

 ジョゼフ・ジョンゲン(1873〜1953):
  ①アレグロ・アパッショナート 作品79〜ヴィオラとピアノのための
  ②序奏と舞踏 作品102〜ヴィオラとピアノのための
  ③ヴィオラとピアノのための小協奏曲 作品111
  ④演奏会用練習曲 作品65-2〜ピアノ独奏のための
  ⑤ヴィオラとピアノのための組曲 作品48
  ⑥真昼の太陽 作品33-1〜ピアノ独奏のための
  ⑦アンダンテ・エスプレッシーヴォ〜ヴィオラとピアノのための
ナタン・ブロード(ヴィオラ)
ジャン=クロード・ファンデン・エインデン(ピアノ)
 日本でも静かに人気を高めてきたベルギー近代きっての巨匠ジョンゲン。その作風を最も美しく活かせるのは、やはりヴィオラだったのかもしれない。
 作曲者と同郷のすばらしい感性の持ち主が、古参の名匠とじっくり織り上げる響きは、どこまでも薫り高く、奥深い...!

 「フランス以外にも、繊細な音楽があった!ドイツ以外にも、骨太な音楽があった!」この二つの、一見矛盾するような驚きをいっぺんに味あわせてくれるのが、日本でもここ15年ほどでじわじわ知られるようになってきたベルギー近代の音楽。
 1900年前後にはフランス語を公用語としながら、オランダ語圏も多く地理的にもドイツに近い関係上ドイツ音楽の伝統をくむ作曲活動もさかんで、さらに同じフランス語話者の世界である隣国フランスに花咲いた全く斬新な印象主義音楽などの新芸術にも敏感に反応、ワーグナー的美質をほどよく取り入れた美的感覚のうえでさらに全く個性的な音作りも展開してみせたジョゼフ・ジョンゲンこそ、このベルギー近代で最も注目すべき作曲家。
 ベルギーCypres レーベルで継続的にリリースされてきた6枚のジョンゲン・アルバムは、この国で活発な演奏活動を続ける実力派たちによる非常にクオリティの高い演奏結果ゆえ、その認知度向上に大きく寄与してきたところ、巷では諸外国の演奏家もジョンゲン作品を折に触れて録音するようになりました。
 しかし、やはり「同郷人」の演奏には——サティやプーランクなどのフランス音楽に、フランスの“粋”を肌で感じてきた同郷人にしかわからない境地があるのと同じく——ベルギー近代音楽でも、ひときわ深い共感からくる比類ない味わいが宿っているようです。
 ここに集められたのは、高い音で騒ぐこともなければ地を這うような低音も出さない「中庸」の楽器、大人びた中音弦の響きが魅力のヴィオラ。プロアルテ四重奏団をはじめとするヨーロッパ随一の室内楽奏者たちと親しかったジョンゲンは、英国人のヴィオラの名手ライオネル・ターティスとの交友でも知られ、充実したヴィオラ作品をひとしきり残しているのですが、それらの作風は(少し後の)同時代人ヒンデミットやバルトークのそれのような鬼気迫る勢いではなく、ロマン派の香りを残した、あるときはひたすらに繊細な音色で、あるときは骨太の味わい深い楽曲構造で、弦楽器の美しさをじっくり堪能できる魅惑の響き愉しませてくれる名品ぞろい。
 協奏曲、組曲...といった規模の大きい作品の聴きごたえも、印象主義音楽との快い関連性をほのかに感じさせるサロン的小品の美も、ベルギー随一の名手ナタン・ブロードの驚くほど闊達な弓さばきと絶妙な美音で心ゆくまで愉しめる——2曲のピアノ小品も含め、対等以上のパートナーシップを発揮する名教師ピアニストの立ち回りも痛快、末永く付き合えそうな名盤の登場です!

FUGA LIBERA


MFUG582
(国内盤)
\2940
大作曲家たちによる弦楽四重奏のための小品
〜ロマン派から近代へ〜
 ヴォルフ(1860〜1901):
  ①イタリアのセレナーデ(1887)
 ヴェーベルン(1883〜1945):
  ②弦楽四重奏のためのラングサマー・ザッツ(1905)
 シェーンベルク(1874〜1951):③プレスト ハ長調(1895頃)
 メンデルスゾーン(1809〜1847):④カプリッチョop.81-3(1843)
 チャイコフスキー(1840〜1893):
  ⑤弦楽四重奏のための断章 変ロ長調(1865)
 ブリテン(1913〜1976):
  ⑥アッラ・マルチア(行進曲風に)(1933)
 シベリウス(1865〜1957):
  ⑦アンダンテ・フェスティーヴォ(祝祭的アンダンテ)(1922)
 ラフマニノフ(1873〜1943):⑧ロマンス ト短調(1889)
アルファマ四重奏団
エルサ・ド・ラセルダ(第1vn)
セリーヌ・ボドソン(第2vn)
クリス・エルマンス(va)
レナート・アッカールト(vc)
 19世紀から20世紀にかけ、室内楽の王道でもあった「弦楽四重奏」。しかしそこには安らぎあり、実験あり、はたまた磨き抜かれた佳品あり、「小さきもの」を描き出せる可能性もあふれていた。
 大作曲家たちの思わぬ小品群を、実力派集団が、じっくりと。

 弦楽四重奏——それはロマン派以降の作曲家たちが、室内楽の最もオーセンティックな編成として偏愛した演奏スタイル。
 管弦楽における「交響曲」に相当する正統派ジャンル「弦楽四重奏曲」を書くための編成ですが、しかし「弦楽器奏者が4人集まって」という基本的なセッティングは、18 世紀以来アマチュア音楽家たちが自分たちの愉しみのために音楽を奏でるときの基本スタイルでもあったわけで、ロマン派〜近代の頃には「弦楽四重奏曲」ほど肩肘張った本格派ではない、弦楽四重奏編成のためのごく寛いだ小品というものも多々書かれていたわけです(たとえばワルツとか、オペラの序曲やアリアの編曲とか...)。

 ここに集められている「弦楽四重奏のための小品」というのは、そこからもう少し踏み込んで、大作曲家たちが気楽な楽しみのために書いた曲のほか、若い頃に新しい作曲理念をためす場として弦楽四重奏編成を使ったもの(ヴェーベルン)、師匠とのレッスンや仲間内での室内楽遊びから生まれた少年時代の作品(ブリテン、ラフマニノフ)など、生み出された段階ではまだ本格的なアート・ピースとして機能していなかったような断片的作品も含まれているようです。
 しかし、なにしろ書き手はすべて申し分ない「大作曲家」たち。未来の才能の片鱗を垣間見せる小品もあれば、大作での作風から一転、寛いだ空気がいかにも心地よい小品もあり、作者の名前を伏せて聴きながら、あとで誰だったか確かめて遊ぶのにもよさそうな思いがけない佳品が居並び、通しで流していても、途中から曲を拾って聴いても、いろいろなアプローチで愉しめるプログラムなのです。
 またヴェーベルンの「ラングサマー・ザッツ」やメンデルスゾーンのカプリッチョ、ヴォルフの「イタリアのセレナーデ」など、それ単体で比較的知られた重要作もぬかりなく収録してくれているあたりも小憎いところ。
 演奏陣は室内楽がさかんな音楽大国ベルギーの俊才4人、アルファマ四重奏団。さりげなく熾烈な競争社会でもあるブリュッセル楽壇をしなやかに生き抜く名手たちのアンサンブルは、作品美をきわだたせながら充実したプログラム配列で聴かせる周到な腕前が実に頼もしい!
 派手さはないけれど、静かにロングセラーとなりそうな好感度抜群の室内楽盤です。

GRAMOLA


GRML98883
(国内盤)
\2940
「これほど心を打つバッハの演奏を、私はほとんど聴いたことがありませんでした」
 ——パウル・バドゥラ=スコダ

バッハ:
 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2・3番、パルティータ第2番(シャコンヌ付)
  〜ウィーン、18世紀の楽器、新しい世代〜
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 1) 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 第2 番イ短調 BWV1003
 2) 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3 番ハ長調 BWV1005
 3) 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータニ短調 BWV1004(シャコンヌ付)
前田 朋子
 (vn・ストラディヴァリウス1709年モデル)
 「音楽の都」の最前線。アルノンクールの古楽器バンドやモザイクSQでおなじみのエーリヒ・ヘーバルト門下から、真摯にバッハを見据えた頼もしい解釈者が現われた。
 巨匠バドゥラ=スコダ絶賞。ストレートに心に響いてくるヴァイオリンの響き、聴き逃せません。

 「前田さんは、私たちの時代の優れたヴァイオリニストです——彼女の演奏の素晴らしさは、完璧なテクニックと、心に語りかけてくる彼女自身の表現力にあります。これほど心を打つバッハの演奏を、私はほとんど聴いたことがありませんでした」——“音楽の都”ウィーンでも最長老格というべき巨匠パウル・バドゥラ=スコダは、前田朋子氏の弾くバッハについてこう熱っぽく語ります。いつものように、経験の豊かさがその透明さと深さにあらわれている、あの悪戯っぽい両目を輝かせて...。
 バドゥラ=スコダのような第一線の巨匠がフォルテピアノ演奏のパイオニアとして活躍するのも当たり前になっているこの音楽都市で、新世代の日本人奏者が着実に実力を養いつつあります。
 前田朋子——
 早くからデュッセルドルフで実力を養い、ウィーンではアルノンクール率いるウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの首席奏者にしてモザイク四重奏団のトップ奏者でもあるバロック・ヴァイオリンの名匠エーリヒ・ヘーバルトに師事する彼女が弾くバッハ。それは、現代楽器のスタイルに凝り固まらず、さりとてバロック奏法を必要以上に意識せず、実に伸びやかに、彼女自身の感性とバッハの傑作との出会いを実に真摯に音にしています。
 本盤の演奏に接してみれば、上に掲げたバドゥラ=スコダの言葉の意図するところがきっとよくわかることでしょう。
 第3 ソナタの長大なフーガの軽やかな主題も、第2 ソナタの祈るような緩徐楽章の美も、これほどストレートに心に刺さってくる演奏に、どれだけ出会えることか。そして最後に置かれた第2 パルティータの長大なシャコンヌを、あくまでさりげなく穏やかに、楽器の鳴りをよく捉えた響きで織り上げてゆくところ・・・。この録音を聴いていると「バッハ無伴奏」の桁外れな素晴しさに気圧されることなく、その美しさをストレートに隅々まで味わうことが出来ます。
 エンジニアリングはPan Classics などでもおなじみの俊才イェンス・ヤーミン。弾き手自身も絶賛するストラディヴァリウス・モデルの復元楽器の美音と、弾き手自身の音作りを尊重した適切なエンジニアリングも好感度大。 残り3曲のアルバム制作も進行中とのこと、軽快なBWV1006 や充実したBWV1001 の解釈も今から楽しみ。

