アリア・レーベル 第87・88弾 正体不明の指揮者 ラルフ・デ・クロス
★ベルリオーズ:幻想交響曲
★ワーグナー:管弦楽曲集
ARD 0087・88 各\1800
ラルフ・デ・クロス。
詳細不明。
何を調べても載っていない。
しかし昔聴いた「幻想交響曲」がすごかった。
オケはパリ・プロムナード管弦楽団という覆面っぽい楽団。
しかしデ・クロスという人の的確且つ大胆な指揮ぶりによってきわめて奇想天外、荒唐無稽、波乱万丈な一大絵巻を堪能できる
。
聴いてもらえばわかると思うが、オケを仕切るカリスマ性も、深い音楽性も、豊かな個性も持ち合わせたまちがいなく一流指揮者。
・・・しかしラルフ・デ・クロス、完全無名。
まったく知られてない。
だからこの「幻想」録音だけの一発屋か、あるいは「デ・クロス」というのも誰かの変名だろう、くらいにしか思っていなかった。
そんなときに現れたのがワーグナー管弦楽曲集。
・・・これが・・・さらにすごかったのである。
期待通りの、いやそれをはるかに上回る超・巨匠演奏。
とくに「タンホイザー」。
これを聴いた少なくとも2人が「フルトヴェングラーですか」と聞いてきた。
しかしフルトヴェングラーとは違う。もっと異様な感じ。
ラスト5分、ここまでこの曲を解体して、しかも強力バージョン・アップして組み立てなおした指揮者がいたか。
デ・クロスのもとで生まれ変わった新しい音楽は、激しくうねりながら怒涛のごとくこちらに押し寄せてくる。決して言い過ぎではない。
それは他の曲でもそう。
ラルフ・デ・クロス、間違いなくただものでない。
現在完全に忘れられているのが絶対的におかしい、とんでもない男だと断言する。
ひょっとするとここでアリアCDが紹介したことでもう一度陽の目を見るかもしれない。
そして大巨匠のリストにその名を刻むようになるかもしれない。
あるいは契約上本名を出せない、ものすごい巨匠の「変名」演奏だったりするのか・・・。
とってつけたようなオーケストラの名前からしてもその可能性は高い。
でもどうかとりあえずここで覚えておいてほしい。
ラルフ・デ・クロス
という完全無名の指揮者が残したものすごい演奏があったということを。
音は、聞き苦しくはないが決してよいものではない。
しかしその音の雑味が、この大胆不敵で正体不明の男の音楽をさらに神秘的にしてくれる。
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