REAL ARIA CD新録音新譜 製作協力:宗次ホール
五島史誉第3弾
ライヴ・アット・宗次ホール~「森の情景」
1CD-R\2500
コロナ禍で苦しむアーティストを救済するために名古屋宗次ホールが2020年の春にアーティスト支援アルバムを製作、頒布サービスを行ったことは覚えてると思う。ご協力をいただいたみなさまには深く感謝します。
その頒布サービスは終了したのだが、その一連の流れの中から、ヴァイオリニスト平光真彌氏の宗次ホールでの演奏音源をCD化しようという話が浮上し、REAL
ARIA RA-0106 として販売させていただいたのが2020年10月のこと。
そのプロジェクトと並行して進んでいたのが・・・この五島史誉第3弾。
過去に宗次ホールで行われた五島史誉のコンサートのなかから、選りすぐりの名演をまとめてCDリリースしようというのである。
さて、過去の膨大ともいえる音源の中から五島史誉が今回のアルバムのために選んだのは・・・敬愛するロベルト・シューマン。
思えば今から11年前、五島史誉が宗次ホールで開いた「ロベルト&クララ」のコンサートが大きな話題となって彼女は成功への道を歩み始めた。
そういえばアリアCD主催で初めて五島史誉コンサートを開いたときもシューマンがテーマだった。
彼女のREAL ARIAファーストアルバムもシューマンがメインだった。
五島史誉にとってシューマンは自身の音楽の中で絶対に切り離せない存在なのだろう。
文学的で禁欲的で、主張しすぎないロマン。確かに五島史誉のピアニズムとシューマンの音楽性は二重写しになる。
さて、今回のセレクションで特に注目すべきは、その11年前の3つの録音から始まること。
若々しく、すがすがしく、清らかなシューマンからこのアルバムは始まるのである。
そして流れは一気に現代へ。2019年、9月8日、宗次ホールでのデビュー10周年記念リサイタル。ここで収録されたのは前半のメインとなった「森の情景」作品82。
確か、アリアCD主催の初めての五島史誉コンサートでも彼女はこの作品から何曲か取り上げていたはず。
五島史誉はこの曲が好きなのだ。
シューマンのピアノ曲にあって決して人気曲ではない、どちらかというと通好みの、ほの暗く、やや晦渋な雰囲気のこの曲が好きなのだ。
シューマンの生まれたツヴィッカウの、あまり人にすり寄ってこない感じの森のような、これらの曲が。
そしてさらにアルバムはブラームスヘ進む。2つの間奏曲
作品119-1と 作品118-2。
シューマンの文学性をさらに哲学性にまで昇華させたような、深い苦悩に満ちた美しい作品。
作品119-1は店主のレクチャー・コンサートで弾いてもらった時の演奏ではないか。確か五島史誉本人がこの曲を弾きたいと。
どうしてここまでストイックなロマンを追い求めるのか。
最後の曲は、リストが編曲した華やかな「献呈」。しかしここでもやはり華やかさだけでは終わらない。不用意にはしゃがない、ぐっと抑えた抒情が曲間からにじみ出ている。これはリストのサーカスの曲ではなく、パリのサロンを捨て、恋に生きつつもすでに求道者としての生き方が視野に入っているリストの作品。
アルバム1枚を聴いて、五島史誉というピアニストがこの11年間に歩んできた道のりを改めて追体験できた。そしてその個性が、主張が、音楽性が、全く一緒で、ずっと同じであることに驚いた。
ちょっとほの暗く、むやみにロマンを表出させない。厳しくも清らかでまっすぐ。
でもだからこそ本当の叙情というものを伝えられる。
そうか・・・ロベルト・シューマンが生涯愛した人が、そういう人だった。
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発売元・企画:アリアCD /マスタリング:後藤和義/製作協力:宗次ホール
五島史誉
東京藝術大学音楽学部附属音楽高校を経て、同大学器楽科卒業。
2006年ドイツ・フォルクヴァング音楽大学卒業。その後イタリア・イモラ音楽院フォルテピアノ科において研鑽を積む。
カッシーナ・デ・ペッキ国際ピアノコンクール、フィリッポ・トレビザーン国際ピアノコンクール(どちらも伊)にてそれぞれ第2位受賞。浜松国際ピアノアカデミーなどに参加し、J.デームス、V.ゴルノスタエヴァ、B.