GRAMOLA


GRML98928
(国内盤)
\2940
思いがけぬ超・名盤が復活——
ショスタコーヴィチ(1906〜1976):
 1. ピアノ協奏曲第1 番(ピアノ、トランペットと弦楽合奏のための)ハ短調 op.35
  ヴラディーミル・ゴンチャロフ(tp独奏)
 2. ピアノ協奏曲 第2 番ヘ長調 op.102
パウル・グルダ(ピアノ)
ヴラディーミル・フェドセーエフ指揮
モスクワ放送交響楽団
 思いがけぬ超・名盤が復活——ソ連崩壊から間もなくの頃、ドイツで秘かに制作されていたとてつもなく豪華な顔ぶれの傑作盤が、思いがけないタイミングでGramolaで正規復活!
 フェドセーエフの冴えわたるタクト、闊達至極のパウル・グルダのセンス...これは聴き逃せない。なぜこんなとてつもない録音が眠っていたのか、ちょっとわかりかねますが——モスクワ放送交響楽団がソ連崩壊直後、1992〜93 年に録音した...というところから、ひょっとすると冷戦終結と何かしらの関係があるのかもしれません。何はともあれ、ごらんのとおりクラシック・ファン垂涎の顔ぶれで録音されたショスタコーヴィチの「隠れ傑作」ふたつ。
 確かに競合名盤は数あれど、ストレートなスケール感、引き締まった音作りでたたみかけるように迫力満点・抒情あふれる響きを打ち出すロシア最大級の巨匠指揮者ヴラディーミル・フェドセーエフが、手兵モスクワ放送響を率いてショスタコーヴィチの世界へ...というだけでもゾクゾクしますが、そこでソリストに迎えられたのがウィーン楽壇きっての異才フリードリヒ・グルダの息子のひとり、多芸さと父譲り?の絶妙のピアニズムで現代の聴き手を魅了してやまない俊英パウル・グルダ。ましてや演目がトランペット付の異色傑作と、隠れファンがおそらく多いに違いない「第2 番」、つまりショスタコーヴィチが若き日にプロ演奏家となろうとした楽器・ピアノのために書いた充実の協奏曲2作とあっては、聴き逃す手がどこにありましょうか?
 このアルバム、上述のとおり録音年代はやや古めなのですが、1990 年前後のフェドセーエフに名盤が多いのはご存じのとおり。かつてオーストリアの超・小規模レーベルMusicaから一度リリースされたことはあったようなのですが、なにしろ当のMusica はその後間もなく活動休止、ほどなく取扱なしになってしまったお蔵入り音源。意外にも目につかなかったのでしょうか、ただでさえ日々アイデア満載のパウル・グルダも「昔より未来」とこの録音のことはとくに気にとめなかったのでしょうか、はたまたフェドセーエフ&モスクワ放送響の事情でもあったのでしょうか...ともかくも秘蔵音源になってしまっていた本盤を、「音楽の都」ウィーンの真ん中に拠点を置くGramola レーベルがめでたく正規リリースしてくれることになりました!

INDESENS!


INDE035
(国内盤・訳詞付)
\2940
ワーグナー(1813〜1883):
 楽劇『トリスタンとイゾルデ』〜イゾルデの歌唱を中心とする室内楽編曲版
  (編曲:ジャン=ピエール・アルノー)
アンサンブル・カルペ・ディエム
カトリーヌ・モンティエ(vn)
クリストフ・ゴーグ(va)
エリック=マリア・クチュリエ(vc)
イーゴル・ボラニアン(cb)
ダヴィド・ロートヴー(hrp)
マリーヌ・ペレ(fl)
ジャン=ピエール・アルノー(ob, her, 総指揮)
ジャン=ベルナール・ボーシャン(tp)
フィリップ・ブレアス(hr)
ニコラ・マルティンチョフ(timp)
クリスティーヌ・シュヴェツェール(ソプラノ)
ランベール・ウィルソン(語り)
 この高雅さ、『トリスタン』の匂いたつような美しさ——あまりにもフランス的、あまりにも艶やか。
 『トリスタンとイゾルデ』の原作は、英国を舞台とするフランスの中世物語。語り手とイゾルデの歌を中心に、序曲から「愛の死」までを濃密に描き出す、稀有の室内楽編曲!

 「管弦楽傑作の室内楽編曲」・・・21 世紀初頭、ドイツ語圏をはじめとする世界各地で静かなブームが巻き起こって以来、名作に潜んでいた思わぬ位相を浮かび上がらせる正統なスタイルとして、室内楽編曲版はさまざまな名演を生み続けてきました。
 ブルックナーやマーラーの交響曲、ドビュッシーの管弦楽作品、少し古いところではショパンのピアノ協奏曲の室内楽版がすっかり市民権を得ていたりしますし、このジャンルは今後ますます「思わぬ名盤」を続々生んでくれるに違いありません。そして事実、このアルバムのような秀逸企画も生み出されているのです。
 『トリスタンとイゾルデ』。
 あのCD3〜4枚にわたる大作から(ただの名場面集とは明らかに違うコンセプトで)イゾルデの歌を中心に非常にうまくCD1枚分の音楽を選び出し、周到なプログラム進行に組み上げ、ソプラノ歌手ひとりと物語の説明役である「語り」を入れ、小規模バンドを楽隊席に配した極上のシアターピースのように仕上げてみせたこのアルバム。
 仕掛け人は、かつてAmbroisie レーベルでベルリオーズ作品の思わぬ室内楽編曲をリリースしていたフランスの超・実力派集団カルペ・ディエム、およびそのオーボエ奏者で編曲家のジャン=ピエール・アルノー。
 パリ・オペラ座の名手が多々居並ぶこのアンサンブル、すでに「魔笛」「ファウスト」「ロシアの夏の夜」といった独特の編曲ステージで成功を収めてきたアンサンブルですが、なにしろ主宰者=編曲者アルノーがパリ・オペラ座のコーラングレ(イングリッシュホルン)奏者だったことが、実は大きなポイントだったようで、『トリスタンとイゾルデ』第3 幕の冒頭に聴くあのコーラングレのソロをさまざまな大指揮者のもとで吹いてきたアルノーだからこそ、このようなユニークかつ端的な企画を驚くべき完成度で織り上げ得たのでしょう。
 フランスのドイツ系歌手シュヴェゼールの濃密かつ艶やかな歌といい、言葉の壁を越えて穏やかに響いてくる「音」でもある名優ウィルソンの語り(フランス語)といい、人の声のたとえようもない美もさることながら、聴きどころはやはり、弦4・ハープ1・木管2・金管2・打楽器という編成で端的にまとめられた編曲の妙。フルオーケストラから音を抜いた結果とはとても思えない、むしろ「大きく拡大された室内楽」として無辺の広がりを感じさせる音の綾に、前奏曲から心を蕩かされること間違いなし。
 じっくりCD1枚分、できるだけおいしい強い酒を用意して耽溺したいアルバムに仕上がっています。

NCA


NCA60235
(国内盤)
\2940
テレマン(1681〜1767):
 『ダンツィヒのマタイ受難曲』TWV 5-53(1754)
パール・ネーメト指揮
カペラ・サヴァリア
ハレ・カンタムス室内合唱団、 (古楽器使用)、
ハレ・ブーケ・ヴォカリス男声合唱団
マルティン・クリートマン(T)
ク ラウス・メルテンス(Bs)
 時代はすでに古典派前夜。バロックの巨匠テレマンの「晩年の境地」は、実に奥深く刺激的。
 あざやかにドラマを描き出す古楽器バンド、圧倒的な合唱の表現力。ハンブルクの巨匠が北海に臨む古都のために作曲した異色の名作を、世界的古楽奏者たちの充実解釈で!

 テレマンといえば、誰もがまっさきにイメージするのは「リコーダーやオーボエやヴァイオリンなど、さまざまな楽器のためにとてつもない数の合奏曲・室内楽曲を書き、生前は大バッハよりもはるかに人気があったバロックの大家」としての彼だと思います。
 しかしあまりに多作なため、その偉業を20 世紀の人々にあらためて知らしめたリコーダー奏者フランス・ブリュッヘンも、リコーダー演奏をやめ指揮活動に専念するにあたり「もうテレマンはたくさんだ!」などと言い放ったとか・・・。だから今でも、時には聴く前から「ただ書き散らしただけ、バッハには及ばない」と勝手にきめつけられてしまうことだって、かなりあると思います。しかし音楽史研究の現場は、テレマンが凡庸な人気作曲家などではまるでなかったことをよく知っています・・・。そう、それはバロックにたずさわる専門家たちが、テレマンをただ楽器のための作曲家とは思っていないから。器楽曲があまりにセンス抜群かつ無数にあるせいで意外と知られていないのですが、テレマンは生涯の拠点となったハンブルク市に音楽監督として雇われたといっても、それは催事のための合奏曲ばかり書け!と任されたポストではなくて、日々の仕事としてはあくまで(バッハがライプツィヒ市に雇われた時と同じく)市内の教会で礼拝のたびごと演奏される教会音楽をどんどん書き、指揮すべし!という職務があった...つまり、彼の多作ぶりは合奏曲や室内楽曲よりもむしろ教会音楽で発揮されていたのであって、今なお演奏を待っているテレマンの教会声楽曲はそれこそ無数にあるわけです。
 音楽学者たちはそれらのクオリティ、それもとくに晩年ひたすら宗教曲ばかり書くようになってからの飛び抜けた表現力を知っているからこそ、いつまでもテレマンを高く評価し、研究しつづけていたわけです。
 なにしろ彼はおよそ30 年以上ものあいだ、毎年のように受難曲を新作していたそうですし、近年ドイツ古楽界を中心にそれらの復活演奏や録音が相次いでいますから、聴き手としてはまだまだ新しい傑作に出会える愉しみがたっぷり残されているというわけです。
 そしてここで発掘されてきた1754 年の『マタイ受難曲』は、そうしたテレマン晩年の宗教曲ならではの迫真の表現力がいかんなく発揮されているのです。
 受難物語の登場人物をソリストが歌うのではなく、福音書記者のレチタティーヴォ以外はほとんど合唱がうたいあげるという古風な作法をあえて用いながら、センス抜群の合奏曲作曲家として蓄積してきた経験はオーケストラ部分の鮮烈なサウンドにしっかり反映され、いわばブラームスやドヴォルザークの管弦楽付き大規模声楽曲のバロック版ともいうべき充実した鑑賞体験をもたらすのです!
 そんな作品美も、やはり演奏団体がしっかりしていればこその話——本盤では今から20 年前に「弦の国ハンガリーに、卓越した古楽バンドがある!」と世界に知らしめて以来、中欧古楽界できわめて充実した活躍を続けているカペラ・サヴァリアとその音楽監督パール・ネーメトが精彩あざやかな演奏を織り上げ、テレマンの知られざる境地をじっくり伝えてくれてくれます。

NCA


NCA60231
(国内盤)
\2940
ギロヴェッツ:四つのピアノ三重奏曲
 〜明敏なる晩期古典派の名匠〜

ヴォイチェフ・マティアーシュ・イロヴェツ、
通称アーダルベルト・ギロヴェッツ(1763〜1850):
 ヴァイオリンとチェロの助奏付ピアノ・ソナタ(=ピアノ三重奏曲)
 1. ソナタ 変ホ長調 作品23-2(1790)
 2. ソナタ 変ロ長調 作品28-1(1792)
 3. ソナタ ニ短調 作品14-2(1790)
 4. ソナタ イ長調 作品22-1(1790)
トリオ・フォルテピアノ(古楽器使用)
ミリアム・アルトマン(フォルテピアノ/シュタイン1780年オリジナル)
ユリア・フーバー(ヴァイオリン) アーニャ・エンデルレ(チェロ)

 ハイ・クラシカル(後期古典派)の忘れがたい名匠、ギロヴェッツの実力は「折り紙つき」!
 モーツァルトも感嘆し、ウィーンの耳の肥えた聴衆からも愛されたセンス抜群の古典派書法。ドイツ最前線の精鋭集団による巧みな古楽器演奏で。

