アリア・レーベル第28弾
ARIA AR 0028 1CD-R\1700
クレンペラー&ウィーン響
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」
アリア・レーベルも30タイトル近くリリースされてきた。
ここまでくると、逆に自分のレーベルの短所が見えてくる。それはイコール「LP」の短所でもあるのだが・・・・
マーラーとブルックナーである。
50年以上前だって、マーラーとブルックナーのすばらしい名演はあると知っていながら、どうしてもこの両者のLP復刻にはつい及び腰になる。
先日、LPでブルックナーを聴きながら、こう思った。
マーラーやブルックナーの交響曲というのは、どんなに言っても、デジタル、そしてCDが登場して初めて大多数に認知されるようになったと。
二人の超・大スケールの作品に関して、壮大さと同時に緻密さを再現するという離れ業をこなせるようになったのは、やはりCD時代に入ってからのことだと。
実際、店主が少年の頃は、ブルックナーの1番2番、マーラーの7番8番は、まだ2,3種類しか出ていない呑気な時代だった(選ぶのも楽だった)。
それがCD時代になってからわずか20年で、そのカタログは一気に増大していった。
マーラーやブルックナーの交響曲というのは、まさにCDが蘇らせた名作群と言っていい。
もちろんフルトヴェングラーやクナッパーツブッシュのブルックナー、あるいはワルターのマーラーを復刻する意味ももちろんあると思っているし、そう遠くない将来リリースする可能性もある。
だが80年代や90年代、そして21世紀に入ってから砲弾のごとく繰り出される壮絶な最新録音を聴いてしまうと、どうしても分が悪いという気がしないでもない。
・・・しかしそれでもあえて半世紀前のブルックナーやマーラーの録音をリリースするとしたら・・・
全く逆の発想でいけばいいか。
そう、つまり重厚長大とは真逆の演奏。
ということでクレンペラー&ウィーン響による史上最速のブルックナー交響曲第4番。
全部で51分。
1時間を切る録音でも珍しいのに、51分とはまさにぶっちぎりの短さ。ちなみに1947年のコンセルトヘボウとの録音が55分、1954年のケルン放送響との録音が56分、63年のフィルハーモニア、66年のバイエルン放送響は61分。もともと速めの演奏をする人だが、しかし51分とは尋常でない。(ただ、版が違うが、テンポ的にはレーグナーやノリントンのほうが速く感じるところもある。)
録音は1951年。会社はVOX。
ブルックナー演奏が黎明期にあったとはいえないと思うが、録音に関してはまだまだ夜明け前。LPとしては初めての録音であり、ごく初期の録音であることは間違いない。
第2楽章ではヴィオラの名場面をソロで弾かせるなど試行錯誤的場面もある。また演奏技術的に「大丈夫か」という場面もなくはない。もちろん管楽器炸裂でこちらを圧倒する、などという芸当は見せてくれない(でもホルンはなかなか渋い味)。
しかしこの颯爽とした演奏には60年代以降(あるいはモントリオール空港転落事故以降)のクレンペラーとは一味もふた味も違った面白みがあることも事実である。
ただ、まったくの店主の想像だが・・・、ピアノ録音にアップライトを使い、演奏家のためにホテルの部屋も用意せずピアノの隅で寝かせていたと噂されるVOXという会社。ひょっとするとこの録音もクレンペラーに「金がかかるから録音はできるだけ短く、可能な限り短く」と指示していた可能性もある・・ような気もする。
で、できあがったのがこの演奏だとしたら・・・
これはこれで面白いではないか。
悪くない。
(クレンペラーはメンデルスゾーンの「スコットランド」もVOXで録音していたが、第2楽章まで録音したところでやめてしまった。VOXは残り2楽章を他の指揮者で録音してリリースした。
クレンペラー、VOX時代のことはあまり語らないが、ここでついにぶちきれたのではないか。事実関係は不明だがいずれにせよ何かあったのは間違いない。)
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原盤のジャケット
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