アリア・レーベル第47弾
ARIA AR 0047 1CD-R\1700
オッテルロー&ベルリン・フィル
ベルリオーズ:幻想交響曲
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1950年代初頭。
自社レーベルとして録音を始めたPHILIPSは、ヨッフム、レーマン、ケンペン、オッテルローといった大指揮者たちの録音を引っさげてLP業界に参入した。
栄えある第一回録音はオッテルロー&ハーグ・フィルによるチャイコフスキー交響曲第4番。そしてヨッフムのベートーヴェン、レーマンのモーツァルト、ケンペンのチャイコフスキーなどが続いた。
とくにその中でも注目されたのがベルリン・フィルとの録音。
大戦の惨禍によりガタガタのボロボロになっていたベルリン・フィルだが、LP業界の躍進に伴い録音も増え、ようやく完全復活の兆しを見せ、戦前の黄金時代を再び蘇らせようとしていた。そして、もちろんこの頃はフルトヴェングラーが活躍していた時代。回数はあまり多くなかったとはいえ、この頃のベルリン・フィルはやはりフルトヴェングラーの音がするわけである。
さて今回ご紹介するのは、オランダ往年の大指揮者オッテルローと、そのベルリン・フィルの貴重な共演。
ウィレム・ヴァン・オッテルロー。
医学を学んでいたというインテリだけあってその演奏はキリリと引き締まった「精悍な知性」を感じさせる。
1949年から1973年の長きにわたり、オランダのハーグ・レジデンティ管弦楽団の首席指揮者、音楽監督としてその育成に貢献。名演もいくつか残し、なかでも「幻想交響曲」(1959年ステレオ)はよく知られる。
ただオッテルロー、日本ではあまり知名度が高いほうではなく、CDもあまり出なかった。出ても廉価盤シリーズの端っこ。店主が聴いたハーグとの「幻想交響曲」も、ちょっと音が枯れた国内廉価盤だった。
そのオッテルロー、これはベルリン・フィルとの「幻想」(1951年モノラル)である。
これがまあ、あの名盤の誉れ高いハーグとの「幻想」を凌駕する壮絶なる演奏。
一般の人が抱くオッテルローに対する「知的で穏やかな紳士」というイメージは、これを聴けば完全に覆る。
とにかく感情の起伏が激しい。エキセントリック且つダイナミック。
そしてその細かなテンポの変化や解釈の「揺れ」にベルリン・フィルが見事についていく。
オッテルローとベルリン・フィル、バシっと決めてほしいところを絶対確実に決めてくれるのである。
こうした当たり前のことが、この時代のオケは当たり前にできた。
オッテルローにとっても、そして当時のベルリン・フィルにとってもまさしく一世一代の名演。
・・・誰かが言っていた。
「もしもしまかり間違ってフルトヴェングラーが「幻想」を録音していたら、こんな演奏だったんだろうなあ」。
・・なるほど。そう思う。
ちなみにオッテルローは1967年からメルボルン交響楽団、そして1971年からシドニー交響楽団の首席指揮者をつとめるなどオーストラリアの音楽発展に寄与したが、1978年、滞在中のメルボルン近郊で交通事故により急死した。70歳だった。
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