 ハイドンやモーツァルトたちによって完成の域にまで洗練されていった「ウィーン古典派」の音楽スタイル。巨匠中心の音楽史に従えば、それを「真に完成の域にまで導いた」のはベートーヴェンだった...ということになるのでしょうが、しかしベートーヴェンはその活動期の前半ですでに古典派様式をきわめつくしてしまい、あとは彼なりの破壊と再創造にいそしんでいたわけです。いってみれば、ベートーヴェンはあくまで自分自身と戦っていただけであって、スタイリッシュな古典派美をきわめつくす、といったようなことは、同時代の周囲の作曲家たちが好きにすればよいと思っていたのでしょう。
 だから私たちは、つまり逆に言えば、ハイドンやモーツァルトら18 世紀の作曲家たちが磨いてきた古典派様式の完成形は、ベートーヴェンと同じ頃生きていた当時の「人気作曲家」たちにこそ見出せるのです。
 なにしろ1800 年前後のウィーンにいた音楽愛好家たちは、ベートーヴェンの(当時としてはとくに)難解きわまる音楽にじっくり付き合うくらい審美眼の高い人たちだったのですから、当時のウィーンでは当然、つまらない音楽を書く作曲家はどんどん淘汰され、人気のある人物はたいへんな実力派作曲家ぞろいだったわけです。
 そのことを何より明らかに実証してくれる隠れ名匠のひとりが、このギロヴェッツ!つづくロマン派世代にとっては、整然としたソナタ形式の形式美に絶妙のウィットと機微がいたるところに織り込まれているギロヴェッツ作品は「革新のない音楽」と聴こえてしまったようですが、野心が高じて「革命に命を投じても惜しくない!」という気持ちで生きていたロマン派の芸術家たちの感覚をうのみにして、21 世紀の私たちの心を安らがせ、刺激してやまない晩期古典派の傑作にまったく意識を向けないなんて、実にもったいない話です。
 古楽復興の波に乗って、かつてはイングリッシュ・コンサートの伝説的トップ奏者たちによるザロモン四重奏団が四重奏曲の名録音を残したり、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズの「モーツァルトの同時代人たち」シリーズでもとりあげられて良好な古典派センスを「いま」の私たちにもあらためて印象づけてくれたギロヴェッツ。生前は彼の書いた交響曲がいくつか、売上増をねらった出版社たちによって「ハイドン作」として大いに売れ、レッスンを授けたモーツァルトもその作曲センスに感嘆して交響曲を演奏会でとりあげるなど、ソナタ形式を扱うセンスの良さは先人たちの折り紙つき。
 シュタイアー門下のフォルテピアノ奏者やドイツ西部の一流グループで多忙な活躍をみせる弦楽器奏者たちが、これまた絶妙の演奏センス(欧州最前線には、もはやセンスのない古楽奏者などいないかのよう...ウマいです!)で聴かせてくれるピアノ三重奏曲は、古楽器なくしては真価の伝わりにくいこのジャンルの多彩な魅力を十全に伝える名曲・充実作ぞろいです。


NCA


NCA60221
(国内盤)
\2940
W.F.バッハ ある天才作曲家の生涯
 〜室内楽曲・鍵盤楽曲さまざま、初期から晩年まで〜
 ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(1708〜1784)
  1) 2本のフルートと通奏低音のためのソナタ ニ長調
  2) 幻想曲 ホ短調 〜鍵盤独奏のための
  3) 2挺のヴィオラのための二重奏曲 ト長調
  4) ポロネーズ ホ短調 〜鍵盤独奏のための
  5) フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調
  6) ポロネーズ ホ長調 〜鍵盤独奏のための
  7) 2本のフルートのための二重奏曲 ホ短調
  8) フルート、ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ 変ロ長調
ベルリン・サン・スーシ・アンサンブル(古楽器使用)
クリストフ・フントゲブルト、
アンドレア・タイネルト(ft)
イルムガルト・フントゲブルト(vn・va)
アダム・レーマー(va)
ピロシュカ・バラニアイ(vc)
ラファエル・アルパーマン(cmb)
 貧困のうちに亡くなった...? そんなのはモーツァルトやヴィヴァルディも同じこと。
 この天才特有の、あの人心をざわつかせる美質の正体は、初期から晩期まで聴いてこそ浮かび上がってくる。解説充実、演奏極上。謎多きフリーデマンの真相と真価が、ここに!

 大バッハの長男ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハについては、父があまりにも偉大すぎたこと、弟のエマヌエル・バッハが当時は圧倒的な国際的名声をはせていたこと、プロ音楽家としてはあまりに素行が悪く、最後は貧困のうちに亡くなったこと...と、さまざまな要素のせいでおそらく、聴かないうちからなんとなく軽んじてきた人も少なくないのでは。
 しかし、考えてもみてください——音楽というのは気まぐれな世間の世情にも左右されますから、たとえばヴィヴァルディやモーツァルトのように、ひとたび栄華を誇って傑作を多々書いたあと、人気がなくなり最後は貧困に悩まされて死んだのに、現在とてつもなく高く評価されている天才作曲家だってたくさんいるわけです。W.F.バッハだけ「結局それだけの人だった」と、聴かないうちから切り捨ててしまうのはあまりにもったいない話。
 なにしろご存じのとおり、父である大バッハは「自分の最高の弟子はフリーデマン」と折に触れて標榜していたのです。
 バッハの数ある鍵盤のための難曲を、最初に弾きこなした天才のひとりが、このフリーデマンだったのです。
 おそらくはそれらの難曲の曲構造まで、みごとに理解してのこと。そんなフリーデマンが辿った75 年以上の長い年月を、はじめの方から終わりの方まで、いかにも特徴的なさまざまな楽曲を通じて辿ってゆくと、この天才の強い個性が少しずつ浮かび上がり、いつしかすっかり虜になってしまうでしょう。そんな体験を約束してくれる充実アルバムが、ドイツ最先端の古楽シーンから届きました。
 いつのまにかケルンと並ぶドイツ屈指の古楽都市にもなっていたベルリンで、ホットな競争社会を生き抜いてきた腕利きの超・実力派古楽奏者たちが、W.F.バッハがまだ親元にいた頃の初期作品から、孤独な晩年に綴られていった鍵盤作品にいたるまで、その生涯のさまざまな時点での傑作・問題作をバランスよくプログラムに集め、たおやかな笛の音や闊達なガット弦操作で聴かせてくれる・・・W.F.バッハの特定ジャンルの音楽ばかりを集めた録音などでは見えてこない「人物像」や作風の変化も、このアルバムならきれいに浮かび上がってくるでしょう。
 NCA の常として解説もかなり充実しています(全訳付)。知られざる天才の真価と個性、知らないままではあまりに損——お見逃しなく!

NCA


NCA60246
(国内盤)
\2940
19世紀当時の楽器によるリスト交響詩
フランツ・リスト(1811〜1886)
 1. 交響詩第3 番「レ・プレリュード(前奏曲)」
 2. 交響詩第4 番「オルフェウス」
 3. 交響詩第1 番「山上で聞きし事」(山岳交響曲)
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー管弦楽団(古楽器使用)
 音楽性が飛びぬけていればこそ、企画のねらいが明確になる——作曲当時の演奏スタイル、当時の楽器を使うことで、リストの真意はあらためて明らかに。

 ほとんど交響曲のような「第1番」含め、選曲も解説も超・充実の新作!
 「古楽器によるリスト管弦楽作品」シリーズ、第2弾!
 すでに第1弾リリース『ダンテ交響曲』はさっそく注目の的となり、ハーゼルベック自身をはじめとする音楽学者たちの丹念な解説(全訳付)もさることながら、その桁外れな演奏、一部にリスト自身が指揮していた当時のヴァイマール宮廷楽団で使われていたオリジナルの古楽器まで登用し、弦楽編成を当時流で少人数に絞るなど徹底したこだわり、その結果として浮かび上がってくる作品美の「真意」などがさっそく注目を浴び、業界最大手誌に先駆けていくつかの雑誌にも充実した紹介がなされはじめています。
 巨匠アルノンクールのウィーン・コンツェントゥス・ムジクスとともにオーストリア古楽界を牽引してきたといっても過言ではない超・重要団体ウィーン・アカデミーと、その主宰者で自ら音楽学者・オルガン奏者としてリストの芸術世界に深く携わってきた古楽鍵盤奏者マルティン・ハーゼルベックは、この作曲家の管弦楽作品を「ダンテ交響曲」の録音と同じフィロソフィーのもと続々録音してゆくとのことで、このたび登場する第2弾リリースがこちらというわけです。
 選曲がまず憎いところ。
 超有名曲「レ・プレリュード」、録音があるようで意外に多くはない「オルフェウス」、そして何かと見過ごされがちなリストの交響詩「第1番」である「山上で聞きし事」、知名度の点でのバランス良いばらつきを意識しているのかもしれません。
 しかし何より、今回も演奏内容がとほうもない——弦セクションの一糸乱れぬ統率力、“自然素材”の存在感を強烈に漂わせて響いてくるティンパニ、迫力満点のピリオド金管、透明感あふれる木管の味わい、とにかく音符ひとつひとつ、和音ひとつひとつの存在感が「迫真」というほかないのです!おそらく、ハーゼルベックと演奏陣の意思疎通が完璧なのでしょう。演奏者ひとりひとりが、古楽器奏者として自分の楽器を知り尽くし、そのうえで各瞬間にどうすべきか理解してオーケストラを織り上げている、まさに知的俊英集団だからこその演奏クオリティ。ヒストリカル演奏や現代楽器演奏に慣れた方も、この迫力には理屈抜きに抗えないのではないでしょうか。
 今回も充実内容の解説書(全訳付)には、ハーゼルベック自身のリスト芸術との出会いも詳述。シリーズの「要」となる今回のアルバム、ちょっと見過ごせません。


第1弾もまもなく再入荷予定

NCA60234
(国内盤)
\2940
リスト:ダンテ交響曲&システィーナ礼拝堂を想って
 (19世紀当時の楽器による)

フランツ・リスト(1811〜1886)
1. ダンテの『神曲』による交響曲(ダンテ交響曲)
2. システィーナ礼拝堂を想って
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー(古楽器使用)、
シネ・ノミネ合唱団
 「リスト生誕100周年」に、驚くべき企画が登場。これは、ぜひ解説までじっくり読むべきかも。
 長大な解説の完全日本語訳付、価格分の損はさせません。
 リストならではの管弦楽作法を知るなら、この古楽器録音はインマゼール盤と並ぶ必聴クラス。静かなる異才、炸裂。

