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ブロニスワフ・ギンペル。1911年ポーランド生まれのヴァイオリニスト。
14歳でウィーン・フィルと共演してゴールドマークの協奏曲を弾き、大評判となったというから、もう出発点から尋常ではない。
その後もイタリア国王ヴィットリオ・エマヌエレ3世やローマ法王の前で演奏し、さらにはパガニーニの墓前で、パガニーニが愛用したグァルネリを弾いたという逸話まで残る。
ユダヤ系だったため戦時中はアメリカへ渡り、クレンペラーの招きでロサンゼルス・フィルのコンサートマスターを務めた。戦後はヨーロッパへ戻り、カールスルーエ音楽院などで教鞭をとりながら、ソリストとしても各地で活動。
そして映画『戦場のピアニスト』で知られるウワディスワフ・シュピルマンとは、世界各地で実に2,500回を超えるデュオ・コンサートを行ったという。
まさに20世紀を生き抜いた、筋金入りのヴァイオリニストである。
そのギンペルの演奏が、またいい。
いかにもヨーロッパの正統を思わせる、気品に満ちた演奏。
磨き抜かれた音。
考え抜かれたフレージング。
派手なことはしない。
奇をてらうこともない。
ところが聴いていると、1曲の中で2回、3回、
「おっ!」
と突然こちらの姿勢を正させるような瞬間がやってくる。
そして最後まで聴き終えると、不思議なくらい満ち足りている。
こういう演奏家は、意外にいない。
音楽を真剣に愛する人にこそ、ぜひ一度聴いてほしいヴァイオリニストなのである。
実は店主、昔、このギンペルのチャイコフスキーに不意打ちを食らったことがある。
大学の講義でチャイコフスキーを取り上げることになり、練習用に何か音源を、とCD棚から適当に取り出したのがCONCERT
ROYALEのCDだった。
誰の演奏だったかすら見ないでかけた。
まあ誰でもいい。
講義の準備用なのだから。
……ところが。
これが、むちゃくちゃすごかった。
はっとして、講義の準備を中断してしまった。
聴き惚れたのである。
いったい誰だ、これは。
ジャケットを見る。
ブロニスワフ・ギンペル。
おごらず、飾らず、芯のぎっしり詰まった楷書的な演奏。
一つひとつの旋律を、几帳面なくらい丁寧に弾き切っていく。
なのに、その向こうにはまるで花園のような、香り豊かな世界が広がっている。
「一音たりともゆるがせにしない」なんて使い古された言葉を、思わず口にしたくなるような真摯さ。
そして何より、そこには音楽を奏でる喜びと、作品への愛情があふれている。
ギンペル、すごい。
華々しく名前を売るタイプではない。
けれど、ちゃんと耳を傾ければ、必ずこちらを振り向かせる。
そんな本物のヴァイオリニストである。
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