ペトルシャンスキー、D.ヨッフェ、M. ベロフなどのマスタークラスを受講。
2009年9月に宗次ホールに初出演以来、同ホール主催公演に多数登場。2017年にはモーツァルト後期ピアノ協奏曲(室内楽版)全8曲を演奏。海外アーティスとの共演でも活躍。CDではReal
Ariaレーベルよりアルバム2枚、M.カンタグリルとブラームスのヴァイオリンソナタ全曲をABP
MusiqueClassique(仏)よりリリース。
名古屋音楽大学、岐阜県立加納高等学校音楽科、岐阜聖徳学園短期大学部非常勤講師。2017年度名古屋市民芸術祭奨励賞受賞。
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五島史誉第1弾~In der Nacht~「夜に」
3種類の形式から選べます
・ナレーションありデジタル録音
・ナレーションなしデジタル録音
・アナログ録音
五島史誉第2弾~“Appassionata"~「熱情」
詳細はこちらで
shopping.php?pg=label/realaria002
マリー・カンタグリル&五島史誉
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集
Abp Musique Classique 1CD\2500
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<五島史誉とは誰なのか>
アリア・レーベル新録音。
まず考えたのは演奏家を誰にするかということである。
これはまったく悩まなかった。
最高の適任者がいたから。
五島史誉。
東京藝術大学卒業。フォルクヴァング音楽大学(ドイツ・エッセン)卒業、2006年、カッシーナ・デ・ペッキ国際ピアノコンクール第2位、フィリッポ・トレヴィザーン国際ピアノコンクール第2位。
だが、まあ、経歴はどうでもいい。
2年前、アリアCD主催のコンサートをたてつづけに行っていたとき、名古屋の有名なホールのプロデューサーに紹介されたのがこの人だった。「すばらしい人がいるよ」と。
さっそく演奏会を聴きに行ってみた。
ショパンやシューマンの室内楽を中心としたコンサート。共演者はポーランドのベテラン弦楽四重奏団。
前半は弦楽奏者を主役とした演奏が続く。
当然五島史誉は伴奏なので目立たない。堅実で柔らかな伴奏を聴かせてくれる。
だからそのときは正直とくに強い印象はなかった。
びっくりしたのは後半のシューマンのピアノ五重奏曲。
第1楽章こそ弦楽四重奏団が曲をリードして、どちからというと重厚で硬質な演奏を聴かせてくれていたのだが・・・第2楽章あたりからだんだん様子が変わってくる。
五島史誉のほうが曲をリードし始めてきたのである。
といっても猛女のように「あんたらついといで!」と言っているわけではない。そのスタンスは伴奏のときと変わらない。柔らかく、やさしく、穏やか。・・・なのにヨーロッパの百戦錬磨の猛者たちが、いつのまにか彼女に飼いならされて、そのピアノの前でゴロゴロ
喉を鳴らして甘えているのである。
そうなるともうホールは五島史誉ワールド。
天井から花びらが舞い降りて、まるで天使の楽園のようになってしまう。猛獣のようだったベテラン奏者たちはもはや彼女の愛らしいペット。
五島史誉、そういう不思議なオーラを持つ。
美人である。
物腰も穏やかで、おそらくどこかの令嬢なのだと思う。詳しくは知らない。
だが、ただものではない。
その後何度か彼女のコンサートに出かけるのだが、ホールはいつもいつの間にか「五島史誉ワールド」になり、観客はてなづけられてしまう。
実際ここ数年、彼女を中心とした「シューベルティアーデ」という催しが有志の人によって開催され続け、毎回満員になっていると聞く。
技巧的にうまいのは当たり前として、自分の世界をもち、それをいやみなく外の世界に顕現できる女流ピアニストというのはそんなにいない。
今回も編集はしないという前提だから、ノーミスで難曲を完奏し、同時に高い音楽性を発現させなければならなかったのだが、彼女だったからこそそれが可能だった。
今回のアルバムは「In der Nacht」・・・「夜に」。
もちろんすべて彼女が選曲した。
優美でちょっとゴージャス。
穏やかで癒し的な雰囲気が全体を包むが、どこか不吉で残酷な童話を見るような瞬間もある。
聴けば聴くほどどんどん惹きこまれて行く。
普段話をしていても、収録をしていてもそうだったが、今回のアルバムを聴いてさらに奥の深いアーティストだという印象を強くした。
・・・ふと気づいた。
今回自分はプロデューサーという役回りだったはずなのに、いつのまにか彼女の音楽に魅了され飼いならされてしまっていたことを。
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レコーディング風景・・・http://youtu.be/iPK1L6qIXCY
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