 Membran 傘下、名盤・充実企画あまたのNCA レーベル、本年最大といっても過言ではない重要リリース盤。
 リストが生きていた19世紀、クラシックの楽器は彼自身が弾いていたピアノをはじめ、みな現代の姿へとたどり着く前の変化の過程にあったことは、御存じのとおり。ならば、ロマン派の時代にあって管弦楽音楽のあり方に驚くべき新機軸を盛り込んでみせたフランツ・リストが思い描いていた響きが、いったいどのようなものだったのかは、当時の楽器の状態や演奏法を知らなくては全くイメージできないのではないか。・・・そう考えていち早く「古楽器によるリスト管弦楽作品集」を録音してみせたのが、『レコード芸術』で特選盤に輝いたインマゼール&アニマ・エテルナの傑作盤だったとすれば、それからなお数年の研究期間をへて、リストの生地ハンガリーにより近い「ひそかな古楽拠点」ウィーンで静々と計画をあたためていたのが、この国屈指の古楽器奏者たちを育ててきた超・重要古楽オーケストラ「ウィーン・アカデミー」の主宰者、マルティン・ハーゼルベック。
 ハーゼルベックは自らオルガン奏者として、リスト芸術のもう一つ知られざる重要ジャンル、オルガン作品の原題校訂譜の監修にあたるなど、古楽器畑にいながら長年リストの音楽を思わぬ側面から見つめ続けてきた異才。ウィーン古典派と19 世紀ロマン派の息吹そのまま、オーストリア人にしか体得しえない独特のリズム感を古楽器演奏のノウハウと矛盾なくからみあわせ、充実した古楽器演奏を提案しつづけてきたウィーン・アカデミーは、今やArcana で大活躍中の異才バロック・ヴァイオリン奏者グナール・レツボールが一時コンサートマスターをつとめていたり、ハンガリー古楽界の俊才バラーシュ・ボザイがチェロを弾いていたりと、中欧の古楽シーン育成に大きく寄与した重要団体でもあります。リストの基本的な管弦楽作品の「19 世紀の響き」をインマゼール盤で実感したなら、今度は必ずやこちらを聴くべき。
 稀代の文学通だったリストが、欧州近代文学の曙を飾ったとも言えるイタリアの詩人ダンテの傑作『神曲』にインスパイアされて作曲した『ダンテ交響曲』は、その鮮烈かつダイナミックな音楽表現、涙をさそう感動的なカンティレーナ、長大な演奏時間、どれをとっても19 世紀の並居る傑作管弦楽曲にひけをとらない大作ながら、注目される機会が今一つ少ない不遇の傑作...それがぱリスト生前の楽器やオーケストラ編成、演奏解釈のあり方を徹底的に検証、管楽器の一部はリストが指揮していた頃のヴァイマール管弦楽団が実際に使用していたものまで動員してのこの録音を聴けば、本当のコントラバスの低音、本当の金管の咆哮、本当の木管のバランスや理想的なガット弦の透明感...と、『ダンテ交響曲』に秘められた周到な音響表現が納得できる・・・いや、痛いくらいに脳髄を刺激してくれるはず。そしてリストがいかに精緻な音響設計をしていたのか空恐ろしくなるはず。
 その秘訣は、ヴァイマール楽団の真実を解きあかした長大な解説(全訳添付)でさらに理解が深まり、いよいよ面白くなること請け合いです。圧倒される喜び、読み解く愉しみ——「古楽器演奏」の醍醐味が、この1作に詰まっています。漫然と聴き過ごしたくない傑作盤、ご注目ください!



輸入盤はご紹介済み
(日本語訳はありません)
NCA 60246
\2000
ハーゼルベック&ウィーン・アカデミーによる
 リスト
第2弾
リスト:
 交響詩「前奏曲」、
 交響詩「オルフェウス」、
 交響詩「山上にて聞きしこと」
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー
NCA60234
¥2000
ハーゼルベック&ウィーン・アカデミーによる
 リスト第1弾

リスト:
 ダンテ交響曲
 システィーナ礼拝堂を想って
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー
シネ・ノミネ合唱団


NCA


NCA60170
(SACD Hybrid)
(国内盤)
\3150
初期ロマン派、まだまだ知られざる魅力が潜んでいる。
ヴェーバー(1786〜1826)
 1) クラリネット五重奏曲 変ロ長調 op.34/J.182
ジギスムント・リッター・フォン・ノイコム(1788〜1858)
 2) クラリネット五重奏曲 変ロ長調 op.8
エリック・ホープリッチ(クラシカル・クラリネット)
Ens.レザデュー(古楽器使用)
マリー・ウーティガー、
ウルズラ・ブンディース(vn)
ハーヨ・ベース(va)
ニコラス・セロ(vc)
 古楽器だからこそ引き立つ・・・では終わらない。それは圧倒的な音楽性があればこそ。
 初期ロマン派、まだまだ知られざる魅力が潜んでいる。とくにヴェーバー周辺には思わぬ響き、思わぬ秘曲も続々。超実力派たちが響かせる、遠い異国のロマン!

 古楽器演奏であることを声高に謳うこと自体が、もう10 年くらい前からアナクロニズムといえばそうなのですが、このアルバムのような録音があると、やはり「作曲家たちの知っていた、当時の楽器と奏法にこだわってこそ意味がある!」という古楽器演奏の大前提をあらためて強く認識せずにはおれません。
 演奏曲目は、弦楽四重奏にクラリネットが加わる五重奏編成の曲としてはモーツァルトやブラームスの五重奏曲と並んで有名なヴェーバー作品、それにハイドン兄弟の重要な門弟として知られる隠れ異才ノイコムの同編成作品。
 つまりベートーヴェンと同じ時代を生き、「古典派末期」というよりもむしろ「ロマン派初期」と言った方がふさわしい作風をはぐくんだ2名匠の逸品。
 ヴェーバーの五重奏曲はのどかな佳品と思いきや、古楽器演奏では弦楽器パートの真摯な魅力も、ざわざわと心を揺らすあのクラリネットの豊かな見せ場も、よく知っていたと思っていた音楽に何か思わぬ要素がまだまだ隠れていた!という期待感が最後まで続く仕上がり。
 ちょうど、ベートーヴェンやモーツァルトの交響曲を初めて古楽器演奏で聴いたときのような新鮮な驚きに似た感覚が、この演奏には溢れているのです!
 一方ノイコムは「名前からしてめったに聞かない」人も多いかもしれませんが、数年前マルゴワール御大が晩期の『レクィエム』を録音したあたりから音盤シーンでも少しずつ存在感が増してきました。他にも弦楽五重奏曲などいくつか録音はありますが、実はどれを聴いても「わざわざ録音したくなる」意味がよくわかる逸品ばかり。
 生前はロシア宮廷で人気を博したり、復古王政期のフランス外相タレーランに気に入られてフランス楽壇でも大成功、エジプトやブラジルにも赴いたりという、そうした異国での体験が彼の音楽性にも影響を及ぼしたのか、ウィーン古典派流儀のスタイルを守りながら異国情緒をうまく取り込むセンスの良さは、モーツァルトのトルコ風音楽の使い方にも相通じるところがあります。本盤の五重奏曲もロシアで作曲・披露されたとのことで、途中に有名なロシア民謡「うるわしのミンカ」にもとづく変奏曲が出てくるのですが、唐突な感じがまるでしない、古楽器情緒のまま聴くと独特の魅力が立ち昇る瞬間に、初期ロマン派って、古楽器演奏にするだけでこうも期待感がふくらむものかと驚かされます!
 ごらんのとおり、演奏陣は超一流——異才集団ムジカ・アンティクヮ・ケルンの初期メンバー(主宰者ゲーベルのやり方についてゆけず「あばよ」と飛び出たためこのアンサンブル名になったとか)と、18世紀オーケストラやエンシェント室内管などと活躍を続けてきた多忙な古参実力派ホープリッチの妙技はもう、いわずもがな絶妙そのもの。
 ゲーテやホフマンの時代の情緒と響きがありありと甦るSACD ハイブリッド、見逃せません!

PAN CLASSICS



PC10258
(国内盤)
\2940
D.スカルラッティ 鍵盤のためのソナタ集
ドメーニコ・スカルラッティ(1685〜1757):
 ①ソナタ 変イ長調 K.127/L.186 ②ソナタ ニ短調 K.213/L.108
 ③ソナタニ長調 K.214/L.65 ④ソナタ 嬰ヘ短調 K.318/L.31
 ⑤ソナタ 嬰ヘ長調 K.319/L.35
 ⑥第4導入曲(A.スカルラッティ(1660〜1725)作曲)
 ⑦ソナタ ロ短調 K.87/L.33 ⑧ソナタ ホ長調 K.206/L.257
 ⑨ソナタ イ短調 K.175/L.429 ⑩ソナタ ヘ長調 K.274/L.207
 ⑪ソナタ ニ短調 K.141/L.422 ⑫ソナタ イ長調 K.429/L.132
 ⑬ソナタ ト長調 K.454/L.184⑭ソナタ ト長調 K.455/L.209
 ⑮ソナタ ハ短調 K.11/L.352⑯ソナタ ト短調 K.450/L.338
 ⑰ソナタ ハ長調K.422/L.451 ⑱ソナタ ハ長調 K.423/L.102
 ⑲導入曲「迷宮のなかの迷宮」(パブロ・ミンゲ・イ・イロル(1753頃)作曲)
 ⑳ソナタ ト長調 K.235/L.154
ディエゴ・アレス(チェンバロ)
使用楽器:セビーリャのF.P.ミラバル1734年モデルに基づく
アムステルダムのジョエル・カッツマンによる復元楽器
 音の強弱がない楽器とは思えない——なんという変幻自在、ニュアンス豊かなスカルラッティ。
 スペイン王室を喜ばせた無辺の音楽世界を、スペイン稀代のチェンバロ奏者が、当時のスペインで製作されたモデルの楽器で。艶やかさとコントラスト、一枚上手の新録音。

 ナポリ楽派最大のオペラ作曲家A.スカルラッティを父に、バッハやヘンデルと同じ年に生まれたドメーニコ・スカルラッティは、いずれも単一楽章構成ながら555曲ものチェンバロ・ソナタを残した大作曲家——故郷のナポリで天才少年ぶりを発揮したあとローマでも頭角をあらわし、鍵盤演奏の教師としてポルトガル王女とスペイン王に相次いで仕え、末は「神のごとき歌手」ファリネッリをも凌駕するほど確たる地位をスペイン王室楽団でわがものにしました。彼こそは、おそらく同年生まれの3人のなかで最も生前に出世した人物だったのではないでしょうか。
 活躍地での影響からか、これまでたびたびスペイン情緒が色濃く反映されていると言われてきたスカルラッティのソナタ群は、古くからピアニストたちにとっても重要なレパートリーでありつづけてきた名盤数多のジャンルではありますが、ここへきて「スペイン人奏者」が「18世紀当時のスペインの楽器で」、まさに生のままのスカルラッティ世界を甦らせてくれる傑作盤が登場いたします。
 かつてPan Classics で、スカルラッティの次の世代を担ったスペインの名匠ソレールのソナタを録音、その驚くべき仕上がりが日本でも高く評価された俊才、ディエゴ・アレス。
 前回同様セビーリャのミラバルという製作家が1734 年に作った18 世紀スペイン式のモデルをベースに、名工カッツマンが復元製作した絶妙の銘器を用いての演奏なのですが、アレスはこの楽器を完璧に知り尽くしているようで、微妙なテンポ・ルバートの妙ひとつで各フレーズのニュアンスをみごと色鮮やかに描き分け、音の強弱のつかない楽器とはとても信じられないくらい変幻自在の音楽世界を織り上げてみせるのです。
 昨今「スカルラッティを欧州の若手チェンバロ奏者が」などというと、ひたすらコントラスト豊かにバリバリ急速に突き進むのみ...といったわかりやすい痛快解釈も多々ありますが、アレスはそういう若さ一直線の演奏とは明らかに一線を画した、作品の持ち味とじっくり付き合いながらの内実豊かな演奏。

