アリア・レーベル第46弾
ARIA AR 0046 1CD-R\1700
アンチェル&チェコ・フィル
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」
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アンチェルとチェコ・フィルによるドヴォルザークの交響曲「新世界より」。
すべてにおいて実直で真摯。
熱く情熱的だが感情に押し流されてしまうことはない。
表情豊かで人間的だが甘さに堕ちることはない。
ていねいで整然としているが機械的ではない。
理性的で落ち着いているが聴く人を冷たく突き放すことはない。
普通の指揮者なら軽く流してしまいそうなパッセージでも、この人にかかると重要な意味合いがあるように思えてくる。
どの一音にもこの指揮者の誠実さとひたむきさを感じることができる。
そんなアンチェルの音楽に対する熱い思いに、チェコ・フィルも全身全霊で応える。
弦の一つ一つが、管の一つ一つが、音楽を表現する喜びと感動に包まれているのである。
音楽は魂・・・。
この頃のアンチェルとチェコ・フィルの演奏を聴くと、いつもなら恥ずかしくて言えないようなそんな言葉が頭に浮かんでしまう。
1961年。
アンチェルがこのオーケストラの首席指揮者に就任して10年。
間違いなくチェコ・フィルの全盛期。
この2年前には初来日を果たし、同じく初来日となったウィーン・フィルと比較されることになるが、「ウィーン・フィルよりいいんじゃないか」という世評を勝ち得ていた時期。
指揮者とオーケストラの「技術」と「精神」が最高の状態に達したときにこの世に放たれた、「新世界」録音史上最高の名演と断言していいと思う。
店主は初めてこの演奏を聴いてそのみずみずしくも情熱的な演奏のとりこになったが、そのときはまだこの指揮者が家族全員をナチスに惨殺され、音楽だけを生きがいに人生のすべてを音楽に捧げていたということを知らなかった。.
この演奏、最近はずっと2002年発売のSUPRAPHON
アンチェル・エディションのCDで鑑賞してきた・・・その長年親しんだ盤を貶めることは言いたくないのだが、今回のアリア・レーベルのLP復刻は、音の深さ重さ存在感においてそのCDを上回っている。
音をきれいにしすぎて「痩せた音がする」と言われていた「アンチェル・エディション」のCDシリーズだが、元のLPにはこんな深い音が刻み込まれていたのである。
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