PAN CLASSICS


PC10260
(国内盤・2枚組)
\4515
ボッケリーニ(1743〜1805)チェロ・ソナタ傑作10選
 〜さまざまな伴奏楽器とともに〜

ルイージ・ボッケリーニ(1743〜1805):
 1.ソナタ イ長調G.4 6.ソナタ変ロ長調G.565
 2.ソナタ ハ短調G.2b 7.ソナタ 変ホ長調G.11
 3.ソナタ 変ホ長調 8.ソナタ ヘ長調G.579
 (ヴァイオリン助奏付) 9.ソナタ変ホ長調G.566
 4.ソナタ ト長調G.5 10.ソナタ ハ長調G.17
 5.ソナタ イ長調「女帝」
ガエータノ・ナジッロ(バロック・チェロ)
マルコ・ヴィターリ、
ミケーレ・タッツァーリ(バロック・チェロ)
アレッサンドロ・チッコリーニ(バロック・ヴァイオリン)
イェスパー・クリステンセン(チェンバロ)
マラ・ガラッシ(フック式18世紀ハープ)
 古典派前夜のイタリアから、世界へ。チェロという楽器の可能性を飛躍的に高めた名手、ボッケリーニの音楽世界は、あまりにも見過ごされている。
 やるなら本気で、本気でやるほど深みを増すソナタの世界を縦横無尽、イタリアの凄腕古楽奏者たちが多角的に愉しませます。

 ボッケリーニ——18 世紀の「見過ごされている天才」も数多しと言えど、この人ほど不遇な境遇に置かれている名匠も少なくないのではないでしょうか? 生歿年と活躍期はほぼハイドンと同じで、自らチェロの名手としてこの楽器の可能性を飛躍的に高めるかたわら、弦楽四重奏曲はもとより無数の弦楽五重奏曲を書き、アマチュア音楽家たちから大いに愛され「ハイドンの妻」とまで呼ばれたほどの人気を誇ったのに、生前は人の良さが過ぎたのか楽譜出版社から安値で曲を買いたたかれ、後世人たちは「チェロ音楽史上の偉人」とその名を讃えながらも、愛奏されて残ったのは「ボッケリーニのメヌエット」の名で知られる弦楽五重奏曲の一部分だけ。「カノン」で有名なパッヘルベルと同じく、なまじ1曲だけが飛びぬけて愛されてきたせいで、その本来の活動がすっかり霞んでしまったタイプの有名人ですね。
 しかしCD 時代に入ってから、録音物が気軽に制作・発表できる環境になると、多作だったボッケリーニの偉業は多くの熱心な演奏家たちによってどんどん明るみに引き出されてきました。とりわけ、自ら得意としたチェロを弦楽四重奏にひとつ加えた五重奏編成での作品をはじめ、弦楽のための室内楽作品にはユニークな魅力を誇るとびきりの名作が少なからず含まれているために、アンナー・ビルスマやファビオ・ビオンディ、エンリーコ・ガッティといった凄腕古楽器奏者たちが1990 年代、続々と名録音を残してくれたのは、本当に幸いなことでした(今もBrilliant ではイタリア古楽勢による室内楽作品集の録音が続いています)。
 しかしどうしたものか、ベートーヴェンにとってのピアノ・ソナタ、ヴィヴァルディにとってのヴァイオリン協奏曲と同じくらいボッケリーニにとっては「自家薬籠中」だったはずの重要ジャンルであるチェロ・ソナタに限っては、現存する楽譜資料の不完全さもあって、録音さえあまりなされていないのが現状。ハイドンが最初期の交響曲や弦楽四重奏曲を書いていた頃に作曲されたこれらのソナタ、伴奏はいまだ通奏低音1筋のみで、そこにどんな楽器を使っていいのか決定的な案がないことも、演奏者たちを怯ませている原因なのかもしれません。
 しかし本当に幸いなことに、ボッケリーニと同じイタリア出身の飛び抜けたバロック・チェロ奏者ガエータノ・ナシッロ(鬼才エンリーコ・ガッティの通奏低音パートナー)が、この諸問題に正面からぶつかって素晴しい2 枚のアルバムをSymphonia レーベルで制作してくれていました。そのアルバムは同レーベルの活動休止に伴い入手不能になっていましたが、この度Pan Classics に移行して2枚組で登場してくれたのです。
 ナジッロはこれらのソナタをボッケリーニが作曲・演奏していた時期と地域をよく調べ、イタリア北部やウィーンやパリで当時最も一般的に使われていたチェンバロとハープ(!)を通奏低音の要とし、一部ではなんとヴァイオリンを伴奏楽器に使ったかも(!)という学説まで実践してみるという柔軟なスタイルで、古典派前夜(1760〜70 年前後ですね)の抒情とスリルあふれる低弦の魅力を縦横無尽に味あわせてくれるのです。
 そのあたりの解説も充実(日本語訳付)。煌びやかなハープやチェンバロに乗って、深みある低音から軽やかな中高音まで自在な「18 世紀当時の楽器と奏法」が、不遇な著名人の真骨頂をあざやかに描き出してくれます。

Φ(PHI)


LPH004
(国内盤2枚組・訳詞付)
\4200
ヘレヴェッヘ&コレギウム・ヴォカーレ・ヘント
 バッハ:ミサ曲 ロ短調 BWV232(1733〜1749)
フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮
コレギウム・ヴォカーレ・ヘント(古楽器使用)
ドロシー・ミールズ、
ハナ・ブラジコヴァー(S)
ダミアン・ギヨン(C-T)
トーマス・ホッブズ(T)
ペーター・コーイ(Bs)
 「最初にうまくいかなかったと思ったら、またやればいい」——と、20 年以上前の録音から一転、バッハ生涯最後の大規模声楽作品を、長年の経験の末ついに再録音!
 古楽声楽界のカリスマ的異才、満を持しての「ロ短調」、自主制作レーベルより電撃リリース!

 ここ数年、なぜかさかんに演奏会でもとりあげられつづけている「バッハ最後の大作声楽曲」、ミサ曲ロ短調の最新録音!それが、ほかでもない、デビュー以来バッハの声楽作品とじっくり向き合い続け、無数の名盤を生んできた名匠フィリップ・ヘレヴェッヘの手で制作されているというのです!
 ご存じのとおり、Telefunken(現Warner)で制作されていたレオンハルト&アーノンクールのバッハ・カンタータ全曲録音で合唱指揮者として登用されて以来、Harmonia Mundi France、Virgin、Pentatone...とさまざまなレーベルで話題作となる録音を続けてきた古楽指揮者ヘレヴェッヘは、一昨年末に自らPhi(フィー)レーベルを発足させ、手兵であるコレギウム・ヴォカーレ・ヘントおよび古楽器によるロマン派オーケストラであるシャンゼリゼ管弦楽団を率い、自分の芸術活動の集大成となるような録音を続々とリリースしはじめました。昨年は30 年ぶりとなるバッハのモテット集再録音、そしてつい年末に日本リリースあいなったばかりの、ブラームスの『アルト・ラプソディ』その他の管弦楽伴奏つき声楽作品集...と実り豊かな録音が続々登場、とくに前者は『レコード芸術』 でも特選に輝き、いまだに定番アイテムになっています。
 そこへ待望の新録音は『ロ短調』——
 しかし「あれ?」と思われた方もおられることでしょう。
 そう、HMF での傑作受難曲2録音をはじめ、バッハの大作の録音をことごとく手がけてきたヘレヴェッヘが、この「ロ短調」を録音していなかったわけがなく、実は1989 年に一度同作を録音しているのです。
 が!レーベル側から飛んできたインフォメーションは、次のような意味ありげな言葉で始まっていたのです。

 「最初にうまくいかなかったと思ったら、またやればいい」

 ...どういうことでしょう?
 かつての録音は「うまくいかなかった」と、少なくとも今のヘレヴェッヘは多少なりとも考えている、そして前回の録音以降20 年のあいだに得られた経験と知識を、思うがまま新録音にぶつけてみたいと思った——今回の最新録音が、その成果となっているであろうことは間違いありません(日本でもおなじみの面々が居並ぶ独唱陣の豪華さも、その意気込みを示して余りあります)。
 ただでさえ「仕掛け」と成立上の謎が少なくない「ロ短調」、バッハ・ファンはもちろん必聴、そして徹底した古楽解釈で知られるヘレヴェッヘのこと、バッハ・ファンならずともこの1作が「ミサ曲ロ短調の決定的録音」になるであろう、きわめて注目度の高い新譜。

RICERCAR


MRIC236
(国内盤・訳詞付)
\2940
レグレンツィ 『怒りの日』、およびその他の独唱・重唱モテットさまざま
 〜ヴェネツィアとウィーン、後期バロックへの道〜
ジョヴァンニ・レグレンツィ(1626〜1690):
 ①四つのヴィオラ・ダ・ガンバのための第6ソナタ
 ②死者のための続唱「怒りの日」
  (8声・ガンバ合奏・通奏低音)
 ③第2旋法によるリチェルカール(オルガン独奏:ケネス・ワイス)
 ④モテット「天使たちの饗宴に」
  (ソプラノ独唱・通奏低音)
 ⑤四つのヴィオラ・ダ・ガンバのための第5ソナタ
 ⑥モテット「神よ、わたしは嘆息いたします」
  (バス独唱・ガンバ合奏・通奏低音)
フィリップ・ピエルロ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)指揮
リチェルカール・コンソート(古楽器使用)
スーザン・ハミルトン(S)
アルノー・マルゾラティ(Bs)他
 バロック初期と後期のあいだ、この人を抜きに17世紀は語れない。弦楽芸術も、そして歌もシュッツの向こうを張るドラマティックな音使いから、清らかなコレッリ風の形式美にいたるまで多彩な語法を味わい尽くす、名手多数参加のRicercar隠れ名盤がついに日本リリース!

 古楽大国ベルギーのシーン最前線を過去30 年にわたってひた走ってきたRicercar レーベルのバックカタログには、信じられないくらいのお宝がたくさん眠っています。なかには音楽史上の大発見や思わぬアプローチなど、ベルギー古楽界の「知」と良心とが結晶した名盤も少なくないのですが、10 年前の経営体制変更に伴い廃盤になってしまったアイテムはもちろん、2007 年の再開以前にリリースされたタイトルでもプレス切れで入手しづらいものは多々。そうしたなか、ラ・フォル・ジュルネでもおなじみのフィリップ・ピエルロ率いるリチェルカール・コンソートが「ドイツ・バロックのカンタータ」シリーズ録音の後、ひそかに残していた「幻の名盤」のひとつを日本語解説・訳詞付でご案内できる運びとなったのは、なんと嬉しいことでしょう!
 このアルバム、ヴァイオリン音楽史上に名高い「コレッリ以前のソナタ作曲家」のひとり、レグレンツィの貴重な声楽作品を端的に集め、古楽界屈指のスーパープレイヤーが多々居揃う豪華な顔ぶれで録音されているのです...!
 合唱は最大8人のソリスト編成、カルロス・メーナやエルヴェ・ラミら俊才古楽歌手はもとより、ル・ポエム・アルモニークの録音でも際立った活躍をみせているアルノー・マルゾラティやモニカ・マウフら名歌手ばかり!
 器楽陣営にはモンテイエ(テオルボ)、ワイスとフランシス・ジャコブ(オルガン)、ワティヨンにバルサに上村かおりに…とソロ録音もゾクゾクの超実力派しかいないにもかかわらず、録音は2000 年。こんな顔ぶれで録音ができるなど今では考えられませんが、それにしてもかなり最近の録音でもあり、道理でレグレンツィ特有の豊かな表現がじっくり深められているわけです。
 北イタリアのベルガモ近くで生まれ、マントヴァ、フェラーラ、ミラノなど重要な都市で活躍したのちウィーンにも渡り、末はヴェネツィアで大成したというこの巨匠の音楽は、イタリア音楽が「動」から「静」へ、つまりバランスよりも表現力!だった時代から均整のとれた形式美へと変化してゆく、その過程をつぶさに示す逸品ぞろい。かなりコレッリ寄りの音楽にもかかわらずガンバ合奏が大活躍するなど、新しさと古さのはざまにある魅力は、聴き深めるほど味わいを増してくる...そういうタイプの音楽の解釈では、結局リチェルカール・コンソートの右に出るグループは滅多にないんですよね。

SAPHIR



LVC1126
(国内盤・訳詞付)
\2940
バシイ:まじめな歌、酒の歌、そして...
 〜17世紀フランス、歌の美しさと古楽器の魅力〜
ベルトラン・ド・バシイ(1625〜1690):
 ①春は戻ってくる ②嫉妬にかられた疑念が
 ③ヴィオルによるクラント ④出て来なさい、小鳥たち、この茂みから
 ⑤プレリュード(デュフォー)⑥アルマンド(デュフォー)
 ⑦わたしは千度も思いをはせた、甘き苦しみのなか
 ⑧恋を声高に語るなど、恋を台なしにするだけさ
 ⑨シャコンヌ(オトマン)⑩いとしき羊たち、牧草を探せ
 ⑪クラント(デュフォー)
 ⑫恋もせず生きていたとは、わたしの人生は無意味だった
 ⑬ヴィオルによるファンタジア(L.クープラン)
 ⑭昼も夜も心は焦がれる、ひどく移り気な女のために
 ⑮花が咲く、シルヴィの歩いた跡に ⑯サラバンド(デュフォー)
 ⑰ジグ(デュフォー)⑱おまえたちは憐れなものだな、悲しみの溜息よ
 ⑲お聞きになったでしょう、やさしく甘い溜息を
 ⑳シャコンヌ「ラ・ルージュヴィル」(サント=コロンブ) * 特記なしはバシイ作曲
Ens.ア・ドゥー・ヴィオール・エガール(古楽器使用)
ジョナサン・ダンフォード、シルヴィア・アブラモヴィチ
クレール・アントニーニ(リュート) (ヴィオラ・ダ・ガンバ)
トーマス・ダンフォード(アーチリュート、テオルボ)
モニク・ザネッティ(S) ポール・ウィレンブロック(Bs)
 これぞ、フランス古楽の真骨頂。
 エール・ド・クール(宮廷歌曲)のテイストを受け継ぐ17世紀中〜後半のフランスならではの音楽世界を、古楽先進国フランスで最も意欲的な活躍を続けてきた超・実力派集団がじっくり料理。すでに“本国”では大絶賛が相次いでいます。

 フランス・バロックの声楽曲...というと、何かと話題になるのはシャルパンティエやデュモン、リュリあたりの宗教曲か、イタリア音楽の影響をモロに受けた18 世紀のカンタータか、あとはオペラくらいのもの...じゃあ、歌曲は?Alpha レーベルでル・ポエム・アルモニークがさかんに録音してきたエール・ド・クール(宮廷歌曲)は、17世紀前半で伝統が潰えたのか...と思いきや、そんなはずがありません。文化的に高尚なことを愉しみたい上流階級の人々が「気軽に歌でも」と自分で歌えるような音楽がなくなってしまうわけがなく、リュリの大規模オペラやコレッリのソナタに驚いていた17 世紀後半のフランス人たちが心からくつろいで楽しめ、深めてゆけたのは「まじめな歌と酒の歌」という奇妙な名前の歌曲ジャンル。つまり高尚な歌曲もあれば戯れ歌もあり、往々にして重唱で歌われることも多い社交音楽なわけですが(有名なところでは、シャルパンティエも少し曲を残しています)その世界を最も深く掘り下げ、高みにのしあげた立役者が本盤の主人公、バシイ。
 彼が出版したいくつかの歌曲集には、フランス語の響きを大切にした独特の装飾音技法が示されており、フランス人作曲家たちの音楽感覚を知るうえでも非常に重要な名品がたくさん見つかるのです。その豊穣な世界を真正面から極めにかかり、絶妙な名演で早くもフランス批評家勢を唸らせはじめているのが、この1枚。
 フランス古楽の希少レパートリー開拓に熱心で、近年ではAS Musique やAlpha でも傑作名盤を連発してきたフランスの米国人ガンバ奏者ダンフォード率いる俊才揃いの声楽・器楽アンサンブルには、経験豊かなリュートの大家アントニーニ、幾多の名盤で活躍する古楽歌手ザネッティら異才たちが続々。繊細にして雄弁な歌い口の歌曲作品のほか、リュート組曲の抜粋やヴィオール(ガンバ)作品など器楽曲を挟んで進んでゆくプログラムの妙に、少ない色数で仕上げられた17 世紀の室内風俗画を思わせる繊細な美質を感じずにはおれません。
 解説の充実度もかなりのもの(訳詞共々全訳付)、Alpha やRamee などの名盤群と同様、本格古楽をお求めの方にも、「癒し」をお求めの方にもお奨めできます!

SAPHIR


LVC1136
(国内盤・2枚組)
\4515
セバスティアン・ギヨー
 J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2 巻

   BWV870b-893 〜ロンドン写本A による初録音〜

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
 『平均律クラヴィーア曲集 第2巻』BWV870b-893
 〜ブリティッシュ・ライブラリ所蔵の「ロンドン写本A」による世界初録音
セバスティアン・ギヨー(チェンバロ)
 バッハの鍵盤作品集のうち、最後に成立した「平均律第2 巻」のうち、作曲者の意図に最も近い「自筆譜」があった——
 たおやかなタッチで紡がれる思わぬアゴーギグ、仏バッハ研究の権威ジル・カンタグレルも「最も納得のゆく録音!」と興奮を隠しません。

 バッハの超・重要作品の「ヴァージョン違い」といえば、何よりもまず異版楽譜の多い『ヨハネ受難曲』、あるいはさまざまな協奏曲のたぐい(とくに『ブランデンブルク協奏曲』の初期稿)、ヴァイオリンのためのソナタ、『無伴奏チェロ組曲』の二つある筆写譜...といったあたりが思い浮かぶかもしれませんが、よもや「鍵盤楽器史上の旧約聖書」とまで呼ばれているこの重要曲集に、こんなかたちで「世界初録音」となるヴァージョンが眠っていようとは...!
 『平均律クラヴィーア曲集』の第2 巻、そう、1742 年にライプツィヒで仕上げられたとされる——ということはつまり「ゴールトベルク変奏曲」の後、バッハの生涯で最後に成立したチェンバロ曲集。
 この晩期の大作、いま一般的に使われている楽譜は、バッハの娘婿で後年の愛弟子でもあったアルトニコルという音楽家による1744 年の筆写譜が底本になっていて、バッハ自身の手になる完全なかたちでの自筆譜は失われてしまい、未だ発見されていません。しかしロンドンのブリティッシュ・ライブラリ(英国図書館)の古文書資料には、専門家たちのあいだで「ロンドン写本A」と呼ばれる同曲の筆写譜があって、これは全編がバッハ自身の手によって書かれているわけではないものの、バッハとその後妻アンナ・マグダレーナ・バッハによって浄書されており、しかもバッハの筆致でいくつもの修正がなされいるという大変興味深いヴァージョンなのです!
 詳しいことは演奏者自身による解説(全訳付)で解き明かされますが、ちょっと聴いただけでも冒頭のハ長調プレリュードからして「??」と思わせる音形の違いがあったり、他にもアゴーギグや音の繋げ方など、聴き慣れた部分でずいぶん大きな差異がいたるところに潜んでいる感じ。
 弾き手は古楽先進国フランスで、C.ルセと往年の巨匠ドレフュスに師事したのち、オランダの充実した古楽シーンで揉まれてきたセバスティアン・ギヨー。
 レーベル主宰者がバッハ研究の権威として知られるジル・カンタグレル教授にサンプルを送ったところ「自分がこれまで聴いてきた『第2 巻』のどの録音よりもすばらしい!」と興奮もあらわに連絡してきたとのこと。実際、それだけのことはあるセンス抜群の演奏解釈であることは、少しお聴き頂ければ(上述の「異版らしさ」の意外性とあいまって)すぐにおわかりいただけることでしょう。
 現代の名工ファディーニが1993 年に製作した、1733 年パリのブランシェによる銘器をもとにした復元楽器の音色も実にしなやか、表現力ゆたかに楽譜の魅力、奏者のタッチの妙を伝えてくれます。バッハ研究の成果と限りない音楽愛が実を結んだ稀有の逸品、バッハを語る上ではまず聴き逃せない1作といえるでしょう——ぜひお見逃しなく!

SAPHIR


LVC1042
(国内盤)
\2940
「幻の」名盤、ここに待望の復活。
ラヴェル(1875〜1937):
 1) ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番(1927)
バルトーク(1881〜1945):
 2) 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ(1944)
ヨーク・ボウェン(11884〜1961):
 3) ピアノ・ソナタ 作品72(1926)
クリストフ・バラーティ(ヴァイオリン)
ゼーフェリン・フォン・
エッカルトシュタイン(ピアノ)
 名盤あまたのSaphir レーベルに「フランス外」のスーパープレイヤーが録音した「幻の」名盤、ここに待望の復活。
 国内仕様で広く流通させるに足る、いわずと知れた傑作 + 秘曲2編の魅力を隅々まで伝える秀逸盤、お見逃しなく。

 パリの真ん中にある映画館兼小劇場を拠点とし、業界歴の長いプロデューサーがフランス楽壇のおいしいところを上手に拾いあげながら、すぐれた音盤を次々とリリースしてくれているSaphir レーベル。
 すでに200 枚に手が届こうかというそのカタログには、2008 年に国内盤扱いが始まる前からリリースされていた、かなりたくさんの注目盤も含まれています。レーベルポリシーからか、一度プレスが切れてしまうとなかなか再プレスしないのがこのレーベルの常なのですが、そうした過去盤のなかでかねてから注目していたものの、なかなか紹介する機会を得られなかった傑作盤がいくつかあります。このたびついに日本でもお披露目できるに至ったこのアルバムは、Saphir には珍しく(というほどでもないのですが)2人の演奏家がどちらもフランス人ではない室内楽&器楽曲盤。その内容はしかし、実に痛快なのです。
 アルバムの中軸となるのは、ふたりの演奏家がともに弾くラヴェルの有名なソナタ。そのあとに続けて、バルトーク晩期のあの比類ない名作無伴奏ソナタ、そして英国音楽好きにはたまらない、ホルストやバックスらの重要な同時代人ヨーク・ボウェンによる珍しいピアノ・ソナタ。演奏陣の実力を名曲でつぶさに味わい、さらに知られざる名曲と出会う愉しみも得るにはもってこいの1枚なのです。
 なにしろ弾き手は「弦の国」ハンガリーの最前線を代表する俊才中の俊才、メニューイン、シェリングらのもとで学びながらパリでフランコ=ベルギー派の系譜からも指導を受けたというクリストフ・バラーティと、1990 年代から2000 年代初頭にかけてブゾーニ&リーズ入賞、ベルリン・シュナーベル、ミュンヘンARD、エリザベートで軒並み優勝、と破竹のコンクール歴を誇りつつ、すでにドイツ楽壇の最前線をゆく名匠に成長しつつあるエッカルトシュタイン。
 日本での知名度はさておき、これはなかなか考えられない豪華な顔合わせ。両者それぞれのソロ(バルトークでのストレートな迫力、ボウェン作品でのみずみずしい精緻な美)の冴えわたりぶりも、その化学反応ともいうべきラヴェル作品での興奮も、思わぬ名録音に出会う喜びを隅々まで満喫させてくれること間違いなし。
 ちなみにバラーティ氏は2012 年5 月来日予定。欧州楽壇の最前線、ぜひご実感ください。

ZIG ZAG TERRITOIRES


ZZT050801
(国内盤・2枚組)
\4515
ブランディーヌ・ランヌー&フローランス・マルゴワール/
 バッハ:ヴァイオリンとオブリガート・チェンバロのためのソナタ
  実はひそかにプレス切れ間近。お早めに。
J.S.バッハ:ヴァイオリンとオブリガート・チェンバロのためのソナタ(全6曲)
 1.ソナタ ロ短調 BWV1014
 2.ソナタ ホ長調 BWV1016
 3.ソナタ ヘ短調 BWV1018
 4.ソナタ ト長調 BWV1019
 5.ソナタ ハ短調 BWV1017
 6.ソナタ イ長調 BWV1015
ブランディーヌ・ランヌー(チェンバロ)
フローランス・マルゴワール(バロック・ヴァイオリン)

 桁外れの才能——フランス派作品の名解釈者にして、とてつもないバッハ解釈者。
 多忙な名手マルゴワール女史とのタッグで、深みある音の層を織り上げてゆく極上バッハ。実はひそかにプレス切れ間近、お早めの確保をお奨め致します。

 バッハの作品には、名盤が続々あらわれる重要ジャンルがいくつかありますが、室内楽ではやはり、ヴァイオリンやヴィオラ・ダ・ガンバ、フルートなどにオブリガートのチェンバロ・パート(ほかの楽器で代用可能な通奏低音パートではない、必ずチェンバロで弾かれることを前提として書かれたパート)が加わる一連のソナタが、何かと名盤に恵まれ続けているジャンルといえるでしょう。とくにヴィオラ・ダ・ガンバとオブリガート・チェンバロのためのソナタ3 曲などは、おそらく一定の域に達したガンバの名手が必ずといっていいほど録音する重要なレパートリー。
 これに対して、必ずしも全てのバロック・ヴァイオリン奏者が通る道というわけではないのが、6曲の作例が残っているヴァイオリンとオブリガート・チェンバロのためのソナタ群。
 なにしろ2枚のCD を費やす結果になるわけですから、制作陣としてもそれなりに見返りが期待できる演奏家にしかこの作品群の録音を許さない...という事情もあるかもしれませんが、実際この6曲を録音した2枚組で市場に出回っているものは、ほとんどすべてが傑作名盤に仕上がっているように思います(そういえばつい先日もフランス語圏きっての多芸なヴェテラン奏者フランソワ・フェルナンデスが、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進中のバンジャマン・アラールとFlora レーベルで名録音を創りました)。
 しかし、そこを押していま、あえて解説付き国内流通でお届けしておきたい名盤が、Zig-Zag Territoires のカタログには眠っているのです。
 『ゴールトベルク変奏曲』のCD2枚におよぶ驚異のユニーク解釈で圧倒的な存在感をあらためて印象づけ、その直後に絶妙な価格帯による『イギリス組曲(全)フランス組曲(全)トッカータ(全)』という豪華5枚組BOX 化のバッハ盤をつづけざまにリリースした、現代フランスきってのチェンバロ奏者ブランディーヌ・ランヌー。
 そして古楽指揮者である父マルゴワールのアンサンブルでコンサートマスターをつとめながら、ソリストとしても大活躍を続けるフランス屈指のバロック・ヴァイオリン奏者フローランス・マルゴワール。
 この豪華な顔ぶれによる同ソナタ群の2枚組全曲アルバムが、まだ辛うじて若干の在庫が残っているというのです。
 ランヌー認知度がいや増しに増している今こそ棚に掲げておきたい秀逸録音——他のランヌー盤と同じく、チェンバロとは思えない濃密な音響空間に、倍音成分のゆたかなガット弦が間をぬうようにして彩りを添え、両者の絡みの充実度は筆舌につくしがたいほど。メロディメーカーとしてのバッハの魅力を印象づける弦音も、細かなタッチの妙でポリフォニーの綾をくっきり奏で分けるチェンバロも、隅々まで聴き漏らしたくないぼと強く感じさせる味わい深さに貫かれています。
 一度プレスが切れると、おそらく入手不可期間が長そうな(というか二度と入らないこともありえそうな)逸品・・・。今こそお見逃しなく。

輸入盤現在入手不能
ZZT050801
(2CD)
 J.S.バッハ:6つのヴァイオリン・ソナタ
 BWV1014〜1019
 フロランス・マルゴワール(バロック・ヴァイオリン)
ブランディーヌ・ランヌー(チェンバロ)
 J.S.バッハ:6つのヴァイオリン・ソナタは、感覚的な要素を持った作品。無伴奏ソナタと比較すると感情表現が豊か。演奏は、レザール・フロリサンのソロ・ヴァイオリンで、ウィリアム・クリスティなどとも共演しているバロック・ヴァイオリニスト、フロランス・マルゴワール。そしてZIG-ZAGRレーベルで多くのアルバムをリリースしているブランディーヌ・ランヌー。デビュー録音のラモー(ZZT010301)を皮切りに、J.S.バッハ;フランス組曲(ZZT020401)、イギリス組曲(ZZT030401)、トッカータ(ZZT050501),F.クープラン(ZZT040401)と好評を博している。

ZIG ZAG TERRITOIRES


ZZT301
(国内盤)
\2940
ベートーヴェン/リスト編:ピアノ独奏による交響曲第2番・第6番「田園」
ベートーヴェン(1770〜1827)/リスト編
 1.交響曲第2 番 ニ長調
 2.交響曲第6 番 ハ長調「田園」
ユーリ・マルティノフ(歴史的ピアノ/
パリのエラール社1837 年製オリジナル)
 ロシア・ピアニズムの継承者が、歴史的ピアノに向かう意義——それは、作曲家の意図にできるかぎり肉薄するため。
 超絶技巧の天才リストは、ベートーヴェンの交響曲に何を聴きつけたのか…コントラスト豊かに描き出される、音楽史上最高のピアノ編曲の真実。

 その曲が書かれたときにあった楽器と奏法で、作曲家の真意に近づく——古楽器(ピリオド楽器)による演奏がすでに一般的になって久しい21 世紀のいま、ショパン演奏の聖地ワルシャワでも19 世紀の歴史的ピアノが非常に大事にされていたり、ネイガウスやオボーリンやイグムノフや...といったロシア・ピアニズムの担い手たちから薫陶を受けてきたロシアの名匠が、ベートーヴェンやシューベルトの知っていたフォルテピアノをきわめて巧みに弾きこなしたり。孤高の知性派ロシア人奏者アレクセイ・リュビモフのフォルテピアノによる録音などは、その真価がひろく認められ、熱烈な支持を集めるようになっています。
 そんな折も折、このリュビモフも認めてやまない思わぬ新世代奏者が、モスクワのチャイコフスキー音楽院から世界に羽ばたきはじめていたのです。
 ユーリ・マルティノフ!
 オボーリン門下のヴォスクレセンスキーに師事してロシア・ピアニズムの魂を叩き込まれたあとパリに留学、古楽器奏法をすべからく吸収し、現在はチャイコフスキー音楽院の歴史的ピアノのクラスを担当しているそうですが、その縦横無尽のピアニズムは現代ピアノでも(近日、ピリッとしたアイテムをご紹介予定)歴史的ピアノでも精妙かつダイナミック!そんな魅力的なピアニズムをもって、彼は19 世紀に製作されたオリジナルの歴史的ピアノに向かい、きわめて注目すべき企画をとてつもない名演で仕上げてくれました。
 かつて俊才カツァリスをはじめ、幾人かのピアニストたちも録音してきた「リスト編曲によるベートーヴェンの交響曲」——1837 年、つまりリストが凄腕ピアニストとして大活躍していた真っ最中に製作されたエラール社のピアノ(ご存知、リストが最も高く評価した工房のひとつです)に向かい、マルティノフはこのロマン派の天才芸術家がベートーヴェンの交響曲に聴き取った音、感じ取った精神を、19 世紀の響きそのまま、くっきりと鮮やかに甦らせてくれます。
 「田園」での嵐や鳥の声が、エラールの歴史的ピアノならではの瑞々しく煌びやかな音色で再現されるときの、思いもかけない新鮮な体験!「第2番」のスタイリッシュな構築感覚をコントラスト豊かに歯切れよく彫り上げてゆく、その音作りの設計の確かさ! 添付の解説には、リストが1865年に全9曲の交響曲編曲を楽譜出版したときの貴重な前書きをはじめ、編曲にまつわる貴重な情報やリストの創意についての考察など、読みどころもたっぷり収められています(例によって全訳付)。
 ベートーヴェン像、19 世紀のピアノ音楽観に一石を投じる超・好企画…「音」も届いています、お見逃しなく!

ZIG ZAG TERRITOIRES



ZZT051102
(国内盤)
\2940
ルベル:ヴァイオリンのためのソナタさまざま
 〜フランス・バロックのヴァイオリン芸術〜

ジャン=フェリ・ルベル(1666〜1747):
 ①第7ソナタ「リュリ氏のトンボー」
 ②ヴァイオリン独奏と通奏低音のための第5ソナタ
 ③第3ソナタ「アポロン」
 ④ヴァイオリン独奏と通奏低音のための第6ソナタ
 ⑤第5ソナタ「パラース」
 ⑥ヴァイオリン独奏と通奏低音のための第11 ソナタ
  ①③⑤『12 のソナタ集 〜
   2声部または3声部と数字付低音のための』1712 年パリ刊
  ②④⑥『ヴァイオリン独奏のためのソナタ集、ヴィオールによるレシを多々含む』1713 年パリ刊
アマンディーヌ・ベイエール(vn)
アサンブレー・デゾネート・キュリユ(古楽器使用)
アルバ・ローカ(バロック・ヴァイオリン)
バルドメロ・バルチエーラ(バス・ド・ヴィオール)
ホナウド・ロペス(テオルボ)
チャオピン・クオ(クラヴサン)
 西Goldberg最高点 仏Le Monde de la musique誌 CHOC(ショック)受賞 仏Diapason誌 2006年最高金賞(ディアパゾン・ドール)
 今や欧州バロック・ヴァイオリン界の最も重要な「導き手」となった名手ベイエールは、『レコ芸』特選絶賛発売中のバッハ無伴奏とともに、日本でも急速に認知度が高まってきました——Zig-Zag Territoiresでの文句なしの超・名盤、本領のフランス古楽での妙技が光ります。

 アマンディーヌ・ベイエールぱAlpha レーベルの大好評シリーズ『バッハ:さまざまな楽器による協奏曲』の初期3作で重要な立ち回りをみせたあと、自身のアンサンブル活動に専念、かたやキアラ・バンキーニの愛弟子として教育界でも活躍をみせ、バンキーニの引退後、今ではレオンハルトやアルノンクールも学んだ欧州古楽教育の牙城、バーゼル・スコラ・カントルムでバロック・ヴァイオリン科の中心的存在となった、名実ともに見過ごせない新時代の巨匠。昨今リリースされたバッハ無伴奏の全曲録音(ZZT110902)は『レコード芸術』で特選となり(すみません、来週に追加分再入荷予定です)ようやく日本でも急速に注目を集めつつありますぱそんなベイエールが主宰するグループでは「リ・インコニーティ」が有名ですが、すでにそれ以前から「アサンブレー・デゾネート・キュリユ」なるソリスト集団でも重要な活躍をみせており、Naive やZig-Zag Territoires レーベルに数多くの名盤を残してきました。
 今回、解説付き国内仕様としては初流通となる本盤は、そんなベイエール独自のアンサンブル活動が欧州シーンにおいて、また音楽史を愉しむうえでも、いかに見過ごせない面白さをみせてきたかを如実に物語る逸品。
 バッハやヘンデルも存命中の18 世紀フランスで、クセナキスも真っ青(?)なクラスター不協和音を冒頭から使ってみせたバレエ『四大元素』で有名な作曲家ルベルですが、バレエ音楽での活躍はむしろ生涯後半の快挙。ここに収められているのはその少し前、当時フランスで徐々に人気を博しつつあったイタリア様式のソナタを、フランス固有のスタイルといかに融合させられるかを追求した、つまりクープランの合奏曲集『趣味の融合』と並び称されるべき傑作ヴァイオリン曲集ふたつからの精選6曲。
 フランス人奏者ならではの「粋」と、南仏出身者らしいベイエール特有のパッショネイトな「歌」とは、この曲集の魅力を伝えるうえでは最も適任だったわけで、縦横無尽、まさに自由闊達にくりひろげられるガット弦の艶やかさは「ああ、フランス・バロックはいいなあ」とため息が出るほどの美しさ。
 フランス物に対してはとくに辛口批評もいとわない『Diapason』誌が、堂々(レコ芸特選に相当する)ディアパゾン・ドール賞を授けていることからも、そのクオリティは推して知れましょう。解説充実全訳付、フランス古楽のコクの深さを実感できる逸品です。
 かなり前に輸入盤では紹介済み。


上記輸入盤
ZZT 051102
¥2600→¥2390
ジャン=フェリ・ルベル(1666-1747):
 ヴァイオリンとバッソコンティヌオのためのソナタ集
アマンディーヌ・ベイェ(バロックVn)
 「四大元素」でお馴染みのジャン=フェリ・ルベル。音楽家一族に生まれ、リュリに師事した後、宮廷音楽家として活躍。彼の作品は、斬新な響きで同時代の人々を驚嘆させた。ルベルの才能が最も反映されているのは室内楽作品で、このアルバムに収録されている「リュリ氏のトンボー」もその一つです。亡くなって間もない師に捧げられた作品(トンボー=死者に捧げられる曲)。典雅的な作風による美しい作品集を、アマンディーヌ・ベイェは音楽を注意深く描き出し流麗な音楽に仕上げている。


ZZT070501
(国内盤)
\2940
アマンディーヌ・ベイエール
 バッハ:ヴァイオリン独奏のための協奏曲4編
  〜BWV1041・1042・1052・1056〜
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)
 1.ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 BWV1052R
 2.ヴァイオリン協奏曲 ト短調 BWV1056R
 3.ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 BWV1042
 4.ヴァイオリン協奏曲 イ短調 BWV1041
アマンディーヌ・ベイエール(vn)
アンサンブル・リ・インコニーティ(古楽器使用)
 独Toccata推薦 仏Le Monde de la musique誌 CHOC(ショック) 仏Classica-Repertoire誌
 10点満点受賞アマンディーヌ・ベイエール、『レコ芸』特選の波で新たな注目が!ヨーロッパでの快挙を示す各誌絶賛のマストアイテム、堂々国内仕様で初登場。
 各パートひとりずつのバッハ、「深みとコントラスト」のカフェ・ツィマーマンとは大いに異なる、パッショネイトな痛快録音!!

 アマンディーヌ・ベイエールというバロック・ヴァイオリン奏者のことは上記のとおりですが、彼女は多忙なソリストとしてさまざまなアンサンブルに所属し実力を磨いてきたとはいえ、ひとりの名手としての存在感が強くなってきたのはやはり、カフェ・ツィマーマンを「卒業」して自らのアンサンブル「リ・インコニーティ」での活動に傾注しはじめたあたりからでしょう。つまりZig-Zag Territoires レーベルに録音するようになってから、ということになりますが、そのことを実証するかのごとく、このレーベルで録音してきたアルバムは(先日のバッハ無伴奏ZZT110902 も含め)すべて、発売されるたびにヨーロッパのさまざまな雑誌が大絶賛を寄せてきました。上記のルベル盤の翌年にリリースされたこの協奏曲集は、カフェ・ツィマーマンの『さまざまな楽器による協奏曲』シリーズ同様、1パートひとりに絞った極少バロック編成での録音——しかし、レパートリー選択も演奏結果も、Alpha のシリーズとはまったく趣きを異にしているのです!
 選ばれているのは、すべて「ヴァイオリン独奏のための協奏曲」で4曲...ん?と思われた向きもあるでしょう、なにしろ現在バッハの独奏協奏曲として知られるヴァイオリンのための協奏曲は、イ短調とホ長調の2曲ばかり——しかしバッハは生前さまざまな作品をカンタータの一部や独奏曲などに流用・編曲していたことは有名で、とくに一連のチェンバロ協奏曲はほとんどが過去に作曲していた他の楽器のための協奏曲を原曲にしていた...というのが通説。ベイエールがここに収録した「あと2曲」は、チェンバロ協奏曲第1 番と第5 番から「復元」されたヴァイオリン協奏曲ヴァージョンなのです!
 映画音楽として有名になった「第5 番」の艶やかなメロディがヴァイオリンで綴られるとき、そして超絶技巧たっぷりの「第1 番」のカデンツァやソロが縦横無尽のテクニックで描き上げられるとき、私たちはベイエールとそのアンサンブル特有の「熱気」や「情念」にふかく魅了されずにはおれません——そう、これはまさしく他のどのアンサンブルにも似ていない、ベイエールのリ・インコニーティならではのバッハに仕上がっているのです!
 さきのルベル盤同様、このアルバムにも(上に掲げた燦然と輝くレビュー賞ロゴが示すとおり)ヨーロッパ各地からたいへんな絶賛の声が寄せられ、今だに廃盤にされてない重要盤として欧州諸国で愛されている逸品——ならばベイエール自身の言葉を盛り込んだ解説もきちんと訳して、日本史上でも安定流通させない手はありません。「無伴奏」での快進撃直後、仕掛けるなら「今」というわけです。生のままの18 世紀をひしひしと感じさせる欧州勢屈指の名演に、どっぷり浸ってみてください!
 かなり前に輸入盤では紹介済み。


上記輸入盤
ZZT 070501
¥2600→¥2390
J.S.バッハ:
 ヴァイオリン協奏曲 第1番BWV.1041、
 第2番BWV.1042、BWV.1052(チャンバロ協奏曲第1番)、
 BWV.1056(チェンバロ協奏曲第2番)
アマンディーヌ・ベイェ(バロックVn & Cond)
グリ・インコグニティ
[アルバ・ロカ(Vn)
フラヴィオ・ロスコ(Vn)
マルタ・パラモ(Va)
マルコ・チェッカート(Vc)
バルドメロ・バルチェラ(Gamb)
アンナ・フォンターナ(Cemb)]
 2つのオリジナルのヴァイオリン協奏曲(BWV.1041、BWV.1042)と2つの失われたヴァイオリン協奏曲(BWV.1052、BWV.1056)が収録されています。BWV.1041、BWV.1042はイタリア様式の影響を受けた華やかなトゥッティと名人芸で聴かせるソロが特徴的な作品。現在はチェンバロ協奏曲として演奏されているBWV.1052、BWV.1056は、おそらく失われたヴァイオリン協奏曲の編曲であるとされている。アマンディーヌ・ベイェの繊細かつ大胆な妙技を披露し、また グリ・インコグニティの一人一人の高い技術が作品の細かな要素を丁寧に描き出している。グリ・インコグニティは2006年アマンディーヌ・ベイェの呼びかけにより結成されたアンサンブル。このCDは、1984年から開催されているリビエラ海岸恒例のイベント、「モンテカルロ春の芸術祭」公式アルバム。
 録音:2007年1月15-19日

旧譜
いまだその話題が止まらない

アマンディーヌ・ベイエールのバッハ無伴奏

ZZT110902
(国内盤・2枚組)
\4515
フランス『ディアパゾン』最高点の「ディアパゾン・ドール(金賞)」
 アマンディーヌ・ベイエールのバッハ無伴奏

  ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750):
   『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』BWV1001〜1006
  ヨハン・ゲオルク・ピゼンデル(1687〜1755):
   無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ
アマンディーヌ・ベイエール(バロック・ヴァイオリン)
ZZT110902
(輸入盤・2枚組)
日本語解説なし
\4400→¥3590
 古楽最前線ヨーロッパで、いつしか新たな「大御所」のポストを獲得——バンキーニ引退後バーゼル・スコラ・カントルムのバロック・ヴァイオリン科を占めているのは、この異才。
 パッションの塊にして桁外れの理知センス。ラテンの英知を極める古楽バッハ。

 「欧州古楽の牙城」バーゼル・スコラ・カントルムで長年教鞭をとってきたキアラ・バンキーニは、2010 年から後継をアマンディーヌ・ベイエールに任せました。
 キアラ・バンキーニはharmonia mundi france にも名盤数多だったのでその名をご存じの方も多いと思いますが、アマンディーヌ・ベイエールはことによると、ソリストとしてよりもむしろ「カフェ・ツィマーマン初期盤で2nd を弾いていた名手」として名前を見てきた方が意外に多いかもしれません。
 そんなベイエールは2004 年頃から独自のアンサンブル「リ・インコニーティ」を結成し、フランスやイタリアの俊才たちとZig-Zag Territoires で旺盛な活躍を続けてきました。南仏人らしい情熱を絶妙のコントロールで至芸へと昇華してゆく、かそけき羊腸弦のたわみが絶妙の味わいを醸し出すその明確な個性は、ヴィヴァルディや「ヴェネツィアのドイツ人」ローゼンミュラー、あるいはナポリのヴァイオリン芸術家マッテイスの作品など、“南”を感じさせるバロック楽曲で申し分なく発揮されるとともに、故郷フランスのエスプリなくしては弾けないフランス・バロックの名品群でも多くの名盤をつくってきました。
 そう——彼女はこれまで、むしろあまり知名度の高くない作曲家の隠れた傑作をあえて掘り出し続けてきたのですが、そんな彼女曰く「学生時代から弾き続けてきたバッハ無伴奏が、あるとき突然、腑に落ちる...それが“録音しよう”と思い立つとき」・・・かくして、ごく自然にこの超・王道レパートリーと向き合うときが来たというわけです。
 そうして仕上がったのが、このかけがえのない新たな「無伴奏」の決定盤。
 点の辛いこと身震いするほどの辛辣なレビューも続々出てくるフランスの『ディアパゾン』も早くからこの企画に注目、最新号では最高点の「ディアパゾン・ドール(金賞)」をもって迎えたというのが、すばらしい幸先を予感させてくれるではありませんか。バーゼル・スコラ・カントルムの新時代を担う名手のバッハ、というだけでも注目度が高いのに、演奏内容が素晴らしいとあっては、なおさらです。
 さっそく届いたサンプル盤から流れてきたのは、泰然自若のたたずまいで、気負うことなくバッハが塗り込めた情感の推移を浮き彫りにしてゆく、しみじみと聴き深めたくなるバロック的解釈…同曲の録音を多々お持ちの方にも聴いていただきたいガヴォットが、長大なフーガが、そしてシャコンヌが、この2 枚組からひとつ、またひとつ...と耳に届くときの深い快感を、ぜひ今から楽しみにしていただきたいものです。
 ベイエール自身が寄せている解説(全訳添付)が解き明かす「“無伴奏”の思わぬ側面」も面白ければ、秘曲への適性充分な彼女が参考曲として併録してくれた、ドレスデン宮廷楽団の俊才たるヴィヴァルディの門弟ピゼンデルの思わぬ無伴奏作品も絶妙。
 周到にして本格派、今最も聴き逃せない古楽奏者の快挙、どうぞご注目